嫉妬、それは暗い感情。




時に愛しい人さえ傷つける。




しかし、それは愛の強さに比例する、当然の独占欲。




嫉妬しない愛は、博愛であり慈愛。




それは、狂おしい愛とは違う他人のための愛。




本物と偽物を分ける事は出来なくても、嫉妬こそ愛の裏返しと言える。




ならば、私は愛を守ろう、その心のままに愛を歌おう。




本当は……結果が分かっているのだとしても……。




光あふるる場所
In a far star of the future



第九話 「思う心は……」



【君にしか頼めないんだ……】

「うっ……」

「………き……」

【……の件、俺にできる事はなんでもする。だから……】

「ううっ……!!」

「つき……なつき……!」

【……信じているよ】

「なつき!!」

「なっ!?」


ナツキ・クルーガーの執務机の前、ナツキが一人煩悶としていると、隣から大声で呼ばれびっくりして飛び上がる。

おそるおそる左を向くと、そこではストレートに流した亜麻色の髪がどういった理由か浮き上がっているシズルヴィオーラがいた。


「どっ、どうしたんだ? シズル……」

「いえ、今回の任務の報告どしたんやけど……」

「そつ、そうか? では聞こう。どんな結果だった?」

「言わんでも分かりますやろ?」

「ん? そうだな失敗するようなお前じゃないな……」

「そんな事より、一体どないしはりましたん? 声かけても気づかへんかったみたいどすけど」

「あ……いや、なんでもない……」


見抜かれた事が恥ずかしいのか顔を赤くしながら横にそむけるナツキ。

シズルは自分の額に血管が浮かぶのを感じた。


「昨日何かありましたん?」

「昨日!? ああ……別に大した事は無かったぞ!」


一瞬半眼になるシズル。

昨日任務で外出している間に何かがあったのは明白だ。

それも、多分顔が赤くなるような何か。

シズルはなんとしても聞き出さねばと考えた。


「そういえば、昨日はアリカはんが色々大変だったようですな」

「ん、そうだな……まぁ解決した訳ではないが、それなりに決着はついた」

「歯切れの悪い言い方どすなー? 扱いの難しい事件だったんどすか?」

「よくあるいじめだ。アリカは何かと立場が悪いからな、制服を盗んで売ったという事だろう」

「ガルデローベがそういうのんの温床やっていうのは考えたく無いどすなー」

「だが現実としてある以上どうしようもあるまい、実際国家の期待を背負ってやってくる者も多い」

「否定は出来ないどすな、ウチらのころも無かったわけでもないどすし」

「こればかりはな、普通の学校でもなくならないものを、国家のプレッシャーの中で禁止するのは無理に近い」

「それやったら、解決というんはなんおすえ?」

「一応犯人のめぼしはつけた、注意はしていないが警戒はする。学園側からの注意は退学通知に近いからな」

「そうどすな〜。でも、そない言うならどうして決着がついたなんて?」

「彼女の学費を負担してくれる人間が現れたと言う事だ」

「ほー、それは初耳どすな。誰どすか?」

「実は二人いてな、匿名希望の手紙をくれた謎の出資者と、この間ガルデローベに拘束されたテンカワ・アキトだ」

「なるほど、そうどすか」

「どちらを取るかはアリカ次第だが、謎の出資者は少し怪しいな」

「この手紙……確かに、<蒼天の青玉>や王家の秘密も知ってはるのかも?」

「だからどうした物か……とな」


シズルは思わずニタリと口元を緩める、ナツキの表情の変化を読み取ったのだ。

アキトがナツキの思い悩む理由なのだろう。


「ところで、テンカワはんのことどすけど」

「ん?」

「ワープ云々はヨウコに任せるとしても、運動能力なんかも図っておかないと後々問題になるとはおもわはりませんか?」

「というと?」

「体内のナノマシンが正常稼動している今、普通の人ともオトメとも違うその身体能力、興味がありますやろ?

 授業の一環ということで、ちょっとテストしてみようおもとりますんやけど」

「ああ……別に構わないが、シズル……どうかしたのか?」

「いややわぁ、うちがどないかするんわナツキの前だけどすえ?」

「あっ……あぁ……(汗)」


ナツキはシズルが妙なオーラを出している事に気付いたが、怖いので深く突っ込むのはやめにした。

シズルの矛先がアキトに向いた事も何となく感じてはいたが、心の中で手を合わせる事しか出来ない。

実はナツキの恋人候補はシズルによって何度も撃墜されて再起不能に追い込まれた前科がある。

殆どがナツキがうぶな事に気付いた歴戦な人たちだったため、ある意味良かったともいえるのだが、お陰で未だにナツキは恋愛素人である。


「はぁ……」


シズルが出て行ったのを見計らって、アキトの冥福を祈るナツキであった。






















俺に与えられた部屋、応接用のソファーに腰を下ろし、向かいに座るアリカを見ている。

先日の出資者の件でアリカが返事を携えてきたのだ。

アリカも色々考えたのだろう、俺はぽっと出であるし、手紙の人は一応ながら母親を知っているようなのだ。

だが、手紙の人は顔を出さない。

ナオの言っていたところによるとセルゲイ・ウォン少佐らしいのだが、彼は何を知っているのだろう?

鵜呑みにするわけではないが、少佐も多少胡散臭い部分があるということか。

考えが横道にそれ始めているとき、唐突にアリカに声をかけられた。


「いいんですか?」

「……ああ、ここで知り合ったのも何かの縁だろうし、サレナも君の事は気に入ったようだ」


そういって俺はサレナを見る、サレナは相変わらず無表情だが、それなりに思考をしているらしく一拍おいてから、


「はい、アリカさんの事は見守らねばならないという気がします。

 ロジックに組み込まれているというよりはボディに組み込まれたデータのようにも感じますが」

「へー、まるでミユさんみたい」

「ミユをご存知なのですか?」

「うん、って言うかサレナさん知り合いなの?」

「私の今のボディはミユに貰った物です」

「ボディ? 体をもらう?」

「あまり深く考えない事だ。気にしても仕方ない事もある」


アリカにはまだサレナがアンドロイドであるという認識が薄いようだ。

俺も未だに不思議に思うのだ、仕方ないともいえる。


「え……そだね。わかった!」

「それで、出資者の件は俺でいいのか?」

「うん、やっぱり顔も知らない人は不安だし、お母様の事は教えて欲しいけど……。

 ここにいればきっと分かるって思うから!」

「そうか、頑張れよ」


俺は思わずアリカの頭をわしゃわしゃとなでる。

アリカは少しむずがっているようだったが、直に慣れたのか頭を預けてきた。


「うん、アキトを失望させないように頑張るね!」


そう言って少し頬を上気させながらアリカは出て行った、やはり頭をなでられるのは恥ずかしかったか。

とはいえ、いきなり呼び捨てとは……。

彼女らしいといえばらしいが(汗)


「早速アリカはんに手を出すとは、油断も隙もありませんなぁ」

「シズル・ヴィオーラだったか、気配を消して入ってくるとはあまり感心しないな」

「大丈夫どす、そこの機械娘さんには認識されているようやさかい」


見てみると、サレナは右腕を展開してバルカン砲を構えていた。

内部構造的には入っているわけは無いのだがこれも高次物質化能力か……。

正直よく分からん。


「それで、どんな用件なんだ?」

「オトメ達の授業、興味ありませんか?」

「無い事も無いが、俺は本来オトメに近づいてはいけないはずだろう?」

「それはそうどすね、でも、お願いを聞いてくれはるんやったら、参加してもらってもかまいまへんえ」

「?」

「なに、簡単どす。ちょっとテンカワはんの実力を見せていただきたいだけどすよってに」

「なるほど、俺のナノマシンの性能試験か」

「ご名答、というわけで穏便に言うてるうちによろしゅうに」

「了解した」


そうして俺はよく分からないままに、オトメ達の前で戦って見せる事になった……。























「あっ、あのー私そんな事聞いて無いんですけど(汗)」

「緊急で決まりましたさかいなー、聞いてないのも無理ないどす。でも、学園長の許可は取りましたえ?」

「そっ、そうかもしれませんけど。いきなりシズルさんと舞闘だなんて……」

「こういうのは、きちんと強さの分かる対手やないと意味ありませんやろ?」

「それは、そうですけど……」

「それとも代わりにユカリコが出ます?」

「うー、私がそういうの苦手だって知ってるくせに!」

「そら仕方ないどすな、別に死人を出そうっていうわけやおへんし、気楽にいきましょ、気楽に」

「そんな簡単に言わないでください!」


あれから一時間後、俺は学園のグラウンドに立っていた。

服装は、軽装の鎧に近い、相手はシズル・ヴィオーラ。マイスターオトメとやらの実力は分からないが、抜きん出た強さを持っているらしい。

この間全力で戦ってから俺の体調はすこぶる良好である事は分かっている。

しかし、それでもコーラルの少女達と力はさして変わらないだろう、ましてや高次物質化能力とやらを持たない俺では話にならない筈だ。

ただ俺の力量が見たいだけとしては行き過ぎの気はしないではない。

サレナには俺の命に係るようなことが無い限り手を出すなと言ってある、

元々は手を出すなと言ったのだが、頑として譲らなかったため、妥協点としてそう言ったのだが、それでも不服そうだった。


「さて、武器は何かいりますか?」

「いや、必要ない」

「負けたときの言い訳やったらやめた方がよろしおすえ?」

「そういう意味じゃない、強い相手と対する事の出来る武器を俺は持っていないという事だ」

「はぁ……」


シズルは不思議そうに俺を見る、俺は現時点で木連式柔と木連式抜刀術を修めている、

抜刀術の方が強い相手向きである事は事実だが、ローブの強度を考えるとシズルに刀をぶつけても刀の方が折れかねない。

そもそも、ここに刀を置いているかどうか疑問だ。

銃は問題外、弾き返すのは簡単だろう。それに弾道を見切って避ける事も出来るとサレナに言われている。

切ることも撃つことも出来ないなら柔の方がましだ。


「それでは、ユカリコ・シュタインベルグの名において変則ながら舞闘を開始します。

 ルールは特にありませんが、グラウンドから出た場合、気絶、または負けを認めた場合に決着がついたものとみなします。

 用意はいいですか?」


シズルと話していた金髪のショートヘアの落ち着いた感じの女性が、審判らしい。

緑色のローブを纏い金色の弓をさげている、彼女は弓矢を使って戦うのだろう。

性格的に俺が死にそうなときは助けてくれそうにも見えるが、俺にとっては完全にアウェーの闘いだ。

彼女に何かを期待するのは間違いだろう。


「うちは、いつでもよろしおすえ」

「問題ない」

「では、始め!」


死なない程度には手加減してくれると思うが、さて……。



開始の合図と共に、ローブをマテリアライズしたシズルが俺に飛び込んでくる。

俺は身を捻りながら回避するが、地面を何かが削っていく。

チリチリする危機感に俺は大きく距離をとった。


「あら、そないに嫌わんでも別に全力は出してまへんえ?」


よく見ればシズルは拳を突き出しているだけだ。

しかし、拳の先から衝撃波でも飛び出したらしく、前方10mほどの地面がえぐれていた。


「物騒な拳だな。一撃食らえばひき肉じゃないか」

「そんなことあらしません、せいぜい上半身が軽くなる程度どすえ」


微笑みながらシズルは無造作に近づいてくる。

プレッシャーで気分が悪くなりそうだったが俺は逆に踏み込んで行った。


「そうそう、抵抗してくれんと、データはかれませんよってに」

「そりゃ悪かったな」


距離を詰めるため、回し蹴りでシズルの肩を狙う、シズルはそれを避けもせず、そのまま肩で受け止めた。

俺の脚にコンクリートでも蹴ったような衝撃が響く。


「くっ!?」

「あらあら、やわどすなー。しっかりカルシウムとっとらんと、骨粗しょう症でぽっきりいきますえ?」

「俺は現代っ子でね、あまり健康に気を使った事が無いんだ」


そういいながら俺はもう一方の足を振り上げ、シズルの頭に向けて落とす。

しかし、シズルは肩にかかっている足を無造作につかんで投げ飛ばした。

かなり高い弾道で飛んだため、何とか体勢を立て直しながら着地したものの、ここまで地力が違うと殆ど戦闘にならない。


「しぶとおすな。コーラル程度の身体能力はあると見て間違いなさそうやね」

「それは、光栄だな」


シズルは俺に向かって踏み込んでくる、彼女が拳を突き出す直前、俺は体を沈めながら一歩を踏み出す。

距離が詰まったせいで拳は不発に終わったようだ、だが肩の辺りにびりびりと衝撃が通過していった。


「プレッシャーにはつよいみたいどすな……」


俺はそのままシズルに向かって全速で飛び込んだが、シズルは完全に見切っていたのか、

タイミングよく一歩ひきながら俺の腹に手のひらを押し付けてきた。

俺は次の瞬間グラウンドの反対側まで飛ばされていた。


「おー、よう飛びますな」

「ちょ……シズルさん!」

「大丈夫どす、彼は自分から飛んで威力を殺してますよってに。威力は半分も伝わってないはず」

「それでも、ローブを着用していないんですよ彼は」

「心配性どすなー。そういわはるんやったらちょっと見てきます」


そう言ってシズルは俺の所に歩いてくる。

無造作に見えるが、止めを刺す気があるのは気配で察せられる。

俺は、その瞬間を狙うためあえて動かない事を選んだ。

だが……。


「ここなら他の生徒も教師も聞こえんよってに、一つだけ忠告させてもらいます」


唐突にシズルは俺に話し始めた、狸寝入りがばれていたらしい。


「ナツキは恋愛には素人どす。未だに白馬の王子がいればいいなと思っているくらい。

 そやけど、いや、そやからこそ。純真なナツキをもてあそぶような事があればうちはアンタを殺しますえ?」


シズルは俺を見て微笑みながら、しかし目は俺を射殺すように睨んでいた。

なるほど、俺はシズルの逆鱗に触れたらしい。

転がりながら立ち上がるのと、俺のいた場所に刀のようなものが突き刺さるのはほぼ同時だった。


「……」

「……」


起き上がった俺と、恐らくエレメントだろう双剣を地面に突き刺したシズル。

視線をぶつけ合いながら、少しづつ近づいていく。

俺は少しばかり切れていた。


「なかなか面白い事を言うな」

「面白いどすか?」


言葉を吐きながら<纏>を発動。

筋肉が悲鳴を上げるほどの速度で動く。

意外な反応にシズルは一瞬判断を遅らせた。

俺にとってもその一瞬で十分だった。

俺は、シズルの足を引っ掛けて転ばせながらのどに手のひらをさしはさむ。

そのまま体重を乗せてシズルの上に覆いかぶさるように倒れていった。


「かはッ!?」


シズルは確かに動揺し、ダメージも受けているようだった。

だが、首に全体重の一撃をもらったにも関わらず、すぐに立ち上がってきた。

ローブの防御効果だろうか?

どちらにしろ、これは……俺の命に関わりそうだな。


「もうこのくらいでよろしいでしょうか?」

「!?」


その時、シズルの背後にはサレナが立っていた。

サレナは武器を起動していないが、それでも俺に集中しすぎて隙だらけなシズルが動くより前に一撃叩き込む程度はたやすいだろう。


「……そう……どすな。データ収集は完了どす。でもテンカワはんもわかりましたやろ?

 ナツキに手を出すときは命がけどすえ?」

「肝に銘じておこう」


俺とシズルがユカリコ・シュタインベルグと生徒達の前に戻ってきた時にはみな拍手で迎えてくれた。

かなり白熱した闘いに見えたのだろう。

実際シズルは俺を殺してもいいくらいのつもりだったようだしな。

俺がシズルに視線を向けると、シズルは何事も無かったように微笑みながら見返してきた。

食えない人物だな。


「テンカワさんは見ての通り男性でマテリアライズできませんが、シズルさんを苦戦させる事ができました。

 皆さんもオトメだからと甘えず、ご主人様をお守りできる強さを身に付けてくださいね?」

「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」


色々な生徒がいたが、約50人ほどだろう、星組と言っていたと言う事は、アリカたちも……。

そう思って視線をめぐらすとアリカ達が手を振っていた。

一緒にいるのはこの間のエルスティン・ホーとイリーナ・ウッズの二人か。

むっつりとしているが、二ナ・ウォンもいるな。

なるほど、アリカも結構打ち解けているようじゃないか。


「それでは、まことに申し訳ありませんが。テンカワさんには別館の方に戻っていただけますか?」

「ああ、分かった」


俺はそのまま帰ろうとしたが、サレナは一度シズルに近づくと。


「今回はマスターのご命令ですから見逃しますが、次は私が貴女を殺します」

「……そら怖いわ、うちも好き好んであんたみたいなのと事を構えたいとは思っとらへんよ、ナツキにさえ手を出さへんのやったらね?」

「マスターは、自分から女性に手を出すような人間ではありません」

「……?」

「貴女こそ、自分で学園長の心をつなぎ止めておく事ですね」

「よくは分かりませんけど、うちをなめとりますのん?」

「いえ、私にそのような感情はありません。純粋な事実です」

「まぁ、良くは分かりませんけど気に留めておきますわ」


一瞬一触即発な状況になりかけたが、シズルが引いてくれたらしい。

サレナを相手に怒っても仕方ないと感じたのだろう。

しかし、不思議ではある。

サレナも別にわざわざシズルを挑発するような事をしなくても……。

これじゃまるで、ロボットと言うよりはオモイカネ級AI……いや、人間的ですら……。

……まさかな……。











学園の屋根の上からアキト達を観察する影が一つ。

グラウンドを見下ろすその位置に、ひっそりと寝転がっているのはワインレッドの髪をした少女だった。

その少女に向かって近づいてくる影が一つ。

黒髪をショートヘアに刈り込み、前髪をたらしたその少女はボーイッシュと呼ぶにふさわしい颯爽とした姿である。

更に目の下を半分覆うような眼鏡が知的な感じを演出してもいる。

白いメイドのような服装から推測するにナオと同じパールのオトメである事は明白だが、宝塚の男役のような格好よさがある。

その少女は屋根の上だというのに普通に通りがかったような雰囲気で、ナオに話しかけてきた。


「やあ、ジュリエット。あの変わった男にえらくご執心だね?」

「ジュリエットゆーな、あんたもハラードさんって呼んで欲しい?」

「僕はチエって呼ばれるほうが好みかな? マイハニーでもいいよ?」

「ならアタシもナオって呼べ!」

「ごめんごめん、ジュリエットって名前可愛いからさ」

「いいからやめろ」


ナオの声と同時に温度が下がったかのような錯覚を起こす。

チエはかなり本気だとわかって、一歩身を引いた。


「わかった、わかった。ところで彼のどの辺りが気に入ったんだい?」

「気に入った、って言うよりは興味があるっていう方が正しいかな」

「?」

「アキトってさ、アタシたちの知らないナノマシンを体に埋め込まれてるっていうじゃない?」

「ああ、そう言えば」

「どんな能力を秘めているのか興味があってね」

「なるほど、それでわざわざシズルお姉さまをぶつけたわけか」


その言葉に、ナオは一瞬チエに向かって驚いたように振り向く。


「何も驚く事は無い。テンカワ・アキトがどんな男かは良く知らないが、あまりナンパの得意な人物には見えないからな」

「なるほど、ばればれか〜」

「なあに、ガルデローベの生徒でその事が分かるのは、後二ナ君くらいのものじゃないか?」

「それもそうか」

「しかし、見込んでいたほどの戦闘力は無かったようだが?」

「んー、それはどうかな。まぁ結果はボコボコだけどね」

「何かあったのかい?」

「な・い・しょ♪」

「ククッ、そうだったね」


ナオは自分が優位に立てる情報を安易に公開するタイプではない。

それは、ある意味重要な資質である、本来パールオトメの上位三人であるトリアスと呼ばれる生徒会執行部。

その座についていたはずのナオがあえてギリギリ合格ラインをキープしているのも、目的があっての事だと言われている。

心のうちをすぐ見せるのは一流ではない、そういう意味ではナオはパールで一番一流に近いと言える。


「でもシズルお姉さまも全く気が付いてないわけでもないだろうに……」

「あの女は、学園長の事となると簡単に手段と目的を履き違えるからね〜」

「こら、今のを聞かれていたら……」

「聞かれていたら、なんどすか?」

「ぎゃ!?」


二人の前には、目を細めて微笑んだシズル・ヴィオーラの姿があった。

その異様な迫力に、二人はそろってあとずさる。


「多分こんな事やろうとは思うてましたんえ」

「さっ、さあ……何のことでしょう?」

「いややわぁ、あの女としては、目的と手段を履き違えんとなぁ」

「いや、履き違えないでください!」

「僕は関係ありませんから!」

「あ、ずるい!」

「元々関係ないだろう僕は!」

「死なばもろとも!」

「はぁ〜、もうええどす。兎に角、二人ともグラウンド100周ほどしときなはれ」

「「え?」」

「確かにうちもテンカワはんの力を見たいとおもっとったんわ事実どす。ええきっかけになりましたしな」

「「じゃあ!?」」

「気が変わらんうちにはよ行き」

「「了解しました!」」


二人はすたこらグラウンドへ飛び降りて行った。

その後、シズルはふと首元に手をやる。

ローブの一部が消えかかっていた。

ほんの少しではあるものの、傷つくと言うのとは少し違う、違和感に眉をひそめる。


「まさか、テンカワはんのナノマシン……いや、まさか……考えすぎどすやろ……」


どこか不安に思いつつも、些細な事であるためシズルは報告を控える事にした。

もちろん、検証をすすめて結果が出れば報告する気ではあったが……。

それがアキトの能力であるのか、サレナの能力なのか、それとも偶然なのか。

分からない事が多すぎるのだ。


「どちらにしろ、テンカワはんはうちらに対抗しうる可能性がある事を示してしもうたわけどすな。

 これから、ガルデローベも大変な事になりそうどす……。

 各国には出来るだけ情報封鎖をかけるとしても、どこまで時間が稼げるやろか……」



シズルは厳しい顔でアキトのいる別館を睨みつけていた。


それは未来に対する不安の表れだと本人も分かってはいたのだが……。

















あとがき


一応フラグを立てられた。

アキト強化プランその1

とはいえ、まだ先は長そうですが(汗)

兎に角、今回見てもらったとおり、マイスターオトメとアキトの戦力差は圧倒的です。

戦力を数値で表すなら、一般人が1としたときアキトは通常5で<纏>発動中は15くらい。

平均値ですが全力のコーラルが10、パールは30、マイスターは100くらいを想定しています。

もっとも、マイスターは強さに開きがありますし、パールでも強いのは強いですしね。

現時点ではアキトはコーラルローブの二ナやアリカにも敵わないと思います(爆)

イリーナやエルスティンはナノマシンの扱いがまだまだだというならアキトに勝てないでしょうが。

つまりは、殆どコーラルレベルと言う事です。

高次物質化能力が無い分だけ不利ですしね。

ただ、いつ化けさせるかというのが問題ですね〜。

いいイベントがあればいいんですが(汗)

それから、サレナはマイスターとしては弱い方くらいな強さを設定しています。

だいたい80くらいでしょうか。

オリジナルミユのあの武器があれば互角かもですが。

兎に角、がんばっていきます。




五柱への突っ込みを下さった方申し訳ありません。

ちょっと勘違いをしておりました、マスターなしでマテリアライズが出来るのは五柱の特権みたいに思っていたのですが。

考えて見ればマリアもマスターなしですね。

ユカリコとマリアはどうして五柱でもないのにマスターなしでマテリアライズできるのだろう?(汗)



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今後とも頑張っていきますのでよろしくお願いします♪


12月22日

22:44 ジュリエット登場 そして制服泥棒・・・ 次回はプールネタ!   今回も面白かったです 
22:44 毎回更新をたのしみにしてます 
今回はまだプールネタに行きませんでした(爆) 嫉妬ネタも一つくらいは必要でしょうし(笑) 次回もがんばりますのでよろしくです!


12月23日

0:18 今回もおもしろかったです。次回も期待しています。 
ありがとうございます! 感想はエネルギー源ですゆえ、沢山もらえると張り切ります!(爆)

0:53 更新お疲れ様です。ミーヤ退学フラグ?ナツキとのやりとり見たかったです。 
ミーヤ……どうしよう。実際のところあまり考えてないです。
ナツキは今回の始め辺りから想像してください(爆)

1:01 更新お疲れ様です。妙に可愛いナオに萌えました。
1:04 ホントにどうやって爪を伸ばしたんでしょうね〜まあ、生身(?)で大気圏突入も可能な連中ですからね〜 
1:06 なんにせよ、「匿名希望のオジサマ」よりも素性不明の青年をアリカは選んだ様で・・・ 
1:08 アキト〜ナツキに手ぇだしたら「ちょっきん♪」じゃすまへんぞ〜? 
1:09 ああ、ナツキを取られた(?)シズルとアキトを護るサレナのバトルが浮かびます・・・ 
ありがとうございます♪ ナオは今回ちっと黒いかもしれませんね?(爆)
爪は本気で不明です(汗) 案外付け爪なのかも?(笑)
アリカのおじ様になるっていうのは一応目標の一つですからね。とはいえ話の流れを完全に変えてしまうのも……どうしたものやら(爆)
今回シズルは暴走してくれました(爆) 今後どうなるか、全く考えておりません♪

1:18 いやぁ、ナオは好きなキャラなんでフラグ立つかと思ったんですがダメですね(w
どうなんでしょう? 少しは心に引っかかっていると思いますが、まだそっちの方向は向いてませんね。
 
1:56 学園長にもついに春の足音が〜(笑) これからも期待していますぞ〜。 
学園長をヒロインにすると、かなり話がお笑い方向に行きそうな予感が(爆)
いや、どうなんでしょうか……カップリングなんて考えた事無いです。

4:38 アキト君、裏方作業に参加?女難で受難な日々の始まり。 次回も楽しみにしています。
はい、今回は見事に受難を受けた次第です。今後もどんどん関係が複雑化していくのではないかと(笑)
 
6:24 やっぱりアキトは相手が女性だと押されっぱなしですね! 
いつもの事です(爆) 決める場面以外では押しが強い必要が無いという理論でありますな(爆)

12:38 普通の服装になったんですねぇ、アキト。まあ替えも無い以上当然でしょうけども。ただ、あのバイザーも無く 
12:39 なってしまうのは少々残念です。 
それは……伏線でもあるのです。何の伏線なのかは請うご期待!

22:59 これを機にナツキフラグ、ナオフラグゲットしてみては? 
23:08 アニメ版もいいですけどいずれかアニメ版のキャラをマンガ版のストーリーで作ってほしイッス 
二人のフラグはゲットしたと言えるのかな? 一本だけじゃ落ちないのが現代のゲームと言う奴ですね。
やっぱエルスでしょう(爆) サービスのいいキャラに仕上げてみたいもんです!(爆死)


12月24日

22:47 いまの所はアニメルートですよね ッて事は 舞とアキトのラーメン勝負 審査員はネコ神さま 
ありえそうですねー、とはいえ後半ですし先は長そう(汗)

23:46 ナツキがアキトに手玉に取られるシーンが読めなかったのが残念です。 
今回の序盤で少し補完してます。後はご想像にお任せします♪

12月25日

4:03 今回のもとても面白かったです、まさかアキトがナオとかかわるとは思いませんでした。
ふむー結構意外だった人多いですね、でもアリカたちと一緒に回るのもかなり間抜けですし(爆)
それに一応は接触禁止ですしね。
今後ちょっとづつ変化していくでしょうが(爆)


12月28日

17:14 情緒って、まさかメイドロボって言いたかったんじゃなかろうなアキトよ……(汗)
はははははは、なんていうかこの世界も二つ名が多いですしね。
そういうのがあるか期待したというところでしょうか?


今後もがんばりますのでよろしくです!



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