みんなが錯綜するように動いたわりには、

このまま何事も無く宇宙へと上がれそうです…

でも、アオイさん今回は連合軍に合流してませんけど、

デルフィニウム部隊の指揮誰がやるんでしょう?

ヤマダさんはまた変な作戦を考えて自滅するんでしょうか?

どうでもいい事ばっかりです…






機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜




第八話 「『早すぎる』再会」(前編)


ナデシコブリッジで俺は、独断専行の是非について査問(?)にかけられていた…

前回やった事や、秘密兵器の保有等についてだ。

まあ、俺がやった事はかなり問題があったかもしれないが…

プロスさんとしても俺を手放せるわけも無い筈だから、適当にお茶を濁してくれるだろう…

だが、問題は連合軍と決裂したにもかかわらず、こちらに残る事になったジュンだ。

前回と違い、ずっとユリカの近くにいたジュンは連合軍よりユリカを選んだ。

しかしそのうっぷんもあってか、俺に対する風当たりがきつい…


「連合軍仕官の無断拘束、報告義務のを怠る事二回、命令も無く出撃する事二回、艦長を飛ばして命令する事二回!

 これは重大な規約違反です! 厳正な処置を!」


仕方ないとは言え、ジュンも結構言うな…火星帰還後、あれだけ目立たない人になってしまうとは思えない…(汗)


「待ちたまえ、彼は結果を出している」

「結果さえ出ればいいのですか? そんなことでは艦内秩序は保てません!」

「そうですねぇ。確かにこれは重大な問題ですが、我々は軍人ではありません。ですので、減俸処分という事でどうでしょう」


どうやら、プロスさんはとりなしてくれるつもりらしい。

やはり“計画”上、俺が重要だと言う事らしいな…

しかし、減俸処分か。まあ良いんだが…でも、ルリちゃんやラピスより俺の方が給料低いと、かなり悲しいぞ…


「そんな、仮にも艦長権限を侵害したんですよ! 大体あの兵器は何ですか!?」

「そうですな、それは我々としても聞いておきたい所です。どうでしょうテンカワさん教えてくれませんか?」

「ああ、そうだな…あれは、エグザに試験的に積み込んだ<フュンフ・ドライブ・システム(F・D・S)> だ。

 五つの重力波アンテナからグラビティウエーブを吸収できるシステムになっているんだが…」

「良くそんな無茶なシステムを思いつきましたな…(汗)」

「まあ、何というかエグザは色々と試行錯誤している最中だからな。

 最も、前回の出撃でエネルギーのバイパスがやられたらしいから、あれの使用は暫く無理だが…」

「そうですか。出来る事なら試作のシステムも、我々に教えておいて頂けないでしょうか?」

「それは、明日香との取り決め上言う事が出来ない」

「そうでしたな。テンカワさんは明日香の出向社員でしたな…では仕方ありません」

「ちょっと待ってください、それでは戦闘指揮に影響が出ます!」


ジュンがこれほど食い下がるとは、よほど腹に据えかねているらしいな…

ナデシコに慣れてくると、ため息一つで許してくれていたが…

やはりまだ<連合宇宙軍・士官候補生>が抜けていないんだろう…


「そう言わないでくれ、試作の物は上手く動くとは限らないんだ。

 下手をすると爆発する危険性もある…基本的に無い物と思って欲しい」

「格納庫内で爆発したりしないだろうな?」

「その心配は無い筈だ」

「分かった、今回は減俸処分だけでいい。艦長の通信の邪魔をしたくないからな」


そう言えば、下の戦闘艦橋ではユリカが振袖姿で連合宇宙軍に喧嘩を売っている…

いや、ユリカは凄んでもいなけりゃ激昂してもいないが、それでも向こうの方は既にかんかんに怒っているようだ。

艦隊を動かしてくるな…

前回はチューリップに救われる形で地球を出たが、今回は前回とどれくらい違うのか微妙だからな。

少しは上ってくる事を警戒すべきか…


「ところでジュン、聞きたいんだが…」

「何だ?」


ジュンが不満そうに返す…

かなり嫌われたな…仕方ないが…


「連合宇宙軍は艦隊をこちらに差し向けてくると思うが、補足される可能性のある艦隊はいるか?」

「…周辺のチューリップの布陣を見ると、あまり高くなさそうだが…

 あえて言うなら、第三艦隊の沖縄基地駐留部隊だろうな…」

「そうか…なら今度の指揮は任せる。その時になったら呼んでくれ」

「言われなくても執ってやるさ!」


はは、まあユリカが執るんだろうけど…ジュンは確かに優秀だからな。

最も<ここ>は性格を問わなければ、一流ばかりなんだが…


「ではテンカワさん、警戒態勢が敷かれるまではコックに専念していてください」

「分かった、では失礼する」


ブリッジを出てそのまま厨房の方へ向かう…

…だが、その途中で俺は変なものを見かけた。

段ボール箱が移動してくる…(汗)

いや、気配から誰かは丸分かりなんだが…なんだこりゃ?


「おい」

「…!」


ダンボール箱は俺の声を聞くと、びくっとなって動きを止める…

そして俺が動くのに合せて移動…というか、離れない様にしているみたいだ。


「はあ…あのな…」

「…!」


また段ボール箱が動きを止める…

これでバレてないつもりなんだろうか…(汗)


「おい!」

「…!!」


俺の怒りが伝わった段ボール箱は距離を離そうとするが…

無理に後退しようとした所為だろう、盛大にコケた……

転んだ下から現れたのは、栗色のショートヘアと、背丈とはアンバランスに大きい胸。

そして最近なじみになった、丈の短いメイド服…

俺の真正面に足を向けているので中が丸見えだ。

ナニとは言わないが、その“白いもの”が目に入らないよう、慌てて目をそらす…


「ああ! 痛いですぅ! いたいけな段ボール箱に怒りをぶつけるなんて、ご主人様ひどいですぅ!」

「…はあ」

「その心底呆れた溜め息は、私への解雇通告なのでしょうか? お願いですぅ! 見捨てないで下さい〜!」


コーラルがまた暴走している。

こいつはいつもハジけてるな…

もしかしたら、ユリカ以上かも知れん…(汗)


「コーラル…お前は結局、何がやりたいんだ?」


俺はコーラルを落ち着かせつつ、聞いてみる。


「…その…」

「その?」

「まだ食堂の位置が分からなかったんですぅ! だけど、何回も聞くのは心苦しいですし…」

「だから段ボール箱に隠れて、俺についていく事にしたと…」

「いえ、違いますぅ! たまたまご主人様が通っただけで、食堂に行く人なら誰でも良かったんですぅ!」

「…(汗)」


こっ、こいつは…

それに、さりげなく俺の事<ご主人様>と呼ぶのがデフォルトになってるし…


「分かった、食堂までは連れて行ってやる。

 どうせ俺も厨房に行くから、そのついでにな。その代わり…」

「その代わり、なんですか?」

「少なくともナデシコにいる間は、俺の事を<アキト>と呼ぶ事!」

「ええ〜!? 駄目ですよー!」

「どうして駄目なんだ?」

「だってぇ、ご主人様はご主人様ですし、

 その呼び方だと他の方と呼び方が被ってしまいますぅ!」

「そんな事別にかまわんだろうが!」

「ええぇ〜〜!!? 大事な事ですよー!!」


その時、背後に気配がした…

この気配は、ミナトさんとメグミちゃんとルリちゃんだ。

まだ少し距離があるとは言え、ここまで気付かないとは…

いつの間にか俺も熱くなっていたようだ。


「あの〜…」


メグミちゃんがおずおずと声をかけてくる…

俺達かなり熱くなってたからな…近づき辛くても仕方ないか。


「ん?」

「何ですかぁ?」

「兎に角、二人とも食堂行くんでしょ? ご一緒しない?」


俺達の返答に合せるようにミナトさんが話しかけてくる…

流石だな。元社長秘書だけあって、呼吸の読み方を心得ている。

元より俺に断る理由は無い。直ぐに返事をした…


「ああ」

「ありがとうございますぅ」


俺達は五人連れ立って、ナデシコ食堂へと向かった…












アメリカ合衆国・ニューヨークシティ――経済の中心地たるこの場所で、ある姉妹が対面を果たしていた。

二人はクリムゾン本社内にある広大な敷地の一角、小さめの館のある庭園で白い椅子に腰かけ、紅茶に口をつけていた…

シャロン・クリムゾンとアクア・クリムゾンは穏やかに話をしている…


二人は対照的な姉妹だった。

二人とも少しピンクに近い白い肌と碧い瞳、明るいブロンドの髪をしているが、

髪の長さはアクアがアップ気味のセミロングなのに対し、

シャロンは腰まで届くロングヘアをストレートに下ろしている。

目つきはアクアがとろんとたれているのに対し、シャロンは性格のキツさを思わせるつり目だ。

服など、アクアが黄色いイブニングドレスを着込んでいるのに対し、シャロンはスーツ姿…と、はっきり別れている。

二人の会話は時折沈黙を交えつつ、何気ない会話のように続けられていた…


「そういえばお姉さま、昨日の山菜摘み…いい七草が取れましたか?」

「…そうね。昨日は少し遠出になりそうだったから、出直す事にしたわ」

「そうですか。残念ですね…」


アクアはその事に本当に残念そうな顔をする。

シャロンは少し眉根を寄せるが、直ぐに表情を戻し会話を続ける…


「別に、いつでもいいのよ。重要な用件というわけでもないし…

 それよりアクア…この前のパーティの始末、どうするつもり?」

「うーん…私は表の事は興味ありませんから、お姉さまがお好きになさってください。

 一族の席を取り上げられても気にしませんわ」

「アクア…貴女はいつもそうなのね。権力や金に興味が無いように振舞う…」

「実際、興味がありませんもの。私は今を満足できればそれでいいんです」

「…私たちはいずれ、クリムゾンのトップにならなければいけないのよ」

「ふふふ…そういう堅苦しいのはお姉さまにお譲りしますわ」


シャロンは心の中で舌打ちをした。アクアの心理は読み辛い…

本気で権力など必要ないと感じているのかもしれないが、それでも総帥派の幹部の

半数近くがいまだに“シャロンよりアクアを、次期総帥かその妻に”と、考えている…

なにより、総帥がその筆頭なのだ…今のままでは指をくわえて見ているしかなくなる…


だから、今の内に会社に大きく貢献しておかねばならない。

だが、彼女が動こうにも今回の戦争で目立った動きを見せれば、後に戦犯の仲間入りという事になりかねない…

なぜなら、クリムゾンは現在連合宇宙軍と木連の両方と取引をしているからだ。

だからこそ、アクアの介入は何としても阻止したいところであった…


「お姉さま、私の事が気になりますか?」

「…え?」

「さっきから、私の事を見ていましたけど…」

「あら、ごめんなさい。そう言う訳ではないのだけれど…」

「<戦の神様>の名を持つ所…姉さまはその事を気にしていらっしゃるんでしょう?」

「ふふふ、そうね…貴女の言うとおりよ。だから今日は、貴女に忠告をあげに来たの」

「忠告ですか?」

「ええ、今回の事には手を出さないで…

 でないと、本当に一族から出て行ってもらう事になるかも知れないわよ」

「それは構いませんが…そうですね。戦の神様の名を持つ所には手を出さない事にしますわ」

「そうして頂戴。できれば他の事にも口を挟まないで欲しいけど…」

「だめですわ。そんな事をしたら、私の楽しみが無くなってしまいますもの…」

「…仕方ないわね」


シャロンはそう言って立ち上がる。

その動作の一つ一つが洗練され、気品に満ちていた…


「お茶、美味しかったわ…今日はこれで失礼するわね」

「はい。お姉さまもお気をつけて」


去っていくシャロンに、のんびりとした調子でアクアは手を振っていた…












ナデシコ食堂に着いた俺は早速エプロンを着け、厨房にまわる。

ホウメイさんにはどやされたが、まあ仕方ないだろう。飛び出していったからな…

で、続きとばかり下ごしらえをしていると…


「テンカワ、ちょっとこっちに来な!」


ホウメイさんに呼び出された…

下ごしらえ、何か失敗したか?


「何でしょう?」

「ん…そういや、アンタの実力見せてもらってないと思ってね…」

「いや、大した事ないっすよ。下ごしらえぐらいしか出来ませんから…」

「嘘付くんじゃないよ! 下ごしらえの手際を見てれば分かるさ。

 それに、一緒に来た嬢ちゃん達が言ってたしね」

「…」


これは…俺はまた、夢を持って良いのだろうか?

血塗られてしまった、この俺が…

だが、周りの人たちには関係ない…


「…訳ありなのかい? だからってアタシャ手を抜かないよ!

 アンタもコックとして雇われたんなら、きちんと仕事しな!」

「…分かりました」

「そういう訳だ、嬢ちゃん達好きなもの注文しな!

 アタシは次の注文があるからね…しっかりやんな、テンカワ!」


よく見ると手前のテーブルには、先程一緒に来た四人が腰掛けて手を振っていた。

…ん?

……四人?


「おい、コーラル! ちょっとこっちに来い!」

「はい? なんですかぁ?」

「お前、確かウエイトレスじゃなかったか?」

「はい。けど、この格好は駄目だって言われたんですぅ」


そういえば…まだコーラルにナデシコの制服、支給されてないんじゃ…

されても、着るかどうか怪しいが…


「そうか、分かった。戻って良いぞ…」

「は〜い、ごウグッ!

「その言い方は止めような」


口を塞がれたコーラルは必死に首を縦に振る…もう言わない事を確認して手を離した。

今言われたんじゃ、ナデシコ中に<子持ち&特殊な趣味・もしかしたらロリコン>説がぶち上がってしまいそうだ(汗)

兎に角俺は四人から注文を取り、作り始める…

ルリちゃんはラーメン、ミナトさんとメグミちゃんもそれに合せた様だ。

コーラルは火星丼に興味を示していた。

――これは火星丼とは名ばかりで、地球の食材を使う何の変哲もない、ただのデミ丼なのだが――

まあ、どれも時間がかからない料理ではある。

ただ、ラーメンはスープも麺もホウメイさんのだから、

俺は下ごしらえされた物をただ合せるだけ、と言った感もあるんだが…

それにホウメイさんの手際は一流だから、俺がそれと同レベルの物を作り出せるのか、疑問もある。

そんな事を心の端で思いつつも、腕は嘗てを思い出すように勝手に動き、料理を仕上げる…


「はい、ラーメンお待ち!」

「はい」

「へえ、美味しそうじゃない♪」

「あ、どうも」

「火星丼はまだですかぁ?」

「もうちょっと待ってくれ、割り下が出来たところだから…」


ごはんに割り下をかけて、大型のタコさんウィンナーを乗せて、完成…っと。

やはり料理をするのは楽しい…

どちらかと言うと、食べた人の喜ぶ顔が見たいからやっていたんだが…上手く作れるのはそれだけでも嬉しいものだ。

それが表情に出ていたらしい…メグミちゃんやミナトさんに意外そうな顔で見られてしまった。


「へ〜…意外ね。アキト君そんな表情もするんだ…

 真面目な所と、艦長相手のギャグしか見てないから“ただの変な人”かと思ってた」

「変な事言わないでください。アキトさんは無茶な事ばかりしますけど、真面目な人です!」

「あー、メグちゃんもしかして〜♪」

「ばっ、バカなこと言わないでください! まだ会ったばかりなんですよ! 艦長じゃあるまいし…」

「でも、ねぇ?」

「はい。でもご主人様は倍率高いですよ〜?

 明らかに狙っている人が五人、意識している人も含めると十人以上いますぅ」

「えー、そんなにモテるの? 彼…って、ご主人様?」

「お、ま、ち、ど、お、さ、ま!」

「ぁ、あはは〜♪ 聞いてたのアキト君…」

「カウンター席で話してれば聞こえて当然だ!」

「バカばっか」


ああ、ルリちゃんの無情の突っ込みが身にしみる…って、兎に角


「コーラル、何度言ったら分かるんだ! もうご主人様はやめろって!」

「でもぅ…うぅ」


コーラルは涙目になって俺に抗議する…

駄目だ…こうなったらもう、コーラルを説得するどころじゃない。

何せ元がかわいい上にこういう表情が決まるコーラルの事、ナデシコ食堂でこんな表情を見せれば…


「ちょっと、アキト君! 謝りなさい! 別にご主人様って呼ばれるくらい良いでしょ う!」

「いいんですか?」

「いいの! 男の夢じゃない!」

「「「「「「そうだそうだ! うらやましいぞー!! テンカワ・アキト!!」」」」」」

「はあ…」

「バカ」


整備員一同に聞きとがめられていたらしい。

…これからしばらく、俺のあだ名はご主人様か…(泣)

まあこの際、俺の立場なんぞどうでもいいか。

みんな残さず食べてくれたし…

ふと気になって、ルリちゃんに味の事を聞いてみる…


「ルリちゃん、どうだった? 問題あったかな?」

「基本的には美味しかったです…でも、やっぱりこれは

 ホウメイさんの味のコピーですから、テンカワさんの味ではありません」

「…そうだね。だったら今度は、テンカワ特製ラーメンでも作ってみるかな…」

「私も一緒で良いですか?」

「ああ。仕込みもあるから、二・三日待ってもらう事になるけど…必ず」

「分かりました。きっと呼んでくださいね」

「それじゃ、私もお邪魔しよっかな」

「ご主人様…」

「はあ…お前は先ず制服をもらって来い」

「えー? これはメイドの制服ですよー!」

「そうじゃなくて、ああいうの!」


そう言って、近くに来ていたサユリちゃんを指す。

サユリちゃんはにっこり笑って近付いて来た…


「どうしたんですか?」

「いや、コーラルに制服を着ろって言ってたんだけどね…」

「その事ですか…」

「こら! テンカワー!! サボってるんじゃないよ!」

「はーい!」


その日は結局これ以上、制服について話す事は出来なかった。

まあ、いくらなんでもそのうちプロスさんが何とかしてくれるだろう、という目算もあったのだが…

注文が来ていないようなので、俺はまた仕込みに戻るのだった…












通信でコケにされた連合宇宙軍はナデシコ追撃のため、すぐさま世界中の艦隊を動かしたが…

その殆どが活性化したチューリップによって足止め、中には撤退の憂き目にあうものも少なくなかった。

しかし、沖縄に駐留していた第三艦隊・第六特務部隊は違った…

といっても、凄まじい違いがあった訳ではない。

ただ、先日アキトの破壊したチューリップの近辺で演習を行う事になっていた、と言うだけだ。

それも、普通なら追いつける筈がないのだが…ちょうどクリムゾンにテストを頼まれた新型高速巡洋艦

<アナナス>の試験運転を兼ねた演習であった事もあり、高度三千km付近で捕捉することが出来た…


しかし、クリムゾンはまだグラビティブラスト用装備等はないから、普通ならそこで終わりの筈だった。

…が、この部隊には連合軍きってのエース<イツキ・カザマ>の所属する、エスピシア部隊が存在していたのだ。

偶然も重なれば必然になると言うが、もちろんこれは必然である。クリムゾンの裏工作の成果であった…

しかし、彼らもこれ単体でどうにかなると考えているわけではない…ただの嫌がらせである。

本来はナデシコ内の人質を取ってあるメンバーに内部呼応させる予定であったが、

それらはルリやラピスのハッキングによる素行調査や、ネルガルシークレットサービスの活躍により全てご破算となっている…


乗せられた第三艦隊こそ哀れであろう…

第三次防衛ラインのデルフィニウムと協力すると言う手もあったが、

高度一万km付近にいる彼らの所に行くまでに引き離されてしまう為、連携にならない…

しかし、その様な背景も知らずナデシコに対し突撃を敢行する事となった彼らには与り知らぬ事。

既に戦闘準備を終え、後は出撃命令を待つばかりである…


『之より目標・ナデシコに対しミサイル攻撃を慣行、それに合せて0403エスピシア部隊に出撃してもらう。

 地上ミサイル基地からの支援もある…生きて帰って来いよ! お偉いさんのわがままで死んだんじゃ報われないからな!』


艦長のいささかユニークな訓辞を聞きながらクスリと笑ったイツキは、ミサイルを前に見ながら出撃する…


「イツキ・カザマ、エスピシア…出ます!」


イツキに続き、四機のエスピシアが出撃する。

イツキはそれらを率いてナデシコへと向かった…












一方、ナデシコのブリッジでは――――


低空から出現した敵に対しどう動くか、という議論が始まっていた。

既にプロスは一つの意見を提示している…


「後の事も考えますと、死者だけは出してはいけません。帰りに和解する事が難しくなりますからな」

「そうよね〜、別に地球の敵になりたい訳じゃないし…」

「通信は送っていますが、向こうはだんまりを決め込むみたいです」

「それじゃあ、連合宇宙軍の船の制御コードでも調べてみようか?」


上からミナト、メグミ、ラピスの順だ。ラピスはルリと交代してオペレーターをやっている…

ラピスのかなり物騒な言葉をプロスは流しながら、彼の意見を伝える。


「兎に角、兵器が尽きれば追っても来れません。そういうわけで艦長、お願いします」

「うーん…それじゃあ、先ず先鋒として放たれるミサイル群にグラビティブラストを掃射、

 その後はパイロットの皆さんに艦載機の足を止めてもらいながらナデシコは上昇…

 多分、そう高い高度まで行かなくても振り切れると思うよ?

 …ジュン君はどう思う?」

「それが妥当だと思うよ。

 ただ、テンカワのエグザは修理中…ウリバタケさんが頑張ってくれてるみたいだけど、後一時間はかかる…

 エステのパイロットのヤマダは昨日《骨折が悪化して変な方にくっついた》とかって報告が上がってきている。

 当面は、テンカワにエステを使わせる方向で行くしかないと思う」

「ええ、その辺は当社としても問題はありませんので、どんどん使ってください」

「じゃあ、Bクラス戦闘態勢を発令。メグちゃん、関係各所に通達お願い!

 ミナトさん、ミサイルの回避お願いします。下からのミサイルよりも痛そうですから。

 ラピスちゃん、グラビティ・ブラスト、チャージ開始!」

「関係各所への通達完了! テンカワさん、ヤマダさんの予備で出るそうです」

「はいはーい♪ こっちの準備はいいわよ〜」

「チャージ開始、十秒後に発射可能です」

「それじゃあ、一度相手の方を向いてぶっ放しちゃってください。但し、艦載機には当てない様に」

「はい、気をつけます…グラビティブラスト発射」


ラピスはミナトの軌道修正が終わってから、収束気味にグラビティブラストを発射した…

既にミサイルとエスピシアは出ていたので、絞り込む必要があったのだ。

五機のエスピシアを外して撃った為、ミサイルが掃討しきれていなかったが、気にせずナデシコは上昇を再開する。

アキトのエステバリスが発進したのは、ナデシコが上昇を開始してからだった…










『テンカワてめー! 俺のロボット勝手に使うんじゃ ねー!』


予備のエステに乗り込み出撃を待っていると、ガイが足元で叫んでいた…

ガイの奴…それだけ元気ならエステ乗れるんじゃないのか?

いや、バカな事を考えるのはよそう…アイツの場合、熱血している時は本当に痛みを忘れるらしいからな。

下手に刺激しないほうがいいだろう。


「そう言うな。何もこれが最後の戦いじゃないし…それに、骨折の方だって後三日は絶対安静の筈だろ?」

『そういう問題じゃねぇ! 大体昨日にしたって何だ? あのゲキガンフレアその ものな技は!

 あれに俺を乗せろ! そしたら許してやる!』

「…治ったら幾らでも乗せてやるが、あの技は止めとけ」

『俺じゃ出来ないとでも言うつもりか?』

「いや、さっきセイヤさんに聞いたんだが…なんでも、あの技を出したらフレームごと歪んじまうとか。

 俺も禁止を喰らったばかりさ…下手すると爆発するそうだ…」

『げっ…だ、だがリスクが大きいのも必殺技のお約束! きっとモノにして見せる ぜ!』

「はあ…お前、もっと命を大切にしろ。かっこつけるために命張ってちゃ、いくつあっても足りないだろ」

『何言ってやがる、それはお前の事だろが! ヒーローの要素だらけの癖しやがって!

 まあ、ヒーローとしては俺ほどじゃないが…お前の方が危なっかしいぜ』

「…そうか…そうかもな。だが、今回は任せておいてくれ。三日後からはお前が活躍すればいい」

『チッ…許してやらぁ。だが三日だけだぞ!

 それに、お前が危なくなったら俺が必ず駆けつけてやる。

 俺の骨折を悪化させたくなかったらピンチになるんじゃねーぞ!』

「ああ、じゃ行って来る…」


そう言って、俺は空戦フレームに換装したエステを移動させる…

今度はセイヤさんが話しかけてきた。


『よう、ご主人様!』

「ははは、やっぱり広まってたか(汗)」

『お前が二児の父でご主人様な事はナデシコの殆どが知っている事だ。今更気にする事じゃねーだろ』

「一応、常識人でいたかったんだけど…」

『お前じゃ無理だよ。大体俺も、お前に会うまでは

 <黙ってても女が寄ってくる体質>

 なんて、本当にいるとは思ってなかったからな…』


あ…セイヤさん、何かこめかみがヒクヒクしてる…

さっさと出撃した方が無難だな。


「ところでセイヤさん、用件は何です?」

『…ああ、武器は何にする? 予備機(そいつ)には基本武装が 無いからな』

「それじゃ、ラピットライフルを」

『よ〜し、テンカワのエステにラピットライフルを持っていってやれー!』


セイヤさんの号令で、クレーンがラピッドライフルを吊り下げてくる…

俺はエステを動かしライフルを手に取る。

そのまま、カタパルトデッキに移動し――


「テンカワ・アキト、エステバリス…出る!」


轟音と共に発進した……












なかがき


最近前後編が板についてきた気のする黒い鳩です

最近殴っていない所為か少しアッパー系のルリです

って、え? 殴ってないからって何?

当たり前じゃないですか、私の出番が殆ど無いSSに成り下がっている今私が貴方を殴らないでいるんですから当然鬱憤も溜まります!

だから、九話で出すって…

そんなの当たり前です! 大体が出なくてはこのSSの人気も下がる一方でしょうに…

でもさ、実際この話長いから…まだ前半もいいとこだし…

それはまあ、そうですが…ってそう言えば、あの後私の告白を早くしてくれと言う メールが来たのに、まさか無視するつもりじゃないでしょうね…(怒)

いや、ようやく告白ポイントが決定した!

告白ポイントって…まあ良いです、それで何処なんですか?

それは、言えない、というか言ってしまうと面白くないしね…でも確かに話の中盤くらいまで早くなった筈だよ…

そうなんですか…まあその事は今回は深く追求しないであげます。でも、今回早すぎ る再会なんて題名ですが…再会するのは誰です?

みんなの知ってる人だけど…っというかバレバレだよね…

私より 先に再会させる気ですか!

いや、だから早すぎる…ってだめ?

駄目です! さあ、久々に食ら いなさい!

いきなりですかー!!

問答無用! 瑠璃色のファーストブリッドー!!

ドッゴーン!!


ぐぼぁ…へへ、俺が死んだら俺の灰を海にまいてくれ…

嫌です。

何と冷たいお言葉…ガハッ…



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