Eの愛情/娘【ヴィヴィオ】


ゆりかご最深部。

「もう、どの子も使えないこと」

スカリエッティのアジトや市街地での戦いを観戦していたクアットロは、次々と負けていくナンバーズの様子を見て呆れる。
彼女は伊達眼鏡を外して投げ捨てると、結んでいた髪紐を解いてヘアースタイルをロングストレートにする。

「ま、私がいれば、なんとかなりますしね。そうでしょうね、ドクター?」

いつもの猫撫で声などではなく、彼女の本来のものかどうかはわからないが、妖艶で魅力的な声でである。そして、自分の下腹部を愛おしそうにさする。何しろ、スカリエッティが仕込んだクローンが胎内にいるのだから。

「向こうの切り札も、もう直潰れるでしょうからね」

玉座の間では、イーヴィルは大したダメージを負っていないものの、なのはが壁にめりこむくらいの攻撃を受け、ヴィヴィオは涙を流しながら荒息をついていた。



「ゆりかご」軌道ポイント
到達まで
あと1時間35分





*****

駆動炉室の手前。

そこには大量のガジェットの残骸。
そして無傷のネウロと多少のけがをしていたヴィータだった。

原作アニメのヴィータは血まみれのズタボロ状態だったが、ネウロが加勢してくれたお陰で、切り傷・擦り傷・全身打撲レベルですんでいた。

「お前、冗談抜きで規格外だな…」
『全くです』
「貴様らが貧弱なんだ、ミジンコめ」

無論、ネウロは素手でガジェットを潰していたのでこんなこと言われても仕方ないが…。

「…なのは達はもう、玉座の間に着いてるころだよな?」
「恐らくな」
「はやても、外で戦いながら船が止まるのを待ってる」

そして、駆動炉へとたどり着く。

聖王のゆりかごの駆動炉は、赤い光を放つ巨大な正八面体の結晶だった。

それを見たネウロは駆動炉から伝わる膨大なエネルギーを感じ取り「素晴らしい」と小さな声で呟く。

「こいつをぶっ壊して、この船を停めるんだ。リミットブレイク…やれるよな?」
『Yes sir』

グラーフアイゼンはカートリッジを二発ロード。

【ZERSTORUNG FORM】

グラーフアイゼンはツェアシュテールングスフォルムに変形した。
ヴィータは駆動炉の上空で魔法陣を展開し、一発のカートリッジをロードさせる。

「ツェアシュテールングス!!」

グラーフアイゼンのドリルは駆動炉に接触すると同時に、カートリッジが二発ロードされる。

「ハンマァーーーーー!!」

駆動炉からは赤っぽい爆煙が起こった。

ヴィータは「やったか?」と思ったが、駆動炉は恐るべき頑強さを誇っていた。
おまけに、

『危険な魔力反応を検知しました』

なんだか、駆動炉の防衛モードのシステムが働いてしまったようだ。

『防衛モードに入ります。これより駆動炉に接近する者は、無条件で攻撃されます』

「上等だよ…!」
「わざわざ厄介な仕事を作るとはな…。あとでお仕置きだ」





*****

玉座の間。

「ヴィヴィオ…」
「勝手に、呼ばないで!」

なのはがヴィヴィオを呼ぶと、当人は球状の魔力をなのはに向かって投げた。しかし、それはイーヴィルによって弾き飛ばされ、なのははヴィヴィオの背後に回り込み、

【CHAIN BIND】

チェインバインドをヴィヴィオにかけた。

「こんなの…!」

ヴィヴィオは体中に力をいれ、

「効かない!!」

力技でチェインバインドを破った。

ヴィヴィオはそこからまた虹色の魔力弾を発射。
魔力弾は幾つにも分裂して二人を襲った。

イーヴィルは魔人としての頑丈さで耐えていたが、なのははバリアを張っても尚、床に落とされてしまう。ヴィヴィオはそこへ大きめサイズの魔力弾を打ち出す。

【ROUND SHIELD】

魔力弾は魔法陣のシールドで防がれる。

『WAS エリア2終了、エリア3に入ります。あと、もう少し』
「は〜、手加減しながらと言うのは辛いものだ」

そう、なのはがどうかは分からないが、イーヴィルは確実に手加減していた。
魔人は其の気になれば、そこらへんの雑誌であろうとも、人を殺す凶器にできるほどの剛腕さを備える。ゼロの場合、イーヴィルに変身することで、全快時以上のパワーを発揮できるので、手加減なしでやったら間違いなくヴィヴィオを殺しかねなかった。それゆえに全力を出さないのだ。

「ブラスター2!!」

【BLASTER SECOND】

2段階目の解放で、発生した衝撃波にヴィヴィオは一旦は押されるもすぐに体勢を整える。
なのはの周りには二つのブラスタービットが出現し、ヴィヴィオの身体をバインドのようなもので縛る。

「ブラスタービット、クリスタルケイジ!ロック!!」

ブラスタービットから放たれた三つの光は、デルタ状のバリアにヴィヴィオを閉じ込める。

「これは…もう覚えた!」

ヴィヴィオは縄状のバインドを引きちぎると、クリスタルケイジに拳をつきたてていく。
一発一発の攻撃ごとに、なのはにかかる負担は大きくなる。

イーヴィルはクリスタルケイジが破られたときにいつでも対処できるよう、待機している。





*****

クアットロはその様子を見て。

「陛下。その白い悪魔の使ってるパワーアップ。どんどん使わせちゃってください。ブラスターとやらの正体は、術者の身体の限界を超えた自己ブースト。撃てば撃つほど、守れば守るほど、術者もデバイスも命を削って行きます。確かに、イーヴィルと言う強力な助っ人がいることで、ある程度はおっかないスキルの本質は出せるでしょうけど…」

そうこう言っている間にヴィヴィオはクリスタルケイジを破壊した。

「止せヴィヴィオ!」

イーヴィルはヴィヴィオに羽織り締めをかける。

「肝心の助っ人が陛下に情け掛けてたんじゃ、100%とまではいきませんよね」

其の時、最深部にまで響いてくる地響きのような音。

「駆動炉の地引震…」

クアットロがコンソールでモニターを切り替えると、





*****

荒息をついて必死に呼吸を整えるヴィータ。
腕や頭からは血が出ている。

一方ネウロは多少攻撃を喰らったようだが、それも彼にとっては大したことではなく、すぐさま魔力で怪我や服のダメージを治す。

「どうした豆粒?もう疲れたのか?」
「うるせー!」

ネウロの嫌味に反論するくらいの元気はあるようだ。

「残ったカートリッジとゼロから貰ったカートリッジ。これに全てを賭ける!!」

――ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャンッ!!――

(な、なんだ?最後の一発だけいつものとは質も量も段違いだ!)
「成程、流石はゼロ。たったこの程度の魔力でこれほどとは。…人間には少し大きすぎるか?」

ネウロの言葉を聞いたヴィータは驚いた。

(これで”この程度”だと?だったら万全状態ならどんだけ凄い魔力持ってんだよ!?)

いつの間にか機動六課にいるのが当たり前になっていた無限ゼロ。
その魔人としての秘められた強さをヴィータは改めて認識させられていた。

だが今はそんなことを考えている場合ではない。

「うおおおおおおおおおお!!」

ヴィータはグラーフアイゼンをかまえて、

「ぶち抜けーーーーー!!」

恐らくヴィータがこれまで使って来た攻撃の中では最も高威力だったろう一撃。

爆煙が起こり、それが晴れるとヴィータの相棒はところどころにヒビや亀裂が入っていて、あともう少し負担を与えれば壊れてしまいそうな状態だ。

そしてなによりヴィータ自身は過剰な魔力行使で、もう限界だった。

「(ダメだ…守れなかった…)…はやて、皆…ごめん」

朦朧とする意識の中、ヴィータの身体が重力によって落ちていくかと思われたとき、白い光の中に羽ばたく黒い翼がヴィータを包んだ。

ヴィータがゆっくり眼をあけるとそこには、

「謝ることなんかあらへん」
「…はやて…リイン…」
「はいです」

はやてとリインの姿があった。

「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼンが、こんなになるまで頑張って…。それにこんな頼もしい味方も一緒にいてくれて…」

駆動炉にはグラーフアイゼンのドリル部分の先端が喰いこんでいた。
ネウロはそこを狙い、魔力の籠ったパンチを一発お見舞いすると、ヴィータの一撃によって駆動炉にできていた罅割れは一気に大きくなっていき、

「それでも壊せへんものなんて、この世のどこにも…あるわけないやんか」

ヴィータはひび割れ行く駆動炉の最期を目に焼き付けた。





*****

「駆動炉が…」

クアットロは少し驚いた表情でいる。
しかし、それを補おうとコンソールを叩いてなんとか戦況を持ち直そうとする。

「防御機構フル稼働。予備エンジン駆動。自動修復開始。…フフ、まだまだ」

だがその余裕もあっさりと破られることになる。

クアットロが振り向くとそこには、なのはとゼロの放ったエリアサーチと魔界虫。

「これは…!?」





*****

『WAS 成功。座標特定、位置算出』
「見つけた」
「結構時間かかったな」

イーヴィルはさっきからずっと羽織い締めしていたヴィヴィオを放してやるが、その代わりに四つのブラスタービットが縄状のバインドを何重にも施す。

クアットロはイーヴィル達が戦っていたのは時間稼ぎのようなものであることに気付くも、自分が今いる最深部にたどり着くには時間がかかると踏んで表面上の余裕を保とうとするが、

なのははレイジングハートの矛先を壁に向けた。

【MAGICAL/BLASTER】

イーヴィルもマジカルブラスターにハーフチェンジ。

「壁抜き!?まさかそんなバカげたことが!」

でも、クアットロは思い出す。
4年前の空港火災事故で、なのはが砲撃魔法で地下から地上へ繋がる脱出口を無理やり開通させたこと。そして、イーヴィル・マジカルブラスターのマキシマムドライブはなのはの最上級魔法・スターライトブレイカーに匹敵する威力を誇ることを、

クアットロの表情はたちまち絶望一色に染まる。

『通路の安全確認、ファイアリングロック解除します』
「ブラスター3!」

なのはの目前には特大の魔力スフィアが、

(ネウロ。そっちが片付いたのなら、最深部にいる腹黒女のところに行ってくれ!)
(あぁ。今丁度片付いたところだ。直ぐに行ってやる)
(すまんな。こんな遠方にまで…)
(気にするな。貴様と我が輩の仲だ)

ゼロは念話でネウロと通信をとった。
そして、

【EVIL/BLASTER・MAXIMUM DRIVE】

「ディバイーーーン!!」
「『ブラスター…!!』」

カートリッジは5発もロードされ、魔力スフィアは大きさを増していく。
イーヴィルもブラスターキャノンを両手でしっかりと握り、メモリの強大な力を発射する銃口を最深部にいるクアットロ付近に照準を合わせる。

「バスタァーーーーー!!」
「『チャージブレイカァーーーーー!!』」

二人の二大砲撃はゆりかごの内部を貫いて行き、

「イィヤアァーーーーーーーー!!!!」

クアットロのいる最深部を事も無げに吹っ飛ばした。

「……ドクターの夢が…私達の…世界が……」

クアットロが倒されたことで、彼女の支配下に置かれていたもの全てが動きを停めた。

ヴィヴィオは力技でバインドを破ったが、頭を抱えて苦しむ。

「『ヴィヴィオ…?』」

イーヴィルは愛娘の異変に気づき歩みいくも、

「ゼロパパに、リインフォースママ…?」

どうやら意識のほうは正気に戻ったようだ。

「ダメ逃げてぇーーーー!!」

いきなりヴィヴィオは右ストレートをイーヴィルめがけて放つも、イーヴィルはそれを容易く受け止めた。

『駆動炉破損 管理者不在 聖王陛下、戦意喪失』

その瞬間、アナウンスがゆりかご内に響く。

『これより、自動防衛モードに入ります』

正直言って、それは悪い報せだった。

『艦載機、全期出動。艦内の遺物を全て排除してください』

「成程、そういうことか」
「だから、ダメなの!止められないの!」

自分の意思ではもう言うことを聞かない身体。
ヴィヴィオを無暗に暴れさせないため、イーヴィルはヴィヴィオを真正面から抱きしめる。

流石に強化された魔人の腕力には勝てないようで、ヴィヴィオは必死に抵抗したりしているが、イーヴィルの腕は全くもって外れることは無い。

『ヴィヴィオ、諦めないで。必ず私とゼロが助けます!』

イーヴィルがヴィヴィオを抱きしめる状態から肩を掴んだ状態になると、イーヴィルの右複眼が激しく点滅する。

「無理だよママ。…それにわかったんだ私。もうずっと昔の人のコピーで、ゼロ…ぜろさんも、リインフォースさんも、本当のパパとママじゃないんだよね。…この船を飛ばすための鍵で、玉座を守る生きてる兵器」

大人びた口調で話すヴィヴィオ。その眼からは悲しみに満ち満ちた涙が流れる。

「本当のママとパパなんて、もとからいないの。守ってくれて、魔法のデータ収集をさせてくれる人、探してただけ」
『違う!』
「違わないよ!」

ヴィヴィオは泣きながら反論する。

「悲しいのも、痛いのも、全部偽物の造りもの。私はこの世界にいちゃいけない子なんだよ!!」

ヴィヴィオは己自身の存在そのものを否定する。

「ヴィヴィオ…かつて地球にはとある怪物強盗が居た」

すると、いきなりゼロが語り出す。

「奴は20年前に、シックスという男の改造クローンとして生まれた。幼少期を終えると、外の世界で奴が出会った一人の女性。彼女との関わりによってその怪物強盗は自分でも分からなくなった自分の正体(なかみ)を探すようになった」

それはかつてネウロと相まみえた怪盗X(サイ)とその従者I(アイ)のことだった。

「彼女は奴にとってなんなのかはわからん。でも彼女がいたからこそ、奴は奴なりの正体(なかみ)を得たんだ。…彼女と言う存在があったからこそ。あいつはクローン云々とは関係無い自分の正体(なかみ)を自力で探しだしたんだ。…貴様にもできる筈だ、ヴィヴィオ」

父の言葉はヴィヴィオの心に刻まれていく。

『私達は聖王なんて関係無い。私達の大事な娘のヴィヴィオを知っている』
「私達は本当の親ではない、だが心だけでも本当になれるよう努力していける」

そして。

「『だから、本当の気持ちを私達に…!』」

其の時、仮面の双複眼から溢れる涙。

右複眼だけなら、泣いているのはリインフォースだけとわかる、
だけど左右の複眼から涙が流れているということは…魔人であるゼロがヴィヴィオを真の娘として、本当の愛情を抱いて涙を流していることを示していた。

「私…私は…パパとママが大好き。二人とずっと一緒にいたい。…パパ、ママ…助けて!」

ようやく語られたヴィヴィオの心。

「…高町」
「うん!レイジングハート!!」

【RESTRICT LOCK】

なのはがヴィヴィオに先ほどとは比べ物にならない量のバインドを掛ける、

なのははヴィヴィオの向けてレイジングハートを向け、ブラスタービット四機もヴィヴィオを四方から狙い打つかのような陣形を取っている。桜色の優しい光が玉座の間に降り注ぐ。

「ヴィヴィオ、これからかなり痛い思いをするが、我慢できるな?」
「………うん!」

ゼロの問いにヴィヴィオは答える。

『なのはの砲撃の直後、私達がゼロに残された魔力を必殺技を叩きこむのと同時にヴィヴィオの身体に注ぎこんでレリックを破壊する』

リインフォースは愛娘(ヴィヴィオ)を呪縛から解き放つプランを述べる。

「全力全開!スタァーーーライトォ!!ブレイカァーーーーー!!」

五方向から一斉に放たれたなのはの必殺魔法砲撃。

「ブレイクゥー!シューーート!!」

【MAGICAL/LEADER】

イーヴィルはマジカルロードにハーフチェンジする。

【EVIL/LEADER・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルはジャンプして月面宙返りを行い、一気に両足を突き出す。

「『リーダーブレイクラッシャーーーッ!!』」

イーヴィルとなのはが誇る二大必殺連携攻撃がヴィヴィオを縛りつける呪いを砕いた。
余りに威力が大きすぎたことで、ヴィヴィオの居た周囲数メートルがクレーターのような状態になってしまっている。

凄まじい爆煙が起こり、イーヴィルはマキシマムドライブの連続運用及び魔力の枯渇、なのははスターライトブレイカーの発動でレイジングハート共々限界を突破している。

イーヴィルはふら付く足で、ヴィヴィオに歩み寄ろうとしたが、

「こないで…!」

ヴィヴィオの声が聞こえてきた。
煙が晴れるとそこには砕け散ったレリックと、何故か未だに聖王モードのヴィヴィオ。

「どういうこと?まさか失敗!?」
「いや…マキシマムドライブを決めた際、流し込んだ私の魔力の影響で、肉体があの姿で固定されてしまったんだろう…」

慌てるなのはにゼロが弱弱しい声で説明する。
そして、変身を解くと、今までの疲労が一気に爆発したかのように片膝をついて吐血する。

ヴィヴィオは二大攻撃を受けたことによる壮絶な激痛に耐えながら、自力で立ち上がろうとしている。

其の時にゼロは以前、ヴィヴィオが訓練場で転んだ時のことを思い出した。

「一人で、立てるよ…!強くなるって、約束したから…!」

ゼロは思わずヴィヴィオのもとに駆け寄り、その両手はヴィヴィオの頬と頭を優しくなでてやった。

『聖王陛下、反応ロスト システムダウン』

ヴィヴィオがレリックを失って聖王たる存在ではなくなったことに、ゆりかごは一早く感じとる。

「皆!!」
「はやてちゃん!」

そこへ、はやてとリインがやってくる。

『艦内復旧のため、全ての魔力リンクをキャンセルします』

其の時、ゆりかご内のAMF濃度は最高潮に達し、なのはは勿論、はやてもリインとのユニゾンを維持できなくなった。

『艦内の乗員は、休眠モードに入ってください』

「随分とまあ、慌ただしくなってきたな」
「ネウロッ!!」

そのタイミングでネウロが気絶しているクアットロの頭を掴んだ状態で現れる。

「ゼロ。これを受け取れ」

ネウロが投げて渡したのは、なんとスカリエッティの使っていたデザイアメモリ。

「どこでこれを?」
「ネイルとかいう奴が通信で貴様にこれを渡すようにと言って、これを送りつけてきた」

ネウロは淡々とした口調で答えた。
ゼロは黙って頷くと、デザイアメモリを口内に放り込んだ。

「ダメです!魔力結合できません!通信も…」

リインはAMFによって魔法の一切がつかえなくなっていることを述べる。

「しゃーない。歩いて脱出や」

はやてがネウロが掴んでいるクアットロにバインドをかけて護送役を引き受ける。

「でも、なのはさんとゼロさんが…」

確かになのはの身体は満身創痍・疲労困憊が御似合いといえる状況だ。
ゼロは何故か黙っている…?

『これより、破損内壁の応急処置を開始します。
破損内壁・および非情隔壁から離れて下さい』

すると、脱出口は濃い紫色のエネルギー壁に閉ざされ、さらには玉座の間と通路を繋ぐ扉までもが自動的に閉じられた。

そのとき、バイクのエンジン音が聞こえてきた。

そして、

――ドガァーーーーーン!!――

「お待たせしませた!」
「助けに来ました!」

スバルとティアナが壁をぶち破ってきた。

「クフハハハハハ………!!」

皆は喜びの表情になる中、ゼロが薄気味悪く笑う。

「パパ…?」

ヴィヴィオが呼びかけると、

「クフフハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

ゼロは狂い咲くような大音量の笑い声で発し始める。

「上質の『欲望』をたらふく喰ってやったぞぉ!魔力が漲りぃ!身体が動くぅ!実に清々しい気分だ!!」

狂喜乱舞せん勢いのまま、

「この味!そして量!これほどの『欲望』を地上で喰ったのは初めてだ!!」

ゼロは閉鎖された扉に突っ込んで破壊すると、

「クフフハハハッハハハハハハハ!!」

笑いながらゆりかご内の通路を爆進していく。

「パパ…大丈夫だよね?」
「問題ない。あれほど魔力がたぎった状態ならば、アルカンシェルとやらの直撃でも死なん」

ヴィヴィオの心配に、ネウロが当たり前のように説明する。

一分後、食後の運動と称してゆりかご内のガジェットを全て破壊してきたゼロは、仲間たちと共にゆりかごから脱出した。





*****

『あらら…。ジェイル達も頑張ってくれたけど、踏ん張りが足りなかったな〜。まあ、良いか。最後の締めを飾るのは主役の大事な御役目だからね…♪』

誰もいない空間。
そこに身を置きながら、戦いを観ていたバニティー。
ミッドチルダ最大の決戦が始まる!!



次回、仮面ライダーイーヴィル

最後のV/次【つぎ】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」



次回から原作にはないオリジナル展開に進んでいきます。
そこらへんのストーリー云々はある程度出来上がっているのですが、ゼロとネウロのドSコンビが発揮するサドぶりがいまいち思いつきません…。

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