「・・・というわけなんだよ。」

「いきなりそんなこと言われてもこれっぽちもわからないんですが・・・。」





機動戦艦ナデシコ


〜For Dearest Sister〜



第二話
「雪谷食堂は任せとけ!?」






〜雪谷食堂二階〜


ここは雪谷食堂の二階の母屋である。部屋にはアキトとルリが向き合って座ってい る。つもる話もあるだろうとサイゾウが気を利かせてくれたのだ。そして冒頭の会話 へと至る。

「アキトさん、・・・というわけ、といわれてもわかるわけないじゃないですか。」

「そう?まあ、まだ何も説明していないからわかるわけないんだけどね。」

そう言ってアキトはハハハと笑う。ルリは面白くないのか若干じと目だ。

「ちゃんと説明してくれますよね?(怒)」

「ル、ルリちゃん・・・(汗)。(俺の前で表情豊かになったのはいいけど・・・そ ういう怒り方は怖いじゃなくてかわいすぎるよ・・・。)」

そう、ルリは怒っているのである。顔・・・いや、頬を膨らませ、上目遣いに覗き込 むようにして。その姿はなんともかわいらしかった。

「いったい、いつのまに地球に来たんですか?地球に来る予定なんてなかったはずで すが。」

ルリは表情を元に戻しあらためてアキトに聞いた。

「それが・・・わからないんだよね。気がついたらサイゾウさんが目の前にいたんだ よ。」

アキトは両手をお手上げといった感じであげた。

「えっ!?じゃあどうやって?・・・・それがわからないんでしたね。では、その前 はどこにいたんですか?」

ルリは驚愕の表情を浮かべアキトにせまる。アキトはそれを制止して口を開く。

「気を失う前は、ユートピアコロニーの地下シェルターの中だった。バッタに囲まれ てもうだめだと思ったところまでは覚えてるんだけど・・・・。」

「なっ!?ユートピアコロニーですって!?・・・・。あそこは木星トカゲに襲われ て壊滅したってデータで見ましたよ!そこにいたっていうんですか!?」

「うん・・・。確かにあそこはもう・・・。」

今度はルリの顔が蒼白に染まる。アキトも思い出したのか少し表情に影を落とす。

「じゃあもしかしてここにいるアキトさんは・・・幽霊!?」

「それはないんじゃないかな?足だってあるし、ほら、触れるし。触ってみる?」

「結構ですっ!!・・・(赤)」

アキトがそう言っておなかを出してルリに触らせようとすると、ルリは顔を真っ赤に してうつむいた。

「そっ・・・そう?(汗)とりあえずこれからどうするかだけど、サイゾウさんにこ こにおいてもらえることになったけど・・・ルリちゃんは今どこで生活してるの?」

「私ですか?私はネルガルの研究所の寮みたいなところにいますが、どうしてです か?」

アキトは話を変えようとルリに問うとルリからはそんな答えが返ってきた。

「いや、別になんとなくだけど・・・。」

「嬢ちゃんもここに住んだらどうだい?」

アキトがそこまで言ったとき、部屋の入り口から声が聞こえてきた。

「えっ!?・・サイゾウさん・・・。聞いてたんですか?」

「わりぃが聞かせてもらったよ。事情はわかったから俺からの提案なんだが、・・ど うだ?」

そう言ってサイゾウは部屋に入ってきた。

「そんな・・・俺だけでも悪いと思ってるんですよ!それなのにもう一人なんて・・ ・。」

「そんなもん一人も二人もかわんねぇんだよ!おめぇには一部屋貸すつもりだったけ どその部屋を一人で使おうが二人で使おうがおめぇの勝手じゃねえか。大体おめぇに は聞いてねぇ!・・・嬢ちゃんどうだい?悪い提案じゃねぇと思うんだが。」

「私ですか・・・?私は・・・・。」

サイゾウにそう言われルリは少し困ったような表情をうかべ、言葉を詰まらせる。そ してチラリとアキトに目をやる。アキトもそれに気づいたのか目配せをする。

「ルリちゃん・・・。ルリちゃんの好きにしていいんだよ。」

「ほら、アキトもああ言ってるしよ。どうする嬢ちゃん?」

アキトとサイゾウに促され、ルリは顔を上げ口を開く。

「私は・・・・。私はここに住みたいです!」

「ルリちゃん・・・。いいよ。一緒に住もう。」

アキトはそう言ってルリを抱きしめる。サイゾウもそれを微笑ましそうに眺めていた が、何かを思いついたような顔になる。

「嬢ちゃん、ここに住むのはかまわねぇけどよ、今いるとこにはちゃんとことわった 方がいいんじゃねぇか?」

「俺もそう思うよ。そうだな・・・今日はもう夕飯時だからお店のほう手伝わなきゃ いけないから明日一緒に行ってあげるよ。」

「はい。そうします。今日のところは外泊にでもしておきますね。」

そうルリが何気に言った一言に反応したものがいた。

「ルリちゃん・・・外泊だなんて・・・・(赤)」

「えっ!?・・・・あっ・・ボッ(赤)」

アキトの一言で二人とも真っ赤になる。サイゾウはそれを見て苦笑しあきれたように 言った。

「そのぐらいのことで何やってやがるんだ・・・。アキト!おめぇの実力を見てやる から下に来い!おいっ!!きいてんのか!?」

サイゾウのその言葉でアキトは我にかえる。

「・・・はっ!?わかりましたサイゾウさん!ルリちゃんここで待っててくれる?」

アキトはルリにそう言うがルリは首を横に振った。

「いえ、私も行きます。ただでおいてもらおうなんて思ってないですから。それに、 久ぶりにアキトさんの料理するところが見たいんです。」

ルリは最後の言葉を言って恥ずかしかったのか顔を赤くしながらアキトについていっ た。



〜ネルガル会長室〜


「マシンチャイルドのホシノ・ルリが本日外泊するとのことです。」

「ん〜?いいんじゃない?研究所にカンヅメじゃあ気がめいっちゃうからねぇ。たま には気分転換も必要さ。・・・でも彼女こっちに知り合いなんていたっけ?」

書類を片手にしたキャリアウーマン的な服装をした女性が、髪の長い男にそう言う と、男は不思議そうに返す。

「彼女の居場所はこっちで把握しているので問題はないかと・・・。」

「まあいいさ。それより例の計画のパイロット候補集まったかい?」

男が目の前に積み上げられた書類の一枚に目を通しながら言った。

「いえ・・・それが、IFS対応のためになかなか思うようにいかなくて・・・。」

「地球じゃIFSは普及していないからねぇ。何とかなるんじゃない?そのうちいい ことが転がり込んでくるさ。」

「それはなにを根拠に?」

女性が男の机の上にさらに多くの書類をつみあげながら言った。

「勘さ。僕の勘ってよく当たっちゃうんだよね。それにしても・・書類、多すぎな い?(汗)」

「あなたが仕事をためているからですよ!まったく・・・ほっておいたらいつになっ ても終わらないんだから。それじゃあ私は用があるので失礼しますが、仕事ちゃんと 片付けてくださいね。」

そう言って女性は部屋をあとにした。

「まったく・・エリナ君ももう少し可愛げがあれば嫁の貰い手もつくだろうに・・ ・。勘って言ったけど結構確信に近いものがあるかもしれないけどね。・・・おっ と、むだ口叩く前に片付けちゃおっかな。夜の街が僕を読んでるんだよね。」

そう言って男は仕事に取り掛かった。



〜雪谷食堂〜


「筋は悪くねぇな・・・。だが俺に言わせりゃまだまだ半人前だがよ。そこら辺の名 前だけのやつとはいい勝負だ。」

「ありがとうございます!正直そう言ってもらえるとは思ってなかったっす。」

アキトの作ったチキンライスを食べてサイゾウがそう判断する。アキトは自分の料理 を認めてもらい嬉々としている。ルリはアキトの調理の様子を楽しそうに眺めたあ と、その料理を口に運んでいた。

「しかし若いのにどうやってここまで?誰かの下にでもついてたのか?」

サイゾウが不思議そうに聞くと、アキトが首を横に振る。

「いえ、でもあえて言うならルリちゃんかな?」

「嬢ちゃん?嬢ちゃん料理できんのかい?」

アキトの言葉を聞きサイゾウがルリのほうに顔を向ける。

「私、料理できません・・・・。」

サイゾウに見られ恥ずかしかったのか少し体を小さくしてルリが答える。やはりまだ 人見知りしているようだ。そんなルリを見たアキトが助け舟を出す。

「料理を教えてもらうわけじゃないっす。食べて辛口の評価をしてくれるんです。だ から何とかしておいしいって言わせたくてがんばったのがきっかけかもしれないで す。」

アキトが少し懐かしむようにそう告げる。

「なるほどな・・。料理人は客の声を聞いて上達するもんなんだよ。それをしっかり 覚えとけ!」

「はいっ!!」

「あのぉ・・・。」

アキトとサイゾウがそんなやり取りをしていると、横からルリが話しかけた。

「ん?どうした嬢ちゃん?」

「・・・私も何か手伝えることないでしょうか?」

ルリは恐る恐るサイゾウにそう尋ねた。

「嬢ちゃんに?料理できねぇなら無理することねぇぞ。」

サイゾウはルリの申し出を断るがルリは諦めなかった。

「私、何もせずにお世話になるのは嫌です。だからなにかさせてほしいんです。」

「そこまで言うなら・・・。ならオーダーでもとってみるか?なれりゃ料理も持って いってくれれば助かるな。」

「ほんとですか・・?ありがとうございます。」

ルリはそう言ってぺこりとおじぎをした。するとアキトがルリに話しかける。

「ルリちゃん、無理しなくていいんだよ?研究所で仕事もあるんでしょ?」

「いえ、私もう決めましたから。ここにいるときはお店手伝います。」

ルリはアキトの言葉を制止してアキトに向き合う。

「嬢ちゃんもそう言ってんだ。やらせてやんな。それにおめぇが口出しすることじゃ ねぇしよ。」

サイゾウはルリを後押しする。するとアキトはついに折れた。

「わかったよルリちゃん。俺はもう何も言わない。でもつらかったらいつでも言うん だよ。」

「はい、わかりました。」

ルリは嬉しそうにアキトに答える。サイゾウもそれを見て何かを思い出したように母 屋のほうへ入っていった。アキトとルリはそれを不思議そうに眺めているとサイゾウ が何かを抱えて戻ってきた。

「そうと決まれば早速これから働いてもらうからな!嬢ちゃん、サイズあわねぇだろ うがこれで我慢してくれ。まさかその服で手伝うわけにはいかねぇだろう?」

そう言ってサイゾウがルリに手渡したのは割ぽう着だった。どこか20世紀のおばあ ちゃんを髣髴させるその服は22世紀も終わりに差し掛かったこの時代では珍しいも のだった。

「うちはひらひらのスカートなんざでつとまるような上品な店じゃないんでね。いや なら着なくてもいいんだが・・・。」

「いえ、これでいいです。ありがとうございます。早速着替えてきますね。」

そう言ってルリは母屋のほうへ駆けていった。それをアキトは優しい目で見送った。

「おいっ!!ぼさっとしてねぇで手伝いやがれ!」

「はいっ!!」

アキトはそう答えると先ほどサイゾウに借りたエプロンをかけながら厨房へと入って いった。


しばらくするとルリが母屋から出てきた。その姿は10歳のルリにはあまりに不釣合 いでサイズもブカブカだったがルリが着るとある種の趣をかもし出していた。

「あの・・・。似合ってますか・・・?」

そう言ってルリは顔を赤くし恥ずかしそうにうつむいた。その姿には多くの男性が萌 えを感じること間違いなしだった(笑)

「・・・・・はっ!?に、似合ってるよ、ルリちゃん。(赤)」

アキトは一瞬見惚れて動きが止まるがすぐに何事もなかったかのように答えた。しか し顔の赤さはどうしようもなかった。

「嬢ちゃんよく似合ってやがるぜ!これからよろしく頼むぜ!」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

そう言ってルリはぺこりとおじぎをする。

こうして雪谷食堂は厨房にアキト、表にルリを加えた三人で新たにスタートをきっ た。常連客はルリを大いに気に入り「小さな天使」と称し口コミで広がったルリの評 判を聞き訪れる客も増え大いに売り上げに貢献した、というのはまた別の話。




続く








あとがき

紅「ども、紅です。」
ルリ「アシスタントのホシノ・ルリです。こんな駄文に付き合ってくださってありが とうございます。」
紅「なんかトゲのある言い方だね・・・。もしかして前回のことまだ怒ってるの?」
ルリ「別に・・・。子供じゃありませんので。」
紅「(十分子供じゃないか・・)」
ルリ「何か・・?(怒)」
紅「う・・・。なんでもないです。」
ルリ「よろしい。それでは解説のほうしましょうか。」
紅「それこっちの台詞なのに・・・。」
ルリ「・・・バカは無視して話を進めましょう。アキトさんがコックを目指す理由ま でいじって・・何考えてるんですか?」
紅「別にルリちゃんのためだけがすべてじゃないかもしれないでしょ?ルリちゃんに 料理を作ったってことはそれまでに作ってたって事なんだからさ。」
ルリ「・・・まあいいでしょう。どうせ突っ込まれることですから私が問いたださな くても支障はないでしょうし。大体メールで感想いただいたからって浮かれすぎなん ですよあなたは。」
紅「だってものすごく嬉しかったんだよ。嬉しさのあまり書き上げてしまったって感 じだし・・・。teteさん読んでくれてますか?」
ルリ「それは時量師さんの真似ですか?あなた確かあの時も・・・。むぐっ!?」
紅「わ〜!わ〜!それはいっちゃダメだよ!!」
ルリ「・・・(怒)」
紅「わぁっ、ごめんなさい!!」
ルリ「次はありませんよ(怒)話は戻りますが割ぽう着って何ですか?まさかあなたの 趣味じゃないでしょうね?」
紅「それは違うよ。雪谷食堂の自分なりのイメージからきたものだよ。ちゃんと三角 巾つきだけどね♪」
ルリ「もういいです。それではシルフェニアのルリさんにおかえししますね。次回も よろしくお願いしますね♪」
紅「また台詞取られた・・・(泣)」


感想
今回はほのぼのだね。二人ともこのまま生活するとなれば更に親密になりそう…
はい 良い感じです♪ ラブまで行っていな いのは少し寂しいですが、初々しさが出ています♪
ここまでは、何事も無かったみたいだけど…次回はナデシコ出航なのか、それとも雪谷食堂繁盛記になるのか楽しみだね。
どち らにしても、もう二人の間には誰も入れないんですから私とアキトさん のワンマンショーですね(喜)
いや、あのね(汗)
ユリカさんもメグミさんもリョーコさんももう敵じゃないです!!
…(滝汗)
後は式場の予約だけですね♪

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