エルエルフの御乱心
(革命機ヴァルヴレイヴ)
※注意事項
この作品は「革命機ヴァルブレイブ」の短編ssです。
キャラ崩壊、時系列滅茶苦茶などの要素が多数含まれます。特にエルエルフが酷いことになっているので、エルエルフのイメージを壊したくないという方にはお勧めできません。
こまけぇこたぁいいんだよ、と思えない方は「戻る」を押して下さい。
新生ジオールにとって事実上唯一の領土であるモジュール77。
その一室ではモジュール77の全軍事力を担っている流木野サキ、連坊小路アキラを除くヴァルブレイブのパイロットが集まっていた。
「では――――始めるとしよう」
ヴァルブレイブの男パイロットを自室に集めた張本人、エルエルフは重々しく口を開いた。
彼がこんな風に話す時は大抵が『なにか良からぬこと』の前触れだと身に染みているパイロットたちはごくりと唾を呑み込む。
「お前達、どんな子がタイプだ?」
エルエルフ以外の全員が一斉にずっこけた。
ハルトは勢いの余り段ボールの山にカミカゼ特攻し、犬塚は貯金箱を破壊して、山田のリーゼントは10mくらいゲインした。
「な、なにをいきなり言いだすんだよエルエルフ!?」
「そ、そうだ。なんなんだ、深刻そうに口を開いて『どんな子がタイプだ?』なんて。まさか偽物!?」
「頭うったんじゃねえのか、お前」
エルエルフとなんだかんだで一番長い付き合いのハルトがショックから回復すると詰め寄った。犬塚と山田もハルトに同調して頷く。
しかしエルエルフは至極真面目な表情で、
「所詮は元学生。お前達はパイロットとしてパイロットのすべきことがまるで分かってない。だから時縞ハルト、お前は女をレイプするんだ。
貴様のせいで革命機ヴァルブレイブのタイトルが『革名器ヴァルブレイプ』なんて呼ばれるようになったんだぞ。恥を知れ!」
「ちょっ、レイプは関係ないだろ!」
「は、ハルト……お前」
犬塚と山田からの冷たい視線がハルトに突き刺さる。しかしエルエルフはハルトの株価大暴落など無視して先を続けた。
「知っての通り軍人の中でもパイロットは過酷なことの一つだ。最前線に赴き、誰よりも多く敵と戦い多くの命を直接その手で奪う。そのため少ない数のパイロットが任官中も退役後もPTSDに悩まされるケースが多い。
たった五機で軍事力全てを担うお前達にかかるストレスは、普通の国のパイロットの比ではないだろう」
最初はアレだったが、エルエルフの言っていることは至極尤もなことだった。
「時縞ハルト、犬塚キューマ、山田ライゾウ。お前達も他の生徒や女パイロットの手前、表には出さないがパイロットであることに億劫さを感じる時があるんじゃないのか?」
「う、それは」
「言われてみれば」
「あるかもしれねえ」
三人の若きパイロットたちは其々思い当たることがあったようで目を背けた。
ヴァルブレイブのパイロットになった三人は人間を捨て、力を手にするにあたり相応の『覚悟』をもっている。だがどれだけ覚悟があろうと、全員が何事もなければ普通に平和な高校生活を送っていただろうただの学生。
周りに期待される中、もし学生のままだったら……と、思う時はあるのだ。
「だからこそのレッツ・猥談だ!」
「いやいやいやいやいやいやいや」
途中まで良い話だったので最後で台無しである。
パイロットの中で比較的常識人ポジションで年上な犬塚が止めに入った。
「なんだ犬塚キューマ。異論があるのか?」
「異論しかねえよ! なんでパイロットとしてのストレスが猥談に繋がるんだよ! どう考えてもおかしいだろ!」
「おかしくなどない。いいか犬塚キューマ。クールぶってる奴だろうと厨二病だろうと無害系だろうと天然系だろうと男ならば魂の奥底にピンクに滾るエロスの心が眠っているものだ。
そして常に生死があやふやな状況に身を置かれているパイロットは、知らず知らずのうちにエロ願望を奥底に沈殿し易い。それが溜まりに溜まればキチった挙句に味方殺しをしたり裏切ったり、時縞ハルトのようにレイプをしたりする」
「もう僕のことは放っておいてくれ!!」
ハルトが文句を言うが、やはりエルエルフはガン無視である。
「普通のパイロットならムフフな店に行く事で、諭吉を代償にエロスを解消して満足できるが、俺達は未成年。しかもかなりメディア露出の多い所謂英雄だ。俺は違うがな。
そんな英雄がレイプ魔だとか、実は風俗で欲求不満をどうにかしていると知られればイメージダウンどころの話ではない。善良な市民様お得意の掌返しがスタートするだろう」
「まぁ俺もレイプ魔にはなりたくねえな」
山田が難しい顔をしながら頷いた。
「だからこその猥談! 実際のプレイで満足できないなら、仲間内でエロトークして満足するしかない! それが猥談だ。俺も性欲を持て余した時、アードライやハーノインたちとよくエロトークで盛り上がったものだ」
遠くを見つめる眼差しのエルエルフ。元々エルエルフは自分とは別世界の住人のような雰囲気をもっていたのだが、何故かハルトたちはエルエルフに嘗てない程の親近感を覚えた。
それは皆が皆、健全な男子でありエロ本をベッドの下やらなにやらに隠した覚えがあるからだろう。
「ちなみにアードライはガチホモで腐男子でな。よく俺の尻を狙っていた。あと俺との絡みを妄想しては鼻血吹いていた。ハーノインは生粋の巨乳マニアで、奴のPCのフォルダは自分で集めたボイン画像で埋め尽くされていた。俺とは対極に位置する嗜好といえるだろう。
真面目そうな顔したイクスアインは実は真正のドMで高飛車女王様に鞭で叩かれるところを妄想しては悶える変態。クーフィアはエロゲオタクで二次元にしか発情しないオタクだ」
「ちなみにエルエルフ、君は?」
「――――俺はロリコンだ」
迷いなくきっぱりと答えるエルエルフ。その様は変態を通り越して清々しくすらあった。清々しく変態だった。
エルエルフを除く三人は脱力する。
「俺、生まれ変わってもドルシアの軍人にだけはならねえわ。変態の巣窟かよ、ドルシアは」
「山田に同意だ……」
「ちなみにカインの奴はあらゆる性癖を網羅するエロスのエキスパートだ」
「聞きたくなかったよ、そんな真実」
ドルシア軍特務機関のトップガンに、国で屈指の英雄がガチな変態などドルシアという国は一体全体どうなっているというのか。
いや変態ばっかだからクーデターなんて起きたのだろうと考えれば納得だった。
「さぁ! では猥談を始めるぞ、誰からいく? 誰から始める? お前か、お前か、お前かーーーーー!!」
「エルエルフ、なんかというかかなりキャラ違くない!?」
「愚問だな、時縞ハルト。男は猥談になると性格が豹変するものだ。こう見えて俺の仲間内での渾名はエロエルフでね」
「うわー。つい一時間前なら絶対信じなかったけど、今はすんなり信じられるや」
ハルトを始めヴァルブレイブパイロットの中でエルエルフに抱いていたイメージが180度変化した。
だがこの変化は外部――――特に女子には漏らせない。自分達の頼みの綱であるエルエルフがロリコンの変態なんて言った日には、下手すれば国家崩壊の危機だ。
「どうした? 早く始めろ」
「始めろって言われてもよぉ。俺は、その浮いた話なんてねえし」
「好きな子とかいないのか、山田は」
「サンダーだ!」
「一、十、百、千……」
「万丈目サンダー!! って言わせんじゃねえよハルト!」
突然の猥談発言に混乱したパイロットたちも一皮むければ――――ナニの皮についてはさておき――――ごく普通の高校生男子たち。
始まってしまえばノリノリでエロトークが飛び出してくる。
「犬塚キューマ、お前には意中の相手がいたな」
「……アイナか」
犬塚はドルシアの攻撃で失ってしまった眼鏡が特徴的な少女を思いだし、どこか悲しげな顔をする。
「本当に良い人でしたよね。どこぞの扇二世と違って本当に優しいあの人が、あんなことに」
「ああ。良い奴だったな……畜生」
「別にサハリン家出身ではないがな」
エルエルフの空気の読めない発言に非難の視線が突き刺さる。
しかしエルエルフはハルトと違い鋼鉄のエロ魂を備えたエロ戦士。冷たい視線くらいではまるで動じない。エルエルフが動じるのは幼女の目だけだ。
「俺のことはいい。俺はアイナが好きだった。アイナのためにも、俺は皆を守るため戦う。これでえいいんだ。ほらしんみりしてるんじゃない。山田、お前こそ最近会長の妹とよく話してるけどどうなんだ?」
「は、はぁ!? なに言ってんだいきなり!?」
自分に矛先が向いた事で山田が慌てて顔を赤くする。
「意外だな。まさかお前が連坊小路アキラにお熱だったとは」
「古いんだよ、言い方が! ってかあいつとはそうじゃねえよ。ただほら、あいつ引きこもり脱出の切欠になったダチだった総理大臣があれだろ?」
「ああ」
ハルトは曖昧に頷いた。
アキラが外の世界の恐怖を乗り越えて、ヴァルブレイブのパイロットになったのは紆余曲折あって友人になったショーコの存在が大きい。というよりほぼ全てとすらいっていい。
そのショーコが見事なまでの掌返しをしたとなれば、人間不信に陥って再びヒッキーに逆戻りしてもおかしくはなかった。
「そりゃ死んだのとは違ぇけど、ダチがいなくなるのは辛ぇからな。ヴァルブレイブのパイロットのあいつが折れても困るし、ちょっとな」
「……成程ね。山田くん根は良い人だから」
「サンダーだ!!」
「しかし山田とアキラがねぇ。言われてみれば単細胞で馬鹿のお前と、考え過ぎがちのアキラは良い感じの凸凹コンビかもな。会長に挨拶しに行くときは俺も呼べよ。お前の『妹さんを俺に下さい』発言はしっかり録画しておくぞ」
「だからそうじゃねえって言ってるだろうが!!」
「山田ライゾウは連坊小路アキラが好き、と。書き留めておこう」
「おいこらエルエルフ、メモしてんじゃねえ!」
赤いマントを見た猛牛のようにエルエルフに掴みかかろうとする山田を、犬塚とハルトが二人がかりでどうにか抑える。
山田が落ち着いて座るまで五分の時間がかかった。
ハルトが仕切り直すように咳払いをすると、口を開く。
「皆にばかり聞いてるけど、エルエルフはどうなんだい。えーと、ドルシアのお姫様と」
「無論、俺はリーゼロッテを愛している。リーゼロッテ萌えだ。俺はロリコンだからな」
「でもあのお姫様って実はマギウスでかなり年入ってるんじゃないのか?」
犬塚が素朴な疑問を尋ねる。エルエルフは気にした風もなくフッと妖しく微笑むと、
「猶更良いじゃないか。ロリババアなんて二次元にしか存在しないと思っていた伝説の萌え要素が実在したんだぞ! 最高じゃないか。未成熟な肉体と熟達した精神の合一が生み出すエモーション。
つまり何が言いたいかというとロリババアとか大好きだ。もう一億年と二千年目から愛してる。
そもそもお前達全員なにも分かってない。いいか? デカい胸に一体どんな価値があるというんだ。胸は小さいもの、まな板こそ至高。ジオールなんて国名破棄してロリロリ帝国にしないか?」
「しねぇよ」
山田の鋭いツッコミが飛び出すが、エルエルフは止まらない。
「いいじゃないかロリロリ帝国。あの指南ショーコが総理大臣な国より、ロリコンたちがロリを守りロリを慈しむことを目的とするロリロリ帝国の方が一万倍くらいマシだ。そしてリーゼロッテのヒロイン度は指南ショーコの一兆倍だ」
「エルエルフ!!」
余りのエルエルフの暴走に、遂にハルトがプッツンする。
穏やかで気性の優しいハルトらしからぬ、激怒を浮かべてハルトがエルエルフの前に立つ。エルエルフも流石に言い過ぎた、と思ったのか。
「悪かった。ロリロリ帝国はジョークだ。軽いドルシアン・ジョークだ。それに一兆倍は少し言い過ぎだったな」
「違う! 君は大間違いをしている。マイナスに一兆をかけてもマイナスにしかなるもんか!! それを言うならマイナス一兆倍だ!!」
「……………………」
世界が停止する。暫しエルエルフ、山田、犬塚は主人公から飛び出した衝撃発言に固まってしまい、動けなかった。
十分後。漸く再始動したエルエルフが、
「――――時縞ハルト、お前は……誰か、気になる子とかはいるのか?」
「気になる子?」
「指南ショーコとか」
「ない」
「だよな」
ハルトは暫し目を瞑り考える。奇妙な沈黙がハルト以外の三人の間に流れた。
ざわり、と室内だというのに嫌な風をエルエルフたちは感じる。次に目を開けた時、ハルトの目は人間ではなく猛禽類のそれとなっていた。
「知っての通り僕は流木野さんをレイプした。でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない……。
レイプした時、恥ずかしいんだけど僕さ。興奮してしまってね。次の日から抜くときに見るAVは全部レイプ物さ。試に和姦ものを見たんだけど、それだと全然勃ちやしなかった。それで漸く分かったんだ」
「は、ハルト?」
「僕はレイプでしか性的興奮を得られないんだってさ!!」
右目は限界以上に見開かれ、左目は潰れたように小さくなり、顔の筋肉が粘土細工のように変形する。
盛大な顔芸を披露しながらハルトは自分の願望を暴露した。
「そうだ……漸く分かった、僕は世界を暴きたいんじゃない。世界を犯したいんだ。もっといえば世界のかわいい子全員レイプしたいんだ。
革名器ヴァルブレイプ……フフフフフフ、素敵な名前じゃないか。レイプ……レイプだよ。エルエルフ、いつだったかハムエッグについて討論したね。
その答えを今こそ言おう。普通の恋人同士だったら、女の子を二つにはんぶんこなんて出来ない。半分にしたらスプラッタだからね。
だけどレイプなら! レイプなら二人どころか三人でも四人でもノープロブレム! 皆で仲良くまわすことが出来る! 複数人同時プレイ最高だ!!」
「そこまで堕ちたか、時縞ハルト!! ロリコン戦士たるこの俺がいる限り、リーゼロッテを始めとするロリたちに手は出させん!!」
「エルエルフーーーーーッ!!」
レイプ魔とロリコン、世界が生み出した二人の変態の戦いは、やがて世界に伝播し全世界規模の武力抗争にまで発展した。
全世界の紳士たちの奥深くに潜んでいたエロスの願望、だが二人の変態の仁義なき戦いを見た彼等はほぼ全員が隠すことを止めオープンになったのだ。
第三銀河帝国暦214年。宇宙では今も性癖をオープンにした変態達による熱き猥談という名の闘争が繰り広げられている。
革命機ヴァルヴレイヴ、それは世界を暴くシステム。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m