SUMMON NIGHT
-A black successor -

 

 

第1話

 

音が聞こえる。何年ぶりだろう。

眩しいと感じるのは何年ぶりだろう。

暖かいと感じるのは何年ぶりだろう。

感じる物全てが懐かしい。

『マ…タ…』

頭の中に響いてくる。

どこかで聞いたことのある、機械じみた優しい声が。

『マスター』

「………うっ」

地面に手をつけ起き上がる。平からは砂のつぶつぶした感触を僅かに感じる。

「!?」

それは俺が過去に失ったもの、触覚。

つかんでみる。僅かに熱を帯びた砂は指の隙間をすり抜けさらさらと音を立てながら落ちていく。

なぜ俺は掴んでいるものが砂だとわかった?

なぜ俺は砂を認識できた?

なぜ俺は落ちる時の音を聞き取れた?

「…っ!」

なら味は?俺の舌は何かを感じることが出来るのか?

俺は夢中になって眼前に広がる水へと駆け寄った。期待と不安。比率表すならば10:0だったろう。

ただ無性に俺は願った。

また料理を食べられることを、また料理を作れることを。

水を飲み干す。

だが、そこに感じるのはほんの小さな刺激だけ。

甘い、苦い、辛い、しょっぱい、すっぱい…注意していなければ区別をつけることができないほど小さな刺激。

「…………………やはり、許されないか」

俺は期待しながらもどこかあきらめていたんだろう。

『マスター』

「…サレナか?どこにいる」

『右腕をごらんになって下さい』

袖をめくる。

そこにはブラックサレナに描かれていた紋章が描かれていた。

紋章が黒いことを除けば、まったく同じ。

『それが私です』

「なんだと?なぜそうなったか説明できるか?」

『不可能です、マスター。このあたり周辺にブラックサレナの反応はありません。AIである私だけがマスターと融合したようです。』

サレナでも説明不可能な事態が起こっているのか?

ランダムジャンプしたことが融合という事態を招くのか?

確かに過去、未来、場所を特定しないから別次元の世界に飛ばされるのは確率的には存在しているが…

『しかしマスター、利点もあります。先ほど感じたと思われる五感は私と融合したことにより治療が可能になりました』

五感が治療可能?イネス・フレサンジュでも不可能だったのにか。

『ナノマシンはそのほとんどが肉体および能力強化を目的としたものです。しかし、強化の目標ラインが高かったためナノマシンの改造に細胞が耐えられず壊死していきました。

しかしそこに指令役となる私が介入したことによりナノマシンの活動レベルを極限まで押さえています。よって現在のナノマシンの活動レベルは治療を目的とした最低クラスのものです。

破壊されかけて、傷ついている細胞を少しずつもとの状態に戻しています。そのためマスターの五感は戻りつつあるのです』

「それはつまり最終的には完全回復が見込めるということなのか!」

『…理論上では可能です。しかし………不可能です。
 
私に可能なのは生きている細胞の修復です。すでに壊死している細胞は戻しようがありません。しかしバイザーの補正なしに通常の生活を行うことは可能です。』

もっともバイザーをつければ並みの人間以上の感度を有することになりますが、とサレナは言う。

俺は…1人で生きていけるのか。

その事実は嬉しくもあり、正直…寂しくもあった。

五感が戻る。その事実はとてつもなく嬉しいが、同時に申し訳ないと思っていた。

俺の復讐で殺してしまった1万人以上の人間にどう謝罪すればいいのか、どうすれば許してもらえるのか、ただそれだけが今の俺の心の中を渦巻いていた。

『大丈夫ですよ…マスターを責めるものはこの世界にはいませんから』

つぶやく声は響いてこなかった。

 

「それでサレナ、ここは何処なんだ?」

『おそらくは平行世界、パラレルワールドかと思われます。この座標は私達の世界では海のはずですから』

やはり同じ世界ではなかったか。

なら…

「この島周辺を探索するぞ。それほど大きいわけでもなさそうだ」

ゆっくりと腰を上げる。

多少違和感を感じるが、サレナの言うように行動する分には問題はないだろう。

『ですが…すぐには出発できなそうですよ』

「全くだ。それなりに数はあるようだが…いいリハビリになるだろう!」

向かいの林から飛び出してくる。

数は7。いずれも見たことのない形だ。

水色の固体とも液体ともみえないなにかは鳴き声をあげて飛びかかってくる。

「遅い!」

固まっている3体に蹴りを放つ。

とっさのことで反応できなかったのか、クリーンヒットし林に押し返される。

一度に3体の仲間を失ったことで動揺したのか、他の4体の動きが一瞬止まる。

俺はその隙を見逃してやるほど優しくはない!

浜に落ちている細い流木を手にし

「木連式抜刀術…錬卦(れんけ)!!」

瞬時に目の前の4体も吹き飛ぶ。

例えるならそう、それは衝撃波。見えない塊が瞬時に敵を薙ぎ払う。

「ぐっ!」

さすがに、起きたての体に木連式はきついか…

だが、たった一度で腕の筋肉が張ってしまうのはさすがに情けないぞ、テンカワアキト。

ナノマシンがないだけでここまで衰退するのか、俺は…

『大丈夫ですかマスター!』

「ああ…問題はない。だが………サレナ」

『何でしょうか』

「俺が開けといったらナノマシンの活動レベルを本来のものに変えるんだ」

『!?なぜそのような危険な行為をするのですか!』

「たった一度の戦闘に耐えられない体など必要ないからだ。………おそらくもっと腕の立つ奴がいる。そいつと殺し合ったらまず確実に俺が死ぬ。」

ナノマシンの活動レベルを本来のものに戻すということは、細胞を破壊することと同義なのだ。

しかし同時に傷ついてもすぐに修復できる。朽ちるまで戦えるということ。

『………了解しました』

サレナとしてはアキトの命令は絶対なのだが…

『だからといってそうそう許可しませんから』

AIにも譲れないものはあるのだ。

感情とは………今更ながら俺も変なことを思いついたものだな。

あの頃は自然と話し相手を欲しがっていたのだろう。

我ながら女々しいものだな。

「ふっ…」

思わず笑みがこぼれる。

こんな状態になっても笑えるのか、俺は。

「さすがにこの程度の疲労は放っておけば問題ない…連戦は厳しいだろうがな」

何にせよ此処にいるだけで襲われるなら何処にいても変わらない。

集落を見つける事ができれば襲われる事はないだろう。

「とりあえず島の中心を目指すとするか」

『了解しました、マスター。…島の全形を計測………終了。ここから北北東1200mが中心と思われます』

「………本当に狭い島だな」

歩き出す2人。

正確には歩いているのは1人だが。

そんな1人をずっと見ている影が1つあった。

アキトは気付かなかったのか、見逃したのか…

(攻撃してこなかったなら、少なくとも何かする気はないだろう)

との事だった。

 

林の中を草をかき分け進んでいく。

獣道を進んでいるような気分だ。

「サレナ………もう少しまともな道は無かったのか?」

『この島には整備された道は存在しません。なので最短の道を検索した結果、この道が引っかかりました』

いい加減同じような道に飽きたのかアキトが尋ねる。

疲れは感じていない(むしろ復活した感触を楽しんでいる)のだが、なにぶん心がついてこない。

『後約80mで到着ですので我慢して下さい』

「はいはい…」

 

開けた場所に出る。目の前には泉が広がっている。

その側に真っ白な建物が建っていた。

その景色は神秘的な美しさを放っていながらも、どこか寂しい雰囲気を醸し出していた。

おそらく集会所として利用しているのか、獣道というには大きくちょうど人間が歩く幅の道が四方に出来ている。

「この道の先に集落があると考えていいのだろうか?」

『その通りだと思われます。最近立ち寄ったのか、比較的新しい足跡が見られます』

確かに地面には足跡がいくつか残っている。

人間サイズのものだったり、獣の足のようなものだったり、かなり大きな足跡だったりとばらばらだが。

そしてそれぞれが道の方へ向かっている。

人間サイズのものが、北と西に。

獣の形が南に。

大きな足跡が東に。

「サレナ。ここからどの集落が一番近いかわかるか?」

『正確な位置はわかりませんが、ここは島の中心部なのでどこを選んでも変わらないと思いますが』

「そうか………」

くるりと反転し、歩いてきた道のほうを向く。

正確にはやや右にそれた茂みを睨む。

「とりあえず………出てきたらどうだ。後ろをつけて来たことはわかっている」

何の反応もない。

ただ茂みが風に揺られるだけのように思えた。

ヒュン!

いきなり黒い大剣がアキト目掛けて飛んでくる。

アキトはそれを左斜め後ろに半歩下がって大剣の柄を握り一回転し威力を殺す。

「攻撃する気配がなかったから気に留めていなかったが………いい加減姿を見せたらどうだ」

茂みから出てきたのは、真っ黒のワンピースで身を包んだ黒髪の少女だった。

年齢で表すなら12,3歳といったところでナデシコAの頃のホシノ・ルリと印象が似ている。

感情を何も映さない顔がまっすぐにアキトを見つめている。

そこまでなら特に変わったところはなかったのだが、彼女の頭上には先ほど飛んできた黒い大剣に酷似した物がいくつも浮いているのだ。

その少女を守る騎士のように。

「………誰だ、君は」

「名前はありません。私はこの子達を、復讐の大剣ダークブリンガーを統べる者」

名前はないと少女は言った。

「私はこの子達が思い残すことがなくなるまで見守り続けるだけの存在」

するだけの存在、それしか存在理由がないと少女は言った。

「この子達は、あなたに惹かれた。あなたの持つ底の知れない黒に………闇に」

「……………」

「この子達があなたに主になって欲しいと叫んでる。だからあなたの力を見る」

『……………』

「これは私の存在を賭ける。負けたら私の理由を失う。だから…あなたも賭けて。あなたの理由を」

負けた方が命を捨てろ、ということなのだろう。

そこには何のメリットも理由もない。

ただ強引に押し付けられただけの賭け。

受ける理由も、価値もない無益な、そして無駄な戦い。

しかし、少女の目は僅かな感情の炎が揺らめいていた……………決意、そして消えてしまうことへの怯え。

それに気付いたアキトは、見なかったことにするなど出来なかった。

ここは彼女が満足するまで付き合ってあげようと。

「要は君に勝てばいいんだろう」

『申し込みを受けるのですか、マスター!こちらには理由がないのに!!』

反論してくるサレナ。

「サレナ………放っておけないんだよ、あの子が。ラピスやルリちゃんを前にしているようで」

それはサレナも感じていたことなのだろうか、口を閉ざした。

「俺は…甘いのかな」

嘲笑うかのように笑う。

その嘲笑はアキト自身に向けたものなのだろう。

…優しさなど、忘れたつもりだったのだがな。

「あなたは私を屈服させればいい。出来なければあなたが消えるだけだから」

「なら…始めようか。時間がないわけじゃないがな」

握った大剣を構える。

少女の頭上の剣がいっせいにアキトに刃を向ける。

少女が右手を振り上げ…下ろしたと同時に3本の剣がいっせいに飛んでくる。

2本の間を縫うように避けて1本を地面に叩き伏せる。

「木連式抜刀術…錬卦、3分咲き!」

衝撃波が正面の少女を捕らえる。

が、避けた2本の大剣が瞬時に少女の前に平行に並び壁となる。

衝撃波を受けた大剣は刃が欠けたものの、少女に傷1つ付けなかった。

同時に少女が左手を薙ぐ。

今度は倍の6本が横一列に並んで飛んでくる。

「…チッ!」

まず目の前の1本を叩き伏せ、できたスペースを通って一直線に少女に向かう。

(いま彼女の周りには刃こぼれした2本だけ…簡単に抜ける!)

人間離れした速さであっという間に少女との間を詰める。

「もらった!!」

大剣を振りかざした瞬間、少女の手に虚空から生まれた新しい1本の剣が握られる。

刃と刃がぶつかり火花が散る。

少女の細腕からは考えられないほどの力で押し返される。

互いに硬直する。

『マスター!後ろから5本来ています、回避を!!』

「くっ………」

力比べを諦め後ろに高く跳ねる。

すぐ後にアキトのいた箇所に大剣が突き刺さる。

さすがに体を貫かれれば、ナノマシンをMAXレベルにしても行動が制限されてしまう。

「すまんサレナ、助かった」

『マスターを補佐するのが私の全てですので』

アキトの周りが急に暗くなる。

太陽が雲に隠れたわけでも、いきなり夜になったわけでもなく。

空を見上げるとそこには何時の間に取り出したのか、数十という数の大剣が360度からアキトを狙っていた。

視界の端に映る少女が…両手を振り下ろした!

「……………開け」

『マスター!?』

「この状態で俺が多少の傷を負ってでも生き残れる可能性は?」

『……………ナノマシン設定レベルMAX』

 

ズドドドド!!!

 

言い表すならそれはまさに剣山。

言い表すならそれはまさに剣士の墓。

砂煙に囲まれて全貌はわからないが、恐ろしい光景なのは間違いないだろう。

普通に考えて生きて出られるほうがおかしい。

「木連式抜刀術…凱断(がいだん)」

ただ…アキトが普通じゃないだけなのだ。

中心部分から円を描くように刃が粉々に砕けていく。

少女がアキトを目視で確認した瞬間、一瞬で間合いを詰められた。

アキトはただ横に剣を薙ぐだけ。

一度力比べをしたときは互角だったものが、まるで紙切れを相手にするかのように少女の剣がはじかれる。

体勢が少し崩れ、剣を持ち直したときにはアキトは目の前にいなかった。

「木連式抜刀術」

少女が上を向く。

逆行でまぶしいが、黒い点が見えた。

それは加速を続け顔を確認できるほど近くになった。

それは………アキトだった。

「墜隼(ついしゅん)!!」

とっさにかざした大剣が、重力に乗って加速した剣を防ぎきることも出来ずに………2つに折れ、アキトは少女を貫いた。

 

『ナノマシンレベル調整………治療のみに専念』

サレナがナノマシンの活動レベルを落とす。

同時にかなりの疲労感がアキトを襲うが、ここで倒れるわけにはいかないのだ。

目の前には刃という力をなくして跪く少女が1人、アキトを見ていた。

アキトは少女の目の前にしゃがみこんで問う。

「俺は君との勝負に勝った。俺は勝者として何をすればいい?」

「………ただ一言、力をよこせと仰ってください。今のこの子達の主はあなたです」

左手を差し出す。

差し出した左手には透明で美しく加工された宝石が握られていた。

「これは?」

「これはサモナイト石というもので、あの子達を呼び出すのに必要なものです。」

『呼び出す?』

「はい。このサモナイト石を持って魔力を注ぎ込むことによって、魔力量に見合った数を召喚することが出来ます」

少女がサモナイト石を握りなにやら言葉を発すると頭上に1本の大剣が現れる。

いきなり、それも何もないところから現れたものだから唖然とする。

戦闘時も同じことをしていたが集中していたため特に気にしていなかった。

「残念だが…俺はダークブリンガーだったか?それの主にはなれそうにないな」

「なぜ!?」

「俺は魔力とか全然ないし。召喚する側じゃなくて召喚されたっぽいからさ」

実際、まったく別の世界から来たアキトにとって魔力だの怪物だのにはまったく縁がないので当然といえば当然なのだ。

「だからその石は君が持っていてくれ。それは…君の全てなんだろ」

そういって軽く笑う。

バイザー越しにもわかる、とても柔らかくて優しい笑顔。

しかし彼女は想像以上の堅物だった。

「なら、私を使役して下さい。私ならあなたが石に語りかけるだけで出てこれます。そして私がこの子を使役すれば間接的ではありますが、この子達の主はあなたということになります

この子達があなたを主と定めたならば私はあなたの物です。私にとってはあなた…いえ、主が全てですので」

『何勝手なこと言ってるんですか!マスターをマスターと呼んでいいのはこの私だけです!あなたにその資格はありません!!』

思わぬ所からの反論。

サレナの声が頭の中で反響して地味につらいのだ、これが。

「しかしこれは契約なのです。主は私に力を示し、私はその力を認めたのです。」

確かに少女の言うことは正論だ。

自分よりも上のものには従うというのは何時の時代のどんな場所ででも決まりごととして存在していた。

「では、あなたは主を守る力を欲さないということですか?

実際主はこの世界に来たものとして魔力を一切…とまでは言いませんが持ってません。

ですが敵には魔術を使用してくるものが多数います。その対処法がまったく無いというのはかなり危険なことだと理解しているはずです」

アキトは召喚術そのものに対して抵抗するすべを持たない。

術を掻い潜り術者を叩くのが現在でもっとも有効な手段なのだろうが、同時に危険が伴うのだ。

しかし、こちらに召喚術というカードがあれば対抗手段は広がる。

「戦力が増えるのは喜ばしい。けれど主を独り占めできなくなるから私を拒むのでしょう?」

『っ………そんなことはっ!』

「あるのでしょう?」

図星だ。

前の世界ではアキトの周りにはラピスを初めとする女性が多くいたのだ。

サレナはそれを表には出さなかったが不快に感じている節があったのだ。

だから内心では、この世界でアキトと二人っきりで生きていけると思っていたのにこれなのだ。嫌にもなるだろう。

「しかし私と主が正式な契約を結ぶことであなたにも得はあります」

『………たとえばどんなものですか』

「あなたが実体を持って主と会話したり触れ合うことが出来るようになります。

これは私の特性なのですが、私が魔力を注ぐことによって確立していないものも確立することが出来るようになるのです。

生身を持たない私や、あの子達が物質化できるのもそのせいなのです」

だからサレナも魔力をもらうかすれば1人として存在できるのだと。

「つまり俺とサレナの融合が解けるということなのか?」

「いえ、そういう事ではありません。その…サレナ?…が望んだときには融合は解除されますが魔力にも限界があるので時間制限がかかります」

しかし融合が解除されている間も、アキトとサレナは線で繋がっているようなものなのでアキトが傷つくとサレナも傷つくということなのだ。

だが繋がっているということはナノマシンの制御は問題ない。むしろ遠隔操作が出来るようになるのだ。

メリット、デメリットのことを考えれば十分お得だろう。

「しかし半永久的に確立できるようになる方法もあります」

『それはどんな方法ですか?』

「……………サレナが私を取り込むことです…」

それは自分という存在を消すということ。

自分の持っているもの全てを相手に託すこと。

「そうすればサレナ自身の魔力として所有でき、主と融合することで主もまた魔力を持ち、あの子達を扱えるようになります」

自分の魔力、自分の知識、ありとあらゆる自分のもの全てをサレナに与え、また、アキトに使役してもらうため。

どこか寂しそうに話す名前の無い少女。

「まて!そんなことをすれば君というものが無くなってしまうんだぞ!わかっているのか!!」

『そうです!そもそも私は何の了承もしていませんよ!?』

「私も………そろそろ眠りたいんです。もう私は誰の役にも立てないけれど………せめて最後ぐらい…我侭言っちゃ……………駄目ですか…?」

嬉しそうな、悲しそうな、どちらともつかない表情で話す。

ほんの数刻前まで何も映し出さなかった顔が、みるみる崩れていく。

なんと人間らしいことか。

言いたいことが山ほどあるのに、したいことがまだまだあるのに何も言えない、どう言っていいか分からない。

そんな気持ちがアキトもサレナも理解が出来た。だから何も言わなかった。

ラピスと、ルリちゃんと、ユリカと、アイちゃんと、アカツキと………みんなともっと居たかった。だけどそれを口にすることは1度もなかった。

許されないと思っていたから。自分が自分を許せなかったから。

アキトに好きだと、ずっと、私が壊れるまで一緒にいて欲しいと願っていた。だけどそれを口にすることは1度もなかった。

自分は機械だから。一緒になどなれるはずもないと知っていたから。

「私は1つの剣となって主の力となります。私はサレナと1つになって共に主の盾となります」

少女の体が黒く光る。

ああ、本当にいなくなるのかと…

ならば、俺のためにその身を差し出してくれる少女に、俺の出来うる精一杯の褒美を与えよう。

「………ツンベルギア」

「え………」

「ツンベルギア…君の名前だ。最後ぐらい名前を呼んでやりたいからな」

ツンベルギア…それは黒い瞳の意味を持つ花。

目の前の少女のためだけに、ラピスのように自分のためにつけた名前ではなく、少女を少女としてみるために。

「ツンベルギア………私の…名前、ツンベルギア………」

信じられないという顔で何度も呟く少女、ツンベルギア。

どんどん黒い光が飛び出してきて、空に舞い上がっていく。

「俺は、テンカワ・アキト」

『マスター?』

「最後くらい名前で………呼んでほしいから」

俺は笑えていただろうか。

最後の最後、ツンベルギアに向けて。

笑えていたのだろう。

最後の最後、ツンベルギアが笑っていたのだから。

 

 

「ありがとうございます………さようなら。主テンカワ・アキト様。友サレナ…」

 

 

ほんの前までツンベルギアのいた場所には透明なサモナイト石と黒い剣のペンダントが落ちているだけだった。

黒い少女の姿はどこにも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがきのようなもの

相変わらずぐだぐだだったりします、愚か者です

まず木連式の説明をしたいと思います。嫌だったら読まないでくださいorz

錬卦………要するに居合い抜きですorz
     
      振り抜き方に縦と横との二種類がありますが劇中では横薙ぎです。めちゃくちゃ範囲が広いですがジャンプされると簡単にかわせます

     ただそれなりに速いし不可視なのでまずよけられません

凱断………某忍者アニメの白い目の人が使う360度死角なしの防御とカウンターを兼ね備えたものです

     ただナノマシン解放状態じゃないと使えません。高速回転+高速で剣を剣で薙ぐんですから通常時だと腕が攣ります、間違いなく

     あとダークブリンガーが粉々になったのは1つの剣に対して何10と剣を叩き込んだからです

墜隼………瞬時にして上空に飛んで地面に向かって直滑空するという常識ハズレの突きです

     重力に逆らわずに一直線なので破壊力、貫通力はピカイチです

     隙が多いので決定的な隙を相手に作らせるか、何かを目隠しにして奇襲するときなどに使われると思います

アキトが使う召喚術はダークブリンガー1つに絞りたいと思います

アキトがダークだし、私自身サモナ3では大好きな召喚術だったので(オイ

アキトが跳んだ時間としてはアティ達が流れ着くほんの前です

というかアティを登場させるかレックスにするか、それとも両方か結構本気で悩んでたりします

愛もいいけど友情もなーとか、二人出したらシャルトスどうするかとかetcetc...

とりあえず生徒はベルフラウにしようかなーと思っていますが、これがいい!というのがありましたらメールくださいな

変な部分見つけてもメールください。私のやる気が更に低くなります(笑)

最後まで読んでいただけたら幸いです





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