拳が振るわれる。それを全て紙一重で避ける。大振りで力任せの一撃。それ故に避けやすい・・・彼は、ただ立っていた。
彼に向かって拳が振るわれるが受け流され拳を振るった男の背を地につけさせた。
「ぐぬぅ!」
「また、力任せか?ヤマダ。」
「ぐぬぬっ。」
何も言えずにジタバタ動く。背中を強く打ちヒリヒリと痺れたヤマダは、動けずにアキトを睨みつけた。
「もう少し鍛えるんだな。まず、お前は・・・「ナナシアキト!覚悟――!!」またか。」
飛翔する巨大な物体が鋭い矢の穂先のように迫ってきた。まぁ、彼の場合なら避ける。
そして、ヨロヨロとした動きで起き上がろうとするガイの腹部に
「ぐふぅ!!」
「あっ。」
直撃しトドメをさすのだった。
「くそ、やるな。ナナシ・・・あたっ。」
頭を捕まれ軽々と持ち上げられる。ギシギシとコメカミの辺りを強く押され空中で足をジタバタさせた。
「はなせ、はなせ〜〜。」
「なら、謝れ。」
「やだね。」
ギリギリギリ・・・。
「痛い、痛い!放せ〜〜。」
「ふぅ、カザマ。コイツをどうにかしろ・・・ただ立っているだけで攻撃されるとハッキリ言って鬱陶しい。」
「ははは、すみません。」
イツキは、手のかかる子供を世話をする保育士のように疲れた表情をしながら苦笑した。
「ぐぉぉぉ、ナナシ〜〜もう一回、しょぉぉぉぶぅぅぅだぁぁ〜〜。」
「放せ〜、放せ〜、ナナシアキト〜〜〜!!」
ジタバタと動きんがらギャーギャーと騒ぐ二人。
それを疲れた表情をしながらアキトは、見ていると何かに似てると思いながらスズネの頭から手を放した。
「痛いよ〜〜〜。歪むんだらどうするんだよ!この、黒揚羽!!」
キーキーと喚く二人見て。『アッ』と言って気がついた。
「お前ら・・・猿みたいな動きをするな・・・。」
『なにっ!?』
また、キーキーと喚く二人にアキトは、うるさそうで厄介そうに嫌な顔をした。
「ほんとに仲いいですね。」
ニコニコと笑顔で言う彼女にアキトは、思わず大きく息をはいた。
「そういえば、なんで、カイトさん呼ばないんですか?」
「やる気の無い奴は、来なくていい。それに、アイツにはアイツのやりたいことがあるんだろうよ。」
「そうなんですか?一応パイロットだから呼んだ方がいいと思うんですけどね。」
アキトがイツキと会話しているとスズネが何かムカムカしたようにナナシの足めがけて思いっきりローキックをかました。
だが・・・。
「痛ぁ〜〜〜い!なんだお前の足!!」
「ふむ、未熟者め。」
「大丈夫スズネちゃん?」
頭を撫でながら涙目になている彼女をあやしていた。
「ナナシ〜〜。」
「お前も少しは、落ち着けヤマダ。」
和気藹々とした雰囲気を横目に見る青年一人いた。そして一言呟いた。
「なんか・・・楽しそうだな。」
そうしているうちナデシコは、月へと到着した。
機動戦艦ナデシコ〜MACHINERY/DARKNESS
第10話『規格外なイベント』
月のドッグにナデシコがゆっくりと車庫入れされていく。
全員がソワソワしている様で賑やかだった。デートの申し入れをする男や拒む女やら拒まれる女など。
だが、彼だけは、自室に閉じこもり本を読んでいた。古く擦り切れ何度も読み返しているような本だった。
それを閉じ懐からどこのブランドかも分からないライターを手に取り火を点けたり消したりを繰り返した。
「火は、恐ろしいが故郷の文字。人が繁栄する中でも一番の道具であると同時に争いにて人々を滅ぼす武器になる。」
火というものは、道具の中でも一番恐ろしい。
物とは、利点があると同時に欠点を抱えるという代価・・・力に見合うものを払わなければ物として使えない。
本当に世界は、よく出来ているものだな。
「だから、生身の身体を払ったおかげで手に入れた力(からだ)か。」
ライターのふたを閉め月への入場許可がおりるのを待っていた。
コンコンと扉をノックされるとライターの火を消しライターを卓袱台の上に置き「どうぞ」とノックした人物を招き入れた。
「あの・・・。」
「なんだ、お前か・・・なんのようだ?」
「いや、その。」
扉から入ってきた人物テンカワカイトは、あまりにも部屋の狭さに驚いた。
迫るような本棚に硬そうなソファーベッドに小さな机の上にノートパソコンと簡易型の台所があるだけの物置のような部屋に息苦しさが感じた取れた。
「それで?」
「あの、相談が。」
「お前が俺に?」
驚いたように彼の目を見ると恐縮したような表情をする。
「あの、その・・・。」
「そうか、まぁ、座れ。一応客だし茶くらい出す心得は出来ている。紅茶か?コーヒー、緑茶もあるが酒は・・・飲めないか。」
「え、あ・・・じゃぁ、紅茶を・・・。」
「わかった。」
台所に向かいアキトが消えてホッと彼は、息を吐いた。そのとき彼は、卓の上にあったライターを見つけた。
「ライター?タバコなんて吸うのかな?」
重厚な黒塗りのライター。そして、何か裏に一言書き刻まれていた。『手前に押すな!(危険)』と書かれていた。
「なんだ?これ。」
そんなことをしている間にアキトがコポコポとカップの中に濃い色をした液体をカップの中に注ぎ砂糖と牛乳を持ってきた。
「待たせた。」
「あっ!どうも。」
思わずライターをポケットの中に隠した。そして目線は、卓の上の紅茶に目をやった。
「ほら、ダージリンのファーストフラッシュだ。」
「へっ?ダージリンってダージリンなんじゃ。」
「・・・・・・・・コックだろ?あ、見習いか。」
「うっ、すんません。」
台所から卓袱台を出し紅茶の受け皿を置きカップに口をつけズズズッとカイトが紅茶を啜った瞬間にナナシが含み笑いをした。
「?・・・渋っ!」
「くっくっく、どうした?」
笑いがこみ上げ思わず笑い声が漏れてしまう。
「ナナシさん、これ渋いって。」
「そうだ、手を抜いて渋めてやった。あまりにもオドオドしてたからシャキッとさせてやった。」
彼もまた渋めの紅茶を啜った。平然とした顔で飲み干した。
「よく飲めますね・・・。」
「ふ・・・これくらいの紅茶は、お嬢様が幼少の頃から飲まされ続けて慣れている。水のように薄い紅茶や虫のように渋い紅茶も飲まされた。」
「虫食べたことあるんですか!?」
「たとえ話だよ。」
雑談しながらまた渋めの紅茶を注ぎなおしズズズッと啜り始めた。
カイトは、どうも飲むのに抵抗があるようだが。
「・・・渋いなら牛乳と砂糖があるから使え。」
「あ、ありがとうございます。」
ミルクを注ぎ砂糖を何杯も入れてスプーンで一回かき回しミルクティーを作り啜った。
「ただ、ダージリンは、ミルクティーには、向かないがな。」
「うっ、先に言ってください。」
「ふふふ、だが、元々渋いとはいえ。2000円もするダージリンを渋くしたのは、バカらしいな。」
「そんなにするもんなんですか?」
「春摘みだからな。夏摘みの場合は、8000円以上するものもある。」
「そうなんすか。」
変な紅茶情報を聞きながら苦そうな顔をして紅茶を受け皿に置いた。
「それで用事とは?」
「あ、あのですね「コンコン。」あ・・・。」
何かを言おうとした瞬間にノックされた。それに対して「どうぞ」と部屋に呼び入れる許可を出した。
「失礼します。」
「えっ、ルリちゃん?」
「えっと、テンカワさんですか?」
何故彼女がここを訪ねたのか?何故彼がいるのか?考えても分からない。どうして、ここにいるのかという疑問が浮かんでいた。
「それで、ホシノ、なにかようか?」
助け舟のような一言で二人の緊張感は解かれた。そして、彼女は、口を開いた。
「あ、お願いがあってきました。」
「お願い?お前が俺にか?・・・なんだ?」
「それは・・・その・・・。」
チラチラとカイトのほうを見るのに気がついたがカイトは、気づかずにルリの用件が終わるのを待っていた。
「・・・・ホシノ、アイツが気になるか?気になるなら追い出すが?」
「俺?なんか俺悪いことしました?」
「違います。ただ・・・あの、月に着いたら・・・。」
「月に着いたら?」
顔を紅くしてアキトの方を向いた。
「一緒に・・・買い物に出てくれませんか?」
そんな一言を言われた。
月ドッグに入り乗務員たちは、色々な会話をはじめた。何処に行こうかなどという話し合いが聞こえた。
「それでは、お嬢様・・・申し訳ありませんが・・・。」
「あ、いいよ。アキトも休まなくちゃいけないし。」
そんな話だったり。
「いい、ルリルリ。恋は、先手必勝のジャブジャブ、ストレート!押しの一手だからね。」
「何の話ですか?」
変な話だったり。
「カイトーーー!!どこーーー!」
「げっ、ユリカ。どうしよう・・・。」
「ユリカ?」
「あ、ジュン君?カイト知らない?」
「テンカワ?知らないな・・・あっ、そうそうプロスさん呼んでたよ。」
「むっ〜〜仕方ないな〜。それじゃ、行こうかジュン君?」
「うん。行こう行こう(よし!ユリカゲット!!)」
追う追われるの話でした。
月に着きナデシコが月への入場を許可されドッグに入り乗務員は、月に降りる。
だが、周りの視線は、ある一点に集中していた。
「あの・・・ナナシさん?」
「なんだ。」
「ちょっと質問があるんですけど。」
「ん?」
「私も・・・。」
二人の言葉を聞きながら雑誌を開いた。
「なんで・・・。」「どうして・・・。」
「なんで、俺がいるんですか!?」「どうして、テンカワさんがいるんですか?」
感情は、違うが言ってることは、同じだった。
「ん?ホシノは、俺だけと言ってはいないし。半端者のお前は、艦長から逃げたかったんだろ?ちょうどいいじゃないか。」
それだけを言うと彼は、さっさと歩いていった。
「ちょ、待ってくださいよ!」
「はぁ〜。」
慌てて追いかけていくのを見てアキトは、クスリと微笑んで白亜の戦艦を見上げた。
その頃ナデシコ艦内では、一騒ぎ起きていた。
「うぇ〜〜〜〜ん!!」
「ユリカいつまでも泣いてないでよ。」
「だって、だって私だけどうして降りちゃいけないの?それに、それにカイトは、勝手に買い物に行っちゃうし。」
泣き喚き子供のように駄々をこねる。
「そりゃ、僕だって誤算だったけど・・・でも、ユリカと一緒にいられるだけで僕は、幸せさ!そう、君が太陽なら、僕は、君のおかげで夜に輝く暖かな光を放
つ月になる。」
名演説だ。告白だ。プロポーズだ。周りから見ればそうだろう。
だが、どんなに良い台詞でも悪い台詞でも本人に向かって言わなければ仕方がないが。
「ねぇ、ジュン君〜私も月に降りて良いかな?お願いだから〜。」
「だ、無理だよ。艦長は、艦に残らないといけないし・・・それに、仕事がたくさんあるんだよ?」
「それもジュン君がいれば・・・。」
ウルウルとしたキラキラと輝く目にジュンは、たじろぐ。いや、好きな女性に潤んだ瞳を見せられれば誰でもなるだろう。
そして、ジュンは、思わずユリカの両手をギュッと握り締めた。
「わ、わか「失礼します。」へっ。」
「あらら?お邪魔でしたでしょうか?」
グッドタイミングでアカリが乱入していった。
ガヤガヤと人がショッピングモールを音が支配する。人によって作られたレジャーの数々を人はそれを受けて楽しむ。しかし、それは、人によって規格化された
遊びでしかない。それでも人は、コレを楽しむしかない。
「ん〜〜、ここにいる彼等には、刺激が必要だよね・・・そう思いませんか?」
「我は、貴様の護衛に来ているだけだ。はやく、スイッチを押せ。」
何処かからか声が聞こえる。楽しみながらキーボードをカチカチと叩きながら隣にいる男に声に軽口を叩いていた。
「あらら〜連れないですねぇ。ほらほら、怖い顔しないで下さいよ。思わず泣いちゃうじゃないですか。」
「・・・・・。」
「はいはい。それじゃ〜〜一世一代の大サーカス行ってみよぉ〜〜。」
ヘラヘラしながら人差し指でEnterボタンを押すと周りから駆動音がブゥゥゥゥン・・・と聞こえ始めた。
3人が町を歩くと活気のモールと違い。ここは、どうも活気というものが感じられない。
「どうだ?買いたいものはあったか?」
「・・・・・・。」
「どうしたの、ルリちゃん?」
軽く俯きながら彼女は、歩き始めた。
「ホシノ?」
「なんでもありません。」
気まずい・・・カイトは、この陰気な雰囲気を抜け出したかった。
「あ、そ、そうだ!何か食べません?」
「そうだな。空腹だと力が出ないだろうし、いいだろう俺の奢りで何か食わせてやる。何が食べたい?」
「え、えっと・・・ラーメン?」
「ラーメンか。ホシノそれでいいか?」
「・・・はい。」
また、歩き始める。そこに会話はなく暗い雰囲気で歩きカイト自身がゲッソリとしてきた。
ゆっくりとポケットに手を入れると硬い金属の触感を感じ驚いたようにライターを取り出す。
「そういえばナナシさん。」
「なんだ?」
カイトがアキトに振るとポケットからライターを取り出した。
「ああ、それか貴様にやる。」
「え、でも。」
「気にするな・・・ただ、手前に押すなよ?手前に押したらサッサと投げろよ。死ぬぞ。」
笑っているが真剣さがある表情にカイトは、嫌な予感を見に感じた。
「へっ?ちょ、ちょ・・・。」
「どうしたんですか?」
ルリの呼びかけが聞こえアキトは、「何でもない。」と答えカイトの肩をポンポンと叩いた。
「行くぞ・・・。」
「ちょ、っと!」
慌てて追いかけて行く。理由を聞くために・・・やはり秋との態度を見て怖くなってしまったからだろう。
さっきまでの暗かった雰囲気がぬぐわれたが歩きながらピリピリとした無機質な殺気を感じていた。
人とは違う殺しの視線。周りから感じるのは、ターゲットを討ちぬく人ではない冷酷な視線。
ヴゥゥゥン・・・。
そこに微かに聞こえる。機械の音・・・普通の人間なら聞こえないだろうが彼にだけにその音を聞き取り裏路地の方に目を向けた。
「(モーターの駆動音。しかも・・・この駆動音は、聞き覚えがある。)」
「どうしたんですか?」
「すまないが先に行ってもらえるか?ちょっと用事が出来た。」
「用事って・・・なんすか?」
たずねられアキトは、「ちょっと昔馴染みを見つけてな。」と言って路地の先を見つめた。
「・・・・どうするルリちゃん?」
「行きましょう、テンカワさん。こうしている間にも貴重な時間は、流れていきます。」
前を向きなおしカイトの手を掴んでサッサッと前を歩いていく。カイトが何かを言おうとしたが一瞬痛みを感じた。
「・・・・・。」
二人が消えていくのを見て路地裏に一歩、一歩その中に侵入していった。
<アキトサイド>
ジリジリしてきたな。前に、横に、四方八方に感じるぞ・・・俺を殺そうとしているな?ならばこい、狩るなら狩り返す、迫るなら潰す。
グローブを外し金属の義手を構えると俺は、鬼気を生み出し周りを消し飛ばそうとする。
それでも奴等は、まいらない。逃げない。消えない・・・恐れを知らないのなら。
「来い。相手をしてやる。」
そのとき奴等は、近付いた。向けられた刃を避ける、受ける。そして、叩き返す。
だが、奴等から感じたのは、人の温かさなんてものは無い。俺と同じ類の連中。全てを金属の皮膚に包まれた機械の塊。
「こんなのがいたか・・・。」
肌を覆う黄緑色の外皮、両手に構える鎌、周りを探る触角、そして、無感情の赤い瞳。
「無人兵器・・・しかもカマキリときたか。」
赤の瞳が無数の輝きを放ちながら鎌を振り上げ俺を睨みつけてくる。
「久々に壊していい相手だ。さっさと来い、カマキリ共・・・・逝きたい奴からな。」
それが合図に奴等は、飛び掛った。
あとがき
はい、ルリちゃんのキャラがつかめません。カイトのキャラがヘタレに定着しそうです。
と愚痴をこぼしながら皆さん夏をいかがお過ごしでしたか?海、山・・・いけませんでした。
ということで日常シーンを書くのが苦手なNEOとしては、バトルのみで押し切りたいと〜〜〜思います。
どうか・・・こんな小説を見捨てないで下さい。
感想
ほう、NEOさんもキャラの事でお悩みですか…
私の知る限りキャラを安定させる方法は二つあります。
一つは原作を何度も見返してキャラを覚えこむ方法、もう一つはコワして自分に扱いやすい形にする方法です。
基本的に原作に忠実にするのは非常に難しいです。
何度も見返すのいう行為に一体どれくらいの時間がかかるか分らないということが大きいですね。
だからといって完全に壊してしまっては他の人が見ても誰だか分りません。
そこでよく取られるのが複合して行うという方法です。
キャラは特徴的な行動を行う場合が多いです。
ルリ嬢の場合は”バカバッカ”や”私、少女です”とかいう台詞などです。
他にも最初の頃はハンバーガー中心の生活だとかアキトのお陰で少しづつ食事が好きになるとか(セガサターンのゲームより)
ラーメンが好きとか、実は御代わりよくしているので胃袋おおきそうとか。
前半は皮肉屋で通っているのに、だんだんナデシコに染まってバカをやり始めるところとか、
アキトの前では段々表情豊かになっていく所とか(ちょっとだけど)
いろいろ探せばキャラの骨子は見つかると思います。
その部分を繋ぎ合わせ、そこに自分の味を付け足したものこそ、自作品のキャラということです。
今回はキャラ談義に終始してしまいましたが、次回も期待しております。
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NEOさん
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