第017話 サイレントメビウス編02 Titanic incident
『香津美、気がついてない?』
署に向かって運転する車内にキディからの通信が入る。
「何が?」
『上空に浮かぶあれ…』
「上空…?」
香津美が上の方へ視線やると…
「な、何?あれ…?空飛ぶ船?」
『ばーかいってんじゃねえよ。世間様はタイタニックの亡霊と大騒ぎなんだよ。ニュース見てねえのか?』
「悪かったわねぇ。久々のオフで見てないわよ。ってタイタニックって…あの映画タイタニックの?」
『またあたしのわからないレトロなネタを…
今は時代はVRシネマ、主人公やヒロイン観点からみるのがメジャーってのによう』
「いいじゃない。昔のドラマ的な客観的観点のシネマの方が好きなのよ」
『まぁ…多分その通り、北大西洋に沈むタイタニック号の様だぜ』
「沈んでいるタイタニック号の現物は?確か何等分かになってるでしょ?
なんで完全な形で?」
『一辺にいうな!…現物の調査依頼をロンドンに出したが直ぐにはわからないだろうよ。
こっちが先に解決するか…で、何等分?』
「ええ、映画でも真っ二つしたじゃない」
『それはわからんが…妖魔が関与してたらくっつけて復元したんじゃねえの?』
「…そうよね…、で今回はあの上空のタイタニック号?」
『そう。3rd-ATの対象物だな。原因を調べてこいらしい』
「軍とかは?」
『突入試みたが、結界に阻まれたそうだ。あと由紀も予言をしてな…』
「その予言って?」
『真紅の満月、天頂に登るとき…死者が動き始める…とさ』
「明日…満月よね…」
『多分予言通りなら明日の深夜0時がタイムリミットとみたほうがよさげだな』
「わかったわ。あと10分で署につく」
『ああ、皆もそろそろスタンバイできるから急げよ』
「コール・アウト」
…………
(しばらく戻ってきそうにないか…)
カオルは未だ香津美のマンションの私室にいた。
1999年5月に開始された2chや、
98年9月から掲示板を開始したあめぞうあるかなぁ…とネットの世界に接続すると…
(へっ?タイタニック号??あれ?)
ネットの話題は上空に出現したタイタニック号でもちきりだった。
タイタニック号事件は2026年4月9日から14日の間に起こったゲーム版での事件で、
グロスポリナーがまだ香津美の元に来てなく、時系列では1巻あたりの護身刀継承後の事件だ。
TV版の世界ならといぶかしんだ。
グロスポリナーがいる…
今は日付は2026年4月14日の深夜2時20分…日付がずれている…
おきる筈はない。
カオルはタイタニックの映画は熱中していた。
1513人〜1523人の犠牲者がでた豪華客船だが、その犠牲者数でもっても実は事故当時は2番目、
因みに2015年現在は戦時外平時で5番目の位置だ。
実は1番目の史上最大の海難事故とよべるのが、1987年のドニャ・パス号で、4,375名死亡。
元は1963年建造…改造船でしかも改造後のデーターを公表してないいい加減なので…
改造前のだが、元々は日本のひめゆり丸、
総トン数2,640t全長93.1m全幅13.6m
乗組員数42名旅客定員532名の、那覇を母港とした琉球海運の貨客船であった。
航路引退後、1976年6月フィリピンのサルピシオ・ラインに売却。
ひめゆり丸をフィリピンの国内航路仕様に船体の全長にまたがるような三層の大きな上部構造物を設置、
旅客定員も1,518名と大幅に増加改造、
船名をドン・サルピシオ号と改名して就航。
外見は全くかわり、スマートフォルムなひめゆり丸がわからなくなる。
1979年6月火事があり全損したが…焼けただれた廃船船体を保健会社から買取り修繕。
再び火事前と同様にして定員1,518名のドニャ・パス号として同航路に就航した。
確実に船体耐久性落ちてる。
そして8年目…1987年12月20日、クリスマスシーズンにマニラですごす人を、
定員1,518名を遥かに上回った状態で…
1000tのガソリン積載タンカーが衝突、
瞬時に火だるまとなった。
主たる原因はタンカー側の無免許によるが、
ひめゆり丸時の総定員数の7.7倍が乗船していて、確実に船体舵能力が落ちていよう…避けられるわけもなかった。
運営会社の発表で犠牲者数は改造定員数の約3倍の4,375名、生存者22名の大惨事になった。
2番目は1948年の江亜号…1939年建造、総トン数3,730t全長98.18m定員1186名。
元々は1939年建造の東亜海運の興亜丸であったが、終戦時に中国海軍が接収、
民間旅客船として改修された。
そして戦後に処理しきれなかった機雷に触雷、
死者2,750人〜3,920人といわれ、
冬至の祭祀のために寧波に帰る人々の他、国共内戦中の中国共産党軍の前進から逃れる難民でいっぱいであり、
公式乗船名簿は2150名、その他に確実に密航者はいた。
ある意味戦争被害ともいえ、平時におけるにランクインはどうだろうともいえよう。
3番目は2002年のセネガル政府所有船ジョラ号、
1990年建造、全長79m幅員12m、定員数500人、最大乗員800人で設計されていた。
更には湖用なので外洋航行能力は基本的に低い…
定員オーバーと嵐が原因であった。
正確な出港時刻もわからず乗員客数も約2000人といわれてる。
航海日誌には1,143名が記録されていて、458名は記録がなく、262名が申告による人数で、
犠牲者は公式には1863名が最小、生存者は64人程といわれている。
アフリカなので当たり前?
4番目が1865年のサルタナ号…
1863年建造、両舷に外輪を持つ内海用木製の蒸気船。
総トン数1719t全長約80m、乗船定員376名。
過積載定員オーバーによるボイラーの爆発が原因で、
事故当時の乗員客数は2500人、屋根にまで人が溢れ、更に過剰な荷物を積み、全速力でも平時の半分の速力、
港入港時にバランスを崩して転覆しかけた程であった。
犠牲者数は遺体収容数が1450名程、行方不明が数百で、プラスしてタイタニック号を超えている。
……そんだけつんでの運行では当たり前?
5番目がタイタニック号だ。
この世界では2002年のが存在してないが、大破壊時のはあるので…
平時においてに限定するが4番目の位置付けだ。
因みに1位のドニャ・パス号の会社存続してないだろう?と思うかもしれないが…
ところがどっこい。その後も存続し更に沈没犠牲者数を稼いでいる。
サルピシオ・ラインは現社名はスパン・アジアと変えてるが、
でかいので1988年に台風の中出港ドニャ・マリリン号沈没、389名死亡。
1998年に台風の中出港しプリンス・オブ・オリエント号沈没、150名死亡。
2008年プリンセス・オブ・スターズ号がシブヤン海で沈没、773名死亡。
2013年は他社のフェリーと衝突させて死者行方不明が100名程だした。
存続理由として1987年当時に既に全島を結ぶ庶民の足で…国内航空は庶民にとっては高い。
事故で客足はなれても料金の安さで戻ってきて、補償裁判に関してもごねて安くする。
フィリピン人の中ではマーダーラインとして有名だったので社名変えたそうで…
マニラでの車の運転をみても安全にたいするモラルがないともいえ、
航空面でみても、フィリピンの航空会社はすべて2013年までEU圏内飛行禁止になっていた。
2013年フィリピン航空が解除、2014年セブ・パシフィックが解除になったが他社は続いている。
離陸面からみてもJALは台風の影響で見合せてるのに、フィリピン航空は離陸した。
因みにゼストエアウェイズがフィリピン民間航空局(CAAP)より運航停止処分を受け、
2013年8月に全面的に運休なったが、
理由として、
燃料連結装置キャップの遺失、油圧システムの欠陥、燃料過剰、
その他にもフィリピン航空ルールにかかれている資格者の欠如や、乗客が搭乗中の給油、超過勤務などの違反をおこなったのが理由だ。
キャップ遺失等は20日間の調査期間中に5件発生したという…
それでただの運行停止処分3日と…
また車に関しても…車は自己管理で修理も個人でするのが常識という…
つまり部品が買えなきゃ無理に…
つまりフィリピンでフェリー乗るときは遺書を書いた方が無難と言うことで…
タイタニック号以外も出てくる可能性があったが…
いるのはタイタニックなのだろう。
(そういえばシールムグも原作版とテレビ版の年代ずれてたな)
万能戦略機シームルグ…AMPの前線基地という空中戦艦で、
結界兵器搭載、対術障壁、空中に浮かぶ妖魔に体当たりかまして無事などの攻撃防御面の他に、
全員搭乗可能で、電子的司令部、簡易医療設備等を備える。
このシームルグがいるおかげで実動班の面々は戦況が不利になっても船内退避が可能になるなど、戦略的幅が広がった。
ポリススピナー…全長9.2m、最大幅2.2m。
空飛ぶ警察車両で案外長さがある。
リアルの1BOXが5mでその2台分弱といったところだ。
因みに平成19年以後での普通免、10人以下5t未満でのれるリムジン…
異様に長く住宅地にきたら字番ある箇所なら間違いなくつまるサイズになる。
あれの例をあげると…リンカーンタウンカー120NCストレッチリムジン、クリスタル社製は、
長さ8.58m幅2.12m車輌重量2.28t、
それでいて乗車定員運転手8人なので普通免許でのれる。
長さは道交法で制限され12mだが、
普通車と中型以上の区分は重量と定員数のみである。
それよりかは長いサイズで、道路走行に支障がない長さに納めたのだろう。
対妖魔用兵器は搭載されてなく、体当たりが妖魔に対する攻撃手段だ。
(そういえば…)
満月、本来なら2026年4月は4日と翌月の4日の筈とカオルのシナプスは計算していた。
29.5日で月は1周する為案外計算しやすいものだが、サイレントクライシス等の影響で月の公転にずれが生じたのか…だろう。
そこは突っ込まないでほしい。
……
「香津美、ただいま到着です」
00分署のAMP実動班たるオペレーションルームに香津美が入室してきた。
着替えもすませて制服姿だ。
「うむ。休暇中わるいな」
磯崎課長が労いの言葉をなげかける。
「いえ」
「さて…みんな揃った所で、まずは協力者を紹介しよう。レビア」
「はい」
「タイタニック研究の第一人者、ケンブリッジ大学のルイズ・エドワード女史だ。
女史は偶々Tokyoに来ていた記録があったので協力を要請した」
「ですが課長…先生は民間人ですよ?」
「由紀の予言したタイムリミットに24時間を切っている。手段は選べはできないし、女史の安全は我々AMPが保障する。
女史の協力の元、タイタニック号の調査をし、原因と思われる妖魔を退治し、タイタニック号を鎮魂させて元の海に帰してもらいたい」
「わかりました」
「でだ…どう乗り込むかは…」
「あの、すみません。1つ確認したいのですが…」
「何でしょう?女史」
「タイタニック号が本当に建造当時のままに…でしょうか?幻影とかでなく」
「それも確めにも今回調査に乗り込みます。その前提でお願い致します」
「わかりました…では、こちらをご覧ください」
タイタニックの船外映像、上部からのマップがでる。
「タイタニック号は全長268m、最大型幅28.2m、総トン数46,328tと巨大な船ですが、
この通り通信アンテナがマスト間を張ってまして」
ルイズが映像拡大させて指差し棒にて前マストからのアンテナケーブルを指す。
「事故前の状態で完全再現ですと、ケーブルが張られている可能性があり、
切断してしまうとスピナーに巻き付く可能性もあり、墜落の可能性もあります」
「切断しない方法で着陸想定すると?」
「それでしたら、提供された資料からして…」
映像ずらして…
「この部分に着地するしかないですね」
4番煙突後部の部分を指す。
「それ以外の箇所では…」
「煙突と甲板を繋ぐロープが出てますのでロープを切断しなければなりません」
「ポリススピナーがそのスペースで着地できるの?」
「対比させますが、タイタニック号の救命ボートの大きさが65人乗りの、
3号から16号救命ボートは9.14mの2.77mです。
47人乗りのA号からD号救命ボートは7.75mの2.24mですので…
充分スペースはあります」
「前部や後部甲板は?」
「そちらは検討したのですが、マスト張力ロープが邪魔ですし、
甲板構造物があります」
「そこに着陸は無理か…」
「シームルグの大きさはまず無理ですね」
「そうですね…通信ケーブルどころか、マストを折る、煙突を折るとかしないと駄目ですね」
「シームルグは無事でしょうけどタイタニックが大惨事になりますね」
「ただ…問題が1つ…」
「何でしょう?」
「建造当時のままならギリギリデッキ構造材強度が支えきれますが、
万が一114年海中で過ごしたあとの強度ですとポリススピナーの重量には耐えられません」
「ふむ…」
「1ヶ所に約3tですので、デッキに使われているチーク材が腐食してたら耐えきれずに、
破壊してデッキにはまり飛び立てなくなる可能性もあります」
「ならCH70でホバリング侵入を提案します」
レビアから意見があがる。
「ふむ」
「ルイズさんがいうにはその部分にはロープ等張られてないですので、
スペースには困らないですよね?」
「はい」
「よし、ではシームルグには私とデューイ、
ヒューイがCH70に搭乗で直接乗り込んでくれ。帰還時にはスリングで回収する」
「了解!」
「出動!」
……
CH70に乗り込み…
長らく使用されてた兵員輸送ヘリCH-47チヌークの派生機として開発された機体で、
機動警察も使用している車載車両輸送可のタンデムサイドタイプ輸送ヘリであった。
20世紀終わりのヘリとは違い、ローター外にはブレードシールドがあるヘリで、
建物に強行突入用に開発された装甲車を搭載しながらでも自由自在に稼働でき、
特に警察に採用が多い。
AMP用には装甲を対妖魔用に改造等をレビアが施していた。
カーゴ内の座席展開して座る面々。シームルグの発進準備待ちであった。
「船内時間1912年4月15日、午前2時20分…日本時間では午後2時20分ごろに沈没しました。
氷山衝突時刻は船内時間午後11:40分ごろです」
「予言したのが満月が天に昇る時だから、午前0時なんだろ?
日本時間だとしたら真裏で、昼間となって12時間のびるが関係なさそうだし、
衝突時間の午後11時40分が重要なんじゃね?」
「そうね…可能性がおおきいわね」
「ところでさ、待ってる間に質問なんだが…
タイタニック号は処女航海でかなりの死者をだして沈んだんだろ?欠陥だったん?」
「いえ違います。かなりの不沈性能はありました。
死者に関しては当時の商船規則でトン数により救命ボートの数が決められてたのが原因です。
沈んだ原因は、流石に船体の25%ちかくから浸水では無理と言え欠陥とはいえません。
タイタニックの事故後に姉妹艦のブリタニックがこれは機雷による撃沈と、規則では閉められてた客室窓と、
防水扉が機雷での衝撃で閉まらなかったのが原因で…僅か50分で沈みますが、
その際死者は沈没時にブリタニックのスクリューに巻き込まれた2隻の救命ボートの乗員21名だけです。
救命ボートを積んでれば死者はそんなにだしませんでした。
1番艦のオリンピック号は第一次世界大戦時、Uボートを沈めたただ唯一の商船です。
勿論雷撃をうけますが、直撃したのが幸い不発で船首でUボートを体当りで沈めました。
オリンピック号は1935年の引退まで活躍し頼もしいおばあちゃんの愛称まで世間に言われる程でしたよ。
更にはオリンピックはタイタニック沈没前に軍艦と衝突しますが、
その事件は防水区画2区画浸水で重大な被害被りますが、自力で港に入港してます。
相手艦は船首がひしゃげて…という被害です。
船体的には充分でした。
両艦ともタイタニック号事件うけて改装工事でEデッキからBデッキへ防水区画かさ上げされて、救命ボートを増設されてますが…基本はかわりないですよ」
「不沈…まず…ないんだな…」
「シームルグ発進したわ。こちらも離陸するわよ」
風切り音が高くなり00分署から離陸する。
……
「この先が軍が入れなかった結界がありますね…」
『ドローンを一度侵入させる。すぐに異界となれば事だからな』
「墜落したらキディならともかく、私達は無事にはすまなそうですし」
「あたしも無事じゃあねえよ!!」
『騒ぐな、突入させるぞ!!』
……
『ほう…』
「へえ…」
『……どう思う?レビア』
「そうですね…1回異界から出れるか確かめてみましょう」
「異界?」
「入ればわかるわよ」
ドローンが無事に出てきて…
『出入りはAMPのなら自由な様だな』
「では結界内に突入します」
『ああ』
機体が結界内に侵入。
「なる程…これは…」
景色が一変し、眼下には夜の海原を航行中のタイタニック号といった景色になる。
回りは薄い霧状になり、Tokyoの都市景色は消えていた。
「……妖魔としたらかなりの力をもつわね…こうも異界化させるなんて…」
「なぁ…タイタニック号にミサイルぶちこめばとりあえず解決つくんじゃね?」
「キディ…これ見ても?」
「人がいる」
船上に暗くて服装がわからないがカンテラらしき灯りを持って動いているのが見えていた。
「生きてるかどうかわからないけど、あの人ごと破壊するの?」
「……死人じゃねえの?」
「それ確かめてからでいいんじゃない?」
「わかった」
『ところでレビア』
「はい?」
『外気温は何度になっている?』
「えっ…あっ!」
『女史の防寒着必要だと思うのだが…』
「ですね。ロッカーから出します」
「レビアさん?」
「梛魅、AMP制服に着替えて!」
「えっ?」
「命に関わるわよ!外気温は氷点下なのよ」
Tokyoは比較的熱せられやすく今の時期最低15度。の為に梛魅の巫女服に注意をうながすが…
「ああ、それでしたら防寒羽織持ってきてますから」
「エッ?」
「冷凍庫あるんですよね。準備してました」
「orz」
準備がよい梛魅に意気消沈し、
ロッカーからルイズ用の防寒着をだし着込むようにうながし…
「あの場所ね…降下させるわ」
機体がタイタニック号へと降下、
「ハッチ開けるわ!突入準備!」
後部ハッチが開き機体は後部をボートデッキ側に向けてホバリングし、
タラップが延びてデッキへと到達。
「いいわよ!」
の掛け声でAMPの面々及びルイズが甲板へと降り立つ。
「ヒューイ!全員降りたわ……ええありがと」
タラップが収納され機体が離れてく…
「うう、顔がさみい」
「なんだが嫌な感じがしまー」
「うわぁぁぁ、へへへへへ」
「船全体が重い空気に包まれてまー」
「へえ…これがタイタニック…」
「人選間違えたかしら…」
ルイズはタイタニックのデッキに頬ずっていた…
〔お宅らどっから来たんだい?…その人大丈夫かい?それにあの乗り物は…?〕
もっこもっこの人物が声かけてくる。
もっこもっこのコートには霜がかかっていた。
「英語か…またマイナーな」
「この時代は英語が共通語でしたからねぇ」
サイレントクライシス、大破壊後に復興した守護都市には、
Tokyo以外にも白老郡を中心とした苫小牧、大阪、直方を中心とした北九州、沖縄と数が多く、
第1次、第2次と対妖魔の最前線がTokyoなのはかわりなかった。
更にはいち早く電脳化に成功し結果日本語が世界共通言語となった。
英語はマイナーになったのである。
「任せて」
〔私たちはアメリカ軍特殊部隊の者で、あれはオートジャイロという秘密搭乗型兵器で、いわば空飛ぶ新兵器です。
この船の密航者に重大犯罪者がいるという事で捜査捕縛を命じられきました。
とりあえず彼女は新品マニアなので見なかった事にしてください〕
〔ほう?軍特殊部隊か…だろうな…見たこともない兵器だし…
船長に確認とって〕
〔あっ、申し訳ありませんが出来れば内密に…何処から犯罪者に伝わるかわかりませんので、
この深夜に来船したのですから〕
〔……まぁ…わかりました。信じましょう。ですが…そちらの方も落ち着いたようですね…
問題を起こさないでくださいよ?
ようこそタイタニックへ〕
〔ありがとう〕
「課長、結界の外側にCH70を一回待避させた方が無難です」
『了解した。必要な時は光学迷彩かけて接近させよう。
にしても人が居るとはな…』
「ですね…あと、デッキはかなり丈夫です。ポリススピナーでも着地は可能ですね」
『了解した。準備しておこう』
「では、コールアウト。皆、調査には英語が基準となりそうよ」
「わたし、喋れません」
「わたしも駄目です」
「後は大丈夫なようね?チームを2つにわけるけど、ルイズさんは香津美に護衛してもらうから…由紀、香津美のチームに」
「わかりました」
「キディと那魅は私といっしょね」
「おうよ」
「はい」
ロス出身のレビア、シドニー出身のキディが日本語読めるし、
日本語オンリーの那魅、由紀と喋れる…
また由紀が過去の渋谷にいっても言葉や読むのが普通に困らずでもある。
……
(にしても…本当に沈没前のタイタニックに立てるなんて…)
1985年、ロシアの科学調査船ケルディシュ号に登載された深海潜水艇ミールにより、
海底に沈んだタイタニック号が発見されその後遺品などの数々が地上に引き上げられたが、
大破壊によりほぼ消失してしまった。
皮肉にも引き上げられなかった方が2026年現在ではよかったかもしれない。
情勢がおちつき、1985年から数えて
約40年後、海中のバクテリアによる損壊であと60年程で崩れてしまうだろうにより、
引き揚げ保存が決まった。ルイズはその為の研究討論チームの一員であった。
海中に分断されて沈むタイタニック号を引き揚げるのは困難ではあるが、
科学の発展により可能ではある…との方針の最中のこの事件が発生した。
『皆、聞いてくれ。ひょっとしたら過去への干渉かもしれない』
「過去への干渉ですか?」
『そうだ。妖魔の力によりの可能性も否定はできない』
「確かに…」
『第1、結界の外と中では、完全に環境が違うのがその懸念をもっている。
空気成分もクリーンだしな』
「でも…そうすると…」
「あっ、私ファンタジー物で見たことありますぅ。未来が変わっちゃうんですよね?」
「その場合って…」
「はっきりそういった現象が起きた事が無いからだけど、理論的にはタイムシフトが起こる筈よ」
「え〜っ?身体が溶けないんですか?」
「サイレントクライシスが防げる過去が作れませんか?」
「……それもあるけど…でも今の私達やTokyoが消滅するかもよ?」
「そうなの?」
『レビアのいう可能性が高いな。なので過去への関与か確定できるまで破壊する等の騒動は控える様に。
もし過去への関与なら原因だけを消滅させてくれ』
「了解です」
「じゃ、案内宜しくね」
「ではこちらです」
香津美らは案内されてく…
「まずこの階はボートデッキで、
ブリッジ関連、展望台、体育室、予備客室等があります。2番煙突前に大階段室があります」
「その大階段って…映画で有名な?」
「そうですね。天窓つきの階段です」
2等の後部から1等前部にすすみ、
階段室へ繋がる風除室のドアをあけると一気に暖まった空気に包まれる。
「とと、少しお待ちください」
といってルイズはコートを脱ぎ始める。
「香津美さんらは…暑くないんですか?」
「この制服、レビア謹製で結構温暖調節機能ついてるのよ。
なので夏場も冬場もね」
「そうそう、なくしちゃうとガーって怒られちゃうんですよ〜」
「ノーマル警官には着せられない程高価なんだからね!って…」
「準備できました。行きましょう」
防寒コートを畳み込んだナップザックを肩にかけていた。
更にドアをあけると階段室で、
華やかな吹き抜け状、室内には壁を背にして二人がけソファーが6脚、一人座りソファーが5脚、
船前方を東とすると、北東側に縦型ピアノがおいてある。
ドームタイプの天井がすでに豪華だ。
北側から階段降りてくと…
「Aデッキ、前方に1等シングルルームが多数あって、後方に読書筆記室、1等ラウンジ、更に1等後部階段、1等喫煙室、ベランダプライムコートがあります。
またこの階段裏手にエレベーターが3機ありますね」
「1等シングルなんてあるの?あの豪華な部屋でなく?」
「豪華…?えっとあのとは?」
「ローズが泊まった」
「あっ、確かにBの52、54、56のプライベートデッキ付きのですよね?
あの部屋は実際には船主のイルメイが泊まってるので」
「マジ!?ローズじゃないの!!!」
「え、ええ…ローズは乗船名簿にも記録されてなく、架空の人物です」
「えええっ!!!そんなぁぁぁ…」
「更に追い討ちかけますが、モデルとなった女優、パール・ホワイトはタイタニックにのってませんよ」
「な、なら…ジャック様は?!?!」
「同じく…工業デザイナーの先駆者であるレイモンド・ローウィがモデルとなってますが、
タイタニックにのってません」
「あの…恋は…なんだったの……」
「でその部屋は貴賓室とよばれてます。
それとは別の普通の1等シングルですよ。
部屋ごとにはバス、トイレはなく集中型になりますが…
あとは3人部屋が前に2部屋と、5人部屋でも運用可なのが2部屋ですね」
「あんまり人がいないね」
「そうですね…朝からでないと起きて来ないかもしれません」
「今のうちに船内の配置をたたき込まなきゃでしょ?香津美さん」
「任せるわ…」
まだショックをひきずっているようだ…
「わかりました。では下にいきましょう…
Bデッキは、まず前方に1等客室がならび…比較的に2段ベッドタイプの3人部屋が多くなり、
後方に先程の貴賓室、スイートルーム、1等部屋区画があります。
後部階段がレストラン待機室、1等レストラン、カフェパリシャン、2等喫煙室があります」
「ローズがいないならつぎにいって…」
「Cデッキは、まず船首側に船員の食事区画、3等プロムナード
1等区画、後方にサロン付き特別室、スイートルームのある1等区画、
メイドや従者用サロン、理容室、
後部1等階段はこの階までです。
ベルデスクと事務長右舷側…売店と言うか取り寄せスタイルでしょう。
2等図書室、
更に西側に3等プロムナード、右舷側にジェネラル・ルーム、左舷側に喫煙室がありました。部屋の外にバーがあります」
「香津美さん?」
「次々…」
「Dデッキから一気にひろくなります。
甲板下レベルです。
前方側に火夫船室、3等バーとオープンスペース、3等乗船口、1等個室区画、1等入口で、
ここがレセプションルーム、
後方に1等大食堂、病院、
2等大食堂兼サロン、2等客室、3等客室があります」
「いないのがわかったから…豪華ね〜」
「Eデッキです」
大階段の形が違っていた。
「階段室の吹き抜け構造はこの階までですね。
前方にトリマー船室、甲板員船室で、3等客室、ここからも乗船できる3等乗船口もあります。
1等客室が中央から右舷側にあって、このドアの左舷側が3等通路兼ねた客室部船室区画、
後方に2等客室、2等乗船入口、更に後方に3等客室があります。
衛兵室もこの階ですね。
船を貫いて3等客が移動できるのもこの階になります」
「この左舷の扉の向こう側が?」
「ええ、3等区画にはなりますね。ただ停泊時に使用してますが、
基本非常用なので鍵がかかり、この様にあきません」
説明を終え階段を下がっていく…Fデッキにおりると下に降りる階段が見当たらない。
「Fデッキは1等前部階段はここまでになります。
まずは火夫船室、3等客室、その中に郵便局船室がありますね。
1等区画内にプール、 蒸し風呂、バー、
後方に3等大食堂があります。
その奥が客室係船室と、機関区船員区画、
2等客室と3等客室があります」
「この下は?」
「ボイラーケーシングになりますね。
ボイラーからの排煙熱が通る区画です。
なので上層に比べれば少し煩さが伝わって来ますよね?」
「言われてみれば…」
「エンジン区画程ではないですが…ここからは他の区画にいけないので、一階上に上がって3等通路にいきましょう」
防水壁の関係と1等区画分けで少し不便な造りだ。
Eデッキ階段を左に曲がって左、3等エントランスにでて…階段を下がり、
「Gデッキ前方側に船室、3等客室、1等テニスコート、倉庫区画と郵便局、中央ににボイラールームがあって、エンジンルーム区画、その後方区画に食品倉庫類、その後ろの区画に2等客室、3等客室です。
客室はこのGデッキで最下層ですね」
「更に下にいくには?」
「えっと…こちらです」
第9層たる順番ではHがつくが…
Orlop deck…最下甲板へ下がる為に再びEデッキにあがり、ジャガイモ庫横の船員階段へ行くと…
〔申し訳ございません。一般のお客様はこれより先にいけません〕
「下には食品倉庫等の区画になるんですが…」
〔食糧庫を見せてもらいたいのよ〕
〔そうですか…船員証…はお持ち出ないですから、
責任者の船長の許可が無いとわたしの権限ではお通しする事ができません。
許可を頂いてもらえますか?〕
〔そうですね〕
「騒動はまだおこしたくないから、許可もらいにいきましょ?」
「ですね」
〔わかりました。どちらかの許可貰ってきます〕
〔宜しくお願い致します〕
「船長さんは…」
「寝てる筈ですね」
「なんかこの下が嫌な感じするのですが…」
「由紀が言うなら原因はそこにありそうね」
「ところで、前部が下がれるのがロアーデッキまでで、後部も同様かと思いますが確認しにいきます?」
「だいたい構造がわかったから大丈夫です…下には許可証…ね」
「朝食時に突撃すれば貰えそうですから…
あっ丁度よさそうな時間帯ですね…」
ルイズは腕時計を見て…朝の5時と表示されてる。
「ブリッジに行きませんか?」
「ブリッジへ?」
「少し思う事がありましてブリッジへいけば、懸念の過去への干渉かが詳しくわかります。
ブリッジオフィサー、航海士がどうなってるかですね」
「なにがわかるの?」
「14日の朝のこの時間ですと、ハーバード・ジョン・ビットマン三等航海士と、
ハロルド・ゴッドフリー・ロウ五等航海士がブリッジ当直補佐と、
ウイリアム・マクマスター・マードック一等航海士がブリッジ当直についてます」
「そのブリッジ当直って?」
「船の運行上の責任者で、最高司令部の当直ですね」
「船長さんでなくて?」
「船長さんは全ての責任者でありますが、24時間は居ません」
「なる程…で、そのブリッジ当直がなにが関係あるの?」
「この時間の当直2名は事故後も生存してます。
つまり一人しかいなければ、過去への干渉では無いが証明できるかもです」
「ああ、なる程…」
「ブリッジにいきましょう」
階段登りきりコートを着こんでボートデッキにでる。
寒気が顔に直撃するが前方に向かいあるき、
関係者以外立ち入り禁止の柵の内側に入りルイズが、
〔すみません〕
と声をかけると…
〔何か御用ですか?〕
制服姿のものが顔を出してきた。
〔ハロルド五等航海士さんいらっしゃいます?〕
〔ハロルド5等航海士ですか…私も交替をまってるんですが…〕
〔ムーディー!何があった!?〕
奥の方で声がする。
〔ハロルド5等航海士を探している方がこられてます!〕
〔そうか!…すこし早いがトラブルといってついでにライトラーも呼び出してくれ!!〕
〔わかりました!〕
〔何かあったんです?〕
〔操舵手が全員連絡とれずでして…いえなに、私達は資格は持ってますのでご安心ください。
もしよろしければ直接控え室にお声かけしてもらてれば助かるのですが〕
〔ああ、良いですよ〕
〔ちょっとお待ち下さい〕
奥に引っ込んで…
〔通行許可証とスペアキーです〕
〔いただきます。では行ってきますね〕
「やはり仮説は正しそうですね」
「それでわかるの?」
「ブリッジには操舵を担当する操舵手という役職があり、操舵手6人雇われてますが、全員生存してます」
「つまり…」
「現れた時に舵輪を操作する人が居なかった…わけですね」
「探しに行けばよいのに…」
「基本的にブリッジは操舵手含め最低3人で小休憩等で生理的問題で交替する為に5人配置につくのが、
あの方達2人しかいないので…舵輪操作する1人以外か外れると…
テレグラフを操作したり羅針盤や六分儀確認…現在地位置確認する要員や、艦内電話取次、あと防水扉等操作する人がいなくなります。
つまり外れられずに、4時間ず〜っとたちっぱなしでこんな寒いなか生理的問題解決にも行けず…」
「おしっこ貯まりそう…」
「本来ならもう1人の航海士のジョセフ・グローブ・ボックスホール4等航海士がいて動ける筈でしたから」
「その彼も?」
「生存してますね。ブリッジクルーで死亡したのは、先のジェームス・ポール・ムーディー六等航海士、
それと舵輪室で舵輪を操作していた人がウイリアム・マクマスター・マードック一等航海士だと思いますが、彼もです。
顔は見られませんでしたが部下に対して命令口調でしたので…
あとヘンリー・ティングル・ワイルド航海士長も死亡してますが、今の時間まだ眠っている筈です。
他にはスミス船長と合計4名のみです」
コートを脱ぎながらボートデッキブリッジ後方の控え室通路へのドアを開け中に入る。
「他の人が手伝わないの?」
「朝で甲板員も増員する筈ですが、甲板員もかなりの人物がボート指揮で生き延びてます。
甲板部員が先程の操舵手や航海士、船長除くと52名中35名生存なので、
タイタニック号にいるのは17名となります。
特に見張り役が航海中は1番重要な役目で2名は常時シフトをくんでますから…
残り11名でこんな広い甲板を担当します。24時間シフトでどう回せばよいんですかと…ですね」
「え〜っと…あれ?制服着た」
「の前に、続きは後程でよろしいです?」
控え室ドア前につき、
「実はですね…」
「はい?」
「私はタイタニック号を再生してくれた妖魔に感謝もしてるんです」
「え、えっと…」
「だって、人類史上初ですよ!!?在りし日の私室となった士官控え室をみれるの!!」
「は、はぁ…」
「乗船前の一等客室とかの資料はあるんです!でも乗船後は…出港したあとは基本的に客が同意しない限りありませんし、
今みたく気軽に画像を残す等出来なかった時代です!!
沈没後は確かに撮影資料としてのこってますが、75年すでに海の中で過ごしたあと…
腐食、また沈没の衝撃で破壊されたあとです!
ああ…感激の一言で!」
鍵を挿し込み、回して解錠しドアをあけ…
「ほんぽう大公開!!」
といいながら開かれるドア…
「あら、案外普通?」
性格がでているのだろう…綺麗な部屋であった。
ただ普通とは違うのは寝間着が着てるような感じにベットの中で潰れているところだ。袖が出ているのが見えていた。
「何いってるんですか!お宝探しのチャンスですよ!海に沈んだ私物探しの!!」
といって勝手にタンスをあけるルイズ…
「ちょっと…荒らしてどうするの?私達が疑われるじゃない」
「そもそも警官の前で私物?…になるんでしょうか?」
と考え込む由紀。
「えええっ?!?!新品状態の私物ゲットのまたと無いチャンスですよ?!!後生ですから!!」
「いや、新品状態が妖魔によって再現なんだから、ゲットしても風化するんですから」
「それに妖魔の身体の1部かもしれません」
「あっ…そうなんですね…」
と言っても名残惜しそうに…
「でもこれが妖魔の身体?…そうは思えない手触りです…」
「私達にもまだ全てがわからないのですから…」
「じゃあ、写真だけでも記録したいです!」
「写真だけね…」
「はい!!」
ルイズが興奮して撮影してる間に、
室内を香津美は見渡す。
室内に入って目につくのはまず右側のシングルベッドだ。
木枠でまわりは高く船揺れでの転落防止の為だと思う。
ダブルベッドサイズならタイタニック号なら大丈夫であろうが、そのスペースは使いたくないのだろう。
そして机、更に左壁のタンス。とに壁側にソファータイプの長椅子。
ベット下は収納引き出しがついていて、
ルイズさんは引き出しを片っ端からあけて撮っている。
熱した空気を下げる役割なのだろう、ドアの右側にはサーキュレーターがある。
それにレトロなデザインの電熱ヒーターとその上に棚がある。
タンスあけても長椅子には干渉せずにスペースがある作りで、
トイレやシャワーは奥行き約2m程のこの部屋にはなく…
どこにあるか不明だけど、
5等航海士室としたらこんなもんなのかな?と香津美は思っていた。
「満足です!」
引き出し等が片付けられて元通りに…
次に調べてと言われたハーバート3等航海士の部屋へと…
外通路からつきたあり左にまがった2部屋目だ。
部屋の作りはだいたい一緒、横に若干広く3mちょい越え、またルイズさんが撮影始める。
「ところで、トイレやシャワーは何処なの?」
香津美はさっきの疑問を聞いてみた。
「部屋からみて通路を右手に、煙突スペース先、左手にトイレがあります。
おふろもそこですね。
キッチンなどは曲がって無線会社の部屋過ぎたつきたありです」
「個室にはないの?」
「配管の関係だと思いますが…ないですね〜」
「へぇ」
「因みに水も造水装置で海水から真水を石炭ボイラーの熱で蒸発法でつくります。
バラストタンクから吸い上げてですね。
更に飲み水等はフィルターシステムで濾過してます。
ではライトラー2等航海士室へ…」
右隣のライトラー2等航海士室は若干つくりが違ってた。
「広くなってる」
「横に約4m程ですね。階級主義でもありますから…
鍵は貰ってないのですが、1等航海士の部屋だと奥行き変わらずですが、約6mと、更に航海士長だと約7mと広くなります。
船長さんの部屋は奥行きが更にプラスで広々ですよ。
皆さん船長になろうと必死でしたから…」
更に机に座る椅子が丸椅子ではなく、背もたれ付きの椅子になっていた。
ライトラー航海士室でもベッドに寝間着が入っている状態だ。
「でも…こう…いかにも蒸発した格好でって…」
「おそらくですが、避難した時の服がなく、艦内にあった服があり、
この世界に再現した時の状態にしたが、
肉体は生存したから中身がないのでは?でしょうか…」
「なるほどね…」
……
〔そうですか…ライトラー2等、ピットマン3等、ロウ5等…いないのですか…〕
〔鍵をおかえしします〕
〔ありがとうございました。またお手伝いお願いするかもしれませんが…〕
といって退室し…
「で…さっきの続きになりますが制服着た…というのは客室部員、いわばホテル部門になります。
ブリッジのお手伝いできるかというのは無理でしょう。
資格もないので無事に着いたとして発覚したら間違いなく罰せられますから…」
「へぇ…」
「ですので甲板部員は生存者は居ないで確定で、過去への干渉ではないですね」
「他の乗組員は?」
「まず男性女性からですが、女性はすべて客室部員に23名いました。
看護婦含めた女性乗組員は3名死亡で20名生存ですから、タイタニックには1割5分の割合で残ってるはずです」
「えっと…映画だとメイドさんの格好してる人ね?」
「はい。男性は甲板部員は先程はなしましたから、
残りは全て機関部員と客室部員になります」
「えっ?コックさんや食堂のボーイさんもいましたよね?」
「それはすべて客室部員に属しています。客室部員の長が事務長さんになり、
客船はその3つ、貨物船は客室部員が事務部員にかわるだけです」
「へぇ…」
「それで機関部員は325名中72名生存。
客室部員は471名中77名生存ですね」
「客室部員の方、生存率が20%きってない?」
「ですね…その中にはチャールズ・ジョーキン、パン焼き主任がいますので…」
「その人って?」
「アルコールを大量に飲んで海に長い間身体をつかっていて…説によると1時間だそうですけど、その状態にも関わらず生存したかたです」
「へえ……で乗客は?」
「タイタニックの犠牲者の数は密航者もいるので乗船名簿上だけですが、
男性は1等175名中118名、2等168名中154名、3等462名387名で
男性総計694名中519名…
女性は、1等144人中4名、2等93人中13名、3等165人中76名で、
女性総計447名中124名…
子供は1等6名中1名、2等は24名全員生存、3等子供167名中110名死亡で、
子供総計197名中111名…
総計乗客1316名中818名死亡しています」
「2等の男性14名しか生存してないの?」
「ですね…10%を切っています。中産階級であまりにも紳士的すぎたのでしょう。
あ、あと2等の中で不名誉を被せられた唯一の日本人乗客が生存してますね」
「不名誉?」
「彼は定員一杯の13号ボートに無理矢理押し退けて乗り込み生存したと長い間非難されてましたが、実は別の中国人の事で、
彼は10号ボートで救助されてます。婦女子に紛れてというのが本人にとって不名誉と一緒だったんですね」
「へえ…」
「つまりです。乗員の方も生存者は居ないようですし、
この船にいるのは沈没前後で死亡した、名簿上1514名の犠牲者の魂ではないでしょうか?あと密航者と…」
「でも大部分の犠牲者は回収できた筈ですよね?救命胴衣着用で。
肉体に魂は宿りますから陸上へと、タイタニック号には囚われてないと思いますが…」
「いえ、約20%程、328体が回収できましたが、それ以外はタイタニックと共に海に消えました」
「えっそうなの?救命胴衣着てたんじゃ?水に浮かぶんでしょ?凍死なんでしょ?」
「損傷が酷い状態のは麻袋に積めて海に沈めた…との話で、約20%にとどまってます」
「じゃあ…残りの約1200人かもしれない…って事ね…」
「それが判明できる方が…もう少しで出会えますね」
タイタニック号の艦尾方向から、最後の日の朝陽が登り始めていた……
「あと夫婦、恋人は…?」
「3等で家族全員無事だったのがアントン・キンクのキンク家で3人乗船中3人無事のただ1件、
あとは1等でも38の夫婦が死別してます。あとは…」
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