聖杯は一つきり。
奇跡を欲するのなら、汝。
自らの力を以って、最強を証明せよ。







==葬儀==

―――――――――――間桐雁矢が死んだ。
私がそれを聞いたのは、既に葬儀が終わり埋葬した後だった。
間桐に養子に出された弟を、育ててくれたおじさんは、私にとっても大恩人、だけど識ときたら何でこういう大事な事を、言い忘れるのかしら?
まぁ、私も重要な時にポカをやらかすから識の事は言えないんだけど。
そんな訳で、私と桜は一緒に霊園に来ている。
寂しい場所………それがその霊園の第一印象だった。
いや墓地がカラフルだったら逆に気味が悪いか………
一瞬、カラフルなクリスマスツリーが聳え立つ墓地を想像してしまう。

暫くすると雁矢おじさんの墓が見えた。そこに立つ人影は一つ。
葬式にも余り人付き合いもなかったせいか、大した人数は来なかったそうだ。私のお母様が亡くなった時やお父様が亡くなった時もだけど、知ってる人が死ぬのは悲しい。魔術師としては未熟なのかもしれないけど、たぶん私のこの性格は一生変わらないだろう。もっとも自分のこの性格で満足してるし変えるつもりもないのだが。

「来たか……」

「早いわね、一時間前よ。まだ…」

「そうだよ…………だけど気付いたら二時間前に来てた」

野暮な事を言っても仕方が無い。
私と桜は持参した花束を十字架の前に置く。

「桜、背のびた?」

唐突に識が呟く。

「はい、前に測ったら3cm伸びてました。……その兄さんはどうです?伸びましたか?」

「あぁ、漸く170cmになったよ・180cmまで伸びればいいんだけど………駄目だろうな。一番成長する時期すぎちまった」

170cmとなった今でも、識が女に見間違えられる――――――――――いや女性よりも美しい容姿は変わっていない。女性にしては長身である身長も、筋肉質でないせいもあって男と見る人間はいないだろう。学校の制服でなんとか分かる程度だ。私と桜と同じ翠色の瞳に長い髪。
私が識にって渡したリボンを付ける為に、髪を伸ばしてくれたのは、口には出さないけど嬉しい。

「それでさぁ…………参加するの?」

その言葉に私は―――いや私達は凍りつく。
今にソレを言うという事は一つしかない。

『聖杯戦争』
数十年に一度、冬木市を舞台に行われる、戦争だ。
七人の魔術師が万物の願いを叶える聖杯を求めて殺しあう。
だがコレが戦争と称される理由はそれじゃない。聖杯に選ばれた魔術師は『マスター』と呼ばれ、一人につき一騎のサーヴァントを召喚する事が出来る。
サーヴァント(使い魔)と称されているけど、通常私達のような魔術師が使役する使い魔と大きく異なるのは、歴史に刻まれ、その身を精霊の粋にまで昇華させた英霊だという事だ。
英霊とは文字通り英雄のこと。
召喚されたサーヴァントはそれぞれ七つのクラスに分かれる。
剣の騎士:セイバー
槍の騎士:ランサー
弓の騎士:アーチャー
騎乗兵:ライダー
魔術師・キャスター
暗殺者:アサシン
狂戦士:バーサーカー
そして人という存在を超えたサーヴァントを使役する為に必要なのが令呪。サーヴァントに三回だけ下せる絶対命令権。サーヴァントに何かを強要させたり、上手く使えばサーヴァントの強さを一時的に上昇させる事も可能らしい。
サーヴァント達は人間では到底太刀打ち出来ない強さを持っていて、この令呪がなければプライドの高いサーヴァントやバーサーカーのように狂ったサーヴァントを使役する事は、不可能に近い。だけど令呪がなくなったからといって、サーヴァントが絶対に裏切る訳でもない。サーヴァントはマスターからの魔力供給を受けなければ現界出来ない。サーヴァントにも聖杯にかける願いがある。だからマスターを殺す事は、自分の不利になる事に直結してしまう。
まぁそんな訳で、マスターとサーヴァントは一蓮托生なのだ。

「ええ勿論よ。その為の準備もしてきたわ。十年前からね。」

「十年前って、まだ頭首になったばっかじゃないか。本当に準備してたのか?」

「当たり前でしょ。頭首になって直ぐに、聖杯戦争に関する古書は一通り読破したわ」

「それじゃ、英霊召喚に必要な触媒は何なんだ?アーサー王の靴下でも手に入れたか?」

「ッッ!!!…………もっ、勿論よ!触媒なんてバッチリ手に入れたわよ!!」

やばい。私でも嘘だって丸分かりだと断言出来る。

「…………………………」

白けた目で私を見る識。

「えぇそうよ!!肝心の触媒を入手するのを忘れてたわよ!!でも仕方ないでしょ!!宝石魔術ってお金が掛かるのよ!!宝石一個の値段ってどれ位か知ってる!?」

「落ち着けよ………そんなに金が欲しいなら聖杯に願えばいいじゃないか。一生分の宝石が欲しいとか」

「…………それは考えてなかったわね……」

「いいんですか?それで…?」

桜が躊躇いがちに言ってきた。
まぁ冗談よ。だからそんな目で見ないでくらないかしら。
私だって聖杯なんて物に宝石なんて………いやでも少しくらいなら、別に一生分じゃなくても、聖杯の力の一部を使えば宝石の山くらい幾らでも…………

「冗談だったけど………まぁいいんじゃないか。願いなんて人其々だろ。こんな姉だけど桜は見捨てないでやれよ」

「はい。分かってますよ兄さん」

「ちょっと待ちなさい!!」

何をこの二人は聞き捨てなら無い事を言っているのだろう。

「いや$になった目で言われても、説得力ないって」

「誰が目を$よ!!」

「どうどう、まっいいや。ところで桜はどうする?凛がマスターになる以上、桜がマスターになる事はない。オレとしては聖杯戦争期間中は、海外にでも行ったらどうだ?オレも前回の聖杯戦争ではその方法だったぜ」

「いえ、私はここに残ります。皆が戦っているのに、私一人で逃げるのも嫌ですし、それに………」

「そうか。ならオレから言う事は無い。じゃあオレはこれで失礼するよ。色々とやる事もあるしな」

「ちょっと待ちなさいよ!!」

「待てって言われて待つ奴はいない」

私は追いかけようとするが、諦める。
足の速さで識に敵う訳がない。

再び雁矢おじさんの前に立つ。
今更だけど、おじさんには感謝してもし足りない。
間桐へ養子に出されると聴いて、私は不安を覚えたけど、雁矢おじさんの御蔭で識は、前と変わらずにいるんだと思う。
私の弟である識は特別だ。
モノの死を視る『直死の魔眼』
生まれつきそんな目を持っていた識は、生と死が酷く曖昧だった。だからどこか生に無頓着で妙な事を口走ったりする。そんな子供、普通の人間なら気味悪がるだけだろう。
雁矢おじさんは、魔術回路を持つとはいえ、普通の人だ。だけど雁矢おじさんは識を受け入れて育ててくれた。だから私は雁矢おじさんに感謝する。

「…ありがとう……」

もう一度だけ、正直な気持ちを雁矢おじさんに伝えた。





==登校の朝==


「っと、生徒会に用事があるんだった」

「えっ、そうなんですか?」

「ああ、一成にちょっと頼まれてさ」

桜と別れると、生徒会室へ向かう。
桜は一つ下の後輩で、俺が昔弓道部に所属していた時の、ちょっとした縁で毎朝俺の家に来ては、家事の手伝いをしてくれる。最初は料理も教えてたんだけど、今では洋食に関しては桜の方が上になってしまった。料理の師匠としては嬉しいんだが悲しいんだか微妙だ。

「一成、来たぞ」

「おぉ、待っていたぞ。衛宮」

お茶を飲みながら、友人であり、この学校の生徒会長でもある柳洞一成は、その堅い名前とは違い優雅な顔立ちをした青年だ。女生徒から多大な人気を誇るが、本人が寺の跡取りである事もあり、その手の噂は耳にした事が無い。

「それで今日は何の用だ?」

「実は生徒会室のストーブが動かなくなってしまったのだ、見てくれるか?」

「分かった」

どれどれ………………
確かに動かないようだけど、直せるな。

「問題なく直るよ。だけど……」

「承知している。デリケートな作業なのだろう。大人しく出て行くとしよう」

まぁデリケートっていえばデリケートなんだけど。
俺の場合、方法が違う。
十年前に発生した大災害の後、本来ならば孤児院に預けられる筈の俺は、衛宮切嗣という人に引き取られ養子になった。じいさんは俺に最初に会った時、俺にこう言った。

「実を言うとね、僕は魔法使いなんだ」

その言葉は真実だった。
正確に言うなら魔法使いではなく魔術師というらしいが、俺にとっては、じいさんは間違いなく魔法使いだった。
だけど結局じいさんから習えた魔術は、強化と解析だけ………後は投影だけだろう。
今回使用するのは「解析」普通なら故障部分を探すという作業が必要なのに、俺はそれを短縮出来る。

「終わったぞ」

そう言って、廊下で待っている筈の一成を呼んだ。
―――――――――――――っと廊下には一成だけじゃなく、二人の人間がいた。

「――――――――――!!」

少しだけ驚いた。
一成の隣にいるのは遠坂凛。
坂の上の洋館に住んでいるというお嬢様で、成績もトップクラス。
おまけにそれを鼻に掛けないという、絵に描いたような優等生。
そして何よりも………美人だ。
男子生徒も余りに高嶺の花すぎて手が出せないほど。
この学園の殆どの男子生徒は遠坂凛に憧れているといっても過言じゃない。
俺もその類に漏れず、少し憧れてたりするが。
遠坂凛と話せるのは、一成を含む一部の生徒と先生くらいだというのが、男達の通説だ。
後もう一人は…………

「なんだシロー。またパシリになってんのか?」

遠坂凛とは逆の蒼い外套。
滑らかな黒髪と日本人形じみた美しさ。
それでいて凛とした日本刀のような雰囲気を醸し出すのは、間桐識。
成績も遠坂凛と並び、その容姿から“女生徒”から物凄い人気を持っている。
“女生徒”である。
そう、間桐識は男性なのだ。
とはいっても、間桐識はどう見たって男には見えない。
長い髪に桜色のリボン(伽藍の洞で目覚めた当初の式に桜のリボンを付けた感じ)このまま街に行けば、芸能人と見間違われたって変じゃない。
というより髪型も女性のものだから始末におえない。男である事を承知した上で、告白した男子生徒がいる程だ。
噂では本当に女装する事もあるらしく、偶然それを目撃したらしい女生徒が嬉々として言っていた。
…………そして認めたくないが、俺にとっての初恋である。
間桐識が稀に女装するというのは間違いじゃない。去年の文化祭でも女装していたし、それに俺は、この学校に入る前に出会っている。
当時の俺は識の事を男だとは万に一つも考えず、その佇まいに見惚れてしまった。
この学園に入学して間桐識が男だと知った時は、一生で一番驚いた。

「パシリじゃない。ただ一成に頼まれただけだよ」

「ふ〜ん。もう直ぐHRだぞ。じゃあな」

実を言うと識と俺は友人である。
何でも後輩である桜と識が面識があったらしく、それから友人のような関係になった。

「ふん、相変わらず識程の男が、あの女狐と付き合っているのが理解出来んな」

「女狐って―――――遠坂の事か?」

「そうだ。衛宮も気を付けろよ。目を付けられたら何をされるか分からんぞ」

「いや、そんなに心配しなくても………」

一成と遠坂は相性が悪い。
一成は遠坂を女狐といって毛嫌いしている。
逆に識には、最近滅多にいない男だと言って誉めているのだが………俺にはどうも理解出来ない。
そういえばクラスの女子が『一成×識』とか言ってたけど何の事なんだろう?
そんなこんなで俺の放課後は過ぎ去っていった。




==日常閉鎖==



「問おう、貴方が私のマスターか?」

声が出なかった。
ただ目の前に立つ女性が、あまりにも綺麗で…………
今日起こった出来事が走馬灯のように、思い浮かぶ。
俺は、いつものように学校に行って…………そうだ。帰り際に財布を置き忘れたことに気付いたんだ。
それで戻ってみれば、そこでは蒼い男と赤い男が戦っていた―――――――――――不良がやる喧嘩がお遊戯に思えるほど苛烈な殺し合いを………
予想外の事に驚き、俺は逃げ出した。
だが蒼い男が追ってきて、俺の心臓を――――――――――

それからの事はよく覚えていない。
気が付いたら制服に血が付いてた事を除けば、何ともなかったから惰性のように財布を、カバンにいれて帰ってきたのだ。
だが悪夢は終わっていなかった。
学校で俺を刺した、槍という過去の武器を持った男が、俺の家に現れたのだ。玄関を突き破ったとか窓から入ったとかじゃない。天井から突然でてきたのだ。もう何が何だか分からないまま、近くにあったポスターに強化の魔術を掛けて防戦。しかし結局はこの土蔵に追い込まれて、光が輝いたのだ。

「サーヴァント、セイバー。召喚に従い参上した。
マスター、指示を」

思えば、この言葉が、聖杯戦争の始まりだったのかもしれない。
―――――――――それ程に、少女はとても凛々しかった




==聖杯戦争開幕==



「ドジったぜ。こいつを出す時は必殺じゃなきゃやばいってのにな。
たっく有名過ぎるってのも考え物だぜ。
己の真名を暴かれたとなれば、どちらかが死ぬまで殺しあうのが、サーヴァントのセオリーだが、生憎俺のマスターは臆病でな、槍が外れたなら帰ってこいだとさ」

「逃げるのか、ランサー」

「追って来るなら構わねえよ。だがその時は決死の覚悟を持って挑んで来い」

トンっと言う音で、ランサーと呼ばれた男は塀を容易く、飛び越えて消えていく。
どうやらセイバーは追って来ない様子だ。

「ちっ、俺もどうして主君に恵まれねえかな」

己のマスターの胸糞悪い顔を思い出し、ペッと唾を吐き出す。
マスターに与えられた命令は二つ。
・サーヴァント全てと一回以上交戦しろ、ただし本気は出すな
・緒戦は必ず撤退しろ
である。もしも当初から全力で挑めばセイバーは兎も角、アーチャーなら倒せた可能性は十分にある。
自分の不幸に溜息を付きつつも、仮にもマスターである男の下へと帰還すつ為に、屋根の上を駆ける。
その途中に――――――――――――

「いい空だな。狂おしいほどに」

唐突にそんな声が聞こえた。

「何者だ?」

焦りはしない。
冷静に声のした方向を見ると、上下を黒い衣服に包み、その上に蒼い外套を纏った姿が一つ。
サーヴァントはサーヴァントの存在を察知出来る。故にランサーはビルに立つ人間が、自分と同類ではない事を理解した。

「貴様――――――魔術師か?」

「うん、一応は御三家の頭首なんてものをやっている」

「そうかよ、なら七人目か。いいぜテメエのサーヴァントを出しな!!」

しかし魔術師はクックックッと笑うだけで、一向にサーヴァントを呼ぼうとはしない。

「悪いね、実はまだサーヴァントを召喚してなくてさ。令呪はあるんだけどサーヴァントはいないってこと……」

「は?正気か貴様!魔術師風情がサーヴァントも無しに敵のサーヴァントの前に立つとは、どういう了見だ!!」

ランサーの疑念は至極当然である。
マスターに選ばれた魔術師は、まず始めにサーヴァントを召喚してから聖杯戦争に参加する。サーヴァントを召喚せずに、敵サーヴァントに話しかけるマスターなんている筈も無い。そんなの素人が素手で銃で武装したテロリストに挑むようなものだ。

「違うよ、間違ってるよランサー」

魔術師のような何者かは、見る者を魅了する微笑を浮かべると

「――――――――オレは殺し合いの大好きな殺人鬼なんだ」

その人間が、飛翔しランサーに剣を振るうのと、ランサーが防御するのは殆ど同時だった。
人間ではありえない程の速度。恐らくは魔術によって体全体が強化されているのだろう。
殺人鬼は止まらない。決して止まらずに高速の斬撃を繰り出す。
それが彼の業なのだから。

「へっ、魔術師風情と侮っていたが、やるじゃねえか!!現代にもこれ程の使い手がいたとはな!!」

「お互い様だぜ、ランサー。オレもお前の時代に生まれたかった」

だって思う存分殺しあえるだろ?
そう殺人鬼は言った。

「言うねえ。せめて俺も貴様のような骨のある奴が、マスターなら良かったぜ!!

ランサーの槍が空を切る。
どこに?と思った時には、人間は飛翔していた。
飛翔――――――そう例えるしかない。

「『Anfang(セット), ein Speer des Eises(氷の槍)』」

魔術師が唱えたのは単純な魔術。
単に無数の氷で形成した槍を、対象に繰り出す、ただそれだけ。
しかし『直死の魔眼』と併用した場合、氷の槍は万物に死を与える凶器へと変貌する。

「残念だったな。俺は生まれつき見えてる所からの、飛び道具なんて通じねえんだよ。よっぽどの宝具じゃなきゃな」

「成る程、それが矢よけの加護ってやつ?流石はサーヴァント」

そう愚痴りつつも殺人鬼は冷静の状況を把握していく。
彼は知恵のない野獣ではない。冷静に状況を観察し、そして勝利する狩人だ。故に全く勝ち目の無い勝負は挑まないし、もし挑まれたら逃げる。
彼は何も、氷の槍を放っただけじゃない。同時にランサーの死を貫く、一撃を繰り出していた。どれ程超人的な戦士でも無傷で回避する事は不可能な連撃。それを避けてみせた英霊が、超人ではなく怪人である事を悟る。
よって選択肢は一つ。

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。
  降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

ランサーは無言で観賞する。サーヴァントを召喚する呪文に、少々興味があったのも確かだが、何よりもサーヴァントを召喚する前に殺すなど勿体無い。
それに彼のマスターから、サーヴァント召喚の妨害は命じられていない。

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」

 「―――――Anfang(セット)

「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

英霊召喚という魔術師では成しえない程の奇跡が具現化する。
肉体では捉えられないという第五要素。
それらが収束していき、やがて魔法陣の中心に、存在を確立させる。

「―――――――問います。貴方が、私のマスターですか」

識は言葉を失った。
その人物が、今まで視てきた誰よりも美しくて
そして誰よりも儚くて
言葉を消失した

「サーヴァント、キャスター。召喚に従い参上しました」

この言葉が、聖杯戦争に七騎全てのサーヴァントが集った事を告げる、合図だった。
静けさの戻った夜には、ただ無音だけが支配していた。



【クラス】ランサー
【マスター】???
【真名】クー・フーリン
【性別】男性
【身長・体重】185cm 70kg
【属性】秩序・中庸
【能力】筋力B 耐久C 俊敏A 魔力C 幸運E 宝具B

【クラス別能力】

対魔力:C
第二節以下の魔術は無効化する。
大魔術や儀式呪法などを防ぐことはできない。


【保有スキル】

戦闘続行:A

往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

仕切り直し:C

戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターンに戻し技の条件を初期値に戻す。

ルーン:B

北欧の魔術刻印・ルーンを所持。

矢よけの加護:B

飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に収めている限りどの様な投擲武装だろうと肉眼でとらえ対処できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当しない。

神性:B

神霊適正を持つかどうか。
高いほどより物質的な神霊との混血とされる。

【宝具】

刺し穿つ死棘の槍

ランク:B
種別:対人宝具
レンジ:2〜4
最大補足:1人

ランサーの持つ紅の魔槍。そして彼が編み出した対人用の刺突技。
槍の持つ因果逆転の呪いにより、真名開放すると「心臓に槍が命中した」という結果をつくってから「槍を放つ」という原因を作る、つまり必殺必中の一撃を可能とする。急所を穿つことにより、確実に相手を死に至らしめることができ、一対一の戦いでは非常に効率がいい。
ちなみに、発動したと同時に「相手が死ぬという結果」が成立しているため、仮に放った直後でランサーが死んだとしても、槍はひとりでに動いて相手を貫く。
回避に必要なのは俊敏性ではなく、槍の作った因果を捻じ曲げる程の強運。

突き穿つ死翔の槍

ランク:B+
種別:対軍宝具
レンジ:5〜40
最大補足:50人

魔槍ゲイボルクの本来の使用方法。渾身の力を持って投擲し、相手を攻撃する。
「刺し穿つ死棘の槍」が命中を重視したものならば、こちらは威力を重視している。
しかし、因果逆転の呪い・必中の効果は健在である。なお、一人一人を刺し貫いていくのではなく、炸裂弾のように一撃で一軍を吹っ飛ばす。
ルーン魔術を使えば更に威力を上昇させることが出来る。










後書き

聖杯戦争勃発!
そしてキャスター登場!!
では次回に………



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