メッセージforイーヴィル


常に風吹く街、風都―――。
通称”エコの街”とも呼ばれ、街中には風力発電の風車が数多く立てられているし、街のシンボルである風都タワー自体も巨大な風車型であることは何よりの証。

だが、この街には『欲望』に満ちた悪しき特徴もあった。
それは、地球の様々な記憶を秘めた悪魔の装置・ガイアメモリによって町人たちが変身した怪人ことドーパントによる凶悪事件だ。しかし、それらドーパントを始め、ガイアメモリの開発と売買を秘密裏に行ってきた組織・ミュージアムの壊滅に伴い、ガイアメモリは街中からナリを潜めつつあり、『欲望』の匂いも次第に薄れていた。

それは何故かって?――この街に住むものなら口を揃えてこう言うであろう。

二人で一人の仮面ライダー・・・・・・Wとイーヴィル達のお陰だと!

そうして、今日も彼等は戦い続ける!
この街の涙を拭う為、街を泣かせた『欲望』を喰らう為!





CYCLONE(サイクロン)
JOKER(ジョーカー)

ガイアディスプレイに風を連想させるCの字が映った緑色の純正型ガイアメモリ。
ガイアディスプレイに切札を連想させるJの字が映った黒い純正型ガイアメモリ。

MAGICAL(マジカル)
LEADER(リーダー)

ディスプレイには魔方陣や呪文をイメージさせるMの字が映った白銀の純正型ガイアメモリ。
ディスプレイには統率者の手腕をイメージさせるLの字が映った紫色の純正型ガイアメモリ。

それを手に持ち、腰に奇妙なベルトをつけた二組(よにん)の人物だ。

「「変身・・・ッ」」

一組目―――左に立って黒いジョーカーメモリを持っているのは、ソフト帽を被った上に軽るめのスーツを着こなしている青年。
右に立って緑のサイクロンメモリを持っているのは、髪をクリップで留めた二十歳前の不思議な少年。

「「変身・・・ッ」」

二組目―――左に立って紫のリーダメモリを持っているのは、190cmに及ぶ身長を黒い革のロングコートで包み、首には灰色のマフラー、両手には黒い手袋、血のように赤黒い髪の先端には逆三角の髪飾りを多くつけ、濁った緑色の眼光をした男。
右に立って白銀のマジカルメモリを持っているのは、腰にまで届く美しい銀髪と紅い瞳をしていて、若々しく綺麗な白い肌を包む黒い服の上からでもわかる抜群のプロポーションと長くて細い手足をした凛々しい絶世の美女。

一組目の二人の名は、(ひだり)翔太郎(しょうたろう)とフィリップ(本名・園咲(そのざき)来人(らいと)
二組目の二人の名は、上級魔人の無限ゼロと魔導騎士のリインフォース。

二組は互いに腕を構え、V字型をつくっている。
フィリップとリインフォースがメモリをベルトのライトスロットに挿入すると、メモリは翔太郎とゼロのベルトに転送される。
ゼロと翔太朗は馴れた手付きでメモリを奥まで差し込み、レフロスロットにも自分たちのメモリを入れる。

そして、翔太朗は閉じられたスロットをW字型に開く。
ゼロは開かれたスロットを閉じ、中央のメインスロットにある銅色のイーヴィルメモリと合わせ、横倒しになったE字型にした。


【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】


それによってベルトからは地球の記憶が発生され、二人の姿は旋風と瘴気に渦巻かれていく。
それと同時に、フィリップとリインフォースの精神が肉体から離れ、相棒の右半身に乗り移ったと同時にソレは完了した。

W字型の触覚に紅い複眼。体の正中にある銀色のセントラルパーテーションを境に、右半身は緑で左半身は黒といった配色と姿―――仮面ライダーW・風の切札(サイクロンジョーカー)

横倒しになったE字型の触覚に緑の複眼。体の正中にある銅色のセントラルパーテーションを境に、右半身は白銀で左半身は紫色の配色と姿―――仮面ライダーイーヴィル・魔法の統率者(マジカルリーダー)

変身が完了し、吹き荒び終えた旋風と瘴気によって銀と銅のマフラーが揺れる中、それを切り裂いて突き進むかの如く、二人は動き出す。

「フッ」

Wは軽く意気込むと、思い切りジャンプして空中を飛ぶ翼竜の怪人にとりつく。

「さてと」

イーヴィルも猛スピードで動き回っている犬型の怪人を、両サイドから伸びる二本の銅色マフラーことトゥーズイレイザーを自由自在に操って捕縛する。

二人はその状態でイトスロットやレフトスロットのメモリを換装する。

HEAT(ヒート)
KNIGHT(ナイト)

Wは赤いヒートメモリをライト、イーヴィルは青いナイトメモリをレフトに挿し込む。

【HEAT/JOKER】
【MAGICAL/KNIGHT】

「オリャ!」

熱き切札(ヒートジョーカー)にハーフチェンジしたWは、空中で翼竜怪人を殴りつけて地上に落とす。

「ハァ!」

魔法の騎士(マジカルナイト)にハーフチェンジしたイーヴィルは、背中に出現した薙刀型の武器・ナイトグレイブで犬型怪人を何度も殴った。

「ったくこの野郎、街を騒がせやがって」
「まあ、良いではないか。中々の『欲望』が匂いを発している」

二人はそういいつつも、素早いキックや炎の篭ったパンチ、魔力の篭った斬撃を食らわせていく。
すると、二体の怪人からはチャリンチャリンと、

「ん?なんでこいつメダルなんか落とすんだ?」
『この怪物はドーパントではないのか?』
「なんだって?」

Wは左右でそうしていると、イーヴィルは興味深くも嬉しそうにしている。

「素晴らしい!このメダルは人間の『欲望』の結晶だぞ!」
『まさか、この怪人はそのメダルで出来ているのか?』
「だろうな。ブライとオーズのコアメダル程ではないにせよ、それなりに集めれば多大な魔力源となる!」

こちらも左右で話している。
もっともゼロのテンションは珍しく上がっているが。

『『ッッ!』』

二体の怪人の正体―――それはオーズとブライの敵である”ヤミー”。
幹部怪人に相当する”グリード”の持つ”セルメダル”と人間の”欲望”とで生まれるセルメダルの塊。
そして、今ここにいるのはプテラノドンヤミー♂とキョウケンヤミーだ。

それらと取っ組み合いになっている中。

「ハアッ!」
「プラズマアーム!」

――ザシュ!――
――バチバチ!――

大型の大剣を重そうにしながらも振るい、ヤミーに攻撃を行う赤いジャケット姿の青年。
拳に雷撃を纏わせているのは――サイドポニーテールの金髪に、緑と赤のオッドアイ、体を包む黒い装甲付きの奇妙な衣服を着た十代後半あたりの美少女。

「照井!なんで変身しねぇんだ!?」
「ヴィヴィオ、貴様もだぞ」
「俺に質問するな!」
「これには深いわけがあって!」

赤いジャケットの青年の名は照井(てるい)(りゅう)
若くして警視階級で風都署の超常犯罪課の課長という席についているエリート刑事にして、風都を護る赤きライダー・アクセルの変身者。

金髪サイドポニーの少女の名は無限ヴィヴィオ。
ゼロとリインフォースの養女にして、古代ベルカ王族の遺伝子を元に生み出された聖王のクローン。そして、仮面ライダーホッパーの変身者。

『『ハッ!』』

プテラヤミーとキョウケンヤミーは口や爪から光弾や斬撃波を飛ばしてくる。
もちろん四人は避けるが、この直後に照井とヴィヴィオが変身できないでいる最大の原因がやってきた。

外れた光弾と斬撃波で、爆発が幾度と無く起こる道を―――


「ちょーっとォォォォオオオオ!!!!」


一見童顔で中学生っぽいが、真っ白なウエディングドレスを着た花嫁が駆けて来るのだから。

「ッえぇぇぇ!?」

Wも流石に驚くしかない。
何せ知り合いがあんなことをやってるのだから。

「って、逃げられるぞ!」

イーヴィルはその間にヤミーらの動きに勘付いてナイトグレイブで引っ叩く。
Wも即座に動いてパンチを食らわせるが、

『『フアアァ!!』』

二体のヤミーは十数枚のセルメダルを落としながらそこから逃亡したのだ。

ソレを見たWとイーヴィルは、一旦ヤミーを見逃した。
それ以上に問い詰めることがあったからだ。

――パンッ――

亜樹子はスリッパで照井とヴィヴィオの頭を叩いた。

「おい亜樹子ぉ!どういうつもりだ!」
「こっちの台詞じゃい!」
「はい・・・・・・」

なんだかたった一人の横暴な花嫁によって、空気が激変する。

「竜君にヴィヴィオちゃん!花婿と仲人が結婚式ほったらかしてどうすんのよぉぉおおお!!」

彼女の名は鳴海(なるみ)亜樹子(あきこ)
鳴海探偵事務所の所長にして無限ヴィヴィオの親友、そして・・・・・・照井竜の妻となる女である。





*****

照井家と鳴海家の名義で貸しきられた結婚式場。
そこには二人に関した者達が正装して出席していた。

「しかし、課長も花嫁も、なんだか血相かいて出て行ったなぁ」

呟いた中年男性の名は風都署における照井の部下である刃野(じんの)

「トイレっすよきっと。トイレトイレ!」

何かが軽そうな若者の名は照井の部下の一人で刃野の後輩、真倉(まくら)(通称、ナマクラorマッキー)。

「亜樹子ちゃんのことだから、なんかサプライズ用意してたりして♪」
「どうかなぁ?寧ろトラブルとか?」

明るい意見を言ったのは通称エリザベス、冷ややかな台詞は通称クイーンという風都の高校に通う女子高生コンビ。

「クイーンちゃん。そういうこと嬉しそうに言わないの」

そう嗜める男の名はウォッチャマン。風都における情報屋といえる男である。

「コォーン!クルックー!クルックー!式まであと一時間半!大丈夫かな?」

時計を見ながら妙な口調で話すのは通称サンタという男だ。

そこへ、一人の赤ん坊を抱えたメイド服の女性が、

「大丈夫ですよ。何しろ、あの人達がこんなイベントをすっぽかす訳ないもの」
「あう〜〜」

と自信ありげに言い、赤ん坊も未発達な声を出す。。
彼女の名は左前(さのまえ)御霊(みたま)。――無限家の住み込み家政婦(メイド)として働いている。
そして彼女が大事そうに抱えているのは、ゼロとリインフォースの愛の結晶・無限ネオ。

「だけど、やっぱ急いで欲しいかも・・・・・・折角高町さん達も来る事になってるのに・・・・・・」

御霊は焦り気味に付け足した。





*****

その頃、当の本人達はというと、Wとイーヴィルが変身を解除した途端。

「NOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

翔太朗は亜樹子に高度な首絞めをかけられていて、

「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイズ!」

ゼロはその横でテンカウントを面白そうにとっている。

「「はぁぁ」」

変身が解けて、精神が体に戻り、起き上がったフィリップとリインフォースは呆れ果てている。

「あんたもあんたよ!お父さんの代わりに、一緒にバージンロード歩いてくれるって言ったのにィィィイイ!!」

さらにし目つきが強くなる。

「シックス、セブン、エイト、ナイン」

テンカウントに進む。

「この無責任男ぉぉぉ!!」
「テンッ!」

テンカウント終了と同時に放り出された翔太朗。

「仕方ねぇだろ!俺達仮面ライダーなんだぞ!」

それを聞いた途端、

「仮面ライダぁぁぁあ!?」

亜樹子の表情がドンドンイライラに近づいていく。

「いかん左!刺激するな・・・・・・今彼女は・・・・・・仮面ライダーアレルギーなんだ」

メチャクチャ照井が言いにくそうに述べた。

「「仮面ライダーアレルギー?」」
「まさかとは思うが・・・・・・」
「ヴィヴィオと照井が、変身できなかったのは・・・・・・」

亜樹子は胸を張って歩み、

「NO MORE!仮面ライダー!」

加速の記憶を秘めた赤いアクセルメモリと、それを発動させるアクセルドライバーを見せた。

「ゲッ!没収したのか!?」
「うん。私もメモリだけ取り上げられた・・・・・・」

驚く翔太朗にヴィヴィオは、ホーリードライバーを見つめながらも実に苦々しそうに告げた。
亜樹子は照井につめより、

「竜くんやヴィヴィオちゃんがこれ以上仮面ライダー続けるっていうなら!」

お次にどんな我侭が飛び出すのかと思えば、

「あたしもう結婚なんて辞めるぅぅぅう!」

泣きながらとんでもないことを言い出した。

「ちょ、ちょっと!亜樹子ちゃん!!」

ヴィヴィオは急いで亜樹子のあとを追った。
彼女を引き止めるため、そして変身手段を取り戻すため。

「――――――」

だが照井は、今までのクールさが総崩れするように、倒れ伏した。

「これが、結婚前に突如憂鬱になるという、マリッジブルーか?」

フィリップもフィリップで新たな興味対象が出来上がっている。

「実に興味深い!リインフォースは、無限ゼロとの時はこうならなかったのに!」
「私は何時でも、ゼロを信じているからな//////」

さりげに惚気るリインフォース。
左手の薬指に嵌めた、ゼロとお揃いの黒真珠の指輪が陽光で煌く。

「興味持ってる場合か!」
「早くあのバカ嫁を追うぞ―――って、その前に」

ゼロは亜樹子を追う前に、落ちたセルメダル全てを手中に集めると、一気に人間形態を解いた。
突然変異種の上級魔人・無限ゼロの本来の姿、邪龍とでも言うべき禍々しい姿に。

『頂きます』

ゼロは変異種であるが為に、『欲望』は彼にとって唯一魔力に変換できる貴重な食糧。
そのセルメダルをある程度ながらも飲み込んだのだから、当然顔もにやける。

間食を終えてすぐ人間形態になると、

「ご馳走様。―――よし、では気を取り直していくぞ」





*****

その頃、海沿いの場所を、亜樹子とヴィヴィオは歩いていた。
さっきより熱は冷めていたが、その分空気が重かった。

「仲間も、友達も、彼氏も・・・お父さんも仮面ライダーで・・・・・・あたしの身内、仮面ライダーばっか!」
「でも、亜樹子ちゃん!皆は街の人の為に!」
「そのたびに、あたしをほったらかして」
「うッ・・・・・・」

流石にヴィヴィオは言い返せない。
亜樹子の友人代表として仲人役となり、当日の今日は思い切って特注した蒼と緑のドレスを着て家を出たはずが、こんな無骨でカッケー騎士甲冑姿で友人一人にタジタジである。

「お父さんも、お父さんだって・・・・・・」


――お前が嫁に行くときには・・・・・・必ず傍に居てやる――


「昔、そう言ったのに・・・・・・お父さんの嘘つき」
「亜樹子ちゃん・・・・・・きっと、壮吉さんには壮吉さんの、決意があったんじゃないかな?」
「決意・・・?」
「うん。レイズ伯父さんのお陰で、私はパパとママに出会えたし、伯父さんの遺志はパパとママに受け継がれてる。・・・・・・きっと、壮吉さんも同じなんだと思う」

ヴィヴィオは思い出話だけでしか、無限レイズの存在を知らなかったが、それでも愛する両親が出会って自分の育ての親となるきっかけを作ってくれた恩人として心から尊敬していた。

「壮吉さんのスカルと伯父さんのデュアル・・・・・・それらが消えても、託されて遺った大事なモノが、きっとある筈なんだよ!」
「でも、でも・・・お父さんはただの人間なのに・・・・・・」

納得がいかない亜樹子は周囲に誰もいない空間で、

「何で仮面ライダースカルなんかになっちゃったのよッ!!」

心の猛りを吐き出した。

だが、その思いの塊とも言える叫びは・・・・・・!

『仮面ライダー、スカル?』
『仮面ライダー、デュアル?』

欲望の怪物を呼び寄せた。

「ッ、来ないでよォ!!」
「これ以上は、近寄らせない!」

大声を出す亜樹子とは対照的に、ヴィヴィオは拳を構えるが、ヤミーらは一切気にしない。

『仮面ライダースカル』
『仮面ライダーデュアル』
『『もっと知りたぁぁい!!』』

近づいてくる二体のヤミーはある記憶の箱を起動させた。

MEMORY(メモリー)
PAST(パスト)

”記憶の記憶”を秘めた緑色のメモリーメモリと、”過去の記憶”を秘めた銀色のパストメモリ。

メモリ起動と同時に、ゼロたちが漸く追いついた。

「ガイアメモリ!?」
「何故あの怪物が!?」

四人は走るスピードを上げるがもう遅い。
プテラヤミーとキョウケンヤミーは、亜樹子とヴィヴィオを抱え、ガイアメモリの波動を共に浴びた。

そうして、二人の意思が向った先は、決断と覚悟の意味が紐解かれる、二人の男の哀しい物語。





*****

ガイアメモリによって意識をどこかへ飛ばされた二人。
気付いたとき、二人の意識がいた場所は・・・・・・。

『・・・・・・事務所だ・・・・・・?』
『でもさ、私たち・・・なんか実体じゃないみたい?』

いた場所こそは鳴海探偵事務所だが、どことなく亜樹子らが知ってるものとは違う。
それにヴィヴィオが言うとおり、二人の精神体とでもいうべきものは緑と銀のオーラで形成されていた。

そして、奥を見れば、決定的な者らが三人いた。

一人はフライパンのような金網に黒いコーヒー豆をいれ、ガスコンロで炒っている壮年の渋い男。
もう一人は今の事務所にはない机に座り、何かの資料を読んでいる気さくそうな眼鏡の男。
そして、所長の机のすぐ近くにある窓から顔を出し、口元にキセルを銜えた、白髪頭で和装の男性。

「壮吉、止めときなよ」
「断る」
「相も変わらずで、頑固じゃのう」

三人はなんの気兼ねも無く話をしている。
しかし、眼鏡の男以外に、亜樹子とヴィヴィオは見覚えと聴き覚えがあった。

『お父さん・・・・・・!?』
『レイズ、伯父さん・・・・・・!?』

そこには、彼女等の仲間と両親が出会うきっかけと、真っ直ぐ道を歩めるように遺志を託した二人の男がいた。

という間に、火にかけられたコーヒー豆は炒りすぎたせいで焦げてしまい、煙がでていた。

「ゲフッ、ゲフッ・・・・・・やり直しか」

壮吉は火を一度止めて、焦げたマメをゴミ箱に捨てた。

「んもう!意地張らないで、僕が調べ上げたこの資料を読んで、つくってみれば?」

――パチッ――

「一発ですから!」

指を鳴らし、眼鏡の男はコーヒーの造り方の資料を渡す。
しかし、壮吉は・・・・・・。

「マツ。お前は最高の相棒だがコーヒーに関しては力は借りない」

といって、資料を棚においてしまった。

眼鏡の男の名は松井(まつい)誠一郎(せいいちろう)
鳴海探偵事務所の所長・鳴海(なるみ)壮吉(そうきち)の相棒を勤める頭脳派だ。

「ハハハッ――壮吉にとってコーヒーとは、マツと出会う前からの、人生の相棒じゃからな」

キセルを吸い終えたのか、白髪で和装の男は軽口を叩く。
男の名は無限(むげん)レイズ・・・・・・言わずと知れたゼロの実兄たる上級魔人。
弟のゼロと違い、他者にも慈悲の念で接せられる人情的な男だ。

「レイズさんも、ココへ突然居候するようになってまだ半年だってのに、壮吉のこと良く解るようになりましたよね」
「まあ、これだけハードボイルド属性じゃと、ワシみたいな輩でも何となく・・・な?」

翁言葉を使いながら、レイズは笑顔で答える。
どうやらココの生活はもちろん、壮吉とマツのことを気に入っているようだ。

「それじゃあ、僕は向こうにコレを」

マツはそうしてゴミを捨てるべく、今で言うフィリップの部屋であるガレージの扉に触れる。

「「マツ!」」

それを壮吉とレイズが止めた。

「そっちの向こう側には、幽霊と魔女がおるぞ」
「何時も言ってるだろうが?」
「――――ッ」

♪〜〜♪〜〜

マツは口笛を吹きながらゴミ箱をもち、もとの場所に置きなおした。

『お父さんの相棒か・・・・・・』
『まさか、伯父さんがココに居たなんて・・・・・・』

亜樹子とヴィヴィオは知られざる事柄に興味津津だ。

『この鳴海探偵事務所って、一人じゃなかったんだ。・・・フィリップ君みたいなものかな?』
『かもね。・・・っていうか、このカレンダー・・・1999年の11月だよ』

つまり、今から十年以上前の時代と言うわけだ。

『レイズ伯父さん・・・・・・魔界から出るときにきっと、次元や時空の壁を無理に突き破ったせいで、ネウロさんが来るより前の時代に来ちゃったんだ!』

ちなみに、そんな強引な方法でやってきたのは、ネウロもゼロも一緒だが、幸いゼロは運良く都合のいい時間・場所に出られたのだ。
本来ならば、ネウロも偶然の産物でこの世界へと二度もやってこれているに等しく、下手をふめば遥か先の未来だったり、平行世界に辿り着く可能性だってあった。

無理矢理な方法で魔界から地上に行くというのは、そういうことなのだ。

「そういえば最近、来ないな彼女?」
『彼女?』

マツの発言に亜樹子は注目する。

ジリリリリ、と所長机の上においてあるアナログな電話がなり、壮吉はそれにでた。

「俺だ」
『私聞いてないわよ壮吉!ボディガードしてくれる約束でしょ?』
『(私みたいな女の子だな)』

声も口調も亜樹子そのまんまである。

「噂をすれば影だな」
「メリッサ!?彼女になにかあったのかい?」

マツがそう聞くと、壮吉はあるものを渡した。
表面には蜘蛛の絵が描かれていて、裏には隅っこにこう書かれていた。

「蜘蛛男より・・・?」
「えらく原典くさい臭いがするのぅ」

マツとレイズがそういう間にも、壮吉は話を進める。

「直ぐ行くよメリッサ、心配するな。お前は大事な妹分だ」

壮吉は受話器をおいて通話を終える。
そうして、壁に備え付けてあるハンガーから白いソフト帽と白いスーツを手にし、それを身につけながら事務所を出て行く。

レイズもキセルを懐にしまい、ソファーにかけてある藍染めの羽織を着て事務所のドアを潜っていく。
当然マツも上着を手に、そのあとをついていく。

『知りたい・・・・・・昔の事務所のこと、お父さんのこと、私みたいなメリッサのこと!』
『私も、最後まで見届けたい。伯父さん達のことを、少しでも知って解りたい!』





*****

とある楽屋。

「壮吉のバカ!」

そこには今の亜樹子と瓜二つな女性、メリッサが愚痴っていた。

「私のこと、何時も子供扱いでさ・・・・・・」

かつての風都の歌姫は、ご機嫌斜めであった。





*****

事務所の前。

「では、出発じゃな」
「はい」
「ああ」

壮吉とマツは自動車、レイズはオートバイ(デモンスプリンター)に乗り、エンジンをふかして目的の場所へと向った。

ここからが、悲劇の始まりとも知らずに―――。




*****

CITY HALL

そこでは風都の歌姫・メリッサのコンサートが行われていた。
観客席は満員である上、祝賀のメッセージや花が多く送られていることから、彼女の人気振りがうかがえる。

レイズら三人は、丁度メリッサが歌い始めたところへ到着した。
極力邪魔にならないよう、静かに口を閉ざしている。
壮吉は帽子で口元を隠しているが、マツは露骨に嬉しそうな表情をし、レイズは優しげに微笑んでいる。

メリッサの歌声は歌詞と相まって実に聡明であり、彼女の赤いドレスとのギャップも相まって、幻想的な雰囲気をだしていた。

そんな中、マツが小声で蜘蛛男の手紙を読んだ。

「最愛の歌姫メリッサへ―――今度ステージでは必ず俺のリクエストの曲を歌え。百点満点で採点して、減点の数だけ会場の客を殺す―――君のナイト・蜘蛛男」

今時こんな脅迫状、笑いのネタであろう。

「屈折した愛情ってやつかのぅ?まあ、兎にも角にも、眼ぇ光らせないとあとで歌姫様のお冠じゃ」
「って、気をつけてくださいよレイズさん。彼女の周り、けっこうキナ臭いんですから」

マツは視線を別方向にむけ、

「特にあの、矢口(やぐち)孝三(こうぞう)。メリッサの事務所の社長で、このホールのオーナー。ヤバい組織と裏で繋がってるって噂だよ」
「ちょっと挨拶してくるか」
「そうじゃな」

壮吉は帽子を手に取りながら、レイズは腕をぶらりを下げながら、双方とも眼鏡をかけた矢口とその妻に近寄っていく。

「よぉ社長」
「こんにちわ」

壮吉とレイズの挨拶に、後ろに控えている黒服二人は、席を外そうとしたが矢口はこれを止めた。

「メリッサが入れ込んでいる貧乏探偵か。何の様だ?」
「悪党から彼女を護る為にきた」

と壮吉が返すと、矢口は立ち上がり

「彼氏気取りも大概にしろ」
「あなた。こんなところでおよしになって」

不機嫌にかたる矢口を夫人がとめる。
矢口はそのまま席から離れる。

「どちらへ?」
「便所だ」

夫人の質問に即答する矢口は、さっさとトイレのある方向にあるいていった。

そうこうしてる間に、メリッサは謳い終えたようで、観客達から歓声と拍手をうけていた。
しかし、それも束の間だった。

「ッ、キャアアア!!」
「なんだこれぇ!?」
「気持ちわりぃぃ!!」

観客達をパニックに陥れたもの、それは大量の小蜘蛛の群れが地を這っている姿。
そして小さな蜘蛛たちは、餌でも見つけたかのように観客の服や体にしがみつきだした。
当然、それをはらおうと必死になる観客達。

その時だった、


『動くなァァ!!』

天上から一本の糸をたらし、一体の異形が降りてくる。

『静粛に』

その姿はまさに

「蜘蛛男・・・・・・」
「まんまじゃな」

壮吉とレイズが二階の客席から蜘蛛男を見ていると、

『良かった!かなり良かったぞぉ!風都の歌姫!採点しよう、さあ何人死ぬかな?』

蜘蛛男は宙にぶら下がったまま、何やら意気込むと、

――ブシューー!――

口から糸を吐き出し、床に字を書いた。

結果は、100点!

『死人がでずに済んだな』

その言葉とともに、蜘蛛たちは観客から離れていく。
蜘蛛男は糸を切って床に下りたった。

『これからも歌い続けろよ、俺だけの為にな!』
「そこを動くなよバケモノ!」

そこへ数人の警察官が拳銃をもって乱入してきた。

「風都警察だ!大人しく投降しろ!」

ちなみに先頭にいるのは若い頃の刃野だ。

『フン!』

蜘蛛男は手からスパイダーウェブをのばして刃野の足に絡ませ、引っ張って転ばせた。
さらに他の警官の腕にも絡ませ、引っ張っては殴った。
応戦の銃声も聞こえたが、怪人にあいてに通常兵器は大して意味は無い。

「やめなさいよ!」

――パコン!――

メリッサは自分のハイヒールをつかい、蜘蛛男の頭を叩いた。
蜘蛛男は大して気にする様子も無く、

『君は歌っていればいいんだよ。俺だけの為に!』

むしろメリッサに迫ってくる。

「「ッ!」」

その瞬間、壮吉とレイズは二階の観客席から勢い良く飛び降り、床を転がって起き上がると同時に蜘蛛男に廻し蹴りを浴びせた。
当然、蜘蛛男の体はよろめき、その隙に壮吉はメリッサの前に立ち、レイズは蜘蛛男の首を掴んで持ち上げた。

「「(ワシ)の依頼人に手を出すな」」

その様子を見て、騒ぎ出す観客達。
その中には、

「翔ちゃん・・・・・・」
「今の人たち見たかよ真理奈?・・・超カッケー!」

それこそは、幼い日の翔太朗だった。
隣に居るのは翔太朗の幼馴染で、後にティーレックスとなってWと戦う津村真理奈。
意外なことに、レイズと翔太朗にはこんな接点があり、これがきっかけで翔太朗は壮吉に憧れるようになる。

「みんな、今のうちにここから逃げて!」

刃野がそういうと、観客達は急いで逃げていき、翔太朗らも名残惜しそうに去っていった。

「半年も地上に居たせいで、少々体力は訛ったが、まだまだ活けそうじゃな」
『き、貴様何者だ!?』
「ただの、物好き魔人じゃよ」

レイズは蜘蛛男の首を手に、体を持ち上げながら静かに述べた。

『バカな!ドーパントである俺がぁ!』
「ドーパント?」

レイズが首を捻っていると、

ASSASSIN(アサシン)

――ザシュ!――

「うぅッ!」
「レイズ!!」

背中を誰かに切りつけられ、レイズは思わず手を放してしまった。

「もう一体いたのか・・・!」

壮吉はこの状況に冷や汗を流す。
レイズの背中をきりつけたのは、全身黒尽くめで骸骨の面を被ったアサシン・ドーパント。
文字通り、暗殺者の記憶を宿した怪人だ。手に持った短剣がよく似合っている。

『ドーパントとは、ガイアメモリによって進化した人類』

アサシンはそう述べる。

「そして、その蜘蛛の方には、わっちが売りんした」

直後に、上の階からこちらを見てくるのは、花魁言葉を使ってくる謎の美女。
そのてにもつケースには幾つモノガイアメモリがはいっている。

「黒尽くめは、御主の仲間か?」
『大切なお客様だからな』

アサシンは平然と答えた。

「そうか・・・・・・ならば一緒に退場してもらおうかの」
「ああ、メリッサの保護者としてな」

STAG(スタッグ)
MANTIS(マンティス)

壮吉はスタッグフォン、レイズはマンティスフォンにギジメモリをいれ、携帯電話型のガジェットモードからそれぞれ、クワガタムシやカマキリを模した形態に変形させた。

ガジェットは蜘蛛男とアサシンの気を引く役をなす。
レイズはその隙に、全身に魔力を巡らせて背中の傷を急速に自己治癒した。

『クソッ!』

蜘蛛男は苛立って壮吉をスパイダーウェブで縛り上げ、そのまま逃走してしまった。

「壮吉!」
『またな、ホントのバケモン』

レイズもそっちに気をとられ、アサシンには皮肉を言われて逃がしてしまった。

そのタイミングで、

「大丈夫ですか!?」

警官たちが戻ってきた。
レイズは「大丈夫」と返事しながら、壮吉と縛るスパイダーウェブを引きちぎった。

「無事かあんたら?」
「にしてもなんてバケモノだ!」

と警官たちがいっていると、壮吉とレイズはあることに気付く。

「ん、メリッサ?」
「メリッサ、どこだ!?」

そう言っていると、そこへ聞きなれた相棒の声。

「壮吉!レイズさん!」

マツがメリッサを連れて走ってきたのだ。

「無事かメリッサ?」

と言われて、壮吉が手を伸ばすとメリッサは壮吉を避けてしまった。

「どうした?怪我でもしたか?」
「余計な心配をするな」

そこへ無粋な一言が。

「このコはこっちで護る。行くぞ」

矢口はいきなり現れ、メリッサの腕を掴んでいこうとする。

「社長!」

だがメリッサは矢口の手を振り解く。
そして、

「お願い壮吉、レイズ。蜘蛛男たちを止めて」

面とむかって二人に頼み込んだ。

――ガシッ――

だが矢口はその直後にメリッサの手を引っ張り、今度こそ行ってしまった。

「空気の読めん男じゃ」

レイズは呆れるように口を開いた。

「矢口・・・・・・」

壮吉も何か勘付いたようだ。

「止めたほうがいい!相手は普通の人間じゃない!」

マツは壮吉を止めようとする。

――パチッ――

「あ、名案!ここは、警察にお願いしよう?」
「「断る」」

見事にバッサリとダブルできられた。

「法をチマチマ護った警察では、出来る事に限度があるし、手間も掛かる。自由に動けるワシらがヤル時なんじゃよ」
「調べてくれマツ。お前の本棚で」
「うっわぁぁ、言うと思った・・・・・・」

マツはかなり沈んだ様子から、

――パチッ――

「了解♪」

指を鳴らし、一気に笑顔となった。

「ふ・・・っ」
「ありがたい」

その言葉に、壮吉とレイズは無意識に微笑んでいた。




*****

その夜、事務所に壮吉とレイズは戻ってきていた。
厳密に言ってしまうと、ガレージにだが。

そこには当然、W専用のリボルギャリーはない。
代わりに骸骨を模した黒と銀の『スカルギャリー』という大型車両が鎮座していた。

「幽霊なら、ここにいるわ」
「怖ーい魔女も、ね?」

スカルギャリーから二人の女の声が聞こえてきた。
するとスカルギャリーの車体は大きく開き、内部が丸見えになる。

そこには、黒いライダースーツを着た上、顔をマスクとサングラスで隠し、髪を切り揃えた奇妙な女―――もう一人は、一見普通の私服姿だが、その足元には奇妙な長い杖を置き、長い髪を垂らした30〜40歳あたりの女。

直ぐ近くに何かの設計図を見ていたようで、少し威圧感が加わった―――いや、レイズの発言のせいで凄みまでついた女が二人居た。

「あれは言葉の綾じゃよ、プレシア」
「そうだぜ文音(ふみね)

というレイズと壮吉に対し、

「私の名はシュラウドよ」

顔を隠した女はそういった。

「今更幼馴染をそんな芸名で呼べるか」

もうお分かりだろうが、シュラウドとプレシアはWやイーヴィル達は勿論の事、スカルとデュアルの運命の始まりにさえ関わってきたのだ。
メモリガジェットや専用ビークルも彼女達がつくり与えたものである。

だが雰囲気は一転する。

「お前が言ってた怪物をみたぞ」
「・・・・・・遂に組織が、街の人間にメモリを売り始めたのよ」

シュラウドの本名は園咲文音。
ミュージアム頭目・園咲琉兵衛の妻にして、フィリップの母親。
そして、ガイアメモリ研究の功労者でもあった。

「どうすれば?」
「ワシも、魔界能力を連発するわけにはいかんぞ」

二人がそういうと、シュラウドとプレシアはある物を手に持って見せた。

「貴方もこれを使うの。方法はそれしかない」
「そうすれば、魔力を浪費せずに済むわ」

シュラウドが取り出したのは、髑髏の横顔で描かれたSの字がディスプレイに映った黒い純正型メモリ。
プレシアが見せたのは、緑が二本と、赤・青・金・銀といった六本の純正型メモリ。

「なら断る。――ガジェット(これ)で充分だ」
メモリ(そいつ)は、本当に必要な時に受け取ろう」

そういって壮吉とレイズはガレージから出てしまった。
それを見たプレシアは溜息をつく。

(都合よく現れた魔人を見つけて、時代を越えてまでこうしてるけど、まだ当分先になりそうね・・・・・・アリシア)





*****

翌日の風都図書館。

マツはそこで必要な情報をあらかた収集し、それをテーブルの上でまとめていた。
それが完成した直後、壮吉とレイズがやってきた。

「資料なら完成済みだよ」

――パチっ――

「傑作・・・!」

資料にはこの事件に関する人物達の顔写真や名前と共に、その関連性や位置関係が描かれていた。

メリッサを中心として、鳴海探偵事務所、蜘蛛男、芸能プロダクションなどの陣営が存在している。
しかし、プロダクション陣営の真下には『行方不明』のカテゴリに入っている女性五人の写真があった。

かなり解りやすい構図となっており、壮吉もレイズもこの資料形式には重宝している。

「表向きは芸能プロダクション社長」
「・・・裏は?」

そういわれて、マツは資料をひっくり返す。
そこには新聞の切り抜きが貼ってあった。

”また?所属タレントが行方不明に”

という書き出しで始まる小さな記事。

「時たま所属タレントが、原因不明の蒸発をするらしい・・・・・・」
「・・・・・・なるほど。流石だマツ」
「御主の情報に関する収集と分析能力は、眼を見張るものがあるのー」

壮吉とレイズがそう褒めると、

「ハハッ、調子いいな。ホント役得だよ?普段振り回されてんのに、こうしてつい頑張っちまうんだよ」

マツが自作した資料を見直しながら語る。

「壮吉は妻子持ちだってのに、美女が寄って来るしさ、罪な男だ。――あ、そうだ。たまには泣かした人の数を、数えてみたらどうだい?」
「ふっ・・・・・・今度数えてみるよ」

そういって壮吉は図書館から出た。

「あんたもあんただよ、レイズさん」
「え、ワシも?」

思わず自分を指差すレイズ。

「頭は老いても体は若い・・・っていうギャップに惹かれて、裏でキャーキャー言ってるコ達がいるって専らの噂だしね?」
「こういう人間の複雑な感情は、今一よくわからんのぅ・・・・・・」
「まあ、女心を完全に理解できる男なんて、それこそ数えるほどでしょうけどね♪」

互いに軽い雑談を交わしながら、レイズもまた、図書館から一旦出て行った。
ちなみにレイズは、自分のちょっとしたボロの一言を、マツは都合よく解釈してくれたことに内心安堵していたらしい。

「あ、そうそう」
「ん、なんじゃ?」
「レイズさんも覚悟決めて、早めにお嫁さん貰ったらどうです?急がないと、何時か女の子にグサっとやられちゃったりして?」

現代ではそういうのをヤンデレと呼ぶ。

「あはははっ、ワシを夢中にさせてくれる女子(おなご)が現れたらな」

そうしてレイズも気持ちよく微笑みながら、手を振りながら、マツと一旦別れて現場に向った。
これが彼という仲間と交わす、最後の暖かな会話になるなど、予想もしないままに。





*****

風都神社。
そこでは出店などがでていて、様々な子供向けの遊びや玩具が行われたり売られたりしていた。

「んっとー、これ!」
「これか?」

一人の少女が赤い風車を選ぶと、その出店の男は風車を少女に渡した。

「ありがとう!」
「どういたしまして」

代金は先に払われていたので、買い終えると少女は母親と一緒に何処かへ行ってしまった。

店主の名は尾藤(びとう)(いさむ)
後に、親友の二人の嵌められ、懲役十年という濡れ衣を着る事になる悲運の男である。

そうして周囲に誰も居なくなると、

「よっ、サム」
「どうじゃ景気は?」

壮吉とレイズが訪れてきた。

「旦那、レイズ。頼まれてた奴、あらかた話したよ。ストーンってやつに」
「ストーン・・・?」

聞きなれない名前に壮吉は問い返す。

「ええ。普段は石ころみたいに目立たないんですが、かなりの建築物マニアで、街中の建物の構造をよーく知ってるんですよ」
「んで、何処におるのじゃ?」
「―――あんたらの後ろ」

と言われて振り返ってみると、

「また気付いて貰えなかったなぁ」

微妙にゆったりとした口調の、地味としか言いようの無い男がいた。
まさに小石みたいな存在感である。





*****

同日の深夜、矢口芸能社。

「すまぬが、みな気絶してもらおう」

レイズは一人で先行し、ガードマン達の前に立った。

「魔界777ッ能力(どうぐ)――幻覚色眼鏡(イビルイリュージョン)

ガードマン達全員の頭上に奇妙な傘が現れた。
傘は閉じた状態からゆっくり開いたとき、その傘に気付いたガードまんらが上を向いた時は、

傘の裏側のビッシリついた目玉を直視して、十秒足らずで失神した。

「他愛も無い」

すぐに幻覚色眼鏡(イビルイリュージョン)を消すレイズ。

「何時見ても凄いもんだな、魔界能力ってのは」
「いやいや、こんなものは序の口じゃ。ワシとて出来る限り荒っぽいやり方は避けたいからのぅ」

やろうと思えばトラウマ確実な能力もあるが、あくまで幻覚による失神、という妥協はレイズらしいといえるだろう。

そこへストーンが、

「せ、セキュリティ、落としました・・・・・・」

システムを落としたようで、壮吉とレイズが堂々と門から敷地内に入ってくる。

「で、でも、中にまで入っちゃっていいのかなぁ・・・?俺、臆病だし・・・・・・」
「・・・・・・臆病なくらいが丁度いい。長生きできる」
「そうじゃよストーン。ワシらみたいなのは特にな」

といってストーンを諭す二人。
そうして敷地内はおろか、屋内にまで入っていく。

開けっ放しのドアから入ると、まず眼にはいったのは白いピアノ。
そして奥にはあるのは、プールだった。

そこには行方不明になったタレントたちが水着姿ではしゃいでいる。
しかし、言動や行動が一貫しておらず、まるで麻薬の末期症状のように”何かが壊れかけて”いる状態だ。

その証拠に、ガイアメモリが足や腕に、中途半端な状態でささっている。

「なんだこれぇ・・・?タレント達が・・・?」
「ガイアメモリの実験台にされている」
「・・・・・・彼女たちの救出は、奴に御縄をくれてやってからじゃな」

状況の分析と同時に、レイズはプールに歩んできた男を見つけた。
もちろん、ガラス越しなので向こうからも見えている。

「・・・・・・探偵・・・!?」
「矢口・・・・・・」
「噂とはまこと、バカに出来ぬもんじゃな」

壮吉とレイズは自分たちの存在に気付いた矢口に静かな怒りの念を燃やしだす。
だが、その直後、

「「「―――ッ」」」

背後から、黒い体に背骨か蠍のような白いラインの浮かんだ黒服をきた怪人、マスカレイド・ドーパントたちが多数現れた。

「ストーン、逃げろ!」
「は、は、はい!」

レイズはストーンを急いで外にだすと、壮吉と共にマスカレイドらと肉弾戦にはいる。
だが屋内で戦っていればいずれ持久戦になってしまう。それを避けるべく、二人は屋外に出た。

レイズは魔界能力でさっさと片付けようとした―――その時、

「た、助けて!!」

ストーンの声。

「うぅ、し、死にたくない!」

ストーンの前には、あのガイアメモリの売人女、小森(こもり)絵蓮(えれん)がいた。

「許して欲しいでありんすか〜?・・・無理ざんす」
「ストーン!」

レイズは絶体絶命のストーンを助けようと、マスカレイドたちを魔人の怪力で振りきり、助けようとする。

【ASSASSIN】

――シュン!――

『生かせんよ、ここまできたら、一般人だろうと』
「おのれ・・・・・・!」

しかしそれはアサシンによって阻まれる。

小森は自分の白いメモリを起動させる。

BAT(バット)

メモリは鎖骨部分にさしこまれ、小森の体は蝙蝠の群に覆われるようにして、蝙蝠の記憶を宿したバット・ドーパントに変貌した。

「ひ、ひぃぃぃ!」

怯えるストーンに、バットは無情にも腕にあるバットソードを突き立てた。
それによって、ストーンは一撃で倒れてしまった。

そこへ蜘蛛男までもが現れる。

『要らぬことを嗅ぎ回るからだぞ、探偵!』
「「矢口、貴様!」」

蜘蛛男の正体を矢口と断定した二人は、周囲にいるマスカレイドを薙ぎ払いながら、戦いを別の場所へと変えていく。

豪華な芸能社の敷地とは似ても似つかない、積み重なって山となった土やコンクリートや建築材が多く存在し、クレーンカーやショベルカーなどもが数多く並ぶ場所に。

壮吉とレイズは建物の工事現場へと足を踏み入れ、完成途中の建物の周囲につくられた作業用の足場へいき、階段を登っていく。
のぼっていくと、二人はすぐさま別の階段から飛び降りていった。まるでマスカレイド達を誘き寄せるかのように。

壮吉とレイズは土の山に着地すると、すぐまた移動して、上からぶら下っている鈎針ロープを掴むと、

「行くぞ」
「ああ」

互いに合図して、思いっきり地を蹴った。

「「ハァァアアア!!」」

ロープにぶら下りながら片足を前に突き出し、誘き寄せて縦一直線に並んでいたマスカレイドたちに見事なダブルキックを浴びせた。

だが、

――ビュッ!――

蜘蛛男がそこへやってきて、二人をスパイダーウェブで縛り上げた。

『先に言っとくが、腕力でどうにかなると思うな。俺自身ドン引きするくらいに時間をかけ、強度MAX状態の糸を作り出したんだからな!』

蜘蛛男はそう懇切丁寧に教えてくれた。

『フッ!』

次はバットが口から超音波を発する。
すると、無人のクレーンカーが動き出したのだ。

「機械を操れるのか」

壮吉は相手の能力を冷静に観察する。

蜘蛛男はそこへさらに二人を糸で縛り、宙に浮くような状況にすると、今度はクレーンカーにも糸を複雑に絡ませて二人の糸と直結させる。
バットはそこでもう一度クレーンカーを操って、車体を全力で方向転換させることで、二人が建築物の壁に激突するように仕向けた。

するとそこへ、

「壮吉!」
「レイズ!」

シュラウドとプレシアが、ロストドライバーとデュアルドライバーを二人の腹めがけて投げつけた。
狙い通り二人の体に装着されたドライバーには既にメモリが挿入されていて、装着と同時に発動する。

SKULL(スカル)
MULTI(マルチ)/WARRIOR(ウォリアー)

ガイアウィスパーを響かせながら、二人の体は黒と緑の粒子を纏いつつ、コンクリが粉砕する勢いで壁に激突していった。

『ふむ・・・やったか?』

と、アサシンが暗闇から現れ、二人の様子を見てみようとしたとき、

――バギッ!――

『ぐぉあああ!!』

拳と蹴りが、アサシンの顔面に直撃した。

眼をよく凝らせば、そこには二人の異形が居た。
砕けた壁から出てくると、二人の姿は月明かりのものであらわになる。

髑髏のような銀色の仮面。黒い体には白骨を連想させる銀色のライン。首には白いマフラー。
左右とも緑色だが、正中のラインと複眼は黒で、口元を隠すように赤いマフラーが巻かれている。

「これが俺の体・・・・・・」
「なんと面妖な・・・・・・」

少し歩いて、工事現場の人間がつかっていたであろう黒い車のガラスを鏡にして、二人は変身した自分を見つめた。
だがしかし、今の彼等を見たシュラウドとプレシアは、

「「まだ完全なスカル(デュアル)ではない!?」」

そう、不完全なのだ。
スカルの頭には黒いS字の傷が無く、デュアルの頭にも二本の角が無かった。

さしづめ、”スカルクリスタル”・”デュアルイノセンス”・・・・・・とでも呼べばいいのだろうか。

『『『『『ーーーッッ!!』』』』』

マスカレイドらは残り全員が結集し、スカルとデュアルに人海戦術で挑もうとする。
だが意味の無いことだった。

スカルは不完全ながらも、壮吉自身の身体能力とスカルの特性もあいまって、スピーディかつアグレッシブにマスカレイドたちを蹴散らしていく。パンチやキックは勿論、タックルや背負い投げなど多種多様な方法を用いているのだ。

一方でデュアルはスカルのようなスピーディさはなく、あえてゆったりと歩くような感じでマスカレイドたちの相手をしていた――戦術がいらないからだ。元々全力をだせば正規のドーパントに匹敵する上級魔人をメモリ二本で強化している今、ただ単に殴って蹴ったりするだけで充分いけるのだ。

だが肝心のドーパント三体のうち二体は、スカルとデュアルに襲い掛かってくる。

『俺が相手だ!』
『闇は闇同士で喰いあうべきだろ?』

蜘蛛男はスカルに、デュアルにはアサシン。
結果として、バットはシュラウドとプレシアの相手をすることとなる。

スカルは蜘蛛男と肉弾戦をかわしている。
だが二人の戦い方は対極で、蜘蛛男が乱雑に拳を振るうなら、スカルはそれを的確に受け流している。
蜘蛛男はそこで痺れを切らしたように、スカルと取っ組み合いになる。

すると、

――ビカぁぁぁ・・・・・・!――

『・・・・・・ッ!?』

スカルの胸から紫の光が漏れ出している。
このまま何かが飛び出してくるのかと思ったとき、

――ァァァ・・・・・・・・・・・・――

「・・・・・・なに?」

光はゆっくりと消えてしまった。
蜘蛛男はその隙にスカルを殴り飛ばす。

だがスカルは体が転がる中でも、専用のエネルギー銃・スカルマグナムを手にして引き金に指をかける。

――バンバンバン!――

弾丸を連発して蜘蛛男を牽制するスカル。

『フッ!』

蜘蛛男は腕からスパイダーウェブを伸ばし、スカルの遥か後方にある物体に絡ませ、そのまま向こう側に移動していく。

それを見たバットは、シュラウドとプレシアをあしらい、ショベルカーの上に乗って超音波で操る。しかも最悪なことに、スカルはいまショベルカーの真正面にいた。

「う・・・・・・ッ」

ショベルカーのバケット部位が動き、そのままスカルを下敷きにしてしまった。

「壮吉!」
『させるか!』

デュアルはスカルを助けようとするも、アサシンによって阻まれてしまう。

「プレシア!シュラウド!」
「わかった!」
「任せて!」

代わりに二人に頼むが、

『邪魔するな!』

蜘蛛男がプレシアをスパイダーウェブで拘束し、シュラウドも蜘蛛男自身に邪魔される。

その時だった、

――ピリリ、ピリリ!ピリリ、ピリリ!ピリリ、ピリリ!――

スカルからスタッグフォンの着信音が聞こえてきた。
スカルは何かと思い、誰がかけてきたのかと思って液晶をみると、

「亜樹子・・・・・・」

それは、当時まだ大阪に住んでいた子供時代の亜樹子からの電話だった。

「なんて時に・・・・・・」

異常なまでな間の悪さ。
しかしスカルは少し記憶の引き出しに収めてあることを一つ、取り出した。

「あ、そうか」

思い出した彼は、電話にでた。

「誕生日だ。――おめでとう」

今日は亜樹子の誕生日。
それだけの理由でスカルは電話に出たのだ――この戦々恐々とした状態で。

『お父ちゃん!お母ちゃん、珍しく電話でたでぇ!』

スタッグフォンから子供亜樹子の関西弁が聞こえてくる。

『周りやかしいなぁ。何しとんねん?』

これだけの事が起こっているのだから、亜樹子にも戦いやショベルカーの音がノイズとして聞こえているようだ。

「お仕事だよ。今も悪党と戦ってショベルカーに、押しつぶされそうなところだ」

と、真実をかたるスカル。勿論、冗談として受け取られるのは理解している。
こうしてる間にも、バットがショベルカーのパワーを上げ、より危険な状況となりつつあるのに。

『嘘やぁそんなぁ。そんなに大阪に帰りたくないんかぁ?あっと言う間に、あたし歳とってしまうでぇ?次に戻ってきたときには、もうお嫁に行ったときかもしれへんでぇ?タマには帰ってきてぇなー!』

などと子供亜樹子がいっていると、

「お前が嫁にいく時には・・・・・・必ず傍に居てやる」

それは今の亜樹子も克明に覚えている台詞。

『え!ホンマに!?』
「・・・・・・約束するよ。――亜樹子」
『うん!!』

――ピッ――

スカルはそうしてスタッグフォンの通話をきった。
そして・・・!

「まだ死ねん・・・・・・!!」

スカルは黒い両目を一瞬、紫に煌かせると、それを機に両腕の力を眼一杯をいれる。
元々骨格を中心に身体強化を行うのがスカルメモリ。全力をだせばショベルカー一台を動かすくらいわけじゃない。

「ん〜〜ぉぉおおお・・・・・・!!」

スカルはバケットを車体ごと限界まで持ち上げると、

「トオッ!」

車輪を蹴りつけて後方の壁に激突させた。

――ドシィィィィィン!!――

『ッ!』

バットは当然逃げたが。

(壮吉・・・!そうか、これが・・・!)

たった一本の電話。掛け替えの無い家族との会話。
魔人の聴力は確かにそれを聞き取っていた。

(これが、人間の可能性!)

垣間見もした。知人より教えられた、人間一人一人が隠し持った力の片鱗を。
今まで安住の地で訛りかけていた自分の心を引き立てるモノを。

「レイズ、これを!」

その時、プレシアは片手だけを糸から出し、二本のメモリを投げ渡す。
デュアルはすぐさまメモリチェンジを行った。

FROST(フロスト)
SABER(セイバー)

起動させると同時に、素早く換装する。

【FROST/SABER】

右半身は青、左半身は赤。
凍結の剣士・フロストセイバー!

デュアルは背中にマウントされた大太刀型のセイバーソードを握り、アサシンに向って刃を振り回す。

『そんなものが当たるか』

アサシンは奇襲や隠密といったことを得意とするドーパント。
俊敏さにも一定の水準を誇っている。

「デュアル、マキシマムドライブよ!セイバーメモリを武器のスロットに!」
「スロット・・・?これか!」

デュアルはプレシア教えられたとおり、メモリをインサートした。

【SABER・MAXIMUM DRIVE】

マキシマムが発動すると、セイバソードの刀身は絶対凍土に等しい冷気をまといだす。
デュアルは大きく振りかぶって、

『ま、拙い!』
「セイバーアイスラッシュ!!」

即興的に思いついた技名を叫びながら、刃を振るったデュアルを中心とする周囲のもの全てが冷たい氷へと閉じ込められた。

『―――――――』

当然、アサシンもだが。

「ハァア!」

――バリィィン!――

デュアルはセイバーソードでアサシンの氷を斬り付け、トドメのメモリブレイクを行った。
それによってアサシンは、黒服の男に戻り、傍には砕けたアサシンメモリ。

蜘蛛男はこの状況に恐怖し、逃げ出した。

「「待て!」」

当然ながらスカルとデュアルたちは其処から走って追いかける。

それらの一部始終をみた亜樹子とヴィヴィオは、

『あの電話・・・・・・あの時、お父さんはもう仮面ライダーだったんだ!』
『伯父さん達が、こうしてライダーになってたなんて・・・・・・』

あらゆる意味でおどろき、何かを感じていた。





*****

壮吉とレイズは変身を解除し、芸能社に戻ってきていた。
そしてそこで取っちめたのが、

「やはり御主が蜘蛛男か」
「違う!あの蜘蛛のドーパントが誰かなんて、こっちが聞きたい!」

レイズに切迫され、矢口は無意識に口を動かして喋る。
レイズは矢口の頭に手を当てていて、魔力をソナーのように使い、脳波から嘘かどうかを判別している。

「俺は組織に依頼されて、若者を集めてただけだ!」
「嘘をつけ」
「いや、本当みたいじゃぞ。この脳波パターンは間違いない」
「・・・・・・・・・」

レイズにそういわれて、壮吉は矢口をはなした。
そこへ、

「なんの騒ぎですか!?主人になにしてるんですか!?」

夫人がやってきた。
矢口を庇うようにする夫人の様子を、壮吉とレイズは見ていて、一つのことに気がついた。

夫人の皮膚の下に、蜘蛛のような影が動き回っている。
そして、蜘蛛は夫人と矢口の手が触れ合った途端、矢口の体に入り込んだ。

「うッ!うぉああああああああ!!」

蜘蛛からは大量の糸が吐き出され、矢口の全身をあっと言う間に覆い尽くしてしまった。

「離れろ!」

レイズの指示で皆は矢口から距離をとる。

そして矢口は、糸が繭状になると同時に、

――ドガァァアアアァァァン!!――

大爆発を起こした。

「キャアアアアア!!ああああ・・・!イヤぁぁぁぁ・・・!」

夫人が嘆いていると、

『あははははははは!!おはははははは!!』

蜘蛛男が屋根の上に立って高笑いをしているではないか。

『どうだい?俺様の熱い蜘蛛爆弾(スパイダーボム)は?ハッ!』

蜘蛛男は手から糸を出し、壮吉とレイズの背後にある壁にあるメッセージを残す。

”シティホール 108閉館”

そのメッセージの中にある1の文字。
頭部分が異様に跳ねた書き方に、壮吉は見覚えがあった。

「まさか・・・・・・」
「この筆跡・・・・・・」

そして、亜樹コとヴィヴィオの意識は一度現実に帰ってくる。




*****

「所長!ヴィヴィオ!しっかりしろ!」

気がつくと二人は、照井の手でプテラヤミーとキョウケンヤミーからはなされていた。

【HEAT/METAL】
【SONIC/KNIGHT】

Wは熱き闘士(ヒートメタル)、イーヴィルは音速の騎士(ソニックナイト)にハーフチェンジして、武器をヤミー相手に振るっている。

「途中で終わっちゃった!」
「なんの話だ?」

亜樹コの発言に照井が問うが、

「続き、見なきゃ!」
「このままじゃダメ!」

二人は思いっきり駆けた。

【METAL・MAXIMUM DRIVE】
【EVIL/KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】

Wとイーヴィルは武器にメモリをさしてマキシマムドライブを発動させようとする。

「『メタルブラン「おりゃああああ!!」――おわぁッ!?』」
「『ナイトゲイル「ちょっと待って!!」――な、なに!?』」

突如の乱入に、必殺技は不発に終わってしまった。
亜樹子とヴィヴィオはプテラヤミーとキョウケヤミーにしがみつく。

「おい亜樹子!どういうつもりだ!?」
『ヴィヴィオ、どうして急に!?』

翔太朗とリインフォースが聞いても、

「まだ全部見てない!あの後、お父さんどうなっちゃうの!?」
「そうだよ!レイズ伯父さん達はどうするっていうの!?」

二人は完全に自分のペースだ。

『言葉の意味が全く理解できない!』
「いや、兄上の名を出した上に、メモリの名称・・・・・・まさか、兄上と鳴海壮吉の過去を垣間見たのか!?」

フィリップとは裏腹に、ゼロが言葉の意味を理解した直後、

――バシューーー!!――

ヤミー二体から奇妙な波動が放たれ、Wとイーヴィルの変身を強制的に解除してしまった。
そして、亜樹子とヴィヴィオが体にしがみついたまま、空へ飛び去り、地を蹴って去ってしまった。

そうして、亜樹子とヴィヴィオの意識は今再び、哀しい過去に遡った。

次回―――

さあ、覚悟を決めな


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