魔法使いにできる事







ホームルームその1『お住まいはどこですか?』



超に連れられて麻帆良学園都市へとやってきた俺は、先ず麻帆良大学工学部にあるハカセの研究室へと案内された。

そこでは、ロボットの研究を主にしているようだった。

俺は二人の会話を聞くとはなしに聞きつつ、周囲を見回していたのだが……。



「王子様のAIの研究はこの麻帆良学園都市でしているネ、既に実用化している成果もあるヨ」

「茶々丸の戦闘データの参考にさせてもらってます。ボソンジャンプとかいうのはまだ分かりませんが」

「恐らく、航時機(カシオペア)と同じような理論だと思うネ、ただ、それだけでは無くて、移動も含む所が違うけどネ」

「ふむふむ」



明るく話てはいるが内容は物騒なことこの上ない、この技術が流出すれば世界がどうなるか考えてみれば分かる事だ。

俺は、会話に口を挟む。



「ボソンジャンプの研究はやめてもらおうか」

「どうしてネ?」

「あれが広まれば世界は泥沼の戦争状態になるぞ?

 技術をめぐった殺し合いもそうだが、技術を手に入れればミサイルを好きな場所に送りつけて爆発させる事も出来る。

 それに、ボソンジャンプは特定の遺伝子からの指令でなければ100%イメージを伝達できない、

 ジャンプする時にイメージを失敗すると消滅する事もある」

「安定しない技術ネ?」

「元々俺達の技術ではないからな、古代火星人の遺跡にあった技術の応用にすぎない」

「なるほどネ、でもそんな事まで私に言っていいのか?」

「お前の場合、知らずに暴走する危険がな……」

「ふふふ、私の事もう把握してるのネ、それは愛カ?」

「いや、天才殿に対する評価さ、用意周到なようだが、どこか抜けているように見えるからな」

「!?」



超は少し目を見開いて俺の目を覗き込む、俺は少しニヒルに笑うと、首を傾けた。

超はそれを見てニコリとしながらお団子頭を俺に押し付けてくる。

なんだか懐かれてしまったようだ……本当かそういうポーズなのかは微妙だが。

実際抜けている天才に知り合いは多い、セイヤさんしかり、イネスさんしかり、エリナしかり、ユリカしかりだ。

程度の差はあるが、専門の範囲であっても趣味が入ったとたんに成功率が激減する。

そういった意味での危うさを超も持っているように思えた……。



「では頭に入れておく事にするネ。でも研究はするヨ」

「……」

「航時機(カシオペア)を使うには凄まじい魔力が必要になるネ、でもこれならもっと自由に往来できるかもしれないヨ」

「未来にか?」

「もしかしたら、王子様のいた時間へもネ」

「……」



もし帰ることが出来たとして、今の俺を見ても誰も俺だと分からないのではないか。

そういう不安に駆られる、なんと言っても今の俺は13歳前後にしか見えない。

とてもではないが、帰って自分を証明する自信は無い。



「危険な事はするなよ? 魔法学校によると俺の仕事は正義の味方らしいからな」

「アハハ、出来るだけ敵に回さないように努力するネ」

「そう願いたい物だ」



口ではああいっているものの超はその時が来たら躊躇わないだろうと感じさせた。

それだけの覚悟を持ってこの世界に来ている、その強い意志は世界に影響を及ぼすに十分な力となっているはずだ。

そうした事を考えていると、俺達の会話を聞くとはなしに聞きつつ、少し離れた場所で作業をしていたハカセが顔を上げた。



「点検終了、特に問題はないわね。茶々丸おかしな所は無い?」

「問題ありません、未登録の人物がいますが迎撃しますか?」

「大丈夫……かどうかは分からないけど、今の所敵じゃないらしいわよ」

「了解しました、現状では静観します」

「……」



俺は少し驚いた、この世界には魔法がある事で、割合なんでもありだろうと思ってはいたが、

人間大のロボットを作る技術があるとは驚きだ、俺のいた時代でもまだ実現していないというのに。

さきほどは体のパーツがバラバラになっていたのだ、コスプレでしたというオチはないだろう。

しかし、顔などは人形というより人間だな、耳の所にセンサーが出ていいるがそれが無ければ殆ど見分けがつかないだろう。



「凄まじいな……」

「確かにネ、ハカセの技術力は多分何世代も先を行っているよ」

「アレには魔法を使っているのか?」

「うーん、そういう部分もあるけど、動力は魔法を使ってないはずヨ、バッテリーだたかな確か」

「それだけの電力を体内に抱えているという事か、どういう電池を積んでいるのか……」

「流石に私もこの分野ではハカセに敵わないヨ、だから理由を聞かれても答えられないネ」

「いや、ソレが普通だろう……」



しかしまぁ、リアルに作りこんである事だ、俺は礼儀的に視線をロボットから外し暫く話を続けていたが、

超はやる事が出来たといって直に出て行ってしまった、

出て行くときにお別れのキッスとかいってからかってきたがとりあえず迎撃に膝を叩き込もうとして逃げられた。

まぁ俺も本気ではなかったが、向こうもどれ位本気なのか……。

いや、全力で遊んでるな……そんな事を考えていると、ハカセが俺の周りで眼鏡を光らせながらうろちょろとしている。



「ふーん、むむ? 貴方超の動きを予測してるの? 結構凄いわね……身体能力、魔力、実戦経験もかなりの場数になるわね?」

「ああ……それで?」

「もっと詳しいデータとらせてくれない? 茶々丸やこれから開発する子達の参考にしたいの」

「……そういわれてもな」



興味津々といった感じで覗き込んでくるハカセをいなし、どうにか諦めさせるまで暫く時間がかかった。

ハカセは基本的に興味のあることとない事での精神的な浮き沈みが激しいタイプらしい、近づくのはタイミングを考えた方がいいだろう。



「ところで、サレナのAIデータはどうしたんだ?」

「あー、あれなら現在も解析中。戦闘用AIにしては随分と複雑な処理をしてたみたいね」

「どこにあるのかは……」

「教えるわけには行かないわ、そうしたら貴方奪っていくつもりでしょ?」

「ククッ」



誰にでも分かる事か、しかし、ハカセがAIの管理に関係している事はわかった。

そうなると、長期戦が予想される、もっとも応用の段階に入ってしまえば意味はないのだが。



「となると、当面の宿を確保しないといけないな」

「ここで寝ればいいじゃない、一応ベッドもあるわよ」

「余裕だな」

「最悪見つけられてもそれほど困らないわよ、AIデータは複数コピーをとってあるから」

「なるほどな……」

「茶々丸、良かったらあっちにでも案内してあげなさい」

「マスターの所へですか?」

「知り合いらしいわよ、何度か聞いたことあるし」

「分かりました、テンカワ・アキト様。マスターにお会いしますか?」

「ん? 誰の事だ……?」

「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルというのがマスターの名前です」

「エヴァンジェリン!?」



俺は一瞬耳を疑った、そういえば俺に賢者の石を埋め込んで生かしたナギパーティの一人がそんな名前だった。

かれこれもう10年になるだろうか……。

しかし、一体なぜこんな所に?

茶々丸というロボットは先行しつつも気遣うように俺と距離を開けないようまた、追い抜かれないよう速度を調節している。

その表情にこそ出していないが、やたら人間味のある動きをする。

俺がソレを不思議そうに見ていると、エメラルドグリーンのロングヘアをゆらして振り返る。



「何か私についていますか?」

「いや、人間に近いロボットというものははじめてみたからな」

「そうですか、確かに大型にした方が細部を作るのが楽ですから、私の場合も少し大柄に作られてはいますが、

 人間とのコミュニケーション能力も私の性能の一部と理解していますので、用途上の問題かと思われます」

「なるほどな、人の身の回りの仕事をするためのロボットというわけか」

「それだけが目的ではありませんが……あ、見えてきました」

「ん?」



俺は一瞬名状しがたい表情になったと思う、学園都市という物自体が珍しいのだが、ここはここでわざわざ吸血鬼の館ですと言わんばかりの洋館である。

それも、ちょっと岡地の上にあり、周囲にはうっそうとした森のようなものまである。



「趣味だなこれは……」

「否定する要素はありません」



独り言だったのだが、茶々丸は律儀に答えてくれた。

その辺はやはりロボットという事なのか、経験が足りないだけか、まあそのうち分かるだろうが……。

茶々丸に案内されるまま、屋敷へと踏み入れ部屋へと案内された俺は、ベッドで寝こけているエヴァンジュリンを見かけた。



「マスター、お客人をお連れしました」

「むにゃ……んっ? って、コラ! マスターが寝ているところに人を連れてくる奴があるか!!」

「……はあ」

「茶々丸お前、絶対わかってやってるだろ? 客は客間に案内しておけ!!」

「申し訳ありません、それでは一度客間の方へおこしください」

「わかった」



本当に狙ってやっているとしか思えない、普通客を案内する場合、客間に通して待ってもらうか、玄関で待ってもらうものだ。

茶々丸はその辺りの事をまるで考えていない表情で俺を客間に通す。

主の寝姿を赤の他人に見せるのに問題が無いと感じているというのは個性なのか、プログラムミスか……。

まあ実際10歳程度のお子様のネグリジェを見て欲情できるほど飢えてはいないが。



「そこ! 今何か失礼な事を考えただろ!!?」

「ん?」

「一応言っとくがな、私はお前の10倍は長く生きているんだからな!」

「そんな事より、早く着替えた方が良いんじゃないか?」

「うーっ、茶々丸。さっさと来い! 着替えるぞ」

「はい、分かりましたマスター」



茶々丸はエヴァを連れて去っていく。

というか、客間まで着いてくるな、自分で恥ずかしがっていたんだろうに意味が無い(汗)

しかし、さすが吸血鬼というか10年前と全く変わらない姿だったな。

フランス人形なんじゃないかと勘違いしてしまうほど整った顔立ちに透き通るような白い肌、金糸のような流れる長髪、これで表情が無ければ置物で通るんだ が。

わりあい表情は豊かなので人間味がある。

茶々丸とも案外良いコンビなのかもな。

そんな事を考えていると、エヴァンジュリンが着替えを済ませて戻ってくる。

服装はイブニングドレス風のものに変わっていた、大きく開いた胸元が可哀想だ。



「そこ! 久しぶりに会ったと言うのに最初からに変な事考えているんじゃない!」



エヴァンジュリンは俺をねめつけるように顔を近づける。

俺もエヴァンジェリンを真正面から見返した、一瞬彼女の目が赤く光ったのが分かる。

しかし、それだけでその後は何も起らなかった。



「ふむ、やはりな……」

「再開の挨拶にしては物騒だな、今のは何かの魔法だろう?」

「その通りだ、幻術の一種で人間でも使える。今の私は魔力が枯渇しているからたいした事は出来ない。

 しかし、アレをはじく以上やはり賢者の石はお前の中に今もあるんだな?」

「まあな、お陰で体力をもてあましているよ」

「そうか、なら少し献血をしていかないか?」

「?」

「お前の賢者の石移植には私も関わっていたわけだからな、報酬が欲しいといっているんだ」

「再開して最初に言う事がそれか」

「だが構わないだろう? お前から見れば微々たるものだろうが、私には今切実に魔力が必要なんだ」

「……?」

「ナギの奴、結局この10年間一度も呪いを解きに現れなかった! お陰で私は中、高、大学を一巡してまた中学に入学中だ!」

「一体どんな呪いなんだ?」

「登校地獄……」

「なに?」

「登校地獄だ! あー思い出しても腹が立つ! ナギの奴呪いならもう少しまともな呪いをかけていればこんなに恥をかくことも無かったのに!!!」

「なるほどな……」



確かに変な呪いではある、ようは封滅するほどの悪ではないという判断なのだろうな。

ナギらしいというか……俺の時もあのまま放り出してくれたしな……。

とか考えているといつの間にやら俺の背後に回りこもうとしているエヴァンジュリンの気配を察した。



「吸うのは構わんがどうなっても知らんぞ?」

「うっ……大丈夫だ、あれだけ魔力が循環している賢者の石を体内に持っているのだ、魔力の回復は一回でもかなりになるだろう」

「いやそういう意味ではなくてだな」

「つべこべ言わずに魔力ごと血をよこせ!」



がぶりと俺の首筋に噛み付くエヴァンジュリン、魔力が有り余っていると言う事を甘く見ていなければ良いのだが……。

最初は魔力の回復に陶酔気味に血を吸い続けていたエヴァンジュリンだったが、表情がおかしくなってきた。

そして徐々に顔色が変わり、最後には目を回して倒れてしまう。



「ううっ……まさか私が魔力酔いだと……」

「その程度で済んでまだマシなほうだろうな……」

「どういう意味だ?」

「俺の血を吸った魔物が燃え上がって消えた事がある」

「そんな下級の魔物と同じにするな……だが、確かに一度に吸いすぎたらしい……少し休む」



どうやらそのまま寝室に戻るらしい、やはり俺の血はあまり合わないのかもしれないな。

俺はいつの間にか出されていた紅茶を口に含みながら暫く待つ、

挨拶位してから出ても良いだろうという思いと、茶々丸の入れた紅茶にも少し興味があった。

口に含んでみて分かるのは香りも味も完璧だと言う事だ、細かな気配りがなされている事が分かる。

作った人間に紅茶の心得があるとは思えないから、多分憶えたのだろう、やはりただのロボットではないらしい。

そんな事を考えていると茶々丸が戻ってきた。



「大丈夫だったか?」

「はい、マスターは魔力酔い状態ではありますが、確かに魔力が回復しています。

 ですが、血の中に含まれる魔力が多すぎて自分の魔力に変換できずにいます。

 一晩寝れば回復するでしょう」

「それで、回復すると登校地獄は解けるのか?」

「いえ、後数回は吸わないと無理だと言っていました」

「そうなのか……」



俺としては彼女を野に放って良いのかどうか迷う所だ。

俺の血を吸って魔力酔い程度で済むというのはそれだけ強大な力を持っているということだろうし、封じられた理由が分からない。

出来ればナギ本人にでも出張ってきて欲しい所だ。

そんな事を考えていると、茶々丸が話しかけてきた。



「それでテンカワ様、宿は決っているのですか?」

「いや、特には考えていないな……ここにホテルはあるのか?」

「ある事はありますが、未成年が一人でとまる事が出来るかと言われればノーです」

「なるほどな」

「私にはどうする事も出来ませんが、マスターに許可をもらって……」

「いや、気持ちだけ貰っておくよ」

「気持ち……私は……」

「律儀に考えなくても良い、慣用句だ」

「はっ、はい」



茶々丸と別れを告げて学園都市をなんとなく歩いていく。

確かに、学園都市というだけあって日のあるうちは学生であふれかえっていた。

ざっと見ても20〜30の学園が存在している。

もちろん俺は都市を全て回ったわけではない。

そして、宿と呼べる場所はホテルと学生寮くらいだと言う事も大体分かってきた。

店は普通にあるが、学生相手のものが殆どで、店じまいも早い。

夜を明かせるような店はカラオケBOXくらいか……。


そんな時、一瞬の気配に空を見上げた。

空からは闇夜を切り裂く音が俺に向けて迫った。

俺は素早く建物の影に入り込むと、地面にカカカッという音と共に何かが突き刺さる。

俺は更に後方に飛んで逃げた、そこには忍装束の女がすっくと立っている。

背は高く、覆面もしているが、胸が服を押し上げている所からほぼ間違いないだろう。

身長は180cm前後と言った所か……。



「何者だ?」

「何者はないでござるよ。ほったらかしにしたばかりかあまつさえ拙者を忘れたでござるか!?」

「……まさか……カエデか?」

「ほほう、忘れてはいなかったでござるか、だがこちらも一日中山の中で放置された恨みは忘れぬでござるよ!」



カエデは覆面を剥ぎ取り、おかっぱ頭のように見える髪形をあらわにする。

表情はどこか笑っているように見えるが、額に血管が浮いているのが分かる。

ははは、あの後はそれどころじゃなかったからな……。

でも、カエデには関係ない話か。


俺は両手を上げて降参のポーズを作った。



「うっ、いきなり白旗を上げるのでござるか?」

「実際悪いのは俺だしな、どうすればいい?」

「んっ……そうでござるな。ではメシでもおごるでござる」



実の所俺に不満をぶつけたかっただけらしく、特にを何させたいわけではないらしい。

とりあえず、俺はカエデと近くにあったファミレスに入り奢る事になったわけだが。



「んー甘いでござるなー、やはりプリンはどの店にも常備するべきだと思うでござるよ♪」



プリンアラモードを食べながらカエデはご満悦のようである。

とはいえ、既に3つめ、夕食をプリンで済ませるつもりだろうか?



「良く入るな……まあ金ならあるkら10個でも20個でも頼んでくれて構わないが……」

「本当でござるか!? ならばプリンパフェにココナッツプリンにマンゴープリンそれから……」

「夕食が食べられなくなっても知らんぞ……」

「大丈夫でござる、既に食べてきたでござるよニンニン」

「……」

「プリンは別腹でござるよ♪」

「好きにしてくれ」



まぁ、賞金稼ぎなどという職業柄金は持ち歩いている。

日本円も多少持ち合わせがあるから問題ない筈だ。

しかし、本当に胃袋が二つあるんじゃないだろうな……。



「しかしお主、帰ってきたのはいいがどこに住んでいるでござる?」

「まだ決めていない、まあ、金を出せば事情は問わないような宿屋もあるだろう。

 そういうところを探してみようかと思っている」

「うーん、それはあまり良くないのではござらぬか?」

「どういう意味だ?」

「アキトは直に出立するでござるか?」

「いや、ある程度腰をすえてやらないといけないことがあるからな」

「そうなると、ああいう宿は難しいでござるよ、あくまで短期だからこそ素性も知らぬ者を受け入れてくれるのでござるから」

「そうか……」



確かに最近は一国に長期間滞在した事は無い。

賞金首を求めて異国をさすらううち、そういう生活が普通になっていたのかもしれない。



「そうだ、拙者いい事を思いついたでござるよ!」

「?」

「付いて来るでござる!」

「ああ、わかった」



俺は手早く会計をすませ、カエデの後を追う。

流石に忍者、かなりの速度で駆けていく。

全力疾走で20kmほど、普通なら俺は息切れを起こして倒れこんでいただろう。

俺は自分の体が普通でなくてよかったと久々に思った。



そこは、学園都市においては一番奥にあたる場所、というか駅から一番遠い場所となるだろうか。

もちろん、他の都市の駅が近いかといわれれば、山を挟んでいるため結局近いとは言えず、利便性の悪さを物語っている。

そこにかなりの規模の学園が存在していた、麻帆良学園本校女子中等部と描かれたプレートから察するに学校なのだろう。



「こんな日の暮れた時間に俺みたいなのが入ってもいいのか?」

「そうでござるな……みつかったら逃げるでござる」

「おい! それは犯罪だろう!」

「いや、本当は大丈夫でござるよ、見つかったら何とかするでござるから」

「……本当だろうな?」

「……多分、そんな事にはならないでござるよニンニン」



怪しげな台詞をはきながらカエデは先行する、俺も仕方なく校内に足を踏み入れた。

学校か、気のせいか魔法学校の校舎と同じような気配を感じるのだが……。

そんな事を考えながらついていくと、学園長室というプレートがかかった扉の前でカエデが立ち止まった。



「ここでござる」

「学園長とは知り合いなのか」

「一応知り合いといえば知り合いでござるが、親しいというほどではないでござるな」

「……」

「でも、ここの学園長は顔が広いので有名でござるから、大丈夫でござるよ」

「はぁ……せいぜい犯罪者扱いされない事を祈るよ」

『誰かいるのかの? 遠慮せずに入りたまえ』



その言葉を待たずに、カエデは学園長室の扉を開ける。

そこには、大きなデスクがあり、髪の毛をポニーテールのようにした老人が座っていた。

かなり後退している髪の毛を更に縛っているせいでかなり少なく見える。

蓄えられたひげが大きく広がっているだけになおさらだ。



「ごほん、はじめましてというべきかな、テンカワ・アキト君」

「ん?」

「カエデ君もご苦労だね、わざわざ連れてきてくれて助かるよ」

「拙者特に頼まれた覚えはないでござるが?」

「まぁそうじゃが、いずれ挨拶せねばと思っておったしのう」

「どういう意味だ?」

「お主、このかの友達じゃろ?」

「このか!?」

「その辺の事は分かるつもりじゃよ」

「……どういう意味だ?」

「まあその辺はおいおいな、カエデ君、後はワシがやっておくから君は寮に帰りたまえ、連絡先は本人に電話させるよ」

「はあ、わかりました。では失礼するでござる」



少し釈然としない顔で去っていくカエデを見送った後、学園長はふと表情を引き締める。

威圧感はかなりのものだ、これは……。



「先ず最初に言っておくかの、ワシは近衛近衛門、関東魔法協会の理事をやっておる、

 別に学園長が副業というわけではないがの、二束のわらじという奴じゃの、ホッホッホッホ」

「なるほど、それでか」



関東魔法教会だというなら俺の足取りをある程度つかんでいてもおかしくは無い。

特に、今回のハカセと超の国外への調査に関してはここが許可を出していない限り出来なかっただろう。

それを考えれば帰りに俺が増えている事も報告されているはずだな。



「でっ、お主の麻帆良への訪問目的はなんじゃ?」

「正義の味方が俺の修行のお題目なんでな、その一環としてと言えばいいか?」

「詳しく聞かせることは出来ないというわけかの?」

「ああ、100%悪を行うと分かっているなら教えるが、そうと言い切れない以上言えば名誉毀損だしな」

「なるほどのう、では暫くこの地におるつもりだという事か……」

「そうなるな」

「ならば、宿が必要じゃろ」

「最悪野宿でも問題はないがな、幸い俺は零下の温度で寝ても風邪もひかない体だからな」

「麻帆良で浮浪者を増やすわけにはいかんわい、そこでどうじゃ、学校に行って見る気はないかの?」

「学校? すまないが俺は見た目どおりの年齢じゃない、今更学校に行っても……」

「だが、ここに来たという事は目的とする相手も学園関係者じゃろ?」

「否定はしないが……」

「ならば学園にいるのに学生ではないのは不自然じゃろ。それにな……」



学園長はにんまりと含み笑いのように顔をゆがめていった。



「丁度現在この麻帆良学園本校女子中等部も共学化の話が出ておってな、テストケースを欲しがっておったのじゃ」

「まさか……」

「お主が調べている超やハカセもこの学園の生徒じゃからのー、一石三鳥のいい案じゃとおもうのじゃが?」

「お見通しというわけか、しかし女子校で男一人……なんとかならないのか?」

「女装でもしてみるかの?」

「却下」

「面白そうじゃと思ったのじゃが、それは仕方ないのう……」



本当に残念そうに見える学園長に心底ぞっとした、なにか袋をごそごそしているのが余計怖い……。

まぁ実力で排除するのは不可能じゃないだろうが、その後の方が問題になりそうだ……。



「しかし、なぜ俺を入れるなどと簡単に言える? 女子中学生ばかりの中に入れと言われてもな……」

「なに、たいした事ではないよ。孫娘の護衛をさせている教師が今度定年になるのでな、後任を探していた所なのじゃ」

「だが……」

「修行が正義の味方で、木乃香の幼馴染、これ以上の条件はそうあるまいて」

「……木乃香……近衛まさか」

「ワシの孫娘は近衛木 乃香じゃよ」

「そういうことか……」

「まぁ学校に行ったら木乃香と仲良くしてやってくれ」

「了解」



まさかこのかがこっちに出てきているとはな、とはいえ親類がいるならそういうこともあるか。

しかし、そうなるとサレナAIの奪取だけで終わるかどうか難しい所だな……。

それに、このじいさんかなり食えない奴のようだ。

俺が来たのは偶然のはずなのに用意周到に自分の所に来るように仕込んでいたと言う事になる。

例えカエデが連れてこなくてもきっと他の誰かが俺をここに連れてきただおうと感じさせる。

しかし、現状サレナAIの奪取のためには、超の手のひらの上でいるわけには行かない、

このじいさんが超の関係者なのか、超の影響力がどの程度なのか、まずはその辺りから調べる必要がありそうだな。


俺は、そう決意すると学園長を見返し、学校に通う事を了承した……。













あとがき


ようやっと続きを書く決心がつきました。

とはいえ、まだ本編に入っていないわけですが(汗)

本編は二年の3学期からですからまだ一年後、

でもその前に顔合わせだけはやっておかないといけないなと思いホームルームをはさむ事にしました。

そして、今日はアキトが学校へ行く理由作りから。

イメージとしては三十三間堂学院風に一人だけ男の子が入学するという形です。

まぁクラスにいた方がイベント起こしやすいというだけの話ですが(笑)


以前戴いたWEB拍手のお返事っす。
SSを書く原動力になっております!
5月21日
20:47 本編、激!希望!!!!!!!
本編まで行く事はほぼ決定です。
ホームルームは2回か3回予定ですが、アキトが学校に馴染んでいく様子を何とかできれば良いですね。
 
21:10 「正義の味方」 ネギ→Fateを連想した俺は可也病んでいるな 
はっはっは、またその辺りも考えては見ます。とはいえ、まだ他の作品は難しいと思われますorz

21:16 ひとまず完結おめでとうございます! 
21:19 この「魔法使いにできる事」の連載再開を待ち続けます!!! 
21:20 いつの日かこの作品の続編が出ることを心待ちにしてます! 
21:22 これからも楽しみにしてます♪ 
頑張っておりますーなんとか、はじめる事が出来ましたのでこれからもよろしうに!

21:23 サモン3もアビスもクリアしたのでそっちの続きも楽しみにしています(>< 
はいな、一応サモンは進めていますよ、とはいえアビスは難しいかな(汗)

22:47 お疲れ様でした アキトの旅はまだまだ続く・・・・・・・ 
22:47 超一味の仲間に?なったアキトは日本へ向かい再開を果たす・・・・・ 
22:48 素晴らしい終わりでしたw 続きが気になりますが 魔法使いのお話はこれでおしまい・・ 次回の更新をたの 
22:48 しみにしてます おつかれさまです 黒い鳩さん 
はっはっは、結局続いてしまいました申し訳ない。
とはいえ、本編をいかにスムースに進めるかそっちは問題ですがね(汗)

23:25 面白かったです。時間がかかってもきっと読むので、是非続きを読みたいです。 
がんばりますー、本編はじめる事が出来ましたのでよろしく!

23:49 完結おめでとうございます。本編は超一派として暗躍ですか。超とラブラブになるのも期待!! 
23:51 原作とはちがう視点を期待しています。おつかれさまでした。これからもがんばってください。 
超一派というわけではないですが、ネギとはスタンスが違うのは事実だと思います。
同じでは面白くないですしね。バカレンジャーネタとかには参加している暇は無いかも?(爆)

23:55 本編書いてくれ!! 
はいな、ようやっとはじまりまっせー

5月22日
0:10 面白かったです 出来れば、続編希望です
ありがとうございます! どうにかはじめる事が出来ましたのでこんごもよろしく!
 
0:37 あー、面白かったんですがひとつだけ。テンカワSPLにローラーダッシュはついていませんよ。 
そうですかー、じゃあ北辰との一騎打ちで滑っていったのはなんなんですかね?
気になる所です。

0:52 さすがに超はあなどれませんね、でもこれでアキトが麻帆良学園に行く理由が出来ましたね。 
0:52 この話の流れ方スムーズでとても読み易く楽しいです。 
0:52 是非本編を書いて下さい 
ありがとうございます! でも今回ちと強引だったかも(汗)
兎に角、超一派と小競り合いをしながら本編へとなだれ込む予定です。
こんごともよろしう!

2:21 課外授業完結おめでとうございます 
2:22 サレナ 
2:24 サレナは壊れてしまいましたがアーティファクトのような形で再登場したらいいな、と妄想します  
はいなー、サレナは何かの形で再登場させたいと思います。
ロボットはこの世界ならアリですしねw

5:23 続編を作ってほしいです 
頑張らさせていただきます!

6:28 最後のサレナとの対決面白かったです^^ 
6:33 サレナとの対決面白かったです^^できれば続編がんばってください 
ありがとうございます! どうにか本編をはじめる事が出来ました今後ともよろしくお願いします♪

7:09 ぜひいつか続きを見てみたいものです、 ラストで急に面白く感じたから 
ふむむー、色々ネタは仕込んでいるつもりですが今すぐ展開できるとは思えないので、地味かもしれませんが頑張ります。

10:00 とても面白かったです。これで本編に入ったらいいなぁと思います 
本編に突入する事はほぼ決定しました、つーかホームルームを含め本編という形で行きたいと思います。

10:01 面白かったです。黒い鴨さん!そのラテン語どうやって調べたんですか!?とても知りたいです! 
ははは、ググっただけです。ラテン語系のサイトを色々見てたら結構怖い単語が多いサイトがあったんで、そこからいくつか失敬しましたw

14:35 完結おめでとうございます。 
14:35 出来れば続けてほしいんですが・・・ 
ありがとうございます。大分時間がたってしまいましたがこれからもよろしくお願いします!

15:01 課外授業最終話楽しく読ましてもらいました。ただ後書きでサレナのロボ化の話が在りましたがそれだと舞オト 
15:02 と著しくネタがかぶってしまう気が……。 
15:04 せっかくのクロスなのですから、サレナでなくネギまキャラとからませたほうが多のクロス作品と変化がでるの 
15:05 ではないでしょうか? それはともかく本編の方も執筆開始楽しみに待ってます。 
その通りなんですが、擬人化って好きなんすよw(爆)
とはいえ、ヒロインは元々多いからロボットでも良いですけどねーw
一応執筆(?)開始しましたー、今後もがんばって生きますのでよろしくです♪

20:37 祝!完結♪課外授業面白かったです。本編入りを期待しつつ、これからも執筆活動がんばってください。
どうにかこうにか本編突入っす。出来れば今後もよろしくお願いします!

5月23日
0:15 お疲れ様です!ついに明日菜フラグが立たなかったことは残念ですが、本編も期待しております。 
アスナですかー、確かにそうですねーとはいえ、アスナフラグを立てると凄い事になりそう(汗)
まぁとりあえずゆっくりやって行きます。本編もよろしくw

4:00 本編!本編! 
5月30日
23:14 お疲れ様です!!本編読みたいです、忙しいですが頑張って書いてほしいです!! 

7月2日
1:09 久しぶりに読み直したので感想を・・・ 
1:10 <正義の味方>がアキトの修行内容なわけですが 
1:11 かの騎士王by少女が登場するとしたら衛宮士郎と 
1:12 アキトを組み合わせれば凄い事になるかなあと妄想がw 
はははは、正義の味方つながりっすねー。
確かに凄い事になりそうです。

皆様ありがとうございました!!


ここで、ちょっとシークレットな投票をw
某騎士王の登場を現在検討中です(爆死)
とはいえ、そうなると士郎殿を無視した展開になりかねませんし。
難しいラインなんですよね
そこで、出すべきか出さないべきか、出すならどんな形が良いか、ちょっと教えてくだされば幸いです♪




押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

感 想はこちらの方に。

掲示板で 下さるのも大歓迎です♪



戻 る

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.