とある魔術の未元物質
未元物質後書き
長きにわたって続いた「とある魔術の未元物質」も遂に完結しました。今までお付き合いして下さった読者の皆さんは本当にありがとうございました。
「コードギアス 反逆しない軍人」から一作品も欠かさずに見て下さる方は全力で有難うございます。RYUZENはハッピーです。
えーこの一年半の間に本当に色々なことがありました。一番大きな事件はやはりにじファン閉鎖でしょう。あのにじファン315事件の影響で多くのssが削除されるという惨劇が発生したのは記憶に新しいところです。
しかしそんな大事件があって尚、シルフェニアという新天地で無事この作品を完結することが出来たのは一重に読者の皆様の応援があったからです。
これで完結の後書きを書くのも何度目かになりますが例によって分担してやっていきたいと思います。先ずはこれ。
『主人公について』
前にも言ったような記憶がありますが、ここでもう一度ぶっちゃけますと……最初は主人公は垣根帝督じゃありませんでした。
というより初期構想では垣根を主人公にする予定などこれっぽっちも存在しませんでした。
その理由はまぁ遡ること一年半くらい前。まだ「とある魔術の未元物質」のとの字もなかった頃。
科学サイドと魔術サイドが明確に分かれているだけあり禁書でオリ主をやろうとしたら、どっちか一方しか関われないような作品構成にならざるをえないんですよね。
上条さんの友達にして云々という手法もありますが、それだと単にオリ主が原作をなぞるだけで何が面白いの? ということになりかねません。また科学と魔術に関われるということは相応の強さも必要になるわけで……やり過ぎたらメアリー・スー街道一直線なわけです。
そこで早いうちから主人公は原作キャラにしようという考えに落ち着きました。
新たに出てきた問題は誰を主人公にするか、です。ですがそれも早くに答えが出ました。そう……それこそが垣根帝督! ではなく一方通行です。
元々上条さんとは違うもう一人の主人公として活躍してる一方通行ですから過去話や能力についての詳細なども豊富で我ながら「これしかない!」と確信しました。
しかもインデックスを救って記憶全損、その後も自分の記憶がある時に行っていた絶対能力進化実験とかの葛藤とかも描けるんじゃね? 結局、私って天才って訳よ! などと悦に浸ってたわけですが……。
はい。勘の良い方はもうお気づきですね。そんな作品、もうありました。私が知らなかっただけで。もしも書く前に気付いていなかったら盗作扱いされる確率は100%っていうほどに絶対能力進化実験までの展開が似通ってました。
そんなこんなで『とある魔術の一方通行』は泣く泣くお蔵入り。もう諦めてオリ主でレイビーとフレンダの話だけやってお茶を濁そうか……。それとも御坂で? だけど御坂じゃ魔術サイドのチート軍団相手には。削板は? ステイルは? アックアは? フィアンマゴーなどと考えていた時に閃いたのが垣根帝督でした。
垣根の未元物質で出番少ないけど、だから逆に独自解釈で好き勝手にやれるんじゃね? という結論に到達するや否やプロットの再構成が始まりました。それが「とある魔術の未元物質」が産声をあげた瞬間といっていいでしょう。
実は垣根がインデックスと会う話も既にあったことに書き始めてから気付いたのですが、展開全然違うしまーいいやーという結論に落ち着きました。
『未元物質について』
本作品の未元物質設定はほぼ完全に独自解釈と妄想の産物によって成り立っています。
原作で詳細が出ていない事を良い事に「神の右席」にする材料にしたり光翼を出させたりしました。そんな描写は原作ではありません。光翼とか原作にはないのでご注意ください。
『ルシフェルについて』
最初垣根はガブリエルの神の右席になって「聖母崇拝」の力で魔術と超能力を両方使ってもデメリット効果がないということにしようと考えていました。
しかしラスボスのフィアンマと因縁めいたものがあった方がいいよな、というのと禁書といえば厨二病。厨二病といえばルシフェルという短絡的思考から垣根はルシフェルを司る神の右席となりました。
このことはSCHOOL3あたりで設定したことなので、インデックス戦からそれについての伏線が投入されてます。
『垣根帝督について』
ある意味これが一番難しかったです。そもそも垣根は原作十五巻にしか登場していない上に当時は外伝・超電磁砲にも登場していなかった時期ですから。
もう性格についての資料が原作十五巻しか存在しなかったわけです。ついでに言うと禁書ssにおいて垣根は非常に人気で多くの作品に登場するのですが……なんというか作品によってキャラが全く異なっていて参考になりえませんでした。お茶目になったり、アホになったり、メルヘンだったり、悪人だったり、実は良い奴だったりと。
それでも書いている内に段々と自分の中で垣根に慣れてきて、次第に他の三人の主人公との差別化も図っていきました。
原作で一方通行にメッタンメッタンにやられた垣根。しかし改心して光の世界云々という方向性にしては単なる一方通行の劣化コピーにしかなりません。
そこで垣根は悪党のまま主人公に昇格しました。これは徹頭徹尾一貫しています。インデックスとの日々で甘くはなりましたが、垣根は利己的で打算的で一般人の殺害をも躊躇わない悪人のままです。
ジョジョ風にいうと上条さん達が「黄金の精神」をもっているのに対して垣根は「漆黒の意志」とかまぁそんな感じです。ダークヒーローですらありません。単なるダークです。
既存作品で最も近いのは「風の聖痕」の八神和麻ですね。正にあれです。敵対する奴は老若男女平等に皆殺しの、ハードウェイ曰くのふざけた野郎です。なので垣根とハードウェイは激しく相性が悪いです。
とはいえそれだけだと単なる糞野郎にしかならないので、一本の芯を入れることにしました。
漫画などでも魅力な悪役というのは、なにかしら譲れない信念のようなものを持っている人が多いでしょう。例えばCCOの弱肉強食思想だとか。
そういう芯がぶれないキャラは悪人でも魅力が出たりするわけです。逆に芯がぶれまくりのヘタレキャラは人気が落ち込んだりアンチの対象となったりしますが。
垣根にもそういった芯を持たせました。垣根風にいうところの流儀、謂わばメルヘン……もとい悪の流儀です。
これは一方通行の美学に対するもう一つの有り方を描くという意味もありました。
ちなみに垣根の美学というのは『一般人を出来る限りは巻き込まない』『恩は返す』『目的達成の為ならあらゆる手段を使う』『契約を遵守する』。
まあこの四つくらいですね。ただ一番最初のやつは出来る限りなので、必要とあれば一般人でも平然と巻き込みます。
最後の契約を遵守のあたりはエリザードにキャーリサから離反しないかと誘われた時の返答などに現れているかと。
『レイビーについて』
紆余曲折あり外伝の主人公をすることになったレイビーです。
そして単なる空白期の繋ぎとして急遽登板したキャラなのに何故かやたらに人気が出てしまった良く分からないキャラです。ちなみに日独伊の血を継ぐ一人枢軸国です。
垣根が一方通行の対となるような感じにしてあるので、レイビーは浜面と対となるようにしました。分かり易く二人を比べると。
LEVEL0の無能力者、LEVEL4のエリート。
学校なんて行かない、普通に学校に行く。
気の良い仲間がいる、上辺だけの友人しかいない。
無能力者であることに劣等感、高位能力者であることにコンプレックス。
貧乏、金持ち。
パシリ、パシらせる。
ヒロインが高位能力者、ヒロインがたぶん下位能力者。
とこのように対照的です。ただヒロインを守るときだけヒーローになるのは同じなので相性は悪くありません。
『フィアンマについて』
本作品を通してのラスボスにして、貴重なギャグ要因でもあるというチグハグなキャラです。
実は容姿がなんとなく垣根に似てるという理由だけでラスボスになることが確定しました。
『インデックスについて』
この作品のヒロインです。……ヒロインです。大事な事なので二度言いました。
インなんとかさんじゃありません。インデックスさんはヒロインです。
そんなこんなで「とある魔術の未元物質」のヒロインのインデックスでした。出番は垣根に次いで断トツの二位です。垣根がフラグ体質でもないこともあり、ヒロインとして一番スポットがあてられたのもインデックス。
物語の転換期にインデックスの影あり。垣根の行動は終始一貫してインデックス中心でした。まぁ暗部抗争編だけちょろっと浮気しましたが。上条さんと比べたら全然問題ないでしょう。
『この作品のテーマ』
SCHOOL5で垣根はいきなり努力を否定しました。あらゆる努力ではなく能力開発において、ですが兎にも角にも努力というものを全否定しました。
もう超電磁砲のテーマを踏み躙るような発言です。しかし本作品のテーマは……無駄な努力はない、です。
垣根は序盤から終盤まで"インデックスを首輪の呪縛から解放する"という目的の為に行動していました。
インデックスを救うために学園都市を飛び出しましたし、そのために魔術をエリザリーナから教わりもしました。学園都市に脳科学の情報を仕入れるために戻りもしました。クーデターに参加もしました。
そして『記憶保存』という礼装を遂に生み出すことに成功しました。
ですが結局、インデックスはそれとは関係なく『首輪』の呪縛から解放されましたし、もしそれがなくても上条さんの「幻想殺し」がなんとかしてくれたでしょう。
垣根の今までの努力は、過程は無駄だったのか?
そうではありません。クーデターに参加したことでキャーリサは垣根に対して好感をもちました。垣根が困ったときはなにかしら手を貸してくれるでしょう。他にもエリザリーナ、サーシャなどとも関わりました。記憶保存の礼装を作る過程で魔術をある程度修得しました。
そしてインデックスを救うのに役立たなかった「記憶保存」は巡り巡って垣根の命を助け、インデックスの心まで救いました。
垣根の努力はインデックスを首輪の呪いから解放するという目的を達成することは出来ませんでしたが、垣根が積み重ねてきた努力という過程が垣根の命とインデックスの心を救ったのです。
最近は現実でもアニメでも"どんな手段を使おうと結果を得る"。"過程に意味なんてない"というのが正しいという風潮が広がってます。ギアスのルルーシュの考え方やFate/zeroにおける切嗣思想などはその最たるものでしょう。
ですが過程にも意味がある、例え欲しい結果が得られなくても努力には意味がある……ということを、この作品を通して少しでも思って下されば幸いです。まぁ結果もついてくれば言う事なしですけどねw あとどこぞの外道騎士は結果を得た後に過程を捏造して宣伝する一番性質の悪いやつですがw
『嫌いなジャンルについて』
この際だからはっきり言いますが、私が最も嫌いなジャンルはアンチとヘイトです。特にキャラが改悪されてヘイトされている作品などを見ると書いた人をぶん殴りたい衝動にかられます。
嫌なら見なければいいと仰る方もいるでしょうが、そんな作品が存在しているだけで不愉快になります。
例えば私は銀英伝のキャラでは一番ラインハルトが好きなのですが…………にじファンの多くの作品でのラインハルトの扱いがアレだったのでもう最悪でした。余りにもアレなんで怒りを飛び越えて殺意が湧きましたね。
自分の好きなキャラが改悪されて、しかも酷い目に合う。そんなものを見たいと言う方はいないでしょう。……凌辱物の同人ゲーは別枠ですが。
二次創作なんだから好き勝手にすればいい、なんて言う方はいるでしょうが二次創作だからこそ原作に対して敬意を払う必要があります。
なので私も出来る限りそういうアンチやヘイトなどの描写がないよう努力してきました。それでも垣根を主人公にするという都合上、一方通行が悪役のような役回りになってしまったのは申し訳ありませんでした。
一方通行ファンの方には不愉快な思いをさせてしまったかもしれません。この場を借りて謝罪します。
そんなアンチが大嫌いな私なので、ギアスにおける某キャラはもう庇いようのないほどに駄目過ぎて書くとアンチにしかならないので出番皆無という措置をとりました。
もし次があるとしたら、一方通行や上条さんの活躍の機会も増やしていきたいですね。
『新約について』
多くの方が気にしているようなので。
新約編に関してですが、原作の方が一区切りしない限り新約編はやりません。
ただ新約一巻のストーリー分の構想は既に出来ていて、垣根の出番が皆無。代わりにレイビー、浜面、一方通行に三人が活躍する話になりそうです。
主にフレンダ関連で垣根の後釜として第二位に着任することになったレイビーと麦野のバトルとか。
学園都市の超能力者TOP3の力で生まれたスーパー怪人とかが出てきてカオスになど。
新約一巻はグレムリン関連の話題もなく区切りが良いので、いつかふと新約一巻編だけを掲載するかもしれません。
『最後に』
長い間、ご愛読ありがとうございました。RYUZEN先生の次回作にご期待下さい!
というジャンプの打ち切りENDはさておき。
これで本当の本当にこの作品は完結です。旧約・とある魔術の未元物質は終わりです。後日譚は新約編に突入するのでやりません。
またなにかの機会に会える日を心待ちにしています。それでは、本当に今までありがとうございました!
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