○西暦一九九一年七月二十四日
夏休みに入りました。
暑い暑い帝都の夏。
流石に勉強にも身が入らなくなっていた昨今、正直ホッと一息といったところです。
とはいえ、父様は長期の出張が続き、殆ど家に戻られない有様。
唯依も、枢木のお屋敷に入り浸りの日々ですが、こちらもこちらで兄様も出張の日々。
時には、以前お諌めしたにも関わらず傭兵の真似事をして、インドから東南アジア辺りを転戦しているとか………
先日お戻りになった際、また問い詰めた時にも、新製品のデモンストレーションも兼ねて、新市場開拓に勤しんでいると言われてしまい強く出る事もできませんでした。
本当に、気掛かりで、気掛かりで、休みに入ってからの学問にも修練にも、今ひとつ気が乗らないというのが偽らざるところです。
ううっ………胃が痛いです。
ほんに少しは腰を落ち着けて下さると、唯依も安心できるのですが……
確か、再来年には兄様も十五歳。
武家で言うところの元服の歳となります。
武家に産まれた者は斯衛軍に出仕するのが暗黙の了解となっており、その為、元服を迎えた年から、斯衛軍直轄の訓練校に入学し、斯衛士官としての教育を受ける事になるのです。
そうなれば、兄様も少しは落ち着いて下さるのでしょうか?
………ううっ。
不安です……果てしなく不安です。
そもそも本来、武家の嫡子としては、訓練校に入学する以前、十二歳から十五歳までの三年間、武家専門の中学にて過ごすのが基本なのです。
あの月詠真耶も、今はそこに通い、教育基本法が定める中等教育の他に、自己志願の課外授業という形で斯衛軍士官としての基礎的な訓練と教養課程を修めているとか。
無論、これは国法が定める範囲外の教育であり、斯衛軍訓練校入学の為に必須のカリキュラムとはされません。
あくまでも、建前上ですが……
実際のところ、斯衛軍訓練校での教育も、この言わば予備訓練校とでも言うべき三年間の教育を受けている事を前提として組まれており、これなくしては斯衛軍士官として充分な力量を得られず落伍していくのが大半だとか。
兄様は、それを平気な顔で、蹴飛ばしている訳です。
そんな兄様が、素直に訓練校に入ってくれるのでしょうか?
………ハァァァ……
無論、ルル兄様の才覚と力量を疑うつもりなど毛頭ありません。
そもそも、既にして巨大組織となった枢木を切り盛りしてきた才能と実績。
そして、大変――大変っ!
……不本意ではありますが、一衛士として初陣を飾り、幾度と無く実戦を潜り抜けた武才と経歴。
斯衛軍士官として必要とされる礼儀作法に語学も含めた教養とかも、間違いなく身に付けている事でしょう。
海外のパーティなどでも、如才なく振舞っている事を、真理亜叔母様が教えて下さいましたし………
その時の写真、綺麗な金髪のご令嬢とか、とても美しいどこかの奥方とかと楽しそうに………とても楽しそうにダンスを踊っている姿を、見せられている事ですしっ!
……コホン。話が逸れました。
まあ、という訳で、兄様が予備訓練校に通う必要が無い事などは分かるのです。
分かるのですが、それでも………
……不安です。
この胸を過ぎる不安が消せません。
ナニか、とんでもない事をやらかしそうな気がして仕方ありませんでした。
……ううっ……本当に胃が痛いです。
○西暦一九九一年八月七日
兄様が帰ってきました。
また戦場から。
今度はインドシナ半島辺りで戦ってきたとか……
あの辺りは、まだ激戦区とは言えない為、散発的な戦闘が少しあった程度で、大して危険も無かったと事も無げに言われる兄様。
でも、でもっ!
唯依の気持ちも、少しは考えてください!
――今日、兄様の負傷の知らせが、来るのではないか?
――明日、唐突にその訃報が、伝わるのではないか?
先の見えない不安を抱きながら、日々を送ってきたのですよっ!
そんな怒りを抱いた唯依は、少しだけ兄様にお灸を据える事にしました。
話しかけられても、口を利かない事にしたのです。
この位のお灸は当然!
そう考えた唯依は、何度、兄様に話しかけられても答えを返さず、そっぽを向き続けました。
そうして暫らくすると、兄様も唯依が怒っている事を理解されたのでしょう。
唯依に話しかける事を止められ、叔母様や咲世子さん、それにジェレミアさん等と楽しそうに話す様になりました。
………ここは、唯依に頭を下げて謝るべきところです。
そうすれば、赦してさし上げるのに……
そうやって、一人蚊帳の外に置かれた形と成った唯依ですが、それでも意地があります。
――何としても、抗議の意志を貫かねば!
その一念で、寂しさと不満を堪えつつ、沈黙を守っていたのでした。
それなのに、それなのに……
『それでは、もう休ませて貰おうか。
また明日から暫らく出掛ける事になるのでな』
気付いた時には、唯依の手が兄様の着物の裾を掴んでいました。
それをどこか満足げな様子で見下ろす兄様。
ニヤニヤと生暖かい視線を送ってくる皆さん。
顔から火が出るような錯覚を覚え、真っ赤になって固まった唯依を、兄様は優しく抱き上げてくれました。
『そう言えば、唯依とは余り話してはいなかったな?』
いけしゃあしゃあと、白々しい事を口にされます。
思わずキツクなる……キツクなる筈だった唯依の視線。
ですが、続く言葉が、それを挫きました。
いとも呆気なく……
『明日も早いのでな、話がある様なら床の中で聞こう』
その瞬間、唯依の頭の中が、真っ白になりました。
そして気付けば、兄様と一緒に仲良く並んでお布団に……
ううっ………
卑怯です。
ズルいです。
ルル兄様は、やはりとても意地悪な方です。
これだけは、月詠真耶の主張に同意します。
そんな想いを抱きつつ、唯依の口から出るのは兄様への甘えた恨み言だけ。
嗚呼、何なのでしょうか、この口は?
堕落です。
唯依は堕落してしまったのです。
この目の前に居る黒髪の魔王の――
『今度、帰って来たら少しは暇が出来る。
丁度、時期的にも良いし、夏祭りにでも行こうか?』
――魔王の誘惑に負けたのです。
その証拠に早鐘の様に打ち鳴らされる心臓が、ひどくドキドキと感じられました。
そして興奮の余り、その夜は一睡も出来ず、隣で安らかに眠る兄様を一晩中見ている破目に陥ったのです。
ルル兄様………
………本当に、本当に、ひどい人です。
○西暦一九九一年八月十三日
本日は、お盆の迎え火。
不在の父様に代わり、唯依が菩提寺に赴き、母様を含めご先祖様方を、お迎えに上がりました。
今日の夜遅くになりますが、父様も久しぶりにお戻りになるとの事。
明日は篁一門を集め、お盆の行事を全て済ませた後、夜には又、任地に戻られるとか。
ふぅ………
正直、父様が無理をなさっているのは、分かっています。
本来なら、ただ一日を作り出す事すら困難だったのでしょう。
それを押してまで戻られたのは、唯依の所為です。
父様不在の折りは、枢木にお世話になっている為、気にする事もないのですが、今日、迎え火の為、篁の屋敷に戻ると、どこから聞きつけたのか、午後には親族の方々がやって来られました。
そして時候の挨拶を述べつつも、当然といった顔で自身の息子や弟との見合いを勧めて来るのです。
篁の御家の為、本家の血を絶やさぬ為、と。
……唯依は、随分と親族筋から、侮られているようです。
所詮は、年端もいかぬ小娘と、思われているのでしょう。
或いは、父様や兄様達に守られているだけの無力で無分別な子供とでも見下されていたのかもしれません。
……認めましょう。
確かに、唯依は子供です。
未だ世界を知らぬ無知で無力な幼子であると。
ですが、それでもこの眼は光を映します。
この耳は、音を聞き取れるのです。
だからこそ……世界の広さを知らずとも、自らの立ち位置すら理解できない程、愚かでもないのだと。
そのまま、さざめく様に見合いを勧める一門達を、黙って見つめていた唯依でしたが、やがて言うべき言葉も尽きたのか、一座の者達も黙ります。
或いは、何を言われても無関心・無表情を通していた唯依に、薄気味悪いものを感じたのかもしれません。
そんな一同を前に、唯依は、胸中に留めていた言葉を口にしました。
『つまり、篁の御家の為、一門の中から早急に許婚を選ぶのが肝要………そう仰られる訳ですね?』
この一言で、再び、ざわめきが蘇りました。
脈ありとでも思ったのでしょう。
先程よりも熱心に、或いはしつこい程に、見合いを勧めてくる親族達。
そんな彼らを見渡しながら、唯依は、胸中でホッと安堵の溜息を漏らしました。
決して数こそ多くは無いものの一門の中でも長老格と目される方々の多くが、やや不快気に眉を顰めているのが見えたからです。
流石に、親族全てがコレでは、正直、凹んでしまったでしょう。
伊達に長老と言われて居られる訳ではない事を確認し、胸を撫で下ろしながら、唯依は再び口を開きました。
『……では、この方々が篁の次期当主の夫たるに相応しいという証を、お見せ下さい』
自分でも、驚く程に冷ややかな声が出ました。
欲に駆られた親族達も、それを苦々しげに眺めていた長老達も、揃って眼を丸くする程、それは冷たく鋭い言葉の一太刀だったのです。
『お話を聞く限り、皆様方が勧められるお方は、皆が皆、将来性を誇ってはいても、確たる実績は、未だお持ちでないご様子……』
勧められた見合いの候補は、皆、唯依と同年代であり、さほど歳が離れている訳でもありません。
当然、一人の例外も無く未だ学生の身の上であり、評価できるとすれば、学業が優秀であるとか、武芸に秀でているとか位しかありません。
つまりは、何ら確たる実績が無いのは、誰も彼もが同じ事。
その事を冷たく指摘すると、予想外の攻撃に戸惑いざわめく方々の前で、一旦、言葉を切った唯依は、一つ息を整えるや弐の太刀を放ちました。
『唯依の身近には、この方々と変わらぬ御歳で、何者にも否定しえぬ実績を打ち立て、その才幹を遍く世に示す御方が居られます。
ですので、忌憚の無い本心を吐露させて頂くなら、どの方も、その御方と比べれば見劣りしてしまうのです』
一同の顔が引き攣りました。
唯依が言っているのが誰の事なのかを、恐らく全員が理解したのでしょう。
武家の異端たる枢木の次期当主。
武家社会においては、批難の的であるその人と、自慢の子弟を比較され、遠く及ばずと断言された訳です。
言わば、武士の面目を丸潰れにされた事になり、怒りに青褪め、或いは真っ赤になっていく者も少なくありませんでした。
……でも、それを恐れる気持ちは、唯依の中には全くありませんでした。
自身の言葉に、何ら嘘偽りが無い事を確信している以上、怯むべき理由等ありません。
そのまま、薄っすらと微笑みすら浮かべながら、唯依は、躊躇う事無く終の太刀を振り下ろしました。
『そうではない。
そう仰られるなら、まず、その証を、お示し下さい』
座に沈黙が満ちました。
破裂寸前の危険な空気が、充満していくのを感じつつ、唯依は、やり遂げたとの想いに満足の吐息を漏らします。
それが、危うい均衡を崩したのでしょう。
何人かの方――特に熱心に、自身の息子を勧めていた遠縁の親族の幾人かが立ち上がりかけ―――
『お見事っ!
流石は本家の次期当主。
幼いながらも、天晴れな気概よ!』
座敷一杯に広がる拍手と共に、鳴り響いた大音声が、それら全てを制しました。
先程まで渋面を浮かべつつ、成り行きを見守っていたご老人達の何人かが、ひどく面白そうな笑みを皺深い顔に浮かべながら手を叩いています。
そんな長老達の反応に毒気を抜かれたのか、或いは利あらずと見たのか、立ち上がりかけていた方々も、渋々といった様子で腰を下ろしました。
……むぅっ……微妙に予想外です。
最悪、手を上げられる事も覚悟の上で、我を貫き通すつもりだった唯依にとっても、想定外の成り行きでした。
これが、ルル兄様が時たま口にする『イレギュラー』というものなのでしょうか?
そう胸中で自問する唯依を、何故か置いてけぼりにして、ご老人方のお説教大会が始まりました。
満座の中で、本家の跡取りに対する無作法をガミガミと叱られ、鼻白む親族達も少なくありませんが、正論であるだけに反論出来ず、黙り込む事しかできません。
何故か、主役の座からいきなり舞台袖に追いやられてしまった態の唯依は、もはや口を挟む事もできぬまま、雛壇のお雛様よろしく上座にてその有様を眺めているだけ。
そのまま父様がお戻りになるまで続いたお説教に、親族達も挨拶もそこそこに逃げ出す始末。
何というか、どうにも消化不良の感のある騒動の幕引きとなったのでした。
○西暦一九九一年八月十六日
今日は夜祭り。
お盆の締めとなる五山の送り火の日。
そして、ルル兄様とご一緒に、それを楽しむ日。
……なのです。
先日、慌しく帰って来た父様。
一日だけ屋敷に留まり、篁本家当主として盆の行事を執り行うと、また慌しく帰っていかれました。
余り、お話しする機会も無かったのですが、父様が戻られる直前の一件、唯依が親族蓮に向けて啖呵を切ったあの出来事については、苦笑混じりに褒めてくださいました。
何でも、長老方の中からも、余りに性急かつ露骨な見合いの勧めには、控えめな批判が前々からあったそうですが、先日の一件で、それが大きく動いたそうです。
何というか、子供と思って軽視していた唯依を、ご老人方が見直されたと父様に言われたとか………
本家の次期当主が、女であるという事で、若干の不安を感じておられた方も、先の一件により、それが吹き飛んだと大笑いしながら言っておられたそうです。
褒められたのでしょうか?
……褒められたのでしょうけれど、巴御前の再来とか言われても微妙に嬉しくないです………ふぅぅ……
まあいいでしょう。
終わり良ければ、全て良しと申します。
これからは、あまり無作法な真似は控える様に、長老方も釘を刺して下さると約束してくれたそうですし……
まあ帰りしなに、何やら生暖かい目線で見られたのは、ちょっとだけ気になりますが。
―――さて、兎に角、気を取り直して参りましょう!
折角のルル兄様と過ごす夏の夜祭。
欝な気分を引き摺っていては、兄様にも失礼というもの。
今日の日の為に新調した浴衣――白地に緋牡丹をあしらった逸品を、是非とも見て頂かねば。
皇国の荒廃、この一戦にあり!
なんとしても、唯依を妹としてではなく、一人の乙女として意識させてみせます!
○西暦一九九一年八月十七日
何と言うべきか?
何と言うべきなのでしょう……
……ううっ……唯依は、本当に何をやっているのでしょう?
折角の機会を、また生かしきれないとは。
機に臨んでいながら、何も出来ぬ我が身は歯痒いです。
――嗚呼、ばかばかばか! 唯依のバカッ!
ふぅ………
………結局、昨夜も何もありませんでした。
いえ、前半は楽しく過ごせたのは確かですが、やはりいつもの展開。
優しい兄様と甘える妹の構図から抜け出せなかったのです。
頑張ったのに、一生懸命頑張ったのに……
浴衣も新調して、ちょっと冒険して紅とかも薄っすら引いたのに……
後一歩が、どうしても踏み出せませんでした。
ううっ……唯依の臆病者。
……そもそも、兄様も悪いのです。
唯依が、こんなにも一生懸命アピールしているというのに、全く気付かないなんて鈍過ぎます!
それに何ですかっ?
黒地に白い牡丹の浴衣とか!
……いえ、まあ……お揃いは良いんですよ……お揃いは……
でも、それが原因で周りからも、仲の良い兄妹と誤解される始末です。
髪と眼の色が同じ分、間違われ易いというのに、輪を掛けて紛らわしくしなくてもいいではないですか!
お陰で見知らぬ女狐共が、兄様に妙な色目を使って来たりもして、後半は散々でした。
まりもだか、まるもだか知りませんが、どうみてもルル兄様より年上の身の程知らずが一人。
そして、もう一人の方も、初対面のクセに妙に図々しいというか、頭が高いというか……
兎に角、何とも不愉快極まりない一幕でした。
唯依が機嫌を損ねた事を読み取ってくれた兄様が、適当に煙に巻いて下さらなかったなら、口論の一つもしていたところです!
本当に、図々しい女狐共でした。
とはいえ、一旦崩れた空気は戻らず、何とも微妙な雰囲気のまま昨夜の夜祭はお終いに。
後悔先に立たず――と分かってはいるのですが、もう少し、もっと早く、積極的に出ていればと悔いる次第。
祭りの後に、後の祭りとは、何の冗談ですか、まったく………
……仕方ありません。
過ぎてしまった事を悔いても、今更な話です。
砂時計の砂が、元に戻らないのを嘆くなど馬鹿げています。
次です……
……次の機会こそは、必ずや本懐を遂げて見せましょう!
■欄外小話『とある親友達の夜祭の顛末』
『あらあら、逃した魚が大きかったからって、随分と物欲しそうな顔ね』
『ゆ、夕呼っ!
からかわないで、そんなんじゃないんだから』
『……まあ仕方ないか。
確かに、とんでもない大物だったものね』
『???……もしかして夕呼、彼と知り合いだったの?』
『…………』
『な、なに?』
『………はぁ……まあ、アンタが妙なところで天然なのは昔からか……』
『え〜〜と……もしかして馬鹿にされてる?』
『ふぅ……アレは枢木の御曹司。
あっ、ちょっと違うか――枢木の裏ボスよ』
『ふぇっ?』
『あのね……年明けの世界放送で、一躍、時の人となった奴でしょうが』
『え……え…えぇぇぇっ!?』
『……アンタ、やっぱり気付かないで声をかけてたのね。
まりものクセに大した度胸だと思ったら……』
『えっ……いやだって、暗かったから……その……』
『ああハイハイ、分かった分かった。
要するに、アタシの処に来たついでに見物に来た夜祭りで、ちょっと浮かれた感じになったら、都合よくアンタ好みの良い男が居たから、ついフラフラ〜〜って?』
『ウン、なんとなくカッコいいなぁ〜〜って、それにその、妹さんにも、とっても優しそうだったし………って、ち、違う、違うのよっ!』
『ああハイハイ、分かったわよ。
分かったから落ち着きなさい』
『……分かってない。絶対分かってない!』
『あら、心外ね。
まりもの事は分かってるわよ……親友だもの』
『…………』
『そう、まりもが惚れっぽい割りに、男運が無いのも』
『ううっ……』
『見た目はそれなりに良いのに、ハイティーンにもなって、未だにキスどころか男に手を握られた経験さえ無いのも』
『…………ぁぁぁあ、ヤメテェェ……』
『そして、もはや形振り構わず男を捕まえようとしているのも………み〜んな知ってるわよ。 親友だもの』
『人聞きの悪い事、言わないでっ!』
『あら、違うの?』
『違うわよっ!
私にだって分別くらいあります』
『ふ〜ん………でも、アイツ十三よ?』
『へっ?』
『だ・か・ら、アイツは十三歳。
サーティーン――アンタよりずっと年下のガキよ』
『…………』
『ああ、安心していいわよ。
アンタが、そういう趣味だとしても、私は差別なんかしないから―――』
『う、う……』
『―――まあ、区別はするけどね』
『嘘ぉぉぉっ!?』
どうもねむり猫Mk3です。
今回は、題して『唯依姫の夏休み』ですか。
真冬に夏のお話とは……まあ、季節外れではありますが……
まあ、恋に、次期当主としての責務にと、色々と頑張りつつある唯依姫でした。
斯衛への入隊の経路については、明確な資料も無いので、おかしくない程度で定義してみました。
本作独自設定ですので、お間違えなきよう。
一応、文中でも語った様に、まず予備訓練校過程が十二〜十五歳(中学相当)で三年。
次に正規の訓練校過程が二年〜四年としております。
※幅があるのは、進む専門課程の違いという事で、ご了承を。
一番人気が当然、衛士訓練課程で三年と定義しています。
※偽ルルーシュと言われたりする清十郎は、訓練課程二回生で卒業生総代となっていましたが、これは戦況悪化による養成課程短縮の影響とし、一九九〇年前半は、充分な養成期間として、三年とっている扱いにしておきます。
あと、チョイ役で出てきた某天才女性科学者とその相棒な狂犬さん。
本編での出は、まだまだ後になりますので、あしからず。
それでは次へどうぞ。