時は動き出しました。ナデシコと共に・・・

ネルガルが軍と袂を分かつ瞬間が近づいています。

<前回>の脚本はネルガルと軍のものでしたが、

今回はアキトさんとクリムゾンが参加しています。

時は、アキトさんに味方するのでしょうか・・・

そういえば・・・

ほんとに<ナデシコ>って誰が付けたんでしょう?







機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜




第七話 「『緑の地球』に思い出を」(前編)



ナデシコが出航し、日が昇り始めた頃…

第三艦隊旗艦・トビウメの提督室で、機密の会話がなされていた。

コウイチロウとモニターに映る男との会話は秘匿回線になっており、そう簡単には察知される事はない…


『ええ、分かったわ…』

「君にも、つらい思いをさせるね…」

『何言ってるの、アタシはいい加減この船にうんざりしてたのよ。

 民間人ばかりでアタシ達の言う事なんて聞きゃしない。

 このままじゃこの船、きっと沈むわ』


相手の男はコウイチロウに向かい、大げさにあきれてみせる…

コウイチロウの方としては既にナデシコの“運用内容”は把握している。

少なくとも、クルーは全て一流であるといっても差し支えない事を知ってはいた。

しかし、多分に問題児達である事もまた、聞き及んでいた…


「それで、人員は足りるかね?」

『問題ないわ。ブリッジ要員十人と白兵戦要員二十人。こっちは一個中隊分位居るし…

 相手が二百人以上いると言っても、白兵戦の経験があるのなんて精々ブリッジにいる四、五人…

 後は警備員に毛の生えたようなのが十数人位ね』


ムネタケのその言葉は概ねコウイチロウの満足のいくものだった。


「ふむ、流石ムネタケ参謀の息子さんだね。冷静な判断だ…

 しかし、明日香から来ている出向社員…只者では無いのではないかね?」

『パパは関係無いわ! アタシは別にパパに軍略を教わったわけじゃない!』

「すまなかった…それでは、くれぐれも頼んだよ」

『ええ、期待におこたえするわ。その代わり、上手く行ったら推薦の件よろしくね。

 でも、失敗した時は…』

「…善処しよう」

          プシュン・・・


「ふう。ムネタケ参謀…君の息子は扱い辛い…」


コウイチロウはため息をつきつつ、ブリッジへと向かうのだった…







同刻・ナデシコブリッジ――

現在、プロスの付いた“嘘”をメグミ達ブリッジクルーが追及していた…


「プロスさん! 嘘を付いてたんですか!?」

「はあ、いやその…」


メグミが怒鳴りながらプロスに詰め寄る。今回は言い訳しようも無い為プロスもタジタジだ…


「彼、艦長の知り合いらしいじゃないですか! それがどうして<火星の英雄>なんです!?」

「あっ、もしかしてメグミちゃんはジョー君が好きなんだ?」


彼女の怒りをそぐように、絶妙のタイミングで茶々が入る…

ミナトは不思議とそういうところに聡い。

メグミも図星を突かれたらしく、戸惑ったような返答を返す…


「あ…いえ、その、あこがれてはいますけど…」

「……彼は嘘を付いてはおらんよ。確かに彼は、ジョー君だった」


メグミの気が治まる頃に、ボソッとフクベが言った…


「え? それどういう事ですか?」

「私は火星(むこう)で話した事がある。確かに彼だよ…

 先日の会話は、私とジョー君にしか成立しないものだ」

「人名の詐称は服務規程違反ですが、ニックネームに関しては特に規定はありません。山田さんもそうですし」

「俺はダイゴウジ・ガイだ!」

「ま、そういう事です」

「はあ」


最後はルリに諭されるメグミであった…







俺の部屋…今回はガイと同室にならなかった。

まぁそれもその筈、現在ここは俺・ラピス・ルリちゃんの三人部屋となっている。

“十八にして既に子持ち”と言う噂は光速で駆け巡ったらしく、既にナデシコの半数近くが知っている。

…何というか、ちょっと切ない…

…それはそれとして、連合宇宙軍兵及びムネタケには“穏便に”お帰り願わなくては…

だが、ガイは当然の事としても…出来る事なら、ムネタケにも前の様な悲惨な事態になって欲しくない。

その為にも、話し合いの場を持ちたい所だが…今回は難しいだろうな。

どちらにしろ、ナデシコ内の状況把握が優先だ。

俺は、ヤタガラスと繋がった携帯IFS端末を操作するラピスに問いかけた…


「ラピス、実際どんな所だ? 制圧部隊の数と、他の組織からの人員は」

「うん、制圧部隊は三十人、内白兵戦要員は二十人だよ。

 それから、ナデシコ内に不振な身元の人間がいないか洗ってみたけど、今の所は一人だけ」

「一人?」

「そう、一人だけ…」

「それは、あの<リトリア>とか言う月の巫女か?」

「うん、そう」


…そう来たか。

可能性としては、二つ考えられる…

オメガがクリムゾンの意向を汲み、動かなかった場合…この場合は動く必要も無い。

問題なのは、ホクシンなりオメガなりが何か仕掛けてきた場合だ。


リトリアとか言う巫女は確か“八番目”の巫女…月の巫女は七人だった筈だ。

それだけでも怪しいが、ラピスによると彼女は三年以上前の記録が無いらしい…

つまり、彼女がクリムゾンに関係している可能性は高いと見ていい。

しかし、彼女にそれ程の工作が出来るとは思えない…

つまり…本命は別にいるか、彼女は関係ないかのどちらかだろう。


宇宙軍とネルガルはこのままでも決裂する。

クリムゾンの動きは……いや、連中は傍観を決め込むかもしれない…

だが、オメガが何もしてこないとは思えない。

地球を出てから攻撃を行うとなれば、位置の把握が難しくなる。

それにオメガとしては、ナデシコが“まだ何もしないうちに”叩いておきたい筈だからだ…


「だとすれば、何か仕掛けて来る可能性があるな…」

「月の巫女?」

「リトリアが手引きするのかどうかは分からん。しかし監視は必要だな…

 彼女自身は爆発物等を持ち込んでいないんだろう?」

「うん」

「なら、そっちの方はルリちゃんに頼むとしよう」

「え? ルリに? ナデシコの方はどうするの?」

「どの道、先ずムネタケ一味の動きを止めない事には先に進まない。

 だからラピス…奴らをきりきり舞いさせてやってくれ」

「うん、分かった。でもルリ一人で、何かあった時問題無い?」

「そうだな…ガイにちょっとばかり頑張って貰うか」

「?」

「その話はまた後で。

 どうやらユリカが来たみたいだ…しばらく大人しくしておいてくれ。紹介もするから」

「…わかった。でも貸し一ね」

「…はい(汗)」


…この貸しポイント、結構大変なのだ。

<五つ貯まると一緒にお風呂に入る>という、ラピスとの約束になっている…

ラピスももう十三――正確にはまだ八歳――だが、見た目はかなり成長してきている。

…世間体の悪さはかなりのものだ(汗)

少なくとも、ナデシコにいる間に貸し五つ、等と言う事にはならないようにしたいものだ…


『アキト! アキト!』

「直ぐ行く」


どうせそのままにしておいても、マスターキーで開けてしまうんだろうが…

変なタイミングで入られるのはもう願い下げだ。

ドアを開けユリカを招き入れる。


「アキト! ほんとに久しぶり!」


ユリカが俺に向かって飛びついてきた…

! ルパ○ダイブ並の水平飛び!?

俺は反射的に――というか本能で――つい避けてしまう…


             ズザザー


大分勢いが良かったのだろう…

ユリカはそのまま畳敷きの部分を滑っていった…


「あっ、すまん」


ユリカはそのままの姿勢でぶーたれている…

俺は苦笑しつつもユリカの手を取り、立ち上がらせた。


「いや、まさか飛びつかれるとは思わなかったから…つい避けてしまったんだ。すまん」

「ぶう、そんな事言ったって許してあげません! 折角感 動の再会だったのに…」

「それは、まあ…」

「大体、女の子が胸に飛び込んでくるんだから受け止める のは当然です!」

「そっ、そうかな…?(汗)」

「でもアキト、生きてたんだ…

 火星で死んだって…聞かされてたから……」

「それは…」

「これからはずっと一緒だね!」

「…いや…そういう訳には行かない」

「どういうこと?」

「今の俺は色々<厄介事>を抱え込んでいる…

 まだ堂々とお前に会える人間じゃ無いんだ…だから…」

「そのまま死んだと思ってろって言うの? ひどいよそんなの…」

「だが、俺に関ればユリカに…」

「あっ、今でも私の事ユリカって呼んでくれるんだ! う れしい!」

「いや、まあその…」


<向こうの俺>の、長年ユリカと呼んできた記憶が思い出される…

しかし、俺の後ろで不機嫌の度を増している存在を失念していた…


「あ、ラピス…ごめん。そうだったな…」

「え? その子、誰?」

「俺が引き取って育ててる…」

「私はアキトの一部

「へ?」


ああ、ユリカの表情が…凄くきれいな笑顔に…

額に血管が浮いてるけど。そりゃもう、切れそうなくらい…


「ア〜キ〜ト〜!!(怒)」

「いや、あのな…」

二人は離れられない存在なの」

「ア〜キ〜ト〜!!(怒)」

「ち、違うんだ! 落ち着いて話し合おう! な? なっ?」

「アキトはラピスがいらないの?」

「まさかアキト…こんな小さな子に…」


「ばっ、そんなわけ無いだろ!」

「アキトは一緒にお風呂入ってくれた」

「…(怒)」


あ〜うー…俺はどうすればいいんだ〜!?

そもそも、何でこんな話に!?

兎に角、三十六計逃げるにしかず!


「おっ、俺! これからコック着任の挨拶に行かなきゃならないんだ! そんな訳で…さよなら!」

「あっ…こら! 待ちなさーい!! 艦長命令です! 待ってー!! アキトー!」





完全にユリカをまいた事を確認して一息つく。

はあ…何か、日に日に情けなさを増してるな、俺…

これは、昔に戻りつつあると言う事だろうか…?

やはり、こんな<暖かい場所>に居てはいけないのではないのか? 俺は…

こんなにゆったりと構えていられる時間などない筈なのに…

結局は、ナデシコに乗りたいと思ってしまっている。


俺なら…出来る筈なのだ。ボソンジャンプによる特攻での、草壁ら首脳陣の暗殺…

ジャンプフィールド発生装置か、C・Cと機動兵器の一機でもあれば、木星圏に突入する事などわけはない。

成功の確率は低いが、この方法ならおそらく今すぐに実行可能だ。

ただ、この方法は成功しても木星圏の人々を“奴隷化”してしまう結果になりかねない…

いや、軍は事の隠蔽の為に“木連そのもの”を無かった事にしようと、

木星圏に<核>を打ち込む事さえ、躊躇(ためら)わないかもし れない。

ツクモやツキオミ、ユキナちゃん等を含む木星圏の人々に向けて…


正直気が進まない。

…だが…今のやり方では、いたずらに犠牲者を増やしてしまう可能性も高い…

俺は…一体どうすれば……



通路を歩いてエレベーターへと向かう。

そのエレベーターの近くで、灰色の髪の少女と俺は出会った…

以前とは違うクルー…俺の知らないナデシコの乗組員…

現在最も警戒すべき相手、月の巫女リトリア…彼女は俺におじぎをし、声をかけてきた。


「どうも、初めまして…月の巫女リトリアと申します。アキトさん…で、よろしいんですよね」

「ああ…」


俺の知る歴史では、木星トカゲ襲来時<月を脱出せず全滅>というのが、月の巫女の末路だった。

俺も月の住民救出には向かったが、今回の月の巫女はネルガルに保護されたという…

既に歴史は“俺の知らない歴史”になり始めているのかもしれない……


しかし、リトリア――彼女が警戒すべき相手には見えない。

その表情や気配からも、そういう所が伺えない…

それどころか、彼女に不思議な懐かしささえ感じている自分がいる。


「私はこの船の祭事を取り仕切る事になりましたので、その際はよろしくお願いします」

「祭事?」

「冠婚葬祭、お祭り事一切ですわ」

「…それは確か、艦長の仕事じゃなかったのか?」

「はい、ですが艦長は色々と多忙でしょうし」

「そうなのか? 今、俺の部屋に押しかけてきていたが…」


リトリアの表情が引きつる。その後、何か言いたそうにしていたが…

俺の方としてもそろそろ厨房に向かわなければ、本当に遅刻してしまう。

出来る事なら、初日から遅刻と言うのは勘弁して欲しいものだ…


「そろそろ厨房に向かわなければならないので、失礼する」

「えっ…ああ! あの…」

「なんだ?」


リトリアは何か、真剣な表情で俺を呼び止めた。


「艦長を、避けないであげて下さいね…」


リトリアは言ってしまってから何かおろおろとしていたが、目は俺から離れていなかった…

確かに、俺はユリカに負い目がある。

俺にとってユリカとは<結婚したユリカ>であり、今のユリカではない…

そういう思いは心のどこかにある。

どちらもユリカには違いない筈だが…

今どこにいるのかすら分からないユリカを見つけるまでは…目の前のユリカに近寄りたく無いのかも知れない。

何故彼女がその事を指摘するのかは、分からないが…


「善処しよう」


そう言って、俺は今度こそ厨房へ向かう。

そんな俺を、リトリアがいつまでも見ていた事が印象的だった…







戦闘艦橋に呼び集められた皆を前に、プロスはナデシコの目的について話していた…


「今まで<ナデシコの目的地>を明らかにしなかったのは、妨害者の目を欺く必要があった為です。

 ネルガルがわざわざ独自に機動戦艦を建造した目的は別にあります。

 以後、ナデシコは<スキャパレリプロジェクト>の一端を担い、軍とは別行動を取ります」

「我々の目的は火星だ!」


フクベの言葉に皆それぞれに表情を変える…ルリだけは相変わらず無表情だったが。

中でも、軍の士官候補生を辞めてまでユリカに付き合ったジュンの怒りは、ただ事ではなかった…


「では、現在地球が抱えている侵略は見過ごすと言うのですか!?」

「多くの地球人が火星と月に殖民していたと言うのに、連合軍はそれらを見捨て、

 地球にのみ防衛線を引きました。火星に残された人々と資源はどうなったのでしょう?」

「どうせ死んでんでしょ」


冷静に突っ込むルリ…彼女にとって、まだあらゆる事は他人事でしかない…

しかし、プロスも既にその程度の突っ込みは予想の範囲内だったのだろう。

気にせず続けようとするが…


「分かりません…ただ、確かめる価値は…」

『無いわねそんなの』


コミュニケが開き、ムネタケが言葉を発すると同時に七人ほどの軍人が戦闘艦橋になだれ込んで来る…

その後に付いて、ムネタケがゆったりとした動作で艦橋内へと入ってきた。

しかし…戦闘艦橋だと思って入ってきたその部屋は、貨物用のコンテナだった……


「なっ、何? どういうこと!?」


ムネタケがうろたえている間にも、次々と入ってくる兵士達…

最終的には、三十人全員が一つのコンテナに入っていた。

そのタイミングを見計らっていたかのごとく、コンテナが閉まる…


「ちょっと! 出しなさい! 出すのよ!

 アタシにこんなことしてただで済むと思ってるの!!?」


ムネタケはドンドンと壁を叩きながら大声で叫ぶが、応えるものは無かった…

ムネタケ達はエレベーターを利用し、それぞれ別の階の重要施設へと攻撃をかける手筈だったが、

ラピスはそれらのエレベーターを全て“エステバリス格納庫内の大型コンテナ前”に出るように細工していた。

もちろん、それぞれの階に見えるよう、部屋全体に立体投影をかけて…である。

後はそれぞれのエレベータを、別々のタイミングで開くだけだ…

既に仕掛けられているとは思っていなかったムネタケ達は、一人残らずコンテナに入り込んだ。

結果、彼らは何もする事無く捕まってしまったのである。

それを前に、罠にはめたラピスと艦内状況を見ていたルリが互いのコミュニケを向かい合わせ、言葉を交わす…


『おじちゃんたち、みんなバカだね』

『ラピスさん…こういう時はバカばっか、って言うんです』

『ふーん、そうなんだ…でも私のキャラじゃないかも…』

『キャラ…ですか? 良く分かりません…』

『ルリも学校に行けばいいのに、色々教えてくれるよ』

『はあ。では戦争が終わったら、考えてみます』

『…そうだね。早く終わらせなきゃ…アキトの為にも…』

『テンカワさん、ですか? そう言えばなぜテンカワさんは、いつも女性から逃げているんでしょう?』

『決められないんだよ、一番大切なものが。

 …だから“全部”守ろうとする…

 でも惚れちゃった方としては、自分を一番に見て欲しいし…』

『ラピスさんも…ですか?』

『うん!』


ラピスの満面の笑みは、恋愛事等関係無いと思っている筈のルリにも、とても綺麗な笑顔に見え…

ルリはそうした想いを持つラピスを、少し羨ましく思うのだった…










「何が起こった!? ムネタケは一体何をしようとしたんだ!?」


ゴートは何も起こらないことを不審に思い、ルリに艦内状況を確認する。


「軍の<ナデシコ乗っ取り工作>と思われる作戦の通信を傍受、先程ラピスさんが艦内システムを使い鎮圧しました。

 …現在エステの格納庫内にあるコンテナにて拘束中」


ルリは淀みなく読み上げるが、それを聞いていたゴートは唸る…


「なぜ傍受した時、直ぐ我々に知らせなかった?」

「当時艦長がブリッジにいなかった為、次席の地位にあるテンカワさんに報告しておきました。

 テンカワさんは《こちらの方で処理しておくので報告は必要ない》と言っていましたので…」

「ちょっと待って! なんでテンカワの方が副長の僕より地位が上なんだ!?」


驚きのあまり声が大きくなるジュン。

知っている限りにおいて、ジョーは民間人だった筈…

かつて火星から十万の人間を脱出させた<火星の英雄>とは言え、

副長である自分の知らない間に、艦長に次ぐ地位に就いている…と言うのはおかしい。

いぶかしむジュンにプロスが告げる。


「それは私の方から説明させて頂きましょう。彼は明日香インダストリーからの出向社員でして…

 明日香インダストリー社長代理オニキリマル・カグヤ嬢より、

 《彼の言葉は全て、明日香インダストリーの意向だと思うように》

 と言われております。

 つまり、明日香インダストリー全権代理と言う事になりますので…当然、その地位は艦内でも艦長に並ぶと言う事でして」

「だからって、艦内秩序を乱していいことにはならないだろう! 先に艦長を呼び出せばいいだけの筈だ!」


ジュンは苛立っていた。

ただでさえ、いきなり現れた恋のライバル(勝負にすらなっていない事も感じている)に戸惑っているのに、

自分の“立ち位置”すら奪われるのではないかと…


「その艦長が、テンカワさんの部屋に向かってましたので…テンカワさんの方から話してくれると思っていたんですが…」

「グッ! 艦長! 断固とした処罰を行って下さい! 独断専行を許せば艦内の秩序が保てま せん!」


ジュンがユリカに向かって言葉を突きつける。

今までの言動から見て、ユリカはアキトに対する処罰を嫌がるだろう…

と、周りの皆は思ったが――ユリカはむしろノリノリだ。


「アキトに対するお仕置きか…どんなのが良いかな…(妄想中)…

 いやん、エッチィ! 駄目駄目!

 私達にはまだ早すぎるよ! キスだってした事ないの に!」


途中までは口元に指を当てながら考えていたが…

一体何を妄想したのか、真っ赤になった頬に手を当て首を振るユリカ。

ブリッジクルー達は呆れ顔だ…


「ハァ〜…バカ」


ルリもため息をつきながらバカにする、と言う芸当を見せていた。

いい加減ゴートも話を進めたくなったらしく、自ら口を開く…


「その事はもう良い。兎に角、今はムネタケの事情を…」

「ソナーに反応! 十二時の方向に艦影3。

 内訳は戦艦クラス1、駆逐艦クラス2…艦長、どうしますか?」


ルリによる機影察知の報告がゴートの言葉に重なる…ゴートはぐっと、息を呑んだ。

しかし、妄想状態に入っていたユリカがいち早く状況を察知し、命令を発する…

そういう所は流石と言えよう…


「ミナトさん! ディストーションフィールドを張りつつ全速後退!

 メグちゃん! 艦内に警戒レベルCを発動してください!」

「了〜解。全速後退、っと」

「皆さん、これよりナデシコは警戒体制レベルCに移行します!

 戦闘で揺れるかも知れませんので、火や発熱するものを止めて下さい!

 不安定な場所での仕事も一時中断して、待機していて下さい!」


各クルー達も、流石は<試掘者(プロスペクター)>が掘り出したエキ スパート、と言った所か…

一瞬で事態を把握すると行動を開始した。

何か言いたそうな顔のまま、ゴートは固まってしまう。

そこに、視線をモニターに固定したままのルリの追撃が…


「…バカばっか」


その言葉にゴートの心も凍りつきそうだったが、何とか心を奮い立たせ、平静を装った。

それを無視してブリッジクルーが一通り準備を追えた頃、前方の海中から大型の艦が姿を現す…


「艦影確認。連合宇宙軍第三艦隊旗艦・トビウメです」

「艦長! トビウメから通信が来ています。どうしますか?」

「通信を開いてください」

「了解、通信開きます」


メグミが操作し、ブリッジ前面のメインモニター中央に通信用モニターを開く。

すると、“サ○ーちゃんのパパ”そのものの、独特な髪型とカイゼル髭を生やした壮年の男が大写しになる…


『こちらは第三艦隊提督、ミスマルである!』

「お父様!?」


ユリカが驚きの声を上げてコウイチロウを見る。

しかし、その事はブリッジクルーに多大な衝撃を与えた…


「「えー!?」」

「お父様! これはどういう事ですの!?」

『おお! ユリカ、元気か?』


「はい!」


お互いに笑みを作り挨拶する親子…しかし、この場では滑稽(こっけい)な 事この上ない。

しかもこの後、コウイチロウは両手を合わせ涙を流しながら話し始める…


『これも任務だ…許してくれ。パパも辛いんだよ』

「困りましたな〜…既に連合軍とのお話は済んでいる筈ですよ? ナデシコはネルガルが私的に使用すると」

『我々に必要なのは“今確実に木星トカゲ共と戦える”兵器だ。それを…

 ん? ムネタケ大佐はどうしたのかね?』


一方的に話を進めようとしたコウイチロウだが、途中で異変に気付き質問を変えたのだが…

プロスは眼鏡を光らせてその言葉を受け止める。


「彼なら反乱を起こしましたので、現在下部デッキにて拘束中です」

『拘束中?』

「はい。我々としても、反乱を起こされるような方をそのままにしては置けませんですから」


プロスの言葉を聞き、コウイチロウは暫く渋い顔をしていたが、

表情を引き締めなおし、提案をしてきた…


『ふむ、そうか。仕方が無い…では、彼らを引き取りに行っていいかね?』

「…確かに我々と致しましても、連合軍の士官を拘束していると言うのは体裁が悪いですし…

 分かりました…但し、ヘリ二台だけです。それだけあればコンテナごと運べるでしょう。

 それ以上はご遠慮して頂けますかな」

『分かった。良いだろう』


交渉を終えた事に安堵するナデシコクルー。

交渉はほぼ、プロスの思惑通り動いているかに見えた…









なかがき


ふむ、後編はどうしよう(汗)

?普通に続きを書けばいいんじゃないですか?

ネタが足りん! 正直後編普通の三分の二くらいになるかも…(汗)

じゃあ、何で一つにしなかったんです!?

いや、一応コウイチロウ&ユリカのイベントとリトリア&ルリイベントそれからアキトイベントの三つは考えてあるんだけどね…

いつも言っていますが、このSSは私のためのSSなんです! 文があくなら私のイベントを差し込めば いいじゃないですか!

あのね、ルリちゃん…

(ギロ…)

(汗)いっいや、ルリ様幾らなんでも、既にイベントのある君をどう差し込めと…

小 さい私じゃありません! 大きい私です!

ああ、ミルヒシュトラーセさんね…

そのファミリーネーム何とか成らないんで すかアキトさんと同じ苗字なのは良いんですけど、名前を足しても某花組の少年っぽい少女に似すぎなんです けど…

あ…あははは、意識してやったわけじゃないんだけど…ミルキーウェイの方が良かったかい?

それも、何だかギャグ系のキャラみたいな 感じで嫌です…

でもさ、名前をヒスイやコハクにするのは…

そうですね…特に琥珀さんは問題です。って、そういう話ではなくて!

そっちから振ってきたくせに…

ぐっ、たまには言いますね…兎 も角、私の話を差し込めば万事解決です!

うーん、そうだね考えてみるよ…

考えて る暇があったら書きなさい! 大体グラニットさんが大変な時期に書かずに様子を見ていたのを知ってるんですよ!

ひょ え〜!  グラニットさんごめんなさーい!!

ちっ、謝る振りして逃げましたか…

 


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