なんだかんだで学園祭の日がやってきた。
ブラマジガールがやってくるあの学園祭だ、はっきり言って一回で終わらせるにはもったいないネタだった気もするんだが。
あまりにもさらっと流れすぎて、あったのかどうだか殆ど忘れられている気がしなくもない。
まあ、時期的に大徳寺先生の事があるので皆暗いわけだが。
そう、天上院明日香の兄貴である天上院吹雪が記憶を思い出した事により、
吹雪をダークネスへと仕立てたのが大徳寺先生である事がわかったのだ、
それはつまり彼がセブンスターズの側である事を示している。
そういうわけで、皆暗いわけだ。
変わらないのは、俺と俺の同室の奴らや翔や隼人辺りだ。
まあ、俺は元から知っていたからさほどショックがないだけだが。
ただ、あの明るい先生が後何週間かで死ぬというのが信じられない。
魂だけで生きているとも言えるが、なんと言うか、やっぱり死は死として寂しさを感じる。
何とかしてやりたいが、あの人も話を聞く限りでは大往生らしいのであまり否定もできない。
ともあれ、学園祭である。
ブルー寮は執事喫茶っぽいものを、イエロー寮は屋台なんかをしている。
もちろんそれだけでもないのだろうが、レッド寮はコスプレデュエル大会を開くようだ。
確か、ブラックマジシャンガールが遊びに来たあれである。
「ヨシカツ君、白線引き終わったよー、そっちはどう?」
「ああ、椅子も適当な数を出しておいた。しかし、そんなに客来るのかね?」
「ダイジョウブだよ、隼人君絵上手いし、後はコスプレデュエルに出てくれる人次第かな」
ブラマジガールが来るなら恐らく満員御礼だろうな。
しかし、学園祭というと金を取る出し物をつい想像してしまう訳だが。
これじゃあ金はとれないよな。
うーん、何かいいアイディアはないものか。
「どうかしたの?」
「んっ、ああアウス……ってえ!?」
アウスさんその格好は問題では!?
依然と違ってケープもかけているし、スパッツはいつもの事だけど、ドラゴンの子供まで連れて。
明らかに地霊使いアウスそのものですよ?(汗
「ヨシカツ誰ッすか!? その気合いの入った地霊使いのお嬢さんは!?」
「あー」
「翔君ねはじめまして、でも申し訳ないわ、部外者なの、でもヨシカツに強引に誘われてちょっとね」
「いえいえ、大丈夫っす! クールなアウス素晴らしいっす!!」
まあ、目に見えるように出来る精霊なんてセブンスターズ側くらいなんだが普通は。
アウスの場合自分の意思で出たり引っ込んだりできるのが凄い。
どういう違いなのかはさっぽりわからないが。
まあ、精霊と思われていないならそれでいいか。
俺のせいにされたのはちょっとむかつくが……。
「それで、何が不満なの?」
「いや、レッド寮でもう少し何か出来ないかなってな」
「何って何スか?」
「折角の学園祭だしな、コスプレデュエル大会も無論いいが、
大会の時に何か弁当じゃないが、売れるものがあればってね」
「でも、今からじゃ仕込みが間に合わないんじゃないかなー」
「それもそうなんだが、簡単なものでいいんだよ、クッキーとか」
「え?」
「クッキーとジュースだけでもあれば、観戦気分もあがるだろ?」
「そんなもんすかね?」
まあ、お金に関してという点を除けばどうという事もないと言えなくもないが、
学園祭でお金を稼ぐという事はその後の打ち上げの楽しさもあるのだ。
まあ、年齢的な事もあるからせいぜいジュースとお菓子程度だが、
売り上げ次第では更に、ファーストフード、ファミレス、焼き肉屋とパワーUpしていく事になる。
まあ、焼き肉屋で打ち上げが出来るのはほんの一握りの学校だけだが。
要は俺も羽目をはずしたいと考えているという事だ。
「クッキーくらいなら私が焼いてあげるわよ」
「本当か!?」
「ええ、学園祭はいつなの?」
「3日後だが」
「十分ね、ジュースは自分で用意して」
「了解した」
そうして数日、そういえば思い出した事があった。
学園祭って外部に開放されるんだっけ……。
というか、基本的に学校においての祭りというのは親に来てもらう事を目的としている。
学校の内情というか、学校で学生が何をしているのか知ってもらうための場でもあるのだ。
という事は当然ながら……。
「おに〜ちゃ〜ん!!」
「にゃ! ヨシカツさんお久しぶりなのです!!」
雫とイリーニャが飛び込んできた。
うん、不味いなこれは……。
「ヨシカツく〜ん、その小さい子達は誰っすか?」
「いっ、妹の雫と、ちょっと前に知り合ったイリーニャだ」
「雫です。お兄さんは誰?」
「おいらは丸藤翔、アニキの弟分さ!」
「にゃ!? アニキって誰ですか?」
「ああ十代の事だよ。おーい、十代いるか?」
「おお、なんだんなんだ? 知らない奴ばっかだな」
「俺の妹と……」
「にゃっ! 恋人なのです!」
「う”っ、よっ、よろしくな……」
十代はどうやら恋する乙女を苦手とするようになったようだ。
早乙女レイの件が尾を引いているのだろう。
下手に精霊が見えるせいで昼メロみたいなデュエルをする羽目になったんだから仕方ないが。
因みに、ゲームのルール上では男キャラ、女キャラの差はない。
つまり、恋する乙女は女性キャラも奪えるという事だ。
精霊的にはどうなるのか、ある意味気になる話ではある。
「レッド寮は何をするのです?」
「ああ、コスプレデュエル大会をする事になっている」
「コスプレデュエル?」
「モンスターの格好でデュエルするっていう事だな」
「へー、面白そうだねイリーニャちゃん」
「にゃにゃ!? 雫ちゃんお姉さんなんだからちゃんづけはやめるのです!」
銀髪ポニーにしたのイリーニャと黒髪をツインテにした雫が姉妹のようにじゃれあっている。
レッド寮でここだけ空気が違っていた。
そして、その温度差のひずみは当然のように俺に集中する。
うん、うざいよね、モテててるように見える奴は。
「とっ、兎に角準備があるから暫くの間アカデミアを見学してきてくれないか?」
「しょーがないなー、そだ、おにーちゃん。コスプレデュエルっていうのしてくれる?」
「ああ、構わないが」
「やった! じゃあ行ってくるねー」
2人の事を実体化したアウスに頼み、俺達は準備に集中した。
というかもう当日なので大体終わっている。
後は俺達自身のコスプレだけだ。
来ていた明日香を無理やりハーピィレディにし、
サンダーはVWXYZドラゴンキャノンのコスプレというかよくあったな。
十代は……無茶苦茶だった。
俺はというと、アニメの時の十代の失敗を考えデュエルが出来るように、
戦士ダイ・グレファーのコスプレをする事にする。
女性からは嫌われそうだが、両腕が解放されているので非常にデュエル向きだ。
「さあ! 遊戯十代VSブラマジガールちゃんのデュエルを始めます!」
っと、もう始まったのかおっ、確かに可愛いな。
俺は、前日の内に作っておいてくれた、アウス特性クッキーを販売して回る。
ついでにジュースもだ。
元々女性の少ないアカデミア、女性の手作りとなれば飛ぶように売れた。
証拠はなくとも、きめ細やかな作りを見ればなんとなく想像してしまうだろう。
実際アウスのクッキーはなかなかのものだった。
そんなこんなをしているうちに、十代の勝利でデュエルは幕を閉じた。
その頃学校案内を終えたアウスが雫とイリーニャを引き連れて戻ってくる。
2人とも楽しそう……あれ?
アウスがフフンという感じで鼻を鳴らし、2人は何だか喧々囂々非難の声をあげていた。
一体どうしたんだろう……?
嫌な予感しかしない……。
「どーいう事ですか!? ヨシカツさん!!」
「そうだよ、おにーちゃん!!」
「どういう事って、一体どういう……?」
「決まってるのです!!」
「そうだよ決まってるんだよ!!」
「あの人は誰です!!」
「どんな関係なの!? おにーちゃん!!」
「あー……」
精霊の事がまだ分かっていない2人に精霊ですと言って聞いてくれるだろうか。
いや、それ以前にアウスの奴一体何て言ったんだ?
俺は恐る恐るアウスに視線を向ける。
「一心同体、離れられない関係だと言っただけよ。何も間違っていないでしょ?」
「いや、なんというか語弊があるというか……わざとだろ?」
「さあ?」
アウスの奴、明らかにうれしそうだ。
俺をいじって楽しんでやがるな……。
とっ、兎も角この場は……。
『あー、第二試合、スケコマシヨシカツをぼこぼこにしたい人デュエルフィールドにあがってくれっす』
「え”!?」
俺はひやりとした汗をかいた。
これは、完全アウェー状態!?
そう、会場の人々の目が全て俺に冷たい視線を注いでいた。
うん、わかる、俺も人事なら確実に同じ視線を送るから。
だけど、さらされる俺は氷点下の空気に凍りつく。
これは、さっさとデュエルをして逃げ出すしかない。
「ガァッハッハッハ!! 悪の戦士ダイ・グレファー様に挑む根性のある奴はいるか!!」
やけくそで演技もする。
むしろ、ダイ・グレファーさんすいません。
とはいえ、原作で変態の烙印おされているんだし、ちょっとくらい勘弁ね(汗
「くそっ! 俺が叩きのめしてやる!」
「俺だ! あんな女の子ばっかりはべらせやがって!! 血の涙がでるじゃねーか!!」
「バカやろ! 俺に決まってるだろ!! あのツインテ幼女は俺のもんだー!!」
「むしろ、アウスたん踏んで!! 俺の女王様になってくれー!!」
「何言ってるんだ、銀髪のロリっこに敵う者はいない!!」
「バカ者!! 落ち着け!!」
既に相手側デュエルフィールドには対戦相手が立っていた。
その姿は……あれ?
サンダー、いつの間にかVWXYZドラゴンキャノンのコスプレを取っている。
まああれじゃデュエルできないもんな。
「貴様らの無念は俺様が受け取った! この俺様について来れば貴様らの願いもかなえてやろう!!」
「「「「「「おおおおお!!!!!!」」」」」」
「さあ! 俺の名を言ってみろ!!」
「一!! 十!! 百!! 千!! 万丈目サンダー!!! 万丈目サンダー!!!」
「そうだ!! 俺様が貴様らの無念を晴らしてやる、行くぞ!! ヨシカツ!!」
「来い!!」
「「デュエル!!」」
サンダー:LP4000 ヨシカツ:LP4000
「俺様のターン、ドロー!!」
黒い服を着込んだ万丈目、いやサンダーと闘うのは初めてだ。
あの時と違い、今のあいつのデッキはかなり幅広くなっている。
VWXYZのパーツとユニオンサポートカード、アームドドラゴンとレベルモンスターサポートカード、
そして、おジャマとおジャマサポートカード。
この3種の混合デッキとなっている今は、特に警戒する必要があるのがおジャマだ。
手札増強、相手フィールドのリセット、そして融合による強化、
といろいろな使い方があるおジャマは他のカードより対処が難しい。
何より低レベルの通常モンスターであるため、破壊されてもさしたる痛手にならず、復活もたやすい。
油断のならない敵となっている事だけは自覚しておかねば。
「俺はドラゴンフライを守備表示で召喚!」
ドラゴンフライ:効果モンスター/星4/風属性/昆虫族/攻1400/守 900
「そして、カードを一枚伏せてターンエンドだ!」
ドラゴンフライ、なるほど、最初はアームドドラゴンを召喚するつもりだな。
だが、伏せカードはどういう意味が……。
気にしても仕方ない、取りあえずは。
「俺のターン、ドロー!」
俺の引いたカードは、
戦士ダイ・グレファー:通常モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1700/守1600
ギガンテス:効果モンスター/星4/地属性/岩石族/攻1900/守1300
ギガンテス:効果モンスター/星4/地属性/岩石族/攻1900/守1300
地帝グランマーグ:効果モンスター/星6/地属性/岩石族/攻2400/守1000
人造人間−サイコ・ショッカー:効果モンスター/星6/闇属性/機械族/攻2400/守1500
はっはっは、選択の余地ねぇな。つか重!
幸い突進がある、次のターンまでダイ・グレファーをサポートしていくしかないな。
「俺は戦士ダイ・グレファーを召喚!」
戦士ダイ・グレファー:通常モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1700/守1600
「カードを一枚伏せてターン」
「ちょっと待った! トラップ発動だ!
おジャマトリオ! この効果により相手フィールドにはおジャマトークンが3体守備表示で特殊召喚される!」
おジャマトークン:トークン・効果モンスター/獣族・光・星2・攻0/守1000
おジャマトークン:トークン・効果モンスター/獣族・光・星2・攻0/守1000
おジャマトークン:トークン・効果モンスター/獣族・光・星2・攻0/守1000
「ターンエンドだ」
おジャマトークン3体か、少し不味いな、少なくともバルバロスの効果は使えなくなった。
そして、おジャマキングが来るとなると更に厳しい。
次のターンでサンダーがどう出るかで俺の対応も変えていかないときついな。
「俺様のターン、ドロー!
フンッ、俺様はマジックカード手札抹殺を使う!」
「何!?」
「互いに手札を全て捨て、同じ数のカードを手札に加える!」
手札交換カード。
万条目のデッキで手札交換が必要になるタイミングといえば……。
「おジャマジックが墓地に行った事により効果発動!
おジャマイエロー、おジャマブラック、おジャマグリーンを手札に加える!」
『万条目のアニキー!』
『俺達を』
『呼んだかー?』
「ええい、うっとおしいわ!! ザコ共!!
お前らが別に欲しかったわけじゃない! マジックカード、おジャマゲットライド!!
おジャマ3体を墓地に捨て手札及びデッキからレベル4以下の機械族モンスターを3体まで特殊召喚する!!
俺が召喚するのは! X−ヘッド・キャノン! Y−ドラゴン・ヘッド! Z−メタル・キャタピラ!」
X−ヘッド・キャノン:通常モンスター/星4/光属性/機械族/攻1800/守1500
Y−ドラゴン・ヘッド:ユニオンモンスター/星4/光属性/機械族/攻1500/守1600
Z−メタル・キャタピラー:ユニオンモンスター/星4/光属性/機械族/攻1500/守1300
くっ、ドラゴンフライを囮にして、この展開を狙っていたというわけか。
確かに、これだけ一気に場に出されると対抗するのが難しい。
「更に、ドラゴンフライを攻撃表示にし」
ドラゴンフライ:守備900→攻撃1400
「バトル! X−ヘッド・キャノンでダイ・グレファーに攻撃! ダブルキャノン!!」
「速攻魔法発動! 突進! ダイ・グレファーの攻撃力が700UP! 迎撃しろ! グレートソード!」
戦士ダイ・グレファー:攻撃1700→攻撃2400
「くっ!?」
サンダー:LP4000→LP3400
「だが、おジャマトークンに対し、残り3体で攻撃!
破壊されたおジャマトークンは1体につき300ポイントのダメージを与える!」
「やるな……」
「ふん」
佳克:LP4000→LP3100
つまりは、最初からXドラゴンヘッドがやられる事を想定していたという事だろう。
そうじゃなければ、おジャマがいるとダイレクトアタックできない分損になる。
「更に、Y−ドラゴン・ヘッドにZ−メタル・キャタピラーを装備する!
Y−ドラゴン・ヘッドの攻守が600ポイントアップ!」
Y−ドラゴン・ヘッド:攻撃1500→攻撃2100
「カードを一枚伏せてターンエンド!」
しかし、フィールドアドバンテージをかなり持っていかれているが、まだ俺が不利というほどでもない。
この状況なら十分なんとかなるだろう。
「俺のターン、ドロー!」
俺は手札抹殺により、前に引いたモンスターを全て墓地に送っている。
4枚が手札交換された格好だ、しかし逆にこの中にはモンスターはない。
新たに引いたカードは、融合呪印生物−地……。
いけるか?
「手札から融合呪印生物−地を召喚!」
融合呪印生物−地:効果モンスター/星3/地属性/岩石族/攻1000/守1600
「融合呪印生物−地の特殊効果発動!
このモンスターを素材の代わりとしもう一体の素材モンスターで融合出来る融合モンスターを特殊召喚する!
融合呪印生物−地と戦士ダイ−グレファーを墓地に送り、現れろ! ドラゴンウォーリアー!!」
ドラゴン・ウォリアー:融合・効果モンスター/星6/地属性/戦士族/攻2000/守1200
「何かと思えば、攻撃力2000程度、ユニオン状態のY−ドラゴン・ヘッドにすら敵わんではないか!」
「もちろん、それだけじゃないさ! フィールド魔法発動! ガイア・パワー!
フィールド上全ての地属性モンスターの攻撃力を500アップし守備力を400下げる!」
ドラゴン・ウォリアー:攻撃2000→攻撃2500
「なっ!?」
「バトル! ドラゴンウォーリアーでY−ドラゴンヘッドを攻撃!」
「この程度は予想していた! トラップ発動! 炸裂装甲! ドラゴン・ウォーリアーを破壊!!」
「ドラゴン・ウォーリアーの効果発動! LPを1000払う事で通常罠カードの効果を無効にし破壊する!」
佳克:LP3100→LP2100
「なにぃ!?」
「Y−ドラゴンヘッドに攻撃! ドラゴニック・スラッシャー!!」
「ぐっ!?」
サンダー:LP3400→LP3000
「だが、コストが重かったようだな! ライフ差はむしろ開いたぞ!!
そして、戦闘によってユニオンされたモンスターが破壊される時、ユニオンモンスターを墓地に送ることで破壊をまぬがれる。
よってY−ドラゴン・ヘッドは破壊されない!」
Y−ドラゴン・ヘッド:攻撃2100→攻撃1500
「カードを一枚伏せてターンエンド」
不味いな、確かに展開能力では、大きく差がある。
相手の残り手札が2枚だからと油断はできないな。
「俺のターン、ドロー!
マジックカード、貪欲な壺を発動!
5枚のモンスターカード、ザコ3匹とXヘッド・キャノン、Zメタルキャタピラーをデッキに戻し2枚ドロー!
そして、ドラゴンフライを生贄にアームド・ドラゴンレベル5を召喚!」
アームド・ドラゴン LV5:効果モンスター/星5/風属性/ドラゴン族/攻2400/守1700
「更に! マジックカードレベルアップ!を発動! 召喚条件を無視しアームド・ドラゴンレベル7を特殊召喚する!」
アームド・ドラゴン LV7:効果モンスター/星7/風属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
「さあ行くぞ!
アームド・ドラゴンレベル7でドラゴン・ウォーリアーを攻撃! アームド・ヴァニッシャー!!」
「トラップ発動! 和睦の使者!
このターン自分フィールドのモンスターは戦闘では破壊されずダメージも受けない!」
「ちぃ!! Y−ドラゴン・ヘッドを守備表示にし、カードを一枚伏せてターンエンドだ」
どうやら、手札に攻撃力2500以上のモンスターはいなかったようだ。
非常に助かるが、何が来てるのか不安でもある。
「俺のターン、ドロー!」
俺の手元に来たカードは……エネミー・コントローラー……。
俺はふと傍らを見たが、誰もいない。
考えてみれば今はアウスは観客として俺の応援をしてくれているのだ。
もっとも、ジトーっとした目で見ているだけだが。
イリーニャや雫も応援こそしているものの、アウスの事が気になって仕方ない様子。
……うん、デュエルに集中しよう。
「装備魔法、ビックバンシュートをドラゴン・ウォーリアーに装備する! 攻撃力が400アップ!」
ドラゴン・ウォーリアー:攻撃2500→攻撃2900
「攻撃力が逆転しただと!?」
「バトル! ドラゴン・ウォーリアーでアームド・ドラゴンレベル7に攻撃!」
「くっ!」
「更に、速攻魔法エネミー・コントローラーを発動! アームド・ドラゴンを守備表示に!」
「なっ!?」
アームド・ドラゴン LV7:攻撃2800→守備1000
「行け! ドラゴニック・スラッシャー!!」
「ぐぁぁぁ!?」
サンダー:LP3000→LP1100
ビックバンシュートの真骨頂は守備表示の貫通効果、アームド・ドラゴン LV7の守備力はレベルの割りに低い。
結果的に大ダメージが入る計算である。
もっともそのためにエネコンを使ったのは少しもったいなかった気もするが。
「ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!
やってくれたな、攻撃力2900か、それを超えるのは少し骨だな。
先ずは、マジックカード魔の試着部屋を発動する!
ライフを800払いカードを4枚めくる、その中でレベル3以下の通常モンスターがいれば特殊召喚できる!」
サンダー:LP1100→LP300
『おおー!』
『兄貴今度こそ!』
『俺達の出番だ!』
「ちっ、まあいい。ザコ3匹を特殊召喚する」
おジャマ・イエロー:通常モンスター/星2/光属性/獣族/攻 0/守1000
おジャマ・グリーン:通常モンスター/星2/光属性/獣族/攻 0/守1000
おジャマ・ブラック:通常モンスター/星2/光属性/獣族/攻 0/守1000
「更に、マジックカード発動! おジャマデルタハリケーン!! 相手フィールドを全滅させる!」
「何!?」
『俺達の!!』
『本当の力を!!』
『見せてやるワイなー!!』
あー、よく分からない生物のお尻くっつけ大回転でドラゴンウォーリアーが破壊された。
それだけじゃない、フィールド魔法も、伏せカードもだ。
完全に全滅、これは不利もいいところだな……。
後は、正直相手のほうに攻撃モンスターが来ない事を祈るだけだ。
「まだまだ行くぞ! 貪欲な壷!
手札抹殺で送った3体のモンスターに、アームド・ドラゴンレベル5と7をデッキに戻し2枚ドロー!
そして、融合を発動! おジャマ・キングを守備表示で融合召喚!」
おジャマ・キング:効果モンスター/星6/光属性/獣族/攻 0/守3000
「このモンスターは、相手フィールドのモンスターゾーンを3つ使用不能にする。
よってお前が使えるモンスターゾーンはあと2つだ。
そして、またY−ドラゴン・ヘッドを攻撃表示にし、ダイレクトアタック! ヘッド・ガトリング!!」
「うぉ!?」
佳克:LP2100→LP600
「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」
決め切れなかった?
サンダーももう後がないはずだ、ライフでは僅かに俺のほうが上回っている。
それなのに中途半端な攻撃力しかないY−ドラゴン・ヘッドをただ放置しておくとも思えない。
「俺のターン、ドロー!」
俺の手札は元々1枚、ライフゲインが足りないから使用不能となっている我が身を盾にのみ。
当然ながら俺はこのドローでモンスターを引けなければほぼ負けが決まってしまう。
俺が引いたカードは……強欲な壷、ラストとしてはありがたいがひやひやものだ。
「マジックカード強欲な壷を発動! デッキから2枚ドロー!」
今度のカードは……、一枚はメガロック・ドラゴン。
もう一枚は、死者転生?
あー、そういえば、バルバロスの再利用案の一つとして用意したんだっけ。
でもこの場では、手札コストが重すぎるというか、3枚のカードで……ん?
いや、案外いけるのか?
「俺は、墓地のギガンテス2枚と、地帝グランマーグ、融合呪印生物−地を除外しメガロックドラゴンを特殊召喚する!」
メガロックドラゴン:効果モンスター/星7/地属性/岩石族/攻 ?/守 ?
「メガロックドラゴンの元々の攻撃力、守備力は除外した岩石族モンスターの数×700となる!
除外した岩石族は4枚、よって攻撃力2800!!」
メガロックドラゴン:攻撃?→攻撃2800
「俺様がそのまま通すと思ったか! トラップ発動! 粘着落とし穴!! メガロックドラゴンの攻撃力は半分になる!」
メガロックドラゴン:攻撃2800→攻撃1400
「ラッキーだったよ」
「なに?」
「収縮とかだと狙われる可能性があったからな、俺は手札の我が身を盾にを墓地に捨て死者転生を発動!
墓地のサイコショッカーを手札に加える!」
「何だと!?」
「このターン、まだ俺は通常召喚を行っていない。
だからメガロックドラゴンを生贄に、人造人間−サイコ・ショッカーを召喚する!」
人造人間−サイコ・ショッカー:効果モンスター/星6/闇属性/機械族/攻2400/守1500
「なん……だと……」
「バトル! 人造人間−サイコ・ショッカーでY−ドラゴン・ヘッドを攻撃! サイバーエナジーショーック!!」
「ぐわぁぁぁぁ!?!?」
サンダー:LP300→LP0
俺とサンダーは向かい合って、デュエル終了までにらみ合う。
互いに全力を尽くした感はあった。
しかし、互いに結構色々面倒な試合でもあった。
「なかなかの泥仕合だったぜ……」
「おまえもナ……」
俺とサンダーは友情を芽生えさせたようにデュエルフィールド中央で握手をしつつ倒れた。
理由は別にデュエルのせいじゃない。
単にブーイングの色々なものが体にぶつかってというか頭部直撃したからだ。
「いーかげんやめろ!!」
「モテてない男達の怒りはどうしてくれる!!」
「そーだそーだ!! 中途半端なことしてるんじゃねえ!!」
「お兄ちゃんもこの女の事きちんと説明して!!」
「恋人は私なのです!!」
「ふぅ」
我関せずとため息をついているアウスを猛烈にぶん殴りたいと思ったが、既に会場の熱気はやばいくらいにMAXだ。
とてもじゃないが話を聞いてもらえそうにないし。
そもそも俺は今までモテてた事がないなんて言っても信じちゃくれないだろう。
万策尽きた俺は全力逃走を開始する事にした……。
あとがき
一年目も終盤となってきています。
そろそろストックが切れるかなー?という感じでしてw
2年目はまだ2話しか出来てないww
押していただけると嬉しいです♪
<<前話 目次 次話>>