夜の闇に潜む住人、妖は世界のどこにでも存在している。
魑魅魍魎となった思念や、妖として形を成した人の思いなどが世界の闇に住んでいる。
妖達はいつも生きる人達を狙っている。
人の恐怖を喰らうために。
そんな妖達から人々を護る者がいる。
“結界師”と呼ばれる結界術を使用して、妖を殲滅する一族。
そんな一族の家では少し騒動が起こっていた。
上機嫌に家に着いた墨村美守は、絶望に包まれていた。
妖から街を護る“結界師”として、夜の見回り任務を一緒に行こうと約束した兄の正守が未だ家に帰ってきていないのだ。
「やだやだやだ! 正守お兄ちゃんが帰ってくるまで行かない!!」
「うっせー、いけ!」
結界師として400年の歴史を持つ一族墨村家の次期当主の墨村良守は、駄々をこねる美守を足蹴にしつつ家から追い出そうと追い詰めていく。
日頃スパルタで接されている美守には、ジリジリと近づかれるだけで後ずさりするしかなかった。
「は……“はやて”にいってきますするもん!」
「お前の片割れはもう寝たよ」
ジリジリと追い込まれ長い廊下の奥にいたはずが、ついには玄関の段差まで後退していた。
仕事着である黒い袴に身を包み、毅然と立っていれば様になるのだが、涙目でビクビクと怯えていればただの小動物。
その小動物を追いやる兄は鬼にでも見えるだろう。
「斑尾! 妖はもう出てんだろう?」
美守の後ろに向けて良守が怒りを含んだ声を放つ。
斑尾と呼ばれた存在は、墨村家に仕える妖犬である。
その鼻で妖を探知し、結界師の補佐をしてきた。
オカマ気質な事を除けば、最高のパートナーである。
美守は自身に向けられた声ではないのはわかっているが、ビクッと大きく震えると身を固めて縮こまる。
「学校の方に一匹いるねぇ~」
「学校か――。ならいいだろ……行けよ!」
良守は縮こまって動こうとしない美守の襟を掴むと、引きずるように正門の外に連れ出す。
戻ろうとする美守を無視し、正門の戸をピシャリと閉める。
靴も履かずに放り出され仕事道具も持ってはいない美守は、正門の前で座り込み泣く事しか出来なかった。
数分とせずに家の庭から高い塀を越えて
――美守の仕事道具である携帯電話、救急道具を入れた風呂敷。
――臨時の武器であるクナイとそれを収めた腰鞄。
――波刃の下に異界への扉となる鉄の輪が着いている杖、天穴。
――草鞋。
が投げられてくる。
それ以降5分ほど戸を叩くが、返事は一切返ってこなかった。
諦めた美守は草鞋を履き、仕事道具を身に着けると、優しい方の兄正守に電話を掛ける。
泣きながらで中々話は進まなかったが、なんとか学校で落ち合う事で決着がついた。
一人でトボトボと兄との合流場所である学校に向けて歩いていく。
「ほぉらぁ~、あれが今日の妖だよぉ~」
トボトボと学校に辿り着いた美守は、ゆっくりと校庭に居座る妖に近づいていく。
拗ねたような不機嫌な瞳だったはずが、校庭に入ってから無感情に近い瞳となり、足取りに力強さが増す。
妖が近づく美守に気づき、喰おうと大きく口を開け襲い掛かる。
美守はビクとも反応せずに、ただ人差し指と中指を立て手を上げる。
「方位、定礎、結」
元々妖との間にあった5mほどの距離を覆う広さの四角形を3mは超える高さにまで伸ばし、6面体の結界が発生する。
標的を指定する“方位”
位置を指定する“定礎”
今までのプロセスで指定した位置と標的に結界を形成する“結”
結界師に伝わる“間流結界術”と呼ばれる結界師の始祖・間時守が開発し残した術である。
この後に、標的を滅する“滅”と標的を逃がす結界解除の“解”が存在する。
「妖は……滅する。“滅”
――天穴」
美守は“滅”と共に振り下ろした腕と同時に、結界は中に閉じ込めた妖を道連れに粉々に粉砕する。
粉微塵に砕けた妖に天穴を掲げ、異界の扉を開き、妖を吸い込む。
このスタイルが、墨村美守の結界師としての基本となる。
妖を滅し何もいなくなった校庭で、美守は空を見上げる。
(気持ちが……落ち着くなぁ。良兄にあんなに怒られたのに
――学校は落ち着く。まるで母さんに抱かれてるよう)
空を見上げていると、巨大なムカデが空を飛ぶという世にも奇妙な光景が目に入る。
美守は、それが兄・正守の部下のものである事を知っている。
一気に満面の笑みを零した美守は、結界の強度を調整しトランポリンのように反動をつける様に張る。
飛ぶタイミングを合わせ、空中に飛び上がる美守。
何度か繰り返し、瞬く間に空飛ぶムカデの元に辿り着く。
「正守~おにぃちゃん~~!!」
ムカデの上に飛び乗ると、坊主頭で黒の作業和服を着こなし、黒の羽織を羽織る兄正守に抱きつく。
正守も、優しく抱きしめると、ムカデから飛び降りる。
「妖はどうした?」
「退治したよ」
(やはり、学校では……本来の力と性格が出るんだな……)
結界をクッションに無事着地した正守は、離れようとしない美守を抱えながら街を見回り始める。
学校を離れた瞬間から、美守が抱きつく強さが一層強くなり、美守が小刻みに震えだす。
「何かあったのか?」
「良兄が……」
正守は良守と美守がいつも通りのやりとりをしたのだろうと、笑いがこみ上げてくる。
「少し、嫌な感じになるけど……ガマンできるかい?」
「うん! 正守お兄ちゃんの“アレ”全然嫌な感じしないよ」
そうか……っと微笑むと、正守は立ち止まる。
影を媒介に結界を張る。
黒くアメーバーのような結界は物質をすり抜けるように広がり、町全体に広がる。
その中を気持ち良さそうに泳ぐ黒い鯉。
正守が出現させた黒い鯉は自身の術の管理者。
影の結界での探知の精度を上げ、正守の負担を減らす事が出来る術者の相棒。
言葉を発せず、パクパクと口を動かすと、影の結界に潜って消える。
「少し急ごうか。女の子が“何か”に追われているようだ」
美守を抱えた正守は、結界を足場に民家の少し上を最短距離を通り目的の人物が逃げる先に駆ける。
塀の影から、逃げてくる少女を見つめる。
少女は逃げ切ったと思ったのか、立ち止まり息を整えていた。
「美守、あの子を襲っている何かが近づいてきてるよ。さぁ、サポートはしてあげるから……やってみな」
「ん~ん~!!」
美守は正守の服を力一杯握りながら、顔を埋め、精一杯の拒否を示す。
正守は苦笑しつつ、優しく埋められた顔を引き剥がす。
「ほら、美守。あの子をお前の大事な妹“はやて”だと思いなさい……
美守はどうする?」
正守から“はやて”という単語が出た瞬間、美守の目が一瞬にしてしっかりと力が入る。
「守る。傷つけさせない……“はやて”を傷つけようとするやつは……滅する」
呪文のように繰り返し塀の影から少し出る。
自己に言葉を投げるのにかなりの時間を要したため、既に“何か”が少女を襲おうと飛び込んでいた。
美守は焦りもせずに、人差し指と中指を伸ばした手を天に向けて上げる。
少女と“何か”の間に透明な六面体が形成され、壁となり少女を助ける。
“何か”が退くと、美守は結界を少女の周りに張り防壁を作る。
その間10秒と掛からなかったが、落ち着いていた美守がガクガクと振るえ、先程までの弱弱しい美守に戻る。
励ましの言葉を掛けようと近づくも、既に美守は涙をポロポロと零し、言葉を理解できるようには見えなかった。
(限界か……まぁ、合格かな)
正守は泣きじゃくる美守を抱きしめると、少女の上空に視線を移す。
人と同じ大きさを持つ巨大な黒い蝶に乗り、左腕から1mは軽く超える黒い翼が生やす、黒衣に身を包むショートの紙をポニーテールに纏める女性がいた。
「後は、美希に任せるとしますか。うちのお姫様は限界だし……」
視線の先に投げかけるように呟く。
美希と呼ばれた上空を飛ぶ女性は“何か”に照準を合わせる。
黒い羽が棘のように鋭く尖り、不気味な黒光りを放つ。
黒い翼から羽を撃ち出そうとした瞬間、守ろうとした少女から眩いばかりの光が天に昇る。
正守と美希が呆気に取られている間も、美守は顔を埋め、外の出来事に耳をふさいでいる。
正守は携帯で、美希に後の事を全て任せると美守を抱いて現場から立ち去る。
いつものように抱えて妖からの街の警備につこうと、街を徘徊していると美守が愚図り始める。
なだめようと正守が悪戦苦闘するも、収まらず最終的には副官の美希を呼ばざる終えなくなる。
降参した正守は、後始末を頼んだ美希を呼び戻す事になった。
魔法少女リリカルなのは×結界師
―ふたつの大樹は世界を揺らす―
第2話 「黒い羽のお姉さん」
作者 まぁ
「こんな夜遅くにおかえり、なのは」
そろりそろりと家に入ろうとなのはは息を潜めて潜り込むと、冷静な声がなのはを迎える。
少し不機嫌な表情をし、玄関の横に立つ好青年を絵に描いたような容姿の兄・恭也。
恭也とは反対側に立つ黒髪を三つ編みに結ぶ眼鏡を掛けた姉の美由希。
「ダメだよ~、こんな夜遅くに出かけたら」
その後、軽く兄姉から説教を受けると、両親に気づかれないように家の中へと連れて行かれる。
「ふぅ~。なんとか帰ってこれたね」
寝巻きに着替え、ベッドに腰を下ろしたなのはが肩から机に降りたユーノに声を掛ける。
突然巻き込まれた非日常――
異形の生物に襲われなんとか封印には成功するも、その帰りに聞いた事すらない“裏会”なる組織の異形の翼を腕に生やす女性、刃鳥美希に尋問されようとしていた。
しかし、美希は、携帯で新たな指示が出たのか刺々しい翼を収めると、羽織をちゃんと羽織る。
「異能……っというわけではないみたいですので、私達裏会が手を出さない方がいいのかもしれません。
――しかし、状況は把握しなければなりません。
明日にでも、ここに連絡をしてください。
私も急用が出来ましたので、これにて失礼します。
気をつけて帰ってくださいね」
連絡先を書いた名刺をなのはに渡すと美希は、先程まで見せていた敵意が消えており、優しいお姉さんの雰囲気が現れ、なのはを心配した表情で別れの挨拶を言い放つ。
美希の言葉で、今現在9時を回っている事に気づき、急ぎ足で足音を消しながら家へと急ぐ。
「なんだったんだろうね……? ユーノ君は何か知ってる?」
「“裏会”っていう組織についてはわからないけど……異能者っていう言葉が指す人達が僕の住んでた世界と一緒なら
――その人達は“化物”だよ」
ユーノの突然の言葉に、枕に埋めた顔をガバッと上げ机の上に座するユーノへ視線を向ける。
それほど9歳のなのはにとってインパクトのある言葉だったのだ。
「なのはにも僕にもあるリンカーコアはね、魔法を生成する魔法素というモノを蓄積して放出するものなんだ。これ自体には害はないんだ。
つまりね……なのはを含めてリンカーコアを持つ人達の資質自体には害はないんだ。
でもね、異能者っていう存在はね……異能者が持つ資質自体“制御できない”害なんだよ。
僕の住んでた世界でも異能者は危ない存在だったんだ。
だから、あんまり関わらないほうがいいと思うよ」
ユーノは静かになのはにまるで“語ってはいけない”事を説明するように、言葉を選び簡潔に済ませる。
抽象的に済まされた説明に、なのははこれ以上聞いてはいけないのではないかと思いながらも、先程の異能者・刃鳥美希を思い起こす。
威嚇の為とはいえ、異能を展開しその禍々しさを見せてきた。
しかし、去り際のあの自分を心配する気遣い。
どうもなのはには、異能者という存在がユーノがいうような化物とは思えなかった。
「……ユーノ君、やっぱり明日話だけでもしようと思うの」
申し訳なさそうにユーノに告げるなのは。
生まれてきて9年と短いながらも、初めて知った異能者という存在。
異能者が起こした事件も知らないし、その存在を知らず見た記憶もない。
会おうと言い切れたのは、今日出会った羽鳥美希の存在。
翼を広げている時は、怖かった。
恐怖という言葉が分かった気がする程、体が固まった。
しかし、翼を収めてからの羽鳥は、親戚の優しいお姉さんのような優しさに満ちているように感じられた。
私に大立ち回りさせないために、始めに威嚇したのだろう……言っていた通り、傷つけたくないから。
「私信じてみたい……私の事心配してくれた羽鳥さんの事」
慌てふためいたユーノを説得するように、なのはは静かに決意を述べる。
それ以上説得は無理と判断したユーノも、静かに語り始めた。
「説得は無理そうだね……でも、これだけは聞いておいてほしいんだ。
――異能者について僕が知っている事を」
ユーノは静かに座り、なのはを真剣に見つめる。
なのはも、ユーノの真剣さに気づき真剣にユーノの視線を受け止める。
ユーノが念話を通してなのはに伝えたのは
――制御できない力が、一般の人も巻き込み大災害を出す事も稀ではない。
――力を押さえ込もうとする異能者もいるが、押さえ込める異能者は稀で、衝動に駆られ暴走する事がある。
――被害のほとんどが近しい人であり、異能者と親しくなり近づく事は危険。
――先程封印した化物のような存在と心を通わす者もいる。
――その化物のような姿に変身し、そのまま化物となってしまう異能者もいる。
という事だった。
ユーノの世界で異能者がどう扱われているかを話すと、ユーノとなのはは眠りに着く。
次の日もなのはは、隣の席の墨村美守を観察しつつ授業を受けていた。
数日前からずっと同じで、授業中寝続けていた。
しかし、こうもバレない為の技術をもっている事に驚かされる。
体育の時間ならさすがに起きているだろうと思っていたが、体育の授業時になると墨村美守は姿を消していた。
皆がワイワイと体操着に着替えていると、スゥッと教室から出て行き、帰ってこなかった。
よくよく思い出してみると、三年生に上がって、数回あった体育の授業全てで墨村美守の姿を見たことはなかった。
辺りを見回しても、見学しているわけではない。
「ねぇねぇ、アリサちゃん、すずかちゃん。墨村さんってどこいったんだろ?」
「……あいつ、きっと屋上にいるわよ。去年だってそうだし。一度も体育出てこないくせに、先生何も言わないし」
事の詳細をアリサから聞く前に、なのは達はランニングを終えドッヂボールのパスの練習に取り組む事となった。
アリサとパスをする事となり、話を出来る状況ではなくなった。
疑問をそのままに授業を終えると、なのは達は汗だくになりながら教室に帰る。
昼休みになると、なのはは弁当を食べる為に屋上に向かう。
なのはは一人先に向かい、屋上の隅で昨日渡された連絡先に電話を掛ける。
耳元でなるコール音に比例するように心臓の音が高鳴る。
そして、コール音が消え、静かな女性の声がなのはに届く。
「もしもし……高町なのは……さんですね?
そろそろかけてくる頃だと思っていました」
「昨日言っていた……説明の件なんですが、えっとですね……私も昨日突然関わっちゃってあんまりわかってないので。
教えてくれる人はいるんですけど」
「そうですか……電話ではさすがに難しそうですね。では放課後、空いていますか?」
「はい。そのときでいいですか?」
「ええ、神社に来て下さい。では」
電話を終えると、なのはは合流したすずか達と楽しく昼食を取り、午後も平和に過ごす。
放課後になると、美守はすっきりした笑顔で帰っていく。
なのははヴァイオリンのレッスンがあるすずかとアリサと別れ、一人で神社に向かう。
念話でユーノに合流するように頼み、神社の手前で合流することが出来た。
「やっぱり会うの……?」
「うん。話だけでもしてみたいんだ。わからない事だらけだから、助けてね」
なのはは、ユーノを肩に乗せ神社に入っていく。
鳥居をくぐり、辺りを見回すが、刃鳥美希の姿は見えなかった。
しばらく、美希を待つ為に時間を潰していると、空気が独特な緊張感に支配される。
なのはとユーノが神社を囲むように繁った森の中から昨日現れた黒い獣と一緒の姿をした化物が、荒い息を立てつつこちらを伺っていた。
「ユーノ君? これってピンチ?」
「なのは、昨日教えた詠唱を早く……!」
なのはは、目線を外さずにゆっくりと後退していく。
後退しつつ、なのはは昨日教えてもらった詠唱を必死に思い出そうとするが、出てこず焦り始める。
なのはの焦りを見抜いたのか、化物は大きく飛び上がりなのはに牙を剥く。
目を反らし、身を固めたなのはの潜在意識がそうさせたのか、身に着けていたインテリジェンス・デバイスと呼ばれる意志を持つ魔法補助具“レイジングハート”の機転か、ピンク色のシールドが張られる。
シールドが張られると同時にレイジングハートとバリアジャケットが展開する。
起動には詠唱が必要だったはずが、詠唱破棄で起動させたなのはに驚愕のまなざしを向けるユーノ。
強固なシールドを噛み割ろうとシールドに噛み付いている化物を退けたのは、なのはの魔法でも、化物の諦めでもなかった。
なのはの後ろから飛び出してきた左袖のない黒い作業和服に身を包む刃鳥美希の左腕から生えた黒くトゲトゲしい翼であった。
ぶつけた相手の事もその攻撃の後に残る跡の事も一切気にしてはいない力いっぱい振り下ろされた腕。
化物に翼の棘が食い込みつつ、地面に叩き込む。
「無事ですか?」
美希は一切なのはに目を向けず、化物に食い込んだ翼を引き剥がすと30cmと離さずに翼標準を化物から離さない。
なのはは、美希の左腕から生える翼が無数の鉱石を思わせる輝きを放つ棘のような羽が形成している事に気がつく。
「飛べ……“黒羽”」
美希は静かに声を出すと、左腕から生えた翼から容赦なく発射される棘のような羽。
化物に突き刺さる羽の数は尋常ではなく、まるで剣山のごとく大量の羽が突き刺さっていた。
なのはとユーノは美希の攻撃の容赦の無さに驚愕しつつも、安堵に包まれていた。
美希は羽が無数に突き刺さり動けなくなっている化物を蹴り、攻撃を受けていない面を表に向ける。
そこへも先程同様の、容赦ない羽の射撃。
モノの見事に美希は、先程まで荒い息を立てていた化物を動けないまでに羽を突き刺す。
刺々しい毛ダルマのようになった化物は、ゆっくりと崩壊し始めると中心部から蒼い宝石が浮かび上がる。
ユーノの呼びかけで、なのはは浮かび上がった蒼い宝石“ジュエルシード”をレイジングハートに取り込む。
「すみません、緊急事態でしたので……」
美希は化物の活動停止を確認すると黒羽をしまい、脱いでいた左の羽織を着つつ、なのはに近づく。
先程までの殺気が消えており、なのはの警戒心が無くなっていく。
なのはは美希に、事の説明をしようとしたが、自身もさほど理解していない事を思い出し、ユーノの代弁をする。
消失世界の遺産、通称ロストロギアと呼ばれる使用用途も製造理由もわからない存在があること。
その一つ、全21個存在する“ジュエルシード”がこの海鳴市を中心に飛び散ったこと。
その一つ一つが、対象に力を与えて先程のような事が発生してしまうこと。
大災害が起こる前に全てを収集し、封印しなければならないこと。
――を美希に話すなのは。
しかし、ユーノの代弁という事で少し気が引けるも、ユーノがしゃべれるという事を隠そうとなのはも必死だった。
「そうですか……大体は理解しました。
しかし、その肩のフェレット、しゃべっていましたよね? 先程」
「……っ!? そう、だった」
そういえば、ジュエルシードを封印する時に叫んでいた事を思い出した。
諦めたなのはは、ユーノがジュエルシードをばら撒いたことと異世界の生命体である事を話す。
美希はなんの疑いも無く受け入れる。
「今回のように危険が伴うのであれば、私達裏会から何名か派遣しましょうか?」
なのはとユーノは、どうしようか? っというよりも、裏会がどういう組織なのか? っという方に意識がいっていた。
それを見抜いた美希は、静かに語り始める。
自身の黒羽と同じように、異能と呼ばれる特殊な力を持つ者を集め、力の使い方を教えたり使い道を斡旋したりする組織である事。
力を制御できない者もいるが、ほとんどの者が制御できているし、力を治安の維持に使っている事。
――をわかりやすく話す。
気がつけば、もう日が傾こうかという時刻を刻んでいた。
寄り道するにしても、少々時間を使いすぎたとなのはは少し冷や汗を出す。
昨日の今日でこれでは説教が待っている、っとなのははあせり始める。
「あの! 今日はこれくらいで……」
「そうですね。もう遅いですし、貴女ぐらいの年齢ではこの時間は家に帰ったほうがいいですね。
最後に一つ……教えておきましょう」
美希は少し真剣な顔をして、なのはとユーノを見る。
少しあせっていたなのはも、美希の表情を見た瞬間に美希の言葉に耳を傾ける。
「この街は知られていないだけで、妖と呼ばれる異形の者が蔓延っています。
しかし、一般の人に危害が加わる事は少ないです。
それは、この街を護っている存在がいるからなのです。
その存在は……彼女は“結界師”と呼ばれ、裏会からこの街の全てを任されています。
その子に会うかもしれませんが、邪険に扱わないであげて下さい。
いい子ですので」
美希は少し笑うと、なのはと共に神社を降りる。
なのはの家の前まで送ると、美希は静かに去っていく。
なのはは静かに部屋に入ると、ベッドに倒れるように沈む。
「いい人だったよね……?
異能者って人も、力制御できてるって」
「……うん」
「“結界師”って人にも会ってみたいよね。いい子だって」
なのはは、まだ見ぬこの街を守護する結界師がどのような子なのか、気になり笑みを零す。
夕飯を食べ、風呂に入り、宿題を終え、ベッドに入っても、結界師に会える事を楽しみに、色々と想像を膨らませていた。
時は10時を回ろうかという時、なのはは静かに眠りに着く。
時を同じくして、噂の結界師は動き始めていた。
妖犬を連れ、夜の街を縦横無尽に駆け回り、街に害をなす妖を排除していく
――泣きながら、付き人に抱きつきながら……。
――TO BE CONTINUED
あとがき
どうも、まぁです。
遅筆の為、連日投稿という事は出来ませんので、一日間を開けて、ストックが続く限りやっていきたいと思います。
拍手、コメント、感想、ばっちこーい! ですので、気軽にくださると励みになります。
では、あとがきも短いですが、これにて失礼します。
まぁ。。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m