第六話
依頼を受けてから三日後、スラムから発ったダンテは、日本の地に初めて足を踏み入れた。
お馴染の真紅のコートを身に纏い、茶色のサングラスをかけ、灰色の、しかもそのまま武器にでもなりそうな巨大な ケースと細長い箱を担ぎ、産まれて初めて踏み入れた日本の空港を物珍しそうに見回した。
ダンテが驚いたことは、アメリカのスラムと違いすれ違う人々の服装は整ってあり通路の隅を見ても酔っ払いのホーム レスは一人も居ない。
ここが日本って言う国か。
しかし………
(ったく、人がそんな珍しいのかよここは……)
すれちがう人々は好奇心的な視線をダンテに送られている。
整った顔立ちに銀色の髪の毛、真紅の派手なコート、オマケにヤケにデカイギターケースと箱を持っていれば自然と 注目の的になってしまうのだ。
そんな視線に嫌気を差したダンテは足早に空港の外へ出た。
外へ出るとスラムとは違う暖かな陽射しと心地よい風が海外からの来客を歓迎した。
空港を出たダンテは予め玄が手配をしているというホテルを探す。
しかし道行く看板には日本語で書いてあるため、ダンテはなんて書いてあるの全く読めないのだ。
唯一の手掛りが手元にある地図のみであるが、その地図も日本語で書かれているため当然読めない。
玄から貰った翻訳機があるから道行く人に聞けばいいのだが、この作戦はことごとく失敗に終っている。
理由はただ一つ。
見掛けが怪しいからである!!
まぁそれ以上に恐い、殺される、というのも理由もあるが。
中には宗教の勧誘に間違えられ、逃げ出したことというのはダンテ自身かなりヘコンだという。
二時間後、目的のホテルに流れ着いたダンテは仕事に疲れきったオッサン風の顔付きと化していた。
あぁ・・・・あのダンテという一流のデビルハンターがなんとも情けない顔をしているのだろうか………。
「あのな……
だったら……日本語も読めるように…設定しろよ」
いやぁ、この方が面白いかなと思って。
あの有名なデビルハンターがこんな顔するのか!!ってな。
「おい(怒)」
しかし運良く早目に着いて良かったな。もうちょっとかかると思っていたんだがなぁ。
「・・・・・・その残念そうな顔はなんだ?」
いやぁもうちょっと面白くなりそうだなぁ、と思っただけだ。
ところでさ、ナレーターに向かって話しかけるなよ、電波扱いされるぞ。
「ほほう(ニヤリ)」
カシャン――
………あのな、こんな町中で銃取り出すなよ。
「気にするな、蠅を撃ち落とすだけだ」
━銃声━(どういう訳か、なぜかサイレンサー付き)
まぁ別に死なないんだけど、痛いん
だよね……
←∴・<゚@゜<←
「ちっ、化け物め」
お前がいうなよ!!
ほらほら、さっさとチェックインしないと話進まないだろ?
「チッ……後でミンチにして魚の餌にしてやるよ」
遠慮しとくよ。
(^_^;)
ちょいと大通りから裏道に入った所に目的のホテルは存在した。白を基 調とし、某国の有名なホテルにちなんだ名前となっている。
「もし、少し訪ねていい?」
ホテルに入った瞬間、女性に声をかけられた。
「ああ?・・・ もしかしてデートのお誘いか?
それならもう少し日が暮れてからの方がいいんだが」
髪はダンテとは対照的な金髪を中分けし、後ろ髪は肩まで伸ばしている。
体つきはスーツを着ていてもそのプロポーションの良さは分かる。
ダンテはその女性を上から下まで見定めると口笛を吹き軽口を言う。
「本人か。
やはり聞いた通りの人物ね」
女性は明らかに呆れたような声と態度をダンテの前で表した。
「へぇ、あんたみたいな美人が俺のことを知ってるなんて光栄だな」
「それはパートナーを務めるわけだから相方の情報は調べとくわよ、スパーダの子」
「良く調べてるじゃないか」
「まぁね、それより立ち話もなんだし私の部屋に来て頂戴」
女性に言われるがままに部屋に案内される。
「ここが私の使ってる部屋よ」
ガチャ━という音と共に開かれた扉、まず目に入ったのは質素な作りをしていた。
大体十畳程の広さで、ベッドが一つ置かれていて、部屋の中心に位置するところに四角形のテーブルとソファーが備え付けられてる。
「へぇ、パートナーって夜の相手もしてくれるのか?」
とダンテが軽口を吐いた瞬間、その場の空気が一気に氷つくような寒気が生まれた。
「フェン、彼は味方だから術を唱えるの止めなさい、それにこんな軽い人となんてしたくはないし」
「ヒデぇ」
女性は横を向き、なにもない空間━━恐らくこの寒気の出所だろうか━━に向かって制止をする。
すると部屋の中を支配していた寒気が引いて、一匹の蒼い狼が現れた。
「なんだ? そのコマッちい生き物は?」
「この子は私の使い魔『フェンリル』よ」
姿を表した蒼い狼はヌイグルミと言っても間違わないだろう愛らしい外見で女性の肩に乗っかっている。
「そう言えば自己紹介がまだだったわね。
初めまして、ダンテ。 私は今回の依頼のサポートを務める『宮雲 可奈』よ、以後よろしく」
エデン―所長室―
「━━━臨時教師…ですか?
俺に?」
エデンの所長室では暁と中肉中背な男性が向かい合って、一枚の書類に目を通しながら、そこに書かれた内容を確認す る。
「えぇ。
なんでも、そこの校長が是非とも所長に、と仰っているそうなので」
「分かりました。
後はこちらでやりますから、任せてください」
「はい、それでは失礼します」
が暁に一礼をして、所長室から退室していった直後に俺は、机に突っ伏した。
「はぁあ〜……
よりによってあの学校に行くとはな。
しかもオッチャンが校長になってたなんてな、世も末だな」
「でも仕事だし、仕方がないか」
手に持っていた紙を机の上に放り、電話の受話器を取り番号を打ち込む。
「…………あ、スイマセン。
『エデン人材派遣会社(株)』の現地所長の神崎 暁という者なんですが、学校長は今、居られますか?」
放られた紙には『人材派遣願 我が校の臨時教師を所長 神崎 暁氏 に御願いします。
白樺大学付属高等学校 学校長 高崎 鷹也』と書かれていた。
「━━━と言うわけで、臨時教師を引き受ける事にしたよ」
「…………唐突に言われても何が何だか分かりませんが(汗)」
学校のオッチャン━もとい学校長━に連絡を取り、人材派遣要望を、臨時教師する事を承諾した。
「実はカクカクシカジカ━━」
「ああ、そういう訳ですか」
「いやぁ、コレで通じるなんて便利だねぇ」
「それで、どうするんですか?」
「何が?」
「住む所ですよ、ココから通うつもりですか?」
「あ……」
━━━間━━━
「………考えてなかったと」
力無く頷く大呆け野郎。
ココは近くの町まで15kmはある上、白樺大学付属高等学校までは軽くても140km以上はある。
「それで、結局どうするんですか?」
「…………あははは」
「とうとう頭がおかしくなりましたか」
「そんな可哀想な目でみるなよ魅緒、全く当ては無い訳じゃ無いんだから」
「どういう事ですか?」
「そこ、俺の母校だろ?
今、妹が通ってるのもそこなんだよ」
「妹さん…ですか」
「家が学校からちょっと歩いた所にあるから、ソコに住もうかなと考えてたんだが……」
「なにか問題でも?」
魅緒が何か問題でもあるのか、聞こうとすると。
妙に暗くなり、顔に生気を感じられない青年に変わっていた。
「あ、暁さん……?」
「はぁ〜、また家事する羽目になるのか」
「また、って暁さん、家事なんて出来るんですか?」
「んぁ? まぁ俺は一通りの家事は出来るぞ。奴も一通りは出来るんだが、料理はカラッキシだぞ。
見た目からは想像出来ない味になるからな。
簡単な料理………お粥でもおにぎりでもいい少ない材料でも奴にかかれば未知の食べ物に変わるからな。
それを知らず、見掛けが良かったから口にしたが、その日から体調が垂直落下したぞ。
それから俺が料理担当したんだが奴に料理やらせた日には俺は殺られるな」
「そ、そこまで酷いものだったんですか」
明らかに顔面を青くする暁、余程酷い目に遭ったのだろ。
「しかし、引き受けた以上行かなければならない。
この苦難を乗り越えた暁には俺は英雄と化すのだ!!」
暁は熱烈な演説の如く、机に片足を乗っけて、ボールペンをマイク代わりに持ち、反対の手でゲーセンにある某ク イズゲームのサン○ースの様なポーズを取る。
「当然である!!」
この時、施設内から何処と無く聞こえてきた事は、また別の話と言うことで。
「あなたは偉い!!労働者の鑑!!」
暁の演説に拍手で誉め称える魅緒。
………ホント、ノリいいねアンタ等。
「とまぁ、悪ふざけも程々にっと」
「えぇ、そうですね。
話を戻すのですが、いつから仕事開始ですか?」
「ん〜、早けりゃ早い方がいいって言ってたけど、明日には向こうに行くよ」
「じゃあ私も行きます♪
暁さんの妹さんに会って見たいですし、料理も食べてみたいです」
「…………お前、ソレが第一の理由だろ」
「それに私も校長に根回ししてますからね、その学校には保健医として行きますよ」
「人の話を聞けっ……て
はぁあ〜〜ッ!?」
「あっ、正確には保健医見習いという感じですね」
「……………」
「………? 暁さん? 暁さ〜ん? 石になってしまいましたね。
この間に手続きとか済ませちゃいましょう。 暁さんの石化が解けないうちにやらないと」
そう言うと魅緒は部屋から出ていった。
石化された青年の思惑をよそに策略(悪戯)が行われようとしていた。
あとがき
ダンテ日本に到着して道を尋ねるところはスリーセブンさんと同じですが、俺なりにアレンジを加えてみました。
あと黒い鳩さんから前回の感想でいただいた、エデンのメイドに関してですが。
メイド服は玄の趣味で、ここの制服にしただけなので、「ご主人様」とかそういった事はないです、期待していた方申し
訳ないです。
(メイドに関する知識が極端にないんで)
ちょっとでも、雀の涙ほどでもいいので御教えいただけないでしょうか・・・話の中にちょくちょく入れますの で・・・・・スイマセン。
短すぎるあとがきですが、またお願いします。