なけなしの核ミサイルを放ってジャブローに迎撃行動をとらせる事に成功した。
その後、更に各種防衛兵器が出撃してきているので潜入部隊が今突入している頃だろう。
以前からコツコツ部品を下して組み立てさせたザクやドップ、マゼラアタック等の兵器を可能な限り投入する。
何せ、時間がたてば意識不明になっている者たちも回復する恐れがある。
ギレンにとって時間は敵だった。
「迎撃ミサイル、レーザー、TINコッド等の経路は塞がれており地下へのつながりは在りませんでしたが、
61式の出撃経路からジャブロー基地の入り口が分かりました」
「突入を始めよ、敵に時間を与えてはならない」
「っ上空からコロンブス!? 大気圏突入してきたのか!?」
「何ッ!?」
核ミサイルは残り3発、正直言ってこれだけではジャブローを壊滅させられない。
だが、ジャブローにも核ミサイルを貯蓄したサイロがあるはずだ。
それに対して撃ちこめば確実にジャブローを壊滅させられる。
そのために残していたミサイルだが、切り替える事にした。
追いついてきたなら恐らく、ヤシマ提督であろうからだ。
「残存する核ミサイルをコロンブスに叩き込め!」
「はっ!」
試作型ドップを展開し、敵の艦載機の目を引いてその間に核ミサイルを放つ。
当然、複数の通常型ミサイルの中に紛れさせて放った以上迎撃は困難なはずであった。
しかし、巨大な戦闘機が恐ろしい正確さで核ミサイルを迎撃、結果としてコロンブスを効果範囲に入れる事は出来なかった。
迎撃した巨大戦闘機は核ミサイルの電磁波の影響下にあるはずだがそのままミサイル迎撃やドップの迎撃を行う。
もともと核ミサイルから放射される電磁波等に対する防御を組み込んでいる?
あれはサイド壊滅作戦の時にもいたと聞いている。
つまり最初から我らが核を使う事を想定していたという事だろう。
奴は何手先まで読んでいる?
だが、そのせいでドップやミサイルにかかり切りになっている。
コロンブスからブースター付きが現れる。
こちらにもう核が無い事を見抜いたか?
だが都合がいい、今のうちに戦力をジャブローに送り込む事にする。
後はジャブローが壊滅するのが速いか、我らが倒されるのが速いかだ。
どちらにしろ公国さえ残ればそれでいい。
「我らも出るぞ、仕込みは終わっているか?」
「はっ、可能な限りの物はしかけました」
「ならば我らが突入する時にやっておけ」
「了解しました!」
ギレンは組み立て型のザク20機を引き連れジャブローに突入した。
MS隊の指揮はノイエン・ビッター大佐、デラーズからの推薦で採用された。
戦闘指揮もMSの操縦も一流であるという触れ込みであった。
また、彼の子飼いのパイロットもつれてきている。
他にもエース候補だというエリク・ブランケとアイロス・バーデ等もいる。
ギレンは彼らに生きて帰れる見込みが薄い事を伝えてあった。
だが元よりそれで揺らぐ様な輩は選ばれていない、ある意味狂信者ばかりである。
だが、これらがギレンに残された最後の兵力である。
一戦やれるかどうか、心もとないのも事実であった。
ギレンは皮肉げに笑いそして展望を示す。
全てを終わらせる一手を。
本来なら一年戦争と呼ばれるはずだった戦争の最後の幕が切って落とされた。
機動戦士ガンダム〜転生者のコロニー戦記〜
第三十四話 地上
どうにかコロンブスの体制を元に戻した時には既に戦闘は始まっていた。
しかし、いつの間にこんな大量の戦力を地球に降下させていたんだ?
ドップにマゼラアタック、何機かザクもいる。
先ほどは核攻撃も使われていた。
核爆発で使い物にならなくなった電化製品は多い。
幸い戦力の方は核に対抗するためミノフスキー粒子でコーティングしている。
ミノフスキー粒子は可視光線や赤外線等を除くあらゆる波長を通さないので電磁波防衛にはもってこいだ。
元よりビームシールド関係で核を防ぐ方法をいろいろ考えていたので、その一つを応用してみたのだ。
「しかし、奴らの戦力はなんなんだ?
明らかに、我々よりも戦力が多い、しかしジオンが艦隊を率いて降下したなんて話は聞いていない」
「恐らくですが、あのモビルスーツ、ザクでしたか。
あれは部品ごとに分かれて入って来ていたようです。
つまり、地上の工作員に送っていたという風に考えれば辻褄は合うかと」
「戦闘機や戦車は?」
「地上にある拠点で生産されたものではないかと思います」
「……」
なるほどな。
確かにそうかもしれない。
しかし、だとすれば連邦軍の目が節穴だったという事になる。
いや、違うか恐らくは政治家が金で抱き込まれた結果か。
いつも思うのは、ジオンのこの資金力や技術力はあり得ない。
ミノフスキー粒子前提とはいえ戦艦や巡洋艦のスペックは既に連邦を凌駕している。
MSやMAに至っては作り出すためにどれくらい金をかけたのかわからない。
ジオン脅威の科学力とか言って誤魔化されているが、実際の所連邦との国力差30倍と言うのは嘘臭い。
その証拠にコロニー公社を介さずに開発された隕石コロニーやら要塞やらが大量にある。
更には艦艇数に関しても連邦の5分の1以上はあるはず。
大半が仮装巡洋艦のムサイだとしても国力差を考えればありえないレベルだろう。
だが、実際に問題なのはその情報隠蔽能力の方なのだろう。
国力差は人口を考えれば今の日本と他の全ての国との戦いと言っていい。
そんな状況で情報戦で勝つにはスパイ等も重要だが、それ以上に技術格差が圧倒的でなければどうしようもない。
連邦のスパイがジオンに入り込んでいたのはレビル奪還時に証明されている。
つまり、そんな状況でも技術も作戦も分からなかったという事だ。
それが現実になったのが今の状況だろう。
これまでの作戦をことごとく潰したにもかかわらず、ギレンは今連邦の軍事力を壊滅させる一手を叩きこもうとしている。
それもどこから湧いてきたのか不明な多数の地球拠点から放たれる核ミサイルや各種地上兵器。
更には聞いた事もないサイコミュ兵器等も出してきている。
「奴らの手はどれだけ伸びている……そして、どこからそんな金を捻出している。
奴らの言う圧制による貧困はどこに行った。
全く、これだから独裁国家は……」
「本当ですな、地球連邦は世界全ての国家の連合体だったはず。
そんな我らと互角以上にわたり合う兵器、悪夢でしょう。
奴らの総人口1億5千万が全てテロリストだとしても驚きませんよ」
「ははは……、まあめげても相手が得するだけだ。
そろそろこちらも地上すれすれまで降りてきた。
アサルト・アーマーを降下させろ」
「了解」
アサルト・アーマーつまりAT3mの小型MS。
その軽さからパラシュート降下が可能なのもこの機体の強みだ。
扱いは、MSのような起動兵器ではなく、歩兵の強化服扱いである。
何せこの機体は一般宅は流石に無理ではあるが、軍事拠点なら大抵内部に入り込んで戦う事が可能だ。
その分出力は低く、持ち上げられるものにも限界はあるものの、人間には不可能な速度で動きまた火力も十分備えている。
もっともボトムズに出て来るそれと同じ様に足の能力は基本的にバランサーとしての役目がメインだ。
歩く事は出来るが、走るのは足元の履帯つまり無限軌道によって補われる。
つまり高速移動や武装選択が可能な歩兵戦車とでもいうべきか。
ボトムズにおいてはこれが戦争における地上戦力の全てだったため損耗率も酷かったが、ここでは違う。
対抗戦力にこの機体はないし、主戦場でMSと正面から戦う意味も無い。
主な仕事はコロニー内や市街地、基地内と言った遮蔽物の多い所での奇襲がメインだ。
火力が低いと言っても、携行武器のミサイルランチャーやバズーカは十分MSにも通用する。
倒すためには急所に当てなければ難しいとはいえ、十分と言えるだろう。
『AT全機降下完了』
「ジャブロー基地への突入手順は既に通達している通りだ。
突入したと思われる敵軍を叩いてほしい」
『了解、突入を開始する』
投入されるATは30機、コロンブスは運用が50機までの様なので普通なら厳しいが、あくまでMSのサイズ感だ。
MS1機のスペースでATは10機格納出来る。
しかし、ラル中佐とその小隊の面々はセイラ嬢の専属護衛だ。
よって今回はシャングリラコロニー防衛で好成績だった奴らを引き抜いてきた。
そうしたらやばめの名前が並んでいる。
キリコ・キュービー少尉にポル・ポタリア少尉、ル・シャッコ曹長、ブリ・キデーラ軍曹
グレゴルー・ガロッシュ曹長、バイマン・ハガード伍長、ムーザ・メリメ伍長。
ボトムズにおけるクレメン編のメンバーと旧レッドショルダーの面々て……。
この世界ガンダムじゃなかった?(汗)
ともあれ頼りになるメンバーなのは事実だ。
むしろこのままギレンを叩いてくれないものかとすら思うが、流石に無責任というものだろう。
彼らが実際に能力を発揮してくれるかもわからないわけだしな。
「オペレーター、戦闘機隊の状況はどうなっている?」
「はい、Gフォートレス隊はミサイルを迎撃しながらMSや戦車を発見次第攻撃を仕掛けています。
また、セイバーブースター部隊は敵戦闘機に対し迎撃戦闘を行っています」
「そうか、動きがあればまた報告してほしい」
「了解しました」
迎撃戦闘は今の所問題なさそうだ。
出来れば敵の拠点を叩いてしまいたいが……。
恐らく、そこまで近い場所にある拠点は無いだろう。
そうでなければ、流石にジャブローのレーダー網にかかるだろうからだ。
ミノフスキー粒子で隠れるにしても減衰もあるので妨害を永久に続ける事が出来る訳ではない。
レーダー妨害が出来る範囲は半径100km前後、この範囲の形を見れば一目瞭然となる。
「ミノフスキー粒子の影響範囲が分かるか?」
「南米中央部を囲むような形で展開されている様です」
「まだらになっている所はあるのか?」
「はい、セイバーブースター第四小隊が担当する南部側はほとんどレーダー妨害が無いようです。
それから同第二正体担当の西部でも減衰はあるものの通信が通ります」
「……ミノフスキー粒子の展開は半径100kmが限度だ。
切れ目があるという事は噴出点から100kmを超える場所だという事。
もちろん複数の噴出点がある可能性が高いが、絞り込む事が出来れば敵拠点を叩けるはずだ」
「なるほど、精査してみます!」
先ずはこれでよし、恐らくそう時間はかからないだろう。
それよりも問題は、ジャブローに潜入しただろう部隊だ。
ギレンもここまでやったという事はなりふり構っていない。
恐らく、死んでも連邦軍の中枢を叩き潰したいと考えているはずだ。
こちら側もジャブロー内の迎撃に参加するためにATを送り込んだが、ザクを相手に勝てる保障はない。
あれがMSに勝つためには、罠を張って待つか、一体に対して複数で取り囲む必要がある。
何せ火力も耐久力もザクの方が圧倒的に上だ、地上での走破性はATに軍配が上がるだろうがそれだけでは勝てない。
キルレシオに関しても、まだ一度しか実戦経験が無いという点が痛い。
実質的なそれは解らないとしか言えない、恐らくはザク1機に対して3〜5機必要になるだろう。
まあ、そういうのを覆しそうなのがいて有難い限りではあるが。
同時に相手側にエースがいないとは言い切れない。
「ジャブローへの呼びかけは続けているか?」
「はい、しかしミノフスキー粒子濃度が高すぎて、基地内に入って直接通信にでもしない限り繋がらないでしょう」
「それは出来ない」
オペレーターの提案を否定するのは少し申し訳ないが、実際それが一番不味い。
現状ジャブローの入り口はほぼ封鎖状態にある。
一応いくつかの入り口が開いている様ではあるが、深部には到達できない仕様だ。
ダミーは回避できても、実際に基地機能があると幹部がいる最終防衛ラインに近づける様に見えるだろう。
だが、実際には、迎撃基地は深部へ直接つながってはいない。
アニメにおいてジャブローに対する侵入が海からだったのは、複雑な基地機能を回避して深部に突入するためだ。
潜水艦を持っておらず水陸両用MSが使えない以上、ギレンは地上からジャブロー基地にアクセスするしかない。
だが、それはかなりの難易度だ、ダミーに迎撃専用基地に遠隔操作の兵器群等執拗なまでの防御システムが生きている。
だが当然、コロンブスを基地に入れるとなれば深部につながる基地になる。
何せ戦艦を整備できるような場所は流石に多くはない。
「コロンブスが着陸すれば、そこにめがけて全戦力を投入してくるだろう」
「敵の目的地、と言う事ですか」
「その通りだ、今開いている基地の入り口等から行ける範囲ならまだ問題はない。
核をそこで爆発させても、中枢には届かないだろう。
だが、宇宙船ドックは違う」
「なるほど、了解しました」
正直言って、ギレンを殺すならあえて着陸し、全戦力で指揮車両を叩くという手もある。
だが、ギレンの切り札がサイコミュによる精神攻撃と核だけだと考えるのは流石に甘いだろう。
特にこの艦のクルー達にはサイコミュ攻撃はほぼ効かないため、核攻撃くらいしか手がない。
しかし、相手の核もそろそろ弾切れのはずだ。
核バズーカの弾頭ならまだあるだろうが、弾道弾となれば今はもう作られていない以上、じり貧なのは間違いない。
「敵部隊の迎撃が終わった隊から、敵基地の発見及び奇襲攻撃を敢行してくれ」
『各小隊に次ぐ、コロンブスの周辺が確保出来次第、周辺領域に進出、敵基地の捜索を始めてください』
正直、これだけではまだ不安はぬぐえない。
だが、現状では地道に敵を潰していくのが一番の嫌がらせになる。
ギレンを確保ないし射殺するのは最後の最後だ。
空を巨大な戦闘機が飛んでいく。
ジオンのドップやマゼラアタックを蹴散らしながら。
その姿は余裕すら感じられた。
「ちっ、雑魚ばっかりかよ」
『戦闘が楽なのだからそれに越した事はないだろう?』
「年より臭い事言ってんじゃねえよ。前の戦場じゃ楽しい敵がいたじゃねーか」
『戦場に遊びを持ち込むな』
「ちっ」
3機編成を取っているもののヤザンとブランとベンの三人は馬が合うとは言えない。
ヤザンはトリガーハッピーな傾向があり、ブランは堅実派でベンはブランと仲がいい。
結果としてヤザンのブレーキとして機能している。
『またミサイルが飛んできているぞ!』
「核ミサイルはもう無い様だな。単なるいやがらせか」
『それでもコロンブスに行かせる訳にはいくまい』
「出元を叩く許可は出ていたよな?」
『わかったのか?』
「当然!」
ヤザンはニヤリと口元をゆがめ、飛び出していく。
ブランとベンは相変わらずだなと少し呆れながらついていく。
ヤザンは感に優れたところがあったが、サイコミュ攻撃の方の影響は無い様子だった。
ミサイルの発射ポイントも早々に見つけメガ粒子砲の餌食としている。
ミノフスキー粒子の噴出も減る事となる。
「基地はこれだけじゃないな」
『ミノフスキー粒子濃度が薄まったのは北西方向だけのようだ』
『後3つくらいはありそうだな』
「めんどくせえ……」
ヤザンにとってこういう作業感の強い戦闘は好みではなかった。
だが、仕事である以上手を抜く事はない。
ブランもベンもその辺りは信用していた。
『ならば我らで全ての基地を叩くか?』
「そうだな、こんな仕事さっさと終わらせるに限る」
事実として、ギレンも基地にそこまでのリソースを割く事は出来なかった。
あくまで、元々あったものの再利用でしかない。
だが、一つだけ例外があった。
「何だあのデカブツ?」
『ルナタンクだったか、宇宙で使われていたものに似ているな』
「ケッ再利用品かよ。だがあれはそこそこ出来る様だぜ」
『何っ!?』
それはアッザムに増槽を施し速度だけは上げたような代物だった。
もともと計画されていたアッザムが明らかにGフォートレスに敵わないための改修であった。
セイバーブースター後ある意味同じ思想である。
「しかも3対3だ。面白くなってきたじゃねーか!」
『戦場で遊ぶな! 敵は小回りが利くタイプには見えない。振り回していくぞ!』
「当たり前だろ!」
そして彼らも速度を上げて敵にぶつかって行く。
空戦としては最大の相手の登場に3人とも高ぶっているのは事実であった。
あとがき
最後にちょろっとだけヤザンチームの状況をお見せしました。
実際の空戦とかを描写するとボリュームが一気に増えるのでさらっとですが。
考えてみると、主人公であるノゾム・ヤシマは戦闘機に乗ったり、肉弾戦をしたりはしません。
となるとギレンとの直接対決も難しい訳で、どうするべきかと考えています。
まさか、アムロとシャアの様にフェンシングするわけにもいきませんしね(汗)
何とか盛り上げていけるといいんですが……。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m