世界は回る。



何もかもを飲み込んで。



それは何を中心にしているなどという甘いものではない。



何かが動き出すとき全てが動き出す。



そのきっかけとなるのが何なのか、



世界はただ待ち続けている……。



光あふるる場所
In a far star of the future



第十六話 「勧誘」



アルタイ公国のリムジンに二人の男が乗っている。

実際、一人は少年に過ぎなかったが、それでも威厳と呼ぶべき物を既に育てつつある。

十代前半に過ぎないだろうに白髪、そして血の色をそのままにした赤目、いわゆるアルビノ、もしくは白子と呼ばれる突然変異。

これも同族婚を繰り返す王家ではありうる病ではあった。

もう一人は二十代後半だろうか、額に傷のある金髪の軍人、ただし外交官としての服装をしている。

二人は、何気ない程度の声音で、それでも国家の行く末に関わる話をしていた。


「さて、そろそろ仕込みをしないとねぇ」

「仕込み、といいますと?」

「いやぁ、前からさここにはあるんじゃないかと思っていてさぁ」

「例のものですね?」

「そうだよ。だけど、予定より随分と色々複雑な事情が絡み合っているみたいだ」

「事情……ですか」

「そう、例えば君に頼んでいる事とか、君のお気に入りの娘だとか、例のイレギュラーの事とか、ね?」


主の視線を受けて軍人……セルゲイは折り目を正しくする。

この主に表情を見せれば弱みを見せる事になる。

その事をセルゲイは熟知していた。


「そうですね、彼は我々の目的にも適した人材と言えるでしょう」

「別に彼は必要じゃないよ、引っ張ってこれるとも思えないし。

 サンプルの採取さえ出来ればそれでいい。

 それとも……君がやってくれるかい?」

「我が君の仰せとあらば」

「クククッ、セルゲイ。かしこまる事は無いよ。僕たちは同士だ。同じ目的を持った……ね?」

「ですが……」

「お堅いな〜。まぁいい、それじゃ一度大使館に戻って僕を下ろしたら接触を図ってくれ。

 もっとも審議会の話を信じるならもう意味は無いはずだけどね?」

「ご冗談を。ガルデローベが彼を手放すわけはありません」

「まぁそうだろうけどけどさ」


アルタイ公国大公、ナギ・ダイ・アルタイは口元をゆがめながら含みのある笑いをする。

実際、ガルデローベがアキトを手放したとき、世界大戦の引き金になりかねない事を良く知っているのだ。

たとえナノマシンが無くなっていたとしても彼の存在自体が世界を危うくする。

だが、殺せば殺したで厄介事が減るわけではない、今はまだ彼がいることによってみなの視線が彼に集中しているが。

彼が死ねば、彼によってもたらされたものが一気に世界中に拡散する恐れがある。

迂闊な行動が出来ないというのがガルデローベの本音だろう。


「もっとも、それこそ僕の望む所なんだけどさ」

「閣下?」

「いや、なんでもない。それより彼の事頼んだよ」

「はっ!」


敬礼をするセルゲイ・ウォンを横目で見ながら、ナギはふと考える。

ヴィント市は確かに美しい街並みを持っている。

最先端の技術を駆使した高層建築も多く、立体映像の宣伝がそこらじゅうで見られる。

これだけの技術が民間で使用されている国はそう多くない。

これでもエアリーズのような工業国には及ばないだろうが、アルタイ公国ではまだ20年はかかるだろう。

だが、そんな国でもちょっと橋の下を覗けば浮浪者がたまっている。

聞くところによるとヴィント市の就職できない人間の数は3%未満だそうだが、

市民権を持っていない人間を含めれば10%に届くだろう。

これはアルタイの現状とさして変わらない。

きらびやかなのは見た目だけという事だ。


「所詮どこもかしこもみな同じってね」

「マシロ女王の執政は始まったばかりですが、かなり失政を繰り返していますからね」

「だろうねぇ、彼女コンプレックスとは裏腹にお姫様育ちだから。現状が把握できてないんでしょ?」

「その通りです。

 政治が淀めば付け入るものも多くなりますから、悪化は加速します。

 現に女王を無視して中間搾取する領主も増えています。

 このまま行けば遠からずヴィントブルームは内部から瓦解するでしょう」

「前の時も偽女王騒ぎになってたからねぇ、彼女自身も本物かどうかわかんないのにさ」

「閣下……」

「そろそろ大使館か、じゃあ後はよろしく」


セルゲイの注意を聞き流し、ナギは大使館へと戻っていった。

セルゲイは一息つきつつ、ガルデローベにリムジンを向けるように指示する。

彼としてもただでアキトがアルタイに来てくれるとは思っていない。

それに、自分のやっている事が100%正しいとも。

だが、彼は理想のためにあえて泥を被る事を自ら決めていた……。















「おはろ〜、アキト。元気してた?」

「……」

「相変わらずつれないわねぇ、まぁ良いけど」


俺が起きるとベッドの上にワインレッドの髪をしたツリ目の少女がいた。

俺は深く寝るほうではないつもりだが、最近は体調が戻っていないせいか深い眠りになる事が良くある。

しかし、サレナがこういう事を許すとは……。

眠い頭でそこまで考えてから、声を出す。


「何か用か?」

「ベッドの上まで来てすることは一つ……って、そういう冗談は通じないか」

「出来ればそういうのは夜にしのんできてくれ」

「ぶっ、言うじゃない。そういう事いうとシズルにいいつけちゃおっかな〜?」

「それで?」


挑発的な視線を流しながら言うナオに半眼になって俺は返す。

ナオは詰まらなさそうな顔をしたのもつかの間、すぐに悪戯な顔に戻り俺を見下ろしながら。


「よっと、いつまでも布団の上じゃなんでしょ? アキトのヌードを見るのも良いけどちょっと急ぎなんでね」

「分かった、支度をするから少し出ていてくれ」

「アタシは見ていてあげても良いんだけどね〜♪」

「そういうネタはもういい」

「はいはい〜じゃ待ってるから」


俺はさっとシャワーを浴びて服を変えた。

部屋の隅にカイワレの鉢が置いてある、こんなのを育てている覚えは無いが、別に不都合があるわけじゃない。

とはいえまた盗聴器の判断が必要になりそうだが。

他に部屋の以上が無いか確認し、そして支度を整え部屋を出る、所要時間15分といったところだろうか。


部屋の外ではサレナと先ほどの少女、ジュリエット・ナオ・チャンが話し込んでいる。

ナオは身振り手振りを交えながら何かを説明している……。


「本当だって! 今は10倍くらいになってるんだから」

「……構造上それは不可能です」

「朝一番に起こしにいった事ないんでしょ?」

「ですが、夜からずっと見ていた事はあります」

「うへ……それってストーカー(汗) ってそれじゃ見た事あるんだ?」

「はい、ですから……」


そっちの話か……珍しいのは分かるが(汗)

出来れば朝からして欲しい話題じゃないな。


「……シモネタはやめろ」

「え? シモネタって何が?」

「……」

「私達はマスターの部屋で育てているカイワレの成長について話していたのですが、何か不都合でも?」

「うんうん、シモネタだと思うほうが下品なんだって言われた事無い?」

「サレナは兎も角、ナオ、お前はわざとだろう?」

「人を疑うなんて良くないな〜、アタシは純真無垢なオトメだよ?」

「純真無垢……」


荒くれどもを従えた、下町のボスが純真無垢なら世界の半分は純真無垢だろう。

そもそも、あのカイワレ自体仕込みだろうが……(汗)

シナを作って立っているナオをうろんな目で一瞥してから、サレナに向き直る。


「サレナ、ナオが入ってくるのを止めなかったようだが、なぜだ?」

「はい、彼女には害意が無い事はジェムを私に預けていった事、武器を持っていない事。

 また、爪が伸びる機能自体が高次物質化の一種である事からジェム無しでは出来ないと判断した事。

 それにいざとなれば彼女を制圧するだけのものを部屋に仕掛けてありますので」

「……あれか?」


確かに、俺の部屋にはサレナの仕掛けたトラップがある、俺の寝ているベッド以外の場所をつり天井式に落下させるというものだ。

お陰で天井が低いがこれを食らえば確かに大怪我くらいはするだろう。

厚さ20cmのコンクリートの直撃だしな(汗)


「はい、部屋内をスキャンして彼女が問題を起こしそうなときは発動する手はずでした」

「……」

「さっ……流石に過激ね……オトメロボは(汗)」

「はぁ……まぁいい、それで、理由を話してもらえるか?」

「えっ……あ、そうね……ここじゃなんだし場所を移さない?」


ナオは俺の返事も待たずそのまま駆けていく。

よほど後ろめたいのか、それとも込み入った話なのか。

とりあえず俺はナオについて出る事にした。

しかし……。


「ちょっと待ってくれないか」


俺達が別館から出たとたん、待ち構えていたかのごとくその男は話しかけてきた。

金髪碧眼、髪が逆立っているのは軍人として髪を伸ばさないようにしているせいか。

へらへらして見せているが、動きはかなり切れるな。

だが……。

サレナは警戒しているようではあるが、特に動いていない。

俺自身も彼に争う意思があるようには見えない。

ただ、ナオは警戒心丸出しで苦い顔をしている。


「セルゲイ・ウォン少佐だったか……何か用か?」

「名前を覚えていてくれたか、光栄だね。今ヴィントで一番有名な男に顔を覚えてもらっているとは」

「裏で、だろ?」

「……確かにそうかもしれないが。各国は君に興味を持っている」

「それで? 俺にアルタイへ行けと?」

「フフッ、君にはいつも驚かされるよ。最初はあまり機転の効く方だとは思わなかった。

 しかし、悪ぶって見せても君には味方が多い。

 いつの間にかジュリエット君も君の世話を焼いているようだしね」

「大きなお世話」


嫌そうな顔だけではなく、べーっと舌まで出して嫌がってみせる。

仮にも金を出してもらっているとは思えない反応だ(汗)

それにしても、お声がかりとはな……。


「確か、アルタイからの誘いはナギ大公に直接断ったはずだが?」

「それは聞いたよ。しかし情勢が変わったんだ」

「というと?」

「ヴィントは今臨戦下にあるといっていい。

 ガルデローベも必死で動いているからね、

 とりあえずみな女王の誕生祭までは動かないだろうが……。

 その時、世界が変わる」

「誕生祭はいつだ?」

「二ヵ月後、それまでに君はここを離れた方が良い」

「それはいったいどいう意味だ?」

「君は火種の一つだと言っているんだ」


セルゲイのその目は真剣だった。

俺を利用しようという意思が無いとは言えないだろうが、それでも真剣に考えているものの目をしている。


「君がもしアルタイが嫌だというなら他の国でもいい。しかし、ヴィントにいればまずい事になるかもしれない」

「アンタ達が起こす戦争に巻き込むから?」

「……」

「ううん、アキトの力が不気味なんじゃないの? ここにいられちゃ計画が狂うもんね?」

「ジュリエット!?」

「アタシはね! アルタイの国が表向きと比べて貧しいのは知っている、でもね、だからって……!!」


ナオとセルゲイがにらみ合う。

こんなに感情をむき出しにしているナオを見るのは初めてだ。


「別にアルタイが戦争を起こそうとしているわけじゃない。ただ、世界中が今ヴィントに目を向けているのは事実なんだ。

 この先カルデアやエアリーズが黙っているとはとても思えない、世界のパワーバランスが崩れかねない事態が起っているからね……」

「アキトの事だけじゃないでしょう」

「ああ、色々とね。流石に私の口からは言えないが」

「なるほどな、切迫している事情は分かった」


ナオにとってはよっぽど嫌な事なんだろう、セルゲイの言っていることも全て本当かどうか分からない。

だがどちらにしろ俺に出来る選択肢はそう多くないのだが。


「俺はここを離れる事は出来ない」

「どういう意味なんだ?」

「俺は、国の事情は知らない。だがここには恩がある。ガルデローベに、ヴィント市に、そしてこの国にも」

「しかし……」

「もっとも、俺が守りたいと思うものは国とか組織といったような団体ではない。

 俺は一度日常を失って分かった事がある。

 どんな日常でも続けていく事に価値がある。

 続けていく人々に、それに要する労力に、つまらないと感じるその時間に。

 その価値を守るためならなんでもしよう。

 俺はここでの日常を簡単に手放すつもりは無い」


いつに無く饒舌な俺を見て、セルゲイもナオも一瞬息をのんでいたようだが、やがて理解の色を示し始めた。

そして、ナオは人の悪い笑顔を、セルゲイは厳しい顔をする。


「君の言っていることは間違ってはいないだろう。だが、できるか出来ないかといえば無謀の類だ」

「ああ、分かっている」

「あっはははっは!! 流石アキト! ほらほらセルゲイのおっさんもさっさと帰った! アキトにその気はないってさ!」


厳しい顔をしていたセルゲイは首を振ると表情を崩し、


「やれやれ……慣れない事はするもんじゃないね。わかったわかった、お邪魔虫は帰るよ。

 俺も性急過ぎた、だがね。アルタイに来て欲しいっていうのは結構本気なんだがね?」

「ああ、ここが飽きたらな」

「ははは、そりゃ長い事またされそうだ」


去っていくセルゲイの背中に舌を出しているナオを見ない振りしつつ、俺は問う。


「所でどこに行くんだ?」

「あっ……そうだった」


ナオもかなり熱くなっているようだった。



















ここはヴィントブルーム王国の隣国カルデア。

ヴィント市から見れば一番近い国という事になる。

とはいえガルデローベを運営する審議会の6カ国から外れている、

もっともオトメ候補や貴族の留学などで親交は厚い、むしろアルタイよりも親しい間柄であるといえる。

とはいえ、アルタイに互する巨大な軍事力を持つ国家である事も事実。

皇帝の考えがどこにあるかなどはヴィントブルームの国民からすれば見え透いていた。


そのヴィント/カルデア国境付近を歩く一団があった。

夜の砂漠。砂にまぎれるその影は三つ、一人は組み傘を頭に被り外套をしている。

もう一人は大きめの外套に頭まで隠しているため判別はつきにくいが、華奢な体格だという事は分かる。

そして、最後の一人は……真っ赤なロリィタ服だった。


「ほっくん、ほっくん? どこいくの?」

「……」

「あの……」


真っ赤な髪をドリル状のポニーテールでまとめ、服はロリィタ服。

まるでビスクドールのような装いであるのに、砂が全く体についていない。

10歳程度の容姿と言動の幼さが相まって誰もが思わず可愛がりたくなるような可憐な少女だったが、

目の前の組み傘の男は表情をピクリとも変えない。

その全く相手をしていないという無視ぶりに、隣の華奢な少年は注意を促そうとするが、やはり無視された。


「ほっくん、やーはほっくんとお話したいな〜」

「……」

「ちょっとは、話してあげたら良いんじゃ……」


組み傘の男は二人を無視して歩き続ける。

赤い少女はそれに難なく付いて行き、そして何度も話しかけるが組み傘の男は反応しない。

しかし、今度はもう一人がおかしな動きをした。

いや、おかしな動きではなく、寒さと運動量に動けなくなったのだ。


「惰弱な……」


組み傘の男は動きを一度止めるが、少女に視線だけ流して何かを促した。

そして自分は更に先へとすすむ。


「むぅ〜ほっくんいいの?」

「……」

「あっ、そっか……じゃ、やーがんばる♪」


そういうや否や、少女は華奢な少年を背負いステップするように組み傘の男に付いて来る。

組み傘の男は視線を流す事も無くそのまま進む。


「ええっと、ボク重くない?」

「やーは、ちからもちだから大丈夫だよ? ほっくんの愛があれば生きていけるの♪」

「ぶっ!?」


思わず華奢な少年は吹き出すが、組み傘の男からの異様な気配に圧倒されて黙り込む。

口にこそ出していないが、組み傘の男が気分を害したのは間違いないだろう。


「あははは……」

「んっ、どーしたの?」

「でも食べないと生きていけないんじゃ……?」

「ぜんぜんだいじょーぶだよ。ほっくんからの愛が無くなるとやーは死んじゃうけど」

「……(汗)」


どういうことなんだろうと思い、ほっくんこと組み傘の男……北辰を見る華奢な少年。

しかし、北辰は無表情に先を行くのみ。

そこで華奢な少年は気になった事を少女、やーに聞いてみる事にした。


「やーちゃん、食べ物は食べられないの?」

「たべられるよ、でもそれはおなかいっぱいにはならないの」

「……んー?」

「お前は見ていないのか? それはスレイブだ」

「スレイブ……やーちゃんがですか?」

「うん、すれいぶなの♪」

「……」


信じられないという事を沈黙で表す華奢な少年。

やーはにこにこ微笑んでいる。

北辰が冗談を言っているのではないかと覗き込むが特にそういう風ではない。

確かにオトメと渡り合っている所は見たものの、むしろオトメだと思っていた少女が実はスレイブだと聞いて驚きを隠せない。


「……迎えが来た」

「迎え……ですか?」

「あ〜〜あっちから女の人がとんでくるよ?」


やーが指差した方向を見ると、そちらの方からオトメと思しきローブの女性が飛んでくるのが見える。

その姿はもうかなり大きくなっていた。

少年は目を見張る、更にその後から巨大な砂船が向かってくるのが見えたからだ。

船首に見えるのはカルデア帝国の紋章、疑うべくも無い。


「あれは……もしかして……カルデア皇帝の御座船ナボニドゥス!?」

「そうだ、そして今やってくるのは……塊麗の縞瑪瑙(けんれいのしまめのう)」

「カルデア帝国の皇帝アルゴス14世のマイスターオトメですか!? それって……」

「……」


北辰は黙って降りて来る女を睨んでいる。

少年はただ呆然とそれを見上げていた。


やがてふわりとその場に着地したその女はしかし、硬い表情のまま口を開く。


「アズワド、目的は果たしたのか?」


北辰を見てそう呼ぶ。

それは、北辰を人として数に変えていないという事。

やーはその事に一瞬顔を険しくしたが、北辰と視線が合うとしぶしぶ沈黙した。


「内情調査ならほぼ済ませた、仕込みになりそうなものならば。そこの小僧を使うがいい」

「……どういう意味です?」


中途半端な物言いにそのオトメ、フィア・グロスは眉を寄せる。

赤みがかった栗色の髪をカチューシャでアップしてセミロングにまとめ、

胸の位置と背中の位置が大きく開いた灰色のローブを身に纏っているものの、その視線には殺気すらある。


「量産型スレイブは諦めたようが利口であろう、性能がシュバルツのものと同程度にしかならぬ」

「……分かりました、しかし、その少年がどうしたというのです?」


フィアは視線を少年に向けるが、その視線は冷たかった。

彼女にとってはアルゴス14世の命令こそが全て、障害となるようならば……。


「こやつは女王の偽者、使いどころはそちらで決めればよい」

「……」


そう言われてフィアは少年の顎をつかみ上げ顔を確認した。

フィアはマシロ女王の即位式にアルゴス14世の護衛として共に出たので、顔は知っている。

確かに少年お顔は瓜二つと言って良いほど似ていた。

背丈が少し違うようにも見えるが、女王は成長期だ、どうとでもごまかしは効く。


「……分かりました、その少年を謁見させる事を許可しましょう」

「好きにすれば良い、それよりも……」

「ええ、分かっています。薬は既に運ばせています。もう用が無いのなら帰るといいでしょう」

「フンッ……帰る……か……」

「えっ!? ちょっと待ってください!? ボクは……」

「がんばってねー。やーもおうえんしてるよ〜♪」


呆然とする少年を置いて北辰とやーは去っていく。

あれでも少年のために速度を落としていたのだろう、さほど時間もかからずにその姿は見えなくなった。

少年は暫く見送っていたが、フィアに視線を向けられるとのろのろと起き上がる。

それを見たフィアは体ごと抱え上げ、砂船まで一気に飛び上がって行った。

少年は、自らが戻れない場所に来てしまったことに少し怯えた……。

しかし、心の中にまだ燻っている何かがある事にも気付いていた。
















その後俺はセルゲイが語った事、それ以外の事を含め世界の情勢をナオから聞かされた。

もっともリアルタイムというわけには行かないそうだが。

それでも確かに世界の緊張が高まっている事は良く分かった。


「なるほどな……」

「そういう事、動くよ……世界は」

「しかし、お前はその情報を俺に伝えてどうしようというんだ?」


俺はナオが俺にそれを伝えたわけを図りかねていた。

彼女はアルタイのオトメ候補だ、だがセルゲイ等、故国には含む所もあるらしい。

軍事力として利用される事を嫌っている風でもある。

だが、同時に支援金を利用し、TOPではないがかなりの上位にいるらしい。

それでいてヴィント市のダウンタウンにも根をはっている。

彼女はヴィント市に居つくつもりなのか?


「あはははっ……気まぐれって言って許してくれそうな感じじゃないね?

 だいたい予想はつくだろうけど、アタシはずっとここに残るつもり。

 この意味……分かるでしょ?」

「ああ……」


つまり彼女はヴィントで波乱を起こして欲しくないという事か。

これからも生きていくこの街で。


「分かった、善処はする」

「まぁあんまり期待して無いけど、適度にがんばんなさい。っと、丁度着いたみたいね」

「丁度?」

「行けば分かるわよ」

「投げやりだな……」

「まぁねー」


よく見れば、既にガルデローベの本校舎前である。

その本校舎から中に入り講堂と思しき場所へと向かう通路まで来た所で、スススッとナオが下がり始める。

不思議に思って俺が振り向くと片手を上げてひらひらと振りながら離れていく。


「じゃ、アタシはこの辺で〜♪」

「……おい」

「大丈夫、荒事になってもそっちのオトメロボが何とかしてくれるって♪」

「……」


荒事ってなんだ……というか、俺を置き去りにする理由が見えないんだが……。

なんとなく俺はサレナに目を向ける。


「扉の先に200以上の熱源があります。恐らくコーラルは全ているのではないかと」

「いや、俺もわかるが……(汗)」


どの道行かないわけにはいかないのだが……。

ガルデローベから出ない以上俺には選択肢は無い。

しかし、生徒の前に俺をさらすというのは確か学園長やシズルが禁止していたはずだが……。

まあ気にしても仕方あるまい。


「行くか」

「はい」





俺は講堂の扉を開けた……。



そこには……。




















あとがき


結構間があったかもしれません。

このSSは話が混乱気味に見えるかもですが、だいたい三つ巴に落ち着く予定っす。

それぞれの勢力に力を振り分けるというのが面白くてやっているというだけとも言えますが(爆)

いじめっ子勢、どうも出すタイミングがつかめない(汗)

世界情勢が先に加速してしまってますので。

次回でちょっとくらいは出せるように頑張ります................orz



WEB拍手ありがとうございます♪
感想をもらうために書いてます!(大マジ)

3月6日


22:29 今回もすばらしい作品でした、ニナはアキトを連れ去らず、ガルベロードにつれて帰ったしまった 
22:31 シホ、アカネ、チャン、チエ パール四天王が出ましたね、アキトジェムが帰ってくる前にアリカの料理がでて 
22:31 れば助かったのに・・・・・  次回の更新を楽しみにしてます 
お褒め頂き光栄です♪ パール4人娘どうにか登場だけど、個人的にナオばっかり優遇(爆)
いやーなんかいいですよねー。
アカネにははやくカズくんを出してあげないと(爆)
チエは割りと使いやすそうですが、シホは……難しいなぁ(汗)
あのまきまきをどこまで使いこなせるか……正直自信ない(泣)

22:44 この展開だとアキトはサレナ以外とも合体マテリアルライズ出来そうな展開に・・・「アキト×アリカ」とか 
あはは〜♪ 可能性は否定しません。でも現時点ではサレナしか無理です。派手な事するとバランスが見事に崩れますし(爆)

22:55 ゆっくりで良いのではないですかね、その文こっちは話を楽しめてますし 
ありがとうございます。とはいえ、いくつもほったらかしにしているので、ちょっと焦り気味ですね(汗)

3月7日


1:00 今回はナギ君がキてますねぇ、悪巧みって言うか・・・。アキトのこれからが不安です(w 
1:01 しかも、今回のオチはアリカの料理ですか(w アキト、ナノマシンとか関係ないところで 
1:02 ヒドイ目にあってますね(w アリカの料理の腕が上がる日が来るんでしょうか?(w 
ははは、確かにねぇ。アキトの能力って舞乙の世界観でほっとかれるわけは無いんですよ。
だから蒼天の青玉のオマケというよりもアキト中心に陰謀がめぐるわけです。
アリカの料理、下地くらいはアキトに教えさせたい所ですね。
期間はそれほど多くないですが、

1:17 サレナ・・・ええ娘や・・・こういう「機械的な感情」って好きなんですよね〜 
1:17 そして、今更気づきましたがアキトってコミック版のミドリちゃんとキャラ被ってますね・・・ 
1:23 ジェム(REM)が無ければ動けない、サレナ(顎天王)と合体してパワーアップなど共通点が多い・・・ 
1:24 なんか、そのうちやーちゃんが「ほっくん、合体しよう!」とか言い出しそう・・・ 
ははは、サレナは一応ヒロイン候補ではありますが、
現時点ではあまり主張するキャラとは言えず、何とかするにはアキトをピンチに陥らせないといけない訳で……。
色々変わったキャラではありますが、徐々に人に近づくというのがやって見たいのです。
アキトは……似てますね確かに(笑)
アレはハイレグでしたが(爆)
やーちゃんの合体……そのうちあるかも?(ニヤリ)

11:05 男は光を見た。絶望の中、光を見た 
11:06 それはとても小さくて・・・でもとても強く見えた。男は光に触れる 
11:07 その光は一人の女性へと変わる。その女性は黒き鎧を身にまとい、こう呟いた。 
11:07 『あなたをお守りします』 
11:09 その女性に包まれながら男は静かに泣いた。光は闇を照らし続ける・・・・・ 
11:10 詩第二段・・・・・下手くそな上に本編関係ないじゃんwミスったw 
サレナっすかー、いいですねー♪
やみねこさんのバトルフォームの絵に合いそう!
ありがとうございます♪

22:35 サレナすら逃げ出すアリカの料理、アキトのトラウマが再発しそうですね。 
あははは、そりゃあもう、シホを一撃必殺の料理ですしね♪

3月8日

2:35 元テロリスト アキトには、漆黒の金剛石が似合うと思います。 
確かにそうですねー漆黒の金剛石は良いと思うんですが、問題は二ナの石がなくなるんで。
何か変わりの物が必要に(汗)
大変です〜

2:38 質問があります、この作品のアキトは オトメシステムを認めるのでしょうか? 
難しい質問ですね、アキトはオトメシステム自体を認めたいわけではないでしょうが……。
だからといって世界を戦乱に巻き込みたいわけでもない。
だんだんと浮き彫りになるその事実に苦悩するのがアキトの仕事です(爆)

16:35 サイコー 
ありがとーです♪がんばります!

3月9日


0:20 『天真爛漫艦長』も料理の腕は・・・(汗 
はははは、アキトはまだ食いなれているともいえますね(爆)

3月15日

0:43 600万ヒットおめでとうございます 引越しでお祝いに遅れた・・・・ 
ありがとうございます。最近HIT数が増えるのが早いっすから(汗)


3月23日


2:19 光あふるる場所 最高!! 
2:19 早く続きが見たいです 
なんとか続きを出せました〜、今後も頑張りますのでよろしくです!


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