代々に渡りマイスターオトメを輩出してきた名家がある。
それ故にその家は国内でも有数の権力を有し、権力者達に内心陰口を叩かれるほどである。
しかし、その代償は大きい、オトメを輩出するということは、戦争に出ると言う事でもある。
その家は代々に渡り女性が生まれればオトメとなり、戦場に行っては散っていった。
もちろん、それぞれに優秀なオトメであったが、大きな戦争が何度も起こったため、仕方の無い事であったろう。
それでも、他人はその程度ですむ、しかし、大事な娘を戦争で散らせた父親は、兄弟は、婚約者は。
それを納得できるわけも無く、だんだんとオトメというものに疑問を持つようになった。
それは自然な成り行き、誰が彼らを責められるだろう……。
光あふるる場所
In a far star of the future
第二十二話 「少女の叫びと男の狂気」
俺はマシロ女王を守るべく駆けずり回ってはみたが、大した成果も上げられることなく、
その間にもカルデアの軍は国内に侵攻を開始、直轄領となっていた元侯爵領を占領、周囲の貴族に呼びかけ賛同を募っている。
この世界ではオトメのパワーバランスにより平和が長かった所為で保身を考える貴族が多く、
結果的に殆ど戦闘らしい戦闘すらないまま国土の半分以上が既にカルデアに落ちている。
もう数日もすればカルデアの擁するマシロ女王がこの地を踏む事になるだろう。
「時間が無いな……」
「はい、実質的に脱出以外の方法ではマシロ女王を救い出す事は出来ないでしょう」
サレナが俺の背後から結論を述べる。
俺も前からそれ以外の方法は無理だろうと考えてはいたが、できればそういう事態は招きたくなかった。
俺とマシロ女王ではこの世界を旅するには心もとない。
何といっても土地勘が無い俺と生活力の無いマシロ女王では空回りになりかねない。
サレナはいろんな意味で強力だが、問題は俺自身ガルデローベの庇護を離れた時に追撃を受ける可能性がある。
「さて、そうなれば……」
そんな事を考えていたとき、視界の隅に歪みを捕らえた。
おれはふと足を止めて自然な動作で声をかける。
「サラ、俺がガルデローベを離れたらどうするつもりだ?」
「……一応隠れてるんですし、あんまり声をかけないでくださると嬉しいんですけど?」
「しかし、マスターは兎も角、私のセンサーでは常に貴方を捕捉していますが?」
「うわー、ロボットって凄いですね、これでもステルスは熱も匂いも消すんだけどな……」
「光学反応に歪みが出来ます。100m以上離れていれば私でも捕捉は難しいかもしれませんが」
「そうなんですか、じゃテンカワさんは?」
「気配があるからな」
「気なんて本当に使える人始めて見ました……」
にじみ出る様に現れながら、ガルデローベのマイスターオトメ五柱の一人であるサラ・ギャラガーが寄ってくる。
とはいえ格好が格好だけに変な集団と化しているが(汗)
俺の格好は今王宮に仕えている都合上衛兵の正装になる、あんまりこんな格好は好きではないが……。
サレナはメイド、王宮にいるにはさして可笑しくないコンビではある。
しかし、サラは俺の昔を彷彿とさせる黒マント&黒いボディスーツ&黒い目の周辺だけの仮面というオトメのローブを着込んでいる。
一気に場がコスプレ会場になることは間違いない(汗)
「そのローブなんだか……狙ってやってるのか?」
「え? このローブは元からこんな感じですけど?」
「そうか……もしや設計段階から……いや、まさかな(汗) まあいい、でだ。俺達が出て……」
「はい、私としては新たな命令が下るまではどこにいようとついていきますよ、護衛として」
「新たな命令?」
「そう、今の所護衛以外には命令はないですし」
「なるほどな」
サラは任務に忠実なのかどうか、ただどちらにしろ今敵にまわることは無いらしい、少なくとも本人の言を信じるならばだが。
「でも、貴方本当におせっかい焼きですね? 私が護衛に着任してからずっと駆け回ってるじゃないですか」
「まあな、この性格だけは直らないらしい」
「そういうことばかりしているから、波乱に巻き込まれるのです」
サレナが不思議とすねているような口調で俺に言う。
サラも、俺もだが、少しびっくりしてサレナを覗き込んだ。
サレナは俺達が見つめているのを不思議そうに見ていたが、少しだけ頬が染まっているのを確認できた。
「感情は順調に育っていると言う事かな?」
「別に感情に目覚めていい事があるとは思えませんが」
「まぁそれは俺のわがままだ、あまり気にしなくていい」
「……わかりました」
サレナは俺の言動に戸惑いながらも、一応は受け入れてくれている。
元々が戦闘用AIだったとは思えないくらいだ、しかし感情というものは制御するのも大変だ。
俺自身損得だけで動けたならどんなに楽かと思わなくも無い。
しかし、飛び込んでくる厄介事をほうっておくとこの先どうなるかと考えてしまう。
それは人間の想像力の産物なのかもしれないな……。
「でも、本当に出奔なんて考えているんえすか? 場合によってはガルデローベも敵に回しますよ?」
「否定できないな、しかし、誰もが利害を持っているものだ」
「それはそうかもしれないですが……まあ、私もあの女王様嫌いじゃないですし、暫くは目をつぶってあげます」
「ありがたくて涙が出るな」
「ふふっ」
「ククッ」
まったく食えない護衛殿だ、ガルデローベの利益になるかどうか分かるまでは泳がしておいてくれるらしい。
実際、占領された後でガルデローベの中立が守れるかどうかが不明なのだ、現女王という駒は損にならないと踏んだのだろう。
それに、下手に今俺を抱えていると介入の口実にされかねない。
今俺はガルデローベにいないほうが良いのだ。
結局俺の行動は、ガルデローベにとって一石二鳥ということになるな。
そんな風に考えながら俺はまたマシロ女王が助かる方法を模索していた。
「さあ、マシロ陛下。いよいよ上洛です」
「そうですか、分かりました」
少年の目的、それはこの国の平安である。
そのために、大々的な手術を行わなければならない、他国であるカルデアの力を借りてまでそれをなそうとしているのだ、失敗は許されない。
少年にとっては、むしろここからが戦いである、いくら力を借りたとはいえカルデアに乗っ取られるようなことがあってはならない。
それでは現女王以下であると言う事になる。
わざわざここまできた意味が無い。
「でも……」
「何か?」
「いえ、何でもありません」
「陛下貴方は女王となられたのですから……」
「分かっています。人前ではもっと堂々としろですよね?」
「私もカルデアのオトメである事をお忘れなきよう」
「ええ。いつまでもこのままではいられませんものね、これからは接し方にも気をつけるとしましょう」
上品な言葉を<塊麗の縞瑪瑙>たるフィア・グロスに返しながら、不安と戦う少年はそれでも思った。
やはり、自分ひとりでは彼らカルデアの影響力をどうする事も出来ないのではないかと。
自分はカルデアのみこしに乗ってきたようなものだ、それが自分で判断し動くには自分だけのコネクションを作っておく必要があった。
少年はそのことを痛切に感じながらそれでも先に進む、決意が鈍らないように……。
「それでは、進軍の用意を」
「はっ」
フィアが立ち去った後、自らも進軍用の儀礼服を侍女につけてもらいながら、本陣のある空母の方に向かう。
もっとも、空を飛ぶのがオトメばかりであるため、空母とはつまりオトメ達の待機所という感覚が近いかもしれない。
しかし、当然ながら一番安全な場所であると同時に一番戦闘で被害が出やすい場所でもある。
現在ほぼヴィント市を包囲する形で進軍を開始しているが、まだ懸念はある。
それは、内務大臣派と呼ばれる王党派貴族で、現在のマシロ女王を擁立したのも前内務大臣である。
彼らは戦闘に耐えうる戦力としてはオトメが一人いるだけだが、ヴィント市に多数の兵士を抱えている。
もし潜伏されてゲリラ戦を展開さればかなりの被害が予想される。
「出来れば血を流したくは無いけど……」
その呟きは誰にも聞こえなかったらしい、少年は口元を引き締め周囲を見る。
現在4人のオトメがこの空母に乗り込んでいる。
みなそれぞれに力あるオトメだが、もしもガルデローベが動けば逆に負けることもありえた。
それゆえ、周辺各国への根回しは万全を期している。
後は、孤立した王党派のシンボルであるマシロ女王を捕らえるだけである。
「あまり時間はかけられないかな……」
そう口に出した少年の気配を察したのか、フィア・グロスが戻ってきていた。
そして、早々に降伏した貴族派の中心人物である、カルバール辺境伯ザトー。
ザトーのオトメである<華握の虎目石>のオトメもいる。
その他のオトメ達もみな少年に注目していた、この戦場に号令を鳴らすのは少年しかいないのだ。
少年にとっても電撃作戦を行う事が一番の早道なのは事実なのだ、このまま降伏をしてくれれば一番良いのだろうが……。
「女王陛下ご命令を」
「ここまで来て細々とした命は下すまい、目標は反乱軍の殲滅! オトメによる先制攻撃の後、軍勢を突入させる」
「はは、カルデア皇帝陛下の名において、その要請承りました」
「我らヴィントブルーム家臣が忠心ご照覧あれ!」
少年の号令一過、全ての軍が動き出す。
ヴィントの軍の半数以上とカルデアの第一〜三軍、そして、介入の為に日和見を決め込んでいるアルタイの軍勢もあった。
それらが一斉にヴィント市へとなだれ込む、砂漠に囲まれたヴィント市なので何百隻という砂船が中央へ集結していくかのように動いていた。
そして最初に突入した4人のオトメはあっという間に市の検問や陣地を破壊し、軍勢の突入ルートを確保していく。
結局、ヴィント市からオトメは一人も出てくることは無かった。
その王党派のオトメのマスターが真っ先に逃亡したからである。
こうして、突入から一日もたたずにヴィント市は占領されたのであった。
「急いでください姫様!」
「わらわは女王じゃ!!」
マシロ女王、いや今はもうただのマシロということになるのか、兎に角、彼女を先導してアオイがかけて行く。
俺はマシロの後から背後を警戒しながら動いている、サレナには先行してもらって安全の確保をしてもらっている。
そう、今俺達はヴィント市からの脱出を図っていた。
「くそっ、あのような偽者に国を追われる事になろうとは!! どうしてじゃ、一体何が悪かったというのじゃ!?」
「今はその事を論議している暇はありません、生き延びる事だけを優先してください!」
「しかし……」
「生きていれば再起を図る機会もございます。それとも、カルデアの軍勢に捕まりたいのですか?」
「うっ、うむ分かった」
普段から侍女として長くマシロに仕えて来た貫禄か、アオイの言葉はマシロに届いたようだ。
それにしても、相手の動きが早すぎる、既にヴィント市の半分近くが占領されている、恐らく日が沈む頃には決着がついているだろう。
それまでにヴィント市を出なければかなりマズイ事になる。
恐らく、カルデアはこちら側が再起を図る可能性をゼロにするために、死刑にするか、事故に見せかけて殺すだろう。
あるいは、民衆の暴徒に殺された事にするという手もある。
何にしろ、そうなれば命は無い。
明日になれば支配体制の移行が行われる、もっともいくら早くても国内全域にそれを行き渡らせるには一週間はかかるだろう。
つまり、ヴィント市から出る事が出来れば、海外へ脱出できる可能性も出て来る。
「サレナ、そっちはどうだ?」
『現在の所敵対勢力は殆ど王宮へ突入する事を目標に動いています。
港は全て押さえられていますが、脱出する難民までは目が行っていないようです』
「やはり、難民にまぎれて脱出するのが一番か」
『はい、難民達はアルタイ、エアリーズ、そしてカルデア方面にそれぞれ向かっています』
「そうなると……後はどれが一番安全かという事だな」
「あのう」
「なんだ?」
アオイが俺に話しかけてきた、良く見ればアオイもマシロも足を止めている。
「ほれ、アレ。お前の客じゃろ?」
マシロが示して見せた先には確かに人がいた。
ガルデローベの制服を着た三人組、とはいえ、いつもとは少しメンバーが違う。
一人はいつも元気な突撃娘、アリカ・ユメミヤ。
一人は好奇心旺盛な眼鏡っ娘、イリーナ・ウッズ。
そして、いつも物静かな娘、エルスティン・ホー。
三者三様の表情で俺達を見ながら、近付いてくる。
サレナは先行しているとはいえ、彼女らを認識できなかったはずは無い、気を利かせたつもりか?
「どうしたんだ?」
「いやいや、テンカワさん達逃げるんでしょ?」
「大雑把に言えばそういうことだが」
「じゃ、目的地をエアリーズにしません?」
「イリーナちゃんの国ってエアリーズなんだって! みんなで行けばきっと大丈夫だよ!」
「お前達……オトメへの夢はどうするつもりだ?」
「あははは、私は元から国費留学出来るって事で来てただけだし。この先きな臭くなりそうだしねー」
「困っている人を見捨てるなんて出来ないよ、アタシはそれの出来ないオトメなんて認めない!」
「……」
二人とも並々ならぬ決意で出てきたらしい。
オトメに関してはアリカは譲るまいと思っていたのだが、どうやら正義感のほうが勝ったらしい。
とはいえ、アリカの正義感がマシロの事に関するものだとすれば、マシロにも責任があるのだから正しいとは言い切れないのだが。
二人ともいつの間にかそれだけの決意を持つようになっていたのだなとしかしふと違和感を覚え、いつの間にかエルスティンがいなくなっていることに気付い
た。
俺は何か悪寒を覚え、マシロのほうへ滑り込むように走っていった。
ズブリ…………!
俺が走りこんだ時には既に間に合わない状況だった。
マシロの前に来ていたエルスティンはまるで操られているかのごとくぎこちない感じで、ナイフをマシロに突きたてようとしていた。
しかし、寸でのところでアオイがマシロを庇う形で覆いかぶさる。
そして、そのわき腹にナイフが突き刺さった……。
「なぜ……!?」
「私は……私は、知識と知恵の神の信仰に基づき、マシロ女王に消えてもらわねばなりません……」
虚ろな声で語るのは、まるで別人のようであったが、それでもエルスティンの辛そうな表情が、操られてやっているのではない事を示していた。
本当はやりたくないという思いが伝わってくる、しかし、同時に何か絶対的な心の指針とでもいうものがエルスティンを支配しているようだった。
アオイの傷は致命傷とまでは行っていないようだったが、出血がかなり多い、時間をかければ失血死する可能性がある。
後手に回っている暇は無い……。
「ホー家までシュバルツが入り込んでいるとは……侮りがたいですわね」
「エルスちゃん!? うそ……だよね? 嘘だって言ってよ!!」
「……私は……はっ!?」
俺の背後からサラ・ギャラガーが光学迷彩を解いて現れる。
サレナも飛んで戻ってきた、そしてエルスティンを蹴り飛ばしマシロ達から引き離す。
エルスティンもこの状況で勝ち目が無い事くらいは分かるだろう……。
しかし、エルスティンは胸元から、黒い宝石がついたペンダントを取り出した。
まさか……。
「黒き誓いに従い、我、盟約を果たさん……」
ちぃ! あれを出してしまえば引っ込める事は出来ないはず……。
出す前に、気絶させるなりなんなりで止めなければ!
サラも気付いたようだ、サレナも走り始めている。
これならば間に合うかと思えたそのとき……。
「信仰に死するは、無知なるか、それとも信念なるか。その信仰心を植えつけたものもまた外道よな。
だが、貴様らの望む結末にはなりはすまい、なぜならば……」
「やー達が来たからね!」
突然クナイの雨が俺達の眼前に突き刺さる。
そして、エルスティンの背後から奴らが姿を現した……。
「古の神……知識と知恵の神よ……」
「くそ!! どこまで俺の邪魔をする気だ! 北辰ーー!!」
「知れた事、貴様が死ぬまでよ」
「貴様!!」
北辰は俺に向かって滑るように加速する。
俺も応戦すべく、加速した。
夜天光のスレイブはサラが対応しているようだ。
速さでは夜天光に部があるが、サラは空中戦を得意としているようでうまく立ち回っている。
その隙にサレナはエルスティンに向かって突っ込んでいった。
しかし……。
「我に忠実なるしもべを与えたまえ……」
エルスティンの契約は完了し、そこには四足で前足が鎌になったような5m弱の出来損ないの巨人が現れていた……。
それは、初めから決っていた事だと言うのだろうか……。
そもそも、シュバルツというのはテロ組織ではなかったか、ホー家というのは名門と聞く、まさか……。
そんな事を思っていたせいだろう、初撃で俺は北辰の一撃を捌ききれず大きく吹っ飛ぶ。
「クククッ、そんなにそこの小娘が大事か?」
「ちぃっ……」
北辰は俺にニタリと笑って見せてから、ゆったりと間合いを詰める。
サラと夜天光の戦いもサラが押され気味のようだ……。
アオイの事もある、時間は長引かせられない。
俺が判断を迷っていると、サレナが行動を開始していた。
「貴女が、これまでどのように思っていたかは知りません、しかし、私はマスターの剣であり盾。
マスターに危険が及ぶ以上、消えてもらいます」
「……」
サレナなりの宣言だったのだろう、サレナはスレイブに対し容赦なく攻撃を始めた。
次の瞬間には鎌を持つ両腕を切り落とし、足も切り裂く。
ダルマのようになったスレイブに止めを刺すべく肘のブレードを振り上げた。
俺は、それを意識しつつも北辰の攻撃を捌くのに手一杯で手が出ない……。
「ダメーーー!!」
そのとき、声を上げたのはアリカだった……。
いつの間にか、マシロから承認を貰ったらしい、初めて見るマイスターローブでサレナの前に立ちふさがる。
「なにをしておる!? そやつの邪魔をさせるために承認したのではないぞ!?」
「駄目ったら、駄目! だってエルスちゃん両手も両足もこんなに血が出てるんだよ?」
「マスターに敵対行動を取るのであれば貴女でも排除しますよ? アリカ……」
「でもでも! もうエルスちゃんに戦闘力はないよ? だから命だけは許してあげて!」
「貴女はマスターの性格を把握していないのですか?」
「……きっと助けてくれるよね?」
「……確かに、戦闘力は残っていません」
アリカはニッコリとサレナに対して笑う、サレナは毒気を抜かれたのか事実を簡素に述べる。
俺はその間もずっと守勢にまわって避け続けていた、北辰は今回錫杖しか使っていない。
しかし、動きは前よりよくなっていた、半分機械化された体に馴染んできたのだろう、変に力の入ったところが無く動きが滑らかだ。
もう、<纏>を使った力技で返すしかないか、だが恐らくは想定内だろう……。
「ククッ、もう終わりか復讐人よ……その程度ならばあの時に殺しておくべきだったな」
「そう簡単に行くと思うな!」
俺は、<纏>を発動して急加速、北辰の体に体当たり気味に滑り込もうとする。
しかし、北辰も急加速で俺に対応、互いに<纏>を発動するタイミングを計っていたと言う事か。
数段早い、いや倍以上の早さに加速した俺と北辰は数秒の内に何十という拳打と派生の投げ等を放ったが、
互いに技を知っている身決めてにはならず、大きく飛びずさる。
「さあ、このままでは我には敵うまいぞ、見せてみよ。オトメをすり潰した力を」
「……まさか」
「見ていたぞ、貴様がオトメ達をなぶり殺しにする様を、我と同じ外道の技を」
「貴様ぁ!!!」
俺は気が高ぶっているのを感じていた、今の石では融合物質化は無理であると知らされていたにも拘らず。
俺はこの時、目の前の北辰以外の全てを忘れた……。
サレナは一瞬で消滅し、黒い奔流となって俺にまとわりつく。
それはサレナが高次物質の鎧と化した証拠、以前とは違いサレナの意思をまるで感じないが、それでも力は沸いて来た。
「消え去れ北辰!」
俺は右手を突き出し、重力の塊を解き放った。
周囲に凄まじい気流が発生し、その弾丸が北辰を追う。
しかし……。
「ふむ、やはりな……」
北辰はいつの間にか赤い鎧を身に纏っていた、鎧武者を思わせる赤い鎧をし、かぶとからは赤い髪の毛のようなものが飛び散っている。
その姿からは今までい感じた事が無いほどの強大な力が放たれている……。
「まさか……」
「そのまさかよ、貴様に出来て我に出来ぬ事もあるまいと思う手おったが……、我にも同じ力があったようだな。
さて、再開しようかと言いたい所ではあるが、時間をかけすぎてしまったようだ。
我は行く、貴様らも我に殺されるまでは死ぬなよ、クククク……」
俺は凄まじい眩暈が起るのを感じた、指輪が砕け散り、全ての間隔が失われる……。
おぼろげな視界に最後に映ったのは、長い黒髪の女性がずるりと俺の横に崩れ落ちる姿だった……。
あとがき
ふう、なんとか間に合ったかな?
とはいえ、一ヶ月近く結局あいてしまいましたが(汗)
今回は出来るだけ話を進めようと思ったんですが、色々思わぬハプニングが。
アリカはこっち側のルートに入れるつもりは無かったんですが、正義感を考えるとどうにもこっちについてくるしかないような気がしまして……。
それに、エルスは一人でも立派に敵になってしまった(阿呆)
ジョンを出さなかったので、葛藤が少なめだったのは失敗かな……。
でも、この後が大変なんですよね。
エルスの事もですが、脱出もありますし、更にアキトがまたジェムを失ってしまいました。
かなりのピンチになったかと思います。
北辰のパワーUPは何とか果たしたんですが、赤い鎧武者という事にしました、かぶとからはやーちゃんの毛が出ています(爆)
能力はまだ決めてないんですよね、アキトの合体後の力は重力メインっぽい事にしたので北辰のも考えないとw
まぁ色々ネタを振ってしまったのでまた頑張らねばなりませんな(汗)
ごめんなさい、またやってしまいましたorz
今回は折角の感想にお返事をすることが出来ません、申し訳ないです。
次回はこのようなことの無い用にをつけますので、お許しください。