仮面ライダーブライ!
前回の三つの出来事!


一つ!グー組の四人が、地下水脈にてバラバラになる!
二つ!風子はカマイタチヤミーと共に、裏麗の緋水とカブハチナヤミーと戦う。
三つ!小金井とカッパヤミーは、彼らに求愛する神威と戦うこととなる!

サイボーグとタッグと冷血?


激流によって分散してしまったパーティー。
その激流に流されてしまった小金井と、七実の遣いであるカッパヤミーは、目の前にいる変質者と対峙していた。


「好きよ・・・・・・薫、カッパちゃん・・・・・・何も不自然なことじゃないのよ。。人が人を好きになる理由なんていらない。理屈じゃないのよね」

両刃剣を持って語る神威。

「それが例え、子供や怪人でも・・・・・・同姓であっても・・・」

最後にキモいことこの上ないことをいった。
それから飛び掛り、小金井に斬りかかるも、それをカッパヤミーが神威の腕を掴み、投げ飛ばして阻止する。それに構わず、神威は喋り続ける。

「私の中で違う私が言うの。愛しいなら殺せ・・・・・・愛しいからこそ殺せ。最も強く独占欲が満たされる方法とは・・・愛するものを誰にも触れさせない所に連れて行く・・・自らの手で亡き者にすること・・・だってね」


刃介もある意味、独占欲ゆえに七実を居候させているが、神威のような歪んだ思想はしていない。
彼は七実が生きているからこそ・・・・・・否、生きているようで生きていない、生きていないようで生きている。そんな儚い美しさ故に彼女に惚れ込んだのだ。間違っても殺す事で情欲を満たすなんてことはしない。


「抹殺指令のでた火影の写真を見て・・・貴方に心から惹かれたわ。サルとゴリラ、ブスが三人。そのなかで貴方は宝石のように輝いていた・・・私は小金井薫に標的を定めた。他の人達なんかに殺させてなるものですか・・・ってね。それにカッパちゃんも、会って間もないというのに、しかも敵同士だというのに、こんな私とここまで心を通わせることができた。生まれて初めての大親友と言える程に」

神威は長々と語るが、

『神威、あっしはあんたがそういう変態の世界から足を洗えば、もっと親密になれると思ってやしたがね。つーか、あっしも小金井も、そういうアブノーマルな趣味がありゃーせんぜ』

カッパヤミーが釘をさした。

「そうだね。俺らの邪魔すんなら、痛い目に遭ってもらうからね」

小金井は鋼金暗器を薙刀形態の「一之型」牙から鎖鎌形態の「二之型」龍に変形させ、神威に攻撃する。
その際に両刃剣を奪いとることも忘れない。

「どう?今なら許すぞ」

シリアス顔をケロっと崩して喋った・・・

「好きッ!!」

結果、神威に抱き付かれた。

「スゴイ!!見事よ!今のォ!ほれ惚れしちゃった」

微妙を通り越して硬直する小金井の頭を撫でる神威。

「今なら許すぞだって♪ププ!生意気でカワイイ〜〜〜!!」

さらには頬擦りまでするウザさ。
とっとと画面から消えて欲しいくらいにキモい。

『なあ、カミッチ。戦う気あるんかい?』
「もちよ!ハッキリ言って殺すわ!」

なんか神威をあだ名で呼び始めたカッパヤミー。
どんだけ打ち解けてんだコイツら。

「ただね・・・時間をかけて・・・貴方達との戦いを楽しむわ。色々な表情を見てみたい。苦閃の表情とかね」

――バジャッ!――

「わッ!!」
『お・・・ッ』

神威はいきなり砂を蹴り上げ、二人をおどかす。
というか、目潰しが目的のようだ。

「色々な声を聞いてみたい・・・・・・恐怖に満ちた叫び声とかね」

小金井とカッパヤミーが眼を擦ってる間に、

「き・・・消えた・・・」
『どこかに隠れやがったようだねぇ』

二人は周囲に目を配る。

両刃剣を破棄したところから、次は魔導具による攻撃を行うと読んだ。
こんな岩場だらけの場所だ。隠れる場所―――狙い撃ちできる場所を選ぶのは容易だ。

となれば残りの頼るべきものは聴覚=音だ。
二人は神経を全て耳に集中させる。

――コツン――

(こっち!!)
(そこか!!)

小金井は右、カッパヤミーは左に顔を向けた。
小金井は振り向いたほうの音は石の音。

つまりは、

『させるかカミッチィィ!!』
「だったら強行突破よォォ!!」

――ズガガガガガガガガガガガガガ!!!!――

カッパヤミーの正解。
神威は右腕に装着されたガトリングアームによる一斉連射を行う。

しかしカッパヤミーも、仮にもヤミーだ。
銃弾を喰らっても死ぬような軟弱な身体はしていない。

というか背中の甲羅で全部受けきった。

「流石はカッパちゃん。でもドンドンいくわよ〜!」

そういって神威は姿を消す。
カッパヤミーは勿論五感全てで神威を追うも、今一発見できないのか、舌打ちした。

だが、小金井はそんなカッパヤミーとは裏腹にトンでもないものを見つけていた。

「な、な、なんだよコレ・・・・・・」

神威の右腕だったもの。
しかしその実体は、

「!! 機械!?」

義手だった。

『なるほど、全身を機械改造によって、様々なアタッチメントを扱えるようにしているわけかい』

カッパヤミーは納得する。

「カ・オ・ル♪カッ・パ・チャ・ン♪」

不気味な声に振り返ると、

「問題、これな〜んだ?」
『レーザーアーム』
「ピンポーン!御褒美に・・・!」

――シュゥゥゥ・・・!――

エネルギーがレーザーアームに集束し、

――ビューーーーーーッ!!――

岩さえもスライスカットするようなレーザーが発射された。

「うわ!!うわあああああ!!」
『ハッチャメチャじゃないかぁオイ?』

慌てる小金井に対し、カッパヤミーは口から時折水撃弾を発射しながら落下する岩を粉々にしながら走る。

「ま、マジもんの改造人間(サイボーグ)かよ・・・!」
『だから、そういったじゃん。・・・とはいったものの、これでは迂闊に近寄れやしねー』

カッパヤミーの能力は近距離や中距離では有効だが、遠距離には少々分が悪いところがある。

――ピュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥゥゥン!!――

「うひゃああああああ!!」
『オイオイ!!』

と言ってる間にも、ミサイルの乱れ射ちが襲来している。
勿論、二人は必死になって逃げる。

その途中で見つけたのは、左の義手。

「ねえ薫にカッパちゃん。壁や岩をよーく見てみて。丸い玉が埋め込まれてるでしょ?」

神威が離れた場所から話してくる。

「それ・・・・・・「灯」っていう魔導具なんだって。熱を、光を生んでいる。こんな地下の世界に光があるのはそれの力らしいわ」

確かにこの場所だけで、数百もの灯が存在している。


「すごいわよね。400年以上もその玉は輝きを失わずに今も光を齎している。羨ましいと思わない?人間なんていっても100年そこそこでお終い。・・・森光蘭の永遠の命への執着・・・私にはわかるわ。この手に、指先に、顔に醜くシワが刻まれていく・・・・・・それは恐怖。だから私は考えた・・・老いた部分は取り替えればいい。壊れた部分は取り替えればいい。・・・そうしてたらね・・・」


そして神威は一気に二人の眼前に現れ、

「体中、機械になってたの」
「で、出たぁあ!!」
『どこ行くんだ小金井?』

神威の登場に涙目で逃げ出す小金井。
が、神威がそれを許すはずはない。

――ガキッ――

「なによぉ!人をオバケみたいにィ」
「いてててて!!」

クレーンアームで捕まえられた小金井。

「つっかま〜〜えた♪」
(あちこちにアタッチメントを仕掛けてくるとは、まるで”千刀巡り”の真似事だな)

カッパヤミーは主の弟が三番目に戦った巫女の技を、知識としてだけなら知っていた。

「さて!覚悟はいいかしら?」
「『・・・・・・・・・・・・』」

神威のマジな雰囲気に、小金井もカッパヤミーも黙った。





*****

一方、トライブ財閥。

「今頃彼らはどうしてるかしらね〜〜?」
「さあ?」
「あら、つれないのねぇバット」

シルフィードはバットと話をしていた。

「でも仕方ないっすよ会長。俺っちは兎も角、会長の出番はもっと先なんすから」

勿論吹雪も同席している。

「ま、そうなんだけ・・・・・・あれ?」
「どうかしました?」

シルフィードは何かに気づき、バットは問うてみる。

「吹雪君、ちょっと急用ができたかもしれないわ」
「なんすか?」
「これ、鋼君に渡してきて頂戴」

投げて寄越されたのは黄色いカンドロイドだった。

「今からっすか?」
「お願い、特別手当てつけるから」
「じゃ、行って来ます」

早々と返事をした吹雪は会長室から地下の駐車場に向っていった。

「トラカンドロイドですか」
「あれって結構使えるのよね。あの根暗人形男の技術力も、相も変わらず凄まじいもんだわ」

明らかに個人のことを言っている。

「しかし大丈夫ですかね?彼に封印の地へ向わせて」
「大丈夫よ。彼には何時も低レベルながらも魔導具の核を持たせてるから、なんなく通行できるわよ」
「いや、そうではなく」
「じゃあ、なにかしら?」

バットは一呼吸おいて言った。

「凍空吹雪・・・・・・彼の一族をほぼ殲滅した鑢七実と再び顔を会わせることです」
「バット・・・吹雪君だって子供じゃないわ、余計な心配は無用よ。・・・それとも・・・」

今度はシルフィードが一呼吸おいた。

「貴女は”私の使い魔”の分際で、私に反抗する気なのかしら?」
「・・・・・・いいえ、個人的な感想を述べたまでです」
「そう。だったら良いのよ」

シルフィードは妖艶に笑った。
着用(コスプレ)している、真庭忍軍風の忍び装束の殺伐さとは裏腹に。

「あ、ついでに貴女も行って来なさいよ。封印の地に」
「気紛れですか?」
「増援よ。無許可のね」

シルフィードの物言いにバットは呆れてため息をだす。

「わかりました。では、転移魔法で一っ飛びしてきます」
「行ってらっしゃい。全て魔法の使用許可を出しとくから」
「委細承知」

知らないところで、火影に二人の増援者が送り込まれていた。





*****

一方小金井は小金井で、大ピンチに陥っていた。

「うわぁ!!あああああああ!!」

叫びというか絶叫し尽くす小金井。
それもそうだ。眼の前には自分の唇を奪おうとする変態(あくま)がいるのだから。

『止せ、カミッチ!!』
「邪魔しないでカッパちゃん!」

神威に羽織締めをかけてくれているカッパヤミーがいるのがせめてもの救いか。
だがそれでも神威は小金井にキスしようと頭を動かす。
でも小金井は体を動かして器用に避け続けた。

「なんで避けるわけぇ!!?」
「自分のムネに聞けぇーっ!!」

なんか不必要な剣幕がはられている。

「フンッ!!いいわよ、ケチ!キスくらいなにさ」
『いや、ケチとかいう以前の問題だから』

神威は小金井を乱暴に下ろし、さりげなくカッパヤミーにツッコまれていた。

「・・・さて、そろそろ時間もあれだし・・・・・・!」

神威は狂気と殺意に表情を染め上げ、

「KILLING TIME♪」

殺害予告をしてきた。
そして再び姿を眩ます。

「楽しかったわ、薫、カッパちゃん・・・・・・安心してね、薫の亡骸はキレイに剥製にしてあげるし、カッパちゃんのメダルは永久保存するから」
「・・・・・・そうだな、確かに時間もない。風子姉ちゃんや水鏡、七実さんとも早く合流したいし・・・・・・そろそろ、こっちからもいくか」
『ふん、ならば援護は任せてくれや』

神威の言葉に対して、二人は吹っ切った表情で呟きあった。



そして、作戦が実行される。



「熱反応・・・・・・感知・・・」

神威は岩陰からあたりを観察し、バイザーにて温度探査を行っていた。

「グッバイ♪My friend・・・」

アームを構えて一斉掃射の準備に入る。
だが、


――ピッ、ピッ、ピッ――


「何・・・・・・これ?一つ・・・二つ・・・まだ・・・まだ増えてる・・・どういうこと・・・?」

作戦が発動した。


――ピッ、ピッ、ピピッ――


「二つ・・・三つ・・・熱反応が幾つも増えてる!そんな・・・バカな・・・!?」

神威は「う・・・・・・うぅ・・・・・・」と呻き、

「ずるいわ!!何をしたのよ二人共ォ!!?」


――ドガガガガガガガガガガガ!!!――


バズーカアームによる乱射を行い、辺り一面をボロボロにした。
そしてその過程で漸く気がついたのだ。

熱反応の正体は

「灯の魔導具・・・これが・・・熱反応の正体・・・」

一箇所に集められることで、人間の体温並みの温度をもった核の玉。

「しゃらくさいマネしてくれるわね・・・・・・あいつらぁ・・・」

神威は自分でも自分が苛立っていくことを感じていく。

「カメラモードVer.2―――赤外線スコープ」

バイザーの視界をチェンジし、再捜索。

(でもきっと無駄ね・・・あのコらのすばしっこさで反応についていけないわ。・・・かといって、これ以上乱射しちゃったら、私の居場所を教えちゃうばかりか、岩が崩れてひとたまりもないわよね)

少し冷静になって考える神威。
そのさきで行き着いたのは

(獲物と狩人・・・・・・立場が逆になっちゃったみたいね)

自分の不利さかげんだった。

――カツッ――

聞こえた音に神威は振り向く。
音の正体は小石の落ちる音。

しかし神威はそれにすらビクついた。

(なんてこと!?私は今怯えている!?冗談じゃないわ!!私は常に主導権を持ちたいのよ!受けに回るなんて真平御免だわ!!)


そう、神威はこの機械のボディになって・・・・・・いや、なる前からそうだった。
自分好みの少年を徹底的に怯えさせ、恐怖させることが楽しくて愉快で快楽的だった。
そしてその恐怖が最大限まで引き出され、端正な顔が怯えに歪んだところで

獲物を殺す。

若々しい綺麗な顔は恐怖にその表情を歪めて形どる。
その顔に手に足に体に何度も刺す何度も刺す何度も刺す。
悦楽の瞬間。


(今まで・・・ずっとそうだったじゃない。怯えた顔が大好き。その顔をグチャグチャに潰すのが大好きそんな私が・・・逆に・・・怯えてるですって!?)

神威は膝を地面につき恨めしそうに言った。

「許さない・・・許さない・・・許さない・・・悪いコね・・・」

だが、そんな神威の視線に偶然か運命か。
あるものが映りこんだ。

(あれは・・・・・・)

しばしの沈黙。それは神威の言葉によって砕かれる。
その声は実に弱弱しかった。

「・・・・・・・・・ねぇ薫、カッパちゃん。出てきて頂戴。私のこと見てるんでしょ?謝るわ・・・もう降参するから、出てきて欲しいの・・・」

かといって、すぐに出てくるほど、小金井もカッパヤミーも愚かではない。

「見て。もう武器は捨てた・・・これは只の義手よ。お願いよ、二人共・・・・・・もう許して・・・」

――ザリ・・・――

小金井とカッパヤミーが岩陰から出てくる。

「・・・・・・手を、上に上げて」
『まだ信用しきれないので、距離をとる。とあえず手を上――ドバァァン!!――!!?』

砂地からいきなり、行く本もの腕がでてきた。
触手のような機械の腕は驚く二人にお構いなく、二人の両腕をつかんでつるし上げる。

「はァい、バンザーイ♪」

二重の意味をこめてそういう神威。

「あははははははははははは!!」

二本の腕からさらに生えた幾数本の腕。
その先には五本指や鎌などといったものがついている。

「アシュラアーム・・・・・・隠し腕を砂地に潜り込ませてたのよね・・・・・・残念でした。ウフフ♪」

神威は得意げになって小金井の顔を覗いた。
最高の恐怖を期待して。


「・・・・・・・・・・・・」


小金井は質素な無表情であった。

「・・・怯えなさいよ・・・ねえ・・・カッパちゃんもさぁ・・・・・・」
『知りゃせんぜ』

カッパヤミーも冷たい声音だ。

「何よ!!その落ち着いた顔は!?怖がってよ!泣いてよ!貴方達はもう直ぐ死ぬのよ!殺されるのよ!」

「みんながみんな、恐怖に縛り付けられると思うなよ」

小金井は一言言った。

「烈火兄ちゃんが・・・・・・願子を焼こうとした紅麗にそういった。「誰に負けるか」ってね。烈火兄ちゃんってすっげーバカなんだけどさ」

小金井もカッパヤミーも、武器と身体能力であっと言う間に自分達の枷を切り刻み、

「そーいうトコ、好きなんだよね」
『確かにソイツは、好感がもてまさぁ』



神威の両腕と両脚と、根元からぶった切った。



――バチッ・・・バチン!――


切断されたアシュラアームから火花が散る。

「悔しい・・・なにが悔しいって・・・負けたことよりも、貴方達に「好き」って言わせた男の存在よ。嫉妬しちゃうわね、殺してやりたい」

無力となった神威は虚しくそういった。

「俺なんかに負けてちゃ、烈火兄ちゃんは殺せないぜ。じゃなッ!」
『んじゃ、また』

そういって去っていく

(ああ・・・・・・薫、カッパちゃん・・・・・・)

と思われた途端、引き返してくるのはどうしてだろう。

(ん?)

引き返してきたのはカッパヤミー一人で、小金井は向こう側で悪戯めいた笑顔で居る。
カッパヤミーは神威の髪の毛を引っ張って引き摺りながら歩き出す。

「きゃあぁーー!!嬉しい!!帰ってきてくれたのね!あぁん好きよ!!どこへでも連れてって〜〜!!」
『沈め』


――ドボンッ!――


カッパヤミーは、ドSボイスで神威を川に落としたのであった。

「ひ、酷い!!助けてぇぇーー!!」

「『達者で〜〜〜♪♪』」

彼を見送る二人の顔は、実に邪悪そうな笑顔と悪戯めいた笑顔なのでした。

ちなみに、

(ウフフ♪でもそんなイタズラっ子なトコも好きだったりして♪なーんて・・・そんな余裕ないみたい・・・体・・・錆びちゃうかしら・・・)

小金井&カッパヤミーVS神威
小金井とカッパヤミーの完勝(カッパヤミーに到っては特殊能力未使用)





*****

一人の男がいる。
水の刃を携えるその姿は、線の細さ、長い髪からか女性に見紛う。
性格は冷静沈着。計算高く無口。
そして・・・非情だ。


一人の女がいる。
生き損ないと評されるその雰囲気は、無機物的な絶世の美しさを放つ。
性格は無欲で無関心、殺人を一切厭わない。
そして言語道断空前絶後の天才性ゆえに、虚しく儚い。



その名は水鏡凍季也。
そして、鑢七実。

この二人は今、びしょ濡れの体に気をつかわず、川の最果てにある場所に辿り着いていた。
植物の根がある程度張っていて、幾つ物石仏が設置されていた。
火影に縁のある者を供養する場所なのだろうかと思う場所だ。

「しく・・・しく・・・しく・・・ぐす・・・しく・・・しく・・・ぐすっ・・・しく・・・しく・・・」

その石仏の後ろで女の泣き声がした。

「誰だ?」
「なにを泣いてるんです?」

石仏の後ろにいたのは、長い髪を三つ編みにした眼鏡の少女。

「あ・・・あなた達こそ、誰・・・ですか・・・?」

お互いにお互いの正体をしらない現状。

「もう・・・許して・・・・・・酷いこと・・・しないで・・・帰して・・・家に、帰してよ・・・・・・」

途切れ途切れに、涙声で訴える少女。

水鏡と七実はとりあえず濡れた服と体を乾かす意味も篭めて、少女と話し合う為に焚き火をした。
そのへんに枯れ木と、七実の力でどうにかなかった。

「私・・・・・・美由紀(みゆき)っていいます」

とりあえず少女は名乗ってくれた。

「いつものように学校に行く途中・・・変な男の人に攫われました。眼が覚めたらここに・・・ケータイも圏外で、助けも呼べません・・・」

説明を始める美由紀。

「私を・・・ここに連れてきた・・・長髪の片目の男に・・・・・・嫌がる私を何度も・・・何度も・・・辱められて・・・・・・もう死にたい。でも、こんなところで死ぬのはイヤ・・・イヤよ・・・」

震えながら説明されていて、水鏡は心当たりのある人物を思い出す。

(木蓮・・・だな・・・)

烈火たちが出会った中で最低最悪の人物。永井木蓮・・・・・・。

――きゅっ――

すると美由紀が水鏡と七実の腕を掴んできた。

「お・・・お願いです・・・一緒にいてください。私を・・・ここから助けてください。お願いします・・・・・・」
「まあ、構いませんよ。我々もここでやること終えたらとっとと出て行くつもりですから」
「だが、色々と保障はできないし、足手まといにもなるな」

一応同行させることにした。

数分ほど歩いていると

「・・・・・・・・・あの・・・水鏡さんに鑢さんていいましたっけ?好きな人とか・・・つき合ってる人とかいるんですか?」
「いない」
「私はいますよ」

正直に答える二人。

「水鏡さんって、なんか男子校だったら狙われちゃいそうな顔ですよね」
「・・・・・・・・・(汗)」

能天気に言ってるつもりであろうと、本人としては言って欲しくなかったりする。

「私・・・今、お付き合いしてる人がいるんです。すごく変な人なんですけど、愛してるんです」
「・・・私のほうは、かなり欲深な変人です。告白も向こうからしてきましたね」

つられるように、七実も恋人(じんすけ)のことを断片的に話した。
恋人の話をする美由紀の表情は実に真摯で、ウソなど一片もなかった。

そうこうしている間に三人はドンドン進んでいき、光の差す場所のすぐ寸前まできていた。

「あ・・・・・・広いところに出る。もしかして、外に出られるのかしら?またあの人に会える・・・うれしい・・・うれしい!もう・・・あんまり嬉しくて・・・私・・・私・・・」

そして、

「貴方を殺しちゃうわ」

美由紀は水鏡の左胸をナイフで刺した。
七実はそれを黙ってみていた。

「くく・・・あぁはァ・・・」

美由紀は奇妙な声をだし、眼鏡を捨てて髪をとき、上着を脱いだ。

「お久しぶりねぇ色男。命を司る女神、(みこと)よ・・・」

露出度の高いくの一装束を着込んだは、元麗十神衆が一人、命という名の悪女だった。

「油断しちゃったわねぇ!あんな私もなかなかカワイかったでしょ?風子じゃなかったのは少し残念だけどね・・・この調子で一人ずつ・・・一人ずつ狩って行くよ!そこのチビ女と一緒に今、殺してあげる」

得意げになって喋る命。
七実のそれより遥かに邪悪な表情で、自らの美貌を歪める。

だが、

――バシャァァァン!!――

水鏡は、水となって弾けた。

(流石は、水傀儡)

七実は最初から全て理解していた。
そして本当の水鏡は命の背後に居る。

「相も変わらずの女狐君・・・そこそこ笑える猿芝居だったがね、どれだけ猫を被ろうが貴様の性悪なニオイは消えない。二人揃って三秒で敵だと思ったよ」
「命さん。貴方が学生を演じるには八年は遅いですよ。人のことは言えませんが」
「なっ・・・なんだとてめぇら!!」

命は二人の顔をビンタした。
お返しに二人の拳を顔面にくらったが。

「あ・・・痛・・・殴った、鼻血・・・・・・」

ヨロめく命。

「女に手をあげるのかい!?まったく風子といいテメーらは暴力集団だね!!」
「関係ないな。フェミニストじゃないんでね」
「戦人に、男も女も関係ないでしょ?」

ヒステリーになる命とは裏腹に、水鏡も七実も実に冷めきった表情だった。

「相変わらず威勢だけはいいねェ男女!裏武闘で初めてお前を見たときから、気に入らねえとは思ってたんだよ!(カイ)程度に負けたマヌケバカが、私に勝つつもりなのかい?」



戒・・・・・・麗十神衆が一人であり、水鏡の扱う流派・氷紋剣(ひょうもんけん)の兄弟子。
自らを水鏡の実姉の仇と偽り、魔導具・氷魔閻を用いて水鏡と相対した。
その戦いは実に激戦と呼べる代物で、最後は水鏡も彼の剣士としての純粋な強さとプライドに敬意を表し、自分の敗北を素直に認めたほど。しかし戒は最後は氷魔閻にて自害し、水鏡の本当の仇は氷紋剣の師匠である巡狂座(めぐりきょうざ)であると言い残し、さらには水鏡にある言葉を投げかけて逝った。

紅麗に対して堅い忠義をもっており、紅麗も彼の死を悼んでいた。
ある意味、音遠・雷覇・磁生にならぶほどの高潔な男だったともいえる。



そんな彼を侮辱された水鏡の反応は、

「訂正しろ。お前如きが戒を上回ってるつもりか?分際を弁えることだな。お前は麗のなかでも最低に値する」

静かなる怒気が沸騰点に近づきつつあった。
その瞬間、

――ギュルルルル!!――

「・・・・・・草が」

――バサっッ!!――

木の根が水鏡と七実に絡み付いてきたが、それを不快に思った七実が手刀にて切り裂く。

「オイオイ・・・牙王から聞いた時は言い訳のデマと思ってたが、マジモンかよ。まあいい、男女(ソイツ)みつけられたしよ!」

向こうから、木の根を操っている男が近づく。
頭にバンダナを巻き、長髪で隻眼の男。

「みィーかぁあ・・・ぐぁみィいぃ〜〜」
「・・・・・・木蓮」
「へー、あの人が」

七実は初めて見て聞いた木蓮の姿と声に、ゲスな人種の気配を察した。

「惜しかったな命。あんな化物が居るのは計算外だぜ」
「もう!出てくるの遅いよ〜〜木蓮!私、この馬鹿達に殴られちゃったんだよぉ」

命はいきなり人が変わったかのように、木蓮に対して甘えた声をだした。
肩を抱き合いベタベタする二人は、

接吻した。

「・・・・・・・・・・・・」
「はい・・・?」

水鏡は絶句。七実も七実で素っ頓狂な声をだす。

「キスで治る」
「バカ・・・///」

「・・・・・・・・・・・・」
(さっきの話、本当だったんですね)

いきなりのバカップル空間発生。

「私達・・・つき合うことになったの」
「見せ付けちまったかぁ?羨ましいかぁ?イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

思いきり自慢するアホども。

「昨日の夜はスゴかったよな、命・・・またアレしていいか?」
「バカ!こんなときになに言ってんだ///」

もしこの場に非リア充である人生をこの上なく怨念的に思ってる方々がこの場にいたら、今は正しく幸せ絶頂のリア充バカップルのコイツらを完膚なきまでに叩きのめすであろう。

「ふ・・・・・・」

水鏡は呆れ混じりの絶句から復活。

「祝福の言葉を贈るよ。イカレた者同士、お似合いのカップルだ。人気の無い山奥にでも行って、死ぬまでイチャついてくれ」

現実的に堂々とイチャついてる奴が至近距離にいたら、ウザかったり気まずかったりする。

木蓮は木の根のムチで水鏡を叩こうとするも、両腕の自由が利いているので、閻水にて木の根は切り裂かれる。

「すいません。雑草は雑草らしく、毟られてください。虚刀流六の奥義『錦上添花(きんじょうてんか)』」

一気に木蓮へと接近した七実は両の手刀を上方に持ち上げてから一気に振り下ろし、木蓮の両腕にキツい一撃をくらわせた。

――ボキッ!――

右腕。

――グシャ!――

左腕代わりの植物。

「ぐぎゃあああああああ!!」
「木蓮!!」

水鏡によって斬られた左腕部分に生やしていたはともかく、生身の右腕は完全に骨折した。

「このクソ女!!よくも私の木蓮を!!」

命は怒りに怒り、地面からあるものを呼び出す。

「おいでぇ白髭(しらひげ)ぇ!!」

現れたのは、体長2メートルを越す、人形型魔導具。

「人型魔導具は一体だけじゃないのさ!魅虚斗(ミコト)を遥かに凌ぐパワーを持つ魔導具白髭!!」

命は自慢げに説明した。

「こいつにのって、ブッ殺してやるよ!!」

そう断言し、白髭の内部へと搭乗する命。
自分が乗り込むこともできれば、魔導具との別行動をとっての戦闘もできるのが、命が御自慢の人型魔導具の特性だ。

「シェードフォーゼ以下、ですかね」

さり気に七実は品定めをするように白髭の性能に酷評を下していたが。

「ブツブツうるさいんだよ!!ションベン漏らして死んじゃえ!!」

乱暴かつ乱雑な言葉遣いで叫び散らす命。

「はぁ」

七実はため息をつき、自分から白髭の懐に飛び込んだ。
そして、彼女は足りないリーチを補うべく、グリードとなる。

「避けるんだ!!命!!」

無駄とわかりつつも、木蓮は叫ばずにはいられなかった。

『虚刀流二の奥義「花鳥風月(かちょうふうげつ)」』

刀の刃先の突き如く、七実の貫手は白髭の外装を突き破り、完全に貫通していた。

「命ォォオオオ!!」

木蓮は急いで白髭内部にいる命に駆け寄った。
白髭の腹が開き、そこからは無傷の命がでてくる。

「命!!大丈夫か!?」

ぺたんと座り込んでしまう命に、木蓮が問いかける。

「こ、この化物・・・わ、わざと・・・・・・スキマを縫うようにして、刺した。・・・肉体的ではなく・・・精神的ダメージを・・・狙って・・・」

恐怖に顔をゆがめる命。
そんな彼女の秘部からは小水がだらしなく排出され、彼女の足と地面を濡らした。

「うっ・・・・・・」

流石の木蓮も、恋人である命のはしたない場面に直面し、引いた。

『あらあら、木蓮さん、いけませんよ引いちゃ。一度愛し合うと決めた以上、恋人のどんな酷い所に受け入れてこその『愛』じゃないですか』

と、七実は木蓮に注意する。
まあ、ある意味七実にはそれを言うにたる経験はある。
何しろ七実に一目ぼれした男は、七実の邪悪さにさえ惚れ、遂には化物であることすら受け入れているのだから。

『さて、適当に毟るとしましょう』

そういって七実は木蓮に近づき、技を放とうとする。
殺人剣術たる虚刀流の技をだ。

「ま、待って!!」

しかしその時、命が七実の足にしがみついた。

『・・・・・・・・・』
「ヒッ・・・・・・」

命は七実の雰囲気と目に恐怖した。

元から平静だった表情はグリードとなって消えたが、それでも尚、木蓮と命を道端にある草のように見る彼女の視線に。

「お・・・お願い・・・この人は、木蓮を・・・殺さない・・・で・・・・・・」

命は踏ん張った。上っ面だけの愛情でここまでする奴はいない。

『・・・・・・いいでしょう』

七実も察したのか、人間の姿に戻った。

「ただし・・・・・・わかってますよね?」

でもしかし、その雑草を見るような目つきは変わらない。

「念のため、そちらの木蓮さんが隠し持ってる物、暫しの間没収させていただきます。命さんは抑えててくださいね」

七実はそういって木蓮の体に貫手を刺した。

「ッッ!!うアアアアアあぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあああ!!!!」
「耐えて・・・!!堪えて木蓮!!」

他人の手が自分の内臓を引っ掻き回しながら魔導具・木霊(こだま)の核を引っ張り出す痛みは想像を絶するモノがあり、木蓮は体中を動かして抵抗する。
命の抑えがなければ、今頃どうなっていたか。

(彼女は・・・・・・絶対敵に、回すべきじゃない・・・)

水鏡は冷や汗をかいてそう思ってると、七実は木蓮の体から手を抜いた。
血で染まりきったその手には、木霊の核が握られている。

「あ、あ・・・あ・・・・・・」

木蓮はそのまま気絶寸前の状態にまでダウンしてしまう。

「はぁ・・・」

七実は血で染まった手と核を水で洗いながら溜め息をだす。
それは他人ではなく自分にだった。

(私はいつから、こうなったんでしょうか?)

そう、人間だった頃の七実なら武器没収なんて温いことだけでは済まさず、真庭蟷螂にしてやったように、尋問や拷問を行うことも厭わなかっただろう。そして聞きだせることを全て聞き出したら、問答無用で殺したはずだ。

(やっぱり、人は変わるもの・・・なんでしょうか?)

思い出すのは、自分に惚れたと言った男の後姿と、新生火影の仲良しぶり。

「まぁ、気にしても仕方ありませんね。・・・というか、そろそろ出てきたらどうですか?」
「僕もさっきから、奇妙な存在感を感じていたよ。誰か一人、こっちを覗き見している」

七実と水鏡は、敵意の視線で観察者を見抜く。

「そ、そうだ!!頼む!!もうあんたしかいねぇ!!そいつらを殺してくれぇ!!」

激痛が走る中、その痛みを誤魔化すかのように叫んだ木蓮。

その言葉に反応して姿を現したのは、左目の下に十字型のペイントをしていて、左腕に三つの玉をつけている少女?だった。
顔つきは中性的であったが、スカートをしているところから誰もがその人物を少女と思うだろう。
しかし、

「殿方がその恰好・・・・・・趣味なんですか?」

七実は見抜いていた。

「ハハハ」

少女改め少年は短く笑う。

「初めまして、水鏡さんに鑢さん。ボクは(あおい)っていいます」

原典の世界において、水鏡は今までに見た事もないものを見ることとなる。
そしてこの葵に敗れた。

しかし、七実の天才性と能力は・・・ただ圧倒的だったとだけ・・・語るとしよう。
鑢七実の全力を出した勝負の詳しい内容など、語る価値もないのだから。
そう・・・グリードとなって、少しの間は出せるようになった全力など・・・・・・。

次回、仮面ライダーブライ

選択と影と増援



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