仮面ライダーブライ!
前回の三つの出来事は!


一つ!遂に裏麗の本丸、HELL OR HEAVENへの道が開かれる!

二つ!土門と吹雪は、バクヤミーと死四天の蛭湖と戦い勝利した!

そして三つ!小金井とバットはジョーカーと遭遇し、さらには死四天の綺理斗(キリト)とも遭遇してしまう!

さいならと光界玉と雷覇


死四天の一人、綺理斗(キリト)
彼女は幾つモノ顔を持つ存在だ。

「少しいいこにしていてね、死愚魔」

キリトは己が従僕に命じた。

「ちょっと私の話をしてあげる。私は自分の本当の年齢を知らない」

キリトは極めて平らな表情でそう告げた。

「左手のブレスレット、魔導具『輪廻(りんね)』」

それが発動した瞬間、

「ウソや・・・・・・」
「成る程・・・・・・」

ジョーカーとバットが呟いた。

美しい黒髪は白髪となり、小奇麗な顔はシワのよった意地悪そうな老婆のそれに変わったのだ。

「魔導具能力、術者の肉体年齢の変幻自在!!」

老人状態の姿は、シルフィード達と出くわしたのと同じもの。
つまりはSODOM中にいたキリトはどれもこれも同一人物なのだ。

「驚いたかいの若いの!?ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

キリトはしてやったり、と言わんばかりに大笑いした。

「・・・・・・その魔導具、副作用はなんですか?」

しかしバットは何時もの冷ややかな表情でそう訊いてきた。
するとキリトは笑うのをやめ、今度は真顔となり、老年期から幼年期となる。

「スパイ活動の時は便利だったけど、強制的な肉体年齢の変動には、肉体年齢と共に精神年齢にも影響が現れたの」
「今は、9歳あたり・・・ですか?」
「うん」

バットは見事言い当てた。

「9歳の体の時には9歳の私が、お婆ちゃんの体の時にはお婆ちゃんの私が―――私は全然意識してないのに、性格が変わるって周りの人が言ってた」
「人間なんて、子供の頃から大人に成長して年老いるまで、何回かくらいは人格が変動していくものですからね。大方貴女の場合、中身が変動し過ぎて、原形としての自分自身を見失ったといったところでしょうか」

バットの確信めいた台詞に、今度は青年期になったキリトが答える。

「ご明察通りよ。私は元の年齢も性格もポッカリ忘れている。数学の知識があるから子供じゃないんだろうけど、ひょっとしたらお婆ちゃんなのかもしれない。輪廻で変化する度にその私を本当の私だと信じるけど、やはりわからないから、知りたいの」

バットはまた何か言おうとするが、キリトはそれを許さないと言わんばかりに喋り続ける。

「輪廻を壊せば答えが出るかもしれないけど、好奇心と共に恐怖心も生まれる。真実の自分を知る恐怖」

今度は若年期へ。

「だってそうでしょ?鏡を見たらお婆ちゃん。若い私になりたくても輪廻は無い。堪えられない♪それに、これだけ人体に影響するものが壊れたときになにが起こるかわからないもん。取り合えず魔女っ娘気分を楽しむことにしました♪」

正直なところ、人生を嘗めまくってるとしか言いようの無い主張である。

「ふーん、ケッタイな魔導具やねぇ。ところで、質問杉B!ぎょーさんおる人格の中で、自分らをほっといてくれる心優しい年齢の君はおるんか?」

ジョーカーのそんな質問に、

「いないと思う。遊び好きでノーテンキな14歳の私でも、ウキウキしてたでしょ?」

真顔で答えるキリト。

「だったら最早それでも構いませんが、もう一つの魔導具は?」
「右手のブレスレット、魔導具『涅槃(ねはん)』・・・能力は、死愚魔の操作!!」

それと同時に死愚魔がこちらへ襲い掛かってくる。

『ーーーーー!!』
「お黙りなさい!!」

――ゲシッ!!――

しかしバットが死愚魔の頭に飛び蹴りを行った。

「火影の忍者を殺したら、本当の私を教える。森様そう言ったの。リスクなく真実を知るにはこれが一番ね」

と、キリトが悠長に語った。

――ドスッ!――

すると、鋼金暗器の鎖鎌の刃が死愚魔も突き刺さる。

「バカ言ってんじゃないよォ!!姉ちゃん、森がどんな人間か知らないのかよ!!?あいつは、自分の欲望の為にしか動かない人間なんだ!いや・・・人間さえ捨てた!!緋水も、紅麗も・・・ボロクズみたいに捨てた!姉ちゃんもきっと捨てられる!!」

「質問C―――じゃあ、貴方に本当の私を教えられる?」
「そ・・・そりは・・・・・・」
「小金井君、無駄です。この手の輩は極限まで追い詰めなければ言葉に耳を傾けません。今は戦いに専念しなさい」
「で、でもさぁ!!」
「デモもストもありません!!」
「ッ!」

小金井はバットの大声にビックリした。

――チャキ・・・ッ――

「鋼金暗器、刃の部分を回収しておきました。あんなバカデカい化物に刺したら逆に振り回されますよ?」

といってバットは先ほど突き刺さられた鋼金暗器の刃を小金井に返す。

「お取り込み中のところすいませんが、また質問のほう、よろしいでしょうか?」
「えぇ」

キリトはそうきいてきた。
彼女の頭上では死愚魔が蜘蛛の巣の中央を陣取り、奇妙な唸り声を上げ、両の翼のような翅のような部分をガパっと開いて何かを外に出し始めた。

「質問D・・・あれはなんでしょう?」

あれ・・・とは死愚魔が出している幾つモノ球状物質である。

(卵?)
(餌?)
(この魔力・・・・・・まさか!)

小金井とジョーカーは大ハズレの予想をしたが、魔力に敏感なバットは気づいた。

「答え・・・・・・」
『〜〜〜〜〜!!』

スっ・・・とキリトが腕を上げた瞬間、死愚魔が咆哮した。
そして、



球状の物体全てから、極太の光線が乱射された。



――ドンッ!!ドンッ!!――

「伏せて!!」
「のわッ!?」

――ドゴッ!!ドゴッ!!――

その圧倒的な破壊力の前に、ただの壁など障子紙に等しい。
辺りはボロボロに破壊され、光線が発射される前とは比べようもない程の惨状だった。

因みに前回をお読みの読者の方々はもう既に察しているかもしれないが、この光線こそが蛭湖の血液ストックを破壊した元凶なのだ。
皮肉にも蛭湖は仲間によって勝機を奪われてしまったと言ってもいい。

「あはははははは!!ビックリした?」

当のキリトは玩具を自慢するように笑いこける。

「あれ?」

だが耳にしていたイヤホン型の通信機に誰かが連絡を入れてきたらしい。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はーい」

暫く一方的に報告を聞いていると、から返事気味に返答し、通信を終了する。

「管理室の人に怒られたじゃない死愚魔ーっ!出力少し下げろって命令したでしょう?」
『グル・・・』
「もう!!」
『もう!!って・・・あんた楽しそうに笑ってたろ?』
「ありゃ?いたのキミ?」
『さっきからいたよ!!』

とここで漸くクロアリヤミーが会話に出てきた。
黒いだけに影と化していたのであろうか?

『うるせぇよナレーション!!作者がオレをど忘れしたからこうなっちまうんだろうが!!』
「クロアリ、誰と話してるの?良かったら医療班呼ぼうかな?」
『余計なお世話だ!』

漫才真っ盛りなやり取りである。
その隙に、バット・小金井・ジョーカーはヒソヒソと作戦会議を行う。

「では私はヤミーを、ジョーカーさんは死愚魔を」
「了解や!そして小金井くんが無防備になったキリトのお嬢ちゃんを叩くっちゅーわけやな」
「うん、それでいこう!」

作戦会議終了。

「作戦会議は終了かい?」

するとキリトは老年期となる。

「やっぱり、今のワシが一番、死愚魔との相性がいいねぇ。どれ・・・もう一度、魔弾をみまってくれようか!」

自信満々のキリトの耳に入らぬよう、声を潜める三人。

「ではまず私たちが行きます」
「OK!」

そしてタイミングを合わせる。

「行きますよ黒蟻ィィ!!」
『かかって来やがれぇ!!』

バットとクロアリヤミーは肉弾戦を繰り広げ始めた。
悪刀によって体力が無制限となっている今のバットは疲れることなく動き続けて腕と脚を攻撃手段として扱い続ける。

『人間にしてはやるな』
「お生憎様ですが、私は普通の人間では在りません」

一方ジョーカーはというと、

「くっ・・・」

自身の魔導具を発動させていく。

「帝・・・釈・・・廻・・・天!!!」

完全に発動した。

「重力結界(+)!!」

ジョーカーの持つ魔導具によって球状の結界が完成した。
その周囲というか直下付近には凄まじい音が立ち、床をズタズタにしていた。
勿論ジョーカーにも何かしらの負担はかかっているようである。

「この結果に一歩踏み込んだら・・・通常の何倍もの重力がのしかかる!化物、体重何キロや?」
「何か企みがあるな!?そうはさせないよォ!!」

キリトはジョーカーの邪魔をしようとするが、

「邪魔はさせない・・・!」

それを更に小金井が邪魔する。

「この状態で帝釈廻天尾部に重力結界(−)をつくる!これによりなにが出来るかと言えば!」

穂先部分には重力増加作用、尾部には重力減少作用。
つまりは投げ易く、飛び易い状態ということである。

「ピッチャー第一級ーーっ!!投げましたァーーーっ!!」

実況者のような大声で自らのピッチングを宣言するジョーカー。
投げつけられた帝釈廻天は一切ブレることなく飛んでいき、一直線に死愚魔の体めがけてその刃を突き刺す結果となった。

よって重力結界による重力増加効果範囲内にスッポリ包まれてしまったのだ。

「死愚魔ーーっ!!」

キリトは絶叫するも、もう遅い。

「今です小金井くん!!」

――ビュン!!――

バットの声が発せられると同時に小金井は床を蹴った。

「だあああああああああ!!!!」

力の限り叫ぶ精一杯の声。
鋼金暗器は壱之型となり、



死愚魔の首を斬り、討ち取って見せた。



――バギッ!――
――ペタ・・・っ――

その瞬間、涅槃が壊れ果ててしまい、キリトは青年期の状態となって尻もちをついてしまう。
いや、尻餅というより、戦意そのものを落っことしてしまったようにも思える。

「・・・最後の質問ね・・・」
(こりゃ・・・ここはもうダメだな。クソ・・・完全に見せ場ナシで終わる損な役回りか・・・)

キリトの声音から自分のこれからを予想する。

「戦う術をなくした今・・・私は・・・私はどうやって私を知ればいいの?」

涙の雫を流し、キリトは尋ねる。

「「・・・・・・・・・・・・」」
「・・・輪廻を壊したらええ。自分らには答えることができひん」
「ダメよ。私にそんな有機は・・・ない。できない・・・・・・」

そうして、死四天の綺理斗は崩れ落ちた。
あとはクロアリヤミーを倒せばよいと誰もが思ったが、世の中は上手くいかないのは小説も現実も変わらないらしい。

――ドンッ!!――

何者かがこの部屋に通じる扉に猛攻撃を仕掛けてきたのだ。

「!!」
「今度はなんや!?自分らの入ってきたドアから!」
「まさか、敵襲?」

そのまさかだった。


――ドゴォォォン!!!!――


体中のあちこちが傷だらけの血だらけでボロボロだが、その姿は見間違えようがない。
奇妙な仮面に奇怪な民族衣装を着た色黒の巨漢。

「こいつ・・・!最澄さん達と戦っとった奴やんけ!紅麗さんに焼き殺されたはずやのに・・・!?」

ジョーカーは驚くついでに説明してくれた。

「オォォォオォォォオオオオオオオオオオ!!!!」

誰に向けてのものか、鼓膜に響く大きな大きな咆哮が響く。

門都(カドツ)・・・?生きてたの・・・?」

キリトはかすれるような声で仲間の名前を呼ぶが、当人はそれを聞いてるだけの精神的余裕は無かった。

「殺す!!殺す!!!殺す!!!!」

やたらと殺すというフレーズを連呼する門都。
けれど、

『黙れ死に損ない!』

――グンッ!!――

「ゲバァ!!」

意外なことにクロアリヤミーが門都に攻撃をしかけてきたのだ。

「・・・・・・小金井くん、ジョーカーさん、チャンスです。連中が共食いしてる間に前進しましょう」

バットはこの状況下である意味正しい判断を下し、それを伝える。

「自分はもう一暴れしてくるで」

だがジョーカーは帝釈廻天を背負いながらトンデモないことを言い出した。

「・・・・・・それは麗としてですか?」
「そうや。それ以外に理由なんていらへん」

ジョーカーは鋭い眼光をさらしてバットに応答する。
バットはその眼光を見て、小金井の体を片手で持ち上げた。

「え、ちょっと、何すんだよ!?」

小金井は混乱するがバットは気にしない。

「御武運を」
「はいはい」

手を適当に振るジョーカー。
そんなジョーカーにバットは全てを理解した上で前へと進んだ。
小金井がなにやら喚いているが、今はそれにつき合ってる暇は無い。
これから起こることを考えれば、この場に留まることは愚行としか言いようが無いのだから。

「さて、と」

ジョーカーは後ろに振り向き、

――パギィィン!!――

門都を殴った。

「おブ・・・!!」

蹲る門都。

「自分が一人で残った理由は二つや。あんましあの二人に嫌われたかないんでご機嫌取りするってのと・・・・・・」

ジョーカーは其処から一呼吸おき、実に冷淡な口調で言い放った。

「なんでワレ生きとんねん?」

――ゲシ!ゲシッ!――

「紅麗さんの死刑執行で生き残る奴なんて初めて見たわ。褒めたいところやねんけど、やっぱワレ、生きとったらアカンよ」

ジョーカーは門都を足蹴にしながら一方的に話をしていく。

「紅麗さんのミスは自分がケツふかな。麗の一員としてワレをもう一回死刑にする」

そして

「死ね」


ジョーカーの体を、門都の刃が貫いた。


「ヒャ・・・ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

狂い咲くような門都の笑い声。
が、

『だから黙れっての!!』

――バギッ!――

「グゲ・・・!!」

クロアリヤミーは相当笑い声が不愉快に聞こえたのか、門都を殴った。

「あんた、サンキューな・・・・・・そんで、スマンな・・・」
『別に・・・』

ジョーカーの感謝と謝罪の意味は、何となくクロアリヤミーに伝わっていた。

(ホント、オレって悪党には向いてねーやぁ)

クロアリヤミーはほとほと自分の中途半端な性格を嘆いた。

「帝釈廻天・・・・・・重力結界(+)究極値!!」

その瞬間、ジョーカーと門都とクロアリヤミーを重力場が包み込む。

「ぐぎゅ!!?」
「重力に重力を加えると・・・メチャクチャ強力な重力場によって・・・空間が歪む。この時空間をなんてゆーか知っとるか?」
『ブラックホール』

それはあらゆる物体、光さえも捕えて放さない永遠の暗闇に続く終焉の穴。

「ギャ・・・ボぁ・・・」

門都が黒い闇に喰われ呑まれた。
残るは・・・・・・。

(やっぱし、オレって善にも悪にもなれない、半端者・・・か)
(ホレ・・・見い。次がのうなってしもうた・・・・・・・・・損な性格やな、自分)


――オオオオオォォォォ・・・ン――


そして、森羅万象を無限に飲み込み喰らう暗黒の穴は、静かにそれを閉じていった。

「あ・・・・・・・・・」

効果の範囲外にいたキリトは、それを死人のような眼で見ていただけだった。

「門都も・・・関西弁の人も・・・クロアリも・・・消えた―――」


――ザグッ!!――


そして、帝釈廻天だけが残された。
まるでそれは切札と呼ばれし男の墓標にも見えた。
もし彼にもう少し時間があれば、必ずこんな言葉を言い残した出あろう。


”さいなら、紅麗さん”





*****

ルートA
陽炎とシルフィード。

この二人もまた、他のルートと平行して進行中である。

「・・・・・・・・・・・・ねぇ」
「なに?」

長い沈黙のあと、シルフィードと陽炎が口を開く。

「誰かに見られてないかしら?」
「あら奇遇ね。私も勘付いたトコよ。美し過ぎるってのも困りモノよね」

と、おちゃらけてみせるシルフィード。

「気配はあのドアの向こう側、中ボスさんの部屋ってカンジね」

指差された方向には分厚い隔壁にもにたドア。

「それにしても気になるわ。今までSODOMに入ってからこの手の視線や気配は感じていたけど、どういう訳か殺気や敵意が混じっていない」
「その答えはこの扉の向こうじゃないの?」

――ギィィィ――

自動ではなく手動の扉だったらしく、シルフィードは手で押しながら進み、扉を開けて部屋に入っていった。

部屋の内部は一言で言うと、憩いの場を模したリング場だった。
部屋の外周に当たる部分には椅子とテーブルが多数設置されており、シルフィードたちが進入してきたものを含めて四つの出入り口が十字架のように道を交差させている。

そして、中央部の四角い高台は、四隅に噴水や花壇があったが、十字の中央において、ボロ雑巾の如き状態で寝転がらされている男によって、その優雅さはなくなっていた。

「そいつは裏麗の龍虎丸(りゅうこまる)。元同僚なんだけどネ。ちょっと邪魔なんでオネンネさせたんだ!」

すると四隅の噴水の近くに座る一人の女。どうやらここの番人を片付けたのは彼女らしい。
にしても龍虎丸、という名前だったとは・・・ボロ雑巾状態の雑魚には勿体無く、名前負けもいいところだ。

「貴女陽炎さんでしょ?あったりィーー♪そっちの金髪さんは知らないけど」

その女は黒いサングラスをかけ、露出が高くボディラインを出す服を着た女だった。

「私は鬼凛ちゃんでィーッス!!ヨロシク♪」
「はい宜しくね。・・・二人纏めて、ね」

シルフィードは笑顔で返事したかと思えば、一気に冷めた声音で後ろを振り返った。

そこに居たのは白い髪に白い服といった白だらけの恰好をした無表情な男だ。

(この視線だ!私を何度も監視していた・・・何者?)

陽炎は様々な思考を脳内で錯綜させる。

「初めまして、といえばいいのかしら?心を読む女(キリン)全てを消す男(ラセン)?」

それにかまうことなくシルフィードは一応確認を意を込めて彼らの名を呼んだ。

「ところでヤミーが居ないようだけど、何処かしら?」
「さぁてね?私たちが龍虎丸をボコって貴女達を待っていた間、ヤミーはおろか子供一人来てないわ」

鬼凛は嘘偽り無くそう告げる。

「そう。ということは・・・」

――ズンッ!――

何かが天井から降って来た。

「貴方達は眼中になかった。それだけのようね」

シルフィードと陽炎の背後に降って来たそれは、二種類の生物の姿をしていた。
まるで毒蛾ように不気味な翅と触覚と複眼、ナマズのような髭と体表の滑りや腕と直結した鞭。
名づけるなら”ドクガナマズヤミー”とでも言うべきだろうか。

「これが、ヤミー・・・!!」

陽炎ははじめて見るヤミーの姿に圧倒されかけたが、しっかりとその姿を見据える。

「さーてと、ちょっちキツいけど、役割分担として私が一人でヤミーの相手するから、陽炎は一人でそっちのバカを相手にしてちょうだい」

シルフィードはヤミーの出現に対しても焦りも怯えもせず、何時もの口調で言葉を紡ぐ。
だが、

「鬼凛ちゃん、急に気分が変わったわ。陽炎さんと金髪さんの二人でヤミーと戦って。私と螺閃はここで見物するから」

鬼凛は行き成り戦闘を見送った。
一見ヤミー戦を押し付けたようにも見えるが、実のところは違う。





*****

封印の地から脱出してから、螺閃はこんなことを考えていた。

(僕は・・・・・・花菱烈火の母の呪いを消す)
「何言ってんのよ螺閃!?光界玉の力忘れたの!?消すモノの大きさに比例して・・・貴方も其れ相応のモノを奪われるのよ!!」

勿論鬼凛は猛反対した。

「そんな強力な呪いを消したら貴方自身が!!」
(僕は”自分の消える時”を見つけたんだよ)

しかし、螺閃の決意は堅かった。

「なんでよ!?なんで螺閃が烈火くんのママを助けるのよ!?」
(彼も母親のことで苦しんでいた。それを背負って戦って・・・背負ったものを捨てようとしている敵の僕を・・・剥き出しの心で叱ってくれた)

思い起こされるのは封印の地での戦い。

(それがただ・・・嬉しかった気がした。自らの力で消してしまった僕の母は二度と戻ってこない。だが、彼だけでも・・・この苦しみから解き放ってやることはできないだろうか?)

感情の無い・・・いや、失ったはずの螺閃が機械的とは到底言いがたい思考をし、それを鬼凛が読み取る。

(似たような境遇の者の心を救って、この身が消えるなら本望だよ。僕は陽炎に会いに行く)
「・・・そう・・・でもさ・・・陽炎の呪いは”不死”・・・望みは死にたいってことだよね?光界玉を使う前に、私に試させてくれないかな?」

そこで鬼凛は妥協点をうった。

「もし、私が陽炎を殺すことができたら」

鬼凛は拳を強く固く握り締める。

「螺閃とずっと一緒にいられるんだよね!?」

そして、涙の雫を溢れさせながら、最後の確認を行った。





*****

これこそが鬼凛が陽炎とシルフィードのヤミー戦をさせる理由。
魔導具を使う人間以上の戦闘力を発揮するやもしれないヤミーの力なら、より高確率で陽炎を殺せるかもしれない。
自分はあくまで諦めは悪いだけの我侭な普通の人間だから、都合よく現れた化物に汚れ役をさり気に肩代わりさせた。・・・・・・ただそれだけなのだ。

「昆虫と水棲のキメラタイプ・・・だったらコレかしら?」
「ん、それってあの時のメモ帳・・・?」

シルフィードはポケットから例のメモ帳を取り出す。
様々な生物の紋章が描かれ、その生物のしゅるいによって色分けされたメモ帳。

「こんなモンかしら」

選び終えた二枚のページを金属リングから外し、中央の切れ目で割って四枚に分割する。
分割された四枚のソレは、両手首と両足首に張り付いた。

「バッタの蹴りとゴリラの拳でも喰らってなさい」

すると、シルフィードの脚部にはバッタレッグと同じ装甲、両腕にはゴリラアームと同じガントレットのゴリバゴーンが装着されている。

『オォォズゥゥゥ!!』
「あら、装備が同じだからって勘違いはしないでね」

ドクガナマズヤミーの唸り声にも似たそれにシルフィードはやんわりと返答する。

「行き成りで悪いけど、ちょっとコレ喰らって」

シルフィードは両腕を前に突き出し、

「バゴーンプレッシャー!!」

――バシュン!!――
――ゴガァァン!!――

『グヲァァア!!』

「と、とんだ?ロケット、パンチ・・・?」

陽炎は口をだらしなく開けてしまった。
何しろシルフィードが装着したゴリバゴーンが文字通りロケットパンチとなってドクガナマズヤミーに直撃したのだから。

「次はカマキリ!」

シルフィードは蟷螂のレリーフが描かれた緑色のページを取って両手首に張る。
すると飛んでった猩々の拳(ゴリバゴーン)の代わりに今度は蟷螂の鎌(カマキリソード)が逆手に持つ状態で現れたのだ。

「ハッ!」

バッタの脚力で跳躍し、

――バシュン!――

ドクガナマズヤミーにキックする。
続けて・・・!

「羽ばたく前に翅は斬り落とすわ!!」

――ザシュ!!――

『グウォォ!!き、貴様ッ!』

片方の翅を斬られたドクガナマズヤミーは怒り心頭の様子だ。

『だがもう一枚あるぞ!!』

ドクガナマズヤミーはバサバサと残ったもう一枚の翅を大きくはためかせる。
勿論飛行する為ではなく、蝶や蛾にある物を振り撒くためだ。

「まさか、毒の鱗粉・・・!?」

シルフィードは急いで懐から布を取り出し、口と鼻を覆うようにして巻いて簡易なマスクを作った。
だが、そのことも向こうは予想済みだったらしい。

『隙だらけだ!』

――ビリビリビリビリ!!――

「うあッ!!」

電気の迸る鞭をシルフィードの体に巻きつけ、高圧電流を流したのだ。
幾ら吸血鬼とはいえこれは流石に堪えるだろう。

「シルフィードさん!!」

陽炎はそこに割って入り、感電覚悟で鞭を素手で手に取り、無理矢理に取り上げた。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

陽炎は体中から煙をだしていて、荒息をついている。
しかし、そんな感電による傷や残留電気も、不死の呪いによって掻き消されてしまう。

『(あの女、目障りだな・・・・・・)』

ドクガナマズヤミーは陽炎のことを後々の禍根になると判断した。

すると、”キャウン”という仔狐の鳴き声がしてきた。

「まだついてきてたの!?」
「来ちゃダメよ!!」
『もう遅い』

――バチバチバチバチ!!――

ドクガナマズヤミーは触覚から雷撃を放った。
シルフィードはカマキリソードとバッタレッグで何とか凌いだが、仔狐を庇った陽炎は背中に酷い怪我を負ってしまった。

「仕方ない仔ね・・・危ないから下がっているのよ」

我が子のように仔狐を抱き抱える陽炎。
背中についた怪我も凄まじい速度で治癒していく。
いや、彼女の場合は時が戻っていくといったほうがいいだろう。

『ほほ〜。大した生命力だ。だがしかし、たった一匹の為に身を投げ出すのも、その身の特異さ故ではないのか?』

ドクガナマズヤミーは嘲笑うように陽炎にそういった。
遠回しに自己満足行為ではないか?と訊いているに等しい言葉だ。

「笑いたければ笑うと良いわ。もっとも、させないし、できる時間も与えない」
『ん?』

振り向くと、其処には脚部を飛蝗の脚(バッタレッグ)から狩猟豹の脚(チーターレッグ)に換装したシルフィードの姿があった。良く見ると首部分にも赤い紙が張り付いている。

まるでオーズ・タカキリーターを擬似的に再現をしたようにも見える。

「タカキリータースラッシュ」

技名が発音された瞬間、赤・緑・黄といったメダル状のリングが三つ展開される。
シルフィードはそのリングを全速力で走り抜け、

「セイヤァァァアアアアア!!!」

大きな掛け声をだしてカマキリソードの刃を振った。

――ザシュ・・・・・・ッ!!――

『ッ!ば、バカな・・・!ヤミーが、人間如きにぃぃぃ!!』
「ごめんなさい。私は人間じゃなくて、吸血鬼よ♪」

――ドガァァァァン!!――
――チャリンチャリンチャリンチャリン!!――

ドクガナマズヤミーは爆発し、数十枚のセルメダルが床に散らばった。

「回収回収っと」

シルフィードは屈んだ姿勢となり、セルメダルを一枚一枚丁寧に拾っていく。
だがその間に、陽炎に近づく者がいた。

(・・・仔狐を助ける貴女の姿に、母親を感じとれたよ、陽炎・・・・・・)

それは螺閃だった。

(僕が・・・・・・あの日以来見ることも無くなった・・・優しかった母親の姿だ。正直・・・花菱烈火を・・・・・・羨ましく思うよ)

螺閃は光界玉が仕込まれた警棒の先を陽炎にむける。

「まって螺閃!!!時間を・・・私に時間をちょうだい!!!」
(この人を救うことが、僕の母親へのせめてもの気持ちのように思えるんだ)

鬼凛の言葉にさえ頑として聞かない螺閃。

(・・・今までありがとう・・・鬼凛・・・)

そしてとうとう・・・・・・

(貴女の体を蝕む不死の呪いを消そう!陽炎!!)

その瞬間、とても眼を開けていられないような眩い閃光が部屋中に満ち溢れた。

(花菱烈火!君と戦ったあの日・・・鬼凛を中継して感じた、君の凄まじいまでの思い・・・・・・治癒の少女を助けたい想いと・・・母を助けようとする想い!君が母親を救うんだ!!)

光が収まると、陽炎の体から何かがあぶりだされ、虚無に還っていく。

――カタン・・・・・・――

螺閃は警棒を床に落としてしまった。
体中の力が抜けていき、床に大の字になって寝そべる螺閃。

(ごめんよ・・・鬼凛・・・これで僕も・・・母と同じように消え・・・・・・)

この途切れ方は、螺閃自身が消滅したからではない。
単に螺閃の思考を塗り替えるものがそこにいきなり現れたのだ。

見えたのは母―――螺閃の母親の姿。

彼女はただの幻影でしかないだろうと螺閃自身心のどこかで自覚はしていた。
だがその幻影は不覚にもこういったようにも聞こえてしまった。

――大丈夫――

(母さん・・・が、見える・・・笑ってる・・・どうして?僕が母さんを消してしまったのに・・・・・・なのに・・・なんで・・・!?)

そこへさらに鬼凛が螺閃に抱きつく。

「うえぇぇええん!えぇぇぇええええん!!」
(何故・・・・・・消えない?)

全ての現象に疑問を覚える螺閃。

「光界玉の力がいかに強大とはいえ、不死の呪いを消す事には許容範囲を越えていた。魔導具自身が呪いの魔力に耐えられずに砕けたのよ。今まで貴方から多くのものを奪ってきた悪魔の玉は死んだ」
「確かにあんなEX級の呪いを解呪するなんて芸当、魔力の篭った術式の塊たるメモ用紙でオーズの能力や装備を再現できる私といえども、超長期間の準備が必要だもの。砕けないほうが可笑しいわね、その魔導具」

そこへ陽炎とシルフィードが語りだした。

「・・・あなたのお母さんはね・・・きっと貴方を最初から許してる。母親とはそういうものよ。貴方が消えなかったのも、きっとお母さんが助けてくれたのかもね」

その時の陽炎の顔は、見間違うことなど有り得ない、慈愛と優しさに満ちた母親の顔だった。

そして、螺閃は涙を流した。
感情を失ったはずの彼が流すはずのない、暖かな感情の証の雫が。


そして、陽炎とシルフィードは其の場を足早に去り、次のステージを目指す。


「あの螺閃って男、きっと元々は感情を消されたのではなく、肉親のことで自らに深い罪悪感を纏わせてしまったことで、己の心を殻に閉じ込めていたんでしょうね」

シルフィードはチラっと螺閃と鬼凛をみてそう言った。

「でもこれからは、きっと自分自身を許して生きていけるでしょうね」
「えぇ・・・きっと」
「キャンキャン!!」

すると二人の足元にまた仔狐が。

「まだついてくる気みたいよ」
「この際、事が全て終わるまで連れてったら?一々不意に登場されるよりはマシよきっと」
「そうね・・・ってコラ、引っ掻かないの!」
「尻尾振り回して何興奮してるのかしらね?」

しかしここで陽炎はあることに気づく。

「・・・・・・治らない」

そう、仔狐に引っ掛かれてできた傷はゆっくりと血を流しているだけで、治る気配は全く無い。

「烈火に教えてあげなくちゃ・・・・・・!」
「おめでとう」

大粒の涙を流して喜ぶ陽炎に、シルフィードは静かに祝いの言葉を贈った。

時の止まりし火影くノ一、陽炎。
光界玉にて時の呪いより解放され、不死の化物から、母たる一人の人間に戻った。





*****

HELL OR HEAVEN
ルートE

霧沢風子(火影忍軍)
鋼金女 (相生忍軍)

「ここですね。この扉の端末に例のパスワードを入れることで解除され「いいから早く中に入ろうよ!!」

説明途中で風子は端末に”DEATH”と入力して扉のロックを解除した。
扉が重苦しい音を立てて開かれていく。

そして、

「おっ「邪魔」

――ゲシッ!!――

中から出てきた血だらけの男は、金女によって足蹴にされた。

「ひ、どい・・・・・・」

そしてバタンとぶっ倒れるザコ。

「どうやら我々以外に侵入してきた先客がいるようですね」
「あんたって、意外と冷徹だね・・・流石は鋼の妹ってだけのことはあるけどさ・・・」

風子は金女の冷静さに感心する。

「忍者とは忍ぶ者です。気配を殺し感情を忍ぶのも、忍者にとっては必定です」

金女は当然だと言い切った。

「そういえばあんたって何処で忍者になったの?前から相生がどうとか言ってたけど」

確かに金女は十五年前の忌まわしい事件以来、ずっと音信不通の状態だった。
それが相生忍軍の業を受け継ぎ、さらには仮面ライダーとして帰ってきたのだから無理からぬ話だ。

「今は語る時ではありません。何れお話します」
「・・・・・・・・・」

これ以上聞いてもダメだと判断し、風子は黙って扉の向こうにある空間に歩んでいった。

そこには無数の鉄パイプが縦横無尽に設置された貯水槽のようであって、その水を送り出す水道所のような印象をうける場所だった。

そしてこの場には一人の青年が忍び装束を纏い、長い黒髪を靡かせてこちらに背をむける状態で佇んでいた。

「あの御仁は、確か麗十神衆の・・・雷覇?」
「そうだよ、雷覇くんだよ!やっぱり雷覇くんも来てたんだよ!」

しかし、その声に反応してこちらを振り向いた雷覇の顔は、何処と無く悲しそうだった。

「やっぱり来てしまったんですね、霧島風子。初めてお目見えする御方もいるようですね」

雷覇はじつに静かな雰囲気でそういった。

(・・・・・・違う、何時もの雷覇くんと・・・・・・)

普段の雷覇なら、風子に飛びつくくらいの勢いで喜びそうだが、今は全く違う。

「ねえ・・・雷覇くん。あの裏麗の奴倒したの・・・雷覇くん?」
「・・・風神と雷神・・・・・・」
「は?」

雷覇は質問に答えずに魔導具の名前を呟いた。

「火影という名の忍軍は、長である炎術士を要に魔導具と呼ばれる武具を操り、その力を示した。数多の魔導具を創造せし者は二人の天才」

虚空と海魔。

「製造技術は拮抗するも、互いの思考の違いが双方の魔導具を全く異なる質へと変えていく。生かす為の魔導具と、殺すだけの魔導具。対極となった二人の魔導具の中でも『最高傑作同士』と謳われた自然現象発動型の魔導具があった」

それこそが、

「虚空の『風神』。海魔の『雷神』」
「今、貴方の腕に取り付くソレがですね」

そう。雷覇の左手には使い手の腕に不気味な触手を伸ばす昆虫型の手甲が『キィ・・・ギュギュギュギュギュ』という嫌な鳴き声を漏らしていた。

「雷覇さん、この場にヤミーは居ない・・・というより、貴方が片付けてしまったようですね」

あたりに視線を移すと、周りにはセルメダルがチラホラと転がっている。

「はい。この雷神の力を全解放して漸くですが、勝てない相手ではありませんでした」
「にも関わらず、その疲労を表に出さない点については賞賛に値しますね」
「どうも。だが一つだけ私はこの運命が悲しくて仕方がない。まるで風子さんと私の魔導具がお互いを壊そうと殺し合いを強要するようでね」

金女は全てを悟っていた。

「あの、雷覇くん?もしかして・・・?」
「私は紅麗様の忍・・・彼に仇なすものは皆、殺す。森光蘭でも―――」

そして、

「君でもです」

――カキィィン!!――

何かを弾く金属音。

「中々の手裏剣術」

どうやら金女が雷覇の手裏剣を苦無で弾いたらしい。

「二人がかりでも構いませんが・・・風子さん、風神を使ってください。私が貴女に返した核で本来の力が出せるはず」

行方不明となり、小玉の力でどうにかこうにか機能していた風神。
その核を持っていたのは雷覇だったのだ。雷神の力を封じる為の方法として。

「さもなくば、簡単に死にます」

――バチっ!バチッ!――

雷刃(らいじん)・・・!」

技名が告げられる。

「一緒に森を倒せばいいじゃんかよォー!!言う事聞かないとブッ殺すぞバカ!!」

そんな風子の叫びも今の雷覇には届かない。
雷刃はけたましい音を立てて風子と金女に襲い掛かろうとする。

だが、

「変身」

――パカッ――

それらの雷撃は全て防がれた。
金女がチェリオへと変身する際に発生するフィールドによって。

「その姿は・・・?」
「今の私の名は、仮面ライダーチェリオ」

額金型のバイザーを青く光らせ、チェリオは威風堂々と名乗った。
”逃げも隠れもしない”異端の忍者集団、相生忍軍らしい態度といえよう。

すると突然、風神の核から風の塊が飛び出てきた。
その風の塊は大きなボールあたりの大きさで、中からはある者が出てきた。

『出てきなよ、雷神・・・・・・そこにいるんだろ?』

全身からフサフサした体毛を生やした風神の化身。
愛らしい瞳をしていて獣耳を生やし、額には目玉のような何かがある。
手も小さくて愛らしく、先端が丸い尻尾や、何かを履いているようなカンジの足。

まるで小柄な妖精やマスコットキャラのようなイメージがする風神の化身。

『ゴシュジンサマ・・・・・・あいつは――ムギュ!――』

突如風神の化身は、誰かに抱きしめられた。

「はぅー!かぁいいよー!」

何かに萌えまくったような声の主はというと、

「おっ持ち帰り〜!」
「ちょっとォォ!!キャラ崩壊してるよ金女さん!!?感情を忍ぶんじゃなかったの!?」

チェリオ=金女でした。

「風子さん、この子お持ち帰りしてもいいかな?かな?」
「ダメだから!!つーか時と場所を考えろ!!」

忍者である金女を虜にする風神の化身。

「あの、もういいでしょうか・・・?」

そうしてると、ジト眼になった雷覇が尋ねてくる。

「この可愛さは反則です〜//////」
『ムギュー!!』
「それ以上抱きしめたら風神ちゃんが潰れちゃう!!」

でもチェリオの暴走という名のかぁいいモード発動で答える暇のない風子。

「雷神」

待つのを止めた雷覇は一言命じた。

「我が体内への侵入を今再び許そう」

――カッ――

その瞬間、雷神の背中にある保護膜が開かれ、雷神の核が露出する。
そして伸びた触手が伸び、ドスッっという音を立てて雷覇の首に突き刺さった。

『気、気をつけて二人共!!』

すると風神が漸くチェリオから逃れて二人に警告を出した。

『出るよ、奴が』

次の瞬間、雷覇の隣に、”奴”が現れた、
其の場にいるだけで幾多もの電気を撒き散らす様子は、まさに雷神。

『やはり、外は広々として心地好いな・・・・・・』

まるで猪に野太い一本角と鬣と髭が生えたような姿をした雷の獣。

「なに・・・アレ?風神ちゃん?」
『雷神の・・・本体さ!』
「天と地ほどの差ですね」
『久方ぶりだ、風神・・・・・・姿を見せて会うのは何百年ぶりか?』

三人の会話が一旦途切れると、そこへ雷神が話しかけてくる。

『永き事、ようもこのワシを封じていてくれたの・・・貴様の姿を見るほどに、怒りで頭がおかしくなりそうだ!!』
『可笑しいのは初めからだと思ってたけど?』

雷神の怒りを皮肉で返す風神。

『言いえて妙かな・・・のォ・・・主、雷覇?』

雷神が己が主人に語りかける。
しかし、今その行為は無駄としか言いようが無い。

今の雷覇は人形のように表情と感情を失っているのだから。

「どうしたの雷覇くん!?」
『ダメだ!ゴシュジンサマ!!』

駆け寄ろうとする風子を風神が制した。

『雷神が彼の肉体を支配した!今はゴシュジンサマの声も届かない!雷神の尾針が体内を通り、脳に根を張って直接指令を下すんだ!あいつはただの魔導具じゃない!逆に術者を媒体・・・道具として使うんだ!!今の彼は、ゴシュジンサマの知ってる彼じゃない』

風神はトドメとばかりに言い放つ。

『雷神だ』
「つまり私たちの手で、あの悪趣味で醜悪な手甲を外すか、破壊すれば良いということですね?」
『う・・・うん・・・そうだよ』
「なんで避けるんですか?」

風神の要注意人物に鋼金女が永久登録された。

『どれ―――雷覇よ、主の命の力を使うて・・・・・・・・・・・・少し暴れさせてもらうぞ!!!』

咆哮するように宣言する雷神。
雷覇の生命力を削り、そして放たれる一撃の名は・・・!


狂雷(きょうらい)!!!!』


――バチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!――


雷刃とは比べ物にならない電撃が一斉に解き放たれた。
天の怒りを示すかのように、雷神から発せられる雷撃は本物の雷さえも消し飛ばすような威力を誇っているに違いない。

――バシャアア!!――

「冷てぇ!」

今の攻撃でパイプが破損し、そこから水が雨のように振り注いだ。

『注意して!水は電気を通すよ。幸い、足元には排水溝が沢山在る!逃げ場がなくなるほど、水浸しにはならない筈!』

風神がそう注意していると、雷覇の方に変化があらわれる。

「ぐっ・・・!」
『疲れたか、雷覇?』

意識の無い雷覇が両膝をついたのだ。

『先ほどのヤミーとやらの戦闘、さらに今の一撃では、これ程の手練でも相当の生命力を失うか。ワシの力がいかに強大かを物語っておるわ』

雷神は冷静に雷覇の状況を判断し、

『休ませながら大事に使わせてもらおう。なにしろ、数百年ぶりの主だからな・・・!』

尾針を首から抜き取った。
すると虚ろになっていた雷覇の瞳は元の色を取り戻した。
しかし、狂雷の代償にかなりの体力を消耗している。

「私は・・・!この力を使って君達と!天堂地獄を討つ!!全ては紅麗様の為に!」

だが雷覇はすぐに息を整え、忍者刀を抜刀して構えた。

(何が彼程の忍を此処まで?)

チェリオは雷覇の姿勢に疑問を抱く。

「・・・・・・なんでさ?もう一回答えてくれよ!そこまで紅麗を守ろうとする理由はなんだ!?答えろ!!十神衆雷覇!!」

風子の絶叫じみた問いに、雷覇はこう答える。

「・・・”血”です」

その時、雷覇の手から一滴の血液が床に落ちた。

「私の体には、卑怯者の火影忍軍の血が流れている」




次回、仮面ライダーブライ!

全装備と師弟と巡狂座


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