【おさななじみっ!〜近くて遠いこの距離〜】



ピピピピッ――。

目覚ましが、耳もとで鳴る。

カチッ

布団から腕だけを出し、目覚ましのスイッチを止める。


「…もう、朝か」

時刻は8時10分……。

…はち…じ…?


「ちっ、遅刻だああああああああああああっ!?」

ガバッ

布団から飛び起きると、すぐに制服に着替えた。

「何であんな時間に目覚ましがセットしてあるんだよ!」

…あ、そうだ。
一度設定した時刻に止めないと10分後にはまた鳴り出すんだった。

「ちっ、何で起きないんだよ俺ぇえええええーー!!」

制服に着替え終わった後、適当に顔を洗い、歯を磨いた。

朝食は――食ってる時間無いっ

ということで無し!授業中死ぬだろうけど、気にしない!



「あ、那智(なち)。アンタ朝食は?」

母さんが話しかけてくる。

「今日はいらない!いってくる!」


バンッ――!

乱暴に開け放たれる玄関のドア。


「きゃっ!?」

目を大きく見開いて目の前に立っている少女。

「な、那智くん…おはよう」

少女の名前は、夏原(かはら) 結花(ゆか)。
俺の幼馴染だ。


「もう、ビックリしたよー。いきなり扉が開けられるんだもん」

結花は俺を起こしに来ようとしたらしい。

挿絵1

「那智くん、もっと早く起きようね」

「そんなこと言うなら結花が起こしに来てくれよ…」

ふぅ、と一つため息。

「え///!?
 そ、それって毎日起こしに来いってことかな」

「別に毎日じゃなくてもいいけど、俺起きれないしさ」

「……うんっ///
 いいよ、私が毎日起こしに来てあげるねっ」

えへへ、とはにかむ幼馴染の少女。


「あ、そうだ。これ、お弁当だよ」

はい、と差し出される。

「いつもありがとな、弁当まで…」

「ううん、いいの。那智くんの為だし…それに…」

「それに?」

「う、ううん/// なんでもないよ。気にしないで…」


「?」

変な奴。


「そういえば、結花」

「何?那智くん」

「結花って、好きな人居るのか?」

「…え、ええええええええ!?!?」

「何だよ、そんな驚くことか?」

「お、驚くよぅ。いきなりそんなこと言われたら!」

「別に、変な話じゃないだろ。
 好きな奴くらい居たっておかしくないし」

「そ、そうだけど…。……な、那智くんは居るの…?好きな…人」

「そりゃ、一応はな」

「…そ、そうだよね。この前那智くんの部屋にえっちな本があったし―――」

「う、うわああああああああああああああああああ!?
 何で知ってるんだよ!」

「那智くんが掃除して欲しいっていったからしてあげたんだよぅ」

「…そ、そうだったか…?」

「そうだよ!」

「…な、中身は見てないよな?な?」

「………」

ぽん。

結花が俺の肩に手を置く。

そして、にっこりと笑う。

「那智くんが実は貧乳好きでも別に私は構わないから――」

…バレ、た。

俺の……俺の…趣味が。

バレ、た…も、もう終わりだ。世界の終わりだ。


「…あと、その…大きくないから…私…。
 むしろ、貧乳が好きで、良かったというか…」

「…え?」

そ、それって。

結花が俺のこと好きみたいに聞こえるんだけど。

挿絵2

「………私のこと…嫌いかな…?」

上目遣いで見つめてくる結花。

こ、これ…これって…!!

「……私は…那智くんのこと……」

結花は一回目を閉じた。

そして何かを決心したように目を開き、そして笑いながら。

「好きだよ」

そう、言った。


でも俺は、結花のことを幼馴染としてしか見ていなくて。
好きな人は他に居て。

結花ではなくて。


「……ご、ごめん。俺――」

「…やっぱり。他の子が好きだってことは知ってたよ」

「…ゴメン……」

「何で謝るの?私、諦めないよ」

「え――?」

「だから、那智くんのこと諦めないよ。小学校の頃から好きだったんだもん。
 すぐに諦められないよ」

「でも、俺…結花のこと、幼馴染としてしか見てなくて…」

「私、頑張るよ。那智くんに好きになって貰えるように。
 だから―――」


「覚悟、しておいてね?」



――――END――――



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