◇
――現在。
◇
あの後。
日が暮れるまで色々なことを話し合った私たちは、夕暮れの中で始めて二人の写真を撮った。
しきりに躊躇していたアキトの腕を無理やり胸元に引き寄せて、顔を真っ赤にしていたことを 可愛い
と思いながら、タイマーでシャッターを落ちるまでは離さなかった。
その後、夕日を背にしてもう何枚かの"海"を写真
『そっか』
私はそう呟いて正面に立っていたアキトに近づき、その肩に手を当ててちょっとだけ背伸びした。
自分でも驚くほど自然に。
私は紅い夕暮れの夕日の中で、アキトの唇に――
そっとキスした。
◆
今思い出せば大胆な行動をとったと恥ずかしくなるけど――とてもとても大切な思い出。
私も、きっとアキトが好きだったんだよ。
だから。
◇
くるり、と今まで住んでいた部屋を振り返って、机の上に残した写真立ての中で笑う過去の自分たち――
照れくさそうにそっぽを向いている彼に向かって宣言する。
「今からそれを確かめに、会いに行くね。」
今どこに居るのか、わからないけど。
きっと探せ出せることはわかっているから。
もし、また出会えたら。
"あの旅の続きをしよう"
◇
The story of "Vermillion memories that do not fade" is the end
後書き。
まずは、400万HITと2周年・・・おめでとうございます。
こんにちは、こんばんは、おはようございます。サムです。
早いもので、シルフェニアも2周年ですねー。しかも400万HITって・・・なんかすげー。
びっくりですよ。これも鳩さまの努力があってこそのものと思います。
これからも頑張ってください^^
さて、今回の400万HIT記念のお題"ラピス"とのこと。これはシルフェ内キャラ人気投票第一位と言うことでもあります。
非常に嬉しいです(喜
まぁ記念作品自体のネタ(今回の写真云々)が降りてくるまで相当時間掛かったわけですが、まぁ無事に上がってよかったという所です。
ぶっちゃけ、トンデモ設定が増えて増えてしょうがなかったですがorz
設定自体は前々作の"多面"と、前作の"Graveyard"を流用したIFストーリーです。(書いてるうちにそう決めた
時代設定は、多面・Graveyardより200年後、と中途半端なものですが、まぁ軽く流してやってください。
お題"ラピス"を微妙に外れて、何時も通り"アキラピ"になったのは、まぁそれも多めに見てやってくださいorz
ともかく、こんな出来ですが・・・3日で書いたので少々雑かもしれないと思いつつ、笑って許してもらえればと思いますw
あ、あと。
疑問に思われる方もいらっしゃると思うので、少々この場を借りて解説を入れさせてもらいます。
○火星の衛星による潮汐力:全く違うでしょう。僕の勝手な設定です。ほんとの所は知りません・・・orz
○M:GPS Mars Global Positioning System 文字通り、火星版のGPSです・・・適当!
○火星に造られた人工の湖:血潮の海()
※火星の表面が赤く見えるのは、地中に酸化鉄が多く含まれているからだそうです。
酸化鉄が赤い理由は血の色が赤いわけと同じで、そもそも血中のヘモグロビンが体中に酸素を運ぶとき、ヘモグロビン中の鉄イオンと酸素をくっつけるのだそう
です。
それが血の"赤"をあらわしているそうです。<酸化鉄の色は赤い。
と言うことは、地中に酸化鉄の多く含まれる火星の大地に、もし水溜りを作ったら紅くなるんかな??というのが想像の発端。それを極端にしてみただけです
(笑
あれ、なんか違くね? って思った人はメールか何かでこっそり教えてくださいorz
おバカで浅はかな考えとは思いますが、そういう事にしておいてくださいましw 以上、解説終わり。
追伸。
拍手を下さる皆様。毎度ありがとうございますです。
どんな些細なことでも良いので、一言励ましの言葉をもらえたらもっと頑張れる(かもしれない)ので、良かったらマウスだけでなくキーボードもぽちぽち押し
てやってください(笑
では、またどこかでお会いできることを祈りつつ(祈
2006/11/27 05:44上がり。
◇
宇宙()は、深遠の闇に浮かぶ光を優しく包む。
火星も、月も――そして地球でさえ例外ではない。
アキトは、地球を俯瞰できるポイント建造された観測コロニーの一つの展望室にいた。
しかし、そこにいるのはアキトだけではない。
"その瞬間"を捉えようと、世界中のカメラマンたちがファインダー越しに地球を狙っている。
アキトも無論その例に漏れず、ただ静かに息を潜めてそれを待っていた。
「時間です」
やがて観測員の言葉がそれを告げた。
瞬間、空気が固まる事を肌で感じ、じっとファインダーから覗ける視界の先の地球――そしてその北極圏上空に集中する。
「・・・きた」
誰かの声で、周囲が瞬く間にシャッターを切る音で埋め尽くされた。
フラッシュはいらない。
なぜなら、展望室から見える地球の横っ腹は今は夜面で、その反対側に太陽があるためだ。
真っ暗な地球の夜の部分を囲む円の縁を、太陽の光が際立てている。
そして、今日この瞬間はそれだけではない。
――カシャ。
アキトがシャッターを切った。
何度も何度も、シャッターを切る、切る、切る。
少しだけ興奮を示す浅い息遣いのままファインダーから目を離して、直にその光景を見る。
虹。
いや、オーロラか。
――太陽フレアによる高エネルギー荷電粒子の発生と、その余波によって現れたオーロラ現象。
地球のポール()を両端とした南北の極点上空に、まるで、水を噴出している噴水の様に、揺
らぎながら形を変える虹色のカーテンが観測されている。
それは両極点上空だけではなく、地球全体を覆うように広がっていく様子が刻一刻と展開されていた。
圧倒的な、自然の織り成す奇跡のような光景。
何時の間にか、観測室にはシャッターを切る人間は一人もいなくなっていた。
誰もがその光景に魅入る中――
「ね。今の、見た?」
不意に、背後から聞こえた囁き。
悪戯に成功したような、嬉しげな響きの混じる懐かしい声。
アキトの脳裏に走る既視感。
一瞬だけ思い浮かんだイメージは、朱の空間に溶け込むように佇んでいる少女。
頬を伝う鮮やかな透明の涙を際立たせた、神秘性と不可思議な存在感を漂わせていたラピスラズリ。
――あの時の微笑みを。
とても愛しく思ったあの瞬間を、鮮明に思い出した。
出会った時のその言葉もまた、アキトの記憶に鮮明に残っていた。
何を言っているのか判らなかったけど・・・何を言いたかったのかは通じていた。
アキトの口元に、笑みが浮かぶ。
だから、今度はからかわずに彼女だけに聞こえるように――アキトもまた囁き返す。
「ああ、見たよ。まるで"光の噴水"みたいな、そんな光景を――」
再び出会えた事。
また、共に残してゆく事になるだろうフォトグラフ()を思って。
大いなる"光の噴水"が見守る中・・・
もう一度。
二人の旅が、始まる。
The End.
2006/11/27 加筆修正
2006/11/29 誤字・後書き・内容加筆修正