ディケイドの世界


『いよいよ始まる、ライダートーナメント!!絶大なる戦いの果て、最強のライダーが決まるぅー!!』

野球場やサッカー場として使われていた巨大ドームに轟き、何処から喋ってるのかさえわからない実況役の声。

「変身」

≪KAMEN RIDE…DEROAD≫

そんな場所で、スーツを着崩した一人の青年・砕谷廻が一枚のライダーカードを装着されたベルトのバックルに装填し、ベルトを起動させると、彼の身体は瞬く間に屈強な戦士の姿となる。

『最強にして最悪の魔王!仮面ライダーディロード!!』

実況はディロードの基本スペックが映ったモニターに合わせての紹介を行う。

『その、大戦相手は……!?』

すると次元の壁が現れ、一人の戦士(ライダー)が現れる。

『バッタの遺伝子により改造され、大自然の力を受けて復活した…!仮面ライダーZO!!』

「仮面ライダー…ZO!」

名乗りポーズをあげるZO。
ディロードもZOから湧き起こる闘志の熱さを感じ取り、二人のライダーは互いに駆けていき、クロスカウンターを行った瞬間、次元の壁によって二人は広い工場の内部に飛ばされる。

しかし、そんな気にすることもなく、二人は戦いを続ける。

「トリャ!」

ZOはディロードの身体を掴むと、そのままライダージャンプして、

「ライダーチョップ!!」

ディロードの肩に手刀をいれた。

「……やるじゃねぇか」

ディロードはそういって、KRをディロードライバーに装填。

≪KAMEN RIDE…GRAIZ≫

ディロードはイナゴを模した赤い複眼に二本の触覚、黒いボディを備えたDグライズにカメンライド。

≪ATTACK RIDE…CLOCK UP≫

さらにARの力で超高速移動(クロックアップ)を使用。

「さっきの御返しだ」

――バギ!バギ!――

何発かキツイ一撃を食らわせてクロックアップからクロックオーバーに移行する。

≪FINAL ATTACKRIDE…G・G・G・GRAIZ≫

Dグライズの腕にタキオン粒子エネルギーが伝達されていく。

「ライダーパンチ」
「ッ!ライダーパンチ!」

技名を耳にしたZOはすぐさま対抗して右拳を繰り出す。

――ドガァーーン!!――

激しい音、
拳と拳がぶつかり合う音。
一見引き分けかと思いきや…。

「ライダーキック」
「ッ!?」

――ドゥガァァァン!!――

ライダーパンチ同士がぶつかった時以上に鈍々しい音だった。

「うあああぁぁぁぁぁ!!!!」

必殺の二手目、ライダーキックの直撃を受けたZOが吹っ飛ばされながら次元の壁のなかに放り込まれた。

『この勝負、二段構えの必殺技で迎え撃ったディロードの勝利!』

実況は高々とディロードの勝利を告げる。

しかし、何故ディロード……いや、何故仮面ライダー達がこのようなバトルトーナメントに臨んでいるのか。

それは門矢士(ディケイド)と大きく関わり、彼にとっての運命を大きく変えた出来事から始まる。






*****

三日前。

「この世界は一体どんなのかしら?」
「さあ?」

流姫と信彦がそういっていると、士が帰ってきた。

「見てくれ、この世界で撮った写真だ」
「またピンボケ写真ですか?」

士のカメラマンとしての壊滅的な腕を最もよくしる夏海がそういっても、士の表情には自身しかない。

「どれどれ……へぇー、珍しくちゃんと撮れてるじゃん」
「だろ?」

ユウスケがほめると、士はニヤリと笑う。

「ということはまさかここ、士君の世界?」
「……背景ロールにあるこの家に行けばなにかわかるかもな」
「そういえば、この家の写真、どっかに飾ってあったな」

廻が家のことを話題にすると、栄次郎は写真があるといった。

『あー!それならこっちィ♪』

するとキバーラが廊下に出て額縁で飾られた白黒写真を指さす。
最も、彼女に指があるかどうかは知らんが。

『こっこよ〜♪』

写真には後ろ姿の女性と、それに向き合うコートを着た男の姿がある。

「誰なんでしょうか?」
「これ、士のコートと同じじゃないか?」
「確かに、同じ物のようね」

すると士はコートのポケットから昭和時代に使われていた旧い型の鍵を取り出す。
写真を再び見た士はハッとなり、また背景ロールへ。

「士、やはりこの世界は…」
「ああ、俺はこの家をしっている。…それだけじゃない、庭の風景や近くにある橋、近所の風景まで…」

「ディケイドの世界」

士の蘇りつつある記憶。
廻は此処がまぎれもなく”ディケイドの世界”であることを直感した。

「いってみよう!」
「はい。行けばなにかわかるかもしれません」
「………」





*****

こうして皆は士の案内に従い、各々のバイクを走らせてその屋敷に向かう。

そして、たどりついた屋敷の玄関は…写真のそれと寸分の違いもなかった。

士は鍵をとりだし、恐る恐る鍵穴に近づけるも、なぜか直前で手が止まる。

「どうしたんですか?」

夏海の問いに答えず、士は鍵を穴に差し込み、扉を開けた。

屋敷のなかは、穏やかで静けさのあるものだった。

――♪〜〜?〜〜〜?〜〜〜――

一際広い部屋に入ると、綺麗なピアノの音がきこえてくる。

「……このピアノの音、なんだか悲しい旋律…」

流姫はそう呟く。

「上か。この屋敷の住人がいるのは」
「そう、ね。士の親しい人物かもしれないわ」

一行は上の階へ昇り、さらに続く最上階への階段を昇った。

ピアノの音がきこえてくる最上階は床も壁も純白で、汚れ一つ見当たらない。
そして、ピアノを弾く一人の少女もまた、白い服をきている。

「誰?」

少女は演奏を中断して廻達を見る。

「……」
「…お兄ちゃん」

ハッキリと士の眼をみた少女の発言。

「帰ってきてくれたのね!お兄ちゃん!!」

少女は士に抱き着く。
しかし、記憶喪失となった士はどう反応すればいいのか困惑する。

「俺はお前の兄貴なのか?」
「そうだよ。なんでそんなこと聞くの?」

問い返されると、士は眼を背ける。

仕方なく、廻達が事情を説明した。
士の妹・門矢小夜はそれを聴いて呆然となり、士本人もベランダでただただ外の風景をながめている。

「俺達がいっても、なんの慰めにもならないけど…。士は全ての記憶を失くしてしまっているんだ」
「だから、今は自分のこともこの世界のことも憶えていないんだ」

ユウスケと信彦が説明する。

「記憶が?」
「別に、小夜ちゃんのことだけ忘れちゃったわけじゃないんですよ」
「少し虚しいけどね」

「お兄ちゃん、どうしてそんなことに?」
「……わからない」

士は一言だけ答えると、部屋のテーブルに置かれた物をてにとる。

「それっ……お兄ちゃんが、お父さんから貰ったカメラ」

もう数十年もの年季の入ったその旧式カメラをまじまじと見る士。

「ここに俺達の両親がいるのか?」
「お父さんとお母さんは、十年も前に………死んじゃったよ。………そして、一年前」

小夜は一年前、士が旅立った日を思い返す。




*****

「小夜、独りぼっちじゃ寂しい」
「心配するな。直ぐに戻る。お土産に、写真を撮って来る」
「お兄ちゃん!」
「………」
「待ってる」
「……じゃあ、いってくる」





*****

「お兄ちゃんは帰ってこなかった、ずーっと…」
「「「「「「………」」」」」」

重苦しい雰囲気を、

「小夜様」

一人の男が破った。

「お客様ですか?」

執事風の男は、士をみて眼の色を変えた。

「士さん…!?いつ御戻りになられたのですか?」
「……」





*****

「そうだったんですか。…士さんは……記憶を…」
「俺のいない間、妹の面倒をみてくれたそうだな」
「当然のことをしたまでです。それよりも、小夜様がどれほど寂しい思いをされたか……」

沈黙に閉ざされた雰囲気で、信彦は何故かその執事を不審がっていた。

「どうした信彦?」
「いや、あの執事さん。なんだか昔の僕と似ている気がして…」

「あの、あれ見て下さい!」

夏海が指さした方向では、夏海(かのじょ)の世界同様の現象がおきていた。

「この世界でも、滅びの現象が起きているのか」

「はい。それは世界が、一つになろうとしているからです。其々の世界に、其々の仮面ライダーが生まれました。しかし今、ライダーの力が互いを引き寄せ、世界を一つにしようとしています。そうなれば、全ての世界が消滅します」

「どうすれば世界を救える?」
「世界の消滅を止める方法は、ただ一つ。最強のライダーを決めるんです。それもたった一人」
「そんなことができるんですか?」

凄まじいプランを提案する執事に、ユウスケが問い掛ける。

「士さん達が世界を渡り、世界を繋ぐ橋を創ってくれた御蔭です」
「世界を繋ぐ橋?」
「士さんの旅のゴールは、その橋を創り、最強のライダーを決めることでした」
「…俺の旅、俺のゴール……俺は誰だ?何者なんだ?」

ふと、青空に浮かぶ真昼の月を見た士は、月の模様がある”組織”のエンブレムに見えた。

「?………ッ!!」

その時、士の頭には幾つもの過去の記憶(ビジョン)が…!

「月影!…全てのライダーを集めろ。誰が一番強いか、勝負してやる」
「士さん。まさか…記憶が?」

士は鋭い表情で問いに答えぬまま、歩きだす。

(……何故だ?士の記憶が戻ったと同時に、どうして身体に震えが走った?)

しかし、廻だけは士の記憶復活を喜べずに、嫌な虫の予感を察知していた。





*****

こうしてライダートーナメントは開催された。

別ブロック同士で戦うディケイド一行とディロード一行。
まあ、順調に勝ち進めばブツカリ合うだろう。

『さあ、お待ちかね!ディロードの更なる対戦相手は…!』

すると、次元の壁が現れると、
そこからは基本色たる黒と赤で構成された全身の内、黄色い複眼の周囲と胸のプロテクターには大きなGの文字、耳にはOの文字を取り入れた仮面ライダー。

『例えその身を悪に染められようと、愛の為に戦うライダー……G(ジー)!!』

「今、僕のヴィンテージが芳醇の時を迎える……!!」

決め台詞を口に、胸部のGプロテクターから、Gの字型をした剣を現出させる。
剣といっても、切先はソムリエナイフ・柄はコルクスクリューを模していて、薙刀のようにも見える。

「そう来るかい。なら俺はこうだ」

≪KAMEN RIDE…SATAN≫

血のような赤黒いフォトンストリームが身体を取り巻き、Dサタンにカメンライド。

≪ATTACK RIDE…SATAN SABER≫

電磁警棒型ツールがあらわれると、それはエネルギーブレードを纏った剣となる。

――ガギンガギン!!――

小うるさい剣撃音。
両者は一進一退の攻防を繰り広げる。

DサタンがサタンセイバーをふればGも剣で受け止め、武器の形状と特性を活かした反撃にでてくる。Gが先攻すればDサタンも武器で受けとめ、回し蹴りなどで攻撃する。

「埒があかないぜ」

≪ATTACK RIDE…SATAN GATLING≫

サタンセイバーが消失した直後にガトリング砲型武器・サタンガトリングが現れる。

――ズガガガガガガガガガガ!!――

途切れない連射。

しかしGは剣を棒や扇風機の如く高速回転させてそれを弾く。

(今迄見たことすらないライダーだけあって、どの戦法を選ぶべきか…?)

そう、ディロード一行は”Gの世界”に行ったことがない。
故、Gの詳細(スペック)もつかめていないのだ。

するとGは勝負にでたのか、変身ベルトのスイッチを作動させ、ワインボトルに詰まったパワーソースを解放。胸のプロテクターでエネルギーを増幅し、身体に走った赤いラインを通して足部へと伝達される。

Dサタンもそれを見て、取るべき行動を即時判断。

≪FINAL ATTACKRIDE…SA・SA・SA・SATAN≫

「スワリング・ライダーキック!!」
「デビルクラッシャー!!」

「トオッ!」
「ハアァ!」

対峙し合う二人のライダーはジャンプすると、飛び切りの必殺キックを激突させた。

『凄まじいキックによる爆発!一体どっちが勝ち残った!?』

実況が口喧しくそういっている間に爆煙が晴れる。
そこには、

「グアァァァ!!」

身体から電流をスパークさせて吹っ飛んで次元の壁によって回収されるGと、

「……フッ」

悠然と立ち尽くすディロード。

『流石ディロード!未知のライダー・Gにすら完全勝利!』

「やったね廻!」
「これで決勝進出かしら?」

信彦と流姫がそういっていると、

『さあ、ディロードの次なる戦いを賭けたは…二対一の変則バトル!』

「…人気者は辛いな」

すると、次元の壁からあのコンビがライダージャンプしながらでてくる。

『仮面ライダーきってのゴールデンコンビ!1号&2号!!』

「仮面ライダー、1号!」
「仮面ライダー、2号!」

変身ポーズをとりながら名乗りをあげるダブルライダー。

「ほほぉ。伝説のダブルライダーと闘り合えるとは光栄だな」

軽口を叩き、カードを装填。

≪KAMEN RIDE…RYUEN≫

「ダブルライダーにはダブルライダーだ」

≪ATTACK RIDE…SEPARATE VENT≫

D龍騎とDリュウガに分裂。

「「やるか」」

声を揃える。

≪ATTACK RIDE…SWORD VENT≫

ドラグセイバーを装備。

「「イクぜッ!」」

二人は刃を振り回し、ダブルライダーを圧倒した。
しかしそれは序盤の内に過ぎず、ライダー1号・2号は敵の行動パターンを見抜き、攻撃を巧に避ける。さらにはドラグセイバーを脇でガッチリと挟み…。

――バギン!――

刃を折った。

(やはり、生半可な攻撃では無理か)

廻はそう考え、次の一手を打つ。

≪ATTACK RIDE…ADVENT≫
≪ATTACK RIDE…STRIKE VENT≫

紅蓮の無双龍・ドラグレッダーと漆黒の暗黒龍・ドラグブラッカーを召喚した上、ドラグクローを装着。

「「ハアァ…!ダアッ!!」」

D龍騎とDリュウガは同時にドラグクローファイヤーを放った。

「「ドアァァァ!!」」

ダブルライダーは一ヶ所に吹っ飛ばされる。

≪FINAL ATTACKRIDE…RYU・RYU・RYU・RYUKI≫
≪FINAL ATTACKRIDE…RYU・RYU・RYU・RYUGA≫

着々と必殺技をスタンバイする。

だがそれをただ黙って見ている1号・2号ではない。

「行くぞ本郷!!」
「応!一文字!!」

「「トオッ!!」」

ダブルライダーは二人のドラゴンライダーと同じタイミングで地を蹴った。

「「ライダァーダブルキーック!!」」
「「ドラゴンライダーダブルキーック!!」」

互いのダブルキックが激しくブツカルと、今迄のものとは比べ物にならない爆発が起きた。

「……大丈夫か、一文字?」
「大丈夫に決まってるだろ」

ライダー1号・2号はかなりの体力を消費しながらも、ディロードのダブルキックに打ち勝

≪ATTACK RIDE…FUSION VENT≫

「「ッ!!?」」

っていなかった。

≪FINAL ATTACKRIDE…RYU・RYU・RYU・RYUEN≫

一瞬とはいえ、ダブルライダーの油断した隙にフュージョンベントの力でD龍焔に戻ってダメージを回復。その直後にFARを装填。

ドラグフレイムがD龍焔の周囲を旋回。
構えをとって身体中に気合いをいれると、そのまま天高く跳躍し、空中回転を行い。

「フレイムライダーキック!!」

約7000℃に及ぶ高熱火炎を纏った跳び蹴りがダブルライダーに直撃し、見事撃破した。

『凄いぞディロード!三連続の激闘を制覇したぁーーー!!』

こうして、ディロードの準決勝進出が決定した!




次回はSHADOW RX・ディガイド・ディルードも試合に参戦!

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