機動戦士ガンダム〜アムロになってフラグをぶち壊す〜






01


宇宙世紀0079年 ギレン・ザビ率いるジオン公国軍は地球連邦政府に戦いを挑んだ。

その戦いは凄惨そのものであり、サイド1、2,4を壊滅、その後コロニー落としにおいてジャブローを狙うも連邦軍の必死の抵抗により失敗。

しかし、破壊されたコロニーは幾つかに分散し地球に降り注いだ。

その結果、宇宙で23億、地上で40億もの死者を出すに至る。

実に地球圏総人口の半数に及ぶ被害だった。


それらの恐怖により連邦政府高官は怯え、全面降伏に近い形において南極条約を結ぶ事になる。

しかし、その直前ルウム戦役においてジオンに捕まっていたレビル将軍が帰還し、ジオンの内情を語る。

連邦よりも酷いその内情は南極条約を降伏から単なる戦争のルール指定に留めるに至った。




それから時が経ち、宇宙暦0079年9月18日。

とある少年の運命が狂った所から物語が始まる。






突然、頭をぶつけたショックで目が覚める。

そう、俺は確か……会社で報告書をまとめていたはず……。

いつの間にか眠ってしまったのか?

しかし……ここはどこなんだ?

やけに暗い……。


明かりはないか……スイッチは……。

これか?


どうやら正解だったようだ光が灯り周辺が明るくなる。

しかし、今いるこの場所は見たこともない所だ。

まるで、そう何か重機でも動かすための操縦席のような……。


そう考えると、何か知識が頭の中に入ってくる。

俺の……僕?

ああ、僕はアムロ……え?

俺がアムロ・レイ?



「これはもしかして……」



出した声にも聞き覚えがある。

古谷ボイスだ……。

今まで生きてきた記憶もある。

そして、おっさんとしての記憶もある。

いわゆる憑依なのか、それとも融合なのかわからないが……。


これに乗っているという事はつまり……。


ゴウゥンと何かの駆動音がする、そして地響きも。

これは……。



「ザクか!」



おっさんの俺の知る知識において。

アムロは初戦で失敗している。

動力炉を切り裂いてコロニーに穴を開けるというものだ。

それをしないためには、ビームサーベルでコックピットをピンポイントで貫くか、四肢を切断するかだ。


親父さんも出来れば元気でいてほしい。

いろいろな意味で有利になるはずだから。



「とりあえず立たせないと」



初戦はアニメ知識でしかない今、迫るザク相手に立ち上がるだけでも一苦労だ。

原作どおり、頭のバルカンで牽制しながらどうにか立ち上がる。

使い切らない様に注意したつもりだが、元々弾数も少ないのだろう直ぐ尽きた。



「だがビームサーベルは既に知ってる!」



そう、その分だけ早くビームサーベルを抜く事が出来る。

アムロの知識においてフラウ・ボウのお爺さんがザクに殺されている。

いや、既にザクの破壊活動でかなりの数の死人が出ている、恐らくは百に近い人数が死んだだろう。

容赦する謂れはないという事だ。



「胸の動力炉を破壊しないためには、腹の下あたりを狙うしかない。

 的が小さいから、勢いをつけて行くなら手足からか」



迫ってくるザクはまだマシンガンを撃っているがルナチタニウム装甲のガンダムには少し揺れる程度の衝撃でしかない。

ビームサーベルで先ずはマシンガンを持っている腕ごと切り落とす。

そして、更に一歩踏み込んで足を切り落とした。

片足では立てず傾いて倒れるザク。

逃げられないようにバックパックを引き抜いてから、もう一体のザクにせまる。



「驚いて動きが止まっている今なら!」



へそにあたる部分より少し下を狙ってビームサーベルを突き刺す。

そうコックピットの部分だ、だからザクはやられていないが中の人は死んだはず。

俺はそれを確認してから倒れたザクから這い出してくるジオン兵、多分ジーンだろう。

そいつを見つけたので踏み潰しておいた。

吐きそうになったが、生かしておけばサイド7、このテキサスコロニーで破壊活動をするのは目に見えていた。

それに、ジオン兵は今倫理観を完全に失っているはずだしな。

あれだけ民間人を虐殺して軍務だと普通に思っているくらいだから。



「さて……とりあえず。テキサスコロニーを破壊していないから親父も酸素欠乏症とかなっていないはずだ」



そして、彼はガンダムへ向かっていた。

つまりここの近くに来ているはずだ。



『そこのパイロット、官姓名を述べよ。こちらは∨作戦指揮官のテム・レイ大尉である』

「こちらアムロ・レイ。父さん悪いけどガンダムは使わせてもらったよ。ここに軍人は誰もいなかった」

『……勝手にそんな事を、と言いたいが。確かに素人のお前でもガンダムの性能ならザクくらい敵ではない事はよくわかった』



どこまでも技術者だな……。

まあ、大尉ってのは実のところ大規模な作戦である∨作戦全体の指揮を取るには低すぎる気がするが。

とはいえ、ホワイトベースに士官が乗り込んでくれるのはありがたい。

パオロ艦長もまだ倒れていないはずだが……さてどうなるか。



「所で、ガンダムはどうするの? この場で引き渡してもいいけど」

『いや、こちらもパイロットがいない。一応お前でも動かせるようだからホワイトベースまで乗っていけ』

「わかった、けどフラウ・ボウたちもいるんだ」

『ん? ガンダムの後ろにいる人達か……』

「シェルターに逃げ込むのが間に合わなかったみたいで」

『わかった、こちらのジープに乗せよう、2台で来ているから無理すれば7・8人くらいは乗れるはずだ』

「頼んだよ」

『その代り、お前はガンダムでそのあたりに落ちているモビルスーツのパーツを運んでこい』

「え」

『3往復くらいすれば全部積み込めるだろう。頼んだぞ』



そうして俺はガンキャノンやガンタンク、パーツや残骸も含めて5往復位する羽目になった。

まあ、ホワイトベースの強化にもつながるから悪い事じゃないんだけどね。

とはいえ、その間にシャアとセイラさんの再開イベントは終わっていたらしく、シャアをさっさと殺すという考えを達成する事はできなかった。

何せ生かしておけば地球にアクシズを落とそうとするからな。


Z時代は味方だったから必要じゃないのかと思った人もいるかもしれない。

しかし、どちらかというとティターンズをまともな組織にするほうが良い気がする。

ティターンズは上層部が酷すぎた。

バスクは言うに及ばず。シロッコもあんなに追い詰められてからティターンズを乗っ取って何がしたかったのか。

ジャミトフに至っては、お前の思想ならエゥーゴに行ってろと言うような代物だ。

もっともそのエゥーゴも酷い。

何せスポンサーの意向には逆らえないからな、ブレックスよりアナハイムの意思のほうが重要という体たらく。

アナハイムは連邦系のはずだが、ジオンというか地球にアクシズを落とそうというシャアと繋がっていたくらいだ。

連邦がアナハイムの手綱を取れてないという情けない有様が浮き彫りとなっている。

ジョブ・ジョンで有名なサナリィが隆盛していくのも当然かもしれない。


つまり、どこの組織も言うほど連邦を憂いていないという事だ。

その証拠に、どちらもアクシズと組もうとしたしな。

その際、ジオン公国の復活を承認している。

どう考えても、どちらにとっても組むべき相手でないのは明白にもかかわらずだ。


まあ、まだ先の事だ、それよりも目先の事が優先だろう。

とりあえず可能な限り軍の人間には生き残ってもらいたい。

俺は一応アムロとしての記憶はあるがニュータイプに覚醒できるかは微妙な所だ。

下手におっさんメインの融合をしてしまった事で純粋さはどこかにおいていってしまったからな。


言っている間に積み込みが終わり、ホワイトベース内のハンガーにガンダムを固定する。

出港も目前のようだ、俺は一度親父殿と話をしないとな。



「父さん、俺はどうすればいい?」

「ん? パイロットは候補生が2人ほど残っていたからな。

 リュウ・ホセイとジョブ・ジョンという。

 ジョブ・ジョンは……正直わからんが、リュウ・ホセイはなかなか見込みがありそうだった」

「なるほど、それはいいけど。僕もホワイトベースに乗っていいの?」

「お前が連れて行けといった奴らも乗っているし、他にも結構いるな。

 多分50人くらい民間人が乗っている。お前一人くらい追加されても問題ないはずだ」

「そっか、ありがとう」

「……ああ」



相変わらず不器用な、親父さんが生きている以上俺がガンダムのパイロットになる可能性は低い。

それ自体は良いことだが、問題は敵にはエースパイロットがごろごろいる事だ。

シャアを筆頭にガルマ、ランバラル、黒い三連星、エースかどうか不明だがマ・クベや他の作品も関係あるなら山程いるだろう。

それをリュウ・ホセイで乗り切れるかは疑問だ。

アムロと同じだけニュータイプとして覚醒しない限りは厳しいだろう。

まだハヤトのほうがニュータイプの素養はあるはずだ。



「やっぱそれは不味いよな……」



とはいえ、俺だってアニメのアムロと同じ働きが出来る自信なんて全く無い。

アニメの最終話までに200体以上のMSを破壊したらしいからな。

連邦だってエースは多数いるし、ブルーのユウ・カジマとかも何十体下手すれば百以上撃破しているだろう。

ガンダムの初期、シャアがザク3機やられた事をドズルに詫びるシーンがあるが。

後々の事を考えれば大したことはない。

最終的に一年戦争時ザク系列の生産数は8000以上という後付けの発表がなされている。

同様のジム系列が3800以上とされている事からすれば、ジムが出るまでにかなり削ったという事になるだろう。

もちろん、ジム系列はザクと違い、スペック的にはガンダムに近い動きも不可能ではないため、

教育型コンピュータの補正と合わせ1対1で戦えば技量の差が少しくらいあってもジムが勝つはずだ。

そんな感じはアニメとかを見る限りないが、実数的にはそうなるらしい。



「そうなるとジオンは一体どれだけ生産能力を持っているんだか……」



連邦は確かに30倍の国力を持っていたかもしれないが。

ジオンもサイド1つにしてはおかしいほどの力を持っていたと言える。

こうして考えてみると、本当に彼らは虐げられていたのか疑問になる。


ともあれ、連邦に有望なパイロットがいないのも事実。

俺が原作アムロと同等の力を持っていればまだしも、というか正直死にたくないというのもある。

スレッガーさんがやってくれば多少マシになるかもしれないが。

彼もモビルスーツのほうはあまり乗っていないからはっきりと行けると言えない所が辛い。



「悩んでも仕方ないか、なるようになるだろう」



現状、俺に出来ることは兎に角、雑務の手伝いを精一杯する事だ。

パオロ艦長がまだ重傷になっていない事、親父が生きている事、この2つがいい方向に向かう事を祈るしかない。

俺は幸い、アムロの機械いじりの趣味をそのまま意識として持っているので整備班の手伝いをしている。

ガンタンクやガンキャノン、それに損傷はないがガンダムも整備する手伝いをするのは割と楽しい。

親父の仕事を見られるのも悪くない。



「……そうだな、ガンダムはアムロが乗れた様に、パイロットの保護機能、操作性ともに高い。

 だが、システムの方はまだまだだな。プロトのデータだけでもあれば良かったんだが」



プロト……プロトタイプガンダムか、カラーリングが白と黒のガンダムだ。

あれは、原作でもアムロが来た時には既に破壊されていたんだったな。

一応一通り持って帰ってきたが、コックピット周りは完全に破壊されていた。

しかし、ルナチタニウム製のザクマシンガンを跳ね返す装甲を破壊したんだからヒートホークは注意しないといけない。



「幸い2号機と3号機は無事だ。もっとも3号機はまだ組み立てが終わっていなかった事もある。

 プロトの部品でニコイチする事になるだろうが……」



3号機か、そういえば小説版でその設定があったな。

マグネットコーティング仕様、つまりアニメ後半の動きが早くなったガンダムと同じガンダムだったはず。

通称がG−3、ガンダム3号機なんだからそのまんまだが。

灰色なのが仕様なんだっけか。


ともあれアニメだけではなくМSVのモビルスーツもあるという事だ。

となると、色々な外伝が絡んでくる可能性が出てくる。

正直俺の知らない外伝も多く存在しているし、原作の流れを狂わせかねないのもある。

もっとも俺の存在自体が原作を狂わせる可能性大だが。


どちらにしろ、ガンダムがホワイトベースに2機あるというのは心強い。

とはいえパイロットがいないんじゃ話にならないが。

一々オチがつくのも困り者だ、なんとか解決策を考えないといけないな。

今は何よりパイロットだ、リュウ・ホセイとジョブ・ジョンの2人をガンダムに乗せて勝てる自信が全く無い。

流石のシャア専用ザクでもそう簡単に動いてるガンダムを倒す事は出来ないだろうが……。

油断ができる状況ではない。




『ホワイトベース出港準備完了しました、エンジン点火します』



この声は確か、ミライ・ヤシマさんだっけか。

確か婚約者がいるけど、最終的にブライトさんと結婚するんだっけ。

とはいえ、ゴールインの経緯が全く語られていないから何とも言えないな。


そういえば……出港する段階で攻撃を仕掛けてくる可能性が……。



「間に合うか!?」



ドォォォン!!!


俺はブリッジに向けて走り出したが、次の瞬間衝撃で身体が傾く。


これは……。


やはり、ミサイル攻撃か!?

出港直後に攻撃を受けてパオロ艦長が補修に向かうはず。

そして補修中に更に攻撃を受け、パオロ艦長が重傷を負う。


ここで手をこまねいていては、ガンダム史上一番理解力の高い艦長が退場することになる。

彼は原作でアムロを最初に認めた人間であり、杓子定規な対応をしようとするワッケインをなだめた人間でもある。

赤い彗星のシャアだ、逃げろー!

が有名になりすぎて、臆病者だと思われがちだが、それもルウム戦役でのシャアの活躍からだ。

実際シャアはその時だけで5隻の戦艦を沈めているらしい。

ルナ2が近くにあるんだから、逃げるべきというのも間違ってはいない。

逃げ切れるかは別にして。


ガンキャノンやガンタンクも∨作戦のものであった事から察するに、この世界はオリジンの世界ではない。

となればパオロ艦長はそのままだとルナ2で死ぬ。

まあそれも、シャアを退けられてこそだが……。

シャアを退けられなければホワイトベースごと全員死亡なんて事もありうるからな……。


ともあれ、俺はノーマルスーツを着用して大急ぎで下層へと向かう。

確か艦長とリュウ・ホセイは居住区の下の倉庫ブロックの補修に出ているはず。

あのあたりの空気が抜けるとミサイルが素通りして居住区に届きかねないため、急いで補修しようというのだろう。

だが、戦闘中にやることじゃないと思う。

原作でもあれ以後、戦闘中の外壁補修なんて無茶な真似をした事は一度もない。

リスクとリターンが釣り合っていないのだ。


俺が急いで追いかけると、ノーマルスーツを着たパオロ艦長とリュウ・ホセイに追いつく。

まだ通路にいたようだ。

間に合って良かった……。



「艦長! リュウさん!」

「ん? 君は確か……テム・レイ主任の息子でアムロだったか」

「はい、アムロ・レイです」

「我々は外壁補修に向かう、君は整備班を手伝っているだろう?」

「ですが、艦長とガンダムのメインパイロットがする事でもありません。

 どちらも一番重要な役どころじゃないですか」

「む……」



パオロ艦長は言われて渋い顔をする。

実際おかしいのだ、艦長が相手がレーダー圏外からミサイルで攻撃してくるとはいえ戦闘中にブリッジから出るのは。

それにリュウ・ホセイだって貴重なパイロット、ここでリスクを犯すべきじゃない。



「そうですよ、ここはサブパイロットの俺に任せてください!」

「君はジョブ・ジョン……君もパイロットだろう」

「ですが、ホセイ軍曹と比べたらまだまだですし、何かしたいんです」

「そうか……任せる。しかしアムロ君は駄目だ」

「え?」

「君はノーマルスーツを着ていない」

「う」

「ジョブ・ジョン君。君も貴重なパイロットだ、くれぐれも怪我をしないよう気をつけるんだぞ」

「はい」



思いとどまってくれたのはいいが、今度はジョブ・ジョンが行ってしまった……。

流石に今度は引き止める言葉がない。

彼は普通なら一番長生きをする人なんだが……死なないでくれよ……。


その後俺はまた親父さんの元で整備の手伝いを続けた。

とはいえ、状況はよろしくない。

何せもうすぐシャアが出てくるからだ。

リュウ・ホセイはシミュレーションを2回しただけ、ジョブ・ジョンは多分それもまだ、だろう。

そんなので迎え撃つ必要が出てくる……。


そんな時、警報が鳴り響く。

来たのだついに……。



『ホワイトベース発進します。ホセイ軍曹はガンダムで出撃して先行頼みます』

『了解した、リュウ・ホセイ。ガンダム出るぞ!』



マニュアルは渡してある。

ガンダムの装甲はルナチタニウムだからザクマシンガンは効かない。

しかし、ヒートホークを食らったり、シャアキックを食らうと相応にダメージを負うだろう。

もっとも一撃二撃でパイロットが危険になる事はないはず。

なんとか粘りきってルナ2に逃げ込むしかない。



『ジョブ・ジョンはガンキャノンで待機してください。戦闘区域に近づくと同時に出撃ガンダムの支援を行います』



原作ではコアファイターで支援したが今は補修の人員が俺と親父さんの2人分多いのでガンキャノンが間に合った。

ガンダム3号機もガンタンクも後回しにして比較的軽傷だったガンキャノンを先に修理したのだ。

しかし、ジョブ・ジョンがここに来ない。

……やはり、艦の外壁補修中になにか……。



「ちょっと……待ってくれ」

「ジョブ・ジョン!?」

「くそ、ミサイルの余波で吹き飛ばされた……」

「誰か!? ジョブ・ジョンを医務室へ!!」



ここまでは歩いて来れたようだが……。

体中切り傷だらけだったように見えた。

やはり、俺がついていくべきだった……。

ガンキャノン……やはり俺が乗るべきだな。



「父さん!」

「……っ! まさかお前」

「ガンキャノンの仕事はあくまで後方支援、ホワイトベースからも離れないし、できるはず」

「……わかった。しかし、砲撃なんてお前できるのか?」

「ガンダムに当たらない様に祈ってて」

「ちょ……アムロ!」



俺は走ってガンキャノンに乗り込む。

そこでふと思った、ガンキャノンが腕に剣や盾を持たないのはガンダムと比べて動きが遅いからだ。

格闘戦が出来るほどの機動力をガンキャノンでは再現できなかった。

だから砲撃特化になっているんだが。

もっとも、ランバ・ラルのグフと格闘戦をしたようにパワーはガンダムに匹敵する。

装甲は下手をすればガンダムより硬いくらいだ。

ようは、機動力がないだけなのだ。

それを補う方法を俺は知っている、いずれ提案してみるのも良いかもな。


しかし、どうせ今回はホワイトベースの外壁にひっついて砲撃するわけだ。

ビームライフルはまだ一つしかないので、ガンダムが持っている。

となればガンキャノンの攻撃方法は肩のキャノン砲だけになる。

ならば。



「父さん。ビームサーベルとシールドも持っていく事にするよ」

『ガンキャノンで格闘戦なんてできないぞ!』

「サーベルのほうは保険だよ。だけどシールドは普通に使えるんじゃないかってね」

『なるほどな、やってみろ。どのみちホワイトベースから離れないなら同じ事だろうしな』

「ありがとう!」

『ガンキャノン。ジョブ・ジョンまだですか?』

「ガンキャノン、ジョブ・ジョン候補生は外壁補修時に負った傷で今医務室に運んでいます。

 変わって、アムロ・レイが担当します」

『アムロ・レイ? 勝手に……』

『行かせてやりなさい、彼には先程の戦いでザク2機を撃破している。候補生よりも実戦経験がある』

『わかりました。アムロ・レイに臨時権限でガンキャノンパイロットとして対応します

 ガンキャノン、カタパルトデッキを通さずそのまま外壁へ』

「わかりました、アムロ。ガンキャノン出ます」



ハンガーデッキからカタパルトデッキの横を通り過ぎハッチを開いてホワイトベースの外壁に出る。

この艦にはこういったMS用の出入り口が幾つかある。

そのまま、艦の下側に出てきた。

上には砲門がハリネズミのように出ているが、残念ながら下側は少ない。

地上に着陸したり、着水したりといった全環境に対応した結果こうなったのだろうが、下部が弱いのは間違いない。

そのフォローをMSに任せる事まで計算に入っているのだ。

その辺親父さんはよく考えている。

とはいえ、この強力な艦は当然コストがバカ高い。

このサイズでグワジン級とタメはれるコストなのが頭が痛い。

マゼラン10隻分の値段を考えると量産には疑問符がつくのもしかたない。

それでも、少数ながら生産し続けたのだから連邦も大したものだ。



「来た!?」



目視出来たわけじゃない、だが感覚があった。

俺は大慌てでモニターをその方向に向けて拡大をかける。

それでも点の様に小さかったそれは、次の瞬間には赤いそのシルエットを見せる。

シャア専用ザク……俺は、ガンダムが動き始めるより前に砲撃を行う。

赤いザクは俺の射撃に気がついたのか大きく右にそれる。

宇宙だから射撃は初速のまま相手まで届く、つまり射程範囲がないのだ。

ただまあ、命中率は下がっていくが。



「回避されるのは想定済み。だが!」



赤いザクはその加速を大きく落とし、こちらに接近するまでの時間が伸びる。

俺は続けて射撃する。

どうせ当たらないのはわかっているが、時間稼ぎにはなる。

格闘戦が出来ないガンキャノンと回避なんて不可能なホワイトベースを守るにはこれしかない。

後はリュウ・ホセイが頼りになる事を祈るだけだ。



『なっ、もう来たのか!?』

「リュウさん。ザクマシンガンはガンダムには効きませんから。

 近づかれなければ負けはありません!」

『わっ、わかった!』

『ガンキャノンが援護する。ビームライフルのエネルギーを使いすぎるな』

『了解!』



確かにビームライフルは10発も打てばエネルギー切れを起こす。

戦艦の主砲並の威力だから仕方ないが。

ザクなら当たれば一撃で消し飛ぶ、威力はこの240ミリのレールキャノンより上だ。

どうせなら、出力も調整できるようにしておいたほうがいいな。

威力を落として連射できるようにするのも悪い手じゃない。


ただ、ガンキャノンのレールキャノンだって弾数制限はある。

肩部から胸にかけて弾倉になっているがそれでも24X2発が限界だ。

左右の撃ち分けが出来ない仕様なので実質24発。

キャノン砲としては結構弾数が多いが、それでもシャアの足止めを行うには心もとない。



「だが、ここで止めなきゃ!!」



リュウ・ホセイにあまり期待しすぎるのは不味い。

なにせ彼もまた初陣なのだから。

2回めの俺のほうがまだマシだ。

そんな事を考えていると、まずい!

スレンダーのザクが来た!

シャアに対応出来ないリュウ・ホセイに更にスレンダーが来たら勝ち目がない。

だが、今俺がシャアの足止めからスレンダー撃破に切り替えるとシャアに取り付かれる。

ガンダムが落ちる可能性は五分五分、どうする?



「リュウさん! シャアの足止めは任せてください! もう一体のザクのほうを!」

『わかった!』



シャアの視線をこちらに向けるしかない。

ホワイトベースを危険に晒すが……。

言ってるそばから、シャアがこっちに急接近してきた!

そろそろキャノン砲の弾数がやばいってのに!!



『連邦の新型はどちらも侮れんが、熟練のパイロットはそっちか!』

「ちぃ!!」



シャアザクの強化型バーニアで一気に接近してきたシャアはガンキャノンに蹴りを見舞う!

だが、盾を突き出してそれを防ぐ事に成功した。

そして、キャノン砲で迎撃する。



『ほう、格闘戦もこなすか』

「こっちには機動力がないってのに!」



飛び回るザクに対し、俺にできる事は嫌がらせの様に時々射撃するくらいだ。

弾も後3発。

牽制に回すのはもう限界だな。



『弾数も残り少ない様だな!』

「だったらどうした!」



因みに通信は繋がっていない。

どうやら俺にもニュータイプ能力があるらしい。

良かった。

生き残れる確率が上がった。


それに、今回賭けは俺の勝ちらしい。



『なっ、スレンダーがやられた!?』



そう、リュウ・ホセイがスレンダーのザクを倒した所だった。

リュウさんは倒して直ぐにシャアに向き直るとバーニア出力を全開でこちらに向かってくる。



『ちぃっ! 今回は引き上げるしかないか!』



シャアは2対1の不利を悟り逃げ出そうとする。

俺はそれに向けて、残る弾を全て吐き出す。

回避に移ったのを見て、ビームサーベルを展開、切り裂いた。



『なっ! やってくれる。覚えておくぞ!』


それはアムロをガンキャノンパイロットとして覚えるという事だろうか?

当たったのは足なので、シャアザクはスラスターを全開にして逃げ出す。

今回は本当に弾切れになってしまった以上ここまでだ。



「ふう、どうにか生き残れたみたいだな」

『何を言っている、シャアザクの足を切り落としたなんて大戦果じゃないか』

「ガンキャノンの性能のおかげですよ」



いやま実際、そうそう破壊される様なことがないとは思っていたしね。

とはいえ、この先どんどん相手のMSもガンダムに近づいてくる。

あまり安心は出来ないな……。






あとがき


15周年記念作品として投稿させていただきます。

サイトを作ってとうとう15年、私もおっさんになったものだなーと思います。

この作品は実は、以前に作ってストックしてあったものです。

ただ、銀英伝のSSのほうを連載し始めたので、こちらは後回しになっておりました。

掲載は銀英伝が完結するまでは時々出す程度でご勘弁を。

一応余裕がある間は月一くらいで掲載したいと考えております。



この作品は、私の中にある鬱憤をぶつけるためのものです。

ガンダム世界において、色々と気になる点があり、個人的にこうだったらいいなという感じに変えていこうと考えています。

UC作品は大抵好きなのですが、世界情勢や一般人の考え方といったものがなんだかなーと思うのです。

出来るだけ違和感を少なくやっていこうとは考えていますが。

ベースは新ギレンのアムロシナリオとテム・レイシナリオを適当に組み合わせた上で更に勝手に解釈しています。


現実的でないと勝手に思っている点等はある程度介入していきたいと考えています。

いや、ニュータイプ関連は置いておいてですがw

あの辺りは現実的なんて言ってたらどうしようもないですしねw

後は、ロボットが戦うという意義等もあまり突っ込むとヤバイのは理解しております(汗

その当たりはさらっと触れて流す程度にしておきたいと思っております。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.