緊迫した任務とは裏腹に無事平穏ですが、時間は刻々と過ぎていくわけで……
ミスマル艦隊は緊張感を維持しつつ、第11艦隊の全面降伏を待つ平和的……じゃなかった――停滞気味の一日で終わるかに思えましたが、突如として受信した映像が艦橋を騒然とさせました。
「え? トリューニヒト……ちょっとこの人何やってんの?」
「ええっ!? ウランフ提督がトリューニヒトと組んでハイネセン解放に動いているって??」
「本当に議長自身が戦場に出ているのでしょうか? 悪質な演出では?」
「映像をねつ造とか、トリューニヒトならやりかねないんじゃね?」
「議長の腕の包帯がなんか漫画巻き……ウフフフ」
「次の同人誌のネタにならないかなぁ?」
「真実性に欠けるって思われる国家元首もどうかと思うけど……」
「俺はアオイ艦長に同意するね。一市民としては恥ずかしいことだけどさ」
皆さん言いたい放題です。残念ながら私も大半の意見に賛同します。あのトリューニヒトさんが戦闘に参加して負傷とか嘘っぽい。映画の撮影でスタント付きでもスーツが汚れるとかで出演NGな感じ?
この場に居ないツクモ大佐やアクア中尉、この演説を部屋で見ているシトレさんやフクベ提督も唖然としているんじゃない?
でも現実的な話、駐留艦隊だけで全ての叛乱を鎮圧するには時間がかかるわけで……
内戦も、また一歩終わりに近づいたのかな?
――ですが、我らの提督の表情を見る限りだと、手放しでは喜べないようです。
―― ホシノ・ルリ ――
闇が深くなる夜明けの前に
機動戦艦ナデシコ×銀河英雄伝説
第十九章(中編)
『青時雨の空/そして地上ではZ』
T
いまだハイネセン解放への途上にあるヤン艦隊でも、テルヌーゼンより全同盟領に向けて発信された国家元首のまさかの演説映像に至極妥当と思える反応と毒舌が飛び交った。
「あいつ、きっとどこかで頭を打ったか、でなければ悪いものでも食べたんじゃないか?」
「最後のほうはむしろ議長らしいパフォーマンスだったのではないでしょうか?」
「いや、でもこの行動は逆に歓迎すべきなのでは? あのトリューニヒトが勢いとはいえ戦場に立ったんですよ」
「いやいやリンツ大佐、勢いで戦場に出るほどトリューニヒトは脳筋だったと思いたくないなぁ。たぶん催眠術か何かにかけられてるんでしょ? それに、あの元首様に歓迎なんていう好度感は言っていいことと悪いことの典型みたいなもんですよ」
「……ポプラン、シェーンコップ准将の分までご苦労なことだな」
「何言っていやがる。本来ならアッテンボロー少将の分まで頑張るところだが、こう見えて俺もトリューニヒトの珍行動に唖然としていてな。なかなか気の利いた皮肉が出てこなくて自己嫌悪になっているくらいなんだぜ」
「素直じゃないな」
「なんでそういう言い方するかなー」
直後にムライ少将が強く咳払いをしなければ不毛な応酬がしばらく続いたであろう。彼らは発言を止めて彼らの司令官に注目した。
ヤン・ウェンリーは、映像が流れていた間ずっと一言も発さずにいたが、ベレー帽をおもむろに脱ぐと納まりの悪い黒髪をかき回した。彼のこのクセは自信の気持ちを落ち着かせたり、考えを整理するためだったり、単なる照れ隠しだったりと様々だが、ヤンの被保護者として常に傍にあるユリアン・ミンツの見解によればこの時は「戸惑いを隠すため」であった。
しばらくたってヤンはベレー帽をゆっくりと被りなおすと、集う幕僚たちに向けて言った。
「地上で起こっていることは我々にとって前向きであると同時に議長の演説は無用の問題を引き起こしかねない懸念材料たりえるだろう」
「前向き」であると同時に「懸念」というのは見事に二つの要素が相反するということだ。幕僚の半分くらいが顔をしかめているので、ヤンとしては「歓迎と懸念」の「効果」と「悪影響」についてそれぞれ説明する必要があった。
「前向き、と言うのは皆も承知しているとおり、この内戦を最短に終結させることがより近づくという点につきるね」
証拠は何一つないが、もともと同盟における内戦がラインハルト・フォン・ローエングラムが自身の野心達成のために仕掛けた策謀なのだ。言わば彼の計画に沿って強制的に誘導され、扇動された内戦だった。内情的に不安定要素の強い同盟において、いつかは何らかの騒動が発生したかもしれないが、同盟領全体を巻きこむほどの規模にはならなかったはずだ。帝国領侵攻作戦の傷も癒えないまま望みもしない不要な内戦を引き起こされたのだから、早期に集結させることに何ら迷いはない。
「ただ、我々はまだ二か所の叛乱を鎮圧せねばならない。それには早く見積もっても2週間程度はかかる。このまま二か所を素通りしてハイネセンを直撃も可能だが、地上との連絡手段がない以上、逆にハイネセンをより混乱に巻き込みかねない。今は外堀を埋めるのが先決だと思う」
全ての幕僚たちは肯定的にうなずいた。ヤンも返すようにうなずいたが、胸中ではやや複雑な心境を持っていたのだ。その場で口に出すようなことはしなかったが……。
ヤンは次に「悪影響」について語った。
「これは議長のありがたい演説に触発された市民が蜂起しかねないという事かな」
司令官の皮肉たっぷりな言葉に幕僚連中は笑い声を上げたが、救国軍事会議のクーデター以来、ハイネセン市民は常に抑圧された状態で生活を送っている。中には恐怖を覚えている市民も少なくないだろう。そんな不安な最中の「反攻中」だという国家元首の演説である。
ヤンがここで強調したのも「出なくてもいい犠牲者が出てしまう」ことだった。
ムライが言った。
「これまではハイネセンで市民による異変が発生したという情報はありません。救国軍事会議に首都機能は制圧されているはずですし、我々がハイネセンに近づいている状況で、軍隊を相手に市民があえて蜂起するなどありえるでしょうか?」
「確かに今更と言う気もしないが、それだけ今回の議長の演説はインパクトがある」
歴史上、窮地に立った市民が生存本能と高い自由意志によって蜂起し、強力な武器を持った軍隊、もしくは侵略者に挑んで勝利した例はいくらでもある。最も、計画も準備も整わず、場当たり的な流れで組織的な『蜂起』ではなく「暴動」を引き起こす可能性も十分あるわけで……
ヤンは、今後の方針を仮にまとめると幕僚たちを一旦解散させた。
U
私室に戻ったヤンにユリアンが紅茶を運んできたとき、彼の保護者はやや浮かない表情であった。
「提督、何かご心配事でも?」
ユリアンのいたわりの言葉に軽く頭を振って応じた黒髪の大将は、ティーカップを受け取って一口飲むと、気分が落ち着いたのか表情が和らいだ。一息入れてから亜麻色の髪の被保護者に言葉をかける。
「ユリアン、心配をかけてすまない。でももう大丈夫、割り切って考えられそうだよ」
これを聞いたユリアンは、ヤンが会議中にわずかに見せた表情の変化から、やはり何かを内に秘めていると感じ取っていた。
「提督、質問してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、遠慮することなんてないよ」
「では、お言葉に甘えて」
ユリアンの質問は、ヤンが仮にまとめた方針とは別に、本当は言いたい何か他の考えがあったのではというものだった。ヤンはティーカップをトレイに置くと、右手で軽く頭をかいて肩をすくめた。
「やれやれ、見透かされていたのか。他の連中にも感づかれてしまったかな?」
「さあ、それはどうかわかりませんが、本来ならシェーンコップ准将やキャゼルヌ少将がご指摘されることなんでしょうけど……」
確かにあの二人ならヤンの態度や口調の変化を的確に読み取って、その本心を見事に言い当てた可能性が高い。ただ、ヤンが本心を話したら話したで「うぬぼれだな」などとからかわれたに違いないだろう。
「ユリアン、我々が順当に残りの星系の叛乱を鎮圧し、最後は当然ハイネセンだとする。首都星解放で最も厄介なのは何だと思う?」
ユリアンは数秒思案し、いくつかの選択肢の中から「最適」と思われるものを選んだ。
「アルテミスの首飾り……でしょうか?」
回答は合格だったらしく、ヤンは嬉しそうに少年の頭を軽く叩く。
「その通りだ。救国軍事会議にとっての最後のハードウェア的な砦だ。あのいまいましい軍事天体を攻略しない限り我々の勝利はないんだ」
ヤンがアルテミスの首飾りを「忌々しい」と表現する意味をユリアンはもちろん知っていた。強力なハードウェアに頼ることの危うさを保護者は何度も少年に説いていたからだ。
ここでヤンは、ミスマル・ユリカにのみ話していた内戦の収束過程について被保護者の少年に初めて語った。ユリアンは目を輝かせて保護者の苦笑いを誘ったが。
■■■
「しかし、バクダッシュ中佐にそんな役割があるとは驚きでした」
「ローエングラム候が同盟に内紛を引き起こさせたことは間違いない。証拠はないが確証はある。我々がそのことを声高に叫んだところで救国軍事会議の連中には一笑に付されてしまうかもしれないが、当事者の一人としてのバグダッシュが証言者となれば話は違ってくるだろうね」
より中身に信憑性が増すという事だ。救国軍事会議が信じるか信じないかは別として、大いに動揺させることができるだろう。
「つまり、救国軍事会議がクーデターを起こした大義名分や正当性みたいなものが根底から崩れるということですね?」
「その通り。彼らが救国の士として志したのではなく、若い野心家の道具に利用されたのだとしたら、その決起そのものが偽物とみなされるだろうね。さらに救国軍事会議を支持した兵士たちの心を砕くには十分だろう」
その上で救国軍事会議の最後の切り札である「アルテミスの首飾り」を破壊してしまえば純軍事的な支柱を失ってそれ以上の抵抗を断念するだろうと考えていた。
ユリアンは、ヤンの戦略構想に感嘆するしかなかった。
「戦わずして勝つ。まさに提督らしいですね」
ユリアンは師を褒めたのだが、照れ笑いをしたヤンがすぐに笑いを止めたことを不思議に思った。
「なぜかって? ユリアン、私はねさっきまで文字通り自己嫌悪に陥っていたんだよ。それこそキャゼルヌ先輩やシェーンコップ准将にネタにされるくらいにね」
ヤンの戦略構想は外堀を埋めるのに時間はかかるものの、確実に救国軍事会議を最小の犠牲で敗北に導くプロセスなのである。
ただその間、ハイネセンで何かが起こってもヤンは手出しができない。地上まではまだ手の届かない彼にとってハイネセンにおけるウランフの反抗は、この内戦を短期で終結させるためにむしろ喜ばしいはずなのだ。
「ユリアン、私はそこに納得できていないみたいだったんだ。まったく度し難いとはこのことさ。ウランフ提督が苦労して私たちを支援してくれているというのにね」
まさに苦悶したようなヤンの表情をみて、ユリアンは保護者であり尊敬する対象である同盟軍史上最年少の大将がすんなりと受け入れられなかった気持ちを理解した。ヤンは自分の戦略構想ならば犠牲も少なくできるのに、ハイネセンで地上戦が始まってしまえば多大な犠牲者が出てしまうかもしれない――
――という暗にウランフたちを非難していたのだ。
「自分ならもっと上手く、楽にできるのに……そのことが度し難く、うぬぼれなのさ」
「ですが提督、ウランフ提督がその懸念に留意しないわけがないと思います。僕らは僕らができることを実行する。先ほどの会議で提督がおっしゃっていたことが全てだと思います。それこそ提督が全て背負う必要がないわけで、ミスマル提督に第11艦隊のことをすべてお任せしたように、それぞれがそれぞれの手の届く範囲で責任を果たしてもらいましょう」
ヤンは今度は笑った。そして少年の頭をくしゃくしゃに撫でまわす。ユリアンにとっては最高のご褒美だ。
「まったく、本当にシェーンコップやキャゼルヌ先輩がここにいなくてよかった。ユリアンにとっての反面教師の役割ごくろうさま、などと言われかねないよ」
「別に僕はいっこうにかまいませんよ。だって事実だって入ってますし」
「おっ、こいつ言ったな」
穏やかな笑いが静まると、次に話題となったのはウランフ提督とトリューニヒトのことだった。ヤンはユリアンが淹れなおした紅茶に舌鼓を打つ。
「二人がどうやって共闘するに至ったか、なかなか興味深いな」
「ですが、ウランフ提督はずっと入院されていたはずですよね?」
「うん、そうだね。トリューニヒトが偶然お見舞いに来たってわけでもなさそうだし……」
ヤンとユリアンも、まさかウランフが退院を前倒ししたことまではさすがに知る由もなかったのだが、彼らは少し考えてとある人物の姿を頭に思い浮かべずにはいられなかった。
「こんな偶然――と言うより、彼がもし関わっているとなればあり得なくもないかな?」
「僕もそう思います。アカツキ・ナガレ社長ですよね?」
ヤンとユリアンは、アカツキ・ナガレとは早い段階で知己になっている。少年からみた青年は只者ではなさそうと感じさせるには十分に冷静な態度だった。
「うん。彼が拘禁もしくは拘束された情報はないしね。そもそもミスマル提督の話によると、私たちがビュコック提督に協力を仰いだときに彼女はアカツキ社長に会って政界面からの協力を要請したそうだしね。エリオル社の若すぎる社長にしてナデシコの元乗員だったという彼が大いに関わっているかもしれない」
ともすれば、三人がクーデター発生時に拘束を免れ、何らかの形でアカツキ・ナガレがトリューニヒトとウランフを引き合わせた可能性はある。
「ですが……」
とユリアンが疑問視したのは、あのトリューニヒトの映像にウランフ提督とアカツキ・ナガレの姿が確認できないことだった。それについてヤンは明確に想像することができた。
「最初からトリューニヒトの演説は想定外か、意図していなかったのだと思う。私がもし二人の立場だったらハイネセンの早急な解放に不要な要素となる蜂起を呼びかける演説なんて、行動を秘匿するうえでもやらせはしないだろうしね」
「という事は、トリューニヒトが独走した結果という事ですか?」
「だろうね。その過程は想像するしかないけど」
ヤンは肩をすくめると傍らのティーカップをとりながら、ウランフとアカツキ・ナガレの苦労に同情せずにはいられなかった。
「起こってしまったことをなんと言おうが覆せないわけだから、あとは彼らに期待するしかないかな」
すでに救国軍事会議にとっては機動戦力を失ったと同時に手痛い反撃となったことは疑いがない。のど元――というより二歩手前でナイフの切っ先をチラつかされている状況なのだ。その動揺も相当なものだということはユリアンにも想像できる。
(いずれにしても救国軍事会議の敗北は時間の問題か……)
ひとつ、ヤンにとっては不愉快な不確定要素がある。言わずもながらヨブ・トリューニヒトの動向である。誰かに背中を突き飛ばされたとはいえ、逃亡しても雲隠れもせずに「クーデター勢力と戦った」という事実は、それまで決して自らは傷つかない側にいた扇動政治家の姿からは想像できない反面行動であったことだ。
(トリューニヒトは、何を考え直したんだ?)
ヤンは紅茶の優雅な香りを楽しんだ後に、ふとカップの中を覗き込んだ。
(宇宙ではミスマル提督が、地上ではアカツキ・ナガレ社長が……ここでもやはり我々はナデシコという存在に助けられている)
ヤンは頭を振った。余計なことを考えてしまったと反省したのだ。今はミスマル提督たちナデシコの面々に対して詮索している余裕などないのだ。ただ言い訳をさせてもらえるならば、「どうにも知的好奇心と歴史への誘惑が勝ってしまう時が往々にしてある」、というのも致し方のない「事実」だった。
しかし、今ヤンが手の届く範囲で実行しなければならないことはただ一つである。
「ユリアン、すまないけどグリーンヒル大尉に皆をまた集めるよう伝えてくれないかな」
15分後、ヤンは幕僚たちに最終的な方針の決定を伝達し、全艦隊に残り二か所の叛乱鎮圧を継続する旨を通達したのだった。
V
ヤン艦隊とミスマル艦隊の間で「トリューニヒトの悪魔がかった行動」が話題となっているころ、救国軍事会議は紛糾の様相を呈していた。
「トリューニヒトのやつめ、逃亡中くらい演説をやめることができないのか!」
「扇動することしか能がないとは思っていたが、まさか反抗勢力を率いて行動を起こすとは、どういう嵐の吹き回しだ?」
「機動戦力を失い、今度は防衛の要の一つであるテルヌーゼンを失うとは……あのトリューニヒトにこれほどの手腕があったとは意外だ」
「トリューニヒトのせいでハイネセンに不穏な空気が流れている。市民に一斉に蜂起されたらひとたまりもないぞ」
幹部たちの怒りと動揺を抑えたのは、トリューニヒトの演説を終始黙ってみていたグリーンヒル大将であった。
「この演説の狙いは我々の内側に亀裂を生じさせるためだ。テルヌーゼンは奪還されてしまったが、それで全てが終わったわけではない。我々はまだ敗北したわけではない」
泰然自若とした口調に落ち着きをなくしていた幹部たちは再びテーブルに着いて彼らの指導者を見た。グリーンヒル大将の視線が一人一人を追った。
「我々はまだ負けたわけではないが、トリューニヒトの演説に慌てふためいているだけではそうならにとも限らない」
グリーンヒル大将は表情を引き締め、彼が最も信頼するエベンス大佐に言った。
「大佐はこれからすぐにハイネセン市民に対して声明を発表してほしい。いまだ首都は戒厳令下であること、暴動など起こしても無意味であり、なんの解決にもならないこと、市民には冷静な判断を期待すると」
「承知いたしましたが、火に油を注ぐ結果にはならないでしょうか?」
「いや逆だ。トリューニヒトの扇動に踊らされる市民の機先を制することができる。むしろこのまま何もしないことのほうが市民に我々が弱気になっていると思われかねない。加えて各治安部隊にもさらに警備を厳重にせよとあらためて通達を送れ。必要とあらば増員もすると伝えよ」
「はっ!」
グリーンヒル大将の指示にエベンス大佐は敬礼し、軍人らしいきびきびした足取りで会議室を後にした。残った幹部たちに救国軍事会議の議長は引き締めた表情を再び向けた。
「よろしい。それでは反抗勢力に対応するための緊急会議を開く」
■■■
この様子を会議室の四隅でウィスキーボトル片手にうつろな目で眺めている男がいた。乱れた白髪交じりの頭髪に無精ひげをたくわえた元同盟軍少将――
そう、アーサー・リンチである。
(ふん、思わぬ一撃か……ヤツらの狼狽ぶりをたくさん拝めると思ったが、さすがはグリーンヒルだな)
「徹底的に恥知らずに生きてやる」、と開き直った男にとって、現在、内戦状態にある同盟はまさに彼が望んだ「恥知らずな状況」そのものだった。ラインハルトの計画書に沿って同盟内部の不満分子を集め、自分を侮辱した祖国に復讐しているのである。正確には「自業自得の結果」でしかないのだが、精神を病むほどに辛酸を味わった男にとって、もはや「どちらが悪いか」などという善悪論は問題ではなかった。右往左往し苦しむ人間の姿を眺めているのが今の彼の生きがいなのだ。
だが……
(もっと面白いことになるかと思ったが、予想よりも茶番は長くないかもな)
駐留艦隊の行動はリンチの予想よりもかなり早い。第11艦隊の早すぎる敗北が原因の一つではあるが、それを差し引いても駐留艦隊の動きはかなり早い。艦隊を二分して鎮圧行動をとったにせよ、ラインハルトの予測よりも二か月近くも前倒しされている。
驚異的なスピードだった。
リンチとしては、ヤン・ウェンリーとミスマル・ユリカの能力を過小評価していたと感じるところではあるが反省することではなかった。
(あの過去から来たらしいお嬢さんが何かやったかな?)
リンチは、そう考えながらも特に深く考察するには至らず、ただ薄く笑っただけである。もはやユリカたちの秘密など個人的にはどうでもよくなっていたのである。
――救国軍事会議の敗北は時間の問題である――
それは間違いないだろう。グリーンヒル大将も幹部たちもその事実が脳裏をかすめてはいるが、その経過の中で逆転は可能だと考えているかもしれない。
最終的に首都星を攻略できなければクーデターの終結はありえない。駐留艦隊という強大な武力にとって最大の難関である首都星防衛軍事天体兵器である「アルテミスの首飾り」をどうにかしなければならないのだ。周辺のクーデターを鎮圧してもハイネセン手前で駐留艦隊は進軍を停止せざるを得ないだろう。
おそらく、いや確実にグリーンヒル大将は駐留艦隊がバーラト星系に到達し、首都星圏内に至るまでにトリューニヒトと反抗勢力に対して決着を付けようとするだろう。そうでなければ駐留艦隊との挟撃になるか、反抗勢力の武力が増大し続け、それだけで敗北してしまうからだ。
いずれにせよ、リンチにとっては見物であることだ。どちらがより踊り狂って最期を迎えるのか、彼はその過程を最大限楽しむつもりでいた。それが終わったら……
たぶんアーサー・リンチという男はこの世に存在しないだろう。作戦成功の報酬としての帝国軍少将の地位などもはやどうでもいいのだから……
リンチの濁った瞳に方針を決定したグリーンヒル大将の姿が映った。その直後に幹部たちが起立して慌ただしく会議室を退出していく。
その日、トリューニヒトの演説によって動揺をきたした救国軍事会議だったが、グリーンヒル大将の叱咤と迅速な対応によってハイネセンでは小規模な暴動こそ発生したものの、それ以上は拡大しないかに見えた。
しかし、首都星ハイネセンにおいて最大の流血は思わぬ勢力によって引き起こされてしまう。
そう、「最高評議会議事堂前の虐殺事件」である。
W
アカツキ・ナガレという青年社長にとって、この数日間は文字通り心身共に疲れ果てたと言える日々であった。ヨブ・トリューニヒトの予想外の決起演説に仰天し、ジェシカ・エドワーズとの再協議はもとより、ハイネセンで暴動が発生した場合の対応策を「パン屋の二代目」と話し合ったり、危険を承知で首都の様子を探りに自ら市内に足を運ぶなど、首都解放の計画を練り直さねばならなかった。
「まったく、トリューニヒトは手綱を握ってないとんでもないことをしでかすな……」
外出先から帰って早々にソファーに倒れこんだ青年社長の口からは、トリューニヒトに対する罵詈雑言がこれでもかと吐き出されたと言ってもよい。
さらに「あいつの暴走を止められなかったのか」 とウランフたちへの悪口が思わずのど元から漏れそうになったものの、トリューニヒトの「勇み足」が彼の独断で行われたものだと判断するには十二分であった。
(転んでもただでは起きないところは流石と言えばさすがかも……)
見習おう、とは思わないが、計画に大きな不確定要素が加算されてしまったことは間違いがない。いや、実はトリューニヒトのあの演説はある時点で行えば大きな効力を発揮しただろう。
それは、ウランフとエリナ率いる解放軍がハイネセン近郊に迫った時だ。前もって市内の協力者と連動する形で複数の場所で蜂起すれば、救国軍事会議はそれらを鎮圧するために部隊を差し向けねばならない。こちらの意図を見抜いて無視を決め込んでしまうと軍事宇宙港をはじめとする主要拠点を奪取されかねず、逆に解放軍との二正面作戦を強いられることになるのだ。単純な陽動だが、いずれか一方の手を抜いてしまうと敗北してしまうという意地の悪さである。
しかし、その手は使えなくなってしまったわけだ。トリューニヒトの無責任な熱意に当てられた人々が無秩序に蜂起しようものなら、ウランフは混乱に乗じる形で救国軍事会議の拠点である統合作戦本部ビルを急襲――できるかもしれないが、蜂起した人々に応え、支援と事態収拾のために混乱した市内に部隊を投入せざるを得なくなる。勝ってもそれこそ出なくてもよい多くの犠牲者を生む結果になるだろう。
アカツキとしては、ウランフたちがハイネセンに近づくまでに市内が混乱が生じないよう、ただ祈るしかなかったのだが、救国軍事会議の初動も早く小規模な暴動が発生しただけで彼の懸念は杞憂に終わるかに思えた。
しかし――
その日、珍しく朝から惰眠を貪っていた青年を心地よい眠りのゆりかごから叩き落したのは、他でもないあの男だった。
「アカツキさん、起きてください! ハイネセンで異変です」
瞬時にまどろみから復活した青年の瞳に映っていたのはトリューニヒトの演説以降、一時的に帰宅していたチュン・ウー・チェンだった。脇にかかえたパン屋の紙袋よりも、ただならぬ様子にアカツキは飛び起きる。
「異変と言うと、まさか?」
「いえ、まだ決まったわけではありませんが、外の様子が変です。多くの市民が議事堂方面に向かっているのです。あまりよい前兆とは言えません」
すぐに立ち上がったアカツキは通りを窺うことのできる窓から様子を確認した。空は曇天。今にも雨が降り出しそうだ。建物の並びの関係で多くは確認できなかったが、複数の人々がプラカードらしきものを持って歩いていく姿を視認することができた。
「確かに胸騒ぎ以外のものを感じませんね」
不意にコミニュケが起動した。空間に浮かんだ二次元ディスプレイに映っていたのは明らかに血相を変えた副主任であった。
『社長、これを見てください!』
前振りなしである。それだけ余裕がないと言えた。すぐにディスプレイの映像が切り替わって映し出されたのは行進する大勢の人々で埋め尽くされつつある見慣れた大通りの光景だった。
「これは、まさか……」
『はい、最高評議会議事堂前の通りです。すごい数の市民が集まっています』
アカツキとチュン・ウーチェンの表情が急激に強張った。これだけの数が集まったという事は救国軍事会議が禁止している「多人数の集会を禁ず」という戒厳令を無視していることになる。それまでに起こった暴動など比較にならないほどの直接的で危険な市民の数と言えるだろう。
「今何時だ!?」
11時30分だった。2時間ほど前にいつもの情報収集に出かけた副主任の話だと、すでに四方から議事堂に向かう人々を幾人も目にしたという。その時はまだ何が起きているのか把握できなかったらしい。
(おいおい、一体だれがこんな危険な集会を主催したんだ!?)
公然と、しかも議事堂を目指しているという事実から申し開きのしようがないだろう。三人とも人々の異様な様子から、それが穏やかな市民集会にはとても感じられなかった。
「まさか、彼女が?」
『いえ、エドワーズ議員ではなさそうです。私が探った限りではトリューニヒト議長のプラカードを掲げた男たちによって扇動されたようなのです』
非戦派の人々がまかり間違ってもトリューニヒトの肖像画を掲げるわけがない。対してジェシカ・エドワーズには戒厳令下における平和的な市民集会だったとしても、そのリスクについて口を酸っぱくして忠告していただけに、彼女ではないという事実はささやかな朗報ではあったのだが……
「いずれにしても救国軍事会議が動くぞ。いや、もう動いているかもしれない」
これを扇動した連中は相当な愚か者だろう。機会と言うのがまったく読めていない。トリューニヒトの演説が発端となったことは今更だが、もしそうならば数は力である。これが本当に市民の「蜂起」になるのだとしたら、救国軍事会議の対応も最初から過激にならざるを得なくなる。
「一難去って、また一難とは……」
青年の嘆きと同時に冷静にパンを頬張り始めたチュン・ウー・チェンが突然、二次元ディスプレイに飛びついた。
「失礼。今画面の中にジェシカ・エドワーズ議員の姿が映ったのです」
アカツキも驚いて画面にかじりつく。
「一体どこに? 間違いありませんか?」
「間違いないと思います。周囲を伺った際に彼女の顔が確認できました」
(おいおい、なぜエドワーズ議員が……いや、彼女だからこそいるのかも)
アカツキにはおおよそ彼女の行動に対して見当がついた。彼は副主任に言った。
「すまないがエドワーズ議員を追ってくれ。彼女のことだ。たぶんこの騒ぎが何なのか気づいて止めようとしている可能性がある。彼女が危険な目に遭うかもしれない」
自分もすぐに向かう、と告げて通信が終了する。
「アカツキさん……」
「いえ、ウー・チェンさん、それ以上は何も言わないでください。これだけの騒動になっているのなら救国軍事会議も逆に僕の存在になんて関心を持たないでしょう。もちろん目立たないように帽子くらいは被っていきますけどね。ここをお願いします」
「わかりましたが、十分にお気をつけください」
「ええ、もちろんです」
アカツキは手早く着替えを済ませると、黒っぽい帽子をやや深めに被ってアジトを後にする。ビルの陰から通りに出ると、すでにこの異変に気づいている人々の不安そうな姿がいくつも目に付いた。
(ここももしかしたら危ないかも……)
アカツキは人々の間を軽快にすり抜けるようにして議事堂に向かって走り出した。彼には一つの確信があった。きっとジェシカ・エドワーズは、救国軍事会議の暴力に対して暴力で対抗しようとする、この不穏な流れに見てみぬふりをせずに渦中に飛び込もうというのだ。実に彼女らしい勇敢な行動と偽りのない意志ではあるが、極端な思考の持ち主には客観的な理論は通用しない可能性が高い。一方的な思考と言うのは一方的な感情と価値観しか生み出さないのである。救国軍事会議しかり、この群衆の中に渦巻く破壊的な雰囲気しかりである。
「エドワーズ議員、どうか無事でいてください。あなたに今、もしものことがあっては困るのですよ」
アカツキのつぶやきは、雨の降り始めた市街地に吸い込まれていった。
X
「勇気あるものは立ち上がれ! 今こそ自由への忠誠を見せる時だ」
「我々市民の結束力で救国軍事会議を打ち倒そう!」
「正義は我々にある。自由惑星同盟の旗の下に集え!」
「アーレハイネセン万歳! トリューニヒト議長の呼びかけに続け!」
勇ましい掛け声とともにトリューニヒトのプラカードや国旗を手にした数万にもおよぶ市民が議事堂の正門に迫ろうとしていた。近づくほど四方からどこからともなく市民が加わり、その声は地響きとなって議事堂を守備する兵士たちを戦慄させた。
「こいつらは本気なのか? 再度の戒厳令に丸くなっていたんじゃないのか?」
「なぁにハッタリだ。故国を憂いて立ち上がったのは我々救国軍事会議だ。数だけそろえて粋がっているだけの臆病者の集団に死ぬ覚悟なんかない」
しかし、緊迫感は計り知れない。固唾をのみこんだ兵士の一人は汗ばんだ手を軍服で拭うと再びライフルを構えたが、その先に一人の女性が出現していることに気が付いた。
「これは何の騒ぎでしょうか?」
ジェシカ・エドワーズは両手を大きく広げ、まっすぐな視線で群衆の先頭に立ちはだかった。
「おおっ! エドワーズ議員だ! 我々に強力な指導者が現れたぞ」
とある男が声高に言うと、その周囲からものすごい歓声が沸き起こった。困惑するジェシカなど完全無視である。彼女はもう一度声を張り上げて言った。
「この騒ぎは一体何事でしょう。これを主催した人は誰ですか?」
すると一人の体格の良い男が声を上げた。
「我々は誰の呼びかけでもなく、我々の自由意志によって立ち上がったのだ。傷つきながらも共和制のために立ち上がった議長閣下の勇姿をみて奮起しない市民などあり得るだろうか? 我々は誰からの呼びかけではなく、自ら立ち上がったのです」
ジェシカは、男の演説そのものに危機感を持った。それまでと同じく犠牲を賛美することと何ら変わりがないように思えたのである。彼らは明らかに何者かによって扇動される形で動かされている。その根底には救国軍事会議に対する反発と共和制に対する危機感が含まれていることは間違いなさそうだが、それもどこか酔っているかのように感じられるのだ。
「あなた方が救国軍事会議の圧力と暴力に対して自由と民主主義を守るために立ち上がったことには敬意を表しますが、なぜあなた方からは平和的な雰囲気ではなく、殺気じみた憤りが感じられるのでしょう。このまま議事堂に押し寄せて何をなさるおつもりですか!?」
たった一人のうら若い女性の迫力に押される形になった群衆だったが、簡単に説得されるほど彼らの意志も弱くはなかった。各所から男を支持する声が連呼される。
その不気味さを増した声の一角から一人の男が現れ、その言葉にジェシカは衝撃を覚えた。
「エドワーズ議員、私はあなたこそが救国軍事会議の不当な支配に対する抗議集会を開いてくれると信じていました。しかし、いつまで待っても一向にあなたが呼びかける日は訪れなかった。そんな中のトリューニヒト議長の声明はもどかしい日々を送る我々に勇気を分け与えてくれたのです。今こそ再び日常を取り戻すために立ち上がるべきだと! 私は、我々の先頭に議員がいなかったことがとても残念で仕方がなかった。ですが今なら間に合う。一緒に明日の平和にために戦いましょう」
男の主張は一方的ですらあったが、ジェシカはすぐに反論できなかった。救国軍事会議への抗議集会は彼女も主催しようと準備を進めてはいたのだ。が、それを保留にしたのは平和的な集会であっても強硬なクーデター派に通じるのかと、アカツキ・ナガレに何度も諭されたからである。
(まさか、自重していたことでこんなことになるなんて……)
ジェシカが想定していたのは軍人との対峙だったが、今彼女が説得をしているのは市民たちだった。おそらく、その多くが主戦派の市民と思われるが、目の前の中年の男性はその言動からもしかしたら非戦派の人かもしれないのだ。
何という恐ろしい現実であろうか……
それでもジェシカは退くわけにはいかなかった。
「私は皆さんに加勢しに来たわけではありません。止めに来たのです。あなた方が強行しようとしている行為はルドルフと救国軍事会議がした事と同じです。不要不当な暴力に頼っただけの平和など本当の平和ではありません」
ジェシカの決死の説得の返信は直接的で卑劣な鉄拳であった。地面に倒れこんだ彼女にさらなる衝撃が浴びせられる。
「この臆病者! 平和を守るため、我々の自由意志を守るために時として武器を持って立ち上がることの何がいけないのか! 有史以来、我々人類は危機のつど立ち上がることで歴史を繋いできたのだ。口だけの平和を唱えたところで本当の平和こそ訪れるわけがないのだ。それがわからないのか!」
今度は蹴とばされて地面にひれ伏したジェシカの横を人の波がぞろぞろと通り過ぎて行く。強くなりつつある雨の中、それでも彼女は顔を上げて訴えた。
「不要な暴力による解決はあってはならない犠牲を生むだけです。取り返しのつかなくなる前に今すぐ引き返しなさい!」
ジェシカの声が届くことはなかった。兵士から警告が発せられた直後、銃声と共に悲鳴と怒号が重なって、それは急激に拡大していったからである。
無数の足音と銃声が議事堂前の通りを騒乱へと陥れ、市民の怒りが人海の波濤となって次々と兵士たちをなぎ倒していった。
(ああ、なぜ……)
混沌とする通りの一角で何度も市民たちに突きとばされながも、そのたびに起き上がったジェシカ・エドワーズは眼前で繰り広げられる惨事に憤る。
(私が目指した道は間違っていたというの? 私が取り戻したいと願った日常は甘かったというの……ああ、ジャン・ロベール……ヤン……)
ジェシカは、雨と涙でくずれた視界の向こうに手を伸ばす。
彼女の頭にブラスターが突き付けられたのは、まさにこの時だった。
――宇宙歴797年、標準暦6月22日――
急報を受けたクリスチアン大佐率いる3000名の武装兵は、ライフルと鈍器を片手に議事堂を襲撃する市民を目の前にして強硬な手段に打って出る。
しかし、絶対数おいてに勝り、怒りを増大させた市民によってその足元に踏みつぶされてしまう。急速な状況悪化にグリーンヒル大将は驚いてエベンス大佐に鎮圧を命じたが、力づくの対処はさらなる悲劇と犠牲者を生み、兵士2000名、市民18000名あまりの死者を出すに至ったのだった。
……TO BECONTINUED
=========================================================
みなさん、大変ご無沙汰しております(汗
ようやく19章(中編)を投稿できました。まいど遅くなることは反省しておりますので、ここはこれ以上はご勘弁を。
中編を書くまでに「事件」といえば、新たな銀河英雄伝説である「銀河英雄伝説――DieNeueThese」の放送が4月から始まったことでしょうか。前評判から白熱してきたわけですが、(これを書いている時点でのこり2話)ここにきてノイエの足りない部分も見えてきました。
「ちょっといろいろ端折りすぎ……」
たぶん、わかっていただけたと思います。新規さんにはなにかと物語の背景がつかみづらいことになってしまったのではと感じる次第です。
石黒版とは違うものにする、というコンセプトだっただけに、前作のクオリティーは映像では超えましたが、内容ではまだまだ……
ただ、第二期がどういう描かれ方をされるかはまだわかりませんが、これでは石黒版を超えるどころか追い付けさえもしないのではないかと懸念する次第です。
PS:ツィッターに流れてくるツィートを見てハッとしたのは、ちょっと物足りない内容は、もしかしたら「戦略か?」とも思いました。「原作買おう」とか「石黒版を見てみよう」とか誘導するためじゃないのかと。
次回は、たぶん帝国編です。うん、20章では終われないかも。でも終われるようにしたいです。
2018年6月23日 ――空乃涼――
読者さんの添削を参考に文修正、および加筆を加えました。暴動による死者数を修正前より抑えました。
2019年6月16日 ――空乃涼――
==============================================================
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
<<前話 目次 次話>>