あれは、遠慮なく暑い日差しを燦々と浴びせ続ける太陽が顔を覗かせていたときのことだ──
今日も登山家ですらここまで辛いと思わせる山を登ったことがないのではないかという急斜面の坂を登り、これまた人が集まっているせいで蒸し暑くなっている我が高校へと向かっていた。
何とか坂を登り切ったが、自分の教室へと向かうその足取りは重い。人間、自分の体に合わない運動をすると疲労が溜まるが、普通の人間の俺も、やはりその範疇に収まっていた。つまり、疲れている。
「おっはよ〜う!!」
が、この女は俺の仮定する人間の定義の中には収まっていないようで、疲れていない様子で、しかも隠そうともしない上機嫌さには、前の席に座っている俺はその明るさで干からびてしまいそうだ。
「なぁに辛気くさい顔してんのよ。あたしにまで辛気くさいのが移っちゃうじゃない」
「そんな簡単に移るんなら、お前のその明るさを分けてもらいたいね」
「ふん！キョンのくせに生意気よ！」
はて、今のやりとりの中でどこに生意気と言えるような言葉があったのだろうか。一般的な思考回路しか持っていない俺にとって、とてもじゃないが解析することのできない問題であることは間違いないようだ。
突然降ってわいてきたこの他愛のない問いを、何を思ったか真面目に考え出してしまったがため黙り込んでしまい、少々不機嫌になったハルヒは俺に話しかけようと身を乗り出してきた。
「お〜い、朝のホームルーム始めるぞ。ほら、席に着け」
が、我らの担任が入ってきたことで、半分開きかけていたハルヒの口は閉じざるを得なかったのである。
──キーン、コーン、カーン、コーン。
いつの時代も変わることがないチャイムの音が、時間を越えて未だ喋っていた教師の話を止めた。……いや、真っ当な学生とは言えない俺の脳が授業を拒否し、次は昼食であることを告げるチャイムの方に気を取られただけなのかもしれない。なぜなら、教壇に立っている教師の口が動き続けているからな。
「キョン君」
ようやく満足したらしい教師の背中を見送ることもせず、さて、と呟き弁当箱を取り出した俺に待ったをかけるように声をかけられた。しかし、忘れることのできないその声には文句を言う気持ちを抱くことなく、その声の発信源へと視線を送った。SOS団のマスコット、朝比奈さんである。
周りから送られてくる視線を無視し、足早に朝比奈さんのもとへと近寄っていく。ちなみに、この場面を見たら癇癪を起こしそうなハルヒは、毎度のごとくチャイムが鳴ると同時に姿を消している。
「どうしたんですか、朝比奈さん。まさか、また何かハルヒの事で」
「い、いえ、そうじゃないんです」
良かった。常日頃から俺に迷惑をかけていると言っても過言ではないハルヒが、また何かをやらかしたと言う理由でここまで来られたら朝比奈さんに対して申し訳なくて仕方がないからな。
「じゃあ、何か用事でも？」
「あ、そ、そうなんですよ。実は、先生から頼まれごとをしていまして……それで、人手が足りないので、キョン君に手伝ってほしいと思って……」
朝比奈さんから手伝ってほしいと言われたら手伝う以外の答えを出すわけにはいかない。もし断り、朝比奈さんの可愛らしいお顔を悲しみの感情で染め上げるわけにはいかないからな。
「勿論ですよ。自分で役に立つのなら」
「い、今からでも大丈夫？」
「ええ」
まだ昼食を取っていないことも忘れて返事をしていた。自分でも驚きの即答だったが、まあ、朝比奈さんの役に立つなら我慢しよう。
──と、朝比奈さんの頼みを快諾した俺は、今となってあのとき朝比奈さんが少し吃っていた理由を考えるべきだったと自問していた。
「……んぅ、はぁ……あぅ、んぁ」
それも、目の前で俺の足に擦り付けるような動きで自らを慰めている朝比奈さんの痴態を見れば、誰だってそう考えてしまうはずだ。
頼みを聞いた俺が朝比奈さんの後ろに付いていき、案内されたのは離れの校舎。それも、普段俺たちSOS団が部室として使っている元文芸部室がある階の丁度真上に当たる場所だった。
中には教師に何か頼まれるような物があるとは思えないほど閑散としており、ただ数個椅子と机が置いてあるだけだったのだ。もしや、この椅子か机を俺と朝比奈さんの二人だけで運ぶわけじゃあ、なんて疑問を抱き、振り返ろうとした瞬間、口に何かハンカチのような物を当てられたようなところまでは覚えている。そこからの記憶は、今に至るまで全く覚えていない。
「んうぅ……はあん、は、ふぅ……」
そして、この状態だ。
気が付いた瞬間は何が起こっているのか理解することはできなかった。いや、正直今でもあまり理解していない。なにせ、いつの間にか俺は椅子に座らされており、両足は椅子の足に縛られ、両手も背もたれの後ろで縛られているのか、いくら動かそうとしても動かなかったのだから。しかも、それを為したとは考えたくない朝比奈さんが全裸でよがってるなんて。
どこをどうすればこの場面に繋がるのか、おそらく神様仏様、ましてや我らが団長ハルヒ様だって予想だにしていなかったはずだ。
「ん、はぁっ！んんうぅ……んあぁ！」
そんな事を考えているうちに、目の前の光景、安らぎのエンジェルと自分の性格に合わないことを考えてしまうほど純情そうな童顔をしている朝比奈さんの腰の動きは、気が付いた時よりも更に激しいものへとなっていた。
左手で自分の胸を形が崩れるほど強く揉みながら、右手は下腹部より少し下あたり、ピンク色の丸い小さな何かをいじっていた。健全な高校生として、自分の乏しい知識の中でそれと合致しているものから判断すると、おそらく、クリトリスだ。
「ん、あぁっ、ふあぁ、あぁぁ────!!」
何も言うことができず、ただただ呆然とその一部始終を眺めていた俺だが、その思考は以外にも冷静だった。二度、三度と小刻みに繰り返される痙攣。そして、太股を汚してなおも床を汚し続けている透明な液体……これは、朝比奈さんが絶頂を迎えると同時に出た、潮というものなのだろう。経験のない俺にとってこれだと明確な自身を持って言えるものではなかったが。
力が抜けたのか、それとも行為に満足したのか、健全な男子を引き付けてやまない柔らかな胸を俺に押しつけながら寄りかかってくる。望みが叶うのなら、この胸を満足するまで揉み続けたい。
「ふふ……キョン君のこれ、おっきくなってる」
朝比奈さんの姿に……と、言おうとして驚いた。口が開いているのに、空気が漏れるだけで音が発せられてない。
「おいしそう……」
何も発することができないままでいると、俺の焦りも虚しく、朝比奈さんは次の行動へと移っていた。なんと、ペニスを小さな口でくわえこんだのだ。
「……っ！」
自分でペニスをしごいているときとは比べ物にならないほどの快感に、声にならない吐息が漏れる。気持ち良いと感じていることがわかったように、今度はゆっくりとだが、その顔を上下に動かし始めた。
じゅる、んっ……、じゅるる……
朝比奈さんが漏らす吐息と、口の中に溜まっているだろう涎が奏でる水音が、淫らな交響曲を奏でている。それの音が耳を通して脳へと伝わり、感情が高ぶってくる。
これだけの快感を味わっているとなると、当然ペニスからはカウパー腺、俗に言う先走り汁が出ていてもおかしくないのだが、それを構わず口一杯に深々とペニスを加えているその姿。それに、俺に淫美な姿を曝け出している朝比奈さんの普段とは全く違う雰囲気も、ペニスを絶頂へと導く要因にもなっていた。
張り裂けんばかりに怒張したペニスを愛おしそうに|舐《ねぶ》っていた朝比奈さんは、俺が達しそうになったのを感じたのか、射精に至る寸前にペニスから顔を離した。
何故……という思いを抱いた俺だったが、顔を上げて俺を見つめるながら、今まで口に含んでいた自分の涎を、まるで見せつけるように飲み込んだ。潤んだ瞳、上気したその頬を見て、俺は寸前抱いた不満を忘れて朝比奈さんの痴態に見入っていた。
「んふふっ。キョン君……もう出したいの？」
上目遣いで、それも勃起したままのペニスを両手で優しく包み込んでいる朝比奈さんの姿。それに、今まで俺にした行為を考えても、拒否の二文字が浮かんでくるほど、男が廃れているわけではない。
声が出ないため、問いに答える術は頷くことしかなかったが、俺のことを見つめていた朝比奈さんは、嬉しそうな笑顔を浮かべると、跨るように乗ってきた。そして、背中の後ろに両手を回すと、丁度胸の高さにあった俺の顔は、あらがうこともできずに柔らかい双丘に埋まってしまった。
「ふふ……キョン君ったら、小さな子供みたいで可愛い」
夢にまで見た朝比奈さんの胸は、想像通りとても柔らかく、まるで幻想郷にいるような感覚なのだが、如何せん、息がしづらかった。
「んあぁっ！」
が、そんなことを忘れるぐらいの快感が、先ほどよりも大きな波となって襲いかかってきた。亀頭が陰唇を割ったのを確認した朝比奈さんが、そのまま一気に膣道へと一物をくわえたのだ。
ただ、その際、膣道に膜のようなものに当たらなかったことから、処女じゃなかったのか？と、一瞬疑問を抱いたが、朝比奈さんが腰を動かし始めたことで、何かを考える余裕もなくなった。
「あっ、はぁん！い、いい、気持ち良いっ！」
ゆっくりとした動きは、だんだんとペースが早くなっていく。無理矢理感は拭えないが、今日をもって童貞を捨てることになってしまった。しかし、そのことに後悔すること自体考えられないほど甘美な快感がペニスを包み込む。
「うきゅっぅん！奥まれ、子宮まれキョン君のあとろいてるよぉ!!」
快感の波に溺れたようにだらしなく開いた口から涎が垂れる。
そんな痴態も気にせず、上下に動かしていた腰を、今度はぐりぐりと押しつけるように前後左右に動かす。
「ひぃいん！これぇ、これ良いのぉ！」
椅子に縛られ動けない俺は、これほどまでに自分から腰を動かしたいと願ったことはないと思いつつ、ほんの少ししかない余地を利用して腰を左右に動かしたり、上下に振る。それだけしか考えられなくなっていた。
雌の喜びに溺れる朝比奈さんの愛液が二人の性器を汚し、淫らな橋で二人をつなぎ止める。それでも溢れでる愛液が椅子から垂れて、タイルで埋め尽くされた床を汚し始める。
「あん、ああん！ひん、ひっあぃいぃん！」
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ──
そんな短くも長い時間は、そろそろフィナーレを迎えようとしてた。
「あ、あああっ、来るぅ……おっ！おきいのが、来るぅ！」
乳房に埋もれ、その柔らかさと息苦しさを味わっていた俺も、体の奥底から沸き上がってくるものを感じていた。しかし、声を出すことができない俺に、それを伝えることはできない。が、幾分一物が膨れ上がったのを感じ取ったのだろう朝比奈さんが請い願うような叫びをあげる。
「きてぇぇぇ！あ、はああん！わ、わたしの、なかにぃぃ……」
体に十分な酸素を送り込むことができず、少しずつ意識が薄れていき、正しい判断を下すことができなくなりだした俺のペニスが、膣内で弾けた。
「はああん、いっくうううううぅぅぅぅぅぅ!!」
一番奥までくわえ込まれた一物が、突き当たりの壁……子宮口を押し広げて白濁色の液体を大量に流し込む。
絶頂というあらがえぬ快感に身を強ばらせていた二人の体は、射精を終えると同時に力が抜け、子宮を犯し尽くした精液がその役目を終えたと言わんばかりに溢れだした。
朝比奈さんの膣内に出したということがどういう事か考えることもできず、酸素を吸い込むことができなくなった俺は、わずかに残っていた意識を放り投げてしまったのだった──
「……んぅ……ここ、は？」
目を覚ますと、視界一杯に白い天井が映り込んだ。
しばし呆然とし、何があったのか思いだそうとし、朝比奈さんとセックスをしたとう記憶があることに至り、慌ててベッドから起きあがった。
「あ、キョン、気が付いたのね！」
入り口からハルヒが入ってきた。その後ろにはいつものSOS団のメンバーがいて、その中には朝比奈さんの姿も混じっていた。
「もう、準備室で倒れて気失って……その挙げ句、みくるちゃんに助けられるなんて、ちゃんとみくるちゃんにお礼言いなさよ！」
気を……失っていた、のか？俺は。
「何言ってんのよ。倒れたときにどっか頭でも打って記憶が飛んでるんじゃないの？」
確か、朝比奈さんに手伝ってほしいって言われて、そのまま付いていって……
「その後、先生に頼まれた物を運び出そうとしたら、入り口近くに積んであった物がキョン君の方に倒れたんです」
「それであなたは気を失い、慌てて朝比奈さんが僕たちに伝えてきたんですよ」
そう、だったのか……
やはり、あのときの朝比奈さんは夢だったのか？それはそれで安心だな。まさか、朝比奈さんがあんなに淫乱な女性だとは思えないし……今も、心配そうに覗き込んでくるその姿に癒される。
「ま、心配したけどこうして気が付いたんだからもう大丈夫でしょう！」
「ですが、頭を打っているかもしれませんので、一応病院に行かれることを勧めておきますよ」
「ああ、わかってるよ」
そう言いつつ、あのときの事を思い出す。高校生男子、一人の青少年としては忘れ難き夢を見てしまったが、これからはこの悶々とした気持ちと向き合わなければいけないと考えると、小さな溜息を漏らしてしまう。
そして、誰も見ていないときに一人肩をすくめて呟いくのだった。やれやれと。
「──ふふ、キョン君」
そのとき、こちらを見つつ、下腹部に手を当てて何かを呟く朝比奈さんのその言葉を聞き取ることができなかった。
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