私の言葉は届かない……。





私の声は聞こえない……。





貴方の声はいつも私の中に響いているのに……。





貴方はどうして私を置いていってしまうの……?






光あふるる場所
In a far star of the future



第十九話 「全てのはじまり」


迎賓館に見舞いをかねてマシロを尋ねた俺は、また切れているマシロを目撃した。

当然といえば当然だが、あまりの不味さとそれを作り出したアリカへの怒り、そして、アリカを退学にしろというのが主な内容だった。


「まったく、あんな不味いものを作るとは! わらわを殺す気か!? これは国家反逆罪だぞ!!」

「そういわないでやってくれ、彼女はいわゆる野生児的な育ち方をしたんだ、もう二度とこういうことは無いようにするから、今回は大目に見てくれないか?」

「何を言うておる! あのような新生命を作り出すのが料理とか言う次元か!?

 よしんばわらわに喜んでもらおうとしたのだとしても、業務上過失致死くらいは適用されよう!」

「なら、俺がペナルティを受けよう。今回だけでいい、不問にしてやってくれ」

「お主よもやわらわよりあの小娘の肩を持つわけではあるまいな?」


マシロ女王は俺を疑わしげに見る。

お付きの侍女であるアオイは必死になだめてくれているが効果はないようだ。

確かに今回はアリカの肩を持っているのは事実、それは否定しようも無い。

だが……。


「マシロ女王、聞いて欲しい。人を裁くのは簡単だ。だが、出きればそれをぐっとこらえて欲しい。

 牙をむいてくるなら牙をへし折ってやる必要はある、しかし、尻尾を振る相手に拳を振り下ろせば、敵が増えるばかりで意味はない。

 これから女王としてやっていくなら一人一人の扱い方というものを覚えるのも悪くは無いと思うが?」

「……それはつまりアリカを許しててなづけよという事か?」

「あまりいい言葉ではないが、そのとおりだ」

「ふむ……確かにあやつの力は光る物がある、しかし、サレナがいれば十分ではないのか?」


俺の後ろに控えるサレナに目を走らせたマシロだったが、サレナが無表情に見つめ返してくるのを見て少し怯む。

サレナの無表情ぶりはマシロ女王を落ち着かなくさせたらしい。


「うっ……」

「マシロ女王……貴方はどんな国を目指したいのだ?」

「それは……そうじゃな、わかった。アリカの事は不問にする。その代わり明日はわらわの護衛をしろ! よいな!」

「了解」


言動は怒っているもののマシロ女王はもう怒ってはいないようだ。

どのような国を目指すのかという言葉は効いたようである。

彼女は自分の思索にふけり始めた。

俺はアオイに目礼をしてから退室する。

今日はまだ授業が残っているのだ……。




















少年は困っていた……。

カルデア国王に謁見は適った、国王に興味を持ったようだが、やはり女王の替え玉としてという事だった。

それは仕方ないのかもしれない、しかし、まさかここまでするとは思っていなかった。

王室典範(議会制度における王族の身分、政治、権力、経済等に関する取り決め)、王族として、また女性としての立ち居振る舞い等を詰め込み式で覚えさせら れているのだ。

王室典範は王族が議会の上にあるヴィントブルームでは必要な事であったし、他の学問も並程度はこなさなければならない。

立ち居振る舞いは、女性のそれに関しては取り決めが多い。

更には習い事として、ピアノの演奏なども組み込まれていた。

食事の方もレルゲンシュタットにいた頃より更に豪勢なものになったが、その作法は複雑で、厳しかった。

毒見のせいでさめてしまっているのもいただけないが(汗)



「はぁ……まさかここまでなんて……」


少年はため息をつく。

疲れが溜まっている、決意はしたものの、辛さと違い勉強は頭に入らないと次に繋がらない。

つまり、覚えられない限り次に進めないのだ。

そしてその分超過の勉強をさせられる。

自分から望んだ事ではあるのだ、義父のしようとした事は間違っていたかもしれないが、それでも理由はあった。

このままでは国が駄目になるのは目に見えていた。

他国の侵略で滅ぼされるか自壊するか、どちらにしろろくな未来ではない。

だから、自分が変わろうというのはおこがましいのかもしれない、それでもこのままでいいとは思えなかった。


「ぼくも侵略者の手先だけどさ……」


ぼそっと自嘲気味につぶやく。

一応カルデア国王にヴィントの独立と政治の再生を約束させたものの、本当にそうなるかなど分かりはしない。

カルデア国王の事を100%信用する事は出来ない、女王を追い出したとたん自分の国に併呑してしまうかもしれないのだ。

大義名分が立たないからそうは急がないだろうが、自分でも危険な賭けである事は分かっていた。


「どうしたのですか?」

「フィアさん……敬語はいいです」

「そうは行きません、今後貴方はヴィントブルーム王国の女王となられるのですから」

「硬いですねフィアさんは」

「貴方はこれからそういう世界で生きていくのです」


少年がベランダでぼーっとしている所を見咎めたのだろう、カルデア国王アルゴス14世のオトメであるフィア・グロスが声をかけてきた。

彼女は徹頭徹尾無表情であまり感情を表しているのを見た事は無い。

しかし、無感動というわけでもないようだ、その証拠にアルゴス14世の世話をかいがいしくやいたり、周囲の人たちに料理を振舞ったりする事もある。


「後悔しているのですか?」

「いえ、自分で決めた事ですから。でも不安はあります。僕が更に戦乱を煽ってしまうんじゃないかと……」

「……陛下はこの国を憂えておられます。この国は強国と言われてはいますが、実質は砂漠が国土の半分をしめるような国です。

 国を栄えさせるには貿易しかないのですが、わが国はエアリーズのような工業力があるわけでもなく、砂漠から産出される油田に頼っているのが現状です。

 とはいえ、一番の買い付け国であるエアリーズへの中継点であり、二番目の買い付け国でもあるヴィントブルームが倒れれば私達は共倒れになりかねません」

「それは……」

「陛下のお言葉に嘘はありません」

「わかりました」


それでも少年は気付いていた、ヴィントを征服して周辺各国から苦情の来ないだろう策を。

もしもそれをされたなら自分はヴィントの地を踏んだときが最後だという事になる。


「さて、そろそろ作戦会議に出席していただきます」

「もう、そんな時期なんだね」

「はい、これからは貴方も公式の場でヴィントブルームの女王として振舞っていただきます。

 気を緩めたりすればどうなるか、お分かりのことと思いますが」

「わかりました」

「では、議場へご案内いたします」


少年は侍女たちに服を調えてもらい、フィアの案内のもと議場への歩を進めていく。

それは戦乱の予兆であった……。



















翌日俺はマシロ女王について再建途中の王宮へとやってきた。

王宮の復旧度合いは日増しに完全に近づいている、今はもう8割がた完了しているようだ。

建物は一棟だけでなくほぼ全域が壊れていたので完全復旧まではまだかなりかかりそうだが、この分なら数日中には城に戻れるだろう。

もっとも、マシロ女王としても王宮でいると議会からの突き上げが厳しいのでガルデローベから出たくないという本音も少しあるようだが。


「さて、アキトよ。お主王宮に移る気はないか? というか護衛なら何れは移ってもらうが」

「ありがたいが、今の俺はSPと同程度しか役に立たないぞ?」

「なに、そのためにサレナがおるのであろう?」

「マスターが望む限り私は陛下を守りましょう」

「うむ♪ それでは決定という事じゃな?」

「異論はありません」

「……」


見事にサレナに閉められてしまった。

サレナは特に表情を変えていないが、ガルデローベにいるより王宮の方が安全と考えたのかもしれなかった。

まぁ確かにガルデローベには油断できない人間もいるが……。

そんな事を考えていると、ミコトとかいう黒いブタネコを抱えたマシロ女王がくるりと振り向きながら言う。


「そうそう、お前達はまだ王宮には入った事が無いはずじゃな?」

「ああ」

「ならば付いて来い、案内してやるぞ!」


そう言われて俺とサレナはマシロ女王の後をついていく。

マシロ女王はその背の低さとあいまってまるで小学生のような印象で……。


「ここが祭儀の間じゃ、儀式やパーティ等はここでやる事が多い。後3つほど同じ用途の部屋があるがここが一番景色がいいからな」

「なるほど」


確かに凄い部屋だった、広さは縦50m横100mほどだろうか、広さもさることながら外に出られるようになっており、

庭園へと続くベランダは細緻を尽くして彫刻されている、庭園も小さな池を中心に自然というものを再現している。

小川に滝、森に山に浜辺のようなものまで、庭の中で再現されていた。

久々に帰ってきた事が嬉しいのか、中を走り回って色々説明するマシロ女王。

もうすぐ15歳の少女にはあまり見えなかった、まして女王などとは……。

それは、彼女の本当の姿なのだろう。


「ほらほら、早く来ぬか!」

「ああ」


サレナもマシロを見る目がどこか優しいようだ、まさかとは思うが母性本能でも刺激されたのか?

いや、女性なのは姿形だけのはず……。

そんな事をつらつらと考えながら案内を受けていると、中庭に面した廊下へと出てきた。

王宮の規模から考えればこじんまりとしたその場所はそれでもきちんと庭園の体裁を整えてある。

ただ、その向こうで立て直している部分が丸見えになっているのは流石に綺麗とはいえないが。


「工事も随分すすんだようじゃな、あの区画が終われば中央の塔を作り直すだけじゃ」

「作り直す? 塔は破壊されていなかったと思うが……」

「イメージの問題じゃ、もう少し……その……皆に好かれるような城にしたいと思って……」

「だが費用がかさむんじゃないか?」

「サコミズのような事を言うでない! 全体の工事費から見れば一割ほどの費用じゃ、気にする事など無いわ!」


自己弁護をするマシロ女王に俺はどういえばいいのか困っていた。

確かに親しみやすい王宮も大事だが、それ以前に税金の引き上げがどれくらい国を圧迫しているのかを考えないといけない。

多分教える者がいなかったのだろう、どこかでお金が無限に湧き出してくると信じているような口ぶりだ。

まだ、現実が見えていないという事なのだろうか。

年齢的には仕方ない事なのだろうが、同時に謀反が起こる寸前まで行ったのだ、それにマシロ女王の偽者もまだ捕まっていない。

未だにその火種がくすぶっている事に気付いていない可能性があるな。

俺はその事を指摘すべく口を開きかけた時……。


「あー! マシロちゃんにアキト!」


そういいながら走りこんできたのはアリカだった。

一瞬なぜここにいるのかわからなかったが服装を見れば一目瞭然だった。

工事現場でよく見かけるニッカポッカやランニングに黄色い安全ヘルメットまでつけている(汗)


「ぶっ!? ひゃひゃひゃひゃひゃっ!! お主なんだその格好!?」

「ここでバイトしてるんだから当然でしょ?」

「何?」

「俺の仕送りは足りないか?」

「ううん、でも、学費は全部払ってもらってるんだもん、それ以外は自分で稼がないと」

「確かガルデローベはバイト禁止だったと思うのじゃが?」

「えっ、そうなの!?」

「それくらい、わらわでも知っておるわ!! 全く無知にも程がある! 大体この前はわらわを毒殺しようとするわ」

「そんな事!? でも……うん、ごめん」

「何を殊勝な事を! お陰でわらわは緑色の食べ物がトラウマになりそうじゃ!

 本来なら牢屋にぶち込んでやる所なのじゃが、アキトに免じて一度だけ許してやる。

 さっさと学園に戻って身につかん勉強でもしておれ!!」

「何よ、せっかく謝ろうと思ってたのに!」

「ふん、貴様などに謝ってもらう必要は無いわ! それよりオトメになりたいなどという夢はさっさと捨てて田舎に帰れ!」

「そんなこと言うなんて本当にお姫様!?」

「……!! わらわは女王様じゃ!!」


マシロ女王は機嫌を損ねたのか、アリカからプイっと目をそらし、中庭を横切ろうとした。

しかしその行動は途中でさえぎられる事となる。

そう、中庭を挟んで逆側にある建物から現れたのは、アルタイ公国、大公ナギ・ダイ・アルタイだった。


「マシロちゃん今日は来てたんだ。奇遇だねー。

 僕も丁度ここに来た所でね。

 いやー思いで深い場所で再会するものだねぇ、何せここ君と僕がはじめてあった場所じゃないか。

 運命を感じるね、うんうん」


ナギはマシロ女王を見ておどけて言葉をつむぐ、本来のこれくらいの年代でもこういったことはしているのかもしれないが、

どこかでコマを見るような冷徹さも持ち合わせている事が感じられる。

ナギの印象はつかみかねている部分もあるが、それでも裏があることをにおわせるに十分な言葉だった。


「なっなな、ナギ!? 貴様いったいどうしてここに?」

「何って、僕はマシロちゃんの婚約者でしょ? 見学くらいさせてくれたってねぇ?」

「うるさい! お前などと婚約した覚えは無い!! さっさと帰れ!」

「あっれぇ、そうだっけ? あっ、もしかして、初対面の時の事まだ怒ってるんだ、あれは君が可愛いんで緊張してちょっと変な事を口走っただけさ」

「貴様!! よくもぬけぬけと!!」

「でもさぁ、あんまり気にしても仕方ないんじゃない? だって本物かどうかなんて確認しようも無いんだし」

「!!! 二度とわらわに近づくな!!」


マシロ女王はそう言って城内に走りこんでいった。

俺は後を追おうときびすを返す、しかし、それを呼び止める声があった。


「ねぇ、君は何故マシロちゃんに従ってるんだい?」

「……」


俺はナギを睨み返す。

マシロを追ってアリカが走っていくのを横目で見ながらナギの事を警戒した。

ナギは微笑んでいる、ただし、ニヤリという擬音が聞こえてきそうな危険な微笑だ。


「多分最初に出会った子達だからかな? 女の子がいいなら2.30人紹介するけど?」

「何が言いたい?」

「別に、でも君力を使えないって話だし、そろそろここに見切りをつけてもいいんじゃない?」

「アルタイに来いという事か?」

「うちに来れば新しいジェムもあげられるよ。マイスターのジェムは数個あまってるからね」

「随分と大判振る舞いじゃないか、交換条件はなんだ?」

「簡単さ、君の持っているナノマシンを少しくれるだけでいい」

「……簡単にどうにかできるものだと思っているのか?」

「そうだねー、今までの僕なら難しかったかも。でも、今は違う」

「ならば余計に渡すわけには行かないな」

「そう来ると思っていたよ。ただね、君を直接相手にしたく無くてさ……ついでだから一つ死んでくれないかい?」


そう、ナギが言い終わると同時に背後から二つの影が飛び出した。

タイミングを合わせていた? いや、時間稼ぎか!?

ナギは影が通り過ぎると同時に背を向けて逃げ出していく。

追撃は無いという意思表示、かなりの使い手か!?


「ククク、互いに手駒に過ぎぬと言うわけかも知れぬな、復讐人よ……」

「ほっくん嬉しそう♪ やーもがんばるね!」


俺は一瞬目が点になった。

現れたのは北辰と……(汗)

前回見たときにわかっている事だが北辰は半機械化したその体はよりいかつくなっている。

外套がはためき、その一部が見えるだけだが、まるで鎧を纏っているかのようだ。

何箇所かに武器を内蔵しているだろうスリットすら存在している。

以前は簡単に嗜虐心が垣間見えていたのだが、今はどちらかと言えば修験者などの厳しさすら漂わせている。

そう、一度俺が勝った事によって、奴は俺をライバルのような存在として認めた節がある。

だが、奴の心理が分かる俺自身が嫌でもある、俺はこいつの呪縛から離れられないというのか……。



……っと、いつもなら怒りに震える所だが、隣の姿を見て一気に冷めた。


「お前……やっぱり幼女趣味だったか……」

「!?」

「えっえっ? どうしたのほっくん、やー何か悪いことした?」


そう、奴の隣にいるのは10歳になるかならないかの幼女。

真っ赤な髪を巻きつけたドリルのようなポニーテールと、ふわふわしたゴシックドレスを着た……。


「妖精をはべらせていた貴様に言われる筋合いは無い」

「ルリちゃんを相手に舌なめずりしていたじゃないか」

「くっ!」


ルリちゃんはあの時16歳なんだが……まぁいいだろ、本人が聞いたら怒りそうな気もするが(汗)

珍しく北辰をやり込める事が出来た、少し満足だな。

って、そういうことが目的って訳じゃないんだが(汗)


「ほっくんをいじめるな!」


真っ赤な幼女はしかし、その瞬間俺の視界から消えた。

俺は構えを取ろうとするが、一瞬で距離を詰められる。


「な!?」


ガキッ!

間に合わないと思ったその時、幼女の拳は俺の眼前で止まっていた。

その手は見覚えのある光沢を放ち俺を守るように突き出されている。


「マスターを傷つけるものは全て排除します」


拳を止められた幼女はサレナの腕を蹴って拳を引きながら距離を離す。

サレナはメイド服からいつの間にかミスリルドレスとかいう銀色の戦闘服のようなものに変わっていた。

高次物質を戦闘服のように纏ったその状態はアリカ達オトメと良く似ているといっていい。

当然その能力も普段より上がっているらしく、霞むような速度で幼女を追撃していく。

しかし、幼女はゴシックドレスを翻しサレナを上回る速度で駆け巡る。


「あれは我がスレイブのなれのはて。見た目どおりと思うな」

「そういう事か……ならば」

「そうだ、我らは存分に殺しあおうぞ」


北辰はそう言うと同時に俺に向かって一歩を踏み出した。

















アキト達が中庭で闘いを始めようとしている頃。

ナギをまいたマシロは玉座の間に逃げ込んでいた。


「はぁ……はぁ、くそ!」


マシロはいやな事があると良くここに来ていた。

ここには一枚の肖像画があったから……。

国王と自分……であるはずの赤ちゃんを抱いた王妃の肖像画……。

一度も会った事が無い父と母に思いをめぐらすことで、沈んだ気分を少しだけ紛らわせる事が出来る。

秘密の場所とはとても言えないが、それでも、マシロの一番好きな場所だった。

だが、幼い頃に言われた言葉はまだ彼女の心をえぐっている。


【マシロ様、あの方がアルタイの第五公子様ですよ……】

【君がマシロちゃん?】

【そっ、そうじゃ!】

【へぇ、じゃあ君が噂の偽者のお姫様か】

【!?】


マシロは思う。

心無い臣下達がそう噂している事は知っていた。

だが、下々の言う事として心を閉ざす事によって、何とか心を保ってもいた。

しかし、ナギのその一言によって自分を形成している全てが否定されたような気がした。


「わらわは……偽者ではない……」

「マシロちゃん大丈夫!?」


突然の闖入者だった。

アリカがどうやってかここにはいって来ていたらしい。

マシロはどうにか自分を取り繕うと言葉を発しようとしたが、アリカが勢い良く飛び込んできたためそれもならず、


「別になにも……って、こら!」

「うわわわわ!?」


玉座の間の一部の壁がひっくり返り、落とし穴のように開いた場所から落下する二人。


ドシン!



「痛たたた! どけ! 重いわ!」

「ああ!? ごめんマシロちゃん」

「ふん……しかし、ここはどこじゃ?」

「えっ、マシロちゃん知らないの?」

「この城は100年以上前からここにあるのじゃ、わらわが全て知っているはずなかろう」

「でも、王族専用の逃げ道とかってお話でよくあるけど」

「作った頃はそうだったのかもしれぬな」


心細いのか、暗い石づくりの廊下を離しながら歩く二人。

実際、城の増改築は十回異常にも及んでおり幾つもの裏道のような場所が出来ているようだった。


「マシロちゃん……マシロちゃんは、マシロちゃんだから、マシロちゃんで……」

「ぶっ!? まさかお主わらわを慰めよう等と気色の悪い事を考えているわけではなかろうな?」

「そんな事するわないでしょ!!」

「ならば良い」


少しぶすっと、しかし、口元だけは笑ってそういうマシロ。

癒されたのは事実なのだろうが認めたくないらしい。

アリカはその事に気付いていないようだが、それでもすぐに表情を戻した。


「あっ、ミコト?」

「待って!」

ミコトと呼ばれたブタネコはマシロに抱かれた状態から一気に飛び出して走っていった。

二人は急いで後を追う。しかし、それはすぐに終わった。

出口と言うわけではないが、広い部屋に出たからだ。


そこは、コンサートホール、いやミサを行う協会というような形がしっくり来る。

そんな場所、中央部には何か巨大なものがあるようだったが、暗くてよく見えない。


「なんだろここ?」

「城の地下にこんな……」

「待てアリカ!」

「だいじょうぶ大丈夫!」


アリカは巨大な何かに向かって近づいていく。

そして、階段状になっている足場の一つを踏むと……。

足場から光が走り出し、巨大な何かが割れるように開いた。


「ああ……」

「これは……」


アリカはそのまま階段状になったところを駆け上がり、開いた中に入り込んでいく。

マシロもおっかなびっくりでついていった。


「わー、これなんだろう?」

「オルガン……じゃろうか?」


マシロは試しに鍵盤の上の一つの音を指で押してみた。


すると、鍵盤から光が吹き出し、鍵盤の上にある見たことも無いような機械を通して光が上へと駆け抜けていき。


そして、とても一つのオルガンで出せるようなレベルではない音が鼓膜を叩く……。


その異変は城内だけで起こっているのではなかった、光は城の外にまで立ち上りヴィント市のほぼ全てに響きわったった。


だが、これこそが全ての引き金となりうるものである事をアリカ達が知るのはもう少し後の事だった……。










あとがき


いやー凹みました感想やっぱ減ってるなぁと思ってそれは仕方ない事だと分かってるんですけどね。

萌える展開でも燃える展開でもない話をあまりするわけにはいかなかったと言う事ですな。

ならば、と今回は頑張って見ました。

次回にそのまま引っ張りますが(爆)

だけど、やはり感想は力だなーと思います。

でもま、前回と前々回のことを考えると、アカネとシホの話は諦めた方が良いかなと考えます。

本編どんどん推し進めていきますね。

脇を描写すると倒れると言う事を学んだ黒い鳩でした(汗)

今回の話は立ち直らせてくれたクロクロさんとジャドウエイさんにささげます。

(今回の冒頭駄文はこの話単品には関係ないです。後半ちょっと関係してくるかも?)



感想ありがとうございます。
今まで恵まれていたと感じると共に、こんな私にも感想を下さって嬉しいです。
今後も頑張ります。よろしくお願いします。


6月20日
22:31 一ヶ月ぶりの舞乙 お疲れ様です 
22:31 ナギの言っていた装置はマサカボソン・・・・じゃないかとおもいますw 
22:32 アキトの気苦労はまだまだ耐えないみたいですねw 次回の更新をたのしみにしてますw 
ははは、申し訳ないです。またやってしまいました。
次回はもう少し頑張れると良いんですが(汗)
今回は今までと違い話を大きく動かして見ました、ある意味今からは暫くアキトの苦労は少なくてすむかも?


23:45 気分屋、万歳!笑 
ありですー、何かレギュラー化してますね、やーほくコンビw


6月21日

1:32 アリカの料理、一撃必殺と呼ぶに相応しい。 
1:32 これをどうやって北辰やナギに食べさせるかですね。 
1:33 自分から嫌われ役になってアリカを守るとはアキトらしいです。 
1:33 アキトがアリカに料理を教えるのですか、どんな風になるか楽しみです。
話を動かしてしまったので、料理をどのくらい教えられるか微妙かな(汗)
でも、少しくらいマシになる所までやってみたいです。
一撃必殺ビーフシチュー……どこかで聞いた名だw
 
2:17 更新お疲れ様です! 待ってましたよ最新話! 
2:20 ここでアリカの「脱・殺人シェフ」フラグがたったようで・・・これで、踏破試験でシホが殺られる可能性が 
2:20 低くなりましたね〜(ちょっと残念だったり) 
2:21 そして、北辰&やーちゃん。二人のこれからはどうなることやら・・・ 
2:25 最後に、「学園長の『チズル』と話していて」って『ナツキ』の間違いですよね? 
2:26 ではでは、次回も楽しみに待ってます。 
またまた間が空いて申し訳ない。やっと凹みから回復しました。
アリカの脱殺人シェフ……やっている暇があるのか微妙になってきてしまった(汗)
これから、動き出すと早そうだし……どうすべ。
学園長は直しておきました。ごめんなさい。


6月22日
6:36 体は資本といいますし、無理せず完結目指して頑張ってくださいm(_ _)m
はいな、頑張ります。とはいえ、気力しだいな部分もありますのでご容赦を。
でもメインをさっさと進めれば少しは早く終わらせられるかな?
 
10:55 更新御疲れ様です。アキトの場合まずい料理だとギャグ的行動しか思いつかなかったので真剣に対応するとは 
まぁたまにはそういう日もあります、つーかあの場でギャグで済ますわけにも行きませんでしたので(汗)

6月23日
14:23 そういやマシロくんの本名としては現在『夢宮志楼』説が一番有力 
14:24 出所は、同一作者の新連載『VITAセクスアリス』のマシロ君似な主人公です。
おおーありがとうございます。ということは、シロウ・ユメミヤなのですねここでは。
今後そういう場があれば名前を入れていきますw


皆様感想ありがとうございました。
おかげさまでどうにか復帰できました。
今後ともどうかよろしくお願いします。


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