機動戦士ガンダム〜アムロになってフラグをぶち壊す〜
03
ユニバーサルセンチュリー79年10月1日。
アムロになって、僅か2週間ではあるが、今俺は北米のジオン軍を相手に転戦していた。
1個モビルスーツ小隊による転戦はかなり厳しい。
モビルスーツはガンキャノン3機のみ。
指揮車両としてのホバートラックと整備車両としての大型トラックが各1両。
そしてもう一両大型トラックがあり、3台に分乗する形で歩兵1個小隊20人が乗っている。
歩兵小隊と言っても実際の所場所や兵種によって人数は大きく違うので10〜50人となるらしい。
ただ、この歩兵小隊は工兵の訓練も積んでいるため、多少ならモビルスーツの整備もできる。
また、通信士官もその歩兵小隊からの派遣となる。
ランドラット小隊というらしい。
モビルスーツが出てきてから歩兵の命は紙のようなものだ、だが、いなければ色々と問題が起こる。
正直申し訳ない気持ち出いっぱいだった。
俺やカイが歩兵小隊に子供だと馬鹿にされるのも仕方ない。
まあ、ガンキャノンである程度活躍すれば声も収まるだろう。
そうそう、親父ことテム・レイはガンダム開発の功績を持って少佐となったらしい。
その報が届いたのはもう出発してからなのでお祝いをする事は出来なかったが。
そういえば、この世界はアニメ準拠なのか親父は元コロニー建築士で一年戦争の時軍に入ったようだ。
オリジンだとアナハイムの技術者ってことになってるから、面倒くさくなる所だった。
あそこは、サイアム・ビストのおかげで反連邦機運が強い。
彼は箱を使って出世しておきながら、連邦に対して反目している所があるからな。
この世界では可能な限りアナハイムにガンダムを作らせたくない。
ともあれ、俺たちの任務は北米の戦線を維持する事。
今は幾つかの遭遇戦においてザクやその派生を撃破しているくらいだ。
本格的に前線に出る前からこうでは、前線はかなり不味い事になっているだろう。
原作のようにホワイトベースで突っ込んでいるわけじゃないから、あまり派手な戦果は出せないかもしれないが。
俺の命に危険がない範囲で頑張るとするか。
「アムロ! 隊長がお呼びだぜ!」
「わかった!」
カイに呼び出され、設営されたテントの中から出る俺。
現在地はグアテマラとメキシコの境界線あたり。
有り体に言えばアメリカどころかその南のメキシコに入る所だ。
このあたりは、ジオン軍も乱立する少国家のせいで攻めきれていなかった。
そして、最近戦車を中心とし、試作段階のモビルスーツを加えた部隊が多数投入され戦線を押し上げている。
とはいえ、メキシコでの戦いは一進一退で、にわかモビルスーツ部隊は撃破される事も多い。
何せ、MSの運用においてはジオンに一日の長がある。
キャリフォルニアベースがジオンの手に落ちたのは3月11日の事、つまり半年以上地上で戦い続けているのだ。
ガンダムが出来たのが7月ごろらしい、実験段階とはいえ親父は妥協をしない人物だから一応その時点でも戦える資料をジャブローに送っている。
それも最初に運用したのは極東方面軍コジマ大隊。
7月末ごろから運用を始めたらしいが、ガンダムを作ろうと大量に仕入れたルナチタニウムを使い陸戦ガンダムと陸戦ジムを作った。
その数陸戦ガンダム20機前後、陸戦ジム20機前後とされている。
陸戦ガンダムはテストタイプガンダムの8号機まで作る際に出た規格落ちの部品を使って作られたらしく、あたりとハズレがあるそうだ。
陸戦ジムは逆にガンダムを作った工廠に残ったルナチタニウムをぶちち込んで作ったものらしく、陸戦ガンダムとそう変わらないとか。
ともあれ、そうした形で送られたデータを元に量産されたジムが北米戦線の要である。
RGM−79 前期量産型ジム前期型というやつだ。
前記量産の前記と後期で別れているのは、後期に入ったものがアニメで登場するジムだかららしい。
現在30機ほど投入されているが、まだコックピット周りのシステムが甘く、また戦闘システムも未完成。
それでも、スペック上ではザクUFを上回るため、戦線をどうにか膠着させているそうだ。
主力はあくまで戦車と戦闘機だが、相手のMSの足を止めるにはやはりMSが必要という事なのだろう。
「さて、わかっていると思うが、俺たちの目標はメキシコ戦線の維持。可能なら定期便の迎撃となっている」
「定期便?」
カイは不思議そうな顔で見る。
そりゃ知るわけ無いわな。
ジャブローでいたの、ほんの数日だしな。
「カイ、ジオンはジャブローに定期的に空爆をかけてくるんだよ」
「えっ、そんな事してたのか? 全く気が付かなかったが」
「ジャブローは基本的に地下深くに作られてるから、振動とかも外からはほとんどないんだよ」
「あーなるほど」
カイは納得したが、緊張感が抜けたのは否めない。
それに、エイガー隊長が睨んでいる。
俺は目を伏せてなんとか誤魔化すが、まあエイガー隊長はコホンと咳をして場の雰囲気を変えようとする。
「もういいか?」
「はい、わかりました」
「まあお前らは一週間ほどいただけだからな、わからなくても仕方ない」
「申し訳ありません!」
「ともあれ、定期便のほうは高空を飛んでいくからな、防ぐのはどちらかといえば戦闘機の仕事だ。
俺たちは戦線の維持、可能なら押上げを進める方向でいくしかないだろう」
「はい」
エイガー隊長はそこで一息つき、ガンキャノンを見る。
あれらは全部バーニア付きに改修が行われている、高機動型といえるほどではないが動きは段違いだ。
何せ、以前は遅い足で走る以外の移動方法がなかったのだから。
「今日中に前線に付いて、今押されているサリナ・クルスの奪還を進める。
あそこがあれば、船での補給が可能になる。
戦線への影響力は高いはずだ」
「了解しました!」
「りょうかい」
ここからサリナ・クルスまでは300km弱と言った所。
指揮車両等を含めても時速60kmで進めば5時間でつく。
昼頃には到着する計算だ。
途中で遭遇戦がなければだが。
そんな事を考えている間にも時間は進み、問題なく遠目に港が見える位置まで来ていた。
まあ、考えてみればパナマやコスタリカと違い、一か所を必ず通るような狭い場所ではないので当然かもしれない。
だが、サリナ・クルスには港とは別に海軍航空基地がある。
当然、ジオンに接収されており、定期便を行うガウやドップ等も置かれている。
どちらを優先すべきかはかなり重要な命題だろう。
「エイガー隊長! 意見具申します!」
「どうした?」
「このままいけば、港より前にサリナ・クルス航空基地を横切る事になります」
「そうなるな、だから大きく迂回する予定だ」
「はい、しかし、港の奪還に際してあの基地を放置すれば背後から襲われる可能性が高いかと」
「確かにな」
エイガー隊長は渋い顔をする。
命令はサリナ・クルスを奪還中の部隊を支援する事。
しかし、現状でも既に航空基地から攻撃を受けている可能性が高い。。
「だが急いで救出しなければ、友軍の被害が大きくなる可能性が高い」
「はい、そこで……」
俺が提案したのは、超長距離砲撃による、基地司令部の撃破及びガウの撃破である。
どちらも非常に目立つ位置にあるので、不可能ではないと思う。
ニュータイプ補正もあるなら、当たらなくはないはず。
エイガー隊長には囮として敵の目を引き付ける事も言っておく。
幸い、MSはそう多くないようだ、出て行って逆に包囲されるかは見つかる前にどこまで被害を拡大できるかによる。
司令部さえたたけば、暫くは混乱してまともに動けないはず。
それを突くべきだろう。
「無茶苦茶だな、確かに囮をするにもいいが。
港の方にいかなくてもいいのか?」
「はい、もちろん行きますが、射撃は一人いれば何とかなりますから」
「……本当に信用していいのか?」
「これでも戦績は残しています。一度だけでいいのでチャンスをください」
「……わかった、俺達は先行する。無理はするなよ」
「了解しました!」
エイガー隊長が受け入れてくれるかは賭けだったが、上手くいってなによりだ。
最前線と言っても、強いプレッシャーはない。
恐らく、名前ありの士官はいないのだろう。
一般人が悪いと言っているのではないが、成功率は上がったと言っていいだろう。
俺はガンキャノンで出撃する。
死にたくないのに危険な事を引き受ける自分はバカだと思う。
しかし、アクシズを押し返して消えるような真似をせずに済むようにするためには仕方ない。
出世しないといけないのだ、ジオンがイキって来ないようにするために。
「アムロ、ガンキャノン行きます!」
さて、このサリナ・クルス南から上がってくると、サリナ・クルスの手前に大きな湖がある。
スペリオール湖というのだが、恐らく検索しても見つけるのには時間がかかるだろう。
アメリカ五大湖の一つスペリオル湖と名前がかぶるらしく、そちらばかり出てくる。
このスペリオール湖は特徴的で、先ず海のすぐ近くである事。
内部で二重になっており、湖のほぼ中央を通れるという事だろう。
湖と海の間や湖の中央あありにも集落があったりする。
まあ、ジオンとの闘いで随分と減ったが。
とはいえ、どのルートを通っても海軍航空基地の横を抜けない限りサリナ・クルスには出られない。
どうしても遠回りするなら一度北に抜けて大回りで西側に回り込むしかない。
恐らく二、三日はロスする羽目になるだろう。
だが、狙撃をするなら非常に向いていると言える。
集落跡地には当然建物も多く、それなりに高い所もある。
それに、ほぼ全方向に開けている立地を考えれば、主要の建物やガウが見える配置もあるはずである。
幸い、部隊は二日は遅くなるわけだから、調べる時間はある。
ついでに言えば、連邦のサリナ・クルス港奪還部隊が航空基地の目を引いてくれている。
この状態なら、可能なはずだ。
「お〜見える見える」
ガンキャノンのカメラを最大望遠にして見た所、資料にあった空軍基地の主要部分が見えている。
周囲に鉄柵やモビルスーツも配置されているようだ。
そして、ガウも2機ほど停めてある。
この状態なら、ガンキャノンの両肩のキャノン砲でもギリギリ届くだろう。
重力による弾着補正をコンピューターの試算で見る。
ううむ、風が読みきれないな。
両肩のキャノンは最大射程30kmだが、最大射程ではブレが大きすぎる。
宇宙なら、重力偏差と反動にさえ気をつければいいが、地上では違う。
重力偏差や反動はもちろんのこと、空気抵抗による減速や気流による射程のブレまで見なくてはならない。
だから、宇宙と地上では命中率に差が出る。
しかし、何回も撃てば当然相手は気がつくし、反撃もする。
モビルスーツにドップ、ガウによる連携攻撃なんか受けたら流石にどうしようもない。
つまり、全て1発で決めないといけない。
だが当然30km先までの気流を読む術なんて人間にはない。
だから、そこはセンサーに頼るしかないんだが。
アクティブセンサーは基地に察知されてしまうためできない。
パッシブだと正確には読み取りづらい。
しかし、25km以上近づこうとすればビル群の影から出るためMSを晒して見せる事になってしまう。
一撃で基地中枢を破壊出来れば、その後は接近しながら攻撃という手もある。
基地は100mも幅があるが、司令部があるのはアンテナの直下。
そこに当てないと基地機能は維持される可能性がある。
「プロゴルファー猿みたいな真似をする必要があるわけか。とりあえずやってみるか」
俺は、ニュータイプ能力を可能な限り発動する。
気流を読み取る事が出来るかどうかは賭けだったが、なんとなくで発射してみた。
「当たれぇ!」
ズドンッという音とともに、ガンキャノンの砲弾は司令部があると思われる場所に直撃した。
アニメにおいてニュータイプが地上とかでも時々やってたのを覚えていたので、やってみたのだがいけたようだ。
ニュータイプ能力には気流等を読む能力もあるのだろうか?
「後は、向こうが立て直す前に可能な限り破壊する!」
俺は、ガンキャノンのバーニアをふかせながら接近し、大物であるガウに集中的に砲撃をした。
2機のガウは何も出来ずに爆発炎上。
俺は残ったMSやドップに攻撃をしかける。
防衛についていたMSは3機だけだったようで、反撃をしようとしていたが射程の差で押し切った。
ドップは12機程いたため、半数近く地上で燃えるゴミにしたものの、残りは飛び立った。
キャノン砲では部が悪い、ビームライフルを構え、残るドップを迎撃する。
「地上でのビームライフルは減衰が大きいから射程は短いがな!」
ビームライフルで向かってくるドップを撃墜していく。
直進するため弾道計算のいらないビーム兵器は照準に時間がかからず、更に弾速(?)も早いため使い勝手がいい。
更にはガンキャノンの装甲はガンダムより厚いため向こうのバルカン砲ではほとんど傷がつかない。
ドップ狩りをするには理想的な状況だった、3機ほど逃したが、おおよそ完全勝利だった。
「後は……歩兵戦力か、頭が痛いな」
動いているのも止まっているのもマゼラアタックは砲塔から先に潰しておく。
全部で6両程度だ。
ビームライフルを1発受ければ面白いように爆発するし、近くなら踏みつぶす。
飛び上がったマゼラヘッドは少数だが、ビームライフルで貫いた。
歩兵のほうは、寄って来たのは踏みつぶす行動に出たが、基本無視した。
携帯用ならバズーカでもロケランでもルナチタニウムのガンキャノンに効くわけもないからな。
MS部隊がメインの基地だった場合こうはいかなかっただろう。
「これは、連絡入れといたほうがいいな」
これで俺もエースというか、大量殺戮者というかの仲間入りか。
仕方がないとはいえ、死んでいく人間の悲鳴が聞こえるのは少し辛いな。
「こちらアルファツー、丘ネズミ応答願います」
『こちら丘ねずみだ、アルファツー問題でもあったか?』
「いえ、お使いが終わったので報告をと思いまして」
『終わった? お前の任務は我々がお仲間と合流するまで奴(やっこ)さんのの目をそらす事だったはずだが?』
通信は傍受される可能性があるため色々とおかしな会話となるが仕方ない。
こっちのは任務が終わった報告で、向こうは任務内容から無理だろというお話だ。
とりあえずランドラット本隊が味方のMS部隊と合流するまで敵の目を引き付けるのが俺の役目となっている。
「いやー思いの他乗ってしまって、奴さんは疲れて寝てます」
『はっ?』
「今お祭り会場で立っているのはボクだけなんです」
『……ちょっと待て! 調べてみる!』
とりあえず基地内の頑丈そうなビルに上ってガンキャノンの手を振って合図をする。
まあ、見えているかはわからないため、降り続ける事になるが。
10分ほど降り続けていると通信があった。
『そのまま待機してろ! 急いで向かう!』
「お待ちしてます」
ザクキャノンやザクタンク等がいなかったのが勝因だろうか。
普通のザクマシンガンの射程は速度域から地上では100m程度と言われていた。
それでは、ヒートホークで殴り掛かるほうがマシなわけで流石に改修を受けた。
だが、地上用ザクマシンガンは今でも2〜3km飛ばすのがやっとらしい。
後に、ザクマシンガンよりバズーカを使うMSが増える理由だろうか。
ビームライフルが使えるようになるまでだが。
1時間ほどして、ランドラット小隊の車両が到着したようだ。
見えているといっても警戒しながらだからそれほど早くは動けなかったんだろう。
それから、何度か偵察をして、今の所は安全だと判断したのだろう。
指揮車両であるホバートラックに来るように言われた。
「アムロ・レイ曹長只今戻りました!」
「あー、よくやったアムロ曹長。いや、本当にどうやったんだ?」
「可能な限り遠距離から狙い撃っただけです」
「……因みにどれくらいの距離から?」
「多分26kmくらい先から最初に基地司令部を攻撃しました」
「なるほど、司令部を先に無力化したのか、しかしガウ等は?」
「たまたま、人が乗っていなかったのでしょう。動き出す前に可能な限り接近しながら殲滅しました」
「ザク三機は?」
「ザクマシンガンは射程が短いですから、近づく前に倒しました」
「ドップやマゼラアタックは?」
「動き出す前に半数程度は撃破しました、残った敵はビームライフルの連射で」
「……凄いな」
「ただ、歩兵部隊を完全に壊滅させたわけではありません。
大部分は撤退したものと思いますが、ここで息を潜めている者もいるかもしれません」
「その辺は大丈夫だ。こちらにも歩兵部隊はいるしな、それにここの留まるつもりもない」
「それならいいのですが」
まあ、1機の戦果としては頭おかしいのはわかる。
とはいえ、原作のアムロを見ているとそれほどでもない気がするから不思議だ。
まあ、戦果はすごい事になってそうだが。
「ともあれ、単独での基地撃破だ、作戦が終わり次第お前の昇進申請を送っておく」
「ありがとうございます!」
上手く行けばこれで少尉になれる。
戦時任官だから、どうせ戦後になったら士官学校に通わないとそれ以上は上がらないんだが。
ただ、原作では大尉まで飛び級していた。
理由はわかりきっている、それくらい上げないと不味い活躍をしたからだ。
だが、軍人ではなく軍属だったせいで制限も多かったし、信用されていなかった。
だから俺は出来るだけ軍上層部、特に良さそうな上官を見つけて媚を売っておく必要がある。
エイガー隊長も悪い人間ではないから相応に従うが、最低でも将官でないと俺の出世を早くはしてくれない。
最終的には中将クラスまで行きたいと考えている。
そうでないと、戦局を左右する事は出来ないだろうから。
「さて、我々はこのままサリナ・クルス港奪還部隊に合流する予定だ。
お前の活躍によって時間短縮が出来た事はありがたい、だが、休憩を取るわけにもいかない」
「了解しました!」
ちなみにカイは今ガンキャノンで警戒をしている。
だから、この場にいるのはエイガー隊長と俺とホバートラックの要員だけだ。
彼らも今回の戦果を見て、俺を見る目は変わったようだ。
ただの子供からなんだこいつ?くらいに。
仕方のない話だが、戦果があるだけで信用は得られない。
これからも頑張ろう。
「班長ガンキャノンの整備ありがとうございます!」
「なぁに、内部に傷は付けてないからな。砲塔周りの掃除とコーティング、関節のゴミ取りくらいだ」
「大きな傷は付けていないつもりですが、思ったより損傷が少なくてよかったです」
「まー流石に装甲にはそれなりに傷入ってるがな、こういうのを丸ごと変えるには工廠でないとな」
「ははは……」
一通りチェックと一部整備を完了したガンキャノンに乗り込む。
エイガー隊長は既に壊滅している町中を突き進む。
俺とカイがそれに続き、ホバートラック等の車両も少し距離を置いて付いてくる。
「しかし、都市部がこうもやられているとは……」
『それは一概にジオンのせいとも言えないだろうな』
「え?」
『まあ、一般市民ある程度は避難していると思うが、ゲリラ戦をしたんだろう』
「……」
『ジオンの支配を受け入れた所は大きな被害は出ていないが、連邦が抵抗した所は被害が大きくなった。
何せザクに対抗出来るものが連邦にはなかったからな』
「確かに……」
『じゃあ、さっさと降伏すりゃよかったんじゃ?』
カイ……また余計な事を。
言われなくてもわかるだろうに……。
斜に構えるのは戦後にしてけと言っておくべきだろうか。
『抵抗しなければ確かに一般市民は助かっただろうな。
だが、戦争で負けた後の生活がどうなるかはわかるか?』
『……いや』
『言っておくが、ジオンに復興資金なんてないぞ?
あいつらは全ての資金とマンパワーを戦争に注ぎ込んでいる。
3億人で今残っている人類全てに戦いを挑んでいるんだ、そうするしかない』
『それは……』
『それに、資源や資金を可能な限り吸い上げで戦争継続のために使うわけだ。
当然臨時徴収くらいはすることになるだろうよ』
『……』
『降伏すれば生活を脅かされないというのは幻想だ』
これには少しばかり異論がある、確かにジオンが善政を敷いたのかと言われると疑問だ。
しかし、北米は坊やことガルマが占領司令官だ。
彼は、資産家達から金を出させて対応するという荒業をやっている。
イセリナ・エッシェンバッハとの恋愛の結果とはいえ、流石といえるだろう。
資産家とのパイプをつなぎ、ジオンが勝った後の市場を餌に金を引き出している。
ニューヤーク周辺、つまりアメリカ東海岸だけとはいえ一般人の生活をある程度保証してみせたのだ。
イセリナの父は元ニューヤーク市長であったのでその協力も噂されていたが、実のところ彼はジオン嫌いだったらしい。
そのため、ガルマはイセリナと結婚するためならジオンを辞めてもいいとすら言っている。
有り体に言えば、アホばっかりとなるわけだが。
イセリナは箱入りだったのだろう、何せ侵略者との恋愛だという意識がない。
ガルマもどうせ戦後にってことだったんだろうが、それが出来るはずもない。
したら、ジオンそのものが揺らぎかねないだろう。
父親はガルマを利用してニューヤークを守りながら、最終的にガルマを捕虜にでもすればかなりの成果になっただろう。
感情まかせで結果がついてこない典型だ。
とはいえ、以下の事情からニューヤーク周辺はわりと平和にやっているらしい。
『見えてきたぞ! サリナ・クルス奪還部隊……」
そこは……既に戦場だった……。
あとがき
話が途中で途切れてしまいました、申し訳ない。
実際、余計な説明入れなければ十分入った気もするんですがw
ついつい雑学に夢中になってしまってw
ともあれ、次回は港付近が戦場となります。
よろしければお付き合いくださいね!
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