シルフェニア50万HIT作品として急遽作りました、コーラル視点のお話です。

これは午前中までしかかけませんでした、午後の分はまた別の機会に…と考えております。(場合によっては100万HIT時)

皆様と違い急造な上に大したイベントの無いお話ですが、読んでいただければ幸いです。



こんにちは!

今回の前説をさせていただく事になりました、コーラル・ド・マロネージュ・アイドクレーズといいますぅ。

なにぶん不慣れですので、ミスなんかはご容赦くださいね。

それでは、前説に行かせて頂きますぅ。

私がご主人様にメイドとして雇っていただいて三ヶ月、ようやく生活にも慣れてきました。

ああ、ご主人様はテンカワ・アキト様といいますぅ。

ご主人様は、何と言うか普段はぶっきらぼうな口調で話す人なんですけど、とっても優しい人なんです。

私が失敗した料理も食べてくれますし(ユリカに比べればはるかにマシだ…とか言ってましたが、ユリカさんってだれでしょう?)、

転んだり迷ったりした時はいつも助けてくれるんですぅ。

時々なぜ転んだり迷ったりするのか不思議そうに聞いてくる時もありますけど。

なぜかは本人にもふめいですぅ!!

というか、分っていたらなおってますぅ!!

…少し悲しいです。

あ、すいません。話が横道にそれちゃいました。

兎も角、これから話すのはご主人様の日常の風景だと思ってくだされば、多分それほど違ってないと思いますぅ。

それでは、本編に進みま〜っす。

……はぁ、前説ってこれでいいんでしょうか?




機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜外伝





第五・五話「メイドさんから見た景色」午前中




ご主人様は、現在六畳一間と台所、押入れというかなり窮屈な部屋に住んでいます。

私は隣の部屋を借りているんですが…私の部屋の方が少なくとも三倍は広いです。

何でもカグヤさんは最初自分の家の近くに家を買って住まわそうとしたらしいんですけど、ご主人様の方が断ったのだとか。

一人住まいならそれでも良いのですが…現在は四人が一部屋に住むという、何というかすし詰め状態ですので大変です。

お掃除は楽ですが、一応メイドとしてはちょっと悲しいです。

お給料はかなりもらっているようですから、部屋はもっと良いのがあると思うんですが…(汗)

私も一度聞いてみたのですが<その時はあれでいいと思っていたんだ…>と、どこか遠い目で言われました。

ルリ・ミルヒシュトラーセ様やアメジスト・テンカワ様、ラピス・ラズリ・テンカワ様は特にそういった事で不満を持っているようでもないですが…

一つあるとすれば、夜の問題でしょうか。

六畳に布団4組ですから、寝るときはかなり無茶な体勢になるようです。

ご主人様のお布団の右と左、そして頭の上にお布団を配置しますが、ご主人様は手足を伸ばして寝られないでしょう…

細かい事を考えると、ちょっと頭痛いです。(汗)


兎に角、朝になり私は朝食を作りに行く事にしました。

料理については、ご主人様の方が私より上手に作られるのですが…

その事に何かトラウマを抱えているらしく、ご主人様が作られる事は滅多にありません。

その為にご主人様から台所を預かっているのですが、私としても料理くらいはきちんとしたいと思っていますし、

ミルヒシュトラーセ様以外はまだ料理を憶えている最中のようですので皆様にも重宝がられています。

一応これでもキッチンメイドとして働いていた時期もあるので、料理はそれなりに作れます。

もっとも、セカンドでしたからファーストの人ほどには作れませんが…

因みにキッチンメイドというのはコックのサポートをするメイドの事で、料理人見習いと言っても過言ではないです。

皿洗い等はスカラリー・メイドという専門の下働きさんたちがいますので、それほど重要ではありませんでした。

基本的に、メイドは階級制を伴っていますのであまり役職が変更される事はありません。

……が、私の場合事情が特別だった所為か、それともドジの為なのか、

途中で役職が変更されパーラー・メイド(給仕係)に変わってしまいました(汗)

実質的に何が違うのかと言うと、キッチンメイドやスカラリーメイドはコックの下で働くのですが、

パーラーメイドはハウスキーパー(女中雇用管理人)の下で働きます。

本来はベッドメイク等はハウスメイドの仕事ですが、私はそちらの方もやっていました。


それと、一応言っておきますと、私の服装は正規のものではありません。

どちらかと言えば、スタイルはフレンチメイド(あっち系専門のメイドさんです)に近い気もします。

本来のメイド服と比べれば多少…その、スカートが短いですし…

でも、それはパーラーメイドになる際に与えられたもので、元々着ていたわけではありません。

マロネーの趣味だったのではないでしょうか…(汗)

ご主人様は何も言わないのでそのまま過ごしていますが、実はどうしようか迷っています。



「…今日の食事は豪勢だな…」

「別に、そんな事は無いと思いますぅ。本当はもっと豪勢なものを毎日用意する事だって出来ますけど…ご主人様が嫌がりますから」

「まあな、実際そんなには要らない事が多いしな」

「はい〜。でも英国式が合わないのでしたら、他の料理も覚えるように致しますぅ」

「いや、無理にとは言わないが…」

「いえ! 頑張りますぅ…あっとっと!?」


私の体勢が傾いて倒れそうになった時、腰の辺りをガシっと掴まれた感覚がありました。


「…ふう。危なかったな、気をつけてくれよ」


良く見れば、ご主人様は私の腰を取って支えてくださっています。

私は、一瞬で頭に血が上ってしまいました。顔が真っ赤になっているのが自覚できます。


「すいません!! また、ご主人様の手を煩わせてしまいました…お許しくださいぃ!!」

「いや、別にそれくらいいつもの事だろう?」

「そういわれるのもなんだか悲しいですぅ(泣)」

「そういわれてもな(汗)」


ご主人様は困り果てた顔で私を見つつ、腰から手を離しました。

私はまだ恥ずかしかったですが、兎に角朝食を運んでいく事にしました。


私がお出しする朝食は英国式の朝食が多いです。

というか、英国式以外はあまり知らないと言うのが現状だったりしますぅ…(汗)

今回は古式ゆかしい英国式朝食、English Breakfastをお出しする事にしました。

もっとも、最近は一般的といえるのかどうか疑問だったりしますが(汗)

内容としては、オレンジジュース・フレッシュグレープフルーツ・シリアル・ソーセージ・ベーコン・トマト・マッシュルーム・スクランブルエッグ・ブラウン トースト、

そしてブレックファーストティーです。

ブレックファーストティーとはダージリン、アッサム、セイロン等、

東アフリカの茶葉をイギリス人のティーブレンダーによってブレンドされた物の事で、基本的にミルクティーとして嗜みます。

日本では二種類の飲み物が朝食に出るというのは珍しいかも知れませんが、英国式としてはそれなりによくある事です。

もちろん絶対に必要と言う訳ではありませんし、基本的に順を追ってお出ししますので、一緒に飲むという感覚はありません。

最近では英国でもあまりに重過ぎるとして朝食に上らなくなりつつあるEnglish Breakfastですが、力をつけるにいいのではと思います。

それに、不思議な事ですがご主人様以外のお三方は食事量が多いんですぅ(汗)

見た目は妖精の様な人たちなんですけど…食べても太らないのは羨ましいです…


「コーラルさん、料理上手ですね。今度教えていただけませんか?」

「はい、ミルヒシュトラーセ様がお望みなら、いつでも」

「ありがとうございます。所で、ミルヒシュトラーセ様と言うのは、少し…」

「ですが…メイドである私からみると、ご家族はご主人様の次に大切ですぅ。細かい事は置いておいていただけると嬉しいです」

「はあ、そうですか…仕方ありませんね。でも、少しずつでいいです、出切ればお友達になりましょうね」

「ありがとうございますぅ♪」


皆様が食事を終え、アメジスト様とラピス様が中学校へと向かう頃、ご主人様も出かける事になりました。

先ほどの理由で新しい家を探す為に出かけるようです。

私もついていくと言ったのですが、結局断られてしまいました…

因みに、ミルヒシュトラーセ様は明日香インダストリーで並列演算式遠隔操縦システムの研究を行っている、シノダ博士の手伝いがあるそうです。


私は、皆様が出かけられた後、食事の片づけを済ませて自分の食事にかかります。

ご主人様は一緒に食事を取ろうと言って下さいますが、使用人の礼儀として主とは食事を共に出来ません。

それを言うと渋い顔をしていましたが、私が追加で“スペースがない事”を主張しますと、うなだれながらもご理解いただけました。


食事が終了した後、掃除に取り掛かります。

とはいえ、六畳一間とキッチン、そして、あるのが奇跡な浴槽。それからトイレ…かなり念入りに掃除しても二時間はかかりません。

物も少ないですし、アメジスト様のゲキガンガーグッズ以外は、皆様のお荷物もそう多くないです。

それでも押入れの中には沢山の衣装があって、シワにならないようにするのが大変だったりしますが(汗)

一通り掃除を終わらせ、洗濯物を干すと午前の仕事は終了です。



「ふう、一通り終わりました…」


その後は、土日なら買出しに行くのも良いのですが、昼食は私一人の食事になります。

特に買出しなどしなくても、自室にあるもので済ませてしまえば問題ありません。

次はアメジスト様やラピス様の帰ってこられる3時過ぎまでに夕食の買出しを済ませておくくらいで、他には特にする事がありません。

一度自室に戻って休憩する事にしました。





休憩とは言っても昼食まではかなり時間があります。

そこで、買いだめしてあるココアを飲む事にしました。

特別な入れ方をするわけではなく、ただお湯に溶かすだけ。

それでも、ココアは十分美味しいです。


「ズズズゥ……

 ふう、やっぱり、ココアが一番美味しいですぅ、

 アールグレイ(紅茶にベルガモットの香料で香りをつけたもの)やニルギリもいいですけど、甘い物には敵いません。

 ロイヤルベンガルタイガー(オレンジティーの一種)やストロベリー・ミルクティは結構好きですけど…」


ちょっと、暴言かも知れませんが、私には本当の事です。

実際紅茶は少し凝っていますが、ココアには及びません。

もっとも、ご主人様にそういうと、味覚の年齢がまだ子供なんだろうと言われました。

失礼しちゃいますぅ!!

女の子にとって甘い物は別腹と言うのは神の至言だというのに!

……とはいっても、後で後悔するんですけど(汗)



ぼ〜っと過ごしているうちにティー(ココア?)タイムが終わりましたが、まだ午前十時。

今日はご主人様についていけなかったので、時間が出来てしまいました。

お昼まではまだ時間がありますので、ナガサキホスピタルの方にお見舞いに行く事にしましょうか…



地図を片手にナガサキホスピタルを目指します。

お見舞いなどはそのつど、途中に寄ったお店で買うようにしています。

徒歩20分の距離と伺っているはずなのに、いつ歩いても一時間以上かかってしまうのが不思議ですぅ(汗)

今日も何度か迷ったのですが、お昼前にナガサキホスピタルにたどり着く事ができました…

病院は三十階建てという高層建築ですので、目立つはずなのですが…ちょっと悲しいです。


ホスピタルに入って受付で面会の申請を行います。

私が会いに行くのは、マロネーに利用されていたメイドの皆さんです。

ご主人様やシェリーさんがいなければ、私も同じ状態になっていた事だと思います。

今にして思えば私は運がよかったのでしょう。

そう思うと余計に悲しい気もしますが…


「ふう、こんな事じゃいけないですぅ。元気だけがとりえなのに…」


そんな事を口に出しながら何とか元気を出して、皆さんのお部屋を訪ねました。

ネオスとして使われていたメイド仲間の内、助かったのは9人です。

私は最初にヘッド・ハウスメイド(一般家事女中頭)をしていた、ロマネさんのお部屋に向かいました。


「お邪魔しますぅ」

「はい…ああ、コーラルですか、いらっしゃい」


病室のロマネさんはベッドに座って忙しそうに手を動かしていました。

よく見れば、何かを刺繍しているみたいです。

私がそこに目をやると、あわてて背後に刺繍を隠しました。

多分まだそういったことは紅玉さんに止められているのでしょう。

ロマネさんは金髪碧眼で彫りの深い顔をした、西欧美人さんです。

ストレートのロングヘアをいつも、結い上げて綺麗にまとめています。

23歳という若さでヘッド・ハウスメイドを務めるほどのやり手で、

メイドとしての仕事だけでなく、財産管理などの本来は執事が受け持つ分野に属する事すら完璧にこなします。

<ミス・パーフェクト>などと呼ばれていた事もありました。

マロネーの館にはハウスキーパーがいましたが、実質的なメイドの取りまとめ役は彼女の仕事だったと思います。


「え? コーラルがきたって?」

「ほうほう、そりゃ嬉しいね。新生活は上手くいってんのかい?」

「コーラルちゃん! ひさしぶり〜♪」

「皆さん落ち着いて、コーラルさんがびっくりしてしまいますよ?」

「それもそうだね」


それぞれ部屋を与えていただいているのですが、実際皆さんかなり元気に暮らしています。

発作はほぼ定期的で、その時は流石に部屋で寝ていますが、そうでないときはよくロマネさんのお部屋に集まっている事が多いです。


それでも、定期的に栄養剤を投与しなければ直ぐに死んでしまう事も考えられる…と、紅玉さんが言っていました。

ご主人様は何か考えがあるようですが、直ぐには難しいと考えているようでした。

私は紅玉さんに「アイドクレーズの資産を自由に使っていいので、できうる限りの事をやって欲しい」と頼み込みましたし、

実際、現状で取りうる最高の医療を行ってもらっているのですが…ナノマシンを完全に除去する事は難しいそうです。

普通ナノマシンには、体に悪影響を及ぼした場合の為に<死滅コード>と言うものが植えつけてあるらしいのですが、

ナノマシンが未登録だった所為もあって死滅コードはキャンセルされたとの事です。

この結果を受けて以来、紅玉さんはずっとナノマシン除去の方法を研究しているそうです。

ほんとうに、感謝してもしきれないです。

私は…私にできる事は既に無く、ただ見舞いに来る事しかできない…

でも、私が悲しい顔をしたらみんなが悲しむから……だから


「皆さん、今日のお見舞いは、長崎堂のカステラです!」

「むっ、これは微妙な…」

「エール! あまりからかうんじゃありません。コーラルの気持ちなんですから」

「う〜ん、でも、カステラは十回目だから…(汗)」

「うぅ、すいません」

「いえ〜、いいんですよ〜♪ 私はカステラ好きですしぃ〜エールみたいな不義理じゃないですから〜♪」

「カシス…あんた、一人でいい子ちゃんぶる気? あんただってこの間プリンの方がいいかも〜とかいってたじゃない!?」

「そんな事ないですよ〜プリンも好きっていうだけです〜」

「グッ!? ふーんだ、どうせ私だけ悪い子だっていうんでしょ? いーもん、いーもん、グレてやるんだから」

「こら! あんたたちいい加減にしなさい! いいですか、ここは病室なんです。

 仕事中ではないとはいえ、騒いで良いというわけじゃないんですよ!」

「「すいません(汗)」」


エールさんとカシスちゃんは二人でいる事が多いです。

しょちゅうケンカしているんですけど、仲がよく見えるのは“ケンカするほど仲がいい”という事なんでしょうか?

でも、実際仲がいいようにしか見えませんけど。

エールさんは18歳、私と同じでパーラーメイドをしていました。

日に焼けて褐色がかった肌と赤色にも見える栗毛の髪をショートヘアにした、健康的美人です。

スレンダーな体ですがスタイルが非常によく、綺麗というよりは格好いいと評したほうがいいようなスタイルです。

少しざっくばらん過ぎる所はありますが、付き合いの良い人ですので仲間内でも人気の高い方でした。


カシスちゃんは私と同い年の15歳で、やはり元パーラーメイドです。

動きがワンテンポ遅いものの、いつも幸せそうな顔をしているのんびり屋さんで、彼女の傍にいると何だか幸せな気分になります。

でも、メイドとしての仕事はきっちりこなすので、私より優秀です。

カシスちゃんは私と比べると背が高くて170cm近くあり、

髪の毛はアッシュブロンドでふんわりとしたカールがかかっているのが特徴で、

更にスタイルも全体的にバランスの良い感じにまとまっているのです。

……比べてみると自分がいかに出来が悪いのかとか、女性として不利だな〜とか思ってしまいます(汗)

そんな風に少しへこんでいると、背後からいきなり抱きすくめられました。


「キャ!?」

「ふふ〜コーラルったら、相変わらず胸おっきいわね…うらやましいわ〜♪」

「ちょ、カールアさん!?」

「ふふ、な〜にかな?」

「やめてください、そんな…あぁ!?」

「やっぱり、もみ心地最高ねコーラルの胸♪ 今はEカップかしら?」

「そん…なこと…なんでっ…わかる…んっ…ですかぁ!?」

「そりゃ、いつももんでたからねぇ〜」

「こら! カールアやめないさい!」

「ちぇ、久しぶりにコーラルの胸を堪能していたのに〜」

「はあ…幾ら女性同士でもセクハラですよそれは」


ロマネさんに止められてちょっと頬をふくらませているのは、カールアさん。

彼女は元ハウスメイドで、ロマネさんの指示を皆さんに伝えたり、掃除の指揮を取ったりするのが仕事でした。

何といいますか…悪ふざけというか、スキンシップの好きな人で、しょっちゅういろんな人の体にさわっています。

私も被害にあった口ですが、不思議と嫌いになれない愛嬌のある人です。

年齢は25歳で長い黒髪を結い上げています。目はまるで黒曜石のように光を反射して輝いていてとても綺麗です。

肌の色は黄色人種のそれで、モンゴル系の血が入っているとか…

彼女も胸の大きい人なんですが、私のようなアンバランスなそれではなく身長にあったバランスが取れています。

とにかく、私はロマネさんにお礼をいう事にしました。


「ありがとうございますぅ、ロマネさんにはお世話になってばかりですぅ」

「ううん、こちらこそ。ここで充分な治療を受けられるのは貴女のおかげなんでしょう?」

「いえ、あの…そういうわけでは…」

「こら、アタシたちを甘く見るなよ? ただの元メイドって訳じゃ無いんだからな」

「ううぅ…」

「別に〜悪い事じゃないんですから〜黙ってる事無いですよ〜♪」

「大丈夫、私達感謝してるし、それにそんな事で変な目で見ないわよ」

「それにラオやキュール、コーニャもみんな知っているからね、コーラルが人を欺くのは無理って事さ」

「すっ、すいませんですぅ! 私…急に自分がアイドクレーズの相続人だって言う事がわかったんですけど、

 自分では怖くて…とても名乗れなかったです」


私が皆さんの前で固まっていると、カールアさんが私の肩をポンと叩き。

微笑みかけてくれました。

良く見れば、ロマネさんもカシスちゃんもエールさんもみんな私に微笑みかけてくれています。


「別に、そんな事でみんな仲間外れにしたりしないって」

「うぅ…カールアさん、ありがとうございますぅ」

「それよりさ、みんな元気になったら、雇ってくれない?

 私達マロネー様…ううん、マロネーに記憶をいじられているから…昔の事が思い出せないし、

 出切ればみんな一緒にいたいから…駄目?」

「えっと…」

「それいい♪ これからもコーラルの胸をもめるんだねぇ〜♪」

「ちょっと! カールアさん!!」

「はは(汗) 冗談、冗談…」

「本当にそうですかぁ?」

「…ちょっと本気」

「(怒)」


私は思わずカールアさんを睨みつけてしまいました。

もっとも、そのことはちょっとも後悔していませんが。

流石に気まずくなったのかカールアさんは部屋から出て行きました。


「ごめんなさい、あれでも悪気は無いのよ」

「そんな事しってますぅ、でもやっぱり問題ですよぅ」

「はは、確かにそうだな」

「でそれで〜、雇ってくれないんですか〜?」

「ごめんなさい、私一人では判断できませんです」

「へ?」

「それは一体どういうことですか?」

「私、今もメイドやってるんですぅ!!」

「「「えー!?」」」


三人はなぜか凄く驚いていました。

もしかして、アイドクレーズ家の事について調べるのにかかりきりになっていたのでしょうか…

いえ、考えてみれば私の財政管理は(本人は知らないでしょうけど)後見人になっているご主人様を介して、

明日香インダストリーに管理を委託している形になっています。

平たく言うと明日香インダストリーの株を購入しているわけです。

残額も殆ど明日香系列の会社に貸し付けていますので、明日香インダストリーはかなり株価が上昇していると聞いています。

表面上は明日香が隠れ蓑になって私が相続した資産を覆い隠してくれている上、

遠縁の親類とか父の元愛人とか、そういったお金を欲しがる人々への対応も明日香インダストリーが行ってくれています。

更に、アメジスト様やラピス様、そしてミルヒシュトラーセ様が偽の情報を流すなどして下さったおかげで、

私がアイドクレーズの資産を引き継いだ事がわかっても、お金の行方と私が現在何処で何をしているかは分らない訳です。

でも…私メイド服脱いでないんですし、何をしているかなんて一目瞭然だとおもうんですけど(汗)


驚きからいち早く立ち直ったロマネさんは少しどもりながらも私に質問をしてきました。


「ええっと…ど、どうしてそんな事をするの?」

「そんな事ってなんですか?」

「メイドの仕事の事だけど…貴女働かなくても食べていけるのよ?」

「ああ、その事ですか…だって、働いていないと落ち着けませんですから。それに、私、理想のご主人様に出会ったんですぅ!!」

「「理想のご主人様?」」

「格好いいですし、優しいですし、行動力もあって、皆さんの中心的存在無いんですぅ♪ 凄い人なんですよぉ!」

「何!? 一体誰の事だ? それ」

「そうですよ〜、気になります〜、コーラルちゃん教えて教えて♪」

「え、あ…はい、お名前はぁ、テンカワ・アキト様といいますぅ…きゃ♪」

「テンカワ・アキト…」

「え? どうかしましたか?」

「私達を、っていうか、ネオスとして使われていた私達を倒した人が、確かそんな名前だった気がするんだけど…」

「はい! その通りですぅ!」

「…やめておきなさい」


突然、ロマネさんが真剣な顔で私に話しかけるのですが、

私はその真剣な表情を見て、少し後ずさりました。それくらい気配が緊張しているのが分ります。

それはロマネさんだけじゃありません、カシスちゃんもエールさんも同じ様な緊張感をかもし出しています。

私は、雰囲気に一瞬のまれそうになりましたが、それでも、ロマネさんたちを見返します。

何故アキト様をご主人様としてはいけないんでしょうか、聞いてみないことには分りません。


「何故、アキト様をご主人様としてはいけないんですか?」

「それは…彼が強すぎるから…」

「え?」

「私達がネオスとしての全力で更に二人がかりで挑んでも彼には勝てなかった」

「化け物みたいな〜強さで〜私達もぜんぜん敵わなかったです〜なんかその後、びりびりさせられて放置させられちゃいました〜」

「まあ、そういうこった、アタシは刀使いの女にやられたから詳しい事は分からないけどな」


もしかして、ご主人様が自分の強さをかさにきるタイプの乱暴者だとおもっているのでしょうか?

だとすれば、断固として違うといえます。


「皆さん聞いてください、ご主人様は強いですけど、暴れたりするような人でもなければ、好んで人を殺すような人でもありません。

 何より、ロマネさんやカシスちゃんが生きている事がその証明になる筈です」

「でも、彼はゴドウィンを殺している…人を殺した事があるのよ? それでも、その人が安全と言える?」

「…ロマネさん、ありがとうございますぅ、私の事心配してくれて嬉しいですぅ♪

 でも、必要ないですよ。だって私ご主人様のお世話をできる事が幸せですから♪」

「えっ!?」

「確かにご主人様は人を殺しているかも知れません、でも、沢山の人を幸せにしようと頑張っています。

 多分最後は自分を棄ててでも今の戦争を終わらせるつもりです。

 ご主人様は自分の事を考えないで人を救おうとする人なんです。

 だから、沢山の人が集まってきます。

 利用しようとする人やすがろうとする人、それに彼の危なっかしさを見ていられない人。

 色んな人達が集まる中で、ひときわ彼の近くにいる人たちは大抵彼の事が好きで、彼の事を支えてあげたいと思っています。

 ミルヒシュトラーセ様、アメジスト様、ラピス様、紅玉さん、アイちゃん、ツバキ様、トウジ様、サチコ様、シゲル様、

 カグヤ様、タカチホ様、ホウショウ様、ムラサメ様、ウリバタケ様、みんなそうです。

 でも、支える方法は一つではないですよね?

 ご主人様の戦いをサポートする人もいれば、より良い方針を指し示す方もいます。

 情報を押さえている方もいれば、心理ストレスを緩和する方もいるんです。

 私は、ご主人様についていきたいと思いました。

 世界の平和、もしかしたらそれはどうでもいいのかもしれません。

 ただ、ご主人様に本当に心のそこからの笑いを、安心を、幸せを見つけて欲しいからです。

 私も幸せに生きてきたとは言い切れないですが、ご主人様を追いかけている今は幸せです♪

 だから、皆様は心配しないでください!」


もしかしたら、私が真剣にご主人様の事を話したのはこれが初めてかもしれません。

でも、決して嘘はないです。

これが、私の本当の気持ち…


「そう…そこまで分かっているなら止めないわ」

「ロマネさん…」

「ただし、私達にも紹介してくださいね。貴女を雇った以上、その人は私達を雇う義務がありますから」

「そうです〜みんなの就職先のためにもぉ、おねがいしますよ〜♪」

「まあ、アタシは認めたわけじゃないけど、お前を任せられるご主人なのか見定めてやるよ」


三人とも、どこか諦めたようなそれでいて少し嬉しそうなそんな目で私を見ています。

確かに皆さんはご主人様と戦った事があるのでしから、何かしら思う所があるのかもしれません。

それでも、私にとっては大切なご主人様なのです。

それを分かって貰えたという事はとても嬉しいことだと思います。

思わず、私は皆さんに笑顔で…


「はい! 皆さんも雇っていただけるように話しておきますぅ♪」


そう言うと、何を思ったのか皆さんが私を思い思いに抱きしめて頬ずりしたり頭をなでたりとまるで娘にするように私に接します。

とても恥ずかしかったですけど、何か暖かいものが伝わりました。

でも、これでご主人様には何とかしてお屋敷住まいになってもらわなければいけなくなりました。

だって、ご主人様のご家族とメイド10人を住まわせるだけでも大変ですから(汗)

でも、そんな日が来たら凄く幸せだろうな〜って思いますぅ♪








なかがき


皆様お久しぶりです。

SSは暫く書いていなかったので上手くかけた自信は無いですが(昔からとも言う)

外伝とはいえ久しぶりに〜光と闇に祝福を〜を出すなーっとちょっと思いながら作っておりました。

作品として出してもいいのかどうか迷うくらい何にもイベントの無い作品となってしまいましたが、コーラルの背景を少しでも浮き立たせる役に立てばと思いま す。

午後の方を出す事ができればもう少し踏み込んだことが分るかも?

その辺りは本編に組み込んでもいいんですけどね。

兎に角、今回は今まで出てきたメイドの皆さんにも少しだけ言及させていただいています。

キャラクター性というものが出せたか否かは微妙ですが(汗)


さて、メイドさんと言うものについて少し言及させて頂きますと。

現在昔ほど多数のメイドさんを抱える必要がなくなっているというのが現状の為、大人数のメイドと言うものが殆ど無いといえます。

例えば、メイドさんの階級制度などを少し話しますと、コックと呼ばれる人(男女は特に関係ありません)の下だけでも、

ヴェジタブル・ガール:野菜の下準備をする女中。

スカラリー・メイド:食器洗い場女中。

ファースト・キッチンメイド:第一台所女中。セカンド・コック(第二料理人)とも言われています。

セカンド・キッチンメイド:第二台所女中。

アンダー・キッチンメイド:台所女中見習。

ヘッド・キッチンメイド:台所女中頭。

といった感じで多数の役職があります。

実質的にこれら全ての階級が存在するお屋敷はかなり大きな物でしたから、大商人か貴族だったであろう事は間違いないのですが…

それを差し引いてでも分る事は役職の多さに比例するほど人の手に委ねられる仕事が多かったという事です。

しかし、現在は自動化も進み、同じ仕事がかなり簡単に行えるようになっています。

つまり、メイドさんの仕事はあまり多くないという事になります。


だからどうと言う訳でもないですが、未来のメイドさんって…一体何が必要なんだろう?

というのが、現在の私の悩みです。(汗)

それより本編すすめないと…(爆)


WEB拍手ありがとう御座います。

作品に対する拍手はとても嬉しく思っております。

ですが、前回より痔を患っている間全く見ていなかったり、パソコントラブルのせいで感想を頂いたメモが吹っ飛んでしまいました(汗)

そんな訳で、今回のお返事は残念ながら見送らせて頂きます。




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