Oの連鎖/老【ろうじん】


風都霊園。

照井竜は花束を手に、そこを訪れていた。
一年前、命を散らされた家族の魂を弔うため。

「・・・・・・・・・ん?」

しかし、照井家之墓と書かれた墓石には、白い花が手向けられていた。
照井は先ほど擦れ違った住職ではないかと思ったが、どうやらそうではなさそうだ。

まあ兎も角、照井は花束を墓石の前に沿えて、合掌する。

(父さん、母さん、春子。俺は元気にやってるよ。良い仲間達にも出会えた・・・)

この時はまだ気付かなかった。
衝撃の真実に・・・・・・たどり着くことを。





*****

ミッドチルダ・クラナガン

「さてと、今日はどこに行く?」
「そうだな〜」

珍しく二人揃って休暇をとることができたフェイトとディアンは、デートを兼ねたショッピングを楽しんでいた。

そんな時、一本の報せが二人に届く。

『あ、フェイトちゃんにディアンさん。ちょっと良いかな?』

なのはが緊急回線で連絡してきたのだ。

「どうしたのなのは?緊急回線なんか使って?」
「事件か?」
『それが、ガイアメモリの流通元である風都に行って欲しいの』
「何故だ?あそこには四人のライダーがいるんだぞ」

戦力増強の必要性など皆無に等しいといっても良い布陣が揃っていたので、当然と言えば当然の意見だ。

『良いからお願い!大事なことなの!』
「・・・・・・なのはが言うなら、しょうがないね」
「そうだな。解った直ぐ行く」
『ありがとう♪』

そうして、回線は切られた。





*****

ミッドチルダ・クラナガン裏通り

「フフフ、上手くいった♪」

そこにはなのはがいた。

「よーし、”俺”の思惑通りになってくれよ」

いや、なのはではなかった。
なのはに変装し、フェイトとディアンに頼み込んだ人物は、あっと言う間に管理局の制服を全部脱ぎ捨てると、近くに置いてあるダボついたTシャツとズボンを着て、一瞬にしてその細胞(すがた)を変貌させていく。

「魔人に手を貸すのは癪だけど、アイツを潰すためだし、仕方ないよね」

”銀髪の少年”は薄っすらと笑った。
そして、一本の透明なガイアメモリを手に持った。

【XCELION】





*****

アルハザード。
今となっては”忘れられし都”と呼ばれるこの世界。

その果て無き暗闇を照らす小さな明かりの中、一人の女性=プレシアは大きなカプセルを眼前にこういっていた。

「もう直ぐ・・・もう直ぐ貴女に世界の風景は勿論、音や匂い、そして暖かさを・・・再び・・・」

プレシアはこの上なく期待感を漲らせながらも、それでいてとても悲しそうな表情をしていた。

そして、その近くにはイーヴィル・MWXのデータが表示されたモニターがあった。





*****

無限家。

【LOCUST】

「あ、動いた動いた♪」

ヴィヴィオは携帯電話型のメモリガジェット・ローカストフォンをライブモードにして遊んでいると、ゼロとリインフォースは真剣な表情をしていた。

「あら、どうしたのかしら?」

御霊がそれとなく聞いてみると、

「あぁ、少しな・・・」

リインフォースははぐらかすように言った。

「どうしたの?ハッキリ答えて」
「貴様が気にすることではない」

食い下がるも、ゼロが一蹴した。
御霊はため息をつき、中断していた家事を再開した。

「・・・・・・ゼロ、私は・・・」
「気にするな。貴様の変化は、寧ろ私にとっては大きく嬉しいものだぞ」

二人の間には、なんとも言えない雰囲気が漂っていた。

――ピリリリリ!ピリリリリ!――

そんなとき、マンティスフォンとローカストフォンから着信音がでる。

「「はい、もしもし」」

ゼロとヴィヴィオは同時に電話に出た。

「あ、左さん」
「お、ディアンか」

この一本の電話から始まった今回の事件。
そしてこの時にはわかる筈もなかった。
この一件の裏に、二つの家族の愛憎劇と、愛する我が子への余りに深い愛情が潜んでいることに。





*****

園咲家
その屋敷の廊下を琉兵衛、若菜、大地が歩いていた。

「お父様、シュラウドという女をご存知ですか?」
「シュラウド・・・」
「報告によると、ミュージアムを裏切り、復讐を進めている女がいるらしいんですの」
「まぁ、俺たちってけっこう悪事してるからな」

大地は能天気にいった。

「だからといって見過ごせない。この私が排除します」
「そう簡単にいく相手ではない。・・・あの女は正に、怨念の塊だ」

琉兵衛の脳裏には”十二年前”のことが思い出される。

「怨念の塊?一体何者ですの?」
「実は、お前には隠していたが・・・・・・」

そして琉兵衛はシュラウドの本名を告げた。
若菜は驚きを禁じ得なかった。

「まさか、そんな!?」
「残念だが、真実だ」
「・・・・・・許せない」

若菜の表情には激しい怒り。

「・・・ところで義父さん。例のモノは?」
「あぁ、基礎はできているが、肝心の部分がまだだ」
「そうか・・・では、俺が直接指揮しますわ」
「任せたよ」

大地は琉兵衛にそういって、立ち去る。

「お父様、大地さんは何を?」
「お前との婚儀に備え、彼はお前と台頭になろうとしている。”次元の神官”となるべくね」
「・・・・・・・・・」





*****

カフェを待ち合わせ場所に指定し、ゼロとヴィヴィオがコーヒーとジュースを飲んでいると、早速探偵事務所の面々、それにディアンとフェイトがやってきた。

「フフフ、揃ったな」

そのゼロの笑いを皮切りに、何故ここにディアンとフェイトがいるかを簡単に説明すると、翔太朗は事務所に依頼しに来た後藤親子のことを話した。

なんでもその後藤良枝の娘の後藤みゆは、とある劇団で努力の末主役をもらうことができたのだが、なんの因果かたった一晩で老人に変えられてしまったのだ。

ウォッチャマンの情報によると、”老けさせ屋”という占い師の仕業だという。
居場所は特定できないが、”老人は海をなんて呼ぶ”と聞くと、”ラ・マール”という合言葉を口にするらしい。

ただし、ウォッチャマンが寄越した情報はそれだけじゃなかった。

「若返らせ屋?」
「あぁ、なんでも最近、老けさせ屋とコンビを組んで、荒稼ぎしてるって噂だぜ」
「数日前にもとあるホストが老人に変えられたらしいが、さらに数日経った頃には元に戻っていたという」
「かなりお金を使っちゃったみたいだけどね」

翔太朗、照井、亜樹子が答える。

「・・・・・・兎に角その二人組の占い師を虱潰しに探すしかないね」
「確かにそうだね」

というフェイトとヴィヴィオの発言で、相手を警戒させないために女性である亜樹子とフェイトが街中の占い師に聞いて回ったが・・・・・・・・・・・・意味不明な掛け声を出すわ、前世がどうとか、運命の人がうんぬんと、胡散臭そうであってそうでもなさそうな人物にばっかり出くわした。

「はぁー、軽く30人には質問したけぢ、全然いないよ〜」
「・・・・・・亜樹子さん、あの人達は?」

フェイトが指差したのは、全くもって無気力そうな二人組みの手相占い師。

「あの人達は違うでしょ」
「でも、一応・・・・・・”老人は海をなんて呼ぶ?”」
「「ラ・マール」」

「そう!それだわ!」
「って、いた?」

「「by Hemingway.」」

占い師の二人、相場と遠藤はそういった。

「老けさせ屋に・・・」
「若返らせ屋・・・」
「あんたら金ある?」
「コースはどうします?」

相場と遠藤は聞いた。

「コース?」
「十年で十万円、五十年で五十万円。払える?」
「まあ、一応・・・」
「よし、じゃあ誰にします?」
「老けさせんの?若返らせんの?」

そう聞かれた二人は、懐やバッグから写真を取り出した。

「じゃあ、この人達で」

亜樹子が取り出して老けさせ屋に見せたのは、自分と照井のツーショット写真。
フェイトが若返らせ屋に見せたのは、なんと結婚した時の写真だった。

(いいのかな・・・?)

流石にこんな写真見せられて遠藤も戸惑う。

「なんで亜樹子がお前の写真を?」
「・・・・・・俺に質問するな」
「ほえ〜、ディアンさん結婚したんだ。おめでとう!」
「・・・・・・感謝する」

四人がそういってると、ゼロが先頭きって前進する。
照井もそれにつられて前にでる。

「そこまでだ、老けさせ屋に若返らせ屋。署で話を聞かせてもらう」

警察手帳片手に照井が迫る。

「えッ?もしかして僕ら、嵌められたの?」
「ムッカー!」

二人がガイアメモリを起動させる。

【OLD】
【YOUNG】

わき腹の生体コネクタに挿し、古き記憶を宿したオールド・ドーパントと、若き記憶を宿したヤング・ドーパントに変貌した。

『これでも喰らえ!』
『さようなら』

オールドとヤングは左手と右手から赤黒い波動(ヘドロ)・オールドクリークと、焦茶色の波動(ヘドロ)・ヤングクリークを噴出させて亜樹子とフェイトに浴びせようとする。

「「ッッ!!」」

【ACCEL】
【NAIL】

照井とディアンは咄嗟に変身して二人を庇った。

『仮面ライダーだと!?』
『見たことないやつまで!?』

オールドとヤングは驚く、

「大丈夫か?所長・・・」
「無事だな?フェイト・・・」
「う、うん」
「平気だよ・・・」

「フィリップ」
「リインフォース」

翔太朗とゼロはドライバーを装着。

「あぁ、わかった」
「了解した」

【CYCLONE】
【MAGICAL】
【JOKER】
【LEADER】

「「変身!」」
「「変身!」」

【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

「私もいくよ、変身!」

【HOPPER】

一気にトリプルライダーが蹴りや拳を飛ばし、アクセルとネイルが波動から解放される。

『君達、僕らの波動が効いてないけど、何故だい?』
「知ったことか!」

ヤングの質問を一蹴するネイル。

「一気に決めるぞ」
『あぁ』
『ゼロ』
「わかってる」

Wはメモリを引き抜き、飛来したエクストリームメモリをインサート。

【XTREME】

CJXとなる。

【WISEMAN】
【MAGICAL/WISEMAN】

イーヴィルもマジカルワイズマンにハーフチェンジ。

「「プリズムビッカー!」」

【PRISM】

プリズムソードを抜刀し、オールドを切り裂く。

「照井、借りるぞ」
「お、おい」

エンジンブレードを拝借。
イーヴィルはギジメモリ型のカートリッジをインサートする。

「『紫電・・・!一閃ッ!!』」

シグナムの十八番たる魔法でヤングを切り裂いた。
だがそれでも、腐ってもドーパントだ。一撃で倒せるほど甘くは無い。

『フッフッフ〜〜』
『ゲヘヘヘ!』

オールドは赤黒い前面から青黒い背面の状態となり、ヤングも焦茶色の前面から暗紫色の背面になっていく。

「気持ち悪!コイツら裏向きで攻撃してきやがる」

Wもこの光景に気味悪がる。

『『あーらよ!』』

その隙をついて掌から波動を放つ。

「パパ、避けて!」

イーヴィルに降りかかるヤングクリートから、ホッパーは自らイーヴィルの盾になった。

「うッッ・・・・・・!!」
「ヴィヴィオ!」

そしてオールドクリークはそのままWに触れてしまい、ジョーカーサイドからは青白い光が洩れている。

「うおッ!?」
「どうしたんだ翔太朗?僕のほうはなんともないぞ」
「わからねぇ・・・急に、足腰が・・・」

――ヒュオォォォ――

エクストリームメモリが自動的にダブルドライバーから離れた。

「エクスリームが、強制変身解除されるなんて・・・」
「あ、イッテテ・・・・・・か、身体の自由が・・・」

翔太朗の髪が・・・・・・

「え?白髪・・・?」

亜樹子は呟く。

『ヴィヴィオ、大丈夫?』

イーヴィルは変身解除したヴィヴィオに問うた。

「だ。大丈夫。でも、なんだか・・・」

よく見てみると、ヴィヴィオの顔つきや体系は前より小さく幼くなっていく。

『そう、それが正しい反応だ』
「貴様なにをした?」
「許さん!」

【TRIAL】
【VENOM】

『おっと、そろそろ引き上げ時か』

ヤングとオールドは自らの波動に包まり、退却する。

「逃げるのだけは一人前か」

ネイルは呟き、アクセル共々変身を解いた。

「翔太朗君、ヴィヴィオちゃん!一体どうしちゃったの?」
「へ?今なんて仰った?」

翔太朗は耳が遠くなっていた。

「なんか服がブカブカに・・・」
「あのドーパントの能力か」

少々戸惑うヴィヴィオに、ゼロは推測する。

「この攻撃、確か前にどこかで・・・・・・」
恐怖(テラー)・・・」
「そうだ!あれによく似てる!」

フィリップはゼロの一言で気付く。

その時だった。
そこを通り過ぎた二人・・・・・・。

「シュラウド!」
「プレシア!」
「え・・・!?」
「母さん!?」

照井とフィリップはシュラウドのほうへ、ディアンとフェイトはプレシアのほうにむかった。

因みに、

「渋ーいお茶が〜、飲みたいの〜」

翔太朗の精神が完全に老人化していた。





*****

「止まれ!・・・何故お前がここに?」

照井はシュラウドに聞く。

「貴方、やっぱり特殊体質ね。来人と一緒。左翔太朗はもう使い物にならない。貴方達二人で、Wになりなさい」
「貴女は、まだそんなことを・・・」
「フィリップのパートナーは左しか有り得ない」
「それでは究極のWになれない」
「究極の、W・・・?」

フィリップは首を傾げる。

「サイクロンアクセルエクストリーム」

シュラウドの脳内には、アクセルメモリによってボディサイドが紅蓮に染まり、青く輝く複眼をしたWが映った。

「そのパワーの源は、強い憎しみ」
「憎しみ・・・」

照井はかつて自分を突き動かした感情に反応する。

「二人で最強の戦闘マシンになれば、あのドーパントたちを倒せる。そして、園咲琉兵衛をも倒せる」

シュラウドの言葉には自信が満ちていた。

「今度ばかりは貴方達から頼むことになるわ。”究極のWになりたい”と・・・」





*****

「待てプレシア!」
「母さん待って!」

呼びかけられ、とまるプレシア。

「奇遇ね、二人とも」
「どうしてここにいるの?」

フェイトが聞いた。

「・・・最近、イーヴィルが超進化を遂げたことは知ってるかしら?」
「そういえば、数日前、日本近海で凄まじい魔力反応が・・・」
「あの”マジカルワイズマンエクセリオン”は、魔界王に匹敵する戦闘力と、永遠の魔力を併せ持った・・・至高にして究極の魔神」

プレシアは語る。

「何故その話を?」
「私の目的を果たす為、あの二人の存在は欠かせない」
「目的?母さん、それって一体?」
「時がきたら、教えてあげる」

――バチバチバチバチッッ!!――

「母さん!!」

その叫びもむなしく、プレシアは雷光の中に消えた。





*****

探偵事務所。

「探偵いるかー?近くまで来たから、その時化た面見に来てやったぞー」

時化た面というか老けた面なわけで・・・・・・

――ズズズ・・・――
――カキカキ・・・――

「・・・おーマッキー。相変わらず騒がしいの」
「こんにちわ!」

応対用の椅子に座って渋くて熱い日本茶を飲む70あたりの老人と、テーブルでお絵かきをしている5・6歳あたりの幼女がいた。

「誰?このお爺ちゃんとお嬢ちゃん」
「・・・翔太朗君とヴィヴィオちゃん」

亜樹子がうなだれて答える。
近くにいるフィリップ、ゼロ、リインフォース、フェイトもかなり暗い。

「はぁ?またまた〜」

いまいち言う事が信じられない真倉。

「用事がないなら帰れ。我々は忙しい」
「いや、でてきて早々「帰れ・・・!」・・・・・・はい」

なくなく従わされる。

――バッ!ドガ!――

その瞬間、ドアが行き成り開いたことでタイミング悪く真倉が転んだりしたが、どうでもいいんもでほっとこう。

そしてドアを開けたのは後藤良枝だった。

「調査のほうどうなりました?早くみゆを元に戻してください!このままだと折角の舞台の主役が!!」
「良枝さん落ち着いて。・・・犯人がわかりましたから」

良枝を落ち着かせるため、核心的なことをいう亜樹子。

「・・・誰ですか?」

目論見どおり、話に食いつく。

「老けさせ屋と若返らせ屋を名乗る占い師」
「奴等は人間のテロメアとクロノスを操作することで、人間の肉体年齢を激変させる」
「云わば復讐代行者だ」

フィリップ、リインフォース、ゼロが説明する。

「復讐?それじゃウチのみゆが誰かに恨まれてるってことですか?」
「思い当たることは?」

フェイトが聞くも、良枝には心当たりがなかった。
そこで亜樹子は・・・。

「久美ちゃんって娘のお母さんは?」
「光子さんのことですか?」

そう、亜樹子が上げた人物・関根光子は、陰で後藤親子のことをバカにしていた。

「とても親切な人ですけど」
「そりはどうかな〜?・・・直接会って、確かめてみません?」
「・・・はい」

取りあえず良枝は確認することにした。

「私達はドーパントについて調べる。一刻も早くヴィヴィオ達を元に戻さなければ」
「頼んだぞ」





*****

地球の本棚。
そこにアクセスしたフィリップが見たのは、

『え・・・・・・これは?』

動き続ける本棚だった。

『無い!無い、無い!』

目の前には若菜がいた。

『姉さん、なにを検索してるの?』

声をかけたことで若菜がこっちに気付く。

『来人、シュラウドという女を知ってるわよね?』
『・・・会った事はあります』
『どこに行けば会える!?お父様はそこまで教えて下さらなかった!』
『会ってどうするんですか?』
『貴方、まだあの女の正体を知らないみたいね』

若菜は意味深を言葉を残すと、

『まあいいわ』

といって本棚から去った。

『・・・・・・・・・』





*****

次元書庫

『検索開始。調査項目は犯人の居場所。・・・ファーストキーワードは占い師。セカンドキーワードは復讐。ファイナルキーワードはオールドメモリ&ヤングメモリ』

キーワードを入力すると、一気に本は一冊となる





*****

風都ホテル。

そこでは加頭は、AtoZ=26本の純正型フォルムのガイアメモリを収めたケースを開き、閉じていた。
それを見ていた冴子は、

「今のメモリは?」
「貴女よりずっと前にミュージアムを抜けた女性が開発し、その後封印されていた物です」

加頭は淡々と語る。

「我々、財団Xが次世代型ガイアメモリとして、独自に開発しました」
「・・・父への裏切り行為ね」

――カシャン――

加頭がなにかを落した。

「でも、貴女はもうミュージアムの人間ではない」
「・・・・・・どうやら私のお客さんみたい」

冴子の目には照井が映っていた。

「では、私はこれで」

加頭は席を立ち、自室に戻る途中で照井と擦れ違った。
互いに一瞬立ち止まったが、直ぐに歩きなおす。

「ここがわかるなんて、流石は優秀な刑事ね」
「聞きたいことがある。シュラウドと園咲家の関係についてだ」
「あぁ、あの女・・・」

冴子はまるで他人ごとのような反応をした。





*****

風都タワー。

「・・・・・・ふー、休憩休憩」

ブラブラと歩いている大地。
だがその表情は一変する。

「あのさ、コソコソすんのって、疲れないか?」
「・・・・・・わかっていたのか」

物陰からディアンが現れる。

「村木大地。お前の出生や経歴は調べさせてもらった」
「悪趣味なことで。勝手に人様のプライベートを」

大地はとぼけたようすである。

「お前、一体何が目的だ?」
「何でお前なんかに教えなきゃいけねーんだよ?」
「答えろ。さもなくば・・・!」

ネイルメモリを構える。

「んー・・・・・・まあいっか。教えてやろうじゃねーか。ただし、これから一つ、話を聞いてくれたらな」

その時、大地の表情は酷く歪な笑顔となった。





*****

関根家前

「ここです

良枝の案内で、亜樹子とフェイトはそこに到達した。

「あ、みゆちゃんのママ」

三人の来訪に久美が気付く。

「あぁ久美ちゃん。お母さんいる?」
「はい。でも今、お客さんが・・・」

するとなにやら玄関で話し声が・・・。

「ではまた」
「今後とも宜しく」

「老けさせ屋!」
「それに若返らせ屋!」
「あぁ、僕達を罠に嵌めてくれた二人か」
「よくもまあいけしゃあしゃあと・・・このインチキ占い師!!・・・覚悟なさい」
「覚悟すんのは、そっちだろ?」

【OLD】
【YOUNG】

あっというまに二人はオールドとヤングに姿を変える。
無論、これを見た一般人の三人は驚くしかないのだが。

『本日は出血大サービス。50年コースと10年コースの無料体験だ』
『バアサンとお子様になっちゃえ』

二人がクリークを出そうとすると、

「ホント、最悪の人間だね」
「クズというべきか、カスというべきか」

そこへフィリップとリインフォースが現れる。

『誰だい?』
「許さないよ・・・!」
「よくも私の愛娘を・・・!」
『おうおう、勇ましいね』

四人は場所を変え、戦うこととなる。

良枝は相場と遠藤とで話しこんでいた光子に駆け寄る。

「答えて光子さん。貴女があの怪人に頼んでウチのみゆのことを!?」
「・・・・・・」

光子は答えずに家の中に入る。

「ちょっと待って!」

すかさず良枝は関根家に入りこんだ。

一方、

「ファングジョーカーなら、戦える可能性がある」
「こちらはダークネスだ」

二人はスタッグフォンとマンティスフォンで連絡をとる。






*****

――ピリリリリ!ピリリリリ!――

ゼロは電話に出た。

「ん・・・?どうした相棒?」
「ゼロ、ダークネスロードだ」
「・・・わかった」

【LEADER】

「左、先にいってるぞ」

ゼロは一足先にメモリと精神を転送した。
翔太朗もぎこちない手つきでダブルドライバーを装着。

【JO【JOKER】

下手な押し方ゆえ、変なふうにガイアウィスパーがなる。

――ガチャガチャガチャガチャ――

「翔太朗さん貸して、私がやるから」
「あ、あぁ、頼むよ」

ヴィヴィオはいつまでもスロットにメモリをインサートできない翔太朗をみて、ヴィヴィオが変わりにメモリをインサートした。肉体は幼児化しても、記憶まではそんなに変化していなかったからだろう。





*****

フィリップとリインフォースのドライバーにメモリが転送されると、ファングメモリとダークネスメモリが現れて二人の手中に納まる。

【FANG】
【DARKNESS】

「「変身!」」
「「変身」」

【FANG/JOKER】
【DARKNESS/LEADER】

二人はファングジョーカーとダークネスリーダーに変身。

「やっと変身できた」
「此処から挽回するぞ」

――ジャキーン!――

イーヴィルは右手の五本指を鋭利な刃物に変貌させた。

「ッ!・・・・・・魔人の力?なぜリインフォースの肉体で?」
「話は後だ。行くぞ!」

そういうと、イーヴィルはドーパントに飛び掛って行く。





*****

風都ホテル・ビリヤード場

「教えろ。シュラウドとは何者だ?」
「いいかしら?中央の球が私の父、園咲琉兵衛。手球がシュラウド。あの女は一つの球を落すために、周りの全ての球を動かした」

冴子はキューで突き、手球を使って他の球を弾く。

「貴方も、貴方の家族も」
「俺の家族だと?」

――トンッ!カンッ!――

「今落ちたのが、貴方の家族」
「なにを言っている?」
「わからないの?全てあの女が仕組んだのよ、貴方の運命を」
「・・・・・・・・・」





*****

風都タワー。
大地は近くにあった柱に、得点別に色分けされた的の紙を貼り付け、ダーツを興じる。

「話とはなんだ?」
「お前さ、ヘルがこの街でドライバーとメモリを手に入れたって知ってるよな」

ディアンは頷く。

「俺さ、念の為に義父(おやじ)から聞いたんだが・・・ヘルのことは名前すら知らない・・・だってよ」
「なんだと!?」

これには驚くしかない。
ガイアドライバーとシルバーメモリを手に入れるとなると、それなりの手順が必要になってくる。
誰かに売却された、あるいは盗まれたりすれば、ミュージアムの頭目の元に情報は直ぐに集まってくる筈だ。
にも関わらず、琉兵衛はヘルのことを知らなかった。

――トンッ!――

「さて、これはどういうことだろうな?」

ダーツを的に投げ、大地はそう尋ねた。





*****

その頃イーヴィルたちは・・・。

「ハァー!」
「ワォォ!」

順当に二人のドーパントを追い詰めていた。
しかし、



Wの動きが悪くなった。

『ほれほれ効いてきたかな〜?』

オールドの不純な笑いを肯定するように、Wは遂に膝をついてしまう。

『あぁ、なんかワシー、眠くなってきた・・・』
「翔太朗!?起きろ!!寝ちゃダメだ!!」

老人化して睡眠時間の増えた翔太朗。
しかし、ソウルだけで来ているとはいえ、半身が脱力すれば自ずとパワーバランスに支障をきたす。Wとイーヴィル、双方における共通の弱点ともいえた。

『おいおい、さっきの勢いはどうした?』
『もうコイツいいから、こっちやろう』

オールドとヤングは標的をイーヴィルに絞る。

『チッ!バカ者め・・・・・・こうなっては仕方ない。いくぞ相棒』
「無論だゼロ」





*****

関根家。

良枝が光子にさんざん問いただすと、光子は狂った笑いをしだす。

「なんで・・・?」
「フフフ!そうよ!私が老けさせ屋に頼んで、あんたの娘を老けさせたのよ」
「なんでみゆをお婆さんなんかにしたのよ!?」
「目障りだったの」

なんだか最低な答えが返ってきた。

「あんたの娘がいると、うちの子が主役をやれない。一番になれないからよ!・・・どう、納得した?」
「そんな・・・そんなの納得できるわけないでしょ!!」

良枝は光子に掴みかかる。

「良枝さん落ち着いて!」
「冷静に話し合いましょう!」
「離してェェ!!」





*****

そして、イーヴィルVSオールド&ヤング。

――ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!――

【DARKNESS・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルはブラッドアントラーを四回弾き、ダークネスサイドの腕と肩と足に其々の武装とエネルギーを纏わせ、先ほど解除したばかりだった指の刃物化も再び発動する。

イーヴィルは一気に勝負を決めるべくジャンプした。

「『カオストルネイダー!!』」

その状態で跳び蹴りをかまそうとする。

『させるか!!』

咄嗟にヤングは波動を発してイーヴィルに浴びせることで軌道を逸らさせた。

「ク・・・ッ」

しかしイーヴィルは少しつらそうにするも立ち上がってみせた。

『なに?あんたらもか!』

ヤングは忌々しそうに叫ぶ。

『じゃあ今度は俺だ』

次はオールドクリークがイーヴィルの両脚に接触する。

「うぅ・・・!!こんなモノ如きで・・・!」

イーヴィルはダメージに苦しむも、老化現象にまでは至っていない。

『なぜなんだ?何故俺たちの波動が効かない?』
『悪いが、相棒の身体にはテロメアやクロノスが無いものでな』


ゼロの説明どおり。
元々は魔力で実体化したプログラムであったリインフォースの肉体は歳をとらない不老の身だ。
それに此の世に初めて生を授かってからもう数百年にもなる。
なので精神と細胞に干渉して老化や若年化させるドーパントといえども、リインフォースの肉体年齢を変化させるのは至難の業なのだ。


そして、この光景を見ているW=フィリップは自分達の無力さに苛立ちを感じた。

「やはり、今の僕たちは足で纏いなのか・・・」

その時、十数メートル先に一つの人影が・・・。

「・・・シュラウド・・・」

なにもせずただこちらを見つめるシュラウド。

(このドーパント達はイーヴィルに任せれば倒せる。しかしそれでいいのか?この先の未来で、サイクロンアクセルエクストリームが必要じゃないと言い切れるのか?)

フィリップの葛藤は、ただ虚しく空に解けるだけだった。




*****

ビリヤード場

「私、井坂先生に聞いたの」
「何をだ?」
「井坂先生にウェザーメモリを渡したのは、シュラウドよ」
「ッ!!?」



――これを使いなさい。貴方の望みを叶えてあげる――
――・・・・・・そうさせてもらうよ――
――WEATHER――



「貴方はあの女に、利用されていたのよ」
「シュラウドが・・・・・・俺の家族を・・・」





*****

そして・・・・・・。

「ヘルが生前使っていたアレら。そのことを調べるのに苦労したぜ。昔のことだが俺は管理局員だったからな、色々とディープなところに片脚突っ込んで漸く手に入れた情報だ。耳の穴かっぽじって心して聞けよ」

「・・・さっさと言え」

ディアンはキッパリといった。

「・・・・・・あのガイアドライバーとバニティーメモリの製作者は、プレシア・テスタロッサだ」
「なん、だと・・・!?」

余りに唐突過ぎる真実。
それはディアンの胸のうちに、大きく重く圧し掛かった・・・。

――トンッ!――

そんななか、大地はもう一本のダーツを、的の中心に命中させた。

次回、仮面ライダーイーヴィル

限界突破のO!/力【オーバー】

「この『欲望』はもう、私の手中にある・・・」

これで決まりだ!


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