帝国軍の追撃を何とかかわした私たち第14艦隊
みなさんの顔は安堵していますが、疲労もかなりのものです
罠を張ったのに、あれだけの苦戦を強いられるなんて
一歩間違えれば惨敗でした
ほんとに帝国軍の司令官さんはすごいの一言
逃げ出せたのが嘘のようです
あんな人がまだ大勢いるなんて、正直、勘弁です
そうそう、少将の指揮も初めて艦隊を率いたとは思えないほど見事でした
ちぐはぐな部分もあったけど、さすがです
少将にっとて初めての大規模な艦隊戦でしたが
半個艦隊の第14艦隊はたしかに生き残ったのです
でも、安全圏はまだ遥か先。ここは帝国領です
そして敵がうようよ……
もし今度、一個艦隊の敵と遭遇すれば
少将が言うように初戦のようにはいきません
フルボッコされる確率が高すぎです
私たちが生き残るためには決断が必要でした
少将はもちろん……
──ホシノ・ルリ──
第六章(中編・其の一)
『VS黒色槍騎兵艦隊/猛将の追撃!』
T
──宇宙暦796年、標準暦10月8日17時03分、惑星リューゲン周辺──
「どうやら間に合わなかったようだな……」
ウランフが静かに独語した直後、「
盤古」の艦橋に身体の芯まで侵す耳障りな警報が鳴り響く。端末を注視していたオペレーターが緊張した声で報告した。
「敵です! 1時方向、角度水平、数およそ16000! 接触時間まで6分です」
ウランフは冷静に応答し、すかさず命じた。
「よーし、全艦、総力戦用意! スパルタニアン部隊は直ちに出撃準備。総司令部および 第13、第14艦隊に連絡、『我レ敵ト遭遇セリ』とな」
「はっ! ただちに連絡いたします」
参謀長のチェンがオペレーターに指示を伝えに駆け出すと、ウランフは指揮塔の上から兵士たちを鼓舞した。
「我々の近くには奇蹟のヤンがいる。幸運の女神も目と鼻の先だ。どちらかが駆けつけ、敵を挟み撃ちにできる。勝利は疑いがないぞ!」
おおっ! という掛け声が上がり、オペレーターたちは落ち着いて職務に集中する。ウランフは部下たちの真摯な姿に満足して頷いたが、部下を励ます表面上の態度とは裏腹に胸中では全く逆の感情を抱いていた。
(ついに始まったか……少々、撤退するのが遅かったな。今頃、第13艦隊も第14艦隊も敵に攻撃されているだろう。救援は望むべくもない)
「ヤン提督、ミスマル提督、死ぬなよ……」
ささやかな願いの直後にオペレーターの報告が耳に響いた。
「敵艦隊の映像出ます。速度そのまま、射程距離到達まであと2分!」
メインスクリーンに映し出された帝国軍は漆黒に塗装されていた。艦橋の兵士たちがその威容に思わず目を見張った。
「こいつはまた見えづらい色だな」
ウランフが冗談めかして言うと、帝国軍艦隊の威圧に呑み込まれていたオペレーターたちから笑い声が洩れてきた。勇将は将兵たちを鼓舞した。
「いいか! 我々は餓えてはいない。第14艦隊のおかげで士気は高い。帝国軍にいくら地の利があろうとも、我々は充分に戦えるぞ」
部下たちの間から「おおっ!」という気合の声がさらに大きくなった。どの顔も悲観などしていない。勇将の下に集う将兵たちは騎馬民族の末裔たる男に全幅の信頼を置いているのである。
「敵艦隊、有効射程距離到達まであと1分!」
オペレーターの報告にあわせ、ウランフの右手が天井パネルに向って伸びた。その勇姿に部下たちの士気もさらに上がった。直後に戦術スクリーンを凝視していたウランフの目が有効射程到達の表示データーを捉えた。
右腕が垂直に空を切った。
「撃てっ!!」
無数のエネルギーの矢が正確に帝国軍艦隊の先頭集団に到達した。直後にビームに貫かれた黒い艦艇が次々と爆炎の円を漆黒に染まる宇宙に描き上げる。その爆発の光芒はまるで色とりどりの花火のようでもある。
しかし、帝国軍の突進は止まらない。ビームの直撃をかいくぐった戦艦が果敢に同盟軍に向って撃ちかえしてくる。
「ひるむな! 我ら黒色槍騎兵艦隊の破壊力で身の程知らずの叛乱軍を粉砕するのだ」
旗艦「
王虎」の艦橋でフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将は全軍に向って仁王立ちのまま命じた。荒々しいオレンジ色の頭髪、たくましい筋肉質の体格とらんらんと輝く鋭い眼光。一見して猛将タイプとわかる容姿だが、細身の面立ちがややアンバランスという評である。
「わが艦隊に後退の二文字はない。前進ただあるのみ。刺し違えてでも敵を葬れ!」
乱暴な命令に思えるが、その実、ビッテンフェルトは正確に突撃ポイントを捉えていた。全長700メートルを越える高速戦艦群が超速の突進力で同盟軍との差を詰め、その鼻先に主砲を斉射する。
それまで直撃を免れていた同盟軍艦艇に帝国軍の放った主砲が次々に命中し、爆炎が連鎖的に拡大した。
「むっ!」
ウランフの眉間にしわが刻まれるが、同盟軍の勇将は慌てなかった。
「中央は後退しつつ正面の敵艦隊に集中攻撃。両翼は中央の後退に合わせて前進し、敵を縦深陣に引きずりこむのだ」
整然と同盟軍中央部隊が敵の突進を殺すように後退を始める。その動きにあわせ、同盟軍の両翼が前進し、敵を三方から挟撃するはずだった。
「帝国軍の突進が止まりません! 速度と砲火がさらに強くなります」
オペレーターが狂ったように突き進んでくる帝国軍に恐怖したように報告した。ウランフの予測をはるかに超える勢いで漆黒に塗装された巨大な戦艦群が同盟軍の反撃をものともせず、逆に罠に自ら飛び込むようにお構いなしに攻撃してくるのだ。
「むちゃくちゃなヤツだな」
ウランフはあきれたが、帝国軍の突進は尋常ではなかった。前衛部隊の眼前にまで帝国軍は押し寄せ、至近距離からビームを撃ち込んでくるのだ。帝国軍との衝突を回避するために同盟軍は慌て、ウランフが予想もしなかった損失を被ってしまった。
「副司令官ハン少将戦死!」
悲痛な報告がもたらされた。ウランフは拳を握り締めて戦友の死を悼みつつ、帝国軍の突進を止めるべく攻撃の強化を命じた。
だが、帝国軍は前に突き進む。後退する同盟軍中央部隊を逆に追い込むように喰らいついてくるのだ。
──18時21分──
ウランフもヒヤリとした帝国軍の突進は同盟軍の粘りもあり、ようやく限界に達しようとしていた。
「今だ、撃て!!」
同盟軍は犠牲を払いながらも帝国軍を縦深陣に誘い込むことに成功する。三方からの攻撃を受けた帝国軍は側方からの攻撃に対処できず、次々に中性子ビームの餌食になっていった。
しかし、この場合、防御する側より攻撃する側に勢いがあった。高速戦艦群により重厚な突撃陣形を形成していたビッテンフェルト艦隊は同盟軍より数的に勝ることを考慮に入れていたのか密集隊形を崩すことなく、初撃で数を減らした同盟軍中央部隊にありったけのビームとミサイルを叩きつけたである。同盟軍の兵士たちは動揺した。第14艦隊から補給を受けたとはいえ、長期にわたる帝国領の駐留は精神的にも肉体的にも同盟軍兵士を少なからず蝕んでいた。
ウランフが司令官でなければ、ビッテンフェルトの猛攻を受けた第10艦隊は中央を突破され、文字通り壊滅的な損害を受けていたことだろう。もちろん、第14艦隊ならば消滅していたに違いない。
「踏ん張れ、敵の勢いに呑まれるな! ヤツラにも限界はある。落ち着いて狙い撃て」
第10艦隊は、ウランフの巧妙果敢な指揮によって帝国軍に中央突破を許さず、かろうじて戦線を維持した。中央部隊をやや突出させた逆V字陣形をとっていたウランフの対応によるものといえたが、同盟軍の勇将にとっては悔いの残る緒戦となったのである。
──標準暦10月8日、19時41分──
ウランフ率いる同盟軍第10艦隊は数と攻撃力に勝る帝国軍の猛攻に耐え、なお統制と士気を乱さず戦線を維持する。
しかし、両提督の実力が拮抗している場合、絶対数による劣勢は挽回しがたく、第10艦隊は次第に追い込まれていった。
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ほぼ時を並行し、ヤン率いる第13艦隊も帝国軍と戦闘を交えていた。第10、第14艦隊と同様に猛攻に遭い、緒戦において第13艦隊を代表する「撃墜王」たるオリビエ・ポプラン、イワン・コーネフ、ウォーレン・ヒューズ、サレ・アジズ・シェイクリの4名のうち、後者2名が戦死するという悲劇に見舞われていた。
帝国軍が同盟軍空戦部隊の巧みな戦術に対し、同様に三機一組でチームを組み、スパルタニアンを艦砲の射程に誘い込むという戦術に切り替えてきたからだった。
「やれやれ、どうも流れというものはそうそう劇的に変えられるものではないらしいね」
旗艦ヒューベリオンの指揮卓にあぐらをかいたまま、ヤン・ウェンリーは指揮を執っていた。司令官として旗艦に乗船して以降、とても軍人とは思えない行儀悪さではあるが、その姿は不思議と将兵たちを心から安心させた。
「我々はミスマル提督から補給をうけて餓えてはいないが、どうにも勢いという点では確実に帝国軍に分があるようだね」
その後に「めんどくさいから誰か代わってくれないかな」などという、思わず耳を疑いたくなるような呟きをフレデリカ・グリーンヒル中尉は耳にしたが、一見、緊張感も危機感もなさそうな青年提督が一切戦術スクリーンから目を話さずに集中していることを知っている。
「今、戦っている帝国軍の指揮官といい、ローエングラム伯の下にはどれだけの人材が集まっているのやら……」
ヤンも敵将を賞賛ばかりしていられない。彼は陣形を半月陣に再編し、巧みに左右にシフトさせて帝国軍を翻弄した。
「何をしている! 敵に先手先手を取られおって」
指揮シートから身を乗り出してカール・グスタフ・ケンプ中将は怒りで声を震わせた。ラインハルト陣営の提督の中では年長者に属し、古風な風貌ながら堂々とした風格をもつ提督である。彼もラインハルト麾下の提督だけあって無能ではない。第13艦隊の空戦部隊を追い込んだのは「元撃墜王」としての的確な指示によるものだった。
しかし、艦隊運用能力に関しては同盟軍側が勝っていた。これは艦隊運用の名人といわれる副司令官フィッシャー少将の手腕によるところが大きい。あまり特徴のない容姿のおじさんだが、艦隊運用の手腕は並ぶものなしと同盟軍内部でも評価が高い。このような人物を目ざとく幕僚に加えているあたり、ヤンの人を見る目のなせる業であったろう。
ヤンの指揮能力とフッシャーの運用能力が絶妙にマッチした攻撃は必ず帝国軍の機先を制し、その防御ラインを次第に削り取っていった。
「ヤン提督、ここで一気に攻勢をかけますか?」
参謀長ムライ准将がヤンに尋ねるが、黒髪の青年提督は首を左右に振って否定した。
「それはやめよう。ここで勝ったとしても全体的な帝国軍の優勢は変わらない。もうすぐ帝国軍の指揮官も消耗戦の愚かさに気づいて再編のために後退を始めるだろう。ここは敵が後退した隙を突いて遠くに逃げるのが肝心だよ」
ムライが気難しそうな顔をさらにしかめるが、ヤンは本気だった。
「この戦いは勝つことよりも生き残ることに意味があるんだ。戦って勝利したとしても何の成果にもならないからね」
ヤンに同意するように数人の幕僚が頷く。帝国領への侵攻作戦そのものが無意味な軍事作戦なのだ。作戦前から問題になっていた様々な不備が噴出し、帝国軍の罠にはまってしまった同盟軍は、ついに危機的な状況に追い込まれているのである。
「ウランフ提督やミスマル提督は大丈夫だろうか……」
ヤンは、戦術スクリーンを注視したまま二人の安否を心配したが、第13艦隊も目前の敵を相手にするだけで手一杯だった。ミスマル提督によって警鐘を鳴らされ、ヤンが考えるより早く撤退準備に取り掛かれたものの、同盟軍の動きを見逃すほど帝国軍は甘くなかったわけだ。
「お二人ともどうかご無事で……」
ヤンの呟きの直後に帝国軍は後退を始める。この瞬間を待っていた彼はとても嬉しそうに命じた 。
「よし! 全艦、逃げろ!」
第13艦隊は整然と逃げ出す。ケンプは同盟軍の真意を図りかねたが、「奇蹟のヤン」がただ退いたとは思えず罠と判断して追撃を断念し、艦隊の再編に着手した。
第13艦隊はヤヴァンハール星系より離脱することに成功する。だがそれは、更なる強敵と対峙することにつながるのであった。
V
一方、他の同盟艦隊も帝国軍の攻撃を受けていた。その結果はユリカと接触したかどうかに限らず、個々の判断と状況によって大なり小なり違っていた。第3艦隊は帝国軍ワーレン艦隊の猛攻に遭い、旗艦を撃沈され多大な犠牲を払って敗北。第7艦隊は3倍強の兵力を有するキルヒアイス艦隊と交戦後に降伏。
第8艦隊は「芸術提督」ことメックリンガー艦隊の攻撃を受け、最初から交戦の意思のないアップルトン中将はひたすら指揮系統の崩壊を防ぎながらイゼルローン方面に長い後退を続けた。
第9艦隊は敵と接触する前に撤退を開始したが、あまりにも戦う相手が悪すぎた。
「く、9時方向からエネルギー波群急速接近!」
オペレーターの報告にサレム中将は信じられないという顔をした。
「ばかな、いつの間に側面に回ったのだ!」
帝国軍の先頭集団はあっという間に第9艦隊の側面にくい込み、同盟軍を分断してしまった。司令官のアル・サレム中将は旗艦を撃沈されて戦死。副司令官モートン少将がかろうじて全面崩壊を防ぎ、残兵を統率しつつイゼルローン方面に向って敗北の道をたどった。
この速攻の妙技により、同盟軍第9艦隊を急襲したウォルフガング・ミッターマイヤー中将に
「疾風ウォルフ」の異名が冠せられることになるのである。
一方、ビュコック中将の指揮する第5艦隊は、ミッターマイヤーの親友オスカー・フォン・ロイエンタール中将の艦隊の攻撃を受け、後退に後退を重ねていた。
「やれやれ、ミスマル提督がわざわざ警告を発してくれたにもかかわらずこのていたらくとはな……他の艦隊はダメかな」
指揮シートに身体を沈めつつ、ビュコック中将は疲れたように呟いた。副官ファイフェル少佐が内容を聞き返したが、老練な用兵家は咳払いをしてうやむやにする。
「閣下、敵の追撃を振り切れません。いかがなさいますか?」
「どうもこうもない。ひたすらイゼルローン方面に向って後退するしかないじゃろう」
こうなるとボロディンとの合流も危ういものとなる可能性が高い。第12艦隊も帝国軍の猛攻を受けているに違いないのだ。運良く合流を果したとしても、それはお互いが交戦状態のままという、かなりよろしくない事態になるだろう。
「願わくば……」
一人でも多くの同僚と再会したいものだ、とビュコックは切実に願った。無意味な出兵だっただけにその思いは強く、そして深刻だった。
◆◆
帝国領最奥に駐留した第10、第13、第14艦隊は、その位置的な関係から帝国軍と正面から向かい合わざるをえなかった。他の艦隊もそれほど多くの時差があるわけではなく、また、帝国軍の行動が迅速を極めたからであるが、ユリカの努力が全く実らなかったわけではない。
当人も驚く例外が存在したのである。
ルッツ艦隊が第12艦隊の駐留するボルソルン星系に到達したとき、同盟艦隊は星系内縁にある小惑星内に布陣していた。ルッツは側面に回りこんで同盟軍を急襲しようとしたが、途中でそれが囮であることに気がついた。
「ちっ! やってくれるものだな。叛乱軍はどこに行ったのだ?」
悔しそうに床を蹴り上げたルッツは、すぐ部下に周辺の索敵を指示した。その結果、星系内はもぬけの殻だった。
敵にまんまと逃げられた帝国軍の司令官は唇を噛み締めたが、さらに不幸なことに小惑星内から離脱途中、同盟軍の仕掛けた自動迎撃装置に煩わされて時間を消費し、損害をしたたかに被ってしまう。
「帝国軍、追撃して来ません」
オペレーターの報告にボロディン中将は満足したように「ニンマリ」とほくそえんだ。まんまとルッツ艦隊の逆方向へと逃げおおせたちょび髭の提督は、すかさず全艦にイゼルローン方面への撤退を命じた。
第12艦隊がルッツを出し抜いた理由は、やはり一番にユリカと接触したことである。だがあまり時間に差がなく、次に接触したビュコック提督は撤退準備が間に合わず、ロイエンタール艦隊の追撃を受けることになっていた。
何が違ったのかといえば、それはボロディンが担当する星系内から兵士や車輌等を引き揚げる際、徹底的に割り切った行動に出たからだった。民衆たちには追加の物資をパラシュートで投下し、各入植地にある重機類は全て寄贈(置き去りともいう)、治安維持を目的とした装甲車輌は回収せずに全て爆破処理したのである。
ボロディンの雑すぎる撤退処理は、ユリカの警告によって早期撤退意識の加速した危機的な状況から生き残るためのやむをえない選択だったといえよう。
ただ撤退するのではなく、さりげなく足止め(いやがらせ)の罠を張っておくあたり、さすがに抜け目がないといえた。
「さて、ビュコック提督と合流を果せるかな?」
こうして、唯一無傷のまま撤退に成功した第12艦隊は、それがゆえに激闘の最前線に立つことになるのである。
第10艦隊はビッテンフェルト艦隊に包囲されるに至っていた。帝国軍の猛撃を正面きって対応した勇将は黒色槍騎兵艦隊の突進を止めたものの、最終的に後退せざるを得なかったのは絶対数において損害の大きい同盟軍のほうだった。
「他にやりようはあったかな……」
省みたウランフだが、猛省している時間は与えられなかった。彼は全艦にさらに後退を命じる。ビッテンフェルトは同盟軍の後退をあざ笑うかのように高速戦艦群の艦首を並べ、あたかも重装騎兵さながらに隊列を組み圧倒する火力で押しまくった。数的に勝る帝国軍は犠牲を払いながらも第10艦隊をついに包囲下に置くことに成功する。
いや、正確には半包囲といえるだろう。いずれにせよ惑星リューゲンを背にした同盟軍艦隊は包囲されたも同然だった。
これはウランフがミスを犯したというより、防御のために全周囲を敵に囲まれるより、なるべく正面に敵を捉えておきたいという、ウランフの考えからだった。
「ちっ、うまくやりやがったな」
ビッテンフェルトは、腹を立てながらも敵将の手腕を賞賛したが、帝国軍が有利なことには変わりがない。敵が前方位に集中できるならば、それはU字に艦隊を展開している帝国軍も戦力集中できるからである。
「敵はもはや袋のねずみだ。撃って撃って撃ちまくれ!」
ビッテンフェルトは、高らかに声を上げながら全艦に集中砲撃を指示した。
◆◆
「閣下、すでに全艦隊の3割が失われ、2割は戦闘に耐えうる状況にありません。このままでは……」
参謀長のチェン少将が血の気の引いた表情で危機を訴えた。第10艦隊は開戦からすでに9時間以上を経過し、包囲されながらも指揮系統と秩序を保ち頑固に抵抗を続けていた。同盟軍随一の勇将の将兵たちだからこそ不利な状況にあっても一艦の離脱も出さずに士気を保っていられるのである。
「みんな耐えるんだ」
それも限界に達しつつあった。第14艦隊のおかげで著しい士気低下は免れているものの、精神面と肉体面における疲労度は同じ時間戦っている帝国軍よりもはるかに加速しているのである。
ウランフは、当然兵士たちのメンタル面の低下を把握していたが、帝国軍との戦力と火力の差が大きく、多大な犠牲をともなうであろう一か八かの包囲網突破に踏み込めないでいた。そうなってしまったのは皮肉なことに、強固な抵抗をみせる同盟軍に対してビッテンフェルトが注意を払い陣形を分厚く配置したからだった。
「帝国軍が包囲を縮めてきました」
何かを覚悟したように重々しくオペレーターが伝えると、艦橋内の視線が一斉にウランフに注がれる。勇将は視線を受け止めつつも微動だにせず、腕を組んだまま艦橋中を見渡して兵士たちを叱咤激励した。
「あきらめるな! この帝国軍の動きを利用して突破口をみつけるのだ。全艦、防御を強化し、帝国軍の攻撃に耐えるんだ!」
司令官の強い意志に励まされた兵士たちが再び己の責務に集中する。どんな困難な状況に遭おうとも死力を尽くして戦うのが勇将に集う兵士たちの矜持であって、決して弱気にならず光明を見出すのが我々ではないのか? 危機は時として思わぬ勝機を見出し、我々に逆転勝利の美酒を差し出すこともあるだろう。
それがどんな絶望的な状況であっても……
──標準暦10月9日、3時15分──
ビッテンフェルトは、頑固に抵抗する同盟軍に引導を渡すべくさらに包囲を縮める。同盟軍に退路はなく、このまま推移すれば勝利はおのずと猛将の手中に収まるはずであった。
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その異変を最初に感知したのは双方のオペレーターだったが、対する反応は全く正反対だった。
「こ、後方に艦影です!」
報告する「王虎」のオペレーターの声は半分動揺していた。敵か味方か判然としないのがその理由だったが、ビッテンフェルトが確認を求めるより早く、異変の正体をオペレーターが顔面蒼白ではっきりと伝えた。
「エネルギー波急速接近!! て、敵です! わが軍の後方に敵艦隊です。数、およそ1万隻!!」
ビッテンフェルトの太い眉毛が勢いよく吊上がった。先刻までの余裕が消え、彼は怒りすら覚えているようである。
「ちっ! ミュラーのヤツは敗れたのか? それとも逃げられたのか? いずれにせよ、このタイミングで現れるとはなんとも可愛気のないヤツだ」
直後、帝国軍の一角をビームの束が直撃した。
「やったぞ!」
「盤古」のオペレターは歓喜して絶叫した。
「援軍です! 援軍が来ました。援軍が来たぞ!!」
その声は通信回線を通して第10艦隊に駆け抜け、死線の先に足を踏み入れようとしていた将兵たちの生気を蘇らせた。
艦橋中が歓声に沸きかえる中、チェン参謀長が通信士官にどちらの艦隊かと尋ねると、
「第14艦隊です!」
と興奮ぎみに短い返答があった。顔色の蘇ったチェンがメインスクリーンを凝視するウランフに振り向くと、勇将は感慨深く二度頷いていた。
「ミスマル提督か……よくがんばったものだな」
ウランフの対応は早かった。
「よおし、損傷した艦艇を内側にして紡錘陣形を敷け。外の味方と呼応して包囲網を突破するぞ!」
司令官が拳を振るうと艦橋中が熱波を帯びた。第10艦隊の士気は援軍を得て一挙に高まった。
「全艦、11時方向に集中砲火。敵に反撃の機会を許してはいけません。内部の味方と呼応して一気に包囲網の一角を突き崩すのです」
ユリカの命令は容赦がない。どの方向からも敵の反撃に対処できる位置に陣取り、間断なく主砲を斉射して帝国軍に隙を見せない。
第14艦隊が救援に間に合った理由はいくつかあるが、その要因は大きく分けて三つあるだろう。
一つ目は、もちろんユリカの決断。ウランフに釘を刺されていても、やはり自分たちだけ撤退するのはムリというものだった。勇将を救援しようという判断に誰も異論をとなえなかったのも早期に駆けつけることができた理由だろう。
二つ目、もともとファンベルグ星系はウランフの管轄であったため、それほど距離が遠くないこと。
三つ目、再三述べているが、補給を受けた第10艦隊が著しい士気低下を免れ、10数時間におよぶ戦闘に耐え抜いた事である。
「砲火を集中し、撃って撃って撃ちまくってください」
第14艦隊の砲撃の集中度はすさまじく、戦艦一隻に10数本のビームが集中するほどである。精強な帝国軍もさすがにかわしようがない。ユリカの指揮も気迫に満ちており、あまりの迫力にゴート・ホーリーでさえ圧倒されてしまうほどだった。
ユリカが必死になるのは、もちろん第10艦隊を救出するためだが、戦力で勝る帝国軍を恐れているからでもあった。強行偵察型スパルタニアンからの映像を見たとき、黒色に塗装された艦隊の強力さを直感したのだ。
帝国軍の後方を突き第10艦隊と挟撃しているが、第14艦隊はミュラー艦隊と一戦交えた後であり、ウランフの第10艦隊は大きな損害を被っている。決して楽観できる状況とは言い難かった。ミュラーと対戦したとき以上の強力な戦力をもってウランフを窮地に陥れている黒い艦隊の司令官に、ユリカは最大の警戒を払わねばならなかった。
「ちっ!」
と、いまいましく舌打ちする上官に向って副官オイゲン大佐が対応を問うた。
「閣下、いかがいたしますか? 反転迎撃なさいますか」
挟撃された状態の反転攻勢ほど危険なものはない。ビッテンフェルトが愚かな質問に怒らなかったのは、オイゲンの言葉が自分の冷静さを確認するものだったからだろう。
ビッテンフェルトは直立のまま忠実な副官に指示した。
「行かせてやれ。ヤツらが合流したところをまとめて叩き潰してやる!」
こうして、辛くも第10艦隊は包囲網を突破し(帝国軍が包囲を解いたからではあるが)、第14艦隊と合流を果したのだった。
『ウランフ提督、ご無事でなによりです』
ミスマル・ユリカの凛々しい敬礼が通信画面に映ると、「盤古」の艦橋が彼女を讃えるようにひときわ大きな歓声で満たされた。
「まずは礼を言わせてもらおう。貴官の救援に感謝する」
『いえ、約束を破ってしまって申し訳ありません』
「そのことは後にしよう。今は結果オーライだ。それよりもすぐに反撃体勢を取れるよう艦隊を再編するぞ。あの黒い艦隊の司令官がこのまま黙って引き下がるわけがない」
『!!!!』
ウランフの予想通り、ビッテンフェルトは艦隊を反転させて追撃体勢を整えようとしていた。
「おのれ! こざかしい真似をしおって! このまま逃げおおせると思うなよ」
激しい怒りの中で猛将の闘志は烈火のごとく燃え上がっていた。1万隻と報告された敵艦隊は、実は囮で数を増やただけで実数は6000隻程度だったのだ。ビッテンフェルトが早く気がついていれば違った対応も考えられたが、ユリカの偽装も巧妙を極めた。彼女は帝国軍の索敵可能範囲を正確に把握し、その領域に差し掛かったところでルリによって操られた三隻の無人巡航艦から囮を射出。本体が完全に有利な位置に陣取るまでギリギリ見破られない距離を保ち、囮を牽制の位置に据えたのである。
同盟軍が囮を収めてビッテンフェルトが『詐欺』に気づいたとき、すでに体勢は確立されてしまったのだった。
X
ケンプ艦隊から逃げおおせた第13艦隊は、6光時(およそ65億キロ)移動した宙域で第7艦隊を降伏させたキルヒアイス艦隊と対峙していた。
「敵の数、わが軍の3倍強。敵司令官ジークフリード・キルヒアイス中将の名前で降伏勧告が届いています」
通信オペレーターの報告を耳にしたヤンは指揮卓の上であぐらをかいたまま、おさまりの悪い黒髪をかきまわした。
「そうだね、我々だけならそれもありだろうね」
まっとうとは言えない司令官の呟きに、グリーンヒル中尉をはじめとする幾人かの幕僚が唖然とした顔をした。
「ふう……やれやれ」
ヤンはごまかすように頭髪をかきまわし、キルヒアイス艦隊と交戦すべく砲撃命令を下した。
──キルヒアイス艦隊分艦隊旗艦アウルヴァング──
「閣下、どうやら相手は仇の第13艦隊のようです」
「ほう、我々はついているな。この圧倒的な戦力でヤン・ウェンリーと対峙できるとはな」
本当は己の艦隊だけで「奇蹟のヤン」と戦ってみたかった、とベルトマンは思っていた。ただ、彼も自分の力量の幅をわきまえており、現在の段階でヤンを苦しめることはできても勝利は難しいと客観的に理解していた。
「ここで会ったらなんとやらだ。さすがのヤン・ウェンリーも4倍に迫る兵力相手では奇策を考える前に息切れするだろう。キルヒアイス提督もヤンに劣る人ではないからな」
「ええ、キルヒアイス中将なら十分ヤン・ウェンリーに勝利することができましょう」
「そうだな、ウーデット中佐。しかし、ヤンがそれほどチョロいとは思えん。キルヒアイス提督もそのところはよくわかっているはずだ。奇策など用いず、大兵力を駆使して確実な勝利に結びつけるだろう」
ベルトマンの言葉通り、キルヒアイスは疲弊と消耗を狙い、部隊を3隊に分けて2時間交代で一隊ずつが遠距離からの攻撃を行う手段にでた。特に奇をてらった戦法ではなかったが極めて正攻法で隙がなく、ヤンを大いに困らせることになった。
「やれやれ、キルヒアイス提督はローエングラム伯の腹心というが、どうして見事な用兵だね。付け込む隙も逃げ出す隙もないときたもんだよ」
感心してもいられない。このままでは数的にも物質的にも劣る第13艦隊は敗北への道をただひたすら転げ落ちることになってしまうのだ。ヤンは有効な手段を考えねばならなかった。
別の宙域では第5艦隊がロイエンタールの艦隊の追撃を未だ振り切れないでいた。
「敵もなかなかしつこいのう……」
ビュコック提督は、しわの刻まれた顎をなでながらつぶやき、ロイエンタール艦隊の追撃に耐え、ひたすら後退を続けていた。
「ビュコック提督、ボロディン提督との合流ポイントを逸脱していますが?」
副官ファイフェル少佐の指摘を老練な用兵家は首を横に振って改めた。
「残念じゃがボロディンもわしらと同じ状況じゃろう。とても呑気に合流などしている暇はないじゃろう」
信じてはいたいが第12艦隊が撤退に成功しているという保証はどこにもない。同盟軍全てが確実に帝国軍の猛攻を受けているはずなのだ。状況的に手一杯か敗北か……合流という足かせを作るべきではない。合流ポイントに第5艦隊がいなければ第12艦隊もイゼルローン方面に後退するだろう。合流ポイントに敵を引き連れてくるのも問題である。
ビュコックはそう考えていた。本来、そう予測するのが普通であって、まともに合流できると期待するのはいささか神がかり的だった。
しかし、もう一つの奇蹟は訪れる。
「3時方向からエネルギー波急速接近!!」
「なに?」
ロイエンタール提督の短い呟きには意表を突かれた驚きが含まれていた。左右の瞳の色が違う「 金銀妖瞳 ( ヘテロクロミア
) 」も微妙に揺らぐ。なぜなら帝国軍が同盟軍の窮地を狙って一斉に反攻を開始したにもかかわらず、その中から味方を救援できるだけの余力をもった同盟艦隊が出現しようとは予想していなかったのだ。
「ヤン・ウェンリーか?」
そう思ったのも無理からぬ事だった。ラインハルトを含め、彼の麾下の艦隊司令官たちは「奇蹟のヤン」を意識せざるを得なかったのである。
しかし、第5艦隊救援に現れた同盟軍は第13艦隊ではなかった。当人がロイエンタールの言葉を聞けば「同盟にはヤンしかいないと思われても困る」と訂正を求めたであろう。残念ながらロイエンタールの偏見を知り得なかったので、当人は帝国軍の側面を突いて「ニヤリ」と笑っただけであった。
『ビュコック提督、大変お待たせしましたな』
「おお、ボロディン、無事だったか」
第12艦隊ボロディン中将の「紳士的勝負師のような顔」が通信画面に映ると、旗艦「リオ・グランデ」の艦橋のいたるところから「勝った勝った」という歓喜の声が上がった。
『ええ、ミスマル提督のおかげでわりと早く撤退準備を整えることができましたから』
「ほほう、それはそれは素晴らしいことじゃわい。わしなど警報を鳴らされながらこのていたらくじゃ。どれ、ぜひその手腕を教授願いたいものじゃな」
『ええ、いいでしょう。少々荒っぽいやり方ではありましたが……その前に』
「うむ、その前に……じゃな」
二人の名将に「敵を遠ざける」という目的語を確認する必要はなかった。絶妙な連係攻撃によってロイエンタール艦隊に逆撃を加える。
「ちっ、仕方がない。ここは一旦後退してから敵を追撃するか」
ロイエンタールの判断は的確ですばやい。彼は防御体制を整えて全艦に後退を命じた。同盟軍の戦力をほどよく削り取ってあるためムリをする必要はなかった。
「しかし、あの方向からの援軍ということはルッツが敗れたのか?」
ロイエンタールの疑問はビッテンフェルトと同種のものだった。彼は圧倒的に有利と思われた帝国軍の反攻にほころびが生じつつあることを感じ取ったのだ。
残念ながら、その変化を生かせる者ばかりとは限らなかったが、第12艦隊の撤退成功はユリカの行動が結実した数少ない「変化」の一翼になったのである。
こうして第5艦隊はようやくロイエンタール艦隊の追撃から解放され、第12艦隊とともにイゼルローン方面に再び撤退を開始する。だが、一息ついた彼らの元に総司令部から無情と思える命令が届いた。
「本月11日を期し、全軍アムリッツァ恒星系に集結せよ!」
Y
600万キロの虚空を隔て、三名の提督による砲撃命令がそれぞれの通信回線を席巻した。
「ファイエル!」
「ファイヤー!」
「撃てっ!」
双方合わせて20万本におよぶ中性子ビームが長大な宙域を疾走し、巨大な宇宙戦艦群に猛烈な速度で突き刺さった。最初ビームは防御シールドに阻まれて弾かれるが、エネルギーの集中に対して限界が訪れると、たちまちシールドを突き破ってぶ厚い装甲をもやすやすと貫いた。各所で爆発が生じ、その数が増すとエネルギーの往来が激しくなった。
ナデシコのメインスクリーンをいくつもの光の色が染めあげる。艦橋はユリカの指示や命令が飛び交う以外は静かであり、誰も自分が担当する責務に集中し、端末とにらみ合いながら戦況データーを一瞬でも見逃すまいと懸命になっていた。
「敵艦隊の左翼が突出してきます」
「敵の罠です。誘いに乗ってはいけません。このまま防御陣形を崩さず、後退しながら敵の前面に砲火を集中し、第10艦隊の右翼部隊と協力して進撃を止めるのです」
「提督、2時方向からミサイルが多数接近してきます!」
「6時方向に囮を射出してください。艦隊陣形はそのまま。味方は慌てずに集中して敵左翼部隊に対処します」
数秒後、天底方向が囮に誘導されたミサイルによって烈火の絨毯を作り出す。ユリカたちの頬に爆発光が反射し、その光の連鎖が終息しないうちにオペレーターの少女の声が飛んだ。
「敵の左翼部隊からワルキューレの発進を確認しました。数、およそ4000!」
「スパルタニアン部隊を全機出撃させてください。ただし防空に専念し、無理な空戦は行わずに艦隊と連係してワルキューレの接近を阻止するように通達を徹底。エステバリス隊は調整中の3機を除いて全機出撃。ですがナデシコの直掩のみとします。これは命令です」
ユリカは忙しく指示を飛ばす。まさに息つく暇もないという状況である。まさか、これほどまでに激しい追撃をされるとは想像していなかったのだ。第10艦隊と合流を果してから6時間を経過しているが、黒い艦隊の追撃は衰えるところを知らないようだった。
最初の戦闘から10数時間以上が経過し、あまり長時間の戦闘に不慣れなナデシコ人員たちに疲労の兆しが見え始めていた。ファンベルグからリューゲンまで5時間を要し、その間、2時間交代で休息を一度とっただけなのだ。タンクベッドの導入が間に合わなかったナデシコでは通常の睡眠をとるしかない。
極度の緊張を長期に強いられる中にあって、もっとも体調を心配されたのはホシノ・ルリだった。
少女は、
「心配ありません。特に問題ありません」
と仏頂面で強調したが、IFS強化体質は体力面の強化をうたったわけでもない。ルリはその強化体質を除けば妙齢の少女でしかないのだ。少女はこれまでも淡々と職務をこなしてきているが、今回はその中でも極めつけの厳しさである。
ユリカは、ルリの横顔を視線でひと撫でした。変わらないと思う、いつものルリちゃんだ。彼女が「大丈夫」と言っている間は平気だろう。今はルリちゃんのがんばりを信じて私たちも戦い抜かなくてはいけない!
「ふう……」
とユリカは軽く息を吐き出した。落ち着いて思考するための前置きみたいなものだ。なんとか追撃を振り切るためには黒い艦隊を打ち負かす必要があった。今の状態では膠着状態に陥ってしまい、みんなの疲労がピークに達してしまう。この状態を打破するためには流れを変えるしかない。ただ、それにはウラフ提督の協力が必要不可欠だ。でも、きっと提督なら……
ユリカは決意した。
「全艦、第10艦隊の後退にあわせ、敵左翼部隊に全面攻勢をかけます」
第14艦隊は後退と防御から一転、突出して帝国軍左翼部隊めがけて集中砲火をあびせる。誘いだすのが目的だった帝国軍だが、第14艦隊の攻勢は組織的で乱れがなく意表を突かれた形になった。しかもユリカは敵の支点を正確に特定しており、その宙域に向って確実に砲火を浴びせ、左翼部隊を押し込みながら徐々にその兵力をそぎ落としていった。
「やるなミスマル提督、よいポイントを突いている」
とは、ユリカの狙いを理解した父親のような心境のウランフであり、
「やるではないか、実にいやらしいポイントに砲火を加えおって!」
ビッテンフェルトが賞賛とも負け惜しみともわからない台詞を吐き捨て、同時に床を蹴り上げる。太い腕をたくましい胸のあたりで組んでじっと戦術スクリーンを見つめていたが、一見泰然としているようであり、その眉間には浮き出た血管付で深い谷が刻まれていた。
帝国軍の猛将は、勝利しかけた戦場で「無粋な横槍」を加えてきた第14艦隊に激しい怒りを抱いていたのだ。長年、ビッテンフェルトの副官を務めてきたオイゲン大佐もできることならシールド装備で半径2.5メートル以内には近づきたくないと本気で思ったくらいである。
ビッテンフェルトは、その旺盛な攻撃精神と戦術能力をラインハルトに高く評価された麾下の提督である。第10と第14艦隊が合流したことにより数的には劣勢の帝国軍だが内情では逆転しており、同盟軍を蹴散らせるだけの実力を備えていた。
しかし、ビッテンフェルトにとって不幸だったのは、勇将と発展途上にある女性司令官との間にある信頼関係と二人の戦術能力に相対することになり、巧みな連係によっていつの間にか半包囲されていたことだった。
「「撃てっ!!」」
反撃の攻撃命令が通信回線に充満し、同盟軍はこれまでの「借り」とばかりに熱狂的にビームを撃ちまくった。
「おのれ、こしゃくなヤツらめ!」
さんざん第10艦隊をいたぶっておいて手前勝手な言い種ではあるが、ビッテンフェルトは守勢に弱いという欠点をさらけ出してしまい、思わぬ反撃に足元をすくわれたかっこうになっていた。
「ここが勝負どころだ。全艦、攻撃の手を緩めるな」
「両翼を展開し、完全な包囲網を敷きます」
ユリカの第14艦隊が右翼から敵左翼を詰め、ウランフの第10艦隊が左翼と正面から足の止まったビッテンフェルト艦隊に猛攻を加えた。
「閣下、このままでは損害が大きすぎます。ここは敵の包囲網が完成する前に一旦後退して味方部隊と合流を図るべきです」
オイゲン大佐が上官を心配して訴える。ビッテンフェルトもこのままでは敗北することを充分承知していた。彼に期待した上官の信頼を裏切る事態になることもわかっていた。
それでもビッテンフェルトは退かない。黒色槍騎兵艦隊に「退却」と「後退」の四文字は存在しない。前進して刺し違えてでも敵を屠るのが絶対であり、猪突猛進こそが黒色槍騎兵艦隊の本分であり、誉れだった。
「艦隊をより密集させて防備を固めつつ、敵の正面に向って前進するのだ。我がシュワルツ・ランツェンレイターに存在するのは勇者だけだ」
帝国軍は同盟軍の激しい砲火にさらされながらも整然と前進を開始する。立場が逆転してしまったが、熱血系提督を好いている将兵は多い。だからこそ帝国軍も容易に崩れないのだ。状況は劣勢に見えてなお1万隻以上の戦力を有する帝国軍は、疲労のたまる同盟軍に再逆転する余力があった。
事実、同盟軍にとって巨大で黒い重厚な戦艦群が艦列を並べて前進してくる様は恐怖と戦慄の何者でもない。緒戦でビッテンフェルト艦隊と交戦し、その破壊力を身にしみている第10艦隊はそれゆえに攻撃の手を緩めようとはしなかった。
ウランフはユリカと連係し、ビッテンフェルトを窮地に陥れようとしていた。
そのさなかにイゼルローンの総司令部から1通の緊急電文が届く。
ウランフは連絡士官に促した。
「読んでみろ」
「はっ! 本月11日を期し、全軍はアムリッツァ恒星系に集結せよ、とのことです」
報告を聞き終えたウランフの表情は一瞬だけ失望していた。
「簡単に言ってくれるものだな。こちらも今は優勢だが包囲を解いてしまったらどうなるかわからんというのに」
とはいえ、目の前の戦闘に固執して他の艦隊がアムリッツアに集結してしまえば、ただでさえ傷つき疲労がたまっている第10、第14艦隊は敵中に孤立することになる。戦略的には適切ではない。
「やむをえないか……」
ウランフは、第14艦隊との間に緊急の通信回線を開いた。
「ミスマル提督、電文の内容は確認したな?」
『はい、ウランフ提督』
ユリカの表情もどこか失望していた。きっと彼女も電文の内容が撤退命令だと期待したに違いない。しかし現実は厳しい。
「いろいろと言いた事もあるだろうが、集結命令を無視するわけにはいかない。理由はわかるな」
『はい、提督』
「よし、少々強引な後退になる。心してかかれよ」
同盟軍は帝国軍の砲火を受けながら後退する課程で少なからず犠牲を払うことになった。
「どういうことだ、なぜヤツラは後退するのだ?」
疑問だらけのビッテンフェルトのもとに、ほどなくしてラインハルトから通信文がもたらされた。
「そうか……ならばアムリッツァで雪辱を晴らしてくれる!」
烈火を宿す猛将の瞳には、急速に遠ざかる「叩き潰す対象」がしばらく映っていた。
Z
「ロボス閣下、すでに第3、第7艦隊は通信途絶。
第9艦隊のアル・サレム中将は戦死し、戦力の半数を失ったとの報告が入っています。第8艦隊は敵の追撃を振り切った模様ですが3割近い犠牲を払っております。第5艦隊は第12艦隊と合流を果しましたが、途中まで敵の追撃を受けて2割の損害を出しています。
ヤン提督の第13艦隊は第12艦隊とともに健在ですが、ドヴェルグ星域にて3倍強の敵と対峙し、すでには8時間が経過しております。第10、第14艦隊も合流こそ果したようですが、双方合わせて4割を超える犠牲を出し、撤退途中にハインスベルグ星域にて追撃してきた敵艦隊と交戦状態になり10時間近くが経過しております。
我々は敵の策略に乗せられたのです。ここはこれ以上の損害を被らないうちにイゼルローンへ全軍を撤退させるべきです!」
グリーンヒル大将は声を高めて総司令官に危機的状況を訴えたが、メインスクリーンを見ていたロボスにその声は届かなかった。
「戦力の再編成を行う。全軍をアムリッツァに集結させよ」
総参謀長は数歩あゆみ出てロボスに詰め寄った。
「閣下! 我が軍は敵の戦略の前に敗れたのです。これ以上の戦闘行為による犠牲は無益なだけでなく国防にも影響します。すぐに残存する艦隊をイゼルローンに一刻も早く撤退させるべきです」
一瞬の沈黙が両者の間に流れたが、双方が感じたそれぞれの思惑は相容れないものだと気づく。ロボスはグリーンヒル大将をにらみつけた。非情な命令がイゼルローン要塞の司令部に響いた。
「くどい! 6個艦隊もあるのだ、帝国軍に意地を見せずにどうする、このまま引き下がるわけにはいかぬのだ。全軍をアムリッツァに終結させよ。これは命令である」
グリーンヒル大将は愕然とし、失望で肩がわなわなと震えていた。
──帝国軍総旗艦ブリュンヒルト──
同盟軍の動きを知ったラインハルトは、指揮シートに優美な身体を沈めたまま薄く冷笑した。
「どうやら今ごろ兵力分散の愚に気づいたようだな」
「そのようです」
そう答える総参謀長オーベルシュタイン准将の声は落ち着いているというより、相変わらず感情に乏しい。彼もまだナデシコが戦場に存在するという事実を把握してはいない。ナデシコに関する調査もイゼルローン陥落以降、進退問題を含めてやや滞りがちになっていた。唯一情報を共有するベルトマンらと積極的に情報を交換するような性格でもない。
オーベルシュタインは、ラインハルトやキルヒアイスがあの戦艦について調べていることを知っていたが、彼は自分が掴んだ情報を公開せず、現時点で義眼の総参謀長が何を考え、どこまで真実を突き止めていたかを知る者は皆無だった。
「閣下、敵は意外に多くの戦力を残しつつ、アムリッツァ恒星系あたりに集結するようです」
「うむ。3個艦隊を早々に撃滅できただけでも充分だ。ほかの艦隊も無傷というわけでもないからな」
と言いつつ、ラインハルトは当初の予想より戦果が少ないことに多少の苛立ちを覚えていた。一部の同盟艦隊が少し早めに撤退準備を行っていたことが影響したと思われるが、彼らが自分たちの置かれた状況により深い危機感を抱いて決断した理由とは何であろうか? ほぼ同時期に複数の艦隊が撤退準備を始めているため個々の行動が偶然重なったとは考えにくい。ともすればヤン・ウェンリーあたりが声を上げ、各艦隊司令官に警告を発したということだろうか。
(いずれも違うな)
とラインハルトは思う。なぜなら、ある同盟艦隊の行動時期とその他艦隊の撤退準備の行動時期が一致しているからだった。
「第14艦隊か……」
あの詳細不明の同盟艦隊の真の狙いが同盟軍に現状の深刻さを認識させ、撤退を急がせることだったら?
ラインハルトの戦略の本流は揺らぎようがない。だがその中から現れた「異質」が戦略の支流にささやかな楔を打ち込んだとすれば、小さい流れの変化が大河に与える影響とは何か? それは大きな流れをすぐに妨げるものではないかもしれない。
しかし、いくつもの小さな流れは大河を形成する。その一つの流れの変化はささやかでも年月を経れば大河になんらかの影響をもたらすのは必然といえる。
(敗北の連鎖を断ち切ろうというのか、第14艦隊?)
ラインハルトの蒼氷色の瞳が鋭く光る。まだ見ぬ敵将に対して問うたそれは、第14艦隊がミュラーに損害を与えて追撃を断念させたことで、よりラインハルトの興味を強くした。
オーベルシュタインの声がした。
「閣下、いかが対処いたしますか」
ラインハルトの思考は瞬時に現実に戻る。
「ヤツらが望むならそれを叶えてやろうではないか。おとなしくイゼルローンに逃げ帰っていればいいものを、わざわざアムリッツァを墓所にしようというのだからな」
ラインハルトは悠然と命じた。
「全軍をアムリッツァに集結させよ!」
Z
巨大な恒星アムリッツァが灼熱の炎を吹き上げ、膨大なエネルギーを漆黒の宇宙に発散させている。
「なんか真下から焼かれているようで、いい気分はしないわねぇ……」
と重々しくぼやいたのはミナトである。まさか太陽の上に布陣するとは想像していなかったらしい。そんな感じだから最初は仰天したのだが、以前ナデシコの外壁がオール交換された理由に納得したりする。耐熱性の増した外壁と空調のおかげで艦内の温度と湿度は一定に保たれているものの、なんだか蒸されている感が消えず、妖艶な操舵士は時折、豊かな胸の谷間に手のひらで風を送り込んでいた。
送り込みながらミナトが見ている二次元スクリーンには、とんでもないの数の同盟軍艦艇が映っている。
「10万隻に上る艦隊を見てみたいものね」
などとほぼ一年前に思ったものだが、まだその数に到達していないとはいえ、その数に匹敵する艦艇が集結しているのである。これに帝国軍が加われば総勢は少なくとも15万隻以上になり、壮大な光景になるはずだ。
「ぜんぜん、面白くないけど……」
微熱のかけらもなくミナトは冷めたように呟いた。10万を越える艦艇が争いではなく、なんらかの軍事パレードを行うなら、彼女はナデシコの艦窓からワインを片手に優雅に鑑賞を楽しんだことだろう。
しかし、実際はこれから
「想像を絶する決戦」をするのであり、その中心の一角を占める
「第14艦隊旗艦ナデシコの操舵士」を務める美女は
「絶景?」を全く楽しむ気分になれなかった。そこまでミナトも神経がず太いわけではないから当然といえば当然である。
「戦いに生き残ったら絶対にハイネセンを観光するわ!」
ふと、左側に目を向ければ、ミスマル・ユリカが通信越しに各艦隊司令官と会話を交わしていた。
『ウランフ、ヤン、ボロディン、アップルトン、ミスマル提督、貴官たちが無事でよかった』
ビュコック提督がほっとした顔で同僚たちに語りかけた。
『帝国軍の反攻は尋常ではなかったからのう。第3、第7、第9艦隊の司令官は帰って来なんだでな』
肩を落とす同盟軍の宿将を勇将が励ました。
『ビュコック提督、まだ終わったわけではありません。緒戦では敗れましたが充分に戦える戦力があります。まだ嘆くには早すぎますよ。我々には幸運の女神もいることですしな』
『おお、そうじゃったな。ミスマル提督のおかげでウランフは助かったのだからな』
『ええ、よくがんばってくれました。まさに戦女神です』
一斉に各艦隊司令官の視線がユリカに集中した。白い制服に身体を包んだ駆け出しの女性艦隊司令官は気恥ずかしそうに頬を染め、肩をちょっとすくめてかしこまった。
「いえ、私が至らないばかりにウランフ提督にはご負担をおかけしてしまいました。より早く救援に駆けつけることができれば犠牲はもっと少なかったでしょうに……」
『そんなことはない。貴官の行動と勇気がなければウランフもどうなっていたかわからんじゃろ。ボロディンも早々と撤退などできず、わしの艦隊はもっと犠牲を出していたかもしれん。ミスマル提督、貴官は流れを変えるために最大限努力してくれた。もっと自分の行動と能力に誇りを持ってよいのじゃよ。貴官は立派な艦隊司令官じゃ。ここに集う艦隊司令官はみなそう思っておる。いや、貴官を認めておる。まだ全てが終わったわけではないが感謝しておるよ』
ビュコックが頭を下げると、各艦隊司令官も同意したようにユリカ向かって敬礼した。
「ありがとうございます。まだまだ力不足ですが最後まで責任を全うさせていただきます」
ユリカは感動し、同時に身の引き締まる思いがした。凛々しい敬礼で司令官たちに敬意と感謝を表明した。
通信が終わりスクリーンが消えていく途中、ヤン・ウェンリーが笑顔交じりにユリカに言った。
『ミスマル提督、おたがいにがんばろう』
ユリカは驚き、慌てて返礼した。
「は、はい……はい、ヤン提督!」
穏かなヤンの顔が通信スクリーンから消えても、ユリカはしばらく頬を染めて立ち尽くしていた。
「て・い・と・くぅー!!」
わざとらしく声のトーンを上げてユリカを呼んだのは通信士のメグミ・レイナードだった。最近、彼女は後ろにまとめていた三つ編みをほどき大人っぽさが増している。前髪が落ちるのを防ぐヘアバンドもとてもよい感じだ。よくよく考えれば元声優の少女ももうすぐ20歳を迎えようというのである。様々な経験を得て成長するのは当たり前だった。
「提督、浮気しないでくださいねぇ」
なんとなく意地悪な声だった。細めた目がさらに効果を高める。この辺は変わっていない感がある。
ユリカは、ビクリと身体を震わせて否定した。
「何を言っているんですか! 私にはアキトっていう白馬の王子様がいますぅ!!」
「ムキになるところが怪しいわね。ま、今のヤン提督はなんだかとてもかっこよかったし、なんか妙に安心できるのよね。一目ぼれしても不思議じゃないわね」
と突っ込んだのはミナトだった。何気に目が疑わしそうにユリカに向けられていた。
「そうですね、私もミナトさんと同意見です。今のヤン提督の笑顔になんだかキュンときてしまいました」
イツキ・カザマがクスクス笑いながら告白すると、
「まあ、ヤン提督の人気は絶大ですからね。エル・ファシル以降も女性からのファンレターが絶えなかったということですが、イゼルローン攻略後はさらに増えたそうですよ。いやはや、なんとも羨ましいですな」
とプロスペクターまで参戦してしまったものだから連鎖的に話題は拡大し、あちこちから「言わせろ」とばかりに声が上がった。
しかし、暴走しかけたカオスは一人の吊り目の美人少尉によってあえなく収束した。
「みなさん! 大事な決戦前に何を呑気にのろけ話ですか! 集中よ、集中してください。前から指摘してますが、だいたい提督がみんなを甘やかすからくだらない話に脱線するんです。艦隊司令官として綱紀粛正に務めてください!」
「は、はい……スミマセン」
ユリカが謝る隣で「怖いな」とスールズカリッター大尉は思う。ボブショートヘアーの女性を副官として教育する立場にある彼だが、時折どちらが教えられているのかわからなくなることがあったりするのだ。エリナの処理能力と行動力に彼自身が引っ張られて鍛えられているようでもある。でもまあ、なんとなくこの空間にいると、とても死ぬことなど考え付かないのは不思議なことだった。
「提督、艦隊の再編作業が終了しました」
ルリが報告と同時にデーターを表示した。大人たちのくだらないやり取りの間も少女は黙々と再編作業を続けていたのだ。
「ありがとうルリちゃん」
アムリッツァに集結した同盟軍は、この宙域でようやく補給物資を受け取ることができていた。その他には損傷した艦艇を後方に下げ、傷病兵を病院船に収容し、前線に残る将兵たちはつかの間、決戦前の休息をしたのある。
第14艦隊も同様に補給を受け、モートン少将がまとめる第9艦隊の残存兵力を指揮下に置き、その数は1万隻に達していた。ウランフの第10艦隊は第3、第7艦隊の残存兵力を統合し指揮下に置いている。
帝国軍の猛攻をかいくぐりアムリッツァに集結した同盟艦艇はおよそ7万隻。帝国領侵攻作戦開始当初が15万隻あまりだから戦力は半減したことになる。
落ち着きを取り戻したナデシコの艦橋は、今度は計器類やデーターをチェックする声に満たされる。エステバリスのパイロットたちは早々に格納庫にて待機。ウリバタケ率いる整備班はエステの調整にぎりぎりまで余念がない。怪我をしたアキトはもちろん出撃停止をくらい、医療室のベッドでイネスやラピス、ユキナに見張られた状態で寝ているはずだ。
「アキトったらおとなしくしているかなぁ……」
ユリカは、そんなことを心配しながら艦橋に集う頼もしい仲間を視線で追い、カールセン提督、モートン提督と通信回線を結んで協議を始めた。
──宇宙暦796年、帝国暦487年標準暦10月11日、10時24分──
アムリッツァから始まるもう一つの伝説の行方を知る者は、まだ誰も存在していない。
……TO BE CONTINUED
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あとがき
涼です。1カ月ぶりとなりました。本編を先に投稿させていただきます。外伝と記念SS書いていたら10月にずれ込みそうなので。ボリュームも2話分です。まいど増量してしまうのですが途中で切るのムリ!
秋といえば「食欲と読書の……」が決まり文句ですが、その一端にささやかに貢献できればと思います。
今話は、第10艦隊の戦いを中心に各提督たちの戦況を書きました。まるまる黒色槍騎兵艦隊との戦闘を書きたいなと思うところですが、メリハリは必要ですからねw
アムリッツアには、原作よりも3個艦隊多い、6個艦隊が投入されることになりました。原作とは違った戦いになってくると思われますが、死亡リストにあった提督を「生存」させたため、当初考えていた戦術の見直しを迫られそうです。個人的にはそれまでの戦闘描写を上まりたいとも考えていますが、もともとそれほど能があるわけでもありませんから苦労するかもしれないですw
以上です。今回はさらっと流した感じ?ですが、次回の予想(妄想w)をふくめ、今回も感想とご意見を心よりお待ちしています。
それからまた余談ですが、銀英伝とナデシコの共通点ていくつかありますが、作品ジャンル以外ではなんだと思いますか?
実は、二作品とも2007年に文化庁が主催したメディア芸術祭10周年記念の企画として、日本の芸術100選のアニメ部門ベスト50位内に入っているのです。ナデシコが46位。銀英伝が18位です。
なんというか、銀英伝の健闘振りには驚きましたが、同時に「やはりな」と納得しました。上位はメジャーな人気作ばかりですからね。ちとファン層の年齢が高く、大きな票は難しいと考えますが、よい作品はやはり長く愛されるものだと痛感したものです。銀英伝は年代別ランキングでも上位にランクされています。
一位は、「ああ、やはり」と思う作品でした。宮崎監督作品が多く上位に名を連ねているのは、至極当然というところでしょうか?
皆さんのひいきにする作品がどの順位か知りたい場合は、文化庁のサイトをぜひ覗いてみてください。
ちなみに、50位までしかUPされていません。あとは自由投票部門のベスト10がランクされています。
2009年9月16日──涼──
(以下、修正履歴)
新章突入の前に誤字や脱字、一部加筆を行いました。
文末に「末尾特別短編そのF」を追加しました。
2009年11月8日──涼──
微妙な修正を加えました(汗
2009年11月15日
最終修正。段落調整および誤字訂正。
末尾IF短編は削除しました。
2011年6月25日 ──涼──
鯖移転時の文字エラーを修正しました。
2012年7月22日 ──涼──
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆メッセージ返信コーナー☆☆☆☆☆☆☆☆
いただいたメッセージに対する返信です。まいど時間があいて申し訳ありません。
◆◆2009年8月11日◆◆
◆8時41分
まさに銀英伝らしい戦術でした。自走機雷攻撃とは鬼畜なw
>>>ありがとうございます。鬼畜でしたか? 作者の心境は「あれれ?」って感じです。
◆◆8月13日◆◆
◆23時8分
アキトがサイボーグ兵士になるか気になる
>>>うーん、さすがにそれはやりすぎなんでないと思います。
◆◆9月8日◆◆
◆23時36分
すげーです。感動しました。面白い!!
>>>感動までしてもらって恐縮です。どの辺に感情を揺さぶられたのか教えていただけると嬉しいです。今話はどうでしょうか?
以上です。メッセージおよび、感想掲示板でお待ちしています。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆メッセージ返信コーナー☆☆☆☆☆☆☆☆
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