魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

12時間目 「嵐の修学旅行! そのに」

 

 

 

 

 

 

京都に到着した、麻帆良学園3−A一行。
その足で、最初の見学地、清水寺へと向かう。

「京都かぁ。久しぶりだな」
「ええ、そうですね」

道中、東山の坂を上っている途中で、御門兄妹がこんな発言をする。
目ざとい3−A一同が放っておくはずがなかった。

「え? 御門君と御門さんって、京都に来たことあるの?」
「いつ? 何回目?」
「え、えっと・・・。まあ、何回かはね」

その迫力に押されつつ、勇磨はそう答えた。

「なんだよなんだよー、もっと早く言ってよ〜」
「知ってたら、自由行動のコースもっと考えたのに〜」
「ねえねえ、案内してよ!」
「あー・・・」

ポリポリと頭を掻く勇磨。
来たことがあるといっても、ガイドブック無しで探索できるほどの知識は無いのだ。

「みなさん」

例によって、助け舟は環が出してくれる。

「実は私たち、案内できるほど詳しいというわけではないんですよ」
「えー?」
「どうして? 何回も来てるんでしょ?」
「何回”か”は、です」

1回目は、元の世界の中学生のときの、同じ修学旅行であるし。
2回目以降は仕事の関係。まともに観光した経験など、ほとんど無かったりする。

「それに、訪れたときも観光目的ではありませんでしたから」
「じゃあ、なんで京都に?」
「ああ、そりゃ仕事――」
「兄さん!」

「・・・仕事?」

うっかり口を滑らせてしまった勇磨。
慌てて環が止めに入るが、しっかり聞かれてしまった後で。

勇磨はハッと口を抑えるアクションをするものの、時すでに遅し。

「仕事って、なに?」
「まさか、この年で働いてたりするのっ?」
「むむっ? あーやーしーいーなー?」
「な、なんでもありません! なんでもありませんからー!」
「そ、そうそう!」

収拾を図るため、兄妹は躍起になって説明する。

「ちょっと言い間違えただけなんですよ! ねえ兄さん!?」
「そうそう! 仕事じゃなくて、えと、えと・・・・・・そう! 『至極当然』って言おうとしたんだ!」
「ほんとかなー?」

勇磨にしては珍しく、機転を利かせた言い訳を思いついた。
だがそれでも、怪しさは払い切れない。

「なんかスクープの匂いがプンプン、って感じかな〜?」
「朝倉! いいところに!」

「げ・・・」

クラスメイトたちにとっては頼もしい味方。
勇磨たちにとっては、この場合、もっとも嫌な敵。

自他共に認める麻帆良パパラッチ、朝倉和美が話を聞きつけてしまった。

「さあー御門兄妹! 隠してないでキリキリ吐きなさい!」
「嫌じゃー! というか、何も隠してない! なんでもないから!」
「ムキになるのが怪しいぞ〜? 吐いて楽になってしまいなさい!
 お上にも情けはあるのよ!」
「ですから、本当に何も無いんですよ・・・」

「静かにしてくださーい!」
「みなさん! 麻帆良の代表として来ているんですよ!? もっと節度をお持ちになりなさい!」

ネギとあやかから叱責が飛ぶ。
なんとも騒がしい3−A一行。

「あはは。ゆう君とたまちゃん、もうすっかり3−Aの一員やな〜♪」
「というか、巻き込まれたんじゃないの、あれは」

そんな様子を見て、のほほんとのたまうこのかと、苦笑しているアスナ。

「・・・アホばっかです」

そして、夕映は、どこぞの電子の妖精のようなセリフを漏らすのだった。

 

 

 

 

有名な『清水の舞台』を見学し。
一行は、恋占いで有名な地主神社へとやってくる。

「で、では早速、クラス委員長たる私から・・・」
「あーずるい。私も行く〜」
「わ、私も〜・・・」

20メートルはありそうな、離れた位置にある石まで、目を瞑ったまま辿り着くと、恋が成就するという。
真っ先に名乗りを上げるあやか。続けてまき絵。控え目に、本屋ことのどかも宣言している。

一斉にスタートした3人だったが・・・

ズボッ!

「きゃあっ!」
「いたた・・・・・・カエルー!?」

突然、落とし穴にはまるあやかとまき絵。
さらに、穴の中から大量のカエルが出現した。

のどかはといえば、この騒ぎの間に、1人だけ無事にゴールしていたりする。

「こんなところに落とし穴が!?」
「だ、大丈夫!?」

一同が助けに走る中で。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

ぽかーんと見つめているのは勇磨。
環も、心の底から呆れている、といった表情を見せている。

「なあ、環」
「言わないでください。考えたくもありません」
「だよなあ」

苦笑に移る勇磨と、やれやれと肩をすくめる環。
そう考えたくはないが、不自然極まりないために、そういうことなのだろう。

「そういや、刹那さんは・・・」
「・・・いました。彼女も同じ思いのようですよ」

ちょっと捜すと、刹那は境内の隅に佇み、はあっと息を吐いていた。
目が合うと、少し苦笑してみせる。

「はいはい、気を取り直して『音羽の滝』に行こうよ」

罠にはまったあやからは憮然としたまま、他の者はなにやってるんだと思いながら。
飲むと、健康・学業・縁結びに効果があるという、音羽の滝へと向かう。

こんなことは、続けて2度も起こらないだろうと、踏んだのだが・・・

「ゆえゆえっ、どれがなんだっけー!?」
「右から、健康・学業・縁結びです」
「左、左ーっ!」
「お、お待ちなさい! 順番を・・・」

みな恋に夢見る乙女たち。
左の滝へと殺到する。

「兄さんは中央の滝で決まりですね」
「・・・余計なお世話だ」
「クスクス。ほら、今なら飲めますよ」
「はいはい・・・」

妹にヘコまされるも、仕方なく、勇磨は中央の滝の水を汲む。
その間に

「う、うまい!? もう1杯!」
「た、確かに効きそうな・・・・・・霊験あらたかなこの味」
「いっぱい飲めばいっぱい効くかもー」

左の滝の面々が、何かに取り憑かれたかのように、汲んではがぶ飲みを繰り返している。
さすがに不思議に思った環。

「ちょっと失礼」
「うい・・・?」

間近にいた裕奈のひしゃくを拝借し、残っていた中身に指をつけて舐めてみた。
すると・・・

「こ、これはっ・・・・・・お酒・・・!?」

味といい、匂いといい・・・
日本酒そのままだった。

「みなさん! 今すぐ飲むのをやめて――」
「・・・手遅れだ、環」
「――!?」

やはり苦笑しながら放たれた、勇磨の言葉。
周りを見てみると、顔を真っ赤にした面々が道端に寝転がってしまっている。

「滝の上にお酒が!!」

屋根になっている部分に飛び上がり、ネギも確認する。
酒樽を置いておき、そこからチューブを伸ばし、滝の水の中に混ぜるといった、簡単なもの。

「な、なんて稚拙な手口・・・」
「魔法云々、関係ないがな」

これも・・・・・・そうだというのだろうか?
もはや怒りさえ覚え、プルプル震えている環。

「あ、あらネギ先生、どうしました?」
「一部が疲れて寝てしまったようで・・・」
「バ、バスに押し込みますから、旅館に向かいましょう!」

なんとか取り繕い、虎口を脱出。

手口は稚拙だったが、確かに飲酒したことがバレては、旅行は中止となるだろう。
考えていないようで、考えられている手だった。

 

 

 

 

嵐山。
なんとか宿泊する旅館へと到着する。

「ちょっとネギ! いったい何があったっていうのよ?」
「アスナさん。じ、実は、その・・・」
「言っちまえよ兄貴!」

ロビーにいたネギへ歩み寄り、問いただすアスナ。
カモの言葉もあって、ネギは事情を説明した。

「えーーーっ!?」

案の定、アスナは仰天する。

「また魔法の厄介ごとかー」
「すいませんアスナさん」

アスナは、ネギが赴任してきた当初に魔法のことを知り、エヴァとの戦いを経験している。
驚きはしたが、今さら・・・という思いもあることは事実だった。

「どーせ、また助けて欲しいって言うんでしょ? いいよ」

自分から協力を申し出る。

「ふー、大変な目に遭ったな」
「まったくです」

「あ、勇磨さん、環さん・・・」

そこへやってくるのは勇磨と環。
姿を認めたネギが、独り言のように呟く。

「御門の兄さんに姉さん! 事態はどうなってんだよ?」
「ん? まあ、見ての通りだと思うけど」
「気持ちはわかりますが、手口が手口だけに、呆れてものも言えませんよ」

カモから尋ねられると、2人はお手上げ、と苦笑する。

「・・・え?」

これに驚いたのはアスナだ。
なぜこの兄妹が? 事情を知っているのか? カモが喋っているのを見ても驚かない?

「あの・・・」

おそるおそる、疑問を述べる。

「もしかしてー・・・。環と勇磨君も、その・・・」
「ああ。そういうこと」
「お話できなくてすいません、アスナさん」
「へっ? あ、ああ、そう・・・・・・そうなの。そうだったんだ・・・」

あくまで一般人の転校生だと思っていたアスナ。
衝撃を受けたようだ。

「そういえば、学園長がどうとか言ってた・・・。
 女子部に男子が来るのもおかしいし・・・・・・そういうことだったのね」

「それはそうと、ネギ先生。アスナさんは、”お知り”に?」
「は、はい」

同様、御門兄妹も、アスナが”こちら側”のことを知っているとは思っていなかった。
この状況に少し驚いてはいる。

「えっと、神楽坂さんは、一般人だよね?」
「そうだけど、知っちゃったんだもの。しょうがないでしょ?」
「あー・・・」

「ちなみに、いつお知りに?」
「ネギがやってきて、すぐ」
「・・・・・・・・・」

視線がネギに集中する。
ネギは、あううっ、と小さくなった。

「ま、まあとにかく、私たちも協力しますので」
「『西』に負けないよう、がんばろう」
「OK、わかったわ」
「よ、よろしくお願いしますー・・・」

 

 

 

 

かぽーん

「すごいねー。これが露天風呂っていうんだってさ」
「おうよ。これで『西』の件が無ければなあ」

教員は早めに入浴を済ませてくれ、と言われたネギ。
カモと共に、絶景の露天風呂へとつかっていた。

「・・・ん? 誰か来た」

「おや?」
「ゆ、勇磨さんじゃないですか」
「ネギ先生か」

入口の扉が開く音に振り返ってみると、勇磨が入ってきたところだった。
お互いに少し驚く。

「ネギ先生も入ってたの?」
「は、はい。先生は早めに入るんだそうです」
「俺も同じ。夜は見回りがあるからね」
「あ、そうですね」

2人並んで、ゆっくりと湯船につかる。

「きもちいーなー」
「そうですねー」
「あ、絶景かな、絶景かなってか〜」

いや、カモを入れると3人か。
しばし、いろいろなしがらみを忘れて、気持ちよさに浸る。

「ネギ先生は、なんで先生なんかやってるの? その年で」
「えっと、それは・・・」
「御門の兄さんには話してもいいんじゃないか兄貴?」
「そ、そうだね。実は・・・」

日本で先生をやることになった経緯を、話して聞かせる。

「へー。お父さんを超える魔法使い、マギステルマギになるためにね」
「はい。といっても、まだまだ見習いレベルなんですけどね」
「それでもすごいじゃないか。先生っていうのは大変でしょ?」
「そうですね・・・。でも、楽しいですよ」
「ははは、そうか」

しばし雑談。
本当に『西』のことを忘れて、リラックスしたムードが流れた。

が、それは唐突に、一瞬にして崩壊する。

ガラガラ

再び扉が開く音。
何気なく振り返ってみて、驚いた。

「「・・・!!」」

ネギと勇磨、同時に固まる。

「ほぉ? すばらしい露天風呂じゃないですか」
「ですね。想像以上でした」

全裸の少女。
腰まである長い髪の少女と、横で結わえた少女の2人。

(たっ・・・・・・たたたた環ぃっ!?)
(それに、桜咲さんもっ!)

彼女たちの正体を知り、さらにビックリ仰天。

(ど、どういう・・・・・・なんで!?)
(入口は別でしたよ!)
(混浴ってんだよ兄貴)

気付かれないよう、小声で会話。

(ハー・・・)

思わず、彼女たちに見とれてしまうネギ。

(2人とも綺麗な人ですねー。肌が真っ白・・・)
(大和撫子、っていうんだぜ♪)

(こっ、コラコラコラ! なに見てるんだ2人とも!)
(ハッ!)
(そ、そうだ。ズラかるぜっ!)

事情があるにせよ、裸を見られて、怒らない女性はいまい。
哀れな男たち3人は、こそこそと離脱を図った。

「・・・む」
「環さん?」
「曲者ッ!」
「えっ」

(げえっ、気付かれた!?)
(環のヤツ、鋭すぎだ!)

刹那でも気づかなかった気配に環が気づき、声を張り上げる。
こうならないよう、細心の注意を払っていたというのに、なんて敏感。

「『西』の刺客かもしれません。刹那さん!」
「はい!」

(ち、違うよ! 違うんだよ!)
(と、とにかく、逃げねば・・・!)

見つかったら、どんな目に遭わされるか。
なんとか逃走を試みるが

「逃がしません!」
「逃がすと思うか!」

(うひー!)

彼女たちは執拗に迫ってくる。

「そこかっ!」

岩の陰に身を隠した3人に向けて・・・

神鳴流奥義・斬岩剣!!

(ぎゃぴっ!?)
(い、岩が真っ二つに・・・)

奥義まで放つ刹那。
3人はもう震えるしかない。

「何者です、答えなさい!」
「答えねば叩き潰すぞ!」

(・・・・・・・・・)

これ以上の抵抗は無駄か。
そう感じた勇磨は、正直に名乗り出ることにした。

(・・・ネギ先生。骨は拾ってくれよ)
(ゆ、勇磨さん!?)
(逃げてくれ。あとは頼んだ)
(勇磨さん・・・)
(御門の兄さん・・・。あんた漢だよ!)

笑顔で言われ、ネギとカモも、勇磨の意図を悟った。
グッと表情を引き締めて、頷いた。

勇磨も頷き、ふぅ、とひとつ息を吐いて。

「答えませんね。ならば、ウソではないというところを・・・」

「待った!」

「・・・! 兄さん!?」
「勇磨さん!?」

突然、視界に現れた勇磨の姿に、環も刹那も虚を衝かれた。
まさか、勇磨がいるとは。

「入ってたのは俺だ! その、混浴だなんて知らなくてだな!」

「「こ、混浴っ!!?」」

声を揃えて驚く少女2人。

「だ、だからそのー・・・・・・とにかくすまん! 悪気は無いっ!」

「「・・・・・・。っ!!」」

しばし呆然としていた2人だったが、数秒後。
バシャッと水音を立てて、湯の中に沈んだ。

「・・・あ」

遅れて、勇磨も同様の行動を取る。
無論、反対側を向いて、だ。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

微妙な空気、時間が流れる。

「・・・・・・兄さん」
「は、はいな!」

沈黙を破ったのは環。
勇磨がビクッと反応する。

「み・・・・・・・・・見ました?」
「不可抗力でした。ごめんなさい」
「・・・・・・・・・」

こればかりは、素直に認めるしかあるまい。
絶句した環は、みるみるうちに真っ赤になっていって。

「斬るッ!!」

「どわーっ!」
「た、環さん! 落ち着いてっ!」

するりと刹那が持っていた刀・夕凪を奪い、抜いて勇磨に襲い掛かった!

「例え兄さんといえども、いいえ、よりにもよって兄さんに〜〜〜〜〜!!###
「だから謝ったじゃないかー!」
「そういう問題ではありませんっっっ!!」

「ですから落ち着いてくださいーっ!」

もはや大混乱。
だから・・・

 

「ひゃああああ〜〜〜っ!?」

 

「・・・! こ、この悲鳴は」
「このかお嬢様!?」

 

・・・という、悲鳴を聞くことが出来たのは、僥倖だった。

 

 

 

 

13時間目へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

・・・さすがに、ピーッ!は出来ませんでしたよ・・・

 

 

以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!

 

>あんたは、さいこーーー!

さ、最高ですか? ありがとうございます。
これからもがんばります。



感想

いやはや、遅れて申し訳ないです。

最近忙しいことが多くて(汗)

んで今日は修学旅行序盤ですねー

この時点では、後の色々濃ゆいキャラも普通にしてますからね〜

とはいえ、バカレンジャーは既に有名ですが(爆)

ネギのお話はネギとアスナの過去を盛り込みつつお話自体は軽くて、萌中心ですからね(爆)

で、勇磨君は本日も美味しい所を持って行っております!

しかし、学業が出来ないのは、お約束なのか?

お風呂場でも良い所を見せていますねー

環ちゃんはどんな必殺技を出したのでしょう?

勇磨君・・・成仏してください(チーン)



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