N再び/真【しょうたい】


「流石に向こうも学習してきたか。一度にドーパントを二体とは」
『今まで派手に暴れてきましたからね。いい加減一体一体じゃ埒が明かないと考えるのは必然ですよ』

イーヴィルの二人は敵の仮面ライダーへの対抗策を少しずつながらも確立させて言っていることに痛感する。

――…コツ、…コツ、…コツ――

其の時何者かがこちらに近づく足音がしてきた。
一同はその音のしてきた方向に顔を向ける。
暗闇で最初は良く姿が見えなかったが、よ〜く眼を凝らして見ると、

黒い革ジャンに黒い革ズボン、サングラスを掛けた男であることがわかった。

「そこの人!ここは危険です!下がってください!」

ギンガは男に向かってそう言ったが、男は全くもって聞く耳を持たずにドーパントのいる方向に歩いて行く。

「また会ったな、イーヴィル」

突然、男は口を利いた。

「…誰だ貴様?」
「我が名はディアン」

ディアンは自らの名を答え、懐からスロットが一つしかないメモリドライバーを取り出して装着する。

『そのドライバーは!?』

リインフォースは焦ったかのような声を出す。
ディアンは構うこと無く、一本の茶色いガイアメモリを手に持つ。

【NAIL】

「変身」

ディアンは静かにネイルメモリをシングルドライバーにセットして、ドライバーの形がNの文字になるように展開する。

【NAIL】

二回目の声と共にディアンは、狂気満ちた復讐鬼・仮面ライダーネイルへと変身した。
ネイルは背中に背負っていた二本の刀、ネイルカリバーを手に構えてこう言い放つ。

「さあ、断罪の時間だ」

残酷な決め台詞は、ドーパントの二人の心を凍えさせた。

「あれが、ネイル。…二人目の仮面ライダー…」

スバルは報告に聞いていたネイルを直に見て、手に汗を握っていた。

「…フォワード一同、それにギンガ。ドーパントは私達でやる。貴様たちは召喚士と召喚獣、そして融合騎のチビを頼むぞ」
「チビって言うな!チビって!」

アギトはチビ呼ばわりされたのがお気に召さなかったらしい。

さて、ここからは仮面ライダーとドーパントの戦いを主軸に見ていこう。

【TRICK】
【TRICK/KNIGHT】

イーヴィルはトリックナイトにハーフチェンジ。

「ドンドン行くぜ!」

――バシン!バシン!バシン!バシン!――

『イテッ!』

伸縮自在の鞭の如く振り回されるナイトグレイブの打撃を喰らってスコーピオンは苦しむ。
だがそれ相応のお返しのつもりか、背中の触手から猛毒針を射出して、イーヴィルの左腕に狙った。

――ブス…!――

毒針は見事に命中するも、

「この程度の毒で、私を殺す気か?」

魔人であるゼロには効果は無かった。

「まだまだ痛めつけるぞ?覚悟しておけ」

一方ネイルは、

『何なんだ貴様は?』
「お前等のようなゲスに名乗る気はない。…死ね」

――ズバババババッ!!――

宣告した直後、ネイルはマンティスの身体をネイルカリバーで斬り裂く。
その壮絶な攻撃にマンティスも攻勢に出られない。

――ガシャンッ!――

ネイルは二本の刀を連結させたネイルクローを左腕に装備。
それによって出来上がったネイルクローのスロットに緑色のメモリをセットした。

【NATURAL】

ギジメモリ・ナチュラルメモリをセットすると、ネイルはスロットについているスイッチを押した。

【TORNADO】

其の時、ネイルクローには凄まじい竜巻が起こる。

「ハアァァァァァ!!」
『グアァァァァァァァ!!』

ネイルの猛攻にマンティスは上空に吹っ飛ばされた。
止めを刺すべく、ネイルはシングルドライバーにセットしてあるネイルメモリをベルト左サイドに設置されたマキシマムスロットにセット。

【NAIL・MAXIMUM DRIVE】

そして、フィニッシュとなる。

「ネイルダウンフォース!!」

落下してくるマンティスの頭上にジャンプしたネイルは空中回転の最中に左足を突き出し、強烈な脳天踵落としを決めた。

「復讐の一撃を、その身に刻め…!」

マンティス・ドーパントはメモリブレイクを喰らったことで人間の姿に戻ってしまう。

「くたばれ」

非情なる一言共にネイルは断罪(ネイルクロー)を振り下ろした直後、

――ガギー−−ン!――

「…なんの真似だ?」
「こっちの台詞だ」

ネイルクローを止めたイーヴィルに復讐鬼は苛立ちを感じた。
スコーピオンの方は気絶するまで打撃を与え続けたらしく、全身痣だらけの状態だった。

「私の食糧を消されては困る」

そういうとイーヴィルはネイルを突き飛ばして変身を解除し、瞬時に魔人態になって…

『では、いただきます』

――ガブッ!!――

『欲望』を喰らうと人間態に戻って、

「あとは好きにしろ」

『欲望』を喰らったいまとなっては彼を助ける気は皆無だ。

「言われずともそうする…!」

ネイルは再び刃を振り下ろそうとするが、

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!――

突然にも地震のような音が響いてきた。

「大型召喚の気配があります。多分それが原因で…」

キャロは地震の原因を述べる。
どうやらルーテシア達には逃げられたようだ。

気がつくとスコーピオンの姿も見えない。
いつの間にか逃げていたらしい。

「一先ず脱出だ!スバル!」
「はい!…ウイングロード!!」

いつの間にか加勢に来ていたヴィータの指示でスバルがウイングロードを地上にまで続く脱出経路にまで伸ばした。

「チッ。もう一匹を逃したか」
「逃がさんぞ、折角の食糧を」

ネイルとゼロは同時にスコーピオンを標的に定めた。
なお、マンティスだった男は先頭を走って行ったスバルとギンガが二人で連れて行った。





*****

ゼロ達が脱出した地下。
その直上で召喚された昆虫型の大型召喚獣・地雷王。

「ダメだよルールー、これは拙いって!埋まった中からどうやってケースを探す?あいつらだって局員とはいえ、潰れて死んじゃうかも何だぞ!」

アギトは地雷王を召喚したルーテシアにそう言うが、当の本人は。

「あのレベルなら、多分これぐらいじゃ死なない。ケースは、クアットロとセインに頼んで見つけて貰う」
「良くねーよ、ルールー!あの変態医師とかナンバーズ連中とは関わっちゃダメだって!あのサソリとカマキリだってカマセ程度だったし、ゼストの旦那も言ってたろ?あいつら口では上手く言ってるけど、実際はあたし達のこと精々実験動物にしか―――」

その言葉が終わる前に地雷王はやることを済ませてしまったらしい。

「やっちまった…」

アギトは、あちゃーと言った表情だ。

「ガリュー、怪我大丈夫?」

先程の戦闘で傷ついたガリューを心配するルーテシアにガリューは頷いて答えた。

「戻って良いよ。アギトが居てくれるから」

再び頷いたガリューは召喚魔法陣の展開と共に帰還する。

「地雷王も…」

呼び掛けた瞬間、ルーテシアの者とは色違いの召喚魔法陣が地雷王の真下に展開され、アルケミックチェーンが地雷王を捕縛する。

「な、なんだ?」

アギトの焦っている頃、アルケミックチェーンを発動させているキャロの背後から、ウイングロードを使って走るスバルとギンガ、そして飛行魔法でルーテシアに向かっていくヴィータ。

それにアギトとルーテシアが気付くと、近くの建物屋上からティアナが銃撃を発射。
それを避けると、アギトは炎弾、ルーテシアは紫色のナイフを複数発射する。

しかし、局の一同はそれを容易く避けた。

ルーテシアが近くの足場に降りる頃には、

「あ!?…くッ!」

アギトの周りには幾つものナイフ。
ルーテシアにはエリオの槍型デバイス・ストラーダの刃が突きつけられている。

「ここまでです!」

リインはルーテシアとアギトにバインドを掛けた。

「子供苛めてるみたいで良い気分はしねえが…市街地での危険魔法使用に公務執行妨害その他もろもろで逮捕する」

そこへヴィータが逮捕通告を下した。

「あれ?そう言えばゼロさんと…ネイルって人は?」

其の時エリオが気づいたとき、

『甘いゾォォォォォ!!』

逃げたと思われていたスコーピオンが皆の死角となる場所から現れて奇襲を行おうとするも、

――ガシッ!――

『何…?グァァァァ!!』

突然何者かに触手を掴まれたスコーピオンはその状態で殴られた。

「ゼロさん、いつの間に…?」

触手を掴んだのはゼロだった。

「魔界777ッ能力…無気力な幻灯機(イビルブラインド)
その効果は対象の半径10メートル以内における存在そのものの解像度を極限まで下げることによって目立たなくさせる魔界能力。…本来は暗殺用の能力なのだがな…」

どうやらスコーピオンの奇襲を予測してこの能力を発動していたようだ。

「さて、その鬱陶しい触手はさっさと間引くとしよう。魔界777ッ能力…伐採前歯(イビルチェーンソー)

――ギュイィィィーーーーーン!!――

『うおおおおおおおおおおああああああああああ!!!!』

ゼロは左手を奇怪なチェーンソーに変化させてスコーピオンの触手を斬り落としていく。

「悪い(メモリ)があると、魂まで腐ってしまうからな」
『うあああああああああ!!痛がああああああああああ!!!』

周囲一帯にまで聞こえる悲鳴と共に触手は、ドサッ!…という音共々に斬り落とされた。
大ダメージを受けたことでメモリブレイクを喰らうこと無く変身の解けた瞬間、

『いただきます…!』

――ガブッ!…ゴクリ!――

『欲望』を腹の中に収めたゼロは一日に二つも喰えたことに満足そうな表情をする。

「…やることが済んだのなら、そいつはもう殺ってもいいな?」

ゼロが食事を終えたタイミングでディアンが現れる。
だが、ヴィータはディアン=ネイルの残虐さを知っていたので…。

「おい待て。お前は機動六課で第一級捜索人物として指定されている。大人しくあたし達についてきてもらうぞ!」
「…相変わらず強気だな。紅の鉄騎よ」

その呼ばれ方にヴィータは目の色を変えた。

「テメー、なんであたしの二つ名を…何者だ?」
「我が名はディアン。…復讐鬼となりて身を焦がす仮面ライダーネイル。その前身は十年前、お前達が破壊した闇の書・防衛プログラムのなれの果てだ」

ディアンの正体。
それはヴィータは勿論十年前の事件に関わった者全てに衝撃を与えた。



次回、仮面ライダーイーヴィル

仇はV!/刃【ふくしゅう】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作家さんへの感想は掲示板のほうへ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.