幸せ







2207年

「ふう、今日の洗濯物もこれで終わりですね。」

とある家の庭にて洗濯物を干していた銀色の美しい髪を腰まで届かせた女性がのびを しながら言った。

この女性の名はテンカワ・ルリ(旧姓ホシノ・ルリ)先の火星の後継者事件をたった 一隻の艦で鎮圧させた元ナデシコC艦長、連合宇宙軍少佐その人である。

その事件のせいで、ルリは強大すぎる能力を示したため、連合宇宙軍を追われたため に今は平凡な生活を営んでいる。

「お母さん、遊ぼうよ!」

「ずるいよマミ、昨日遊んでもらってたじゃないか。今日は僕が遊んでもらうん だ。」

「うるさいわよアキラ、アキラはお父さんに遊んでもらえばいいでしょ。だから遊ぼ うよお母さん!」

「マミはいつもそればっかりじゃないかぁ。マミばっかりずるい!」

「アキラのくせに生意気よ!今日もお母さんはマミと遊ぶの!」

年のころは4,5歳といったところだろうか。母によく似た銀色の綺麗な髪をなびか せた少女と黒い髪に少し茶色がかった少年がバタバタと縁側に出てきた。

「こらこら二人ともケンカばかりしててはいけませんよ。」

ルリはそんな二人を優しい瞳で見つめながら言った。

「だってお母さん、マミが自分ばっかりずるいんだよ。僕はお母さんと遊んじゃだ めって言うんだ。」

「アキラは弟のくせに生意気なの。お母さんマミと遊んでくれるよね?」

「弟っていったって双子なんだからかわらないじゃないかよ!」

「あなたたち、一緒にって選択肢はないのですか?まったく毎日毎日飽きないです ね。」

ルリは二人のケンカをあきれたようにながめながら言う。どうやら日常茶飯事のよう だ。

ついにはお互いのほっぺたをつかみあいになった。

「ふぁふぃふぁのふふぇひふぁふぁふぃひふぁふぉほ!(アキラのくせに生意気なの よ!)」

「ふぁひふぁっふぇふふひほ!(マミだってずるいぞ!)」

「あなたたち、いいかげんにしなさい。ほら、こんなに赤くなるまでひっぱって・ ・。いつも言ってるでしょう、相手のことを考えなさいって。」

ようやくルリが二人を引き離す。

「「だってぇ〜。」」

二人は自分の頬をさすりながら同じように言う。さすがに双子といったところだろう か。

それに気づくとお互いの顔を見合わせ、ぷいとそむける。

「わかったわ。何をして遊んでほしいの?」

「あやとり!」

「キャッチボール!」

マミ、アキラはそれぞれの望みを言う。

「困りましたね。どちらかしかできませんよ。お母さんは一人なのですから。」

「「マミ(僕)と!」」

またも二人の声が重なる。お互い次の言葉を言おうとする。ここはマミのほうが先 だった。

「だからアキラはお父さんに遊んでもらえばいいじゃない!キャッチボールなんか男 の子のあそびよ。」

「そんなの関係ないよ!マミこそ昨日もあやとりしてたじゃないか!」

再びつかみあいになりそうなところを今度はルリが制止する。

「あなたたちいいかげんにしなさい。ケンカばかりしてたら遊んであげませんよ。」

「じゃあお母さんどっちと遊ぶの?」

マミが我先にと一歩前に出る。女は強しである。

「たしかにお母さんキャッチボールはできないから、アキラはお父さんと遊んでもら いなさい。今日は休みなのですから。」

ルリがアキラを諭すように言う。

「だってお父さんはいつもお仕事で疲れてるから・・・。」

ルリにはアキラが何を考えているかがわかった。

「(まったく、そういう優しいところはあのひとそっくりなんだから)」

「今日は久しぶりのお仕事お休みだから・・・えっと・・その・・・えっ!?」

アキラがどこか言いにくそうにしていると、突然視界が変わった。

「そんなことないぞ、アキラ。」

部屋の中から出てきた彼らの父であるテンカワ・アキトがアキラを抱き上げ肩車をす る。

「おはようございますアキトさん。今日はゆっくりしていてもよかったのですよ。」

「「お父さん!」」

ルリがアキトに向かってねぎらいの言葉をかける。

テンカワ・アキト、火星の後継者事件のあとコロニー落としの重罪人としてS級犯罪 者の指名手配を受けた人である。しかし彼の身の上を知った民衆、そしてミスマル・ コウイチロウの手引きのより社会的に罪が取り消された。しかし彼の妻であったミス マス・ユリカには遺跡との融合の後遺症か、アキトの記憶のみ完全になくなってい た。もはや生きる気力をなくしたアキトを支えたのが今の妻であるルリであった。

「おはようルリ。おはようマミ、アキラ。」

「「おはよう!お父さん!」」

二人の子供たちの言葉に極上の笑顔で答える。

「二人が騒がしかったせいで起こしてしまったのですね。二人ともケンカばかりして るから・・。」

「いいんだよルリ。それにアキラはお父さんのことを気遣ってくれてたんだもんな。 ありがとうアキラ。」

アキトはアキラの頭を優しくなでながら言った。

「お父さん・・。」

アキラは驚いた表情でアキトを見たがすぐに気持ちよさそうに目を細める。

「アキラばっかりずるい!マミも!」

よこで面白くなさそうに見ていたマミが身をのりだしてくる。

するとアキトのもう片方の手のひらがマミの頭に伸びてくる。マミも気持ちいいのか 目を細め幸せそうだ。

「アキトさん、せっかくの休みなんですがアキラとキャッチボールしていただけませ んか?」

「わかったよルリ。じゃあアキラ、キャッチボールするか!」

「ほんと?お父さん?やったぁ!」

「え〜!アキラずるい!マミも!マミも!」

この二人、母だけではなく父のことも同じくらい大好きのようだ。

「よし!3人で遊ぶか!」

「「うん!」」

さっきまでのケンカはどこへやら、二人は仲良く父のあとについって行った。

ルリはそんな3人をいつまでも眺めていた。





その夜、遊びつかれた二人はすでにかわいい寝息を立てていた。

「すみませんアキトさん、二人の相手をさせてしまって。」

ルリが寝室のベッドに入りながらそういった。

「きにするなよルリ。俺はめったに遊んでやれないんだからさ。」

「でも・・・んんっ・・」

なにかを言いかけたルリの唇をアキトのそれが塞ぐ。

「何も言わなくていいよ。俺だってマミとアキラがとても大事なんだ。ルリばかりに 世話をさせるわけにはいかないよ。」

「アキトさん・・・。」

ルリは頬を赤く染めそういうとアキトのそばに体を寄せた。

「アキトさん子供たちばっかりで全然私の相手をしてくれないんですね。」

ルリはアキトをじと目でにらみながら言った。

「そんなことないって、ルリも大事だよ。」

「あの子達と一緒なんですか?」

ルリが目を潤ませながらアキトに尋ねる。

「ちょっ・・自分の子供相手になんかヤキモチやかないでよ。」

アキトは困ったような表情を浮かべるが、ルリの肩が震えているのに気づき慌てる。

「ゴメン、泣かないでよルリ・・・ルリが一番だって。・・・・愛してるよ、ル リ。」

「ふふふ・・・。」

なぜかルリのほうから笑い声が聞こえる。そう、ルリは泣いていたのではなくおかし くて肩が震えていたのである。

「あっ・・・・ルリだましたな。」

「だまされるほうが悪いんですよ。この場合。」

そういうとルリはいたずらっぽく微笑んだ。

「言ったな、この!」

そういうとアキトはルリをくすぐりだした。

「きゃっ・・・もう、アキトさん。怒りますよ?」

「先にやったのはどっちだっけなぁ?」

「もう知りません!」

そういうとルリは顔をそむける。

「こっちだって知らないね!」

アキトの同じように顔をそむけた。

「・・・・・」

「・・・・・」

しばらくの沈黙が場を包む。

「ふふふ・・・・」

沈黙を破ったのはどちらからともわからない笑い声だった。

「ふふふふふ・・・」

「あはははは・・・」

その声は次第に大きくなったいったが、ルリが静止をかける。

「しっ・・・子供たちが起きちゃいますよ。」

「ごめん。」

そういうとまたも沈黙がおとずれる。

沈黙を破ったのはアキトだった。

「ルリ、ほんとのよかったのかい?俺なんかと一緒になって・・・っ!?」

ルリはアキトの唇に自分の唇を重ね黙らせる。そして唇を離しながら言う。

「それは言わない約束ですよ。私はアキトさんが好きだったんですから。だいたいな にを今さら・・・・。」

「そうだな。ごめん、馬鹿なこと聞いて。」

「ホント馬鹿なことですよ。私がアキトさんを拒むわけないじゃないですか。」

「うん。ごめん。・・・もうひとつ聞いていいかい?」

「なんですか?」

「ルリ、君は今幸せかい?」

ルリはそれを聞くと少しとおい目をした。

「(アキトさん、そんなところは昔から変わっていないのですね。自分のことで大変 なのに人のことを心配する優しさ。私を引き取ってくれたアキトさん、一緒に屋台を 引いたアキトさん、勘違いしてとんでもない方向に暴走しだすアキトさん、暖かく包 んでくれるアキトさん、そんなアキトさんは一度事故でいなくなった。あのときの私 は一人だった。でも今は、アキラがいる。マミがいる。そして・・・大好きなアキト さんが隣にいる。だから胸を張って言えますよ)」

ルリは最高の笑顔を浮かべ、アキトにキスをして言った。

「はい。幸せです。」





FIN







あとがき


どうも、紅です。

いかがでしたでしょうか?今度は調子に乗ってオリキャラまで出してしまいました。

一応劇場版のafter、そして「妖精、その心は今・・・」の劇場版をはさんだ続編の つもりで作りました。少しだけリンクさせたのですがわかりましたか?

今回のssは、幸せってなんだろう?と思い立って書きました。幸せは人それぞれ違 いますからね。その辺がうまく表現できていたら、と思います。

なにぶん未熟者なので自信はあまりありませんが・・・。

では、またお会いできたらと思います。

ありがとうございました。


感想
紅さん早くもご新作。今度はルリ…っと様の結婚生活編の様だね。
ふふふふ
え?
つい に! ついに来ました! 私がテンカワ・ルリとなってアキトさんの子をこの手に抱く 時が…
うわ、顔面が崩壊している(汗) そんなに嬉しいの?
嬉しいに決まっているでしょう!どこかの誰かは一向にこういうシーンを書いて くれないんですから…
私の野望はアキトさんとの子供で
サッカーチームを作る事だと言ったはずです!
そういや、昔そんな事言われた気も…
シル フェニアの作品では無理かと思われた結婚ですが、ついにかなう事となりました。紅さんには感謝感激です♪ 
はしゃいじゃってまあ…
うふ ふ…なんとでも言いなさい今は機嫌が良いので見逃してあげます。
それは嬉しいが…何だか不気味だな…
うふふ…アキトさんったら、激しいんですから…ポ
うあ妄想が…

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