隆盛と宣言のAtoZ/真【まこと】
永遠の名を持つ白い悪魔・仮面ライダーエターナル。
黒い脳細胞を持った不滅の絶対悪・仮面ライダーイモータル。
その名乗りを聞き、
「ふざけんなよ・・・!仮面ライダーはこの街の人達の希望だ。戦争屋(テロリスト)が名乗っていい名前じゃねぇ・・・!」
翔太朗は静かに怒りの感情をたぎらせる。
「俺たちは新しい街の希望だ。間違ってはいない」
悠々とエターナルは答えた。
「・・・・・・イモータルよ、一つ訊かせて貰うぞ」
「なにかな?」
ゼロがいきなりイモータルに質問しだす。
「堺蒼助(さかい そうすけ)にメモリを渡したのは貴様か?そして、デュアルも・・・・・・!」
「あぁ、あのバカか。そんなこともあったなぁ。確かにあの男にジョイントの力を貸し与え、君の愚兄の哀れな亡骸を発見したのもこの私だ」
やはりあの事件の黒幕はシックスだった。
「そうか・・・・・・ならば、死ぬる覚悟はできているのだな・・・?」
それは質問ではなく、ただの自己意思の確認作業。
「ゼロ、先に私が行く」
「翔太朗、僕も先にいくことにする」
怒りを感じているのはなにもゼロと翔太朗だけではない。
彼の手には、恐竜型の自立移動可能なガイアメモリのファングメモリ。
彼女の手には邪龍型の自立移動可能なガイアメモリのダークネスメモリ。
二人は奇しくも目の前の敵と同色のメモリを変形させてライブモードからメモリモードにした。
【FANG】
【DARKNESS】
【JOKER】
【LEADER】
「「変身!」」
「「変身!」」
【FANG/JOKER】
【DARKNESS/LEADER】
フィリップの肉体は右側が白色で左側が黒色、刺々しく荒々しいフォルムをした”牙の切札・ファングジョーカー”に変身。
リインフォースの肉体は右側が黒色で左側が紫色、刺々しく荒々しいフォルムをした”暗黒の統率者・ダークネスリーダー”に変身。
それによってゼロと翔太朗の意識は転送され、抜け殻の肉体が倒れる。
「来い・・・!」
「ハハハ・・・!」
エターナルはコンバットナイフ型武器のエターナルエッジ、イモータルは黒いエネルギー銃のイモータルマグナムをてにもつ。
「「ワゥオオ!!」」
Wとイーヴィルは野獣に匹敵する荒っぽい動きでエターナルとイモータルに飛びつく。
ファングジョーカーもダークネスロードも、数あるフォームの中で特に身体能力に特化した形態。
そう易々と敗れはしないものの、戦況はけっこう危ない。
元から死者の強化蘇生体である克己と、生前から魔人に匹敵する力を有した上に管理局の技術で強化再生されたシックスが、強力なガイアメモリで変身しているのだから栓無き話なのだが・・・。
「なんて奴だ・・・!」
「加勢せんとまずい!」
「四人とも、すぐいくよ!」
【ACCEL】
【NAIL】
【HOPPER】
「変、身!」
「変身」
「変身!」
【ACCEL】
【NAIL】
【HOPPER】
三人は変身して味方の加勢に赴こうとする。
が・・・。
――バンバンバンバン!!――
――ボォォォォアアア!!――
――ピュンピュンピュン!!――
「「「うわぁぁぁああああ!!!」」」
多数の銃弾がアクセルに、高温の火炎がネイルに、何かの毒薬液がホッパーのぶつけられる、
それをやったのはNEVERの寡黙なガンナー、芦原賢。
新しい血族の植物伝道師のヴァイジャヤと、天才放火犯の葛西善次郎。
マシンガンを発砲する賢は銃撃をやめて手袋を外し、ヴァイジャヤは両手につけていた毒薬液入りのアクセサリーを打つのをやめて二の腕をだし、葛西も火炎放射器を止めて帽子をとった。
「ゲームスタート」
「派手に燃えてくれよぉ?」
「そろそろ、いくかな」
【TRIGGER】
【FLAME】
【YGGDRASIL】
賢のT2トリガーメモリは宙を舞って右手の平に、ヴァイジャヤのT2ユグドラシルメモリは彼の二の腕に、葛西のT2フレイムメモリは火の字型の火傷がある額に挿しこまれていく。
そうして賢は右手そのものが銃火器と化している青き銃撃手のトリガー・ドーパント。
ヴァイジャヤは全身から植物を生やしたかのような世界樹のユグドラシル・ドーパント。
葛西は全身が赤・黄・青の炎で彩られた火炎のフレイム・ドーパントに変貌した。
「なに・・・!?」
アクセルが驚いていると、トリガーはライフル、ユグドラシルは体から樹木の槍、フレイムは只単に強烈な火炎放射を行なう。
「「「うああああぁぁぁぁああああ!!!」」」
だがこれらの攻撃は、予想外に強力だった。
そして一方WとイーヴィルVSエターナルとイモータルでは、
――ガシャン!――
【ARM FANG】
【TALON DARKNESS】
Wは右腕からアームセイバー、イーヴィルは右手の甲と右前腕部から鉤爪(タロンブラッカー)を生やした。
流石に武器なしで戦うのは無謀としか言えなくなって来たのだろう。
「ワァウ!」
「ウォォウ!」
エターナルとイモータルに飛びつくWとイーヴィル。
それを振り払われようと、両者らは互いにジャンプして再び攻防が始まると思えば
――ザシュン!――
――バキュン!――
「「ぐわッッ!!」」
エターナルエッジの斬撃とイモータルマグナムの銃撃が先手をとり、二色の戦士の変身を強制解除させる。
「フィリップ!」
「リインフォース!」
変身が解けたことで、翔太朗とゼロがその場にかけつける。
「こうなったらもう、エクストリームしかねぇ!」
「これで負ければ後はないぞ!」
二人は自らの相棒に肩を貸して立たせた。
【CYCLONE】
【JOKER】
【MAGICAL】
【WISEMAN】
「「「「変身ッ!」」」」
【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/WISEMAN】
二組は変身が完了すると同時に、飛来する大型の鳥型ガイアメモリ・エクストリームメモリと、大型の飛竜型ガイアメモリ・エクセリオンメモリVer.Xに相棒の肉体をデータ粒子として収納させ、ドライバーと合体させて展開する。
【XTREME】
【XCELION】
サイクロンジョーカーエクストリームとマジカルワイズマンエクセリオンの登場。
彼らは胸の中央からプリズムビッカーとネクサスブレイブを出現させ、
【PRISM】
【NEXUS】
プリズムメモリとネクサスメモリをソードの柄に挿入して抜刀する。
「「「「ハァア!!」」」」
勢いよくプリズムソードとネクサスソードで斬りかかって行く。
最初は実に拮抗したよい勝負だった。
しかし、状況はある一言でひっくり返される。
「あぁ言っておくが、ここらにはこっそりと爆薬をしかけてある」
「な、なに!?ってグアァァァアアア!!」
イモータルの言葉を真に受けてしまったWは、その隙をつかれて斬撃と銃撃を同時にくらう。
「左!フィリップ!」
「チッ・・・うつけ者。魔界777ッ「悪いがソレは封殺させてもらおう」
イーヴィルが魔界能力を発動させようとした瞬間、
「さあ、地獄を楽しみな」
「さあ、苦痛を味わいなさい」
【ETERNAL・MAXIMUM DRIVE】
【IMMORTAL・MAXIMUM DRIVE】
エターナルエッジとイモータルマグナムのマキシマムスロットに、エターナルメモリとイモータルメモリがインサートされ、ガイアウィスパー共々に変身時のメロディが流れ出す。
「「うっ!うぅぅ・・・!」」
「「うあッ・・・あぁぁぁあ!」」
Wとイーヴィルの身に異変が起こり始めた。
「うおッ・・・ぐぅぅぅ・・・」
「あぁぁ、うぅぅ・・・」
「んあぁぁぁ・・・!」
勿論、アクセルもネイルもホッパーも、その身に異変が生じていた。
「終わりだ、過去の仮面ライダー」
「そして、己がメモリと能力に別れを告げなさい」
エターナルは親指で下方を指差し、イモータルは何かを握りつぶすような仕草をした。
そして、
変身が強制的に解除された。
それだけでなく、エクストリームメモリとエクセリオンメモリは、意思を失ったかのように墜落した。
さらには強制的に変身を解除させられた照井とディアンとヴィヴィオが敵によってこっちに投げ飛ばされてきた。
「これって一体・・・」
「仮面ライダーが・・・」
この惨状ををみた亜樹子と御霊だが、動かぬ証拠とでもいうように、ライブモードのファングメモリとダークネスメモリが
『『ヴォォオオオ!!!――――――』』
苦しんだ末、動かなくなった。
「僕たちのメモリが、機能を無力化されている・・・」
「こんなマキシマムがあるなんて・・・」
フィリップもリインフォースも驚きを禁じ得ない。
それほどまでにエターナルたちの力は規格外だったのだ。
「俺たちのメモリは特別でね。エターナルレクイエムは一度発動すれば、T2以前のガイアメモリは作動不能――永遠にな」
「さらに私のイモータルエレジーは、発動した際、使用者が点在する次元世界における全ての魔力結合を妨害する。T2による魔力は例外だがね」
エターナルとイモータルは、近くに仲間のドーパントが歩み寄ってきながらの状態で、余裕たっぷりに説明した。
「あたし、聞いてない・・・」
「そんなメモリがあるなんて・・・」
「T2を纏めて持ってるのは、お前だな」
「ッ!逃げろ亜樹子!御霊さん!」
トリガーの銃口が向けられ、絶体絶命の亜樹子と御霊。
その時、
【CYCLONE】
【WISEMAN】
マリアとアダムがT2メモリを起動させて亜樹子と御霊の前にたつ。
そしてメモリは二人の首筋に入り込んだ。
屈んでいた亜樹子と御霊が顔を上げて目にしたのは、
『『うぅ・・・ハァ!』』
トリガーの銃撃を阻止するサイクロン・ドーパントとワイズマン・ドーパント。
「マリアさんとアダムさんが・・・ドーパント?」
『何故邪魔をする?プリフェッサー・マリア、ドクター・アダム?』
「プロフェッサー、マリア・・・?」
「ドクター・アダム・・・だと?」
寡黙な彼には珍しく、トリガーがサイクロンとワイズマンに質問する。
その内容にフィリップとリインフォースは驚愕した。
『『・・・・・・・・・』』
サイクロンとワイズマンは亜樹子と御霊からT2メモリとアナザーT2の入ったバッグをとって変身をとく。
「克己、もういいわ。メモリはほぼ集まった」
「シックスよ。貴方もこれ以上ここで戦う必要はありません」
「そうだな」
「では、帰るとしよう」
エターナルとイモータルは気をよくしたのか、二人の言葉に素直に耳を傾ける。
「マリアさんが、そんな・・・」
「まさか・・・アダム捜査官・・・」
「これが現実よ、坊や」
「騙していてすまなかったな、お嬢さん」
マリアとアダムはそういうと、あのオルゴールとハーモニカをフィリップとリインフォースに手渡していった。
*****
時間帯は夜。
選挙された風都タワーの周辺にはパトカーがうんざりするほど停まっていた。
「風都警察署、超常犯罪捜査課の刃野だぁ!」
「真倉だぁコノヤロー!!」
「お前らの要求はなんだコノヤロー?」
と、役立たずの刑事コンビが騒いでいると、
――ドガァァァアアアン!!――
メタルとグラウンドによってパトカーが投げられた。
これは紛れも無く、「お前らじゃ相手にならない」と言ってるのと同義であった。
『『ハハハ・・・!』』
ドーパント達の笑い声も、それを示すかのような声音であった。
*****
翌日、花火大会当日。
一同は林の中にいた。兎にも角にも体を休める為に。
「ダメだ・・・反応しないままだ」
「私もだ。飛行魔法さえ使えない」
何度もスタートアップスイッチを押そうと、術式を組もうと、全くもって意味を成さない。
「敵の手にあの2本のメモリがある限り、変身はおろか、まともに戦うことさえできない」
「おい、これを見ろ」
フィリップが打ちひしがれていると、照井がビートルフォンの液晶に移ったTVを皆に注目させる。
そこにはエターナルと五大ドーパントが映っていた。
『風都市民諸君に告ぐ。俺は仮面ライダーエターナル。ガイアメモリに命運を握られた、哀れな箱庭の住人達を、解放するものだ』
エターナルは高々に宣言した。
そしてエターナルメモリを引き抜いて変身を解除する。
『この最新型ガイアメモリと、巨大光線兵器・エクスビッカーを我々は所有している』
風都中のテレビ画面にエクスビッカーが映し出された。
『もはや如何なる武力も干渉できない。この風都タワーを拠点に、我々は、風都を自由の楽園へと変える!』
克己の演説には熱が篭り始めた。
『ところで市民諸君。この街にあと3本、我々が望むガイアメモリが残っている。それが揃えば、我々の戦力は完全無欠だ。見つけたら、風都タワーまで持参してくれ。該当者には、報酬金として十億出そう。我々の同志として迎えて安全も保障する。――以上だ』
そうしてNEVERのTVジャックは一旦終了する。
「随分とまぁ、思い上がってくれたものだな」
「思ういあがり具合なら、こいつらも負けてはいないだろう」
リインフォースが悪態をついていると、ゼロがミッドから持ってきていた小型機材をマンティスフォンに接続して液晶にミッドチルダで放送されている映像を映していた。
勿論映っているのはイモータルと六大ドーパントだ。
『やあ、ミッドの親愛なる下等種族の諸君。私の名は仮面ライダーイモータル。絶対なる悪意の定向進化によって誕生した、新しい血族の頂点である』
イモータルもまた、NEVERのそれと同じく、余裕の口調だ。
『今我々は、かつて君たちのミッドを救った英雄・仮面ライダーイーヴィルが現在活躍している地球の風都にいる。我々は多数の最新型のガイアメモリを所持している上、素晴らしきNEVERの者達を同志に加えたことで、巨大光線兵器・エクスビッカーを共同所有することとなった』
イモータルは余裕そうな口調を一切崩さない。
『さらに我々は、あらゆる存在を次元を越えて一瞬にして転送する”エクセルーラー”を開発した』
イモータルたちの背後、丁度エクスビッカーと背中を合わせあう形で存在するエクセルーラー。
『これを用いればエクスビッカーの効力を諸君にも体感させてあげられるだろう。ただし、仮面ライダーや管理局がこの状況を打破できるとは思わないことだ。我が同志が発動したマキシマムの効果で地球上の旧式メモリは作動不能な上に私が発動させたマキシマムの効果で、現在地球上は恒常的にEXレベルのAMFが働いてるような状態だ。人間の限界を越えた魔力を持った魔導師といえども等価に形無しとなる』
イモータルは着実にゆっくりとミッドの住人に恐怖を与える。
『怨むのなら、我々新しい血族を復活させ、AtoZ・26本のアナザーT2メモリを開発した時空管理局を怨みたまえ』
そうして、放送は終了した。
「このままではミッドの連中が危ないぞ!」
管理局よりミッドチルダのほうを優先するあたり、ディアンの爪の垢を腹黒い上層部に煎じて飲ませたいくらいだ。
「しかし残りの三本・・・それが逆転の鍵になるかもしれないな」
「でも見つけ出すのは難しいよ。今の放送で二つの街はきっと大騒ぎだ」
「確かにな・・・・・・別の方法を模索したほう「相棒、フィリップ。あいつらと何かあったのか?」
ゼロの底冷えた声。
「サイクロンのワイズマンの二人に会うつもりだな」
「ダメだよママ!あの人達は私達を騙していたんだよ!」
「しかし、彼らが私達を助けてくれたのも事実だ!」
「それに正しい心がまだ残ってるかもしれない・・・・・・Wとアクセルとスカルのメモリを作った人が悪じゃないと信じたいんだ!」
リインフォースもフィリップも声を張り上げる。
「まさかあの女がシュラウド本人だと?」
「・・・・・・あぁ」
フィリップは静かに頷いた。
「リインフォース、貴様は?」
「私はただ、信じたいんだ。彼の瞳には、マイスターとよく似たモノが宿っていた」
本当の理由を話すのさえ戸惑うも、そういったリインフォース。
「落ち着いたらどうだ、二人共?奴らが味方という証拠もない」
「ついでにいうと、女に甘いハーフボイルドは、俺の役割のはずだ。お前等らしくないぞ」
「相棒でも、立ち入って欲しくないことがあるって言ったよね・・・翔太朗」
「ゼロ、私にも詮索して欲しくないことの一つや二つはある・・・夫婦でもな」
「「へ?」」
――バチン!――
――ドガッ!――
フィリップは翔太朗を殴り、リインフォースはゼロにビンタした。
「僕らしいってなんだ!?自分自身のことさえわからないのに・・・君になにがわかる!?」
「フィリップの言う通りだ!落ち着けだと?ゼロは私の全てを知ってるわけでも、私の忌まわしい過去を全て共に生きてきたわけじゃないだろ!!」
予測を越えた激昂ぶり。
「僕の・・・それがわかるのは・・・僕の・・・僕の・・・・・・本当の親だけだ」
「他人の死を悲しむことを知らぬ環境で生まれ育った貴方には・・・決してわからない・・・私の希望も絶望も・・・」
そうして、フィリップもリインフォースも走り去ってしまった。
(・・・フィリップ・・・)
(・・・リインフォース・・・)
*****
園咲家。
――カチッ・・・カチッ――
「チッ」
何度スイッチを押せど、メモリは反応せず、若菜は舌打ちする。
「私達の街の象徴が、あんなクズどもに占拠されるなんて・・・!!」
「フハハハハハ!やるじゃないか死体の分際で!」
「えぇ、全くですな(最悪の場合、局長に連絡して風都タワーごと・・・)」
さりげに大地はトンデモないことを考えていた。
*****
風都の街中。
放送を見聞きした住人達は必死にメモリの奪い合いをしていた。
もっとも、ミュージアム製の旧式ばかりだが。
「金に目が眩んだ風都の市民が、自ら最後のワンピースを持って行こうとしている。終末への鍵とも知らずに」
園咲冴子は街の状況を冷観していた。
「素敵にイカレてるわ。あの犯人達」
*****
ミッドチルダ・クラナガンの地上本部前。
イモータルが流した放送によって、住民達やマスコミが多数ごった返していた。
「あの黒い仮面ライダーは何者なんですか!?」
「管理局がガイアメモリを開発していたというのは本当ですか!?」
「新しい血族の復活とはどういう意味ですか!?」
「どういうことかハッキリ説明しろォ!!」
「管理局が悪事働いてどうすんだよ!!」
「本家本元の仮面ライダーに謝れ!!」
もう言いたい放題の状態である。
この件について何も知らなかったレジアス・ゲイズは、復権して早々なこの事態に頭を痛めていた。
「どういたしますか?」
「・・・・・・とりあえず、首謀者と共犯者のリストは既に出来上がっているらしい。直ぐに会見を開いてある程度の情報公開を行い、街の人々を沈静化させなくてはならん」
秘書役のオーリス・ゲイズに問われ、レジアスはそう答える。
(本当の正義は、やはり何処にも無いのか・・・?)
ネガティブな思考がレジアスの脳裏をよぎった。
*****
時空管理局・本局。
そこでは重要会議が急遽開かれていた。
勿論この場に集まったのは、以前ガイアメモリと大きく関わった者達ばかり。
機動六課の三隊長だった、高町なのは、フェイト・T・テスタロッサ、八神はやては当然その会議に際し、立ち見ながらも出席していた。
おまけにフェイトとしては心の内に救う不安材料は片付けきれないだろう。
自分の夫であるディアンはまだ、風都に留まっている筈なのだから。
当初はアリカンシェルの砲撃という過激な案も出たが、それでは被害者たる風都市民と仮面ライダー達さえも巻き添えにするとして即刻却下された。ついでにいうと、アルカンシェル自体の搭載と発射許可権の申請がまともに通りそうになかった。
それもそうだ。何しろアナザーT2などの開発を行っていた諸悪の根源は、本局所属の一部の科学者たちなのだから。
会議室は実にギスギスガチガチな雰囲気を極めに極め、皆まともなアイディアが浮かばず終いの状態だった。
その様子を見ていた三人は、
(状況は最悪すぎるね・・・これじゃあ、私達の出撃さえままならないよ)
なのは達は念話を行う。
例え魔力を封じられようと、それでも自分に出来る事を全うしたいという気持ちを抑えられないのだ。
(あの悪者ライダー・・・人が人を責め立てる心情をよーく理解しとる。このままじゃ、管理局は信用を失うどころやない。ミッド市民や多くの次元世界を敵に回すことになるで・・・!)
はやては実に焦った表情をしていた。
(ディアン・・・無事に帰ってきて・・・)
そしてフェイトは、ただひたすらディアンの生還を望み願った。
*****
風都タワーの内部中枢。
「あんたも随分あじなマネをするな」
克己はイモータルにそういった。
「フフフ・・・それはどうも」
イモータルは変身をときながら答えた。
「なんで今回の計画とは関係ないことをやったんだ?」
「なーに。ただ単に、恐怖と憎悪を与えたかっただけだよ」
シックスは実に邪悪な微笑をしながら、克己に返答した。
「あんた、やっぱ最高に淀んでるぜ」
「ありがとう、最高の褒め言葉だよ、大道克己」
*****
探偵事務所。
「フィリップの奴・・・・・・俺はどうしたらいいんだ・・・?」
一人思い悩む翔太朗。
すると、ふと目に留まったもの。
それは、白い帽子を被ることで、銀色の骸骨の仮面の額にあるS字の傷を隠した黒いライダー。
「スカル・・・?おやっさん!?」
仮面ライダースカル。
亜樹子の実父であり翔太朗の師匠でありフィリップの恩人たる人物、鳴海壮吉が変身する一世代前のライダー。・・・・・・いや、今となっては二世代前の仮面ライダーか。
「・・・・・・・・・」
「俺にどうしろって・・・?」
無言だったが、スカルは翔太朗に何かを問いかけたのように、ただ黙る。
ただ、机の上にある物を指差したということ以外は。
「フィリップの本?」
その本を手に取る翔太朗。
「・・・・・・そうか・・・・・・フィリップには家族の記憶が無い。自分の母親への想いと面影を、あの女に重ねていたのか・・・・・・」
翔太朗は悟った。
フィリップの思い悩んでいたことの大きさを。
――カタ・・・――
スカルは自らのロストドライバーを置くと、壮吉の姿に戻る。
壮吉はそのまま消えてしまったが、それは決して幻想ではなかっただろう。
託されたロストドライバーは、依然として実体を持って其処に在ったのだから。
「おい待ってくれよ、おやっさん!おやっさん!!」
しかし、姿の消えた壮吉が現れることはない。
「これは・・・?」
ただ確かなのは、師匠が遺してくれたロストドライバー。
それを手に持った瞬間、
――ガシッ!――
何者かが翔太朗の腕を掴んできた。
「ハーァイ、Wの左側」
「ヒートの女・・・!」
羽原レイカ。
彼女はこの事務所に侵入し、危険分子たる翔太朗を排除しにやってきたのだ。
「えいッ!」
「うあッ!」
レイカの蹴りが翔太朗に直撃し、ソファーへとぶっ飛ばされた。
*****
マンションの屋上。
「何故だ?何故なんだリインフォース?どうしてあそこまで奴にこだわるのだ・・・?」
ゼロはそこで一人、相棒の心の内が理解しきれずにいた。
ネウロがそうであるように、ゼロもまた上級魔人だ。
未だ、愛情関連以外の感情は掴みきれずにいる。
『御主もまだまだじゃな』
(ッ・・・この声は・・・!)
果てしなく聞き覚えのある声。
物心ついたときからずっと聞いてきていた声。
振り向いて視認したその姿は、身体正中の黒いラインを境に左右共緑色で、複眼の色は黒。鬼の如き二本角に口部分を隠すように巻かれた赤いマフラー。
しかし、両前腕部以外の部分は全て半透明なのが気になるところだ。
「・・・兄上・・・」
『久しぶりじゃな』
仮面ライダーデュアル。
上級魔人の一角にしてゼロの実兄、無限レイズの変身する魔人ライダー。
『想像はしておったが、まさかこんなタイミングでこうなるとはのぉ』
「ん・・・どういうことだ?」
デュアルは”やれやれ”といった感じだ。
『ゼロ、我々魔人は知っての通り、誕生した瞬間から階級が決まると行って良いほどに個体の能力差が激しい。故に殆どの下級魔人は自らに降りかかる災厄全てを”運命”として受け入れ、諦めきっている。ワシはそんな下級魔人たちの境遇に納得できんかったがな』
かつて下級魔人の青膿ゼラはこういった。
”弱者は弱者らしく、強者は強者らしく。それが魔界に生まれた者のあるべき姿だ”・・・と。
『だからお前やネウロのような上級魔人は、下級魔人が何人死んだところで、お前らも当人達もそれを運命として諦める。だから、誰もお互いを護り合おうとなんてしない――愛する者と肉親以外はな』
デュアルは続ける。
『だがリインフォースは、平和を望みつつも戦場に立たざるをえなかったベルカの存在じゃ』
「ッ・・・まさか・・・」
それを聞き、ゼロは気づく。
「そうか・・・相棒は長い時の中で、多くの死を見てきた。救いたくても救えない者を見てきた。だから、あいつにとっての故郷の良き想い出は、夜天が闇となる前、造り手や担い手達との・・・・・・」
そうして、ゼロは全てを悟った。
『ゼロ、コレを持っていくんじゃ』
「ん、これは?ドライバーと2本のメモリ・・・」
デュアルが投げて寄越したのは、紫色のメモリと透明なメモリ、そしてスロットが二つあるメモリドライバー。
『ゼロよ。最後にこの言葉、御主に託しておくぞ』
デュアルは少し間を開けてこう言った。
『人々の希望と祈りが、黄金と虹色の光を齎す』
格言めいたそのセリフ。
「どういう意味だそれは?兄上!」
――・・・・・・スカッ――
デュアルの両腕までもが、とうとう半透明になった。
『・・・・・・やはり、急ぎであの世から出てきたが、所詮こんなものか。触れることさえ叶わなくなるとはのぉ・・・』
デュアルはフェンスの向こう側に、浮きながら去っていこうとする。
「待ってくれ、兄上!」
『頼んだぞ、我が弟よ』
そうして此の世から、仮面ライダーデュアル=無限レイズは消え去った。
すると、
「あら・・・やっぱり最後の三本のうち2本は、そっちの手中にあったのね」
「・・・・・・ジェニュイン」
5本指の親指に値している扇動魔女のジェニュインだった。
*****
とあるコンサートホール。
そこにはピアノに触れるマリアと、ただただ何かを考えているかのようにしているアダムがいた。
そこへ、
「来てくれたのね、二人共」
「はい。オルゴールにこの場所のメモが・・・」
フィリップとリインフォースが出向いてきた。
「ここは私の思い出の場所。息子が大好きな曲を演奏した場所。コレはね、その息子が曲をオルゴールにして、プレゼントしてくれたものなの」
マリアはしみじみと語る。
「私にとってもここは思い出深い場所なんだ。若い頃は妻と、歳をくってからは幼かった頃の娘と・・・この風都に電車やバスに乗って何度か来ていた。お嬢さんが持っているそのハーモニカも、妻がここで演奏された曲を気に入って、近くの売店で売られていた物を買った物だ。気紛れで買った物だったが、何時の間にかそのハーモニカは、妻にとっても娘にとっても私にとっても、掛け替えの無い品となっていたよ」
アダムもまた、しみじみと語った。
「マリアさん・・・その息子とは、僕のことですか?」
「・・・・・・・・・」
「答えてください。貴女は、僕の母親・・・シュラウドなんでしょ?」
しかしそこへ、
「残念だが・・・違うな・・・」
「大道克己・・・?」
克己が現れる。『現在』の彼には不似合いなこの場所に。
「この場所でその曲を演奏したのは・・・俺だ。なあ、お袋?」
克己はマリアを母と呼んだ。
「・・・・・・・・・・・・克己は、貴方と同じくらいの歳の頃、交通事故で死んだ。今の貴方とよく似ていた・・・私は克己を、NEVERにした」
「お袋は、毎年細胞増殖で俺の身体を大きくしてくれた」
それは、フィリップにとって衝撃以外のなにものでもなかった。
「この子のためならなんでもする。この子が欲しがるなら、全て私が与える。財団Xがシュラウドの技術を研究して造ったT2メモリも、エクスビッカーも」
マリアは嘘偽りのない本音を語る。
「ならば、アダム捜査官はなぜ・・・!?」
「・・・・・・・・・」
「それは私が教えてあげよう」
「シックス・・・!」
黙々としているアダムに代わり、シックスが登場して説明しだす。
もっとも、
「説明するまえに、彼の素顔を明らかにするべきだろう」
「え・・・?」
――パチン!――
シックスが指を鳴らすと、アダムは自分の首を引っ掻きだした。
何かを剥がす様にその仕草によって、首の皮とピッタリとくっついていたものが剥がれていき、そこを起点にアダム・・・・・・いや、アダムだったものは、誰かの顔面の生皮を脱ぎ取り、素顔を晒した。
「そん、な・・・!?」
リインフォースは驚くしかなかった。
アダムの正体は、ボサボサの黒髪に無精髭を生やした中年男だった。
「彼の本名は、本城二三男。今も昔も、我々新しい血族の熱心な信奉者たる、天才的科学者だよ」
本城二三男・・・・・・その名前にリインフォースは聞き覚えがあった。
しかし、ネウロや弥子から聞いた話では彼は・・・・・・。
「彼は自殺する際に注射したのは、毒物ではなく全く別物の薬品だったんだ、うっかりミスでね。もっとも、首へと大量に注入したことで吐血や長期の昏睡状態に陥っていたようだがね」
シックスは正しく他人事の如く説明していく。
「目を覚ました彼は、己が身がある場所を管理局の施設に保護されているのを知った。昏睡状態だったところを局員が偶然見つけて保護した。・・・彼は今までの人生における全ての常識を覆すような魔法技術に感動し、科学技術のスタッフとして入局した。もっとも、”裏方の側”としてね」
さらに説明は続く。
と、思われたが、リインフォースはその聡明さ故に、気づいてしまった。
「まさかとは思うが、アナザーT2の開発や血族の復活は・・・!」
「あぁ、上役からの命令とはいえ、彼が主任として進めた研究だよ」
「・・・・・・・・・・・・」
二三男は未だに黙る。
「そして、我々が研究所を脱出したあの日、彼は自分から我々に全てを話した上で、もう一度私の傘下となることを頼み込んだんだ。メモリと魔法関連の情報と力を与えて我々をさらに進化させた褒美として、今もこうして補助役を任せているわけだ」
そうして説明が終わる。
「リインフォース君。君の製造者のことを調査して、よく似た男を捜すのには苦労したよ」
などと、邪悪に笑いながら、情報を付け足してだ。
「つまり・・・最初から私とフィリップを・・・・・・」
「あぁそうじゃ。お前らの気持ちを惹き付ける為の偽装じゃよ、お嬢さん」
二三男は本来の口調に戻ってその言葉を口にする。
「「ウソだ・・・・・・嘘だぁぁあ!!」」
そして、
――ドン・・・・・・ッ!!――
人肉を殴ったことで発生した鈍ったらしい音を最後に、フィリップとリインフォースの意識が一時の間、途絶える事となった。
「キーマンズはこれでよし。後はJOKERとLEADERとXCELIONのT2だけだな」
巨大な悪の計画は、いよいよ最終段階に移行しようとしていた。
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