学園の生徒がズラリと居並ぶ中。

一段高い場所にいる校長(ナツキ・クルーガー)が声をあげる。


『テンカワ・アキト準教員、前へ!』

「?」


俺が何のことか分からず呆然としていると、アリカ、エルス、イリーナの三人が俺の腕を引っ張り壇上へと導いていく。

とっさに抵抗できずにいる俺を、三人は嬉しそうな表情で促していく。

それどころか、微笑ましいものでも見るように生徒達が俺を見ている。

後についてくるサレナの無表情が逆に可笑しいくらいだった。


『皆もそれぞれの支援国などから聞いていると思うが、テンカワ・アキトは特殊な力を持ち、オトメに匹敵する戦闘力を手に入れていた。

 しかし、先だっての戦闘の後遺症と、ナノマシン除去による能力抑制により、彼の能力は殆ど封じられるに至った。

 これにより、テンカワ・アキトの特殊性は消滅したのではあるが、彼の持つ知識は我々も欲してやまないものである。

 だが、特定の国家に渡れば戦争の原因になりかねないものでもあるので、この学校内で開示していく事とした。

 それぞれの国へは、テンカワ・アキト準教員の授業から学んだ知識を持って帰って欲しい』


正直その言葉には面食らってしまっていたが、確かに俺にはこの世界にない知識があるのも事実。

彼女なりに気を使ってくれたのだろう、俺がガルデローベから放り出されれば他の国がほうっておくお分けはないのだ。

サレナも研究対象としては興味深いだろうしな。

しかし、俺に教師になれとは……かなりの無理難題という奴だ(汗)



光あふるる場所
In a far star of the future



第十七話 「はじめての……陰謀?」



「なんなのアレは……」


闇の中で呟きがもれる、そこはもう消灯時間が過ぎた後の寮のトイレ。

普段は殆ど人気はない場所である。

寮には個室用のシャワー付きトイレが設置されている事もあり、急な客か、朝夕の食事時以外は使われる事はない。


そこにいるのは闇の中で殆ど溶け込んでしまっている青系統の髪、浮かび上がるような白い顔。

どこか思いつめたような表情をした少女である。

との隣には、ビクビクとその少女に対し恐怖の表情を浮かべた少女が立っている。

もう一人の少女は金髪黒眼セミロングの髪と額を出した髪形が印象的な少女だ、ただ快活そうなその姿とは裏腹に、

いじめられている人間特有の怯えが顔に張り付いている。


「その……トモエさん……?」

「なあに、ミーヤさん」


ミーヤと呼ばれた金髪の少女は怯えながらも、トモエと呼ばれた苛立ちを顔に出している少女に問いかける。

その問いかけに対し、トモエと呼ばれた少女は猫なで声とすぐに分かる声で返す。

その声を聞いてミーヤという少女は怖気をふるう、こういう声を出す人間は大抵ろくな事を考えていない。

それ以前に、トモエ・マルグリッドという少女の事を、ミーヤ・クロシェットという少女は良く知っていた。


「その……テンカワ・アキトは直接関係無いのではないでしょうか?」

「ああ、なるほどね。確かに関係ないわね……でもね」

「はっはい……」

「前に貴女が失敗してからアリカさん凄い活躍でしょ? このままだと大変だと思わない?」

「はっ……はぁ」

「だけどもしね、テンカワ・アキトに何かあれば、アリカさんはどうなるかしら?」

「……!?」


ミーヤは自分がオトメになれるほどの素質が無い事に気付いている。

パールに上がれるのは3人に1人、ミーヤはトモエや二ナのように総合力が高いわけでも、アリカやイリーナのように一芸に秀でているわけでもない。

だから、彼女は他人の下につくしかなかった。

そうする事で少しでもおこぼれを貰ってパールにあがるという可能性も確かにあるからである。

だが、コーラル一位である二ナ・ウォンは一匹狼気質で、他人を寄せ付けない。

そこでコーラル二位のトモエ・マルグリッドについたのだが……彼女は思った以上に策略家だった。

トモエは(嬌嫣の紫水晶)シズル・ヴィオーラの事を慕っており、それに近づく者には容赦がない。

だから、シズルのお気に入りであるアリカが許せないのだ。


「もちろん手伝って下さるわよね。だって親友ですものね?」

「はっ……はい」

「なら詳細は追って伝えますわ、ごきげんよう」


ミーヤはまるで死刑宣告でも言い渡されたかのように蒼白な表情で、去っていくトモエを見送っていた。

アキトを追い落とす方法が何にしろ、彼の元にサレナがいる以上、嫌がらせなどと言う事はありえない。

今回は必ず自分にも被害が及ぶ、そう考えるとトモエについたことが正しかったのか疑わしくなる。

しかし、トモエの破滅は自分の破滅である事も十分承知しているミーヤは動く事も出来ず、その場でうずくまった……。



















すったもんだあったが、俺はほんの数日で準教員としてガルデローベに就職するハメになった。

マシロ女王の護衛も兼任となる。

一応女王の護衛は優先ではあるが、そもそも俺が護衛してもたいした事は出来ない現状である。

結局ほとんどサレナにやってもらう事になるのだが。

俺自身は、地球史という学問を教えると言う事になっている。

元々、俺のいた時代とこの世界がつながっている保障も無いが、昔のことであれば答えることが出来る。

取り合えずはそれを教える事になっていた。


「さて、本来はガルデローベに男性の教員などありえないのですが、特例を設けて一応の形を取り繕う事になりました。

 アキト・テンカワ。貴方は常に彼女達に手を出す、誘いに乗る、などということが無いよう気をつけてください。

 もしそのような事実があった場合……わかっていますね?」

「ああ」


もう老境に入ろうかという年齢に見える女性、しかし姿勢がいいためそれを感じさせない。

確か、マリア・グレイスバートと言ったか、おおよそ教頭の立場にいる人物らしい、もっとも学園長のナツキすら頭が上がらない人物でもあるそうだが。

何にしても、この人物も俺をちょっきんしたいらしい(汗)


「では、貴方に挨拶がてらコーラルの教室を回っていただきましょう」

「わかった」

「因みに一つ聞きますが。後ろにいる方はご遠慮願えませんか?」

「それは駄目だ」


マリアは俺の後ろにいるサレナを睨みつける。

しかし、サレナは無表情に俺の背後につき従うのみ、

年齢的には不思議ではあるがマリアもマイスターオトメらしいからサレナとやりあう事も出来るかもしれないが、

戦った結果校舎を壊しましたと言うわけにもいくまい。

マリアもその事の無意味さは知っているらしい、睨みつけはしたがそれ以上は何も言わなかった。


「分かりました、ただし大人しくしていられないようなら、私がお相手いたします」

「マスターに危害を加えない限りは私も無害です」

「そう願いたいものですね」


そうこうしているうちに最初の授業をするクラスに来た。

一応数日で大雑把な教材を用意はした、しかし、まだまともに授業が出来るのか不安ではある。

先にマリアが教室に入り、俺とその授業に関する前知識を与えているようだ。


「お入りください、ムッシュ・アキト・テンカワ」

「ムッシュはいらない」

「ここは公式の場です、私に無礼者になれとおっしゃるのですか?」

「いや、分かった好きにすれば良い」

「ご理解頂き感謝します」


マリアは感謝しているとはとても思えない表情で俺に言う。

分かってはいたが、彼女にはよほど嫌われているらしい。


俺は促されて教室の中に入る、教壇の前に立ち挨拶をする事になっていたのだが、教壇から見る少女達の視線で一瞬言葉に詰まった。

彼女らは俺に期待の眼差しを送っている、一人の例外もなくというわけでも無いだろうが、俺にその判別まではつかない。

考えて見れば他人に物を教えるのも、それを聞こうとする人を見るのも初めてなのだ、俺も緊張しているらしい。

それを表情に出さないようにしつつ挨拶を終えた頃にはどっと疲れがたまっていた。


「せんせー恋人はいますか?」

「お年は幾つですか?」

「この中に好みの子いますかー?」

「静かになさい! 貴方達、オトメは恋愛厳禁、もしも貞操を無くすような事があれば二度とオトメにはなれないのですよ?」

「それはそうですけどー」

「聞く位良いじゃないですか」

「……どうやらムッシュ・アキト・テンカワがいては集中できないと考えていいようですね。

 仕方ありません、このような態度であるのなら授業を中止せねばなりません」

「あ……」


とたんに教室内が静かになる。

マリアはやはり俺が授業を受け持つ事に抵抗があるのだろう、だがお陰で助かった。

とはいえ、授業を行うのが簡単と言うわけではない、今日は殆ど顔見せだけとはいえ、やはりどっと疲れそうだった……。


それから数日悪戦苦闘しながらも、どうにか授業を続けていく事が出来たのは、幸いにしてこの授業が週に二度程度の回数になっていたためだ。

教えるクラスもコーラル3クラス、パール1クラスの計4クラス、つまりは毎日一時間程度であると言う事。

拘束時間もさして多くない、それでも、精神的にはかなり参っていた。

元々人に物を教えるなどと言う事はやった事がない、それに俺の知識は中途半端だからサレナに頼る所大である。

もっとも、サレナのデータも元々戦闘支援用のAIなのでかなり偏っている。

四苦八苦しつつどうにか進めていると言うのが現状だった。


「今日は星組……アリカ達のクラスか」

「データによれば、二ナ・ウォンを含む成績上位の生徒と成績底辺の生徒の混成クラスのようです」

「中間はいないと?」

「いえ、そういうわけではないですが、底辺生徒の中にアリカ・ユメミヤも含まれています」

「……」


後見人としては微妙な所だな、だからと言って手を抜こうにも俺自身が初心者なのだから出来ないし、出来てもしないだろうが。

兎に角、注意だけは払っておこう。

そう思いつつ、教室に入った。


「起立、礼、着席」


オトメの養成校とはいえ、その辺は似たようなものらしい。

俺はクラス名簿から欠席者がいないか確認する。

とはいえ、どこのクラスも欠席者など一人もいない。

オトメになるという決意の問題もあるのだろうが、地球史という今までにない学問が気になるのだろう。


「さて、今日から本格的に授業に入るわけだが……」

「はい!」

「ユメミヤ・アリカ。何か質問が?」

「地球ってなんですか?」

「……」


俺は一瞬どう反応して良いのか迷ったが、まあ確かに、彼女らの知識としては地球から来たという程度なのだろう。

前知識は必要かもしれないな。


「地球というのは我々人類の誕生した星の事だ、この星エアルへは移民という形でやってきた」

「移民って、地球に何かあったんですか?」

「俺にもその辺りの知識はない。だが何も無くても移民は進められていた」

「どうしてですか?」

「地球では人類が増えすぎたんだ。100億を超えて膨れ上がる人口の為に地球の環境が崩れ始めていた。

 それだけが理由というわけでも無いのだろうが、移民計画は色々持ち上がっていたな」

「ふーん、あっ……ありがとうございました!」


もっとも俺の知る歴史がこの世界の歴史と合致するという確固たる理由は無い。

本当にこれで良いのか疑問は残るが……。


「他に質問はあるか?」

「はいはーい」

「イリーナ・ウッズ」

「はい、先生は地球に行った事があるんですよね?」

「ああ」

「地球ではどんな生活をしていたんですか?」

「!?」


俺は一瞬息が詰まった。

イリーナの言っていることは、私生活に関しての事のはずだが、俺は一瞬復讐を思い出していたからだ。

北辰、山崎、草壁……今でも出会えば八つ裂きにしてやりたい者達。

私生活よりもそういったことが先に思い浮かぶ辺り、やはり俺はかなり破綻しているのだろう。


「そうだな……ロボット……乗り込んで戦うスレイブのようなものと思ってくれればいい。

 それに乗り込んで戦っていた。戦争があったからな。

 だが、それも終結してからは平和なものだったよ。

 ラーメンの屋台を引いたり、四畳半の部屋で三人川の字で寝たり。

 あまり裕福ではなかったが……」

「川の字ってあの、奥さんとかいたんですか?」

「ああ、いた……」


俺はその時よほど複雑な顔をしていたのだろう、イリーナは次の質問を飲み込んだようだった。


「いや、死んだわけではないんだ。俺自身が問題だっただけだからな」

「あ……すみません」


俺のナノマシンに関する話を聞いているのだろう。

イリーナは気まずそうな顔をしている。


「気にする事はない、ここにきたお陰でバイザーがなくとも見ることが出来るし、舌で物を味わう事も出来る」

「はい、その失礼しました」

「あまり気にしないでくれ」


生徒達が静まり返ったので、そう一言告げてから授業を開始する。

内容は、最初なので惑星の成り立ちを少し、生命の始まりを少し、先カンブリア、古生代、中生代、新生代などを適当にとばしながら原始時代までを講義した。

俺自身中学卒業後は直に料理学校に入った俺だから全てきちんと覚えているわけではないし、

この辺りは歴史というイメージはないが、人類史以外の部分も一応必要だろうしな。


そうやって授業を終え、質問などを受け付けてから、資料などを片付けて部屋に戻ると、メールボックスに何か差し込まれていた。

今までも何度かそういったことはあったが、この手のメールはろくな事がなかったので殆ど捨てていたが、

差出人が気になりメールを見ることにした。


「マスターいかがしましたか?」

「差出人の名前、覚えがないか?」

「ミーヤ・クロシュエット……アリカの制服を盗んだ犯人の名前だったと記憶しています」

「その少女からラブレターが届いた」

「……」


サレナは考え込んでいたようだが途中で考えるのをやめたようだ、サレナのAIは戦闘支援用だからこういう機微には疎いのだろうが……。

ラブレターは普通なら名前を書かずに呼び出すのが常道だろうが、あえて名前を書いているところからすれば……。


「これは悪くないな、ミーヤだったか、彼女に会って見よう」


俺はサレナにニヤリと人の悪い微笑を浮かべながら振り向く。

サレナは俺の考えが理解できなかったのか、少し顔をしかめていた。

それを見て、えらく人間的だと思いふきだす俺。

気のせいかもしれないが、ほんの少しサレナの顔が羞恥に染まったように見えた。




















「ほっくんといっしょ、ほっくんといっしょ♪」


カルデア砂漠地帯の一角、巨大な岩に囲まれて風化をどうにか免れたような枯れかけのオアシスがあった。

そこには、みすぼらしいと標記しても問題ないだろう、そういう風体の人々が生活している。

共同生活はけして楽な物ではなかったが、それでも出て行こうとするものはいなかった。

そこでしか暮らしていけないことを、本人達が一番よく分かっていたからだ。

そんな寂れた場所を、違和感の塊の様なものが通り過ぎていく。

一人は組み傘と外套で身を隠した昔の任侠のような格好の男。

もう一人は、赤い髪も鮮やかな少女、服装もそれに比して赤いゴシックドレスだ。

この二人の取り合わせも異様だが、この場にそぐわない事も甚だしい。

周りの人間は皆一度は二人に目を向ける物の、その違和感のせいか、組み傘の男の放つ緊張感のせいか直に視線をそらし離れていく。


「ねぇねぇほっくん? ここの首領って人強いのかな? やー戦ってみてもいい? ねぇ?」

「……」

「ぶぅ、ちょっとくらい話してくれてもいいのに……でも、そういうクールな所もかっこいいよ、ほっくん♪」


赤い少女がその一言を言った瞬間、周囲にいた人達は気温が2度ほど下がったように感じたが、少女はまるで気にしていない。

一瞬組み傘の男が何かするかと、周囲にいた人たちは息を呑んだ、

しかし、組み傘の男は結局何も言わず感情のない爬虫類のような視線を首領のいる洞窟に向けるとそのまま歩いていった。



「戻ってきたか、北辰」

「……」

「相変わらずつれないね、それで首尾はどうだい?」

「とりあえず、薬の確保は確約させた。もし約束をたがうようなら我がまた行こう」

「それは気にしないよ、一応あんなでも今までアズワドを置いてくれていた国なんだしね」

「それも利用価値があるうちだけであろうがな」

「それはお互い様さ」


組み傘の男……北辰の目の前に立っているのは惑星エアルでテロ集団として知られるアズワドの首領だ。

どことなくライダースーツを思わせる黒い服を身に纏い上半身にははっぴの様なものを引っ掛けている。

さらに、首元からは赤いマフラーをたらして、栗色のポニーテールにあわせている。

その姿からは気迫がにじみ出ており、北辰を爬虫類とするなら猛獣のような圧力が彼女から放射されていた。


「ところで、その子は誰だい?」

「……我がスレイブの成れの果て」

「スレイブ!?」

「そーなの、やーはすれいぶなのー♪」


北辰が目を伏せるのにあわせて首領……ミドリがやーを見る。

驚きに目を見開いたミドリは一瞬硬直した。

スレイブは半分生命体といっていいものだが、こんなにあからさまに人間の真似をしたりしない。

一体どんな原因でこんな事になったのか想像もつかない。

ミドリは北辰とやーを交互に見比べた。


「そういえば、あんまりそっちの話に興味を持たないと思ってたけど、もしかして……」

「いや、我は外道だが、変態ではない」

「えっえっ? やーがいるとほっくんが変態になるの? どうして?」

「……はぁ」


ミドリの視線を受けていいわけをしても無駄だと悟った北辰は口をつぐむ物の、やはり少しやりきれない思いがあるのか眉が引きつっていた。

ミドリは北辰にも人間らしい心がある事に気付いて少し安心していたのだが、北辰はそこまで気が回らない。

いや、普段からそのような事を気にする必要の無い世界にいたのだ。

その事の寂しさと言うものをミドリは知っていたと言うだけの事。


「それはそれとして、貴方は個々に留まる気はないの?」

「我は目的を決めた、それゆえその目的以外のことに振り回される気はない」

「それってアレかい?」

「復讐という形が一番近いのやもしれぬ。我にとってはそれが全て」

「もったいないとは思うけど、仕方ないね。止める理由もない」

「感謝する」


北辰がその言葉を言ったのは何年ぶりだったか、それとも子供の頃以来だろうか。

草壁以外に聞いた事が無いだろうと思われる言葉ではある。

その言葉を残し、北辰はアズワドのアジトを去っていくのだった。



















俺は手紙にあった場所に行って見る事にした。

相手を見なければ対策が立てにくいと言う事もある。

女性関係には疎い方なのは自覚しているから、そちらであった場合は対処に困るが……。

恐らく問題ないだろう。


学園の中庭の森の中、待ち合わせ場所にほぼ定時に来た俺は、先に来ているらしい少女をみた。

少しくすんだ金髪と気の弱そうな瞳をした少女が待っている。

俺は、特に止まる事も無く少女の前に出た。


「この手紙は君がくれたのか?」

「えっ……あ、はい」


俺に声をかけられて緊張したように答える少女、彼女がミーヤ・クロシュエットで間違いないようだな。

俺は一拍置いて少女に声をかける。


「そうか、君の気持ちは嬉しいが、俺は君の事は何も知らないんだ」

「そっ……それは!」

「すまないな」


俺がそう言ってミーヤに背を向けると、ミーヤは俺を行かせまいと俺の手をつかみ引き止める。

ミーヤは俺の方を見もせず、すぐさま自分の服を破り捨てた。

切れた場所はほんの少しだが、きくずした状態で俺を睨みながら声を張り上げる。


「キャーッ!?」


だがその声は途中で飲み込まれた。

サレナが背後から口をふさいでいたからだ。


もご……もぐ……」

「サレナ周囲はどうだった?」

「はい、カメラを持った少女が茂みに潜んでいた以外は特に問題ありません」

「その少女は?」

「匿名のタレコミがあったとの事です。取り合えず名前を聞いて追い払いましたが」

「そうか、しかし……まるですっぱ抜き記事だな」

「いえ、その効力は殆ど変わらないかと」

「だろうな」


だからこそ仕掛けたのだろう、そいつはなかなか頭が回る奴だ。

俺が手を出せばそれを取り上げ、手を出さなくても自分でああいう風に叫んで人を寄せさせる。

別に目撃者はいなくてもいい、そのためにカメラマンまで用意したのだから。

こういった力技には弱いが、俺がミーヤを知っているからこそ出来た事だ。

手紙に名前を入れたのは、呼び出したのがミーヤである事を否定させないためだろう。

差出人不明の方が普通は都合が良いのだが、使われるミーヤが逃げ腰だったからと考えられる。

そんな手紙を出した事は責任を問われるかもしれないが、軽いものですむはずだ。


「さて、ミーヤ。叫ぼうとすればまたサレナに拘束されるからそのつもりで答えてくれ。この作戦を考えたのは誰だ?」


ミーヤは口をふさぐ手が離れた時息を大きくついてから、一言言う。


「……私です」

「そうか、君は退学になりたいんだな?」

「……!?」

「一応とはいえ教師をハメようとしたんだ、覚悟は出来ているんだろうな?」

「っ!!」


俺は少し声のトーンを落としてミーヤに迫る。

ミーヤは心底怯えたように俺を見ていた。


「仕方ないな、サレナ、報告を」

「待ってください!」

「……どうかしたのか?」


俺とサレナが立ち去ろうとした時、ミーヤは俺を呼び止めた。

その目は未だにどうすべきかわかっていないと如実に物語っている。


「私っ、私どうすればいいんですか!? このままじゃどっちみち破滅です!」

「ほう、君に命令した人物は随分怖いのだな」

「失敗なんて……怖くていえません……」

「ふむ、よほど恐ろしいんだなその娘は」

「はい……強いし策略家だし、それに……」


俺は以前ナオから聞いていた二人の人物を思い出していた。

パールのシホ・ユイットとコーラルのトモエ・マルグリットおそらく二人のうちどちらかが指示を出しているのだろう。


「分かった、一度だけ見逃そう。流石にその少女から庇ってほしければ名前を聞かないといけないが」

「……いえ、ありがとうございます」

「じゃあ、もういけ」

「……はい」


ミーヤはとぼとぼとその場を立ち去っていく。

俺はその姿を見て困ってしまった。


「彼女には少しかわいそうなことをしたな」

「マーキングの件ですか?」

「ああ、この上更に面倒にはしたくないが」

「こういう事は元を断たなければなりません」

「確かに、な」


ミーヤには悪いが、サレナは彼女の口を押さえた時発信機を仕込んでいた。

もっとも、波長がかなり違ったものなので数キロも離れれば意味を成さない代物だが。

それでも、その手の防犯設備のととのったここで使用可能なだけでも凄い事ではある。

サレナには暫くミーヤを監視してもらう事になるだろう。

この手の裏を暴いてろくな事にならない事はわかっているが。

降りかかる火の粉は払わねばな。

準教師になってからすぐにこれでは先が思いやられるが……(汗)















あとがき


最初にご連絡をば、私のSSにあるメールアドレスは全て使用不能となっております。

申し訳ないですが、もしメールで感想を下さる場合はTOPページ右下のアドレスにお願いします。

大変ご迷惑をおかけします。


今回はミーヤとトモエを出すという事だけを念頭に書いて見ました。

トモエは後半でも活躍するキャラですから、まさか出さないで置くって訳にも行きませんしね。

学校の教師って言う立場は今まで出せなかった類のキャラを出すにはうってつけという事もあります。


舞乙Zに関しては、少し時間をください。

どうにか見る方法を確保しました。

反映できる部分は反映していきたいと思います。

とはいえ、世界観の基盤がひっくり返る可能性もあるので難しいかもですが(汗)

そういう場合はオリジナル世界観という事でご勘弁を。


それから、漫画版ですが……かなり世界観が変わっている事にびっくりです。

やはり、エロの次は女装度をUPしてきたかと思いました(爆)

いや、あのレベルになるともう瑞穂君(オトボク)に対抗できるんじゃないかと(滝汗)

流石にあそこまでは達観してないかもですが。


これからこのSSは取り合えず学園編を暫く続けます。

転が旨く発動できるかどうかは今の時期、つまり起承転結でいう承にかかっているかな(汗)

がんばっていきます。


北辰とやーちゃんコンビは準レギュラーですので、一部の方の為に頑張っておりますが、出られない時もあると思います(汗)

他にも勢力がありますので、そっちも紹介しないといけないし(滝汗)

でも、出来るだけこれからも出していきますね。

では、また〜

WEB拍手大変嬉しいです!
コメントいただいた方には感謝感激♪
このために書いてます!(爆)
返信随分遅くなりましたが、どうにかさせていただくことができました、
ただ、申し訳ないことに3月28日の方は間に合いませんでした。
ごめんなさい........................................orz


3月29日
0:08 今回もすばらしい作品でした、 今回もアキトはベットの上での生活・・・次回は歓迎会みたいなストーリを 
0:09 期待してますw ナオの出現率高いですね、実はキーパーソンかな?
歓迎会というほどのものは無かったですが、準教師におさまりました。
今回はアレだったかもですが、ドタバタも用意しておりますのでよろしく!

0:09 次回も楽しみにしてます
次回も頑張ります♪

0:33 そこには何があったんだ!?気になる気になるぅ〜〜!
0:34 いやいや、どうもナオはアキトがお気に入りですね、セルゲイは原作どおりいい感じに微妙な役どころですね♪ 
はっはっは、まあその辺は本文にて(爆)
セルゲイは中盤以後はもう少し活躍してもらいたいですね。二ナのためにも!(爆)

0:36 消えたはずの炎は其処に在る・・・鬼と呼ばれる紅き眼が男を映す 
0:39 鉄の体を震わせて・・・鬼は歓喜に酔いしれ笑い出す。目の前にはもう一人の鬼・・・・・ 
0:41 己を殺すことに執念を燃やした鬼・・・・・今一度の再開に笑いながら力をかざす 
0:44 鬼の力は紅き闇。その闇の名を人々はこう呼んだ・・・『夜天光』と・・・ 
0:45 うわ〜書いてる最中で思ったけど意味不明な詩になっちゃった・・・・最悪だOTL 
0:46 毎度詩を勝手に書いているものですがこの小説とても面白いです 
0:47 お気に入りなので今後もめちゃくちゃ下手ですが詩を書かせてくださいお願いします!<(_ _)> 
0:48 俺もいつかここに投稿してみたいなぁ・・・・・まともに書くの続いたことないから無理だけど・・・(^^;
アキトと北辰の一騎打ちですねー、なるほど、こういうのも良いですね!
基本的に二人は会ったら戦う事しか出来ないですし、アキトの恨みはそうそう薄れるものじゃないですからねー。
今後ももし覚えていらしたら期待しております♪

0:43 今回もすごく面白かったです。次回も期待してます。 
今頃で申し訳ないですが、ようやく話を続ける事が出来ました。
今後も頑張りますのでよろしくお願いします!

2:55 厚さ20cmのコンクリじゃオトメには足止め程度にしかならなさそう・・・ 
2:56 トモエがローブ砕かれて上空数千メートルから落下しても無傷だったし・・・ 
2:59 まあ、そんなツッコミはさておいて、「それはスレイブだ」って・・・たしかにその通りなんだが、 
3:01 「スレイブ」の和訳って「奴隷」なんですよね・・・一瞬やーちゃん相手に18禁ゲームな内容を行使する北辰 
3:02 が浮かんじゃいました(笑)病んでますね自分orz 
3:03 やーちゃんと合体した北辰が縦ロールポニーにならない事を祈ります(笑) 
まぁそういう見方もありますねぇ、でもま、ジェムが無いならちょっと強化された人間程度ではないかというのが私の考えでして。
一応そういう考えの下にこのお話を作っております。
死なないってのはアニメでは当然のように起りえますからね(汗) バランス考えてほしい(泣)
北辰は鬼畜ですので、そういうことをする可能性もあるんですが、ただやーちゃんは自分によって実体化しているんですから。
オナ○ーみたいで嫌なんじゃないでしょうか(爆死)
合体して北辰が縦ロール……面白そうだ(ニヤリ)

5:21 う〜ん…勧誘と言うより忠告じゃにゃいかにゃ?
そういわれればそんな感じですねー。まぁ駄作家ですので、細かい事は御気になさらずに(爆)
 
7:25 うわっ、続き気になる!続きを楽しみにしてます。 
遅くなって申し訳ありません(汗) どうにか出すことが出来ました!

7:33 ほっくんとやーちゃんコンビ、萌…! 
7:34 毎度楽しませていただいております。続きが楽しみです 
7:35 これからもがんばってください! 
ほっくんやーちゃんはそっち狙いですので、今後もやーちゃんにはほっくんをほぐすように頑張ってもらいます!(爆)

11:42 今回も楽しく読ませていただきました。 
そう言っていただけると嬉しいです、遅くなりましたが頑張っていきます。

3月30日

22:53 つり天井って(汗)、さすがサレナ、アキトを守る為なら手段を選ばない。 
22:54 日常を守る為に戦う、一度全てを失ったアキトらしいセリフですね。 
22:54 しかしナオも結構アキトを気に入っているようですね。 
22:55 さすがは北辰、新生夜天光、やーを相手にしても崩れない。 
22:55 北辰がやーの相手をしない分少年とやーの組合せが面白いです。
感想ありがとうございます♪
手段を選ばないのは思考がデジタルだからです。ってのは半分嘘でネタってだけですが(爆)
ナオに関してはわりあいアキトと息を合わせるのが面白いと感じています。
北辰やーコンビは今日も行きます!(爆)
今後も笑いを提供できると良いですね(汗)
少年はやーと仲良くなれるかは次に出会ってからですね。
まだ少し先の事になると思いますが。

4月4日

22:04 アキトのジェムに黒焔の金緑石とかどうでしょうか?
二ナ漫画版の石ですねー、そういうのも良いかもしれません。
学園編が終わるまでに考えておきます〜♪ 


5月30日


6:55 そういや乙Zでマシロがとんでもないものつり上げたなぁ。4みてからでないとこの先執筆は危険? 
6:57 あと、オトメのローブはナノマシンの集合体じゃないですよ。正しくは高次分質化能力で作った物ですね。 
6:58 オトメのナノマシンの機能は「治癒能力強化」「身体能力強化」「高次分質化能力付与」の3つ。 
6:59 その辺の情報は列伝が詳しいので、読んでおくことを推奨します。 
はっはっは、Zはこれから見ますのでまだ良く分かりません。
でもま、どうしても齟齬があるようならオリジナル路線で行く事になると思います。

オトメのローブが高次物質化能力であることは私も散々書いたとは思いますが、
説明のしかたがちょっとややこしかったかもしれませんね。
アキトのオトメ脱衣能力(爆)も別にナノマシンをナノマシンで溶かしているのではなく、
ナノマシンで相手の能力を乗っ取って高次物質化能力を奪っているんですよ。
時々ナノマシンが直接ローブを作っているような言い回しに見える部分があるかもしれませんが、
それは私の文章力の無さですのでお許しを。


それでは、みなさん今まで遅れましたが今後もがんばって行きます!


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