私達は…以前と同じような世界を
<以前>とは違った形で歩んでいます。
言葉にするのは簡単ですが…
“二度目”の歴史を歩むというのはおかしな感じです。
自分だけが相手の事を知っていたり、
以前とは違う歴史の流れに戸惑ったり…
いっその事、全然違う世界なら戸惑わずにすむのに…
機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜
第六話
「『
初めらしく』
でいこう」前編
明日香インダストリー・オオサカシティ・ラボラトリィ――
巨大な工場施設を持つ明日香の研究所の一つで、
その規模はおよそ百万坪(約3.3平方キロ)という広大な敷地を誇る。
その中には巨大な港を持ち、十隻単位でタンカー等を停泊させておく事が可能であり、
ドック施設も六つ存在している。どれもこれも数百m級の船用の施設だ…
そのオオサカ・ラボでは、現在<新型戦艦>の開発が行われている。
陣頭指揮を執っているのは“常に驚かれる新発明”をモットーとしている男、ウリバタケ・セイヤ。
彼がここに来た事で、新型戦艦の開発が明らかに三ヶ月は早まったと言われている…
「よーし! 今日はここまで!」
ウリバタケはメガホンを使ってドック内の作業員に終了を告げる。
今はもう真夜中だ…手を止めた作業員達も皆、へとへとになっていた。
彼等がそれぞれ帰宅の準備を始めるのを見届けて、ウリバタケは事務所の方に移動しようとドックを出る。
しかしドックを出た所に、スーツを着こなした銀髪の少女が待っていた…
彼女を見てウリバタケは少し驚いた顔をし、話しかける。
「ん? ホウショウちゃんじゃねえか。どうしたんだ?」
「はい、失礼かとも思いましたがお迎えに上がりました。そろそろネルガルがスカウトに動き出す筈です…
貴方は“明日香からの出向”という事が知られないように偽装しなければなりませんので、早めに帰宅して頂かないと」
「ああ、そうだな…アキトとはそういう話になってたんだったな。
…しかし、何だってあいつはこれだけ影響力のある明日香の船が出来るまで待てなかったんだ?」
「さあ、私の口からはなんとも言えませんが」
「ん? ああ、企業秘密ってやつか? まあ良いが…
船の方もどうにか一段落ついた所だ。後はここの作業員達でも二ヶ月位で仕上げられる筈だ」
「もうそこまで出来ているのですか…あと三ヶ月は見ておく様に言われていたのですが…」
「まあ、ここの奴らもそこそこ優秀だよ」
「有難う御座います」
ホウショウは事務的な表情ではなく、心底うれしそうに微笑んだ。
彼女にとって、明日香の社員は家族同然なのだ…
ウリバタケは照れ隠しなのか、鼻を掻いてそっぽを向くのだった…
――ネルガル本社ビル――
暗い室内で、二百インチはあろうかという巨大なスクリーンに
木星兵器や敗退する連合宇宙軍が次々と映し出される…
ゴートは本社の大会議室に呼ばれたのは初めてであった。
会議室内には重役と思しき人物達がずらりと勢揃いしている…
自分の横に居る男、ミスター…いや、最近はプロスペクターと名乗っているちょび髭の男に連れてこられたのだ。
そうしてただただ沈黙していると、プロスペクターが投影されたスクリーンに合わせ、話し始める…
「第一次火星会戦敗退から一年余り。既に火星と月は完全に敵の勢力下…地球も時間の問題に過ぎない…」
唐突に始まった戦争に関する考察に耳を傾ける事無く、ゴートは質問を投げかける…
「質問があります」
「何だねゴート君?」
重役の一人が眉をひそめながら言う…
「要するに私に何をしろと」
今度はバーコードのような頭に眼鏡をした重役が答えた。
「<スキャパレリプロジェクト> …聞いた事があるね?」
「我々の中でも従軍経験のある君を推薦する者が多くてね…」
「私を? それは、軍需計画なのですか?」
重役達の言葉に疑問を覚えたゴートが無表情のまま聞き返したが、
プロスペクターが横合いから声をかけて来た…
「まあ、それは兎も角、今度の職場はおなごが多いよ〜。
で、ボーナスも出る。ひい…ふう…みい…よう、これ位♪」
ゴートも最初は何の事かと思っていたが、つまりは“この事はこれ以上聞くな”と言う事なのだろう…
ならば、別の事を聞こうとゴートは口を開く。
「一つ聞いて良いですか?」
「何だね?」
「それって、税抜きですか?」
「……………」
大会議場に独特の沈黙が満ちるのだった…
――ホテルグランシュナーデ・屋上展望レストラン――
現在、この場は貸切だった。
そこでは二人の男女が話をしている。
…とはいえ、とても恋人同士には見えないのだが…
ややあって、その一人であるマッシュルームカットの男が口を開く。
「アタシに手を貸して、あんた達に何の得があるって言うの?」
それに対し、金髪のロングヘアーをした女性は答える…
「いえ…私達は連合軍に“協力”したいと申しているだけです」
「どちらにしろ、船を動かすには人員が要るわ…ネルガルにそんな人員いないでしょ?
だから結局、私達の物になるしかないの」
「それはどうでしょう?
我々の方にはネルガルが人材発掘に動き出した、と言う情報が入ってきているのですが…」
「どうせ付け焼刃よ。まともに動かせる筈無いわ」
「そうかもしれません…しかし、ではなぜ“二十名もの白兵戦要員の帯同”が許可されたのでしょう?」
「まさか…あの船がそれだけの能力を持っているって言うの?」
「ええ。我々が調べた所によると、チューリップを楽に破壊できるだけの性能があの船にはありますわ」
マッシュルームカットの男は、相手の調査能力に息を呑んだ…
「…だとしても、二十名もいれば事足りるわ…」
「はい。ですから私達は保険と言う事で、必要になった時にだけ手を貸します。代価は必要としません」
「なるほど…考えてみればアンタ達としても、ネルガルにそんな船を飛ばされては困るものね…」
「そう受け取ってもらって構いません」
「分かった。協力してもらう事にするわ…
ただし、私達だけでは駄目な時だけよ」
「はい、それはもう」
二人は満足そうに会話を終える。
お互いに相手を利用しようと考えている事は同じだが、金髪の女性の方が一枚上手の様だった…
ヨコスカシティ内、ネルガルの資本を使って用意された教会…
この教会はいわゆる一般宗教ではなく、月の巫女達の寝泊りする<聖蓮教>の教会だ。
聖蓮教は宇宙をはすの花に例えた宗教で、
いずれ人は宇宙へと帰る事と、それを導く巫女の存在を説く宗教である…
その巫女の数は七人とされ、現在“八人目”が居る事は非常事態といってもいい。
しかし八人目の巫女は、いつの間にか彼女達のリーダー的存在になっていた。
八人目の巫女…三年前、突然神殿内に現れた少女…
聖蓮教の巫女達はこの少女を受け入れ、神聖視すると共に、年下の少女を可愛がった。
しかし、彼女が目的を持って現れた事は巫女達も気付いていた…
<リトリア・リリウム>
それが、八番目の巫女を名乗る事となった少女の名前。
彼女は奔放にして、一本芯が通っているこだわりを持っていた…
ナデシコに乗る…最近の彼女はその事ばかり口にしている。
そして…最近、毎日恒例になっている言葉を、お付きの女性にするのだった……
「私、ナデシコに乗ろうと思うの」
「何を言うのですか! 貴女は聖蓮教の中心的存在です!
今貴女が出て行ったら、私達はどうなってしまうか…
貴女にも分かるでしょう!?」
「う〜ん…大丈夫だと思うな。私なんて三年前にやってきただけの新参者だし…
それに私、宇宙に行くんだから宗教の真理にもかなってるよ?」
「確かにそうですが…今、私達の心の支えは貴女なんです…」
「行かせてあげなさい」
その声をかけたのは、八番目の巫女と同じような服を着た40代の女性だった。
「エネシア様…」
「第八の巫女・リトリア…貴女の旅に蓮の導きがあらん事を」
「はい! エネシア様、ありがとうございます!」
そう言うと、リトリアと呼ばれた少女は自分の部屋に飛び込んでいった…
「本当に行かせて良かったのですか?」
「人は誰でも<生きる目的>と言うものがあります。
彼女は既にそれを知っているのでしょう…
今ここで妨げたとしても、いつかきっと…彼女は自分でその道を選び取る筈です」
「はあ、そんなものでしょうか?」
「はい」
ドタバタとした音が部屋から聞こえてくる事を聞き流し二人はその部屋を微笑みながら見守っていた…
「先ずは人材が必要だね〜」
「人材?」
ゴートはオウム返しに聞く…
そもそも、彼はまだプロジェクトの詳細を知らないのだ。
一口に人材と言われても、どんな人材だか分からない。
それに対し、プロスぺクターは振り返りざま眼鏡を光らせ…
「そう、人材! 最高の! …多少人格に問題があってもね」
そう言って、プロスぺクターは先に歩き始めた…
「はい、ごめんくださ〜い」
ゴートがその店のシャッターを上げると同時に、プロスぺクターが挨拶をする。
…しかし、そこには目指す人物の姿は無かった。
「どなたでしょうか?」
「ああ、奥さんですね…ウリバタケ・セイヤさんはいらっしゃいますか?」
「主人ですか…主人は…」
「ちょっと待ったー!」
ズザザ
ザー
プロスぺクター達の後ろに滑り込んでくる影があった…
「ああ、あなたが…実は」
「よし行こ! 直ぐ行こ! ぱっといこう!」
「いえ、あの…」
「スカウトだろ? 待ってたんだよ! 俺もいつか来るんじゃないかと思ってたけど
な!」
「しかし、まだ条件面の確認とか…」
「いいのいいの! あいつと別れられるんなら、地獄で
もいい…」
勢いに押されっぱなしになってしまうプロスぺクターだった…
ゴートが話しかけて十分で、ミナトはスカウトを受ける事を決めた。
プロスに、彼女は私よりもあなたの方がスカウトしやすいでしょうと言われ、その通りにした結果だ。
自分は口下手な方だと思っていたのだが…何が良かったのだろう?
ゴートがそう思っているうちにも、ミナトと社長との会話は進んでいる様だ…
「本気なのかい? そんなに社長秘書って嫌なの?」
「っていうか〜、やっぱ充実感かな?」
「さぁ、戦いましょう!」
「よーし行くぞ!」
「「おー!」」
一通りの台詞が終わり、メグミは言葉を待つ…
「はい、OK!」
「「「お疲れ様でしたー!」」」
挨拶を済ませて帰ろうとした時、メグミに声がかけられた。
「メグミちゃん、お客さん。ネルガルの人だって」
そう言って指差された先に立っていたのは、プロスとゴートの姿だった…
「はいルリちゃん、お弁当」
「すみません」
アキトに弁当を渡されるルリ…四ヶ月前までジャンクフードばかりだったが、
アキトの家に住むようになってからは、少しずつ食事をするようになっていた。
周りが皆“自分と同じ様な存在”だった事も効いているのだろう…
しかし、彼女は“もう一人のルリ”にコンプレックスを感じていた…
オペレーターIFS使いとして、ラピスやアメジストになら何とか対抗できるが、ルリだけは対抗できない。
…自分はその為に育てられたと言うのに…
もちろん、彼女はその事を認めていない。
別に一番にならなければならない訳ではないと、分かってはいるのだ…
しかし、心の奥底に“それ”は潜んでいる…
故に、彼女は家族的な環境に変わったにもかかわらず、一向に馴染もうとしなかった…
「バカ…」
口をつい出てくるのはその言葉…
もっとも、それも仕方ない事だろう…
連日誰かしらと漫才を繰り広げているアキトを見ればその言葉も出ようというもの。
それでも、少しはそれを見て笑える余裕が出てきてもいた。
そして、今日はネルガルのスカウトが来る日だった…
「お邪魔しますよ」
「どうぞ」
アキトが受け答えをする。
しばらく会話をしていたが、その後ルリに向き直った…
「ルリちゃん、本当に良いのかい?
行きたくなければ無理にとは言わないけど…どうする?」
ルリは驚いた。まさか選択を任されるとは思わなかったからだ。
いくら家庭的とはいえ、結局は自分をその為に育てているのだと思っていたのだ。それが…
しかし、彼女の答えは決まっていた…
「行きます」
その答えにアキトは微笑み、頭を撫でる…
「本当は…ルリちゃんみたいな子は、戦艦に乗らない方が良いんだけど…
あそこは<特別>だから…きっといい思い出を作れるよ」
「…はい。それと、私子供じゃありません。少女です」
「ははは…そうだったね」
少女の自己主張にアキトは少し冷汗を垂らすのだった…
「それでは、パイロットは一週間後の乗艦となっておりますので…」
「ちょっと待って!」
出て行こうとするルリとプロス達を止める声があった。
「ラピスさん、どうしましたか?」
プロスは足を止め、振り返りながらラピスに聞く…
「私も行く事にしたから」
ラピスは以前のようなカタコトっぽさも無く、プロスにそう言った。
「ラピス?」
アキトも突然行くと言い出したラピスに戸惑っている様だ…
「あの…えーっと、元々私達三人で決めてたの。誰かがアキトに付いて行こうって」
「え?」
「でも、アメジストも大きいルリも行けなくなったから…」
「だが…」
「<ヤタ>の事なら大丈夫。教育はナデシコの中でも出来るから」
ヤタというのは、現在製作中の明日香製オモイカネ級スーパーAIの一つだ。
因みに、正式名称は<ASHAI−002 ヤタガラス>と言う。
つまり、ユーチャリスのAIの名前をそのまま付けたのだ…
「そうか。なら後はプロスさんに聞いてみるしかないな…」
「いえいえ、大歓迎ですよ。ルリさんお一人で一日中はキツイでしょうし、サブオペレーターと言う事で」
「わかった…あ〜、でも…弁当が無いな」
「大丈夫! しばらくはサイゾーのところに通うから」
「そうか…じゃあ、がんばれよ」
「うん」
アキトは二人を見送り、首をかしげた…
「何でラピスが帰って来てるんだ?」
今の時間は、学校に行っている筈なのだが…
アキトは誕生日の後、直ぐに手続きを済ませ、
明日香の息のかかった中学校にラピスとアメジストを通わせていた。
ルリ(大)は自分も仕事をすると言いだし、結局通わなかった。
ルリ(小)の方は単純に行くのを嫌がった…
だが学校の成果で、ラピスのカタコトはほぼ直ったのだが…
どうして今ここに居たのか、不思議に思うアキトだった。
……因みにこれをセッティングしたのは、ルリ(大)とアメジストだったりする。
「ユリカー!」
コウイチロウの怒鳴り声が響く…
扉の前で待っているジュンは困り果てて、扉の向こうに声を掛けた。
「ユリカ…ほらおじさん怒ってるよ」
「だって〜、制服ってダサダサで決まんないんだもん」
「気にしたってしょうがないよ」
これがユリカの性格なのだと分かってはいたが、少し愚痴っぽくなる。
その時、扉の向こうからこちらの事を心配した声が響く…
「ねえ、ジュン君…わざわざ連合軍辞めて付き合ってくれて、本当に良かったの?」
「ユリカ一人じゃ…心配だから…」
「さっすがジュン君、最高の友達だね!」
「はいはい」
ユリカは優しい…
それに相手の“本質”をずばりと見抜く事も多々ある。
しかし、恋愛事に関するユリカの鈍感ぶりにため息が出る…
今まで彼女に恋愛を意識させた人物を見た事がない。精々映画のヒーロー位だ…
ジュンは少し気落ちしていたが、そこにコウイチロウが怒鳴り込んできた。
「ユリカ! こらユリカ! 学生気分もいい加減にせん
か!」
「だって〜」
「だってだとー?! 軍と言うのは時間厳守が…」
ガチャリ! ガチャリ!
「ああおじさん…今はまだ! 着替え中…だから…」
コウイチロウが扉を無理やり開けようとするのを見て、ジュンは必死に止めようとするが…
ガチャ!
扉が開いた…
「キャアアアーーー!!」
「ユリカ、立派になったな…」
ドゴッ!!
半裸のユリカを見て鼻の下を伸ばしているコウイチロウとジュンに、ボストンバッグが叩きつけられる…
ユリカは怒り心頭のまま、ジュンに車を運転させて出て行った…
「我が娘 子供と思えば ナイスバデ
ユリカ…立派にお勤め果たせよ…」
コウイチロウは出て行く娘を少々不謹慎な川柳を読みつつ見送るのだった…
俺は困っていた…思いの外新規の機体の調整に手間取ってしまったのだ。
現時点で、既にナデシコへのエグザバイト・空陸用と宇宙用の搬入は終わっている。
しかし新型開発プランの為、データ取りにつきあっていたのだ…
今から電車では間に合いそうに無いな…
「さて、どうしたものかな…」
キキキキキィー!!
そう考えている俺の前に、一台の自動車が滑り込んで来た…
そして、バタンという音と共に扉が開き放たれ、紅玉が顔を出す。
「乗ってください。確か今日中に着いていないと間に合わないんでしょう?」
少しタイミングが良すぎる気もしたが、兎に角時間が無いので、乗せてもらう事にした…
「じゃあ頼む・・・死なない程度にしてくれよ?」
「分かってますって。大体、患者さんを壊すような運転はしませんよ〜。コーラルもいるんだし」
「な?!」
「ご主人様〜お待ちしておりましたぁ」
助手席に乗った俺の背後から、いきなりコーラルに抱きつかれた。
思いの外焦っていたのだろう。コーラルの気配を見落とすとは…
…それともまさか、シェリーに何か習ってないだろうな(汗)
兎に角、かなり問題のある速度だったが、どうにか夜に間に合った。
…しかし、よく警察に捕まらなかったもんだ…
ヘリでもチャーターすれば良かったと真剣に後悔しつつ、ネルガル地下ドックへ向けて歩き出す…
だが、何故かその後ろを当然の様にメイドが付いて来た。
「コーラル、なぜ付いてくる?」
「ご主人様の行く所コーラルありですぅ!」
頭が痛くなってきた…どうもコーラルは本気でそう思っているフシがある…
少し、注意が必要だろうか?
「あのな、戦艦にエグザのパイロットとして配属された俺にメイドが必要だと思うか?」
「ご主人様は、分かっていません!
出撃から帰ってくるパイロット。そこにそっと紅茶を差し出すメイド…
とっても絵になるじゃないですか?!」
「いや、そういう事じゃなくてな…」
「い〜え、そういう事です! ご主人様はもっとノーブルなイメージで行った方がいいです!
あの舞踏会の時も完璧にワルツを踊ってらしたんですから…」
コーラルは途中からポーッとなっていた…
これは、もしかして…かなり不味いのか…?
「それに、本当は紅玉さんも一緒に乗り込みたいところを
私の仲間のメイド達を治療する為に残って下さったんです」
「いや、それは分かるが…」
コーラルの場合は<アイドクレーズ家>の事が問題なのだ。
彼女がナデシコに乗ると言う事は、ネルガルがアイドクレーズ家…
ひいては明日香インダストリーの株の内20%を押さえるという事でもあるのだから。
俺がどうやって諦めさせるのか考えている時、後方から抑えられた気配がして振り返る…
そこには、いつもの笑顔を貼り付けたプロスさんが歩いて来ていた。
恐らく、遠くで見ている警備員に通報されて出てきたのだろう…
「話は聞かせて貰いました。コーラルさん…貴女をウエイトレスとして採用しましょう」
「え〜? ご主人様専用じゃないんですかぁ?」
コーラル…頼むから誤解を誇張するような事を言わないでくれ(泣)
「まあまあ…彼はコック兼パイロットですから、ウエイトレスをすれば一緒にいられる時間も増えますよ?」
「うぅ…分かりました」
コーラル、乗せられないでくれ…って、あれ?
今、プロスさん…変な事言わなかったか…?
「ちょっと待ってくれ!」
「なんでしょう?」
「俺の契約、パイロットじゃないのか!?」
「いえ、契約時に確かに<コック兼パイロット>と登録されておりますが…」
「…まさか!?」
そもそも、俺は今回きちんと契約を交わした覚えが無い。
だが…そんな事をしそうな人物と、それが出来る人物を知っている。
ルリとカグヤちゃんだ…
「それを、書いたのは…」
「はい。明日香インダストリー社長代理、オニキリマル・カグヤ嬢ですが…
何か問題でもありましたかな?」
「…いや…」
完全にはめられてしまったと言うわけか…
複雑な思いはあるが、みんな俺を心配してくれているのだろう。
俺は、その想いに応える事が出来るのだろうか…?
だが…
ここまで来た以上、逃げ出す事は出来ない。
俺はどれくらいの人々を救う事が出来るのか…
そして、どれだけの人々を苦しめる事になるのだろうか…
複雑な思いを胸に、俺はナデシコへと歩き出した・・・
なかがき
思いの外長くなってしまった様だ…
当たり前です、殆ど台詞をまんま使ってるんですから…
いや、思うんだけどTVの一話っていいシーンが多いからさ、あんまりはしょりたくないんだよ…
はあ、所詮四流ですからその辺はもういいです、でも…
でも?
どうし
て私が少しも登場しないんですか!!
あっ、あはは…
あは
は、じゃありません!
いや、そのしばらくは小さい方が活躍するので…
せっか
く、この作品では私が二人とも出ていて二度美味しいとい
うのに! 自ら売りをすっ飛ばしてどうしますか!!
火星帰還後にはその辺の事も考えてるから…
火星帰
還後…いつになるか分からないじゃないですか! それに前回言った告白の事どうするつもりです!!
あははは、確かに、ルリちゃんにメールは来たけど告白の時期を早くしてくれというものは無かったし…
やはりお仕置きが必要なようですね…
え、その構えは…
そうです、いい加減たまりにたまった鬱憤を食ら
いなさい!!
うお、どっどうする!?
どうにもさせません!
漆黒のラストブリッドー!!
ドッゴーン!!
グボォ…
パパパーラーパパパパー
夢を見ていたんです…夢の中の私は、
どうにも出来ない事をどうにかしようとする人になっていました…私は直ぐに逃げ出したいと思いました…しかし、夢の中のその人は…あぁその人は…
その台詞どこか違ってませんか?
はい、今回はスクライドをきちんと見ながら書いている訳ではないので…
はあ…とりあえず、作者に止めを刺しておきますか…
押していただけると嬉しいです♪
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