『神様は中学生』

第四話

作者 くま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから色々あって、僕は3日後にネルフの施設からでる事が出来た。

微細に至る心体検査も確かに疲れたけれど、

それ以上に疲れたのは、リツコさんから使徒戦の報告を求められた事だ。

一から十まで全部初号機がやってくれました。

と言う答えにしか僕は返さなかったけれど、絶対にその言葉を信じてはいないと思う。

基本的には疲れる事が多かったけれど、父さんと交わした会話は少し面白かったかもしれない。

相変わらずに言葉の少ない父さんだったけれど、

それを勝手に曲解して話を続けるというのは中々無い経験だったと思う。

もちろん最初の父さんの言葉は『何故だ?』の一言。

それは母さんの事だと僕も解っていたけれど、

父さんが会話のキャッチボールで明後日の方向にボールを投げるのなら、

僕は明々後日の方向にパントキックで返す事にしてみた。

その時の父さんとの会話は大体こんな感じだった。

 

「何故だ?」


「何言ってるのさ、父さんが使徒を倒せって言ったんじゃないか。

 此処がその為に組織された処だって初号機も言ってたし、

 初号機だってその気で頑張ってくれたんだよ。

 それとも何?父さんはアレを倒さずに飼い慣らすつもりだったの?

 確かにアレ、えっと使徒だっけ?はミサイルとか効かなくて強かったけれど、

 それを飼い慣らそうなんて、随分と無謀なんじゃないの?

 事情は良く解らない僕だけれど、そんな事は絶対に出来ないと思うよ。

 此処にだって、赤木博士とか頭の良い人が一杯居るみたいだから、

 その人たちに聞いて見れば良いじゃないか、きっと出来ないって言うからさ」


「そうではない。使徒の事は如何でもいい」


「ちょっと待ってよ、父さん。

 それは父さんの立場で一番言っちゃあいけない事じゃないの?

 父さんはさ、自分の今の立場って本当に解ってるの?

 使徒を倒す為の組織、ネルフの一番偉い人なんだよ。

 今は周りに部下の人とか居ないみたいだからなのかも知れないけど、

 それでも、父さんが常日頃から考えて良いのは、使徒を倒す事だけだよ。

 今回は初号機が頑張ってくれたから倒せたけど、

 これからも、あんなバケモノを倒していかなきゃならないんだから、

 それ以外の事を考えてる余裕なんて無い筈だよね。

 父さんはそうしなきゃいけなくて、だからこそ僕に構うことも出来なくて、僕を先生の所に預けたんだよね。

 僕は此処に来るまでそれに気がつかなくて、ずっと誤解してたけどさ。

 そっか、だから母さんの…」


「シンジ!ユイが如何した?初号機の中のユイは?」


「え?何を言ってるのさ、父さん。

 父さんが前に母さんの遺品とかを焼いたのは、良く解ってなかった僕と違って、

 死んじゃった母さんとの離別を、本心から受け入れたからなんだよね?

 それが何で今更、初号機の中の母さんなんて話がでてくるの?

 まさかとは思うけど、父さんはまだ母さんとの事を引きずってるの?

 …あのさ、父さん、父さんは小さい頃にテレビを見たよね。

 テレビに出てきたヒーロー達はさ、リアルな悲しみの時、愛する者と別れ行く時どうしてた?

 そうだよね、その時、フランダースの犬は全てを受け入れたよね。

 僕だって子供じゃないし、父さんがヒーローみたいに活躍できると思ってないよ。

 けどさ、母さんとの死別を受けいれる事は、しなきゃいけない事だと思う。

 でないと、アスカに鼻で笑われちゃうよ?生きるって事は不条理って事よ、ってね。

 それにさ、例えば僕が神様になっちゃって、すごい力を手に入れたとしても、

 死んだ人間は、10年前に死んだ母さんは、決して生き返ることは無いんだよ。

 父さんはもちろんそんな事は知ってるだろうし、僕だって知ってると言うか、最近きちんと理解したよ。

 だから、初号機の中に在った母さんの残したナニカともちゃんとお別れ出来たし…」


「……」


「えっと、話はそれだけかな?

 父さんも忙しいだろうし、僕も色々とやる事が在るらしいからもう行くね。

 一番偉い人の仕事の大変さなんて僕には良く解らないけど、父さんも父さんなりに仕事を頑張ってね。

 僕も初号機に呆れられないように、僕なりに頑張るからさ。

 じゃあ、さよなら、父さん」

 

そんな風に最終的には固まってしまった父さんを残して、

偶然に通路で出会った僕と父さんの会話は終わったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、ようやくぶりにネルフを出た僕は、黒服を着ていてサングラスをかけた人たちと一緒に、

地上に用意されているという新しい住居へと向かう。

新居の名前は前と同じにコンフォート17だった。

といってもミサトさんと同居というわけじゃなかった。

リツコさんの話が既に通っていたのか、少しミサトさんから距離を置いている所為かは解らないけど。

使徒との戦いで気絶して入院した訳じゃないし、その辺の経緯が違うからなのかもしれない。

世の中ってタイミングなのかもしれないと僕は思った。

前回とは違い一人暮らしをする事になったんだけれど、

掃除や洗濯その他諸々の為に、ハウスキーパーが来てくれる事になっていた。

前回の暮らしでは色々やっていたし、自分でも出来るんだけど、

チルドレンとしての活動を優先してもらう為に、とかいう理由でリツコさんが手配してくれていたのだ。

そんな風に生活環境の保全をしてもらえるなんて僕は思ってなかったし、

じゃあ色々と苦労した前回は何だったんだろうと思った。

ま、今更だけどね。

自分の部屋に着いた僕は、この後に行うハウスキーパーの人との顔合わせに少し負担を感じながら、

洗面所の鏡の前で、もう一つの懸案にため息を吐く。

ゆりえ先輩が額に押したスタンプが原因だ。

そこにはこう在った。

【もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もーっと頑張りましょう】

一体どれだけ僕は頑張れば良いんですか、ゆりえ先輩?

改めて目に見える形で突きつけられた自分のダメさ加減に割と凹む僕。

不幸中の幸いはこのハンコが普通の人には見えて無い事だろう。

それでも、タマとかタマの中に居るヒンさんとかには見えているらしい。

…タマは字が読めなかったけど。

ああ、そうか。

あの時、こっちに戻ってきた時に、よくわからない人でない存在達が、

頑張れって僕に言ってくれたのは、コレを見たからなんだろう。

そう言えば、幽霊の人たちにはこのハンコは見えるのかな?

今度会ったら、聞いてみよう。

見る人が見れば見た目からダメな僕でも、一応片付けぐらいは出来るので、

ハウスキーパーの人が来る前に、送られてきた自分の荷物の整理ぐらいは終わらせていた。

とはいえ、荷物自体の量も少ないし大した事無かった。

それよりも僕の荷物以外に、この部屋に配送されていた物の方が大変だった。

それはリツコさんからのプレゼントだった。

僕あてのプレゼントというか、タマの為のものだった。

「猫を飼う為にも、色々な道具が必要になるわ。

 預かった大切な仔なんだし、きちんと世話をしてあげないとダメよ」

とはリツコさんの弁。

それにしても、僕の引越しの荷物の優に3倍の量なのは如何かと思う。

しかもタマ用のネルフのIDカードまで作ってくれてるし…。

きっと本部に連れて来いって事なんだろうな。

しかも後で聞いた話になるけど、

このコンフォート17の一階に入居出来るようにごり押ししたのはリツコさんだったらしい。

元からペット可の施設はそんなに数が無かったらしく、

ネルフ本部に比較的近い此処を警備上の理由なんたらといって特別に通したらしい。

言われてみれば前回よりも広い部屋だし、一人暮らしするには贅沢すぎる部屋だと思う。

リツコさんがネコ好きだとは知っていたけれど、タマの為にそこまでやるなんて、ホント予想外だった。

まあ、僕にとって見れば悪い事じゃないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなリツコさんのネコ好きはともかく、一応の新居の整理をつけた僕は、

その後のハウスキーパーの人との顔合わせを何とか無事に終えて、新生活を始める事になった。

とは言え、しばらくはネルフへ足しげく通う日々が続く事が確定している。

シンクロテストやら何やらと、使徒との戦いで起きた想定外事項を解明すべく、

リツコさん中心としたネルフの皆は大忙しなのだ。

結果、使徒戦の中心人物である僕の拘束時間も増える事が決まっているという次第。

ただ、前回と違ったのは、僕が主に話をするのがミサトさんではなく、リツコさんという所。

ミサトさんは先の使徒との戦いの事で、僕の事を良く思ってなかった。

僕が動かしてたんじゃなくて、初号機が使徒を倒した。

という話に渋い顔をして、その後は僕にあまり話しかけてこなくなった。

正直、大人としてその態度はどうかと思うけど、

良く解らない事態に戸惑って、こっちに八つ当たりするのも無理は無いかも、と僕は思っていた。

そんなミサトさんの事はさておき、リツコさんの研究室で話をすることが多い僕は、

相談と言う形でリツコさんに事情をある程度打ち明ける事にした。

雑談をしている時に、相談したい事があると持ちかける僕。

 

「あの、リツコさん。笑わないで聞いてください。

 僕、こっちに来てから聞こえない声が聞こえたり、見えないものが見えたりするんです。

 僕、どうかしちゃたんでしょうか?

 それともコレがエヴァに乗る為に必要なことなんですか?」

 

もちろん答えは僕が神様になった事だって解ってる。

その所為というか、そのおかげで僕が客観的には変な行動をとっている事も。

その行動をみたミサトさんやリツコさんが、ちょっとアレな視線で僕を見ている事も。

 

「チルドレンとして必要とされる資質にそういった条件は無いはずよ。

 でも、それは本当なの、シンジ君?

 それと、どうしてその事をもっと早く言ってくれなかったの?」

 

声に少し怒気を込めたリツコさんは、割りと当たり前の質問を返してきた。

僕の言動に思い至る事があるのか、その表情は真剣そのもの。

 

「もちろん冗談なんかじゃなくて、本当の事です。

 それと今まで話さなかったのは、此処はそういうのが当たり前の場所なんだって思ってたからです。

 皆さんは当然承知の上で、何も無かったように振舞ってるんだって思ってました。

 でも、よくよく考えてみて、やっぱり皆は見えてなかったり聞えてなかったりするんじゃないかって…」


「……」

 

そんな僕の答えに、リツコさんは眉間に手で押さえながら沈黙で返してくる。

何かマズイ事を言ったのかと心配していると、リツコさんは端末の方に向き直り、

キーボードを叩いて今までのとは違う画面を表示させる。

そしてクリップボードにレポート用紙を挟んで僕の方へと向き直った。

どうやら真剣に僕の話を聞いてくれるみたいだった。

 

「まず、最初に言っておくわ。

 さわりぐらいは頭に在るけど、私はその手の専門じゃないの。

 だから、的を得ない質問や、見当違いのアドバイスをするかもしれない。

 その事は頭に入れておいて」

 

リツコさんのそんな前置きに、僕はきちんと椅子に座りなおしてからゆっくりと首を縦にる。

コホンと一つ咳払いをして、ペンを右手にボードを左手にしたリツコさんは口を開く。

 

「じゃあ、まずはシンジ君がどんなものを見るのかを、教えてもらえるかしら?」


「えっとですね、此処でよく見るのはリツコさんみたいに白衣を着たオネーサンと、

 3、4歳くらいで赤い瞳の女の子です。

 一応名前も聞きました、赤木ナオコさんと綾波レイちゃん…だそうです。

 赤木さんの方の口ぶりからすると、リツコさんの知り合いみたいですけれど…」

 

そんな僕の言葉に、リツコさんは目を見開いてペンを落とす事で答える。

 

「母さん…」

 

声には出ないリツコさんの唇だけの呟き。

何時もクールな感じのリツコさんも、母親に対しては色々と思うところがあるのかも知れない。

そんな風に僕が感心している間にも、リツコさんは気を取り直し、

落としたペンを拾い上げて、僕の正面に座りなおす。

 

「ごめんなさい、シンジ君。母の名前が急に出たからびっくりして…」

 

すーはーと一回深呼吸をして、落ちつきをを取り戻したリツコさん。

僕はそこへ更なる追撃をかけることにした。

 

「本当にお母さんなんですね…。

 じゃあ、あれですか、ナオコさんの言ってた父さんと親子丼っていうのもきっと本当なんですね。

 それって二人とも父さんと…っていう意味なんですよね?」

 

 

その言葉に、今度はペンとクリップボードの両方を落とすリツコさん。

そして今度は落とした物を拾わずに、そのまま僕の両肩をガシっと掴んできた。

 

「シンジ君、相談の前に少し話があるのだけれど良いかしら?」

 

笑顔で僕にそう告げるリツコさん。

ただその笑顔が笑顔なんだけどすごい迫力で、僕は大慌てで首を縦に振る事しか出来なかった。

その後、僕とリツコさんはは色々と話し合って、謝ったり謝られたり約束したりした。

「さあ?私も上手く言葉で説明出来ないわ。

 シンジ君にはまだ解らないかも知れないけれど、ロジックじゃないのよ、男と女は」

ただ、父さんの何処が好きなのか訊ねる僕に、そう答えたリツコさんの表情が印象に残った。

とにかくリツコさんと話してみて、僕が色々と見えたり聞えたりしてるってことは理解してもらえたらしい。

あまり僕の事情を口外しないように、と注意ももらったしね。

そして僕はリツコさんの研究室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に向かう事にしたのは、ネルフの病院。

リツコさんとの会話の中で、今の綾波レイが入院してる事を聞き、

顔見せがてら、お見舞いに行く許可を貰ったのだ。

そして病院にむかう僕に、ぴたりとくっついて来るのは一人目の綾波レイ。

ナオコさんから結果的に助ける事になったのが気に入ったのか、

ここのところ僕にずっと着いてきてる。

といっても口数は少ないし、僕に抱きついてきても感触があるわけじゃないから別に邪魔ではない。

初号機とかネルフのメインコンピューターとか、一人目の綾波レイが苦手な場所以外は大概僕の傍にいた。

ただ、男子トイレの中にまで一緒に着いてくるのは勘弁してもらった。

僕がきちんと話せば言う事をきいてくれるので、多分良い子なんだとは思う。

もう、死んでるけど。

ちなみに、突き飛ばしてしまったナオコさんも、一人目の綾波レイほどではないけどちょくちょく見かける。

僕がもう突き飛ばしたりしない事を告げると、

多少愚痴交じりにでも、僕が知らないことを色々と教えてくれるようになった。

ただ、ネルフ内部の恋愛事情とかは別に聞きたくなかったけど。

何とか三課の課長とその部下が不倫してるって言われてもねぇ?

そんな風にナオコさんの役に立つのか立たないのか解らない話を聞いてる時は、

一人目の綾波レイが、僕にぎゅっと抱きついていたのは余談かもしれない。

そんなこんなで、今の綾波の病室の前まで辿りついた僕。

コンコンとノックしたけど返事はなく、仕方なく失礼しますと一言断ってから病室の中へ。

返事も無かったし寝ているのかな?と思っていたけれど、

綾波は寝ている訳じゃなくて、ベッドの上で半身を起こし部屋に入った僕をじっと見つめてきていた。

まるで他人行儀な綾波の態度だったけれど、僕はどこかしら懐かしさを覚えていた。

 

「…あ、起きてたんだ。

 いきなり、ゴメンネ、僕の名前は碇シンジ。

 君と同じチルドレンをやる事になったんだ。

 つまり、サードチルドレンってヤツだよ。これからよろしくね」


「……」

 

そんな僕の言葉に沈黙で返してくる綾波。

そう言えば最初の頃の綾波はこんな風だったな。

僕は前回に綾波と初めて会った頃の事を思い出していた。

でも、結局沈黙に負けたのは僕の方だった。

 

「あのさ、綾波。 いきなり親しげにしてくれとは言わないけど、

 そう頑なに黙られるとあんまり気分の良いもんじゃないよ。

 ひょっとして、僕の事を嫌ってる?」


「そんなことないわ、嫌うほど貴方を知らないもの」

 

僕の疑問を無表情ながら即座に否定する綾波。

まあ、会ったばかりでいきなり嫌われているわけじゃない事には少し安心した。

僕はわざと左右を見渡し、病室内に誰も居ない事を再度確認すると、

ベッドの綾波に近寄ってその耳元で囁くように口を開く。

 

「ところでさ、綾波が二人目って言うのは本当なの?」

 

その囁きに赤い瞳を見開くという解りやすい反応を返す綾波。

 

「どうして、それを」

 

動揺しているのか、かすかに震える声でそう聞いてくる。

僕は再び綾波の耳元で囁くように口を開く。

 

「聞いたんだよ、一人目の君に。

 綾波には見えないかな、僕の隣に立っている君と同じ瞳の色をした女の子が。

 その子が言うには、綾波レイには沢山のスペアがあって、

 一人目の綾波が死んだから二人目の君になったんだってね。

 つまりアレだよね、君はきっと普通の人間じゃない。

 そういう事なんだよね?」

 

そう続ける僕の言葉に綾波は完全に固まってしまった。

「おーい」とか呼びかけても目を見開いたまま全く反応を示さない綾波。

僕の心にちょっとした悪戯心が湧いてきて、僕は固まってしまった綾波の頬に手を伸ばす。

綾波の両頬を指先で摘み、上下左右にむにむにと動かして見る。

柔らかな綾波の頬は予想以上の伸びを見せ、僕はその事に少し感心していた。

 

「は、離して」

 

正気に戻ったのか、綾波がそんな声を上げたところで、僕は綾波の頬を摘んでいた両手をパっと離す。

 

「ゴメンネ。綾波が遠い世界に行っちゃったから、呼び戻したかったんだ。痛くしたなら、ゴメンネ」


「……」

 

僕の言葉に再び沈黙で答える綾波。

今度は僕の方を見ようともしない態度から、

僕はどうやら綾波の中で嫌いな人物として分類されたのだろうと推測した。

まあ、とにかく嫌われようが何だろうが、挨拶ぐらいはきちんとした方が良いと僕は思うわけで。

 

「君も普通の人とは違うみたいだし、ここに来てからの僕も普通じゃなくなったみたいなんだ。

 だからさ、改めて言うけど、同じ普通じゃない仲間同士で仲良くしよう」

 

ベッドの脇の椅子に腰掛けながらも語られた僕の言葉。

「ひょっとしたら、エヴァのパイロットって普通じゃない人を選ぶのかもね」

更にそう言葉を続けて思い出すのはアスカの事。

うん、確かにアスカも色々な意味で普通じゃなかったし、と僕は自分の言葉に納得した。

 

「どうかな?」

 

そして再び僕の方へと視線を向けた綾波にそう問いかける。

しばらくそうして視線を交わしていたけれど、綾波の方から視線を逸らしてしまう。

 

「私と貴方は、同じじゃないわ」

 

逸らした視線をベッドの上に落としながら、そんな言葉を口にする。

何て当たり前の事を…と思ったけれど、まあ綾波だし仕方が無いかと僕は納得した。

 

「そりゃ、そうだろうけどさ…。

 あのさ、綾波、僕らをノーマルアブノーマルで区分すると、

 二人ともアブノーマルに区分けされるだろう?

 そういう点で二人は同じだよねっていう意味で言ったんだよ。

 まあ、とにかく、そういうわけで、これからヨロシクね」

 

どういうわけなんだろう?

と自分でも疑問に思いながらも、僕は綾波に向けて左手を差し出した。

差し出したのが左手なのは、綾波の右腕がギプスで固定されてるから。

ただ、綾波はきょとんとした表情で、僕の差し出した左手を眺めてくる。

 

「とりあえず、握手から始めようっていう事なんだけど?」

 

そう続けると、綾波はすっと自分の左手を差し出した。

 

「じゃあ、これからよろしく」

 

言いながら僕は差し出された綾波の左手を握りしめる。

パシャ

そして綾波はそんな音を残して赤い水になった。

 

「えーと、なんでさ」

 

思わず漏れた僕の呟きに、答えてくれる人なんて居る訳が無かった。

 

 

 

続く


あとがき

…そろそろスタートダッシュも限界のくまです。

というわけで、今回はスーパーなシンジ君が父親のゲンドウ氏をやり込めるという話でした。

スパシン物としては外せない風物詩、と捉えていただけたら幸いです。

正直、コアなネタに走っていますし、解らない方も多いかと思いますが、スルーの方向で…。

それはともかく、自分の話を読んでいただいた方に感謝を。

そしてよろしければ、次の話も読んでやっていただければ幸いに思います。

あと、感想を頂けると嬉しかったりします。

それではまた。

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