ライ Side
夢を見ているんだと理解した。
「はぁ…はぁ…」
その夢では僕はルルーシュを抱えて逃げている。
覚えがある、確か・・・
「ライ、俺のことはいい、お前だけでも逃げろ」
「そんなことできるわけないだろ? それに、今回は僕の所為なんだから」
「いたぞ!」
「「「待てーーー!!」」」
とんでもない数の人達に追われ、自分の無知に後悔していたな。
確か始まりは・・・・
生徒会室で文化祭の各クラスの出し物のチェックをしていた。
中には見知らぬ言葉がいくつもあり、ミレイ会長を始め他ルルーシュ達に質問していた。
そんな中、コスプレ喫茶のコスプレが何なのか質問したら、
ミレイ会長が
「実際にコスプレをしたほうが理解が早いわよ」
と、言って生徒会室はコスプレのお披露目会となった。
このとき、なぜかルルーシュが鬱な表情をしていたのかわからなかったが、
すぐに理由がわかってしまった。
「これを・・・・着るのか?」
僕がそうつぶやいたらスザクが子供のように答えた。
「そうだよ、あれ以来着なかったから楽しみだよ」
スザクの言葉が耳に入らなかった。
「だからって、お前はそれを着るのか?」
ルルーシュは呆れた表情でスザクをみる。
「そうだよ、こんな機会がなきゃ着ることがないからね」
僕とルルーシュはため息をつき、意を決して着替え始めた。
「うわー、ルルもライ君もすごく似合ってる」
「ぐっ!!」
「出来れば、その逆の言葉が欲しかった、それより、
ミレイさん・・・これって男女逆転祭りと同じでは?」
「何いってるのよ、私達女性陣の格好が男の格好に見えるの?」
「見えませんが・・・というより男女逆転祭りもコスプレの一種では?」
「甘い、甘いわよライ。その二つには交わる事が出来ない境界線があるのよ」
「・・・・はぁ?」
あまりにもミレイが自信満々に力説するので、
質問をあきらめたライ。
僕とルルーシュ以外はノリノリだった。
「ルルーシュもライもせっかくの機会だから楽しまないと損だよ」
「なんで、お前はチアガールの格好で平気なんだ?」
「なんで、君はチアガールの格好で平気なの?」
僕とルルーシュは同時にハモる。
正直言って、スザクの筋肉質の体とチアガールはミスマッチにも程がある。
リヴァルは何かの女子の制服にしてはおかしい服を着ている、
しかもノリノリだ。格好はスザクよりマシなのが救いだが。
それに加えて、女性陣は目のやり場に困る格好だ。
ミレイさんはナース服、しかもスカートがかなり短い。
シャーリーとカレンはバニーガールで体のラインが良く分かる格好だ。
ナナリーとニーナはなんかファンタジー系の格好だからまだマシだろう。
ミレイさんとナナリーはノリノリだが、カレン達は恥ずかしそうだ、
だがそれ打ち消すために、僕とルルーシュを褒め始めた。
「それにして、二人もすごく似合ってるわね」
「そうね、女として自身無くすわ」
カレンに続いてミレイさんも僕とルルーシュを弄り始めた。
「ルルのウエディングドレスもライ君のチャイナドレスもすごく似合ってるよ」
「「ぐはっ!!」」
「二人とも、似合ってるんだから自信もちなよ」
天然スザクの一撃で僕とルルーシュはひざを付き掛けるがどうにか耐えた。
「二人ともそんなに似合ってるんですか?」
無垢なナナリーの質問に、僕とルルーシュ以外のメンバーが
『うん、すごく似合ってる』
「私も見たかったです」
「「な、ナナリー・・・」」
このときデジャヴを感じた、僕とルルーシュは不謹慎だがナナリーに見られないことに少しホッとした。
無垢なナナリーまで、この格好を褒められたら精神的ダメージは計り知れない、
ルルーシュに関しては愛する妹の言葉は僕以上のダメージだろ。
「さてと、写真撮るわよ」
「「え゛!?」」
僕とルルーシュの顔は真っ青になっていく。
「何驚いているんだ二人とも、せっかくの記念なんだから」
スザクは僕達のリアクションに驚いて口にした。
「何の記念だ!?」
ルルーシュが叫ぶと。
「逃げるぞライ!!」
「わかった」
僕とルルーシュはすぐにクラブハウスを出た。
だが、この時あまりにも簡単に出てしまったことに何も不信に思わなかった。
「ルルーシュ、この格好で外に出るのはちょっと」
「だが、クラブハウスにいるのはさらに危険だ、
それに更衣室の予備の制服がある」
「なるほど」
僕は納得してクラブハウスを出た。
が、出た瞬間ある放送で一気に後悔することになる。
『唐突ですが、今学園内を走っている美少女二人を捕まえると、
捕まえた人は二人の美少女からキッスがもらえます』
「なに!?」
「会長!?」
その放送で全校生徒は僕達を捕まえようと必死に動き始めた。
しかも、女子までやる気になっている。
「お姉様と呼ばせてーーーー」
「たっくさんかいわがってあげるわーーーー」
中にはというか追いかけてくる女子は変な扉をあけてしまった。
「くっそ、展開が速すぎる」
「まさか会長、僕達の行動を予測して、
あらかじめ放送室に録音した自分の声を流したんじゃあ?」
「おそらくな、全くこんな時ばかり機転がきく」
ルルーシュの息が切れ始めたため、僕はすぐにルルーシュを抱きかかえた。
「お、おい、ライ何をする!?」
『うおーーーーーーー!!』
『キャーーーーーーー!!』
とまあ、経緯はこんなものだ。
ルルーシュを抱えたことによって生徒が暴走してしまったのは計算外だった、
だが、今回は僕の所為でルルーシュはこんな格好をしてしまった。
そんな後悔をしていると、制服に着替えたスザクが追ってきた。
「スザク!!」
「スザクのあの格好、まさか、皆は自分達だけ制服に着替えた?」
「ごめん、二人とも、でも会長命令だから」
「「その割りに顔が笑ってるだろ!?」」
ルルーシュは被っているヴェールをスザクに投げつけた。
「スザク、それは高価なものだから気をつけろ」
「ええ!?」
スザクはとっさにそれを掴んだ。
僕はその隙に逃げ出す、その中でカレンが悔しそうな表情をしていた。
おそらくこのイベントを楽しみたいが病弱を演じなければならないため、
楽しめないのだろう。
僕はそんなことを思っていると、僕達に救いの手が差し出された。
咲世子が「ルルーシュ様、ライ様こちらにお隠れに」と、空き教室に導いてくれた。
空き教室にはナナリーが待っていた。
「ありがとう、ナナリー」
「はぁ・・はぁ・・・そうだね、ナナリーが咲世子さんに頼んでくれたのか?」
「はい」
ナナリーは笑顔で、僕達に近づき。
「お二人とも捕まえました♪」
「「・・・・」」
「おめでとうございますナナリー様」
その後、はめられた事に気付いた僕達、ナナリーがほっぺでもいいと頬を赤くしたら、
僕はルルーシュに睨まれたりして、今回の事件?は終わった。
ちなみに、僕とルルーシュはナナリーの頬に同時にキスをした、
ルルーシュが反対しようとしたら、ナナリーが悲しい表情をした為、
渋々ナナリーにキスすることを了承した。
これをみていた生徒会の皆の反応は
ミレイさんは楽しそうな表情
シャーリーとカレンは羨ましいそうな表情、
いや、カレンには怒気も含まれている。
ニーナは顔を真っ赤にしてみている。
リヴァルは会長のキスだったらなぁと口に出さず思っている。
スザクはおめでとうとナナリーを祝福?していた。
この時、僕は記憶が戻っていない為戸惑っていたが、
ナナリーの頬にキスをしたにキスをした後、なぜか自然に出来たことを不思議に思ったが、
サクヤによくしていたことだと今になって思い出した。
それから、景色が変わる。
中庭でナナリーと咲世子さんと一緒にお昼を過ごすことになった。
ナナリーは咲世子さんの料理を褒めていると、
咲世子さんが食べさせるという、ナナリーはそれにしたがって、
かわいく口を開けると、咲世子さんが僕に向かってナナリーに食べさせるフォークの柄を差し出した。
僕は反射的にとってしまった、加えて気配を消しながら僅かに距離を開けた咲世子さんい唖然としたが、
ナナリーは口を開けたままだ。
しかたなく・・・本当に仕方なくこの時はナナリーに食べさせた。
ナナリーが褒めると咲世子さんはわざとらしく、距離をさらに開けてナナリーに声をかけた。
「え? あれ?」
ナナリーは状況を理解しようと小首を掲げる。
その姿はかわいく、僕はすこし赤くなると、それにあわせてナナリーも事態を理解して
顔が赤く染まる。
「ライさん、ど、どうして・・・?
あーんだなんてえ、はずかしい・・・・」
「それは、ライ様に・・・、自分がナナリー様に食べさせたいと、
頼まれましたから」
と、楽しそうに嘘をいう咲世子に僕もナナリーも顔が更に赤く染まった・
そんな時、ナナリーの兄であるルルーシュが通りかかった。
「随分と面白い状況になっているな」
「ル、ルルーシュ!?」
「お、お兄様!?」
僕とナナリーは顔を赤くしたまま混乱した。
「こ、これには、そのなんていうか・・・・」
「ふっ、わかっている、どうせ咲世子の差し金だろ?」
「あら、もうばれましたか」
「そ、そうなんですか?」
「はい、ナナリー様。どうでしたか?」
「咲世子さん!?」
咲世子さんはナナリーの耳元でなにか言っていたが、
ルルーシュが本当のことを推理してくれたため安堵していて、
二人のやり取りに気付かなかった。
「全く、咲世子もあまり二人をからかうな」
「は。ルルーシュ様もこちらで昼食をなさいますか?」
「そうだな」
ルルーシュはそう言って僕達の傍に座り僕の顔を見る。
「まあ、折り紙の件があるから、今回は許そう」
「?」
ルルーシュの言葉に意味が分からなかったが、
4人で昼食をとる事になったと思ったら、スザクも通りかかり、
スザクも加わることになった。
何事かといいながらミレイさんがシャーリー、リヴァル、カレンとニーナをつれてきて、
結局何時もの生徒会メンバーで中庭でピクニックとなった。
ナナリーが僕に作ってくれたおにぎりを食べて、褒めてあげたら、
ミレイさんがからかってきて、それにリヴァルも加わりルルーシュの顔が引き攣り始めた。
スザクはそれを眺めて笑顔を浮かべ、シャーリーは顔を赤くし、カレンはなぜか機嫌が悪くなった。
これは、そんな生徒会で日常を送っていた過去の記憶。
迷惑かけたり、かけられたりしたが、それでも僕にとって大切な思い出だ。
記憶を無くした僕を受け入れてくれた皆。
他人にも世界にも興味がなかった僕に色を与えた人達。
そう感じながら夢が覚める感覚がやってきた。
すこし、残念だが僕は今の現実に戻り目が覚める。
「懐かしいな」
自分はこの世界にとって異物だと再確認される夢と同時に、
懐かしさを感じる。
「みんな・・・・」
もう、どんな事があってもあの日に戻ることは出来ない。
シャーリーが死んで、もうあの時のメンバーは揃わないのだと実感してしまう。
けど、生きている皆にもう会えない僕にとって皆との思い出を夢で見たことによって
気持ちがうれしくなった。が、それと同時にこれからどうするか迷ってしまう。
ゼロレクイエムで僕は死ぬはずだった、それなのに今は生きている。
最初は母と妹のために戦い、眠りに付いた後は黒の騎士団で、そして、ゼロレクイエムのため。
こうして見ると、今は自分というものがない。
今考えると、スザクと同様僕は死にたかったのだろう・・・・。
「全く、スザクに生きてくれと言っておきながら自分はこれか・・・・」
自身のことを思い返すと不愉快になっていく。
その感情を振り払いカレンダーを見る。
「今日は臨海学校初日だったな」
こんな顔で皆に見せないように気持ちを切り替え、着替えを始めた。
バスの中ではのんびりと景色を楽しんでいると隣に座っていたシャルが意外そうな表情で僕を見ていた。
「どうしたの、何か付いてる?」
「ううん、ちょっと意外だと思って、
ライって景色を見るのが好きなの?」
「うん、以前はあまり見る機会はなかったし、
その余裕はなかったからね」
王だったころは戦争をするために国を離れる機会があったが、戦争目的だから景色を見る気分は全くない。
記憶を失ったときは、ブリタニアの所為で綺麗な景色はほとんどなかった。
こうして自分がいる世界の景色をのんびり見るのは初めてかもしれない。
・・・・いや、一度だけあったな。
当時ナイトオブワンのネーベルスタンに息抜きするよう城を追い出されたとき、
戦争で奪った港都市まで足を運んだことがあったな。
当時は王としてではなく一般人として港を見て回った。
たしか、あの時は成り行きで海賊に協力することになった。
護衛として付いてきたナイトオブスリーは驚愕したが、
それを無視して、数日間海賊船で過ごした。
最初だけしか景色を堪能できなかったが、それでもあのことはそれなりに刺激的で
面白かったと今なら笑い話だと思える。
「そうなんだ」
「それに、海で遊ぶのは初めてだから少し楽しみにしてるんだ」
「へぇ…え? ライって海で遊んだことないの?」
他国と戦争をするとき海を戦場にすることはまずない。
先程言ったように港都市を手に入れてもあれ以来、いっていない。
ギアスをかけた部下に統治させていた為、査定などほとんどしていなかった。
そもそも、その都市に目をつけた理由は異国で攻めるときに必要だと思ったからだ。
「うん、生徒会の皆といく予定があったけど、
その機会はなくなったからね」
「ああ、あの写真の人達・・・ 」
「うん、皆楽しみにしてたけどね」
記憶を取り戻し、皆から僕のことを忘れるようギアスを使った、
自業自得だと自分を責める。
「じゃあ、たくさん遊ぼう」
シャルは笑顔でそう言ってくれた。
「そうだね」
僕も笑顔で答える。
そんな会話をしていると、回りから不穏な空気が漂ってきた。
(デュノアちゃんずるい)
(ランペルージ君の隣に座っただけでなく、あんな笑顔を向けてもらえるなんて)
(くっ、シャルロットのやつ、油断ならん)
なんか、唸ってる子もいるけど。
「やっぱり変かな、海で遊んだことがないというのは?」
「もう少し自覚しようよ 」
小声で呟いたけど、シャルは聞こえてたらしくなぜか呆れた表情をしていた。
それから、目的地である旅館に着く。
「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」
「「「よろしくお願いしまーす」」」
織斑先生に言われみんなで女将さん挨拶をする。
「はい、こちらこそ。今年の一年も元気があってよろしいですね」
やさしい雰囲気で言う女将さん。
「あら、こちらが噂の・・・、うちももう少し若かったら・・・」
なぜか僕の方を、見て頬を赤くした。
「生徒に手を出さないでください」
「冗談ですよ、おほほほ」
織斑先生がため息をつく。
「自由時間にこの辺を案内しましょうか?」
笑顔で言ってくれる女将さん。
確かにこの辺の地理に詳しい人が案内してくれるのは助かると思っていると。
「コラ」
「冗談ですよ、そうだ! うちの娘とお見合いはどうです?
将来この旅館の跡取りに」
「お見合い?」
懐かしい言葉だ、王だったころよく母上が持ちかけたな
と考えていたら織斑先生が女将さんを睨んだ。
「冗談ですよ、さて、部屋に案内します」
笑顔で受け流す女将さん。
その後、織斑先生だけじゃなく他の女子生徒が何人かため息をついていた。
Side out
女将との挨拶を終え、ライと一夏は千冬と山田に着いていった。
四人が来たのは『教員室』と書かれた張り紙が張ってある二つの部屋。
「ここがお前達の部屋だ」
「どっちが?」
「織斑は山田先生と同じ部屋だ、ランペルージは私と同じ部屋だ」
「わかりました。お世話になります織斑先生」
千冬の言葉にライは何の疑惑もなくい受け入れるが。
「いや、おかしいだろ、普通、俺とライが同じ部屋だろ!?」
一夏はすぐに疑問を口にした。
「僕達は男だよ一夏、世間の目を考えれば監視が必要だろ?」
「そ・・・そうか」
千冬が説明する前にライが先に説明した、
それに一夏は納得する。
「それだけでなく、お前達を個室にするとに就寝時間を無視した女子が押しかけるだろうからな」
「色々と面倒をかけてすいません」
「かまわん」
「でも、一夏はともかく僕の方にこないと思いますよ?」
ライは暗殺者ならともかくと内心考えて苦笑する。
「「「・・・・」」」
その言葉に三人は呆れた表情をし、ライはそれを見て頭に?が浮かぶ。
「ま、まあ、それより織斑、山田先生に迷惑をかけるなよ」
「お、おう」
「あ、あのやっぱり、織斑君と一緒で姉弟水入らずで―――」
と、言いそうになった山田を千冬はひと睨みする。
実は先日、どっちがライと同じ部屋にするのか二人は争った。
山田先生は姉弟水入らずで過ごしてくださいといったが、
千冬は公私混同をするべきでないと返すが、
織斑先生と織斑君なら大丈夫ですよとさらに返した。
話し合いでは決まらないと思い勝負をして決めることにした、
結果は千冬の勝ちで千冬がライと同じ部屋になった。
ちなみに勝負は公平で二人しか知らない。
「すごい豪華ですね」
「そうだな・・・・、ライ」
「何です?」
ライは部屋の外を眺めていると千冬は先程の会話で少し気になりライに質問をした。
「その・・・さっきの会話でお見合いの話が出てきただろ?」
「はい」
「お前はあまり動揺していなかったが、
お前は女に興味がないのか?」
ライはルルーシュやスザクの話になると表情が柔らかくなるため、
そっち系の人間なのかと疑問に思って質問した。
「違いますよ、
お見合いの話に動揺しなかったのは、
以前にも何度かそういった話があったから慣れてるんだけですよ」
「そ、そうか慣れてる・・・なっ慣れてるだと!?」
咄嗟に安心した千冬だが思いがけない言葉でさらに動揺した。
「ええ、12,13の頃から母がいくつかの縁談を進めてきましたから」
「12、13!?」
何度か、ライの縁談の話をきいたライの母は
ライを支えてくれる女性が必要だと思っていた為その話を受けたらどうかとライに持ちかける。
もっともそれ以上に妹の兄離れが目的だったが。
なにせライは妹のサクヤにはかなり甘い。ライはその自覚はなかったが。
その所為で、サクヤはかなりのブラコンである。
「まあ、当時はそんな余裕はなかったし、
自分には早すぎるから全て断りましたけど」
苦笑しながら言うライに動揺する千冬。
相手の女性達は皇族だから物腰は落ちついているのは仕方ないが、
ライにとってどれも同じように思えてならなかった。
「な、中には気になる女はいなかったのか?」
先程の疑問がよみがえりつい質問した。
「一人だけ・・・いましたね」
苦笑気味に答えるライにショックを受け、質問した自分を責める千冬。
「まっすぐで天真爛漫な性格で、よく振り回されましたよ」
「そ、そうか・・・・」
当時、他の女性とは違う性格は最初こそ珍しく、
眺めている分、飽きない子だと思っていたライ、
だが、自分の周りをうろつき政務が遅れていたときは鬱陶しく思っていたが、
気付いたら傍にいる事に安心する自分がいた。
そして、彼女が自国に戻る途中で北の蛮族に襲われ、
永遠の別れとなった。
「会えないとわかってから自分の気持ちに気付いたときは自分に呆れましたけど」
「事故にでもあったのか?」
「…ええ、もっと早く自分の気持ちに気付き、呼び止めていたらと
何度も思いましたけどね」
そうしたら、北の蛮族を私怨で恨むこともなく、
咄嗟にギアスであのような悲劇は起きなかっただろうとライは思っていた。
愚かな自分が孤独になる結果は相応しいと思うと同時に、
その業に巻き込まれ命を落とした人達には申し訳なく思う。
母、妹、部下、民。
彼等を死なせる結果を出した自分は死にたくても契約で死ねず、
親友達と明日を迎えようと一緒に手を取り合ったため、
今、死にたいと思うのは彼等に対してひどい裏切り。
『矛盾』している事にライ自身も気づいている。
「(全く、自分でも厄介な存在だな)」
そう思いながら内心苦笑、侮蔑、憎悪など色々な不の感情を自身に向けるライ。
「少しは私に頼れ。今のお前は見ていられないぞ」
千冬は素直に自分の気持ちを伝えた。
「そんな酷い顔してました?」
「ああでもお前が何を背負って生きているのはなんとなくかわからないが、少しは私を頼ってくれ」
「ありがとうございます、千冬さん」
千冬の言葉が素直にうれしかったのかライは笑顔でお礼を言って更衣室に向かった。
それを眺めていた千冬はライの笑顔で頬を紅くしていた。
ライは着替えを終えて、砂浜で海を眺めていた。
着替えてる途中で一夏に胸の傷が消えてることに質問をされたが、
夏樹の知り合いから皮膚と変わらない色をした海水や水に強いシールを送ってくれたと説明した。
うまく背中に貼れないため、背中の傷はごまかすことにしている。
たとえ、誰かに頼み張ったとしても剥がれたときには気付くことが出来ないためでもある。
ライの水着姿を見て、鼻血をだして倒れる女子生徒が続出していたが、
その原因は本人のライは知るはずもなくライは海を眺めていた。
海を眺めていたら、突然後ろから鈴がライに抱きついた。
「鈴?」
「あんた、なに黄昏てるのよ? せっかく海に着たんだから遊ばないと損じゃない?」
ライの体を登っていき、肩車の体制になる。
「そうだね、少しその辺を歩こうか」
「そ、そうね」
ライはそのまま、鈴を肩に乗せて海岸を歩く。
その途中で昔、幼い妹にもよく肩車をしていたと思い出していた。
それを見ていた生き残った?女子生徒は。
「あー!ランペルージ君が肩車してる!」
「ええっ!いいなぁっ、いいなぁ〜!」
「きっと交代制よ!」
「ラ、ランペルージ君が肩車をしてくれる・・・・ブハァ!!」
そう言いながら自分達が肩車してもらうビジョンを想像して、
気絶する者が続出した。
「皆大丈夫なの?」
「あれは自業自得だから(勝手に妄想して)、気にする必要はないわよ」
「そ、そうなの?」
「そうよ」
「全く、なぜ他の人達が倒れてるのかを気になって見に着てみれば、
納得しましたわ」
突然、ライ達の背後にセシリアが納得した言葉を放つ。
「セシリア?」
ライはセシリアのほうに向くとセシリアはライの体を見て僅かに赤くなる。
ライは気づかなかったが、鈴はそれに気付き少々不機嫌になる。
「ラ、ライさんのその水着良く似合っていますわよ」
「ありがとう、セシリアもその水着似合っていて綺麗だよ」
「うっ(落ち着くのよ、わたくしには一夏さんが・・)」
セシリアのピンチ?に鈴が助け舟を出した。
「一夏ならさっき箒と一緒にいたわよ」
「そ、そうなんですか」
セシリアはすぐに一夏を探しに向かった。
「あれ、一夏は準備運動するとか言ってなかったか?」
「どうせ、すぐに現実になるわよ
(それに、ほっておいたらまた厄介なライバルが増えてたし)」
「そうなんだ」
「それより、せっかく海に来たんだから泳ぐわよ」
「そうだね・・・って、準備運動しなくてもいいのか?」
ライの肩からおりて、海に向かおうとする鈴に聞く。
「あたしが溺れたことなんかないから大丈夫よ。前世は人魚ね、たぶん」
「まあ、おぼれたことがないなら大丈夫か。
それに、鈴の前世が人魚だったらすごく可愛かっただろうね」
ライの咄嗟の言葉に顔を真っ赤にする鈴。
「あ、あんたはそうやってへんな事を言うんだから」
顔を真っ赤にしながら海に入る鈴。
(可愛いって、あんな不意打ち卑怯よ、
ああもう、口が元に戻らないじゃない!!
今すごく口が緩んでる、ライが来る前に表情を戻さないと・・・・)
「鈴の前世が人魚だったらすごく可愛かっただろうね」
(!!)
先程のせりふを思い出し、顔が赤くなる鈴。
そして、咄嗟に息を吸い込んでしまってうが、水中の中口に入ったのは海水だった。
「!? ごぼぼっ!」
いきなりのことで軽いパニックに陥った鈴は、姿勢を崩ス。
(み、水っ、入っ‥‥‥!上、上に行かないとっ‥‥‥)
自分が溺れていると自覚したとき、力強い腕が自分を引っ張りあげてくれた。
(ライ!)
ライの顔を見た鈴は安心したのか気が緩んだ。
海から出ると、鈴は自分が抱っこされている事に気付き顔が赤くなる。
「?!」
「鈴! 気分が悪いの?」
「ち、ちがう、少し驚いただけ」
「そう、気分が悪いなら旅館まで送るから
「大丈夫だから」
「そう、でも無理しないでね」
「あ、ありがとう」
ライは鈴をシートに寝かさせる。
「ごめん、その迷惑かけちゃって」
「迷惑ってほどでもないから気にしなくていいよ」
「ぅぅ・・・」
ライの言葉と表情で顔が緩みかける鈴は何とかこらえた。
「わたしは大丈夫だから遊んできなさいよ」
「んー、でも・・・」
「ほら、初めての海なんだし、私の所為で遊べなかったら私が気になっちゃうじゃない」
「わかった、でも気分が悪くなったら遠慮なく言ってくれ」
「う、うん」
ライは何時ものメンバーの誰かいないか探しに行った。
「馬鹿、アンタがいると気分(テンション)があがりすぎるのよ・・・」
鈴はライに聞こえない声を漏らした。
ライは鈴と別れ、知り合いがいないか浜辺を歩いていると、
レインとマリーカそれにシャルを見つける。
「珍しいね、四人でいるなんて?」
「偶々一緒に更衣室を出たときに遭遇したからね」
シャルがライの疑問に答える。
「それに、皆さんライ様に見てもらおうと思ってましたし」
と、頬を赤く染め言うマリーカにシャルとラウラは顔を真っ赤にした。
「でも、ラウラは何でタオルで隠しているんだい?」
「ライ様に水着姿を見られるのが恥ずかしいみたいです」
苦笑して答えるマリーカにレインは。
「恥ずかしいと思うなら来るな」
レインは冷たく答える。
「す、純菜!?」
シャルはレインの言葉に驚きと怒りの言葉でレインに何か言おうとしたが。
「傲慢になるのはだめだが、自分を謙遜するのもだめだ、
自分のことを評価してくれる相手に対して失礼なのだから、
だから見せるなら堂々としていろ」
と、レインは言うと、シャルとマリーカは感心して無口になり。
「ああ、そうだな、こんな態度だとライに失礼だし」
ラウラはレインの言葉に意を決してタオルを取った。
「ど、どうだ…?」
「うん、皆すごく似合っててかわいいよ」
答えたライの笑顔にレイン以外の三人は鼻血を出しかけた。
「勿体なきお言葉」
レインだけ未だ堂々としている。
「ところで、他の生徒がいませんが?」
何とかこらえている三人をよそにレインは浜辺のし是今朝に疑問抱いた。
「ああ、皆日光にあたったのか、鼻血をだして倒れたんだ」
「そうですか、現代の若者は軟弱なんですね」
「「「(いや、もう少し自分の容姿に自覚を持って欲しいんだけど)」」」
そんな会話をしていると、背後から見知った声をかけられる。
「どうした、海で遊ばないのか?」
千冬がただ立っているライ達に声をかける。
「織斑先生?」
「せっかく海に来たんだ、遊んだらどうだ?」
「そうですね・・・・」
シャル達は千冬の水着姿に見惚れるとライは質問する。
「その水着、織斑先生が選んだんですか?」
「あ、ああ、そうだが、どこか変か?」
弟である一夏が選んだとは言えずライの質問に肯定する千冬。
「いえ、色が織斑先生に合っていて、すごく綺麗ですよ」
「!!そ、そうか」
(ライバルが多すぎるよ、しかも織斑先生もなんて・・・)
(くっ、シャルロットや鈴だけでなく教官まで・・・)
(うーん、ライ様は私がいた世界のライ様みたいにナナリー殿下と同じような視線を向けるところを見たことないけど)
(うむ、ライ様が気になる女性、いや、気になるタイプだけでも知っていれば、
応援できるが、ライ様の態度を見る限り未だ気になる女性もいないか・・・)
危機感を覚えてる三人にをよそに、ライを中心に考えるレイン。
(日差しの所為で唸ってるのか皆?)
そして、見当違いに予想するライ。
この後、一夏達も加わり、ビーチバレーをすることになった。
最初の組み合わせはライと一夏VS千冬と純菜となり勝負を始めたが。
ライと純菜の運動神経が常人離れしていて千冬とマリーカ以外は顔を盛大に引き攣らせた・
(やばい、俺足手まといじゃん)
ライのスパイク何とか防いだ純菜だが、ボールはライと一夏の間にゆっくり落ちていき、
ライ達のチャンスボールとなった。
ライはすぐにバックしスパイクを決めようとするが、一夏もボールに向かって走り出したが、
ライの動きに驚き、躓いき前に倒れた。
「のわっ!!」
「へ!?」
ライがジャンプした瞬間、ライのかかとが一夏の顔面にめり込んだ。
それを見ていた箒達はがうわと顔を盛大に引き攣らせた。あれは痛い。
だが、不幸にもアクシデントは終わっていない。
一夏の手はライの足を掴んでしまい、ライも前に倒れる。
だけど、ライが倒れる前に千冬が前に出た。
そのけ結果、ライは千冬の胸にダイビングすることになった。
その光景を見た純菜は安堵し、マリーカ、シャルロット、ラウラはなぜ自分はあそこにいないのか嫉妬した。
「大丈夫か、ラィ、ランペルージ?」
「大丈夫ですけど・・・、あの千冬さん
なんて言うかその・・・・」
千冬の胸の感触で少し混乱気味のライを抱きしめた千冬は、
無意識に力をいれてしまう。
「ち、千冬さん!?」
「ちょおおおっと、織斑先生、
何やってるんですか!?」
「そうです、教官何やってるんですか!」
シャルロットとラウラは抗議し、マリーカは自分の胸を見てがっくりと肩を落とした。
そして、一夏は顔を抑えて声にならない叫びを上げていた。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m