人生にはまさかという事が起きる瞬間がある。



しかし、それは必ずしも何も出来ないという事ではない。



見通せないからといって悲観する必要はない。



だが、目の前に起きた異常を正すには、それ以上の異常で望むしかない。



正しい事が正解なのではなく、結果こそが正しさに結びつくと信じて。



それは言いわけにしか過ぎないのかもしれない。



しかし、この世界はそうして動いているのも事実である。






機動戦艦ナデシコ求めたる崩壊B










「ゼスト……」



俺は少女に案内されるまま歩き続け、合流地点と思しき場所まで来ていた。

しかし、俺は何か違和感がある、ルーテシアと食事をしたときのこと。

彼女に差し出された食事は不味くは無かったが、何か酷く間違った食事だと感じた。

固形食を水で流し込む、それは酷く合理的だが、何かが違う。

しかし、それを言い出そうにも自分の記憶が無いためどう違うのかという事を言う事も出来ずただ言われるままに食事をした。

ルーテシアという少女は無感動だが、それなりに周囲に気を配っているらしく、

俺が間違った方向に行こうとしていると注意したりもした。


そして、目的地には先客がいるらしいという事が分かった。

かなり古くなったコートを着込んだ40代くらいの大男。

ぼさぼさの髪をかなりの長さまで伸ばした、意思の強そうな太い眉を持つ、渋めの俳優といった感じだろうか?

その肩には30cmくらいの赤毛の妖精の様な少女がとまっている。

俺は、何か違和感を覚えつつも基準となる思考がないためその違和感を口に出来ず。

それでも、妖精とか俳優というものは何だろうかと自分の頭の中を探ろうとした。



「なんだなんだ? ドクターの新作か? ルールーどうしてそんなの連れてきたんだ?」

「ドクターに言われた、実戦テストをしたいから預けるって」

「はぁ? レリック以外に関しては不可侵って話じゃなかったの?」

「でも……」



赤い妖精がルーテシアとまくし立てるように話す。

元気な少女だなと思う。やはりルーテシアが普通というわけではないのだろう。

とは言っても妖精はまた感覚が違うのかもしれないが。


そして、ゼストと呼ばれた大男は俺のことを値踏みするように見ている。

この男を見ていると何か思い当たる節があるような、そんな気がする。

俺は……いや、思い出そうという考えは間違いのような、どういう事なのか分からないが、俺は思い出してはいけないと言う思いに囚われる。



「お前、名は?」

「ドクターにはチェントと呼ばれている」

「戦闘機人か……それにしては……ふむ」

「戦闘機人? 俺はそういうものなのか」

「知らないのか?」

「ああ」

「珍しいな、スカリエッティがまともな情報も与えず送り出すとは」



ゼストは俺を見て唸るようにして少し考え込んでいるようだった。

俺自身何もわからないのはおかしいと思わなくはない、だが不思議と聞きたいとも思えなかった。

ただ、何かに自分を押さえつけられているような違和感は少しだけあったが。



「ゼストは収穫あった?」

「いや、今回も空振りだ。やはり地上本部を襲撃するしかないな」

「そう……」



ゼストという男は表情にこそ出さないが、周りに気を使うタイプらしい。

魔法を使って焚き火を起こしたり、赤毛の少女が持ってきた薪を定期的に投入したりしている。



「そういえば自己紹介がまだだったな、俺の名はゼスト。死人だった俺をスカリエッティが蘇らせた。

 お前が俺達の手助けをするというのなら、ルーテシアを頼む」

「どういう意味だ?」

「さあな……ただ、この娘はこれからも生きていかねばならない。それはアギトもだが……」

「そんな、アタシは旦那と一緒にいるよ。いつまでもずっとさ! だからそんな悲しい事言わないでよ!」

「俺がくたばるまでは一緒にいてくれるらしい」

「そんな……そんな言い方ってないよ」



ゼストはニヒルに笑うが、赤毛の妖精、アギトはゼストの事を心配しているのだろう、心細げに眉根をよせる。

俺はそういうストレートな感情をうらやましく思った。

とはいえ、なぜそう思ったのかすら分からないが。



「なぜ俺にそんな事を話した?」



立場的に考えればゼストはドクターを信頼していない、そしてドクターに言われて来た俺を信頼するいわれはない。

ゼストはその事を聞かれると、少しだけ困った顔をして。



「今のお前には分からないだろうが、お前はナンバーズよりは俺達に近い存在だ」

「?」

「お前は心の傷を負ったもの特有の複雑さを持っている、作り出されてすぐの存在はそこまで複雑ではない。

 感情も何もかもがストレートだからな、多分お前はスカリエッティに改造された口だろう」

「それは……」

『おっと、彼にあまり余計な知恵をつけないで欲しいですね、これでも結構気に入ってるんですよ』

「スカリエッティ……」



ゼストはどこかさめた目をドクターに向ける。

対するドクターはニヤツキにちかい笑いを貼り付けている。

確かにドクターは信用できるタイプの人間には見えない。

しかし、俺には彼に従う以外記憶を取り戻す術がない。

わかっている以上俺には無表情を貫くしかなかった。



『さて、ゼスト貴方の方が不発に終わったのでしたらルーテシアの為にレリックの回収をしてみる気はありませんか?』

「ほう……新しいものが見つかったのか」

『その通り、丁度ドローンからの報告があったので、どうします?』

「行く」



最初にそう言ったのはルーテシアだった。

ルーテシアは表情こそ変えないものの、執着はかなりのものを持っているようだった。

俺は元々ルーテシアに着いていく事が決っている。

後の二人は……。



「アタシはルールーを守るよ、だからついていく」

「そうだな、今回は俺も近くにいるとしよう」



それは同時に攻撃には参加しないという意思表明でもあった。

もちろん、ルーテシアが行けばこの二人も行くだろう、しかし、ドクターが望むのはどちらかというと戦闘そのもの。

彼が絡むと派手になるのもゼストが嫌な所であった。



『そうですか、本来ならばナンバーズを数人回すところですが、今回はチェントの実戦テストを兼ねていますので。

 ドローンだけでも問題ないでしょう』

「ほう……」



一瞬だけゼストは俺とドクターに鋭い目を向ける。

しかし、それだけでその後は無関心を貫いていた。

そして、言われるままに俺は目的地へと向かう事になった……。





















ラピスは手袋型インテリジェントデバイス<ファエトン>を受け取った後、高速ヘリに乗り機動六課の庁舎へやってきていた。

部隊長であり総指揮官でもある八神はやて二佐に連れられてやってくる姿はある種異様でもあったが。

空中を飛び回る水色の髪をした妖精のようなものが更なる違和感で中和してくれていたせいか、いつもの事なのかそれほど奇異な目では見られなかった。

因みにその妖精には羽が無く、代わりに軍服を着込んでいるという変り種である。

もっとも、この場は同じ服装の人間ばかりなのだからサイズ以外は問題ないわけだが。



「こらリイン、あんまりはしゃがんといて」

「あう、ごめんなさい。でも、この子可愛いですねー」

「そうは言うてもあんまり飛び回ってると、嫌われるかもしれんで?」

「あわわ、もしかしてご迷惑でしたか?」

「別にいい……」



ラピスは二人を斬って捨てるように会話を終わらせると、そのまま歩き出す。

二人はあちゃーといった感じのポーズで固まっていた。



「なかなか心を開いてくれんねー」

「でも冷たいというより他の事が目に入らないといった感じです」

「そうやね、でも少しくらい心を開いてくれやんと、この先しんどそうやしね……」

「うーん、困りましたね……」



二人がヘリポートで唸っていると、階下から二人の女性が歩いてきた。

一人は栗色の髪を右頭頂部で縛って腰までたらし微笑をたたえた女性。

もう一人は、金髪赤眼の女性で髪は普通にたらしているが、太ももまである長さはかなりのものだ。

逆に金髪の女性は真面目そうな雰囲気をかもし出していたが、それでも打ち解けた表情ではあるのだろう。



「なのはちゃんにフェイトちゃん出迎えに来てくれたん?」

「うん、報告もあったし、丁度良いかなって。それでこの娘の事紹介してくれないかな?」

「うーん、一応クロノ提督からの預かりで、管理外世界の住人らしいわ、

 そんで騎士カリムのお墨つきで<ファエトン>を所持してる。

 名前はラピス・ラズリちゃん言うてスカリエッティにさらわれた人を探しているらしいわ」

「えっと、じゃあ六課の預かりに?」

「うん、そういう事になるわ」

「では、改めまして、ラピスちゃん。私は高町なのは、なのはって呼んでね」

「私はフェイト・T・ハラオウン。フェイトでいいよ」

「……うん」



二人の女性は膝を折ってラピスに顔を近付け挨拶をした。

ラピスは次々増える名前を把握する事は出来たが、さして興味は無い様だった。



「うちの隊には年齢の近い子もいるから仲良くしてあげてね?」

「私と近い年齢?」

「そう、エリオ君とルシエちゃん。二人ともいい子よ♪」

「ふーん」



ラピスはそれなりに興味を持ったようだが、瞬間的なものだったらしい。

なのはとフェイトも手ごわさを感じていた。



「まっ、まあ、みんなの紹介もあるし、早い事中に入ろ」

「そうね、合ってみたらきっと気に入ると思うから」

「さっ、ラピスちゃん一緒にいこ」



三人はラピスを四苦八苦して連れて行く。

ラピスの無感動はいわゆる子供らしい警戒心からくるものではない。

一種のトラウマによって、感情が育たなかったというのが正しい。

そのため、とっかかりをつかむ事が難しいという事になる。

ヴィヴィオのような子供ならすぐに慣れさせる事が出来た三人だったが、ラピスは手ごわいようだった。



庁舎の中に入りはやては指揮所へと戻る、その際ラピスはなのは達の預かりとなり、実働部隊に紹介された。

実働部隊は全員で8人、ライトニング分隊とスターズ分隊に分かれており、

スターズ分隊は高町なのはが隊長、

副隊長は見た目はラピスより年下だが意外に年かさらしいヴィータというハンマーを使う少女。

一般隊員としてボーイッシュなスバルと、勝気なティアナ。

ライトニング分隊は隊長がフェイト・T・ハラオウン、

副隊長はもののふの雰囲気を持つ女性、シグナム。

そしてエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、どちらも軍隊とか言う物が似合う年ではない、下手をすればラピスより年下かもしれない。

恐ろしいのは、見た目の平均年齢が15歳を下回るという凄まじい部隊であったが、魔法の世界に常識は通用しないのだろう。

ラピスには分からなかったが階級は何故か自衛隊の階級制度を使用している。

三等陸士は二等兵、二等陸士は一等兵、一等陸士は上等兵、三尉は少尉、一尉は大尉と言った感じである。

とはいえ、一度に全員を紹介しても分かりにくいので、個々の紹介は省かせてもらう。

ラピスは現場に出る事を告げていたが、なのは達は実戦経験も無ければデバイスを使った事も無いような子供を前線に出す気はなく、

訓練を課して様子見という のが六課の方針であったが。



「じゃあ、ちょっと訓練に参加してみようか。初めてだから加減がわからないと思うけど無茶だけはしないでね」



なのはがそう言い、実働部隊を訓練施設へと向かわせようとする。

しかし、その時。



『緊急招集、緊急招集、機動六課実働部隊、至急司令室へ出頭してください』



緊急事態を告げるアナウンスが聞こえてくる、実働部隊は素早く司令室前に集合した。



「スターズ分隊隊長、高町なのは一等空尉入ります」

「同じくライトニング分隊隊長、フェイト・T・ハラオウン執務官(一尉扱い)入ります」

「よう来てくれた、早速やけど出撃や。場所はミッドチルダより南東方向500kmの海上にあるランザス島。

 ガジェット・ドローンが大量に出現したと報告があった。

 うちらの仕事はドローンの殲滅及びレリックの確保や、ライトニングとスターズは高速輸送ヘリを使って移動の事、

 頼むな」

「「了解!」」



その後の実働部隊の行動は迅速だった、ヘリは音速を超える速度で飛び2時間後には現場上空までやってきていた。

しかし、少し遅れて低空を飛行する物体をレーダーで捉えることは出来ないようだった。



「アキト……リンクを開いて……」



そう、ラピスはバッタを召喚しディストーションフィールドを張りながら海上すれすれを飛行して追っていたのだ。

方式もなにも知らないはずのラピスだが、おおよその知識は<ファエトン>そのものから得ていた。

だから自分の知るものを召喚したのだが案外上手く行ったらしい。

しかし、ラピスにとってはこんなものは手段の一つに過ぎなかった。

その頃、機動六課地上本部ではラピスがいなくなった事によるパニックが起きていたのだが……。

ラピスにとってはどうでもいいことだった。



























このミッドチルダという世界は他の次元に通じる穴のようなものが多数存在するらしい。

そういう場所は隔離されて立ち入りが出来なくなっている。

もっとも、そういう場所も常時異界に繋がっているわけではなく、

何年周期、あるいは何十年、何百年周期でほんの僅かの間開くというのが普通なのだそうだ。

そして、現在俺達がいるランザス島もその一つ。

ガジェット・ドローンは20〜30程度群がっているが、異界への穴が開くにはもう少し時間がかかるようだ。

だが、時間が空けば、こちらが行っている事は犯罪らしいので、軍が派遣される可能性が高い。

つまりは俺の出番という事のようだ。



「我は、乞う……」



突然ルーテシアは言葉を紡ぐ。

そして手袋が光ったかと思うと地面に複雑な文様が浮かび上がる。

文様は複雑な軌跡を描き魔法陣らしきものを形成した。



「小さきもの、羽ばたくもの……。言の葉に応え、我が命を果たせ……」



ルーテシアの魔法陣からうねうねとした何かが生えてきたかのように出現する。

それは透明なゼリー状の物体で、その中には何か紫色の卵を思わせるものが多数入っている。



「召喚、インゼクト・ズーク」



その言葉が終わるか終わらないうちに、ゼリー状の何かは消滅し、

内部にあった小さな卵から10cmほどの大きめの昆虫のようなものが飛び出してくる。

とはいえ、本当の虫とは違い、明らかに構造が単純に出来ている。

丸く平べったいからだ、虫のような透明の羽、何かを挿すためだろう、針そのものの下半身。

目に相当する部分は色が違っているだけで実際に見えているのかどうか怪しい。

足もない、口もない、明らかに自然のものではないようだ。



「ミッション、オブジェクト・コントロール。私たちがレリックを探している間、人を近づけないでね」



ルーテシアが召喚した虫もどきはそれぞれ、ドクターがガジェット・ドローンと呼んでいた機械に吸い込まれる。

すると、無差別に異界の穴に近付こうとしていたドローン達は動きを止め、少し離れた位置で囲むように静止する。



「これは……」

「操作系と思考系に少し手を加えただけ」



確かに指揮系統は今まで無かったようだから、一気に動きが良くなったように見える。

つまりは虫はそういう能力を持っているということらしかった。



「……来た」



俺もどこかピリピリした気配を感じていた。

なるほど、確かに何かが近付いてくるようだ。



「異界への穴が開き始めた、捜索は一時間ほどで終わらせる。それまで持ちこたえてくれ」

「わかった」

「……気をつけて」



ゼストは言いながら穴の中へと入っていく、それに続くようにアギトも消えた。

そして最後にルーテシアが行く直前、言葉をかけられた。

何気ない言葉、社交辞令的なものとすら思えたそれを、俺は目をむいて驚く。



「……何かおかしい?」

「あっ、いや……そういうことをいうタイプには見えなかったからね」

「そう……でも、死なれたら寝覚めが悪いって、ゼストが言ってたから」

「ああ、ありがとう」



俺はどこと無く気恥ずかしい空気を読み取って、礼を言うに留めた。

何か以前にもこんな事があった気がする……。

だが、その先はもやがかかったようで、イライラを募らせる。

今ここにいるのはドローン達と俺だけ。

ふと思う、記憶のない俺とこのドローン達と一体何が違うのかと……。




















『スターズ分隊は先行してガジェット・ドローンの殲滅、ライトニング分隊は戦闘機人が出てきた時のために上空待機。

 あくまでレリックの確保が優先や、こういう場所やから多分異界へと繋がる穴の近辺もしくは内部にあると思われる。

 できれば即時制圧、場合によってはレリックの確保のみできればええ。でも、無理は禁物やで。チームワークを大事にな』

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」


はやての命令を受けてなのは以下、スターズ分隊はヘリから飛び降りていく。

普通なら墜落死確実だが、そこは魔法使い。

なのはとヴィータは魔法で空を飛び、それぞれ真っ白なミニのドレスと真っ赤なゴシックドレスというおかしな戦闘用のユニフォームが先行していく。

それに続いて、なのはのような白のジャケットに白いハチマキをつけてホットパンツをした15歳程度の少女が空中に光る道を作り出し、

もう一人のオレンジの髪をツインテールにした良く似た服の少女を背中に背負って走っていく。



「なんていうか、空を飛べると得よね……やっぱり早い事、航空魔道免許取らないと」

「でもこうやって背負っていくのも悪くないよ?」

「あたしが、恥ずかしいのよ!!」

「なるほど……」

「まあまあ、ティアナならすぐに航空魔道士の免許も取れるから心配しないで」

「とはいっても、もう2.3年はみっちりもんでやんねえと無理だろうけどな」

「もう、ヴィータちゃんたら」

「本当の事だろ?」



赤いゴシックドレスを着た幼女といっても差支えがない副隊長はニヤリと笑う。

なのはもあははと口を濁したように笑っている。

実際航空魔道士免許は難関であるため、陸士は多くても空士は少ない。

それに挑戦するにはそれなりに出来るようにならないといけない。

尉官クラスまで上がれてようやくといった所なのだ。

二等陸士からでは5階級も上である。

先は長そうだった……。



スターズ分隊は効率よくガジェット・ドローンを撃破していく。

だが、それでも普通のドローンと違い、思考パターンが色々入れ替わり、連携や囮などといった攻撃を加えてくるため少し時間がかかってもいた。



「ふう、大体片付いたね。それじゃ異次元の穴に向かうよ」

「「「了解」」」

「それ以上は近付かないでくれるか……?」

「なっ!?」

「魔力反応ありません! おそらく戦闘機人!」

「まったく、今まで出てこないと思ったら。そこを守ってるって訳か、レリックを渡すわけにはいかねぇ、どかねぇとぶっ潰す!」

「待って、おかしい。いくら戦闘機人でも一人で私達全員を相手するつもりなの?」

「おっそろしく頭が悪いのでなければ伏兵がいますね」

「へー、そういうものなんだ」

「あんたは黙ってなさい!」

「はい」



作戦とか、策謀とかいう単語が向いていないスバルにティアナが突っ込みを入れる。

もっとも、4人とも戦闘態勢に入っている事には違いないが。



そんな4人の前でいきなり男が消えた。

気配も魔力反応も何もない、確かに今までいたその場所には何もないのだ。



「なっ!?」

「集まって! みんなの死角をカバーするの!」

「遅い」



男は突然陰のように出現した、いや、マントやバイザー、体にフィットしたスーツなど全てが何か影のようだ。

そして、出現した男はティアナのボディに一撃を入れると、また消えた。

衝撃はかなり強かったらしく、気絶しているようだ。

ジャケットを着ていてその衝撃なら普通なら死んでいるほどの打撃という事になる。



「耐久力の低い後衛から潰すのは必須ってか、やるじゃねぇか。だが隠れてるだけじゃアタシらは倒せないぜ!?」

「ご忠告どうも」

「うらぁ!」



側面に現れた男に体勢を崩すと思いながらも槌をふるって迎撃するヴィータ、しかしそれをかいくぐるように密着した男はそのまま腕を取って投げ飛ばす。

地面に頭を叩きつけるように投げ捨てられたヴィータはそれでも咄嗟に魔力障壁を張って防ぐ事が出来た。



「なんて攻撃、出現まで全く察知できないなんて」

「少なくとも魔法じゃねーなこりゃ、ロストロギアでも体に埋め込んでんじゃねーか?」

「ティアナ大丈夫かな……なんとかして倒さないとこのままじゃやられちゃうんじゃ……」

「うん、ちょっと不味い状況みたい。司令部はどう?」

『あかん、よーわからん事ばっかりやわ。でも一つだけ心当たりがあるんよ』

「何?」

『クロノがな、ラピスちゃんがいた世界にはボソンジャンプっていうて時間を移動できる技術があるらしい言うとった』

「時間を!?」

『そう、自在に時間を移動できるわけやない見たいやけど、過去にさかのぼってまた別の場所に出現する。

 つまり完全にその時間からいなくなることが出来るということや、高速移動やテレポートの比やない……』

「そんな無茶苦茶な!?」

『兎に角、詳しい事をラピスちゃんに……え!? なんやて!?』

「どうしたの?」

『ラピスちゃん単独でそっちに向かってるって!』

「なー!?」

『兎に角、ライトニングを上空から投入するさかい、時間を稼いでおいて。

 多分ジャンプには何らかの欠点があるはず、万能なんて魔法ですら出来へんのやから』

「うん、頑張ってみる」



とはいいうものの、なのは達は徐々に追い詰められていた。

なぜなら敵は出現と同時に攻撃、攻撃が終わると消える。

そして、しばらくしてまた出現という形を繰り返していた。



「ねぇ、みんな、一つ思うんだけど」

「なんだ?」

「どうしたんですか?」

「なんで私達の正確な位置が分かるのかな?」

「えっ? それは……」

「そうか、確かにな。連続して攻撃してくるんじゃなくて隙を付いたように攻撃してくるのは、どこかで奴が見ているからだ」

「うん、多分そう思う。未来に行って見るといかいう考えもあるけど、そんなに便利じゃないなら」

「じゃあ手分けして」

「バカ野郎! 今散会したら狙い撃ちだ」

「でも……」

「スバルちゃん、敵が見ているとしたらどんな所だと思う?」

「え、私達から見えないところで、相手からは見えるところかな……」

「うん、その条件で探してみて。多分かなり近いから」

「はい、わかりました」



なのは達は作戦を組みなおし、迎撃体勢を整える。

敵の位置は数度の攻撃を食らううちにわれた。

そのお陰で三人とも負傷したが、軽度のものだった。

戦闘力そのものは他の戦闘機人ほどでもないらしい。

そして、丁度こちらが攻撃を食らい、黒づくめの男が消えた瞬間。



「今! ディバイン・バスター!!」



隠れてこちらを見ていると思われる場所に前面の岩山ごと砕く長距離魔術砲撃。

黒づくめお男はどうにか逃れたようだが、体を掠めたようだ。

焼け焦げたようになった腕をだらんと下げている。



「時空管理局の権限により貴方を拘束、逮捕します」

「確かに俺の負けのようだ、しかし……」

「何ですか?」

「目的は果たした」



そう言われてなのはは、はっとして異次元の穴の方を向く。

そこからは既に、紫色の髪をした少女と大男、そして赤毛の妖精のトリオが出てくるところだった。

その一瞬の隙を突き、黒づくめの男は目の前から消える。



「あっ、まだ……!」

「アレ封じられねぇのか!?」



男は三人と合流すると更に遠くまで跳んで、そこからは三人に支えられて飛んで行った。

スターズとライトニングの位置からは追うのに時間がかかる、六課の面々が今回の追撃を諦めようとしたその時。



「アキトを離して」



桃色の髪の少女が薄紫の髪の少女の前に立ちはだかった。

同じような髪型、背丈、顔つき、そしてデバイス。

服装や髪の色、瞳の色など違う点も目に付いたが、それでも双子のように良く似ている。

どちらも、巨大な虫の上に乗り、互いを見つめていた。

一方は機械の、一方は魔術の虫だったが……。



それが、ラピスとルーテシアの初めての出会いだった……。
















あとがき


なんかラピスがやたらと主人公っぽい展開で終わっている今日この頃(爆)

1000万HIT記念作品もこれでラストっすねー。

一応戦いはこれからもつづくっぽい感じにまとめてみましたが(爆死)

最終日に持ってきた、ズズさんの作品は面白いですから、こちらで不満の方はあちらへどうぞw(爆)

まあ、それはそれとして、どうしてもストライカーズの謎が分かっていないという点が痛いですね。

話を具体的にしにくいですorz

もろもろお恥ずかしい点もありますが、こんな話だということでお許しください。

さて、次は何を書こう……って残暑見舞い絵もまだでしたorz

先は色々長いです。

因みに、もしストライカーズの続きを書くとしても、せめて最終話終わってからにしてください(泣)




昨日から今日にかけてですー。

22:55 リリなの×ナデシコPOD、斬新な作品で感心しています。 
22:58 アキトが戦闘機人というのは1話の時点で予測できることでしたが、ラピスを召喚魔導師にしてしまうとは 
23:00 アキトはジャンプがISでしょうから他の能力はそこそこのバランス前衛型 
23:02 ラピスは電脳戦ができますが他はキャロかルーテシアと似たようなもの 
23:03 現状では機動六課不利でしょうか?そもそも時系列がわからないので最終決戦時のバランスを考えても仕方ない 
23:04 とはいえますが。先は楽しみですが大変そうですね。ラピスが機動兵器でも持って来ればバランスが取れて面白 
23:05 いかも。ゆっくりでかまいませんので続きを楽しみにしてます。 
おおー、感想頂き感謝です!
アキトに関しては手っ取り早く強くするためにはこれが一番かなと思いまして。
実はなのは世界の戦艦よりもナデシコ世界の戦艦のほうが攻撃力は高そうなんですけどね(爆)
でもま、運用する側の存在は明らかにナデシコ世界のほうが弱いです。
その辺を何とかすればというのがラピスの召喚でして、カトンボを召喚してグラビティブラスト一発で機動六課本部くらいはぶっ飛ばせると思いますorz
時系列はきっちりとは作っていませんが、ヴィヴィオを助けた直後くらいを想定しています。
まぁ、もう少し練りこみは必要だったと思いますが、10日から考えて21日までに3本出せたのだから私にしては上等です。

23:34 クロノの一人称は『僕』ですよ 
修正しておきました。


0:06 なのは前作2つと違い敵側ははじめて見るので新鮮です期待しています 
ははは、ちょっと変わった設定でやってみたかったというのがありまして、いつもただもてるだけのアキトっていうのも面白くないですしw

0:58 なかなかうまくいっていると思います。自分もナデシコメンバーをリリカル(オリジナル)で出そうかなぁ 
0:59 しかし、stsの方…見ていないんですよね。やはり、A’sを見てからsts見るべきか… 
おおーー、ぜひぜひ出してくださいませw期待しまくってお待ちしてます♪

1:05 完結を願いますw 
ぐは!? 一応これも完結の形という事でw

10:32 ラピスとルーテシアが似ていると思ったのは自分だけではなかったのですね 
はいな、髪型、性格、体形などそっくりですよね(汗) ライダーとも似ていますが、どっちかというと体形の問題でラピスの方が似てる気がするw

13:29 面白い! 
ありがとーです! そう言っていただけると作った甲斐があります!

16:45 哀れな<ファエトン>に一票!! 
wwwまあ、私が個人的に思っていたことでして、何で英語?ってw(爆)

17:59 グッジョブ! 
ありがとーです! うれしいです♪

18:07 このタイプのクロスオーバーをまってました。 なにやらバイオレンスな予感がして、楽しみです。続連載!! 
はっはっは、一応ここで終わりという事にしていただければw
終われないとしても、なのは完結後にしていただければ幸いです。

20:44 古代火星文明=古代ベルカ設定にびっくり、面白い! 
20:46 人型兵器って確かリリカルじゃ実用まで行ってなかったけどエステの存在はリリカル世界じゃ凄い物に?
どっちも不明ですからねー引っ付けてやりましたw(爆)
人型兵器は確かにそうですね、宇宙空間での高速戦闘ではエステにも部がありそうですが、地球では微妙なんですよね。
もちろん、ラピッドライフルとかカノン砲はかなり魔法に対抗できるでしょうが……。
なのはらSクラス以上には難しいだろうな……(汗)

沢山の感想ありがとうございました!



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