―彼らの向かう世界は0―
―彼らを遣わしたのは1―
―彼らは手を取り合う2―
―彼らが救う世界は……―
Trinicore
Is this the end of the journey?
翌朝、『空の贈り物亭』のロビーへと降りてきたアシュレーとマリアベルの二人を、ビダーシャルが紅茶を飲みながら待っていた。
「あ、おはようございますビダーシャルさん」
「おはようじゃ」
「ああ、おはよう」
挨拶をする二人に、顔を上げたビダーシャルも僅かながら微笑む。
「え?」
「む?」
「ん?どうかしたのか?」
首を傾げるビダーシャルの前で、アシュレーとマリアベルは顔を見合わせる。
「いえ、なんて言うか」
「お主、妙に機嫌が良くないかの?」
不審げな二人の言葉に、納得したかのようにビダーシャルは「ああ」と頷く。
「分かるか?」
「割とハッキリと」
「分かり易過ぎじゃの」
あっさりと頷いたアシュレーとマリアベルの前で、少し照れたかのようにビダーシャルは頭を掻く。
「実はな」
「ええ」
「あの後、ジョゼフ王がエルフへの全面的な支援を約束してくれたんだ」
「これで私の仕事も大いに捗るし、長年の我らの懸念事項もある程度解決できる」と笑うビダーシャルは今にも鼻歌を歌いださんばかりに上機嫌だった。
「そうだ、忘れる前に渡しておこう」
そう言ってビダーシャルが懐からスッと二通の便箋を取り出した。一通は綺麗な白い便箋で、封印の蝋にはガリア王室の紋章が刻まれている。
「それは、ジョゼフ王からのものだ。昨日の事で思う所があるらしく、どうしても二人に渡す様に頼まれてな」
「ふむ。そちらの方は?」
「ああ、こっちは私達エルフからの招待状だ」
茶色い革の様な物で出来た便箋をチョイチョイと指差しビダーシャルが笑った。
「まあ、私は内容を把握していないが、恐らくは招待状の様なものだろう。一応、これは正式なものだから二人にもきちんと読んでもらいたい」
「……」
その言葉を聞きながら、アシュレーは一先ずジョゼフ王からの手紙を開いてみる。正直、あの後の事は内心で気になっていたのだ。隣からはマリアベルがヒョイッと覗き込むように手紙に目を通す。
―拝啓アシュレー・ウィンチェスター殿、マリアベル・アーミティッジ殿―
―突然の手紙、驚かれたかもしれない。恥ずかしながら日々字を重ねる書類は形式的な物ばかりで私信というものを初めて綴った為、いささか勝手が分からない所があるが出来れば最後まで目を通していただきたい―
―まずは一言礼を言わせて欲しい。ありがとう―
―もし、二人が骨を折ってくれなければ俺は遠からず破滅への道を歩んでいたのだろう。それも、己が作りだした妄執に近い虚構だけを見て―
―我が姪の事は事前に調べていた。二人がトリステインに居た際に浅い物ではあるが縁があった事も―
―あの姪の事は心配しないでもらいたい。いずれ、俺を超える存在となって、俺を打倒するかもしれないが、その時はこのガリアのさらなる発展が約束されているのだ。彼女は大丈夫だろう。それに、俺自身もそう簡単に打倒されるつもりは無い―
―これは、俺が出来る唯一の償いだ。シャルルを殺した者の務めとして、彼女の父親を奪った者の責として、彼女の母親を壊した者の義務として、そして何より、ガリアの王の意味として、俺は誰よりも名君でありたい。そう、俺が名君であればある程、我が姪は俺を越える為に強く成るのだから―
―我が盲を開かせてくれた事、本当に御二人には何と礼を言っても言い尽くせない―
―何らかの礼をしたいところだが、金銭や貴金属の類はあまり意味がないように感じた。そこで、ビダーシャルの話を聞いたうえで最も二人の助けとなるであろう物を同封する。どうか役に立てて欲しい―
―ガリア国王無能王ジョゼフ・ド・ガリア―
「……」
「……」
手紙から顔を上げた二人は、互いに顔を見合わせて微笑む。若干のたどたどしさはあるが、どことなく険が取れ、柔らかくなった文体だった。少しだけ、二人のやった事が意味を成したのかもしれなかった。
「良かったね……」
「うむ……」
ちょっとだけ、感慨深げに頷き合う二人は、同封されていた物に目を通す。
「これは……」
―アシュレー・ウィンチェスター及びマリアベル・アーミティッジ両者をガリア王国国賓として遇する。なお、ガリアに居る限りこの二人に手を出す事をガリア国王ジョゼフ・ド・ガリアの名において禁ずる―
出て来た一枚の紙にはそう書いてあった。
思わず目をぱちくりと瞬いた二人に、ビダーシャルは苦笑する。
「まああれだ、二人がガリアを除くハルケギニア全土で賞金首となった事を知ったジョゼフ王が、せめて自分の国に居る間だけでもと考えたらしくてな」
「いくらなんでも、王権を濫用し過ぎではないか?」
「問題無いだろう。あの王ならばそれ位何ともない程に卓越した政治手腕を持っている」
流石に苦笑する二人は、ビダーシャルが差し出したもう一つの封筒、エルフからの書状を手に取って開封してみる。
―『大いなる意志』の遣い、アシュレー・ウィンチェスター殿、マリアベル・アーミティッジ殿、両名を我らエルフの宴に招待したい。ついては、アーハンブラにある、そちらに派遣したビダーシャルの案内する場所に来られたし―
「と、いうわけだが……」
最初、笑っていたビダーシャルが文面を目にして困った様に米神を揉み解す。
「実は、恥ずかしながら、お前達二人の事をあまり……歓迎していない者が、まだ少し居るのだ。だが、そこまで無愛想な招待状を送っているとは思わなくてな……」
「折衝した上での案じゃろ?ならば十分じゃ。のう?」
「うん。最悪、無理矢理侵入することまで考えていたんだし、それに比べれば全然恵まれているよ」
「そうか、そう言ってもらえるとこちらとしても助かる」
申し訳なさそうにするビダーシャルをよそに、特に気に留めた様子の無い二人はチェックアウトの準備をする。とはいっても、持ち物は全てカバンに収まる程度の物だけな上に、料金は日割りできちんと支払っている為、実際にやる事はチェックアウトを告げるだけである。
カウンターにあるベルを鳴らすと、『空の贈り物亭』の店主が奥の方から顔を出す。
「おう、二人ともチェックアウトか」
「ええ、今までありがとうございました」
「心遣い、礼を言う」
そう言って頭を下げるアシュレーとマリアベルに、店主は照れたように手を振る。
「ああ。また来てくれ」
「ええ、またこの国に来ることがあったら是非に」
「その時は土産でも持って来よう」
「待ってるぜ」
不器用な店主と客の会話。ならばこんなものだろう。なんだかんだ言って、この世界に来て最も長く接した人間の一人だ。変に湿っぽい終わりは、二人の本意ではない。
「二人とも荷造りはいいのか?」
「ええ。身一つと言ったら変ですが、荷物はもう最低限の物しか持っていないので」
「うむ。むしろ、最後の決戦にはこの上なく相応しい衣装じゃろ?」
尋ねるビダーシャルに、頷くアシュレーとマリアベル。いつもの服装、いつもの姿、いつもの表情、いつもの口調。だが、彼らは共に、この姿で戦って来た。ならば、最後の最後もこれ以上相応しい姿は無いだろう。
パタリと開いた『空の贈り物亭』のドアの外、ガリアの空は今日も快晴だった。
『空の贈り物亭』を出ると直ぐに、ビダーシャルが準備した馬車が待っていた。
「どうぞ」
「ありがとう」
宿の見習いの少年にチップを渡しながら手綱を受け取るアシュレー。そして、
「さ、掴まってマリアベル」
「うむ」
馬車に乗り込むと直ぐに手を差し伸べる。その手を受け取ったマリアベルはアシュレーに支えられながら、すっぽりとその身を隣に収めた。隣にある事が自然。そんな温かみを感じながら、アシュレーは昨晩の事を思い出していた。
「じゃあ、出発するよ」
「うむ」
「ああ」
ビダーシャルが荷台に乗った事を確認して、アシュレーがピシリと一回鞭をくれる。馬車はゆっくりとガリアの裏道を進み始めたのだった。
◆
数日後、三人は以前、ガリア王ジョゼフが指し向けたヨルムンガントと戦った地、アーハンブラの郊外にある廃村へとやって来ていた。
「ここが、そうなんですか?」
「ああ」
アシュレーの質問にビダーシャルが頷く。
「丁度、この村の外れにある森を越えると、直ぐに我らの集落に出る」
そう言いつつビダーシャルが森を指差すのとほぼ同時に、その奥からスッと金色の長髪と尖った耳をした独特の風貌、見まごう事無きエルフが一人警戒する様に顔を出した。
「そちらが?」
「ああ」
チラッとアシュレーとマリアベルに視線をやったエルフは、直ぐにビダーシャルの方を向いて短く尋ねた。その言葉に首肯して最低限の返答を返すビダーシャルと、アシュレー、マリアベルの二人を見比べ「しばし待て」と、やや横柄な感じのする口調で言い置いて、エルフは再び森の中へと引っ込んだ。
「えっと、ビダーシャルさん」
「……ああ」
「もしかせんでも、わらわ達は物凄い警戒されておるのかの?」
「正直、此処までとは思わなかったんだ。私が居ない間に、右翼党の草の根活動がそれなりに浸透していたようだ」
申し訳なさそうに溜息を吐くビダーシャルを、アシュレーとマリアベルは憐れむ様な視線で見る。政治的な折衝とプロパガンダは何時の時代も根気と胃痛が伴うものなのだ。
「えっと、僕達は気にしないですから、ビダーシャルさんもあんまり気にやまないでください」
「そうじゃそうじゃ。あんまり詰まらん事でくよくよしておると、禿げるぞ?」
「そう言ってもらえると助かる。あと私は禿げん」
憮然とした表情になるビダーシャル。やはり、長寿種には長寿種ならでわの悩みがある様だった。
と、三人が馬鹿なやり取りをしている間に、森の奥から続々とエルフと思しき者達がアーハンブラの廃村へと集まって来ていた。そして、ほぼ全員が出て来たと思われる頃に、その中心より、一人の年老いた、しかしそれ以上に威厳を感じさせるエルフが進み出た。
(あれは?)
(我らの統領に当たるテュリュークだ)
(あれがのぅ……)
「お初にお目に掛る。ネフテスの統領務めておるテュリュークだ」
「アシュレー・ウィンチェスターです。初めまして」
「丁寧な挨拶痛みいる。マリアベル・アーミティッジじゃ」
顔を合わせた三人は、形式だけの挨拶を取り敢えず済ませる。互いに、相手そのものよりもその後ろに待つ世界に重きを置くが故の簡素なやり取りは、少なくとも統領の後ろで警戒心を顕わにするエルフの戦士達にはそこまで不快感は与えずに済んだ様子だった。
「早速本題に入りたいんですが、良いですか?」
「うむ」
アシュレーの質問に、テュリュークは頷いて答えた。
「こちらとしても、正直な話敵か味方かの判断がつかない相手の警戒を悪戯に強めるだけのやり取りは避けたいところだ」
かなり砕けた言葉で、そう返したテュリュークは、直ぐに本題を切りだした。
「それで、そちらの二人、見た目は蛮人の様だが『大いなる意志』曰く「自らの同胞」とも言うべき者と、『大いなる意志』とほぼ同等の力を持つという者よ、お主等は、『大いなる意志』の命によってこの地へ来たとか?」
「ええ。この世界に来たのは、それがあったからです」
「ふむ……」
「ついでに言えば、理由は陳腐な言い方をすれば『世界を救うため』じゃの。その為にお主等の護る『シャイターンの門』を開けさせて欲しいのじゃ」
瞬間、何割かのエルフが怒気を顕わにするが、それをテュリュークは右手を上げて制止する。そして、傍らに居る秘書らしきエルフに、確認を取る様な視線を向ける。パラパラと手帳の様な物を捲っていたエルフは、その視線に小さく頷いた。
「相分かった」
秘書から視線をアシュレーとマリアベルに戻したテュリュークは小さく頷いた。
「どうやら御二人の話は、ビダーシャルの報告と相違無い様であった」
第一関門をクリアしたようである。その事に、若干安堵のため息を吐くアシュレーとマリアベル。しかし、交渉はまだ終わってはいない。なので、まだまだ気は抜けなかった。
「それに、御二方は嘘なども吐いてはいない様だった」
「「……」」
「ただ……」
テュリュークは困った様に、若干顔を顰める。
「そちらが嘘をついていないとしても、騙されている可能性、洗脳されている可能性は否定できないなどと申す者もおっての」
そう言って、やや咎める様に後ろに立つ数名の物を微かに睨みつける。
「なので、心苦しいのだが、こちらの要求は……」
「相分かった」
テュリュークの言葉の途中で、マリアベルはそう言ってその続きを遮った。
「わらわ達が『大いなる意志』、ガーディアンを召喚する事、これがわらわ達が『シャイターンの門』を開ける為の条件じゃの?」
「うむ」
確認する様に尋ねるマリアベルにテュリュークは頷いた。
「そちらの言葉だけであれば信用できないと言う者達も、『大いなる意志』の言葉であれば従わぬ道理は無いからの……」
呟いたテュリュークの言葉に、顔を見合わせて頷きあうアシュレーとマリアベル。
「分かりました。それじゃあ、召喚は今ここで始めても?」
「うむ。構わん」
その言葉に再度頷くと、アシュレーとマリアベルは早速作業に取り掛かったのだった。
数分後、廃村の中心部にあった広場の様な場所の中心で、アシュレーとマリアベルの二人は向かい合う。その手にはいつかと同じアミュレット。リグドブライトの召喚陣が刻まれたそれが納められていた。
「じゃあ、始めようか」
「うむ」
アシュレーの言葉に頷くマリアベル。そして、差し出した手にアシュレーも又自分の手を重ね合わせる。
((我らは呼ぶ、原始の支配者にして異世界の眷属たる一柱を))
―ア、着イタンデスカ?ジャア、今スグニ行キマスネ―
「「って、おい!?」」
あまりの簡素さに、というか、緊張感も何も無い反応に思わず突っ込みを入れるアシュレーとマリアベル。しかし、当のリグドブライトはその理由は良く分かっていない様子だった。
「ア、アレ?ドウカシマシタカ?」
「いや、別に何かあったって訳じゃないんですけど」
「いささか簡素過ぎやせんか?」
恐らく、前回の失敗を踏まえての行動なのだろうから、特に文句は言わなかったが、二人は若干疲れた様な表情をする。
と、そこまで話していたが、ふとアシュレーとマリアベルは周囲が妙に静かな事に気が付く。
「あれ?」
「何かあったの……」
首を傾げながら周囲を見回す二人。視線の先には先程と特に変わらず佇むエルフ達。
但し、その全員がただただ立ち尽くしてリグドブライトを凝視するという、既視感あふれる光景を作り出していなければ……
「……エ?」
前回の来訪と全く同じ反応を返す者達の中心で、リグドブライトはそれを漏らすだけだった。周囲をキョロキョロと見回すと、既に危険を察知したのか、アシュレーとマリアベルの二人は遠く離れた廃屋の前で隣り合って座り込み、傍観を決め込んでいた。
「エ?エ?」
「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」
「ア、アノ」
「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」
「チョ、チョット!」
「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」
冷や汗をだらだらと垂らしながら必死に呼びかけるリグドブライト。嫌な予感がガンガンと本人の中で警鐘を鳴らしている様子だった。
そして、その沈黙は唐突に終わりを告げる。
「「「「「「「「「「「お」」」」」」」」」」」
「オ?」
「「「「「「「「「「「おおお」」」」」」」」」」」
「オオオ?」
「「「「「「「「「「「『大いなる意志』よぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」
「ヤッパリコレデスカァァァァ!?!?」
えび味のガーディアンの悲鳴が上がったのだった。
夜、エルフの集落の中にある、来客用として使われている家屋の浴室で、チャプリと湯を叩く音が鳴った。
「ふー。気持ち良いのぅ」
「うん、そうだね」
浴槽で湯浴みを楽しむ二人。アシュレーの上に身体を預けて気持ち良さそうに目を閉じるマリアベルの頭を、アシュレーが優しく撫でてやると、マリアベルはくすぐったそうに「んにゃう」と体をくねらせた。
リグドブライトの召喚の後は正に歓喜とも狂喜ともつかない有様だった。あの理知的な雰囲気を醸し出すエルフが、悉くはめを外して宴会を開いたのだ。いや、あれは宴会と言うよりも、最早乱痴気騒ぎとしか表現のしようのない別の何かだった。
ビダーシャルはおろか、統領であるテュリュークすら加わったその狂宴は、主に『大いなる意志』と崇めている存在である筈のリグドブライトに甚大な被害を与えて終焉となる。ちなみに、その宴会のフィナーレは、
『それでは、1番マリアベル・アーミティッジ!歌を唄うのじゃ!!』
『おお!!!!』
『いいぞいいぞ!!』
『……え?』
歓声を上げる周囲の中で、ただ一人硬直するアシュレー。そして、
『○×◆▽↑↓←→←→BA!!!!!!!!』
『『『『『『『『『『『ぎゃぁぁぁぁぁ!?!?!?!?』』』』』』』』』』』
『やっぱり……』
咄嗟に耳を塞いだアシュレーが見た物は、積み重なるエルフの大量の屍と、その中心で首を傾げる酔っぱらったマリアベルだった。
その時の事を思い出して、思わず苦笑するアシュレーの顔を覗き込むようにして見つめながら、マリアベルが話し掛ける。
「のう、アシュレー」
「ん?何、マリアベル?」
「うむ……」
「……?」
両手でアシュレーの顔を挟んだまま僅かに思案する表情になるマリアベルに、アシュレーはジッと答えを待つ。重苦しさは無い。むしろ、これからの事を考えて少し楽しみでもある。
アシュレーと同じように微笑むマリアベルが、言いたい事を思い付いたのか小さく、そして、楽しそうに微笑んだ。
「ファルガイアに帰ったらの」
「うん」
「ごろごろして、ぶらぶらして、一緒に暮らすのじゃ!」
「うん」
頷いて、アシュレーはマリアベルをそっと抱き締めたのだった。
◆
翌朝。決戦の時が刻一刻と近付いていた。エルフの地の最深部へと向かって歩く一行。その中心にはアシュレーとマリアベル、そして、ビダーシャルの姿があった。一行は、鬱蒼と茂る木々が、何故か妙な角度に曲がったりひっくり返った姿を晒す道を黙々と歩いていた。と、森の途中で、先頭を歩く壮年のエルフが歩みを止めた。
「いったん止まってくれ」
ビダーシャルが、アシュレーとマリアベルの二人に声を掛ける。そして、立ち止まった二人を振り返って説明をする。
「ここから先が、『シャイターンの門』の影響下にある地だ。これより前に進めば、何時『シャイターンの門』の魔力の奔流がぶつかって来るかは分からない」
その説明に、スッと表情を引き締めて戦闘態勢に入る二人。二人の目を見て小さく頷いたビダーシャルは、ひらひらと手を振って先頭を行くエルフに合図を送る。
「これより先に進むのは私達だけだ」
「他の人はこのまま帰るんですか?」
首を傾げるアシュレーに、ビダーシャルは首を横に振って否定する。
「此処に居る者達は、お前達のサポートだ。『シャイターンの門』まで続く道を作り、『大いなる意志』召喚の為の時間を稼ぐ事になる。安心して欲しい。皆、私達の中でも選りすぐりの手練ばかりだ」
ビダーシャルのその言葉に、エルフ達が力強く頷いた。
ジッとそのエルフ達を観察していたマリアベルは納得した様に頷くと、一歩前に出て、アシュレーとビダーシャルと並び立つ。
「それでは、行くかの」
「うん」
「ああ」
いざ、決戦の地へ
ゴウッ!ゴウッ!と、時折周囲に響く強烈な風の音に警戒しながら、三人は『シャイターンの門』への道を足早に進んでいく。後方で防御を担当しているエルフのおかげで、直接の被害は一切ないが、時たま目の前を吹っ飛んで行く根元からへし折られた大木に、警戒心を強めざるを得ない。
「あれは……」
と、一番後ろを歩いていたアシュレーが、ある物に気が付いて歩みを止める。先頭を行くビダーシャルと真ん中にいたマリアベルも、それぞれ顔を上げてその視線の先を凝視する。
三人の目に映った物、それは、
―石造りの、何故かそこに佇む門―
―苔蒸し、蔦が生えているが、時折発せられる破壊の波に引き剥がされていく―
―半開きになった扉が、時折咆哮する様に大きく口を開ける―
「これが……シャイターンの門……」
ポツリと漏らしたアシュレーの隣で、マリアベルも又緊張の表情を浮かべる。
ゆったりと落ち着いた、穏やかな姿を見せるファルガイアのコア『グラブ・ル・ガブル』とは違い、この世界のコア『シャイターン』は、その属性を文字通り体現した、強烈な暴風の荒々しさを持った存在の様であった。
ゴクリと誰かが生唾を飲み込む音がやけに響いた。強大な力の奔流。もし、この中に無警戒で身を投じれば、決してただでは済まないだろう事が簡単に見てとれた。
「始めようか……」
だがそれでも、立ち止まる訳にはいかなかった。第一声を踏み出したアシュレーの言葉に頷き、マリアベル、ビダーシャルはそっとその手を差し出す。
マリアベルの手に置かれたアミュレット。その金属片にアシュレー、ビダーシャルの順番で手を重ねる。そして、チラリと視線を交わし合って、祝詞を唄い始めた
―我らは呼ぶ―
―根源の土より生まれ出でし者を―
―時を駆け、狭間を操るかの者を―
―我らが呼び声に応えよ守護者―
―汝の遣わせし者はここにあり―
―出でよ―
―『時』のガーディアン、ダン・ダイラム!!!!!―
どこかでカチリと時計の針が動く音がした
次の瞬間、三人の周りの景色が、急に固まり動きを止めた。半開きになったドア、逆巻く木の葉、抉れて飛ばされる地面、宙を舞う大木。それらがまるで瞬間を撮影したかの様にピタリと動きを止めて外界が全て緑色になる。そして、
「お初にお目に掛る……は少々正確では無いか。我が名はダン・ダイラム。『時』を司り、ガーディアンの末席に名を連ねている」
そう言って、三人の前に立った赤い背広の猫はそう言ってスッと綺麗な動作で礼を取った。
「まずは礼を言わせていただこう。この度の戦い、我らだけでは到底核心とも言えるこの部分に到達することなど出来なかった」
「いえ、僕達はそんな」
「元々、わらわのものであるファルガイアを守っただけじゃからの」
「お、おおおおお『大いなる意志』よりそのような言葉を頂けるとは、このビダーシャル光栄の極み!」
困った様に頭を掻くアシュレーと肩をすくめるマリアベル。隣に居るビダーシャルは見ない事にした。
三者三様の返事に小さく頷いたダン・ダイラムは背後に立つ『シャイターンの門』をしかと見据える。
「これより最後の戦いだ。準備はよろしいかな?」
「ええ」
「うむ」
「無論でございます!!」
「では行こう!」
ダン・ダイラム一言を合図に、皆で『シャイターン』の内包世界へと第一歩を踏み出したのだった。
シャイターンの門の中、それはまるで宇宙の様……。実際はただの真暗な闇の中であり、左右どころか上下も分からない異空間だった。先頭を行くダン・ダイラムが何の躊躇も無い足取りで先行し、足場と認識できる物を作らなければ、これ程早く前に進む事は出来なかっただろう。
「……」
そんなガーディアンの後ろを歩くアシュレーは、チラリと隣に立つマリアベルを見下ろした、その視線に気が付いたのかマリアベルも僅かに視線を上げる。アシュレーと同じ感覚を、マリアベルも受けて居た様だった。
周囲に溜まる妙なオーラ。その一つ一つが攻撃の意志を持たない強大な力となってプレッシャーを向けて、三人を威圧してくる。どうやら、本質が『静』である『グラブ・ル・ガブル』と違い、『動』である『シャイターン』は。その周囲の空間もまた『グラブ・ル・ガブル』に比べて攻撃的なようだった。根源的であるが故に知性を普段は持たず、異物を排除しようという意志が基本的に鈍い事が唯一の救いか。但し、若干ではあるが経験のあるアシュレーとマリアベルと違い、ビダーシャルの表情は『シャイターン』のプレッシャーで既に真っ青だ。
そのまま延々と続くかと思われる程に単調な時間は、唐突に終わりを告げた。
「止まってください」
そう言って、立ち止まったダン・ダイラムを訝しげに見るアシュレー達。しかし、前に立つガーディアンは何も言わずに目の前を指差した。
「えっ!?」
「む!?」
「なっ!?」
三人がそれぞれ驚きの声を上げる。その視線の先で、一条、天地へと延びる巨大な竜巻が突然どこからともなく現れた。
「これが……『シャイターン』……」
「ハルケギニアのコア。全ての根源となる緑の風……」
「何と……壮大な……」
『グラブ・ル・ガブル』とは違う攻撃的な要素を持った力に、アシュレーとマリアベルは冷や汗を流し、ビダーシャルはただただ感動していた。
「さて、それでは時間の加速を行おう」
三人が硬直から解けたのを見計らって、ダン・ダイラムが声を掛ける。三者三様、それぞれに思う所はあった様だったが、三人とも、静かに頷いた。
差し出されたダン・ダイラムの大きな手に、三人はそれぞれの手を重ね合わせる。
アシュレー
マリアベル
ビダーシャル
三人の力を、ダン・ダイラムを介し、『時』を司る力として『シャイターン』に向けて解き放つ。
システムクロノス
「……」
「……」
「……」
誰も喋らなかった。ただその空間に、乾いた温かな風が流れるだけだった。
「終わり……かな……」
「恐らくはな。『大いなる意志』の声も今は既に落ち付いている」
ビダーシャルのその言葉を聞き、アシュレーとマリアベルは緊張の糸が解れた様に、大きく大きく溜息を吐いた。
「よかった……。本当によかった!!」
「うむ!!!!」
力強くガッツポーズをするアシュレーと、それに合わせる様に飛び跳ねるマリアベル。ダン・ダイラムとビダーシャルはその様子を微笑ましげに見ていた。
どれくらい時間が経ったのだろう。本来は十数分程の事であるが、中心に居たアシュレーとマリアベルにとっては恐らく数秒の事だったのだろう。
戦いの中にある極度の緊張、世界全てが双肩にかかっているというプレッシャー、そして、それを自らが為さねばならぬという自負。それら全ての緊張が一気に解きほぐされたのだ。やがて落ち着いた二人を、一筋の光が照らしていた。
……光?
強烈な違和感に、アシュレーとマリアベルの危険信号は一瞬でボルテージを最高値まで引き上げた。素早く互いを離すと、それぞれの得物を掴み、光の先を見るアシュレーとマリアベル。
「……」
「……」
そう、此処は『シャイターン』の内面世界。彼の世界の中心たるガーディアン以外に発光体など存在し得る筈が無いのだ。あるとすれば、自分達が使った『シャイターンの門』の入り口。しかし、その光と新たな光は明らかに別の方角から差し込んでいる。
一条自分達に向かって射す小さな白い光の筋。その光が、突如大きく口を開き、そして、
「!?」
「くっ!?」
巨大な波紋が内包世界に叩きつけられた。
ぐらりと歪んだ視界、同時に訪れた歪。アシュレーはその中で、マリアベルを守る様に前に立ち、バイアネットで衝撃を受け止める。一方その中でたたらを踏みながら、マリアベルはチラリと後ろを振り返った。
「いかん!!」
マリアベルの視線の先、その先にある筈の内包世界とハルケギニアを繋ぐはずの門が今の衝撃で急に遠のいているのが見えた。
「アシュレー!!」
「!!」
咄嗟の判断で叫ぶマリアベルと、その一言で何を言わんとしているか察したアシュレー。アシュレーはすぐさま隣でほおけて居るビダーシャルの首根っこを掴みあげた。
「ぐ!何を!?」
「すみません、ビダーシャルさん!少しだけ我慢して下さい!」
叫んで、捕まえたビダーシャルを軽々と持ち上げて振りかぶる。
「間に……合えぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
「ぬおぉぉぉ!?!?」
思い切り放り投げられたエルフの青年は、そのまま真直ぐと飛んでいくと、狙い違わず『シャイターンの門』から飛び出して行き、そして、その直後にパタリと光を閉じたのだった。
「間に合った……?」
「恐らくは……大丈夫じゃろう……」
不安そうなアシュレーをなだめる口調になるマリアベル。しかし、その視線は未だに光の先を油断なく凝視していた。と、突然、シャイターンの内包世界を不快な臭いが充満した。
腐敗臭とも刺激臭ともつかないただただ不快なその臭いに、アシュレーとマリアベルは異様とも言える感想を抱く。
(これは……一体……)
(分からぬ。じゃが、気を抜くで無いぞ!)
(うん!)
弛緩した精神を一瞬で引き締めるその理性の強靭さは戦場で培った性質そのものだった。そう……丁度今の様に。
ゴボリ
そんな音と共にソレは姿を現した。
「な……」
「何と醜悪な……」
あまりの異様に絶句するアシュレーと不快感を顕わにするマリアベル。二人の視線の先にあるソレを見ての感想は、どちらの物も間違ってはいないものだっただろう。
そこにあったのは歪な球体だった
汚泥色のそれは、ビチャビチャと同色の悪臭を放つ雫を滴らせながら、ずるりずるりと地を這う様に、ゆっくりとアシュレーとマリアベルの方へと近づいて来ていた。身体の至る所から飛び出した突起物は、金属製の触手となって当ても無く宙を掴もうとしている。時折バランスを崩して横転するそれは、地に落ちるのとほぼ同時に全身からブシューッと青紫色のガスの様な物を噴き出している。
「酷い臭い……」
「鼻が曲がりそうじゃ……」
思わず顔を顰めるアシュレーと鼻を摘まむマリアベル。
「そういう事か……」
と、マリアベルが急に何かに納得した様に頷いた。
「そういう事って、何が?」
油断無く目の前に居る異形から目を逸らさずに、声だけでアシュレーは尋ねる。
「シャイターンの話を聞いた時にチラと気になったのじゃが、何故、この世界のコアはあれ程暴れておったのじゃろうか?」
「?ファルガイアとの正面衝突を察知したからじゃないの?」
「じゃが、それだけでは説明が付かん事がある」
「説明が付かない事?」
「うむ」
聞き返すアシュレーに、マリアベルは小さく頷く。
「ファルガイアもハルケギニアも正面衝突の危機と言う意味では状況は全く同じだった。じゃが、外界への異変は対照的。『グラブ・ル・ガブル』は欠片も変化を起こさなかった」
「あっ!」
マリアベルの言葉で、同じく気が付いたアシュレーが声を上げる。
「じゃあ、『シャイターン』が暴れていたのは……」
「十中八九、あの異形が原因じゃろうな」
呟くマリアベルの前で、アシュレーはポケットから取り出したカメラの様な物で異形を写す。
「モンスターアルバム末端起動。スキャン開始……スキャン完了」
無機質な機械の声に、二人は僅かに耳を傾ける。
「名前ガイアコア、分類ガーディアン、属性水、階位最高位」
「えっ!?」
「何じゃと!?」
モンスターアルバムのスキャンの声に、思わず叫び声を上げる二人。つまりそれは、この目の前に居る汚染物質の塊とも言うべき化け物が、『グラブ・ル・ガブル』や『シャイターン』と同じ世界の根源を形成しているガーディアンの一つであるという事だ。
「そんな!これじゃあ、世界の衝突が!?」
「焦るなアシュレー!!今はとにかく、この異形の動きを何としても止めるのじゃ!!」
叫んだマリアベルと共に、アシュレーは異形としか表現のしようのない巨大な化け物の正面に立つ。
異形。その一言しか思いつかないその姿は、醜悪極まりない悪魔とも言える存在でありながら、全ての根源にして世界の核たる存在らしいプレッシャーを放っている。思わず正面に飛び出した二人だったが、正直、何をすればいいのかも全く分からなかった。
「ねえ、マリアベル」
「何じゃ?アシュレー」
「勝算は……どれくらい?」
「……ほぼ」
「うん」
「ゼロ……じゃな」
「そっか……」
二人は、絶望的な戦いに身を投じた。
突然真ん前に躍り出た二人に気が付いたのか、丸い化け物の身体が一瞬ピタリと動きを止める。そして、ゴポリという音と共に身体の半分程までが裂け、おびただしい量の黒い悪臭を放つ流動体を滴らせながら咆哮の様なものを上げる。
悪臭を放つその口は、内部でチラチラと何かが燃え立ち、時折爆発の様なものを起こしていた。そして、
「御二方とも!来ます!!」
後ろですぐにでも飛び出せる準備をしていたダン・ダイラムが叫ぶ。
GUOoOoOoOOOOOOOooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
それとほぼ同時に、目の前に居る化け物の繰り出す騒音が暗いシャイターンの内包世界で暴れまわった。
「くっ!?」
「ぬおっ!?」
避けるアシュレーと、飛び退くマリアベル。二人の居た場所に、ガイアコアの吐きだした紫色のガスが吹き付けられた。
「ちいっ!?」
瞬発力にものを言わせて何とか安全圏まで飛び退いたアシュレーに対し、マリアベルは若干逃げるのが遅れてしまった。身体に直接触れる事は無かったが、僅かにガスが付着したスカートの端が、見る間にボロボロに腐食して行く。
「ぬおおお!?」
慌ててその場所を引き千切って捨てると、布切れは瞬く間にどす黒く変色し、使い物にならなくなった。
「お気に入りのドレスに何するのじゃ!!」
叫んだマリアベルには内心は全く余裕が無かった。
一目で強大と分かる敵。しかも、その力は触れた物を一瞬で腐食させるという凶悪極まりない物。と、タァーンッ!!という発砲音と共に、アシュレーがガイアコアに向かってバイアネットの弾丸を発射した。しかし、
「えっ!?」
「何じゃと!?」
その弾丸は、ダメージを与えるどころか、着弾することすら無く化け物の体を通り過ぎて行った。
「次元の位相がずれている……」
その様子を見て、ダン・ダイラムが呟いた。
「位相が?」
聞き返したアシュレーと黙って見上げてくるマリアベルに、ダン・ダイラムは無言で頷いた。
「あの世界は元々この世界とは全くの別物だ。御二人の様に殻というこの世界に位相を合わせる過程を取らずに、直接内包世界に来てしまったがために触れる事が出来ないのだ!」
ダン・ダイラムの言葉に、アシュレーとマリアベルが表情を歪める。当然だ。目の前の敵が今までの厄介さに加えて『攻撃が効かない』という属性まで持ち合せていると言う事なのだから。
「何か手は無いのか!?」
叫んだマリアベルに、ダン・ダイラムは「ありますが……」と答える。
「なら、それを早くするのじゃ!」
「しかし、それをしてしまえば、力が切れた私は送還されてしまいます!そうなっては、御二人をこの世界から連れ戻す事が出来る者がいなくなります!!」
「いいから早く!!!」
アシュレーが叫んだ。
「もしこのまま手を出さないでしまえば、ハルケギニアが滅びます!そんなことさせる訳にはいかない!!」
「しかし!!「早くっ!!!!!」
アシュレーの放つ強烈なプレッシャーによって気圧されたダン・ダイラムは、チラリと迷った表情をしながら、パチリと指を鳴らした。そして、
パンッ!
軽く響いた発砲音。そして、今度は確かにガイアコアに弾丸が着弾するのを確認した。
「やった!」
拳を握るアシュレー。その後ろでは、マリアベルがすかさずステータスロックで汚物による干渉を防ぎに掛る。
「どうか……御武運を」
無念の表情で掻き消えて行くダン・ダイラム。悔恨の表情の彼を振り返る暇も無く、アシュレーとマリアベルは戦闘へと移行する。
「くらえっ!」
バイアネットの弾丸を連射するアシュレーと、
「ギャラクレイジーじゃ!!!」
最高威力の魔法をぶっ放すマリアベル。その一撃一撃を受けるごとに、咆哮と共に激しく身もだえるガイアコア。が、
GOAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!
直ぐにその動きを止めて、毒ガスと汚物を噴射してくる。
「クッ!?」
慌ててマリアベルを抱え込んで離脱するアシュレー。流動体で無秩序に拡散する有毒のガス。アクセラレイターが無ければ、最初の一手で詰んでいた。
幸いな事に色が付いている為に判別の効く毒ガスを避けながら、アシュレーはバイアネットの銃口をガイアコアに向ける。
「フルフラット……ファントムファング!!!!」
全弾命中。直撃を受けたガイアコアは今までになくのたうちまわり、身悶えた。しかし、
GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!
その進行は止まる所を知らなかった。
ズルリズルリと這うように前進する化け物は、毒ガスを撒き散らしたがそれもすぐに止んで行進のみを続けていた。その様子を、アシュレーの腕の中でじっと観察していたマリアベルが何事かに気が付いた様子で口を開く。
「のう、アシュレー」
「何か気が付いたの?」
「うむ」
頷いたマリアベルが、スッとガイアコアの通って来た道を指差す。
「ガイアコアは、本当にシャイターンに敵意を向けているのじゃろうか?」
マリアベルの疑問に、アシュレーは難しい表情になる。少なくとも現状を見る限り、ガイアコアの前進はシャイターンの消滅に繋がりかねないのは事実だ。しかし、それと敵意があるかどうかは全くの別問題だ。
「あれを見てくれアシュレー」
そう言って、マリアベルが指差したのは、再び毒ガスを吐き出すガイアコアの姿だった。
「あれが、どうかしたの?」
首を傾げるアシュレーに、マリアベルは少し考える様な仕草で顎に手を当てる。
「ガイアコアのあの姿、アレは本当にガイアコアの本来の姿なのじゃろうか?正直思うのじゃが、あの姿は『水』というよりは『土』の方が近くは無いか?」
マリアベルのその言葉に、アシュレーも考え込む。確かに、単純な外観は明らかに『水』のそれでは無い。無論、どんなモンスターも場合によっては考えられない属性を持っている場合がある。だが、ガーディアンの様な根源的な属性を司る存在が、そんなあやふやな外見をしているとは今一考えずらい。だとすると、思い当たる可能性は……
「あの姿は、何らかの要素で変ってしまったガイアコアの全く別の姿……」
「わらわはそうじゃと思う」
顔を見合わせて考え込むアシュレーとマリアベル。
「あれは、もしかして……」
「仮定が正しいとすれば……」
「「汚染を何とか引き剥がそうとして苦しんでいる?」」
二人はそう結論付けた。
「浄化は出来ぬのか?」
「たぶん、無理だと思う。アークインパルスを撃とうにも今この場に居るのは僕とマリアベルだけで、希望を掻き集めるのは殆ど無理だ……」
マリアベルの質問にギリッと悔しそうに歯噛みするアシュレー。他人の希望の光を持って強大な力を発揮するアークインパルスは、その威力は希望その物に依存しきっており、絶望や失意を始めとした負の感情や、十分な人々の希望が集まらない状況に極端に弱い。
「万策……尽きたか」
「……」
弱々しく呟いたマリアベルの言葉に、アシュレーはジッと無言で耳を傾けた。
「既に、打つ手は無くなった。根源を倒すどころか、時間稼ぎする力すら、わらわ達には無い」
「……」
「弾丸やレッドパワーは着弾しておるが、毒ガスの腐食能力を見る限り、ダメージには殆どなっておらぬじゃろう」
「……」
「唯一の希望だったアークインパルスは燃料切れじゃ」
そう言って、マリアベルはぺたりとその場に座り込んだ。
「終わりじゃな。……何もかも」
そして、ポツリとそう呟いた。
齢は既に五桁に達する程の生を紡ぎ、その半生をロードブレイザー、オデッサ、カイバーベルトコア、と戦いに費やして来た少女の経験が、打つ手がないと判断していた。「まだ何とかなる!」と叫びたかった。しかし、他ならぬ自分自身が、ほかにどうしようもない事を一番よく理解していた。
「のう、アシュレー、わらわ達はこれからどうなるのじゃろうな?」
「……」
「異世界同士の対消滅。巻き込まれれば、わらわとて消滅するじゃろうの」
「……」
「よしんば、わらわが生きながらえたとしても、不老はあるが不死では無いアシュレーでは耐えきれんじゃろう」
「……」
「世界同士が対消滅した完全な無の中で、たった一人取り残されるなぞ、死んでもごめんじゃ」
「……マリアベル」
「……ん?」
戦いの果て、その終着点の絶望しかない未来にポロポロと涙を流すマリアベルを、アシュレーが見下ろす。ノロノロとその顔を見上げたマリアベルは、その瞳を絶句した。
「まだだ」
ああ
「まだ、手はある」
何故
「終わりじゃ無い」
貴方は
「僕達が諦めない限り」
そんな目をしているの?
「絶対に」
彼女の様に
「終わりなんかじゃ無い!!」
そんな目をして私を置いて行ってしまうの!?
「アシュ……」
マリアベルが突き出した手は、虚しく空を泳ぐ。その先に居た筈のアシュレーは、まるで最初からそこに居なかったかのように消えてしまっている。そして、
「この世界を……終わらせたりなんかしない!!!」
蒼い髪をたなびかせ、白い装束を身に纏う。高々と構えた未来の剣。根源の正面に立つ、剣の英雄の姿。
アシュレーはしかと目の前に迫る異形を見据えた。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
激突とほぼ同時に、強烈な重量がアシュレーの体を圧迫する。
「ぐ、うううう」
顕現した力、アガートラームを繰る剣の英雄の力で異世界の根源、ガイアコアを受け止める。
ガーディアンの力を内包したアガートラームは根源の瘴気でも腐敗する事無く目の前の存在を受け止めてくれている。
「う……おおおおぉおぉおぉおぉ!!!!!!」
そして、マリアベルが使ったステータスロックのおかげで直接根源に触れさえしなければ、瘴気自体は吹きつけられても悪臭以上の危険は無かった。
「ま、が、れぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
足を踏ん張り、腹に力を込めて無理矢理に身体を捻る。後ろに存在する巨大な竜巻は、汚泥塊と干渉しあっているのか、その動きが一気に悪くなっている。だからこそ、アシュレーが繰るアガートラームも直接ガイアコアに触れる事が出来るのだろうが……
片足を軸に重心を回転させながら、アシュレーはチラリと後方に居るシャイターンを見る。
(アレが、シャイターンこそが、この世界の本質。なら……)
グチュリ、グチュリと音を鳴らす前面の壁に押し返されながらも、なんとかグリップを握りこむ。
(アレにガイアコアを触れさせなければ……)
目と鼻の先に迫る汚塊のプレッシャーに耐えながら、全身に力を入れる。
(あの世界を、ハルケギニアを救える!!)
「ぐああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」
叫び声を聞きながら、マリアベルは走った。既に遠くに居るアシュレーとガイアコアは、遠目からでも惑星と恒星程の差があった。
(このままでは、アシュレーが!!)
無我夢中だった。ほんの数秒前まで、事敗れたと陥っていた虚脱感を忘れてしまう程に。
アシュレーの様な加速術を持たない身で、必死に走った。今目の前で、最愛の人が世界を救う為に戦っているのだ。
(走れ……)
誰かの為、何かの為に、明日を守る為に戦える。
(走れ)
守りたい大切な物の為に、恐怖なぞ何するものぞと言わんばかりに。
(走れっ!!!)
そんな彼の隣を開ける事はあっては成らなかった。
―嘗ての友は、一人で行ってしまった―
―自分はおいて行かれてしまった―
―最愛の人は、一人で行ってしまっている―
―自分は又おいて行かれそうになっている―
―耐えられなかった―
ヒューヒューと鳴る喉と胸で感じる息苦しさも、彼に置いて行かれてしまうかもしれないという、胸を掻き毟り、心の臓を抉り出したくなる程の恐怖に比べれば塵ほどの意味もなさなかった。
「ぐあぁぁ!!」
「!?アシュレーッ!?!?」
破裂した猛毒の気泡が、アシュレーを蝕む。ステータスロックの力も、ギリギリまでしか残っていない。
「ぐ、うう」
「あ、」
「う、うう」
「ああ」
「う、お、おお……おおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!」
「アシュレェェェェェェェ!!!!!!」
叫びながら突っ走るマリアベルの目の前で、アシュレーの腕がゴポリと音を立てて巨塊の身体に埋まり、ジュワアアァと音を立てて急激に蝕まれていく。
(まずいな……)
だらだらと脂汗を流しながら、アシュレーは内心で苦笑した。八方塞がりも、此処まで来ると笑いしか出なかった。ジンジンと痛みを伝えてくる両腕は、まだ辛うじて感覚があった。触覚か痛覚さえあれば、アガートラームを握る事は出来る。
再びブリップを握り直すアシュレーの頭の中を、ハルケギニアで出会った人々の姿が過ぎった。
シエスタ
ヘルマン
ジョゼフ
そして、ビダーシャル
其々の縁は深くは無かったかもしれない。しかし、彼らとの出逢いが無ければ、自分の大切なものを護る事が出来なかったのもまた事実だ。ならば、せめて彼らの人生を守りたい。
(優しい?違うな)
気力を振り絞り、全身を奮い立たせる。
(これは……僕のエゴだっ!!!!)
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
振り抜いた剣の力が、徐々に抜けて行くのが分かる。死力を尽くした最後の一歩も、目の前の強大な存在の歩みを止める事は出来なかった。
ズボッと音がして、急にアシュレーの身体にかかる負荷が掻き消える。
「あ……」
自分の口から出た筈のその声が、やけに遠くから響いた気がした。目の前に映るのは、この世界を滅ぼさんとする根源たる汚濁と、勢い余って飛び出したアガートラームのグリップ。そして、
(痛覚が……)
見ないでも分かった。いつの間にか解ける様に無くなっていた両手の痛覚。代わりに、肩口から焼ける様なとしか表現しようの無い激痛がアシュレーの脳髄を襲う。
「く……は……」
最早、悲鳴すら出てこなかった。
(此処まで……か……)
ゆっくりと斜めになる視界から、アシュレーは自嘲した。崩れ落ちる世界。自分は……今、無力だった。
(もう……終わ、り)
頭の中を、チラリと一人の少女の姿が過ぎった。
(なんて……)
そうだ、もしここで自分が負けてしまったら、諦めてしまったら、誰が彼女を護るのだ。我儘で自分勝手、それでいて人一倍泣き虫で寂しがり屋な彼女は、もし世界が崩壊すれば、二度と……笑えなくなる。
「諦めてたまるかぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
アシュレーは、ガイアコアから突き出したグリップに噛み付いた。
―もっと、―
―もっともっと―
―もっと力を!!!!―
その時、温かいものが、アシュレーを包み込んだ……
「え?」
思わず零れた呟きをよそに、その熱はアシュレーごとアガートラームを手にした。
「馬鹿者……」
耳の奥から、そんな言葉が聞こえた。
「馬鹿者がっ!!」
アシュレーを抱きしめたのは、最愛の少女だった。
(温かい……)
マリアベルの両手に包みこまれた瞬間、アシュレーの頭に最初に浮かびあがった言葉はただその一言だった。
羽毛のような柔らかさ、春の日差しの様な温かさ、幼子を抱く様な優しさ、その全ては、両腕を失ったアシュレーの今の苦痛をも忘れさせてしまう程に、ただ、心地よかった。
「!?」
一瞬、首筋に熱いものを感じる。そして、
「この……バカチンが!!!!!!」
「……え?」
叫んだマリアベルの言葉をよそに、振り返ったアシュレーの口から洩れたのは、そんな言葉だった。
咄嗟に振り返った先に居たのは、間違い無くマリアベルだった。だが、
「その、」
「来るぞ、アシュレー!!」
叫んだ威風。ヒタと見据える強い瞳。その光は、既に迷ってはいなかった。棚引く巻き髪は……蒼。その姿は、まるで『剣の聖女』の様であった。
困惑するアシュレーを振り返り、マリアベルはニヤッと笑う。
「咄嗟の、思い付きじゃった。スキルドレインで取り込めるかは不安じゃったが、わらわは賭けに勝ったようじゃの」
そう言った彼女の声は自信に満ち、その微笑はアシュレーとの間の確かな信頼を湛えていた。
「それよりも、時間が無い!前を見よアシュレー!」
そして、目の前に迫る敵を見、叫ぶ。
「受け取るのじゃアシュレー!わらわの光を!明日への希望を!お主と共にありたいという……一番大切な願いを!!!」
「くあ……!?」
マリアベルから溢れ出した光が、アシュレーへと流れ込む。その光を受けた瞬間、まるで力の奔流そのものを現すかのように、アシュレーの肩口が光り、その白光が真直ぐにアガートラームに伸びてゆく。そして……
一つの剣を二人の四つの手がしっかりと握りしめた
「撃てるのは、恐らく一発限りじゃ」
自分の背に抱きついて首筋から手を回すマリアベルのその言葉に、アシュレーは頷く。
マリアベルから受け取った希望の光に、自分の持つ希望の光を乗せて再び手渡す。受け取ったマリアベルもまた、自身の希望の光を乗せてアシュレーにプレゼントする。手遊びとも二人遊びとも取れるやりとり。そのふれあいが繰り返されるごとに、一段、また一段と光が強く、大きくなっていく。その強大さに呼応するかのように、アガートラームも又ビリビリと発光しながら打ち震えてゆく。
「いく……よ!」
「うむ!」
手を重ね、ヒタと目の前に迫る根源を見据える。狙うは一撃、究極たる浄化の光。ただ共にあるという希望の力!
「「アークインパルス!!!!!!!!!!」」
真暗のシャイターンを光が満たした……
◆
パシャリ……
「ん……」
耳の奥で聞こえたその音に、アシュレーはゆっくりと目を開く。
「えっ……と」
若干クラクラする意識を、軽く頭を振ってはっきりさせる。キョロキョロと周囲を見回すと、真暗な空間にソヨソヨと緑色の可視の微風が吹いている。
「う〜ん……「起きたか?アシュレー」マリアベル?」
後ろから投げかけられた耳に馴染んだ声に振り向く。果たしてそこに居たのは、パートナーのマリアベルだった。
「マリアベル、大丈夫?」
「目覚めての第一声がそれか」
苦笑しながらストンとアシュレーの隣に座るマリアベルはどこか嬉しそうだ。
「わらわは問題無いの。アシュレーは大丈夫か?」
「うん、僕は特に」
軽く体の点検をして頷くアシュレー。ガイアコアに突っ込んだせいで衣服は両腕の部分が無くなってしまっているが、それ以外は特に変わった所は無い。一方のマリアベルの方も、スカートの一部とグローブが無くなっているが、他に問題は無い様だった。
「どうやら、取り残されてしまったようじゃの……」
コツンとアシュレーの肩に体を預けながら、ポツリとマリアベルが呟いた。
「うん……」
それに返事をするアシュレーは、そっとその頭を撫でた。
二人が帰還する為には、ガーディアンの力が必要不可欠だった。だが、第三のコアが現れた時点で、その力を使ってしまった。二人に帰る術は……無かった。
「ごめん……」
アシュレーが、唐突に呟いた。
「え?」
思わず顔を上げたマリアベルの目に映ったのは、悔恨の表情を滲ませるアシュレーの姿だった。
「僕の……せいで、マリアベルが……ファルガイアに……」
「……」
絞り出す様に吐き出されたその言葉に、マリアベルはアシュレーが何を言いたいのかを察する。
「この……バカチンが!!!!」
「ぐふっ!?」
返事は握りこんだ拳だった。
「な、な?」
突然殴られた事に混乱するアシュレー。その様子を、ムスッとした表情で睨みつけるマリアベル。
「何故殴られたか分かるか?」
「え、えっと……」
数秒程考え込んで出た結論は、
「ハルケギニアにも行きたかった?」
「どうやらもう一発必要なようじゃの」
握りこんだ拳とマリアベルを見て混乱の表情を浮かべるアシュレーに、マリアベルは「はぁぁ」と呆れた様子で溜息を吐く。
「よいかアシュレー!」
ビシッと指を突き付けて、マリアベルは胸を張る。
「わらわが、このマリアベル・アーミティッジが帰る場所は、何時も此処!アシュレーの隣と決まっておるじゃ!!」
そして高らかに宣言したマリアベルは再びアシュレーの肩に体を預けながらポツリと呟く。
「勝手に不幸と決めつけるでない」
「……」
マリアベルのその言葉に、アシュレーは不安そうに振り返る。その目を見たマリアベルは、ニヤッと笑って見せた……いつもの笑顔で。
「わらわの幸福は、アシュレーと共にある。ならばここでもまたわらわはいくらでも幸せになれる」
「……」
「幸い、飢える事は無いわらわ達じゃ。例えここに留まっていても、不都合な事は殆どあるまい」
そう言ったマリアベルだったが、ふとある事を思い付いた様に「んー」と顎に指をあてる。
「マリアベル?」
彼女のその様子に首を傾げるアシュレーを振り返り、妙に真剣な表情で口を開く。
「のぅアシュレー」
「うん?」
「もし、アシュレーが寂しいというのであれば……わらわがいくらでも産むぞ?」
「ぶふぅ!?」
噴き出したアシュレーを誰も責められないだろう。
「マ、ママママママリアベル!?」
「イモータルであるわらわならば、消毒も麻酔も何一ついらんからの」
「衛生面を気にする必要は無いのは幸いじゃの」などと呟くマリアベルの隣で、真っ赤になったアシュレーはもう一杯一杯だった。
「いっそこの地にわらわ達の子供だけの都市を造る位の勢いで!」
「一体何人産む気!?」
耐えきれずに突っ込みを入れたアシュレーを向いて、マリアベルがコテンと首を横に倒して見せる。
「何人て、とにかくいっぱいじゃが?」
「程があるよね!?」
「何を言っておるかアシュレー」
アシュレーの抗議をいなす様に、マリアベルはチッチッと指を振って見せる。
「わらわ達の命は文字通り永遠なのじゃぞ?確かに生殖能力は強いとは言えぬが、それでも圧倒的な時間に比べれば些細な事じゃ。ずうっと愛し合っているうちに、何時の間にやら子供の数が数千を越えておった夫婦の話なぞ、ざらじゃったからの」
「……」
今更ながらに、あらゆる意味で壮大なノーブルレッドの営みに、圧倒されて言葉も出ないアシュレー。
「それとも何か?」
そのアシュレーの硬直をどう取ったのか、ガバッとその場で床に手を突き、どこからとも無く取り出した白いハンカチーフを噛み締めてヨヨヨと泣き崩れるマリアベル。
「アシュレーは一度抱いた女は直ぐに飽きてしまうのか?」
「へ?」
「それとも、一度子供を産んでしまうと、もう女として見れなくなるというのか!?」
「いや、ちょ」
「もしくは、数万年後にロリロリボディーを脱却してしまったわらわには欲情せんとでも言うのかっ!?!?」
「人聞きの悪い事を叫ばないでくれぇぇぇぇぇ!!!!!!」
叫ぶアシュレーをクルリと振り返って、マリアベルはニカッと笑う。
「ならば何も問題無いの?」
「もう、どこから突っ込んでいいやら……」
疲れた表情のアシュレーに近付くと、マリアベルはストンと向かい合う形で腰を下ろす。
「マリアベル?」
その行動に、首を傾げるアシュレーに、マリアベルはフフッと笑って見せる。
「冗談じゃよアシュレー」
「冗談?」
「うむ」
マリアベルは頷いた。
「わらわの体は、残念ながらまだ初潮を迎えておらんからのぅ」
思案する様に呟くマリアベル。
「じゃから、今すぐに『目指せ我が子百万人計画〜わらわとアシュレーの愛の結晶達〜』は発動できぬ」
「あ、やっぱりそっちは本気なんだ」
何となく、生命のサイクル的な意味でやはり最終的にはそれ位子供を作る可能性がある種族である事は理解したアシュレーだった。
(でもまあ……)
結局、彼もマリアベルの事を心から愛しているのである。ならば、彼女を抱く事が苦痛になるという事は無いだろう。
(……腎虚は覚悟しておいた方がいいかも)
その代わりに数千年後に、腰痛で苦しむ自分の姿を幻視したアシュレーだった。
「まあ、それは一先ず置いておいてじゃ」
と、マリアベルが物を脇にどける仕草をする。
「うん?」
「わらわは体の関係上、あと短くて数百年、長ければ千年程はアシュレーの相手をする事が出来ぬ」
まじめな表情でその事を伝える。恐らく、実際に子供をつくる為の話なのだろう。アシュレーもその事を察して、その場で正座する。
「その数百から千年の間はただひたすらに、わらわの体の成長を待つ事になる」
「うん」
「その間はセックスレスになる。アシュレーは溜まりっ放しじゃ」
「うん……うん?」
なんだか話しの雲行きが怪しくなって来た。
「わらわとしては良人を、わらわの未熟で難渋させるのは心苦しい」
「え、いや、」
「そこでじゃ!」
グッと親指を立てるマリアベル。
「待っている間の数百年の間に前戯の練習をすれば、アシュレーの性欲は処理できて、わらわもテクニックの向上が図れる。まさに一石二鳥じゃな!」
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!!!」
やはり嫌な予感は的中した。
「言ってる事があんまり変わって無いよ!?」
「何を言うか、前戯と本番は天と地ほども違うではないか。具体的には十月十日後のわらわの体の塩梅とかが」
両頬に手を当てて「いやん?」と体をくねらせるマリアベル。
「と、言う訳で早速修練に入ろうではないか」
「いやいやいや、話を聞いて!」
「具体的には口や手や胸や尻等で」
「マリアベルって意外と耳年増だよね!?」
叫ぶアシュレーの両肩に手を置き、マリアベルはスッと唇を寄せる。
「のう……」
「!!」
急に真剣な言葉を紡いだその桜色の花弁に、思わず魅入るアシュレー。
「やはり、一番最初にするのはこれじゃろう?」
呟いたマリアベルは、どこと無く照れた様子で笑う。
「やはり、何よりも先にアシュレーとの愛を確かめたいからの」
「僕も……そう思うよ」
その表情を、アシュレーは可憐だと思った。
「アノ〜」
「「!?」」
掛けられる筈の無い突然の声に、ビクンと肩を上げるアシュレーとマリアベル。慌てて振り返った先には、声の主リグドブライトが居た。
「エット、オ邪魔デシタ?」
あまりの気まずさに、顔を真っ赤にして固まるアシュレーとマリアベル。
「い、いや、そんな事は無いよ!?」
いち早く復活したアシュレー。しかし、その声は完全に裏返っている。
「ソ、ソウデスカ?」
「う、うん」
頷いたアシュレーは、漸くある事に気が付く。
「えっと、どうしてここに来れたんですか?」
そう、リグドブライトは元々、ファルガイアからシャイターンに来ることは出来なかった筈だ。が、
「ア、ボク昨日カラズット『はるけぎにあ』デ酔イ潰レテイタノデ」
「ああ、納得」
答えは意外と単純だった。エルフが出した酒は所謂御神酒の類である。自らが崇拝する『大いなる意志』への供物的な意味もあったのだろうが、多くのエルフの意志を抱えたそれは、意識の無いリグドブライトを半日ほど顕現させておく力はあったらしい。
「戻ッテ来タびだーしゃるサンニ話ヲ聞イテ、急イデ此処ニ来ヨウト思ッタノデスガ、瘴気ガ強過ギテ、ナカナカ入ル事ガ出来ナクテ……」
そう言って、頭?を下げるリグドブライトに「いえ、気にしないでください」と手を振るアシュレー。
「それじゃあ、ファルガイアに帰る事は出来るんですね?」
「ハイ」
頷いたリグドブライトは、その場でアシュレーとマリアベルを乗せる為に体を巨大化させる。
「さてと……マリアベル?」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
アシュレーに声を掛けられて、ピクンと漸く反応したマリアベル。
「さっ」
「ふぇ?」
差し出された手に、一瞬戸惑う彼女を見て、クスリと笑うアシュレー。
「帰ろう?」
アシュレーのその言葉に漸く事態を実感したのか、マリアベルはパアッと華が咲く様に破顔する。
「うむ!」
元気良く頷いたマリアベルを抱きしめながら、アシュレーはふと思いついた様に「そういえば……」と口を開く。
「何じゃアシュレー?」
「ファルガイアに帰ったらさ」
「うむ」
「何を最初にしようか?」
アシュレーのその言葉に、マリアベルも「うーん」と考える。頭の中を流れる『やりたい事』はどれもとても魅力的で何をすればいいのか迷ってしまう。だが、ふとアシュレーの顔を見上げた時、マリアベルが一番最初にしたい事は決まっていた。
「ファルガイアに帰ったらの」
「うん」
「わらわは一番最初に、『ただいま』を言うアシュレーに『お帰り!』って言いたいのじゃ」
「……」
「そして、わらわもアシュレーに『ただいま』と言いたい」
スッと見上げた彼女の瞳がアシュレーの心を捕える。寄る辺の様な存在でありながら、ただ待つだけではありたくない。自分も隣に立ち、共に疾り続ける存在でありたい。そんな彼女の、マリアベル・アーミティッジらしい決意表明。アシュレーもまた、それに応える様に頷く。
「うん」
そして、静かに、彼らしい素朴な笑顔で微笑む。
「僕も、マリアベルに『ただいま』って言いたい。だから、」
自然と心と体が触れ合う距離で、アシュレーもまた思いを紡ぐ。
「マリアベルの『ただいま』を一番最初に聞かせて?」
「うむ!!」
頷いたマリアベルと二人。重なった二人影の先には彼方にある故郷、『ファルガイア』の温かな日差しが今日の始まりを告げていた。
No, it is Reignition of WILD ARMS 2nd.
こんにちわ。もしくはこんばんわ。あるいはお早うございます。ハイルマリアベル!ノヴィツキーです。
取り敢えず一言
完結だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
はい、OK
もう落ち着きました
さて、今話と言いますか、このエピローグを持ってTrinicoreは完結と成ります。ご愛読ありがとうございました<(_ _)>
初投稿が十月十七日ですので、やく一カ月強程でしょうかね。このサイトに投稿する様になって。なんだか滅茶苦茶密度の濃い一ヵ月半だったような気がしますw
ネットに投稿する様になって結構経ちますが、生まれて初めての長編の完結であり、自分としてはとても感慨深いものがあります。……で、良いんですよね?
い、いやー、なんて言いますか、無事完結したは良いものの、プロローグとエピローグ入れて全八話のこれは長編と言っていいのかと自分で物凄い不安になったり(汗)
い、良いよね?うん良い。良いって俺が決めた(オイ)
何ともまあ、取りとめの無い文章だなと改めて思ったりしております。
っと、取り敢えず自分語りは一旦後に回して(結局最後までやるんかい)感想返しをさせていただきます。
tagi様
三度目の感想ありがとうございます。なんだか何度も感想を頂けると、自分の作品を待って下さる方も居るのだと実感と共に力も湧きました。
執筆が何とか滞らなかったのも感想のおかげです。本当にありがとうございました。
>WAシリーズは旅人の物語
自分も、こうやって作品を書くうちに、改めてシリーズを通して見る旅人の雰囲気を感じました。
独特の寂寥を伴う味わいは、ハッピーエンドが安息の地のみでは無く、また新たな船出であるというこのシリーズならでわのものだと思います。
>この世の全ては矛盾で出来ている
何となく、人と言う種族そのものを見ると常にそれを感じずにはいられないですね。個人としても国家としても矛盾だらけ。
しかし、矛盾が無いと成り立たないのも又人間。本能だけで生きていれば矛盾なんて発生し得ないですしね。
>あの人達に、魂の安息
原作のタバサはたぶん、才人という拠り所を手に入れるのだと思います。ですが、この作品のタバサは間違い無く真実を知ってしまったが故に辛い現実を直視する羽目になるでしょう。
ジョゼフも温かな終わりではなく、つらく厳しい船出に又再び。
アンチ作品を書いた作者がこんな事を言うのはおこがましいかもしれませんが、その上で手に入れられるのが安息の地なのでは無いかと勝手に思っています。
真実を知らずに手に入れた安息の地は、個人的には滑稽とも思えたので。その代わり、二人とも才人とシェフィールドという港町を手に入れる事が出来たと、勝手に信じています。
一月ほど続いたこの作品ですが、無事完結させる事が出来ました。改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました<(_ _)>
セブン様
三度目の感想ありがとうございます。同上(待て)
ふざけた事書きましたが、本当にありがとうございました。何とか無事に完結出来て、少しだけ感想を下さった方に報いる事ができたかなと思っている次第です。
>戦争を回避……とまではいかない
ですね。ロマリアはガリアの次の虚無の候補者を握っていたので、原作通りジョゼフを殺しに来ると思います。
経済的な意味で引けないのはトリステインやゲルマニアもそうだと思います。
但し、ジョゼフ王がこの作品では健在かつやる気もある状態なため、原作よりも一方的では無い、その代わり凄惨な戦いになると思います。
タバサはタバサで安息の地を手に入れる旅に出るのでしょう。ジョゼフと言う敵を殺しても辿りつける、そんな安息の場所を探して。
本当は、ジョゼフの庇護下にある今が、一番安全なのでしょうが、たぶん彼女はそれには気付かないと思います。
>十分お節介は焼いてますがw
作者としても匙加減が難しかった所です(苦笑)。おせっかいがいらざる斟酌に成り過ぎる前に二人がファルガイアに戻ってくれて良かったと思っております(オイオイ)
こんな作者が無事に完結出来たのは感想のおかげでござーます。本当に、ありがとうございました。
さて、此処から再び自分語りモードです。ぶっちゃけ作者の公開(後悔)オナニーショーなので見なくても大丈夫&無駄に長いです。
Trinicore
某所に居た際はWILDARMS0という題名でやっておりましたが、結局ゼロの使い魔風味が薄れまくった為、第変更しました。
題名のTriniは3。coreは文字通りコア。意味としては三つの世界というの意味で、密かにストーリーのエピローグを暗示しておりました。うーん、厨ニ病w
風呂
シリーズ通して風呂の出番がやたらと多いです。全体の内四話くらいは風呂が出ていたはずです。
いやー、ラブコメの風呂は淫らでないエロスがある様な気がしてつい筆が乗ってしまって←バカ
ガイアコア
ご存知地球でございます。ダンダイラムの加速を行った為外界が勝手に進行。結果、ガリア戦争期の世界扉の開放と共にコア接触が起きたという設定です。
全体としての事はこんな所ですね。次は、キャラ解説を少しだけ。
アシュレー
主人公。作者が好きな熱血タイプですが、単純な熱血では無くごくごく一般的な人が持っている共感が可能な非情さを持っている所が個人的にはポイントです。
初めてゲームで触れた主人公で、今でも一番好きな主人公ですね。斜に構えがちの作者的には、何となく大切なものを思い出させてくれる存在です。
実は一番書くのに苦労したキャラでもあります。作者は熱血とは程遠いですからw
その分、時間をかけて接したキャラなので、思い入れはたぶん一番強いです。
その後予想:たぶん、マリアベルの尻に敷かれています。但し、マリアベルはマリアベルでアシュレーには弱いので勝率は五分五分だと思います。夫婦生活有段者ですし。
マリアベル
作者が好きなキャラパートツー。金髪ロリババア吸血鬼という、何か一回は見た事ある設定。作者は当然マリアベルが好きなのですが、彼女以外のロリババアで琴線に触れたキャラが今まで居ないんですよね。なんでだろ?
マリアベルはアシュレーとは逆にとても書きやすいキャラでした。個性が強く、コミカルな動きの多いキャラですが、同時にシリアスもきっちりこなしてくれる。正に御助けキャラ。
反面一緒に居るアシュレーのキャラを立たせるのに序盤は四苦八苦する羽目に。バランスの難しさと言いますか、漫才のボケと突っ込みのバランスの大切さを学ぶ事に。
あと、密かに作者の代弁者でもありました(密かでも無いですかね?)。男性のキャラに言わせると正直アンリエッタのシーンとかはきついものがあったのですが、マリアベルに言ってもらう分にはそこまでくどくならない不思議w
ちなみに、某所では「えっちで乙女」と呼ばれてました。自分でもぴったりだと思いました。
その後予想:引きこもり生活を脱出して、一度アシュレーと旅に出るアフターです。昔の戦場や新たな世界を旅するのも又一つの趣味に成りそう。寄る辺とも言うべきアシュレーが居るので、少しだけ外に出る勇気があります。
マリナ
WA2で一番割を食ったキャラ。
勝手な推測ですが、彼女は良くも悪くも普通の女性なのだと思います。だからこそ、世界を護る戦いと言う非日常に居たアシュレーの港と成る事が出来たのでしょうが、同時に許容できる範囲も又とても普通なのだと思います。
たぶん、二人が若い間はアシュレーが飛び出していき、マリナが迎えるみたいな役割は出来ていたと思います。そして、二人一緒に年を取って行けばアシュレーが飛び出す回数も減っていたのだと。
今作の設定で、彼女はアシュレーを受け止めきれなくなる(と言う設定)ですが、正直、作者の無茶振りの割を喰った感じで、彼女は悪くないです。
彼女は既に亡くなっている設定なので、その後予想は無いです。
リグドブライト
中途採用
最初、オリジナルのガーディアンを予定していたのですが、プロローグからオリジナルキャラではWA2ファンの方にもきつい作品になると思い中止。
急遽採用しましたが、ガーディアンの中ではトップクラスに個性付けがしやすいキャラなので(片言とかえび味とか)意外とすんなりプロットに組み込めました。
その後予想:又元の日々。但し時々逸般人と吸血鬼の夫婦に呼び出されてこき使われています。
シエスタ
ゼロ魔で一番好きなヒロインキャラ。あまり個性がある方ではないと思いますが、逆に周囲が鋭角すぎてそれが幸いしている様に思えます。
Trinicoreとしては序盤の案内役的な感じです。トリステイン脱出はハルケギニアの地理的な意味でも絶対必要だったため前半で出番終了でしたが、彼女が居ないとトリステインでの案内人が他にあまり思い浮かばない状態でした。
たぶん、彼女じゃなかったらコルベール先生かフーケに御鉢が回ってたかな?
その後予想:原作通り。戦争とも直接かかわりが無いのでそこまで変化はないと思います。
ヘルマン&アレックス&レックス
テスイカツ。あまり個性を出し過ぎると、それはそれでストーリーの邪魔になるので、適度にフェイドアウトさせるのに苦労しました。
その後予想:うーん。たぶん、変りないと思います。モブのまま無事定年退職。トリステインって外征だけですからね。ある意味作者の目標地点。(現実的に)
才人&ルイズ
この作品ではヘルマン達よりも出番無かったかも。まあ、彼らのストーリーが見たい人は原作読みますよね(タブン)
恐らく、大体はストーリー通り。但し、ガリア戦で生き残れるかは微妙だと思います。
その後予想:ノーコメント。作者的には「こう」という終わりがありますが、言っていい事と悪い事(故に自分はアンチ作家なのでふ)
コルベール
同じく出番は(以下略
アシュレーとマリアベルが置いて行った機器の内、銃器の類はたぶん解析できますが、マリアベルの置いて行った設計図は多分一生かかっても解読できないと思います。
その後予想:数千年、もしくは数万年後、『科学の父』と呼ばれた彼の私物の中からロストテクノロジーの設計図が発見される筈。本人はたぶん原作通り。
オスマン
書く事無いね。うん。
その後予想:たぶん原作通り。
フーケ
ある意味割を食った人。一巻のアレは正直穴が多いです。別に原作は推理小説では無いので構わないと思いますが、アシュレーとマリアベルが見逃すかと言えばそれも無いと思い、かなり噛ませ的に。
その後予想:たぶん原作通り。
アンリエッタ
たぶんゼロ魔で一番割を食ったツートップの片割れ。
書くこと多いんですけど、内容がアレに成るので、逆に短く成ります。
個人的には天才だと思います。ただ話をするだけであそこまで人を自在に操れる人って現実に居たら怖いです。
但し、政治的才能は無いと思います。原作でも戦費の捻出は借金でしたし、損得で動かず基本的に感情と雰囲気で動いてる感が。
だから逆に怖い。政治的失点を全て葬り去れる話術とかカリスマとか、最早洗脳です。
その後予想:ノーコメント。これ以上書くとボロが出ます
アニエス
たぶん、ゼロ魔で一番割を食ったツートップの片割れ。
授業中のコルベールに剣を抜く所とか、コルベールへの批判とかその他諸々。正直、お前が言うなと思った事数知れず。最初書いたプロットでアシュレーが彼女に言う筈だったセリフ。
「ただ虐げられていた側から、虐げる側に変わっただけじゃないか!」
その後予想:同じくノーコメント
ジョゼフ
ゼロ魔で一番好きなキャラです。同時にいろいろ思う所もあるキャラなので、積極的にいじりました。キャラ壊れていないかな?
その後予想:戦争で勝利後、恐らく名君として大往生……は、贔屓目ですね。たぶんガリア戦争は勝利したと思います。但し、その後は内政やブリミル教との戦いに明け暮れる事になると思います。あと、美人のかみさんもらってます。
タバサ
嫌いではないですけど、シャルルの真実を知ったらどうなるの?という疑問は正直尽きないです。なので実行してみました。
その後予想:たぶんジョゼフの首を狙う日々。忠告通り政治的な勉強に励むかは……五分五分だと思います。少々近視眼的なキャラですしね。
ビダーシャル
後半の案内人。ある意味シエスタの後継機。作者はガリア戦終了時点までを元にプロットを引いたので、キャラがあまり定まっていないかも。この辺は反省点。
その後予想:ジョゼフと共に今度は政治の舞台でブリミル教と戦う日々。遠い世界の友人との思い出に、時折思いをはせる感じだと思います。
っと、キャラ個別はこんな感じですね。思いの外長くなった(汗)
思えば、この作品を書き始めた理由は
・WA2のSSが無い!
・マリアベルがヒロインの作品が無い!
↓
・だったら自分で書きゃあいいじゃない!
という短絡的極まりない発想からスタートしました。現在エター作品一つ抱えているにも拘らず……ね。
書きながらも何度もプロットを書き直したり、動画でWA2を見直したりする日々でしたね。
何か尋常でない位にワードに触れました。
あと、実は第三話投稿後にデータが全て吹っ飛びました。イヤー焦った焦った。バックアップを毎日取っていたおかげで被害はゼロでしたけどねw
アレで消えてたらエタッてました。(笑い話に出来るのも完結したからですがw)
そんなヘタレ作者の戯言に付き合って下さった方にちょっとだけプレゼント!
まあ、ただのリクエストの受付なんですが(いらんわ)先着三名までで。WA2関連短編でクロスなら相談してくらはい。下の事情もありまして。
こんな作品からでも、誰か「WA2をプレイしてみよう」「WA2を書いてみよう」といった方が出れば、それはもう望外の喜びです。
そしてあわよくば「WA2アルターコードF」とか発売されたりしちゃったりして!
現在、密かな野望は
「WA2の長編が読みたい?ならTrinicoreを読むといいよ」
「アシュレーとマリアベルが読みたい?ならTrinicoreだ」
みたいな感じでこの作品がWA2のアシュレーとマリアベルの作品の代表みたいになったりしちゃったりすればいいなと思っております。
まあ、これは密かな野望。
これからの予定ですが……絶賛燃え尽き症候群中(グデー
たぶん回復まで一年かかります(マテ
ってまあ、流石に冗談なのですが、来年一年超忙しいです。十二月になれば収束しますが。
一応外伝は書くつもりですが、何時に成るかな?
別離〜港の終わり〜
婚姻〜種族を越えた愛〜
の二本は書きたいな。
後、オリジナル作品とかいい加減設定だけ書いて投げ出したの多いので一つくらい書いてみるのも一興かな?
っとまあ、かなり行き当たりばったりですw
まあ、予定は未定です
此処からはお礼です。
まず、移籍希望の相談をした際に快く受け入れてくださいました管理人の黒い鳩様。ありがとうございました。
いろいろご迷惑をおかけしましたが、無事完結させる事が出来ました。何度もいただいたメール本当にありがたかったです。
また再来年あたり御世話になると犯行予告しておきますw
扉絵を書いてくださいました193様。ありがとうございました。
線画を拝見した時、完成絵を拝見した時、どちらもすごいテンションが上がりました。
扉絵に、釣り合う作品が書けたかは不安ですが、これからも精進して行こうと思います。
そして、この扉絵に恥じない作品を書こうと決意を新たにする次第です。
や。様。ありがとうございました。
剣ファイブ様。ありがとうございました。
セブン様。ありがとうございました。
えびうま様。ありがとうございました。
tagi様。ありがとうございました。
>>6様。ありがとうございました。
まさる様。ありがとうございました。
ゼロ魔好き様。ありがとうございました。
そして、この作品を読んで下さった皆様。本当にありがとうございました。
皆様の未来とWAに光あれ!!!
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m