戦争はなぜ起るのだろう?



そもそも、戦争というのは、国家が単一で立ち行かなくなった時の最終手段であった。



しかし、同時に国力を大きくするための手段でもある。



世界を自分のものにしたいと考える誇大妄想とは違った意味で、戦争は国家運営に必要である場合が存在する。



例えば山国であれば海が必要だと考える、貿易、拠点、漁業なんにしても海は必要だ。



例えば国土が狭ければ広い国土が必要だと考える、農耕、人、牧畜、何にしろ広い土地は必要である。



例えば国土が広い国はエネルギー資源が必要だと考える、運輸、生活、軍事、エネルギーが必要なものは事欠かない。



それぞれの国がそれぞれの理由で必要なものがあり、戦争でしか手に入らないものも確かにある。



しかし、戦争とは勝つ国と負ける国が存在し、負ける国は当然にペナルティを負う。



何故なら、戦争をすれば人が死に、失われる命の数だけ憎しみが残るからだ。



勝った国も、負けた国からマイナス分以上の何かを吸い取らねば成り立たないのである。



当然負けた国はそれら全てを負わされる、それが戦争のルールなのだ。



それゆえに、戦争をやめるように言う人々は後をたたない、しかし、戦争を叫ぶ人々もまた無くならないのである……。





光あふるる場所
In a far star of the future



第二十一話 「戦は無常にてあるもの」




王宮からガルデローベに戻って2日後、俺はマシロ女王に言われた事もあり、定例の顔出しを行っていた。

実質的にはサレナと五柱がマシロ女王を保護しているのだが、俺も一応名目上は護衛であるため、ということになっているが、

基本的にはご機嫌取りである、サコミズ近衛隊長と侍従のアオイちゃんがやっている仕事を俺にも分担してきたという事か。

しかし、今日はいつものようにマシロ女王のわがままを聞いているというわけにも行かないようだった。



「何!? カルデアが宣戦布告をしてきたじゃと!?」

「はっ、はい、突然の宣戦布告に現在わが国は右往左往しているのが現状でして……」

「布告内容はどういったものだ?」



激しているマシロ女王に代わり報告に来たサコミズに聞き返す俺。

サコミズは焦っているのか落ち着き無いながらも内容を話し始める。



「その……ヴィントの国政が荒れているのは女王が本物ではないからであり、今カルデアは本物の女王を保護していると、

 そして、現女王に退陣の勧告とともに真なるマシロ女王の帰還及び女王位の引き継ぎ、

 それが適わない場合は相応の手段を取る事になると」

「なんじゃそれは!? わらわが偽者!? そのような事あるはずないであろうが!!」



マシロ女王は激怒して怒鳴り散らす。

だが、その表情は蒼白といっていいほど顔色をなくしていた。

彼女にとって一番ネックとなっているトラウマに触れたのだろう。

しかし、それだけですむ問題ではない。

俺は政治関係は疎いほうだが最近はマシロ女王を通じて少しばかり見知っている。

特にこの国は貴族が所領として治めるそれぞれの自治領の様な場所があり、政治的に女王の目が届きにくい場所がある。

そう言った貴族達をまとめる為の議会なのだが、今までマシロ女王が議会を疎かにしていたのがかなり効いているだろう。



「それで、国内の反応はどうなっている?」

「レルゲンシュタット侯爵領の強制接収によって貴族達からの反感も買っておりましたので、

 女王否擁護派の貴族達がこぞってマシロ女王の罷免を叫んでおります」



貴族達は利に聡いものが多い、例え国が敗れても自分の所領が守られればいいと考えているのだろう。

これはある意味火星の後継者事件に似ている、

あの時は火星の後継者達の意見が鵜呑みにされたわけでもないのに、統合治安維持軍の三分の一が火星の後継者についた。

あれは元木蓮人や統合治安維持軍に乗り遅れた後発参加組の待遇への不満と、軍需産業等からの支援、大義名分、そしてそれらを纏める指導者がそろった結果 だ。

そして、現状は同じような状況が起こっている、女王に対する不満から貴族が離反するかも知れず、また、カルデアと協力国家から資金が流れている可能性があ る。

向こうにははっきりとしないながらも大義名分があり、そしてその指導者もそろっている。

こちら側にナデシコCのような切り札が無い限り、かなり不味いことになるかもしれない。



「ガルデローベに協力要請は出せないのか?」

「いえ、ガルデローベは国際紛争には不可侵となっています。

 特定の国家に仕えるのは主従の契りを結んだマイスターオトメのみと言う取り決めが協定で定められておりますので……」

「なるほどな……」



確かにそうでもない限り特定国家内にあんな機関を入れておくことは出来ないか。

もしもガルデローベの戦力をヴィントが独占すれば他国家との戦力差が圧倒的になる。

それに、ガルデローベの面々は周辺国家の名家の者も多い、人質としての価値も出てくる。

だが、少なくとも人質程度では止まれないのだろうなカルデアは……。



「むむむ……何とかならんのか!? ヴィントブルームはこんな事で負けたりせんよなっ? な?」

「……」

「……おおそれながら、わが国とカルデアの戦力比は3倍、オトメの数でもわが国にはもう2名しかおらず、

 カルデアにはシザース伯爵家の3姉妹、三大選帝侯家それぞれのオトメ、そしてアルゴス十四世のオトメ、<塊麗の縞瑪瑙(けんれいのしまめのう)>。

 7名のオトメがおります」

「なんじゃそれは!? 圧倒的ではないか……」

「更に、わが国の貴族の中には既にカルデアに内々に帰順しているものもいるらしく、戦力比は上がる事はあっても下がる事は……」

「そんな、わらわが女王になったとたんヴィント・ブルームは終わるというのか!?」



マシロ女王は崩れ落ちるように座り込み、膝を抱え込む。

この結果をマシロ女王の責任というのは酷だろう、しかし、隙を作ったのは彼女でもある。

このままでは確実にヴィントはカルデアの属国となるだろう。



「……わらわはどうすればよいのじゃ? そうじゃ、アキトこの前のように変身して助けてくれ!」

「駄目だ、あれをするには俺専用に調整されたジェムがいる、今のこれにはリミッターがついているから途中で砕けて終わりだ」

「肝心な時に役にたたん奴め!!」



マシロ女王は膝を抱えたまま途方にくれてしまった。

確かに、足元が土台から崩れていくような物だ。

このままではどうする事も出来ずに戦争、敗戦、戦争責任を取らされて死刑までほぼ決定している。

俺とサレナで多少は時間が稼げるかもしれないが、融合物質化(フュージョナライズ)を封じられている以上逆転の切り札にはなりえない。

逆転がありうるとすればガルデローベが全面支援に回った場合のみ。



「やはり多少無理でも頼み込んで見るか?」

「それはやめておいたほうが宜しいかと、世界の敵になりたくないのであれば」

「……そうなると後は降伏しかないだろうな。だが向こうはマシロ女王を許す気はないだろう」

「はい、私としてもそれは同意しかねます。ですので……」



サコミズが話し始めた事はマシロ女王にはかなり酷な内容だったかもしれない。

しかし、マシロ女王には他の選択肢は残されていないと言っても良かった。























少年は今正当なるマシロ女王としてカルデアの軍と共に国境線にやってきていた。

本来マシロ女王のための奪還戦争である、陣頭指揮とは言わないまでもいるのといないのとではやはり士気も違ってくる。

表向きは……だが。



「ご拝謁を賜りまして光栄に存じます。女王陛下におきましては、こたびのご帰還まことに喜ばしい事と存じます。

 微力ながらこのカルバール辺境伯ザトー。陛下のお力になれればと参上つかまつりました次第」

「うむ、苦しゅうない。そちの働き期待しておるぞ」

「はは、必ずやお力になりましょうぞ!」



30代前後の男だが、その言い回しに少年はうんざりとしていた。

ようは、カルデアに取り入るための口実に使われているのだ。

おかげで、戦争になる可能性は低くなるのだから万々歳なのではあるが、忠誠心などがまるで感じられない彼らを信用する気にもなれなかった。



「ふぅ……」



面会が済んだ後、天幕の中で少年はため息をついていた。

そこに丁度入ってきたのはアルゴス14世のオトメ、フィア・グロスだった。



「マシロ女王様、ため息などつかれてはなりません。それとも後悔しているのですか?」

「いえ、これで戦争を回避しつつ、更に現マシロ女王を退陣に追い込めるなら、それ以上の手段はありません」

「はい、戦争は起こったとしても既にこちら側についた貴族が過半数を占める今、大規模なものにはなりえないでしょう」

「でも……」

「貴方も踏み入れてしまった以上、引き返す事ができない事はお分かりのはずです。この世界は食うか食われるか。

 食われないためならどんな汚い事でも平気でやる、人を飼い殺しにするのは当然、裏切りも必要ならば割り切って行う。

 公僕であろうと、独裁者であろうと、やる事は同じ、自分の周囲の力を上手く利用して立ち回るしかないのです」

「そう……ですね」



少しふさぎこんでいた少年はしかしまだ倒れてはいない、今もまだこの国を救うという考えを心に秘めていた。

だから目だけは伏せずフィア・グロスを見返していた。



「誰です!?」



唐突にそのフィアが後ろを振り向き叫ぶ。

すると両手を上げた状態でゆっくりと入ってくる小柄な男が一人。



「おー怖い怖い、さすがカルデア随一のオトメ、

 <塊麗の縞瑪瑙(けんれいのしまめのう)>オトメを連れていない僕じゃ瞬殺だね」

「……ナギ大公……」

「やあ、初めまして。こっちのマシロちゃんとは初めてだね。でも、確かに似てるね。

 こっちのほうがちょっと背が高いみたいだけど」

「えっ!?」



いきなり馴れ馴れしく話しかけるアルタイ公国大公ナギ・ダイ・アルタイに少年は戸惑いをあらわにして目をむく。

しかし、ナギは飄々とした調子を崩さず、少年に近づき、その顎をくいっと持ち上げニタリと笑う。



「でも一体どっちが本物なんだろうね? 案外どっちも偽者だったりして」

「ナギ大公、幾ら貴方でも無礼ですぞ!」

「ああ、これはすまない、あんまり綺麗な子だったんでさ、ちょっとからかってみたくなって」

「この議、場合によってはアルゴス陛下に報告申し上げます」

「好きにすれば、今の時点で僕と袂を分かつのが君達にとってどういう事か知っているならね」

「……」



そう、軍事力だけで見ればアルタイのほうが更に大きい。

オトメの数でこそ勝っているが、アルタイと一戦交えればカルデアの国力はごっそり低下し、ヴィントの征服どころではなくなってしまう。

カルデアにとって現時点で最も敵に回したくないのがアルタイである、下手をすれば更にエアリーズの介入も招いてしまうだろう。

エアリーズは国土こそそれほど大きくないが、工業力が高く、兵器が優秀である、アルタイと組むような事になれば、カルデアは敗北必死となる。

そうならないためにも、ここでアルタイの機嫌を損ねるわけには行かないのだ。

その事は二人とも良く知っていた。



「さて、マシロちゃんの顔も見たことだし、アルゴス殿の所に行ってきますか」

「はっ、ご案内申し上げます」

「急にかしこまらなくたっていいよ、僕が好かれていないことは良く知ってるから」

「……」



その言葉を残すと、ナギ・ダイ・アルタイは少年の部屋から姿を消す。

少年は思わず息を呑んだ、あれが政治の駆け引きだと言う事は分かっていたが、あそこまで飄々としていられる理由が分からない。

仮にもオトメに殺意を持って睨まれたというのに、特段気にした様子も無かった。

自分があのくらいになるにはどれ位かかるのだろう……。

少年は無意識にナギと自分を比べていた……。















「ねぇねぇほっくん、あれでよかったの?」

「……」



北辰はやーに声をかけられてまともに返事をするでもなく、視線を上に向ける。

そこにはヴィントの王宮、風華宮が見える。

先日アキトを追い詰めた物の、結局邪魔されて止めはさせなかった。

やーが聞いているのはその事だ。

実際あの時は手引きをした男がいて、その男のお陰でヴィントには苦も無く潜入できたのだが、またガルデローベに引きこもられてしまっては手が出せない。

もっとも北辰はそのことについてそう急いでもいなかった、この世界に来てからアキトも自分もまだ強くなっている。

この先次第ではもっと楽しめるかもしれないと北辰は感じていた。

だが、手引きをした男についてはそうも行かない。



「やあ、ここにいましたか。探しましたよ」



そういうと、中肉中背ながら白人にしては背が低く、鷲鼻に眼鏡を引っ掛けている上、頭髪が後退を始めている男が北辰の前に現れる。

警戒心を抱かせるような姿ではないが、北辰もやーも油断はしない。

街中にスレイブを何百と放つ事が出来るそういう男だからだ。



「……」

「ぶぅ、おじさん嫌い」



どこか中間管理職を思わせる風体だが、やーはこの男が苦手だった。

別に会話がしにくいのでも、戦って負けると思うわけでもない、生理的嫌悪という奴だろうか。

北辰とどこかで似ており、またどこかで似ていないタイプである事は分かっている。



「ははは、これはまわ嫌われた物ですね。夜天光さんでしたっけ。

 でも、今日は北辰さんにお話しがありまして……構いませんよね?」

「構わん、言え……」



北辰は視線でいつでも殺せる事をにおわせつつ、しかし、向こうの言い分を聞く気ではあるようだ。

やーにとって北辰は絶対だがこういう部分にどこかはらはらしている事も事実である、

昔の様な自分の正義を持っていないせいである事までは気付いていない が。

そう、北辰は草壁の掲げる正義のためにあえて外道となった、

もちろん元から正道とは縁の無い人間だったが、それでも影として主を守り敵を狩るのが勤めであった。

しかし、草壁春樹は更に一歩進めて木連を動かし世界を統一せんとした。

その思想は北辰にとって衝撃的であり、また主として仕えるに十分であった。

故に、ただの影ではなく、暗部となり、外道をひた走ってきた北辰なのだが、現在はその外道をなす理由となる正義が失われており、

闘いにしか喜びを見出せない状況に陥っていた。



「では、先ずは北辰さんの目的ですが、やはりガルデローベに戻っていらっしゃるようですね。

 でも、もうすぐ彼らが動きますから。十分隙はあると思いますよ」

「ほう……カルデアか」

「はい、それと御代ですが、ガルデローベには地下に図書館がありましてね。

 その図書館にある情報を私達は必要としているのです」

「ふむ、しかしそれならカルデアに取り入ればいいのではないか?」

「既に彼らにはアズワドがついておりますからね。出きればそれが突入してくる前に何とかできるといいんですが」

「分かった、情報の引き出しはついでに行っておこう。ただし、十分気を引いてもらう事になる」

「そこは当然、何あそこにはこちらも仕掛けがありますので」

「ふんっ、ならば手並み拝見させてもらおう」

「はい、お互いに」



北辰の表情は読めないが、二人が考えているのは当然ヴィント市を騒然とさせる事件であろう事は間違いなかった。

ガルデローベは多少なりと治安維持の目的も果たしている。

それに、彼らシュバルツはテロ組織だ、ただせ済ませるつもりは無いだろう。

やーはこの先どうなっていくのか不安に思うと同時に、北辰を守らねばならないとも思っていた。


















「それで、ガルデローベとしての意見はどうだ?」

「我らは国際紛争には直接介入できない、裏から手を回して戦争を回避するように動くような事はしてきたが。

 こう表立ってしまうと条約が効いてくる」

「そうか……」



俺は学園長のナツキ・クルーガーになんとかマシロ女王の保護を頼めないか聞いてみたのだが、

現状ガルデローベは表立って動けないらしい、少なくとも臨時で審議会を開き六ヶ国中四ヶ国の支持を取り付けないと動けない。

しかし、審議会を開いている間に終わってしまいそうなこの状況ではうかつに審議会を招集できないし、戦場がヴィントである以上それぞれの国家も動きにく い。



「我々もマシロ女王を見捨てたいわけじゃない、しかし、現状では匿うことも出来ない、

 下手をすれば向こうがガルデローベに介入する口実にされかねないし な」

「それもそうだな……」

「まあまあ、焦ってみても仕方ないどすえ。どうです? お茶でもお一つ」



最近はアキトの周辺警戒をサラに任せてのんびりしている事の多いシズルが学園長と俺に紅茶を手渡す。

俺はそれには口をつけず、しかし、情報を整理しなおしてみた。

現状戦争になれば敗北必死、しかし、ガルデローベが動けば逆転の可能性もある。

しかし、ガルデローベが審議会の承認が無ければ国家間の諍いに介入できない。

審議会を開いている時間も無い。

ならば……。



「でっちあげでもいい、ガルデローベに敵が進入してきた事に出来ないか?」

「それは……」

「向こうがガルデローベに興味が無いとは考えにくい、当然何らかの方法で介入してこようとするだろう」

「確かにテンカワはんの言うとおりどすな、でも、もし違ったら? 審議会でそれと説明できんかったら?」

「それは……」

「その時は、うちらが全員首を掻っ切ってお詫びするしかないんどすえ? その責任をテンカワはんは負えますか?」



シズルは真剣な顔になり俺を見据えてくる。

確かにここで責任を俺が持つと言うのは簡単だ、しかし、実の所俺の首一つでは収まらない、立場的にも俺はそこまで上の人間ではない。

つまり、シズルは遠まわしに諦めろと言っているのだ。

しかし、そうなると……もうマシロ女王を助ける方法は一つしかなくなる。

そのためには……。



「分かった、今回は引いておこう。しかし、諦めたわけではない事も覚えておいてくれ」

「こちらも出来るだけの事はしよう。だが……何故そこまでマシロ女王を助けようとする?

 失礼だがテンカワ・アキト。貴方にはそこまでの義理は無いと思うが?」

「……さあな、ただまあ。放って置けないんだよ、危なっかしいからな」




そういうと俺は口元を緩めた、実際あの危なっかしさは俺の知る人物に通じるものだ。

案外俺がマシロ女王の下を離れないのもそういうことかもしれない、未練だな……。

ただどちらにしろマシロ女王が殺されてしまうのが忍びないのは同じ事。

何とかしないとな。














学園長との話し合いの後、俺はサレナを伴いコーラルオトメ達の寮へと向かった。

しかし、途中ふと思いつきサレナに問う。



「サレナ、俺のやっている事は滑稽だと思うか?」

「マスターのしている事に私は口を挟むつもりはありません。

 私はただ、マスターの敵を排除し、マスターの盾となって安全を確保するのみです」

「だが思考しないわけではないだろう?」

「はい、そういう意味においては。最近考える事があります」

「というと?」

「マスターは善人と呼ばれる種類の人間です。ただ、環境の変化についていくため独自に進化したとでも言えばいいのでしょうか。

 ただ、それでも根本は失われていないため、マシロ女王のような人を放っておけないのでしょう」

「ただの自己満足かもしれないぞ?」

「自己満足というものはよく分かりませんが、満足とは達成感の事ですから、目標、目的を達成すると言う事です。

 私達AIはそのために作り出された物です。遠慮などせずマスターの目的のため存分にお使いください」

「そうか、そうだな……」



サレナはそういう部分はサバサバとしている。

いや、確かにブラックサレナとそのAIは戦闘するために作り出されたのだから、当然ではある。

最近はその事を忘れかけていたのは、外見もあるが、家事等もそつなくこなしている姿のせいだろう。

話しているうちにアリカ達の部屋にやってきた。

今いるのかどうかは分からないが、時間的には授業時間等は終わっているはずである。

そう考えてノックをし、反応を見る。



「アリカ、いるか?」

『はーい』



中からドタバタと音がして、暫く時間が過ぎる、そしてゆっくりと扉が開いた。

中から顔を見せたのは、二ナ・ウォンである。

アリカは奥のほうで何かしているようだ、部屋が片付いてないのか……。



「幾ら教師とはいえ、勝手に女子寮に入っていいわけではありません。許可は貰っていますか?」

「ああ、学園長に許してもらっている。それに、話はここからで構わない、アリカと話させてくれるか?」

「はい、分かりました。少々お待ちください」



二ナは戸惑っていたようだったが、俺が話した事情を理解したようだ。

奥に一度戻ってアリカをつれてくる。

アリカは少し恥ずかしそうに顔を赤くしながら、部屋が見えないように俺の前に出た。



「アキト、その中見てない?」

「ああ、見ていない。それに悪いが今はそういうことを話しに来たわけじゃない」

「えっ?」

「ヴィント・ブルーム王国にカルデアが攻め込んできたのは聞いているな?」

「あっ、うん、マシロちゃん大丈夫かな?」

「このままでは降伏する以外の選択肢はないらしい」

「そんな!?」

「ガルデローベにも協力要請をしてみたが、無駄だった」

「駄目だよ、諦めちゃ! アタシも校長やシズルお姉さまに話して見る!」

「いや、時間が無い。ヴィント・ブルームが国として降伏した時はマシロ女王は良くて国外追放、悪くすれば公開処刑もありうる」

「でも、だったら余計に」

「だが、力を持つ者がそれだけの責任を持つと言う事は間違っていない。女王もガルデローベも勝手が出来るならそれは暴力にすぎない」

「でも、でも、大切な人達が困っている時に何も出来ない力なんて意味ないよ! 私があこがれたオトメはそんなのじゃない!」



やはりアリカは正直で一直線な子だな。

しかし、今はマシロ女王を生かす事を最優先にしたい。

アリカには悪いが。



「アリカ、君がオトメになるまでのお金は振り込んでおいた。

 そして、マシロ女王を連れ出す事に成功した時は連絡をすると約束しよう。

 だが、今は耐えてくれ。人数が多くなればそれだけ見つかりやすくなるんだ」

「……でも」

「頼む」

「分かった、必ず連絡ちょうだいね」

「ああ、それとルームメイトの二人にもよろしく言って置いてくれ」

「うん、分かった」



アリカはまだなにか言いたそうにしていたが、俺は会話を打ち切り、寮を後にする。

後二人いる部屋の住人も、他言するような性格ではない事は良く知っている。


だが、この安心が後日思わぬつまづきとなって俺達を襲うとはこの時の俺には想像もつかなかった……。

















あとがき


ごめんなさい、こっちもかなりあいてしまいました。

そして急展開風ですが、まだ闘いそのものはないです。

というか、戦闘らしい戦闘も無くヴィントが負けるかも?

アキトが既に負けた気でいますしねw

でも実際、大国に挟まれた小国ってのは風に流されるようなものですし、仕方ないと言えば仕方ないんですが。

カルデア、アルタイ、エアリーズともに軍事力は倍かそれ以上あると言う事にしています。

三国の間に挟まれたヴィントはガルデローベがあるお陰でいままでやってこれたともいえますね。

交渉の能力が高かったからでもあるのでしょうが。

マシロ女王は基本的にそういうものを身につけていませんし、何より政治をあまり知りませんでした。

それゆえ厳しい政治という波に飲み込まれようとしていると言う事もあるのかも?

まぁいろいろ言いましたが、整合性があるかと問われれば自信ないですorz

兎に角、今後どんどん立場が悪化していくので、アキトは頑張らねばなりません。

私の気力が持つように祈ってくだされorz


7月23日

22:29 アリカが王女って事はマンガバージョン?マシロ「男」は弟って事ですか? 
22:30 今回もすばらしい作品でした、サラの登場の早さにびっくりデスw 
22:31 ロリスレイブの分身ワザの弱点は・・・・テン○ンハンの四体拳みたいな弱点が・・・・・ 
22:32 次回から戦争ですね。 マンガとアニメのキャラと性格は違うからオリジナルに進めるのは大変ですね がんば 
22:33 ってくださいw    アキト サラのローブを見て自分の格好が変だと考える::: 
色々見ていただきありがとうございます♪ アリカとマシロ(男)はこれからかかわりが強くなる予定ですが、深いところまでは決めてないんですよね。
どういうかかわりになるかは流れ次第ということでw
サラはなんとなくアキトに関わらせてみたかったという事はありますね(爆)
分身はまぁ天津飯ほど弱くないですよ、肉体能力的には全く同じですから、ただ制御する頭は一つであるということになっています。
だから数が少ない方が操りやすいわけですなw
今回から戦争というかいきなり敗戦機運濃厚ですw
本当の戦争は三勢力が出揃ってからにしたいので、今回は早めに流したいと言う事もありますしね。
アキト……まぁそんな感じですw

7月24日

14:04 大好きなサラがもう出た・・。やってくれますね〜。サレナは可愛いし、言うことありません。 
ありがとーです! 今後も頑張っていきますよ、でも、サラの出番はあまり増やすとややこしい事になりそうなんで辛いですね(汗)

7月26日

17:15 アキトと北辰のマジバトル、とても面白かったです。 
17:18 纏の欠点、未完成の制空圏などの設定が良いです。 
17:21 やはりなんでも出来るよりそれを補う為に必死になる姿が話を進める上で面白くなるとおもいます。 
17:25 「マスターは女性関係でトラブルに巻き込まれる事が多すぎます」 
17:25 サレナも言うようになって楽しいですがアキトはまだ自覚がないですね。 
ははは、戦闘に関しては出来うる限り頑張ってみたいと思います。
その代わりあまり回数を行う事は出来ないかもしれませんが……。
サレナに関しはまだ本人の自覚はあまり無い状況ですね。
アキトは……こういうキャラですしw


8月10日

3:53 ハルモニウム仮起動!! カルデアのおっさん(笑)は「コミック版セルゲイ」化しつつあり、ますますめがは 
3:57 目が離せませんね〜。 そして、今回自分の格好を自覚したアキト・・・「以前の俺もこんなもん」には 
3:58 噴きましたww ではでは、次回も楽しみにまってマス。 
ハルモニウムは実質的には武器としての特性が大きいですし、切り札になるにはもう少し状況が動く必要がありますね。
カルデアがちょっとそれっぽいのは否定できないですねwでも、ナギも負けていませんよ。悪巧みでどちらが上を行くかというような戦いになるかとw
アキトに関しては、事実ですしどうしようもないですなw(爆) 次回も頑張りますね、よろしくお願いします。


9月5日

13:41 何もかもが中途半端だな、時間潰しにはなったかな程度
んー、不満たらたらですな、ではもっと良いSSでも探してくだされ。



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