第228話『銀河英雄伝説編10 ヤン、シェーンコップ…』


カオルの救助回収効率は今までで最低なものになっていた。

5月10日以降、分裂体が取り付いてた艦が撃沈してるのに、
眠りこけてて気がついたら…破片になって宙を漂っている等があり、
あらかじめ撃沈死亡が確定しているシヴァのスタッフ人物以外の救助は、最低なものをきわめていた。

対応としてイゼルローン軍の一艦に分裂体二人がつく等行い…
何とか回収をおこなったが、
分裂体が合流する段階で問題が発生。
合流の度に疲労度が合算していき、
分裂体と相談した結果一日を回復日として皆で眠りこけて合流した。

18日目
やっと分裂体は合流をおえ、回収作業もおえ世界扉を唱えて…

……

宇宙歴800年5月25日

イゼルローン要塞から一隻の船が出港する。
同盟軍巡航艦レダ級2番艦レダ2…

ヤン提督がイゼルローン要塞に配属時にトリグラフ、アガートラムと共に配備されたレダ級最新鋭艦で、
他の2隻は戦艦の為バーライトの和約に基づき解体処分されたが、
レダ2は巡航艦で解体処分対象にはならずに再びムライ中将らと共にイゼルローン要塞に運び込まれた。

本来であれば試作運用後に量産化し次期主力巡航艦になる筈であったが、
アムリッツァの敗北でまったがかかり、生産性能に優れた現行艦の増産が急がれた。

指揮能力は戦艦クラス並の処理能力をもち、
また戦艦クラスの中性子ビーム砲4門採用で火力は上がっていて、
核融合炉やエンジンの高出力化、砲撃性能も向上、
更にはブリュンヒルト等に使われている傾斜装甲を初めて同盟で採用した艦でもあり、防御力も上昇している。
自動化がより進み他艦に比べより少ない人数での運用が可能だ。


回廊の戦いの結果、ヤン提督に対して帝国側から申し込まれた会談に応じる為に、
ヤン提督は革命政府首脳陣一向と共にイゼルローン要塞から出港してく。
ヤン一党の幕僚側からは副参謀長パトリチェフ少将、護衛役でブルームハルト中佐、
ビュコック元帥の副官だったスール少佐の3名だけが随員。

本来であるなら白兵戦にたけるローゼンリッター中隊長のブルームハルトだ。
部下を警備員として随伴すべきであったが…

直属部下を30名程同行させていれば…

更にもし、レダ2でなくいつものユリシーズであればこの後の悲劇を防げたかもしれない…
しかし…運命の歯車は止まらずに…

……

18日目 宇宙歴5月30日

ヴァンフリートに再び出たカオル、
ヤン提督乗艦のレダ2を目指してルーロスでおっかけて…

「みえたたでちぃ」

「あの船か…早速取り付いてくれ」

この世界の航行技術ではいくつかの制限があり、通常航行をせざるえなくなっている。

ワープ技術についてだが、
重力源の傍、物体の傍はNGは知ってると思うが、
更には途中に物体があるのもNGであり、対消滅してしまう。

なので帝国領と同盟領が回廊を隔てて存在しているのが成り立っているのだが…
それは同時に航路外航行でワープを行うのは危険性をはらんでいた。

何が漂っているかわからないのが理由だ。

また航路上で過去に戦いが起こった際には、
その後古戦場区間はワープ不可領域で、
通常航行をせざるえなくなる。

勿論ナット1つやそれよりも小さい塗装片でも引っ掻けたら…それだけでもこの世から消えてしまう。

なのでデブリ掃除業も栄える事になるのだがまた別のはなしで…
通常航行でデブリを押し出して道をあける事もあろう。
その際はデブリの質量や大きさが問題で、
場合によっては破壊して押し退ける事もある。

また更には…相手側が知ってない超破壊兵器、ブラックホール等ある。
これこそ航路逸脱できない理由もあろう。
航路を知ってればこそ、何があるかわかるのだから…

レダ2は回廊内を戦いの後で残骸がかなり酷かったが、通常航行でぬけ、
そしてデブリ掃除が終わっていない、古戦場航路区間をレダ2は通常航行していた。

だが情報から通るのを予測していた地球教徒らはジャマーを張り巡らせ、通信を遮断、
長い通常航行区間で待ち構える罠をはっていた…

ヤン提督を擬体に変えるチャンスは前日からしかない。
殺される深夜帯は高ぶったのか寝付けなく、
導眠剤をのみうとうとしかけたところで起こされる。

艦に侵入し…

……

宇宙歴800年6月1日

艦橋にヤン提督がのぼってきた。
帝国軍からの情報で、フォーク元准将が艦を奪って暗殺を試みている情報がはいったから、
艦橋に呼ばれた形であった。

だが既に罠にはまりつつあるレダ2…
発信元は帝国軍と名乗ったが地球教徒であり、帝国軍は護衛の駆逐艦すら派遣はしていなかった…

同時刻にはフェザーン商人ボリスからのフォークによる暗殺の情報がもたらされ、
ユリシーズ含め6隻の戦艦を救助隊として急遽派遣していたがレダ2には伝わっていない。

「ー何分通信状態が芳しくなくて」

地球教徒が撒いたジャマーの影響だ。
レダ2は地球教徒の仕業と気付いてなく、
帝国軍がつい先ほどの戦いで撒いたのが未回収なのだろうと認識していた。

「レーダーに反応、警告のあった武装商船の模様です」

「戦闘用意!」

武装商船が発砲してきて即座に、

「応戦しろ!主砲発射用意」

「武装商船の後ろに二隻の帝国艦」

「なに?」

「帝国艦が発砲」

駆逐艦2隻に背後から撃たれて…武装商船は撃沈してしまう。

「帝国艦より入電」

「どうします?…よし繋げ」

『テロリストは処理しました。ご安心下さい。
ついては我々がカイザーの元へご案内致しますので、
直接の挨拶させて頂きたいのですが』

「我々の代表はロムスキー議長だ。議長のご判断に従う」

ここで政府側に判断を委ねなければまた運命も違っただろう…

その場合…駆逐艦2隻ではレダ2に絶対に勝つには背後から機関部へ奇襲するしかない。
いくら2対1で数の有利があり、近接戦に長ける駆逐艦だろうと、取り逃がす恐れがある。

1時50分

駆逐艦が接舷してきて乗船してくる帝国軍兵士達、
しかしそれは…地球教徒の暗殺部隊であった…

「うわぁぁうわぁぁ」
ヤン提督達が異常を察したのは、
生き残った閣僚達が部屋に駆け込んできて発覚した。

ドア部分にバリケード変わりにテーブルを立てかけ、
銃撃戦が始まる。

「伏せててください!提督」
パトリチェフがヤンを護る為にテーブルでバリケードにしたてあげる。

「逃げてください!提督」

「提督」
ヤン側は2丁のブラスターのみで応戦し数の差は歴然であった。
ローゼンリッターであっても生身では光線に当たれば負傷し、戦力がかける…
かといって光線防ぐゼッフル粒子を撒けば相手が暗殺狙った特攻隊なら、
喜んでみずからを道連れにするだろう…
ドアに押し寄せてくる教徒から距離をとるように壁際のバリケードに後退する。

恐怖にかられて立ち上がる愚行をする高官。
「うわぁ…う」
銃線が集中し一人の命がきえた。

「うああぁ…ぎゃ」
死体となった同僚をみて立ってしまい…
もう一人の高官の命が消える。

「うっ」
スールが撃たれ倒れてしまう…
一気に戦力が半減、護りきれないと判断し、
「逃げてください!」
ブルームハルトが叫ぶ。パトリチェフがヤンを庇いながら後方の扉へ…

「ぬぁ…ぬぁぁ」
ブルームハルトも撃たれブラスターを手放してしまう。

ヤン提督を扉の奥に押し出したパトリチェフの背中にブラスターの銃撃が命中、身体を貫き出血してく…
「…よせよ痛いじゃないかね」
通常なら死んでる筈の銃痕…撃たれても笑ってよってくるパトリチェフに対し教徒はパニックになりかけ乱射、
パトリチェフが絶命し…扉にもたれ倒れた。
「ヤンはこの奥だ」

「重い動かん…ぐぁ!」

ブルームハルトが行かせまいと…傷をおいながらでもブラスターを放ち2名射殺し…

「提督…いき…のびてください…」

ブルームハルトは更に被弾しながらも追い掛けようとしていた合計6名全員を射殺。
ヤン提督を追い掛けるものはこの部屋からは出られなかった。

……

レダ2の艦スタッフはこの時何をしていたか?
巡洋艦レダ2は通常運用要員82名で運用していた。
自由惑星同盟の最新鋭艦であるレダ級、2隻しか建造されなかったが、最新鋭技術を盛り込み、
より自動化し少数運用化していた。

しかしその少数運用化が今回の悲劇の運命を決めた。
白兵戦を想定してない、乗り込まれたらもうそこまでた。

更にはだ…非戦闘員である革命政府の人員が多数のっていた。
そして彼らを世話する官僚達…
折角の乗員定数328名も多くの枠が彼らでうまった…

一方地球教徒の駆逐艦から乗員160名のところ、それ以上の200名近くが乗り込んで、それが2艦だ。
基本素人の集団なのは自覚しているのだろう。より多くのり、数多くおくりこんで、艦橋要員も殺害してく。
奇襲により艦要員の誰かが気がついた時には既に6倍の人員差になっており…

レダ2は逃げ出す事もできなくなっていく。
接舷している状態で無理にはがすような動作をするとまさしく自沈行為、
大量のエアが流出するからだ。

いつものユリシーズなら最低運用人数でも180名、通常運用人数で300名程であり、
それだけの人数であればまだ艦の制圧、ヤン提督の元にたどり着くのに時間がかかった筈であり…

……

安全な場所を探して一人考え事をしながら歩くヤン提督。

かつん
物音がしヤンがその方向へ身体をむけると…
「ヤン・ウェンリー…提督」

地球教徒のブラスターがヤン提督の左足を撃ち抜き、大量に血が吹き出始める。

「うわはぁぁ、殺したぁ殺したぁぁ」

マフラーを出血した箇所に巻くが動脈から血が出つづけ血が止まらない。
圧迫止血で止まらないなら、止血帯法だが思考がそこまで及ばないのだろう…

明るいところへ…生き延びたいと思ったのだろう、壁に手をつきながら…
壁に血にまみれた手痕がつく。

床には止まらない血が水溜まりのように動いた後へと流れてく…

「あ…うう…うう」
もう動けずに座り込むヤン提督…

「ごめんフレデリカ。
ごめんユリアン。
ごめんみんな」

2時55分…もはや動かない…

……

「誰かいるか!!」

ローゼンリッター隊員が部屋内に入り込んでくる。
「おい!生存者さがせ」

「ブルームハルト中隊長!」
隊員が倒れているブルームハルトを見つけた。
衛生兵をよんだが、顔色には死気が見えていて、
連隊長をよべとばかりにシェーンコップに伝わり、ブルームハルトの前に現れた。

「無事ですか?ヤン提督は…あの人は要領が悪いですからねぇちゃんと逃げてくれてれば良いんですが」
「ユリアンが助けにいった。大丈夫だ。すぐに此処にやってくるさ」

「よかったぁ…あの人が生きてないと、これから先面白くないですからねぇ…」
ブルームハルトが吐血し…死亡する…

……


「さて…次がシヴァかな?」
艦内の様子をモニターしていて、
擬体が活動したカプセル3体、
ヤン、パトリチェフ、ブルームハルトのをしまいこみ…
「あいでちぃ」

手短の星にいき世界扉を唱え…


……

宇宙歴801年5月末

前年ヤンを失ったヤン一党、
エルファシル革命政府も代表が殺されヤンの人気及び軍事的才能をあてにしていた為に、
レダ2に乗らずに生き残った閣僚は自らの安全を考え、後継者があてにならないとしてエルファシル革命政府は解散した。

ヤン一党は政治母体を失い民主的正当性を急遽たてなくてはならなくなり、
政治的にはヤンの副官で妻であったフレデリカ代表、
軍事的にはヤンの後継者ユリアン司令をあげてイゼルローン革命政府と生まれ変わる。

ヤンのカリスマ的存在と比較した後継者ユリアン…若輩18才の身であり知名度の低さや若さから、
内部からの不満がでて、多くの人物が離脱していった。

残った者は約半分以下、約94万対約400億の人口の差となっていた。

ただヤン提督は失ったものの後方面では混乱はみられなかった。兵坦や補給等だ。
ヤン提督はサイン製造機であり、フレデリカ及びキャゼルヌ両2名が一手を担っていたからであった。
ヤン提督ではなく、その2名が死亡して、いやインフルエンザで2週間倒れたら…
とたんにイゼルローン軍は回らない状態になるだろう…

そうして…ラインハルトに敵と認める者が居なくなり、イゼルローン自体も回廊を両側から封鎖すればよいと、
脅威と見なされなくなり、
銀河には平和が続くかと思えたが…
帝国軍の二分をする内乱が起きその後、
帝国内部で暴動が起き、再びイゼルローン討伐すべしの機運が帝国内部で出始める。
政治的微妙な立場になり一戦交える事を決意するユリアン率いるイゼルローン革命政府、
ワーレン艦隊を釣り出して一戦し立場を表明する。

ラインハルトは出兵を決意するが発熱により出兵は流れた。

ハイネセンに赴任したオーベルシュタインが独走し草狩りが始まる。
軍事的に要塞開城は陛下の身体にさしつかると…

オーベルシュタインの計略は人質5000人をとり共和国政府要人出頭要求との事で、
卑怯な上にうまく行きかけたが、
義に反すると帝国軍内部でも衝突しかけ、
また収容所内で暴動が起き死者が多数。
結局はラインハルトが事態の収拾に向かわざるえなくなくなった。

その流れをイゼルローン軍が察知すると一旦要塞に帰還するユリアン一行。

改めて直接招集し対話をイゼルローン革命政府に申し入れるラインハルト、
収容していた政治犯を解放しミュラーが交渉し始める。

間もなく互いに認め合い平和が…って時であった。

だが…ある一つの戦いがおきようとしていた。

その戦いの経緯は亡命を求めてきた一つの民間船から始まる。

亡命の為に遥々要塞まで接近していた艦が救助無線を流していた。
エンジントラブルにより航行ができなくなり、
それを政治的に見捨てる事ができないイゼルローン軍が保護の為に出陣、
捕縛目的で追跡してきた帝国軍とのまずは小規模ながら戦端が開かれる。

帝国軍から発砲し始め応戦し始めるイゼルローン軍。
エンジン修理まで動けぬイゼルローン軍と、
イゼルローン軍を排除し逮捕しようとする帝国軍、
双方とも増援による増援で大規模戦闘へと変化していく…

この大規模戦闘は帝国側が一時的に引き停戦するも、
更に帝国側の増援による大規模化の傾向をみせるが、
交渉の前に一戦し交渉を有利にしようとユリアンは決意した。

……

20日目入り際

宇宙歴801年5月29日
カオルはヴァンフリードに出ると、
ルーロスにのりイゼルローン軍集結の地へと急ぐ…

……

8時50分

ハイネセンから12日の距離のシヴァ星域で戦いが始まった。
5万1700隻対9800隻、数の上で5倍以上の戦いであり、
またイゼルローン軍は全艦艇に等しく割り振ると1艦当たり57.8人と人員不足で、
巡航艦の最低必要人数を満たさない陣容である。
イゼルローン軍は艦艇の約1割を無人操縦艦にし苦肉の策をとらざるえなかった。
だがそれでも巡航艦に50人強の配置にとどまっていた。

だが帝国軍もいつもと違い消極的であった。
艦隊司令よりも上位である皇帝の命令に従わないと反逆罪とみなされる縛りがあり、
その最上級の皇帝が発熱により微妙に判断が鈍っていたからでもある。

……

ビッテンフェルトが突出し更に策を具申したが、
ラインハルトが倒れ指揮系統が乱れはじめる。

……

「メルカッツ提督は入れ替えた、シェーンコップ中将も入れ替えた、
ローゼンリッターも入れ替えた…」

ペレグリン級艦内でチェックしてまわる分裂体カオル、
もう一方の分裂体カオルは、
虚数空間より死亡者や重体者を引き出すとカプセルにつめる作業に従事していた…


……

指揮は乱れても絶対的戦力差は依然としてあり、
消耗砲撃戦になりつつあるが手堅く布陣している帝国軍に対して、
疲弊していくばかりのイゼルローン軍、
例え撤退をしても最早会戦を行う能力はなくなると…
また皇帝倒れるの情報をイゼルローン軍が入手する。

イゼルローン軍は軍議を開き一計を仕掛ける事を決定する。


6月1日1時過ぎ

砲火が開かれてから3日目…
退却を装いうまく戦線が乱れる間に、
強襲揚陸艦にて直接帝国軍旗艦ブリュンヒルトに乗り込み、
直接会談しようとユリアンが試みる。
ローゼンリッターが先についたらカイザーの首をとり指揮崩壊をと…

逃がさまいと追撃してく…
最前線が乱れ始め更に退却部隊を追撃していたビッテンフェルト艦隊が、
無人艦隊の自爆に巻き込まれ混乱をきたす。

その混乱に乗じてブリュンヒルトに強襲揚陸艦が取り付き、
艦内にローゼンリッター連隊、ユリアン、ポプランらが侵入を果した…

……

「さて此処からだな…」

「マスター、これでおわりじゃないでちか?」

「ルーロス、擬体がまだ殆ど活動してるだろ?」

「む〜…フライングと判断ちたけど?」

「あれの殆どが回収できるからな」

ペレグリン級の艦内には遠隔操作擬体カプセルが約1200程横になっている。

「ふぇ?そんなに弱いんでちか?」

「いや歴戦の勇者達だよ」

「あの乗り込んだ船でちが、約兵員1200名しかいないでちよ」

「ブリュンヒルトにはそんなもんしかいないか?」
白い貴婦人、ラインハルト皇帝の乗艦であるブリュンヒルト…

艦のスタッフは旗艦操艦オペレーターや情報スタッフ、整備士、親衛隊等いるが、
戦闘訓練をしている親衛隊は200人足らず、
あとは一般艦と同様白兵戦専門とは言えない…その為、
「で、ちゅっこんだ船でちが、海兵隊」

「ローゼンリッターね」

「…を約1200人程おくりこんだでちよ」
その数がのりこまれては一蹴される人数であろう。
何しろ連隊が帝国軍装甲擲弾兵の1個師団1万以上に相当する。それは事実であるが…

「それでローゼンリッター側生存者が重傷者204名のみか…ん〜?」

その不可解な疑問は直にはれてく…

突っ込んだ強襲揚陸艦のスペックは全長226m全幅76m全高42mと、
120名乗りシャトルの48隻分の大きさとなる。
そこから多数の白兵戦に長けたローゼンリッターの勇士が乗り込んでいく…

防衛側は皇帝旗艦に傷を負わせてはならないと重火器使用を禁じた。

ラインハルトは自力で自らの元にたどりつくまで手助けはしてはならぬ、
手助けしてそこまでならその程度で会談するにも当たらずだと…

「あ〜はいはい…これで戦力差がついてくのか…」

「1人で10人殺しても、間に合わなくなるでちね」
周辺艦より皇帝の危機だと、装甲擲弾兵が乗船した連絡挺が次々とブリュンヒルトに到着する。
一つの連絡挺に客席ほぼいっぱいの60名が乗船、
連絡挺口から擲弾兵や衛兵達を吐き出すと離艦し、次の連絡挺の為にあける。
続々と皇帝を護れとばかりに殺されると解ってながら…

……

皇帝旗艦にとりつく強襲揚陸艦に攻撃をできない苛立ちから、
ビッテンフェルト艦隊が2時10分に怒りにまかせて突出し始めた。
それに連動しアイゼナッハ艦隊が後背を塞ぐ形で塞ぐ。

突出するビッテンフェルト艦隊を防げるほど、
もはやイゼルローン軍には余裕がなかった。

……

メルカッツ提督乗艦のヒューベリオンが直撃し、
副官のシュナイダーが助け出すも明らかに致命傷をおっていた。
「閣下!閣下」

「ユリアン達はブリュンヒルトに突入できただろうか…」

「どうやら成功できた模様です。それよりも脱出のご用意を」

「成功したか…では思い残す事はないな」

「閣下!」

「カイザーラインハルトとの戦いで死ねるのだ…満足して死にかけている人間を今更呼び戻さないでくれ」

「お許し下さい閣下、私は閣下にかえってご迷惑をかけたかもしれません」

「なに…そんな嘆くような人生でもあるまい。そう…伊達と酔狂でカイザーラインハルトと戦えたのだからな…兄にも苦労をかけたが、
これからは自由に身を処してくれ」

「閣下!」
メルカッツ提督の目はもう開いてない…

……

ルーロス内から様子を伺っていと、次々にとペレグリン級で擬体側の生体活動停止のカプセルが出始め、
虚数空間に回収していく。

ブリュンヒルト艦防衛司令部は、
他艦に応援要請を求め次々と警備スタッフや、
装甲擲弾兵を連絡挺で旗艦へ搭乗させてく。
流石にローゼンリッター連隊でも1人20殺以上は疲れが出始め、
また集団戦の最中だ…帝国側の防衛人員が次々と増え、
帝国側でブリュンヒルト艦内に生きている者が1万を越えてきた。
既に2万を切り裂いたが、1人辺りに瞬間的にかかる圧力が増すと1人、また1人と倒れ、
生き残りに圧力が増すためにローゼンリッターの死者が加速していく…

その間にもペレグリン級ではマシュンゴのカプセルを回収してた。

……

艦内の白兵戦は凄惨を極め、至る処に死体の山が積み上がっている。
次々と押し寄せる帝国兵を切り裂いたシェーンコップ、
直属の部下達の名前を呼ぶが生き残ってはなかった…

周囲に生きている者はいない。一息いれたが…

油断したシェーンコップの背中にトマホークが突き刺さる。
死亡していたと思っていた者が気絶していただけであり…その者に、

「若野郎…名を聞いておこうか…」

「聞いて何をするんだ…反乱軍め」

「なぁにワルター・フォン・シェーンコップに傷を負わせた奴の名を、
知っておきたかっただけさ」

「クルトジン・グフーベル軍曹だ」

「そうか…正直名を名乗った褒美に一つ芸をみせてやろう」

背中に刺さった戦斧を抜き、回りにきた敵兵を絶命させると、
ブラスターが発砲した状態で両人のそばを通るが微動だにしない…
クルトジンは恐怖に怯えている。

更に背後から襲いかかろうとした衛兵に一閃、顔半分をかりとる。

「悪魔だ…」

「奴は不死身か…」

「母さん母さん」

「さて…誰が運命を背負うのだ?
ワルター・フォン・シェーンコップが生涯で最後に殺した相手という運命をな」

その歩みを止めようとする者は最早いない…

自殺願望はない。誰だって生き延びたい…
かかると間違いなく殺される悪魔に自ら挑みたくはないだろう。

道をあけた帝国兵の間を歩き、
階段を昇って、最上段に座って帝国兵を見下ろす。
「ワルターフォンシェーンコップ37才死に臨んで言い残せり、
我が墓碑に名はいらぬ。ただ美女の涙のみ我が魂を安らげん…と。
どうもいまひとつ修辞が決まらんな…アッテンボローの青二才に代筆させた方がましか…」

そしてそのまま…

……

ユリアンを拉致したい誘惑も勿論ある。

だが拉致すると彼は重要なキーパーソンであり、
皇帝が死亡した後設立するバーライト星系自治政府にとってマイナスにしかならないだろう…
いやこの時点で拉致ると自治政府設立すらまだ危うい。

フレデリカも駄目だろう…ポプラン…
彼だけなら…

いやユリアンの教師であるが為に駄目だ。大騒ぎになろう…

オーベルシュタイン…
カオル的には好みでなが為に救助リストいりにしてないが、
帝国の巨大な実務を担っていて、彼の死後には帝国も混乱しえるのは充分予想され、
提案できる有能な人物がこの世界にもまだまだ必要だ…

流れに反しない死者のみの救助にとどめ…

……

3時0分

艦及び全域周波数で…
『私は宇宙艦隊司令長官ミッター・マイヤー元帥である。
皇帝陛下のご命令をを伝える。戦うのをやめよ、和平こそが陛下の御意である。皇帝陛下のご命令である。
戦うのをやめよ、和平こそが陛下の御意である』

流れて、戦いは終わる…

……

「さて返却作業か…」

突入してから1時間あまりで、
乗り込んだローゼンリッター連隊が204名重傷ながら生き残った。

彼らを本体に戻しにブリュンヒルト艦内の分裂体が作業しはじめる。

傷がついた者の傷が本体に反映し戻されてく…

……

全ての作業が終わり…

(さてっと次は…)

マブラヴ世界での当該人物リストを出すと確認し…
エリザベス・ウィアー博士…カナダ出身、存在確認出来ず。
家系が核により消滅の為。
カーソン・ベケット医師…スコットランド出身、幼少の頃死亡確認。
親が国際救援チームとしてヨーロッパ侵攻に援助として家族毎…

(うんじゃあ…)

世界扉が開き…目指すはアトランティスへ…

……




寸劇風後書き

作者「ヤン、シェーンコップをお送りしました」

ナギ大尉「えっと…その辺りの救助はわかるけど、
帝国兵達の2万の死体って…」

作者「ん〜乗り込んだローゼンリッターの人員数から考えると…
なんだよね…
まずブリュンヒルトが通常艦スタッフが1200程には異論ないよね?」

ナギ大尉「1km級の司令部用の特注艦よね」

作者「他の艦司令戦艦のデーターをみても700から1000程で、
親衛隊含めてその数なんさ」

ナギ大尉「そうね」

作者「で、同盟最強の白兵戦部隊がローゼンリッター…
作中でもかいてるけど師団規模相当で、1人10殺は当たり前」

ナギ大尉「でも数でかかれば…」

作者「格闘のプロ中のプロに、嗜み程度のが挑むのと一緒だよ」

ナギ大尉「う〜」

作者「まぁ…そんな猛者が1200人程のりこめば…ね」

ナギ大尉「でも、そんなに人員いるの?」

作者「シェーンコップが蜂起しヤン提督救助で連隊丸々ついて行ったから人員はいるさ」

ナギ大尉「なるほどね〜
さて、次回は再びアトランティスへ…お楽しみにぃ」

H26年3月改稿



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.