魔 法先生ネギま!
〜ある兄妹の乱入〜
17時間目 「嵐の修学旅行! そのなな」
ゲームセンター内。
このかが級友たちとゲームに興じている様子を、刹那は離れた位置から見守っていた。
(いい笑顔だ・・・)
自然に頬が緩む。
それだけ、今のこのかの表情には、説得力がある。
(やはり、このかお嬢様は何も知らずに、このまま平和に暮らしていただくのが1番・・・)
あの笑顔を曇らせたくない。失わせたくない。
ならばこのまま、魔法のことなど架空の世界だ、ということにしておくほうがいい。
(修学旅行では少し親しくしすぎた。学園に戻ったら、今までどおり・・・)
刹那は相変わらず、このかとの距離を置く選択をする。
それが、当のこのか自身を、深く傷つけているとは。
「刹那さんはやらないの?」
「・・・! あ、勇磨さん」
そんな彼女に話しかける人物、
勇磨だ。
「せっかくなんだから、混じってくればいいのに」
「い、いえ私など・・・」
「このかも喜ぶよ?」
「・・・・・・いいんです」
名前を出した途端、刹那の顔は一瞬だけ沈む。
そして、自制するように、自分に言い聞かせるように、お決まりの文句を漏らすのだ。
「ふぅ」
軽く息を吐く勇磨。
どうしたものか、と。
「それはそうと、勇磨さんは?」
「俺? いやあ、恥ずかしながら、1回もやったことが無いもので」
「違います」
たは〜、と苦笑する勇磨に、刹那は少し口調を強くして。
それから声のトーンを落とす。
「ネギ先生のほうへ行かれたのかと思っていましたが」
「ああ、そういうことね。あっちには環を行かせたから、大丈夫」
「はあ」
そう言って笑う勇磨には、刹那も生返事を返すしかない。
妹に対する、絶対的な信頼。
少しうらやましいと、正直に感じてしまった。
「こっちも、このかの護衛をしっかりやらなきゃね」
「もちろんです」
言われるまでも無い、と頷く刹那。
勇磨は心中で肩をすくめ、その意気の10分の1でも、普段から使えばいいのにと思う。
「そうだ。刹那さんには話しておかなきゃね」
「? 何をですか?」
「実はね、さっき・・・」
狗族の少年が来訪してきたことを伝える。
刹那は見る間に驚き、憤慨する。
「な・・・。なぜそのとき、私に知らせてくれなかったのですか!」
「いや、彼も様子を見に来ただけだったみたいだし。刹那さんも気付いてなかったでしょ?」
「・・・!」
「あの場はやり過ごしたほうがいいと判断した。
そのあと、正体を確かめるために、こっそり接触はしたけどね」
「・・・そうですか」
確かに、周りに一般人、特にこのかがいた状況では、そうするのが最善だった。
怒気は急速に収まっていき、代わりに申し訳なさが浮かんでくる。
「すみません。気付きませんでした・・・」
「まあしょうがないよ。かなり上手に隠してたし、
面と向かって集中しなきゃ、わからないのが普通だと思う」
「では・・・・・・勇磨さんは、どうして?」
「ん〜」
刹那は純粋に疑問に思った。
自分でも気づかなかった少年の正体を、なぜ、あっさりと見破ることが出来たのか。
勇磨は少し唸り。
「まあ、”普通じゃない”ってことかな?」
こう、のんきに答えた。
「答えになっていません」
「まあいいじゃないか。普通じゃないのは確かだろ?」
「それはそうですが・・・・・・」
「何か思うところでもあるのかな?」
「・・・! い、いえ別に」
「そう?」
刹那は取り繕ったつもりであろうが、無論そうではなかった。
ふーん、と追求しなかった勇磨だが、疑問に思っていたことが解決したような雰囲気。
(突破口は、”ここ”かな?)
展望は開けそうだ。
さて、総本山へ向かったネギとアスナ、それに環。
電車を使い、今、総本山の入口だという鳥居の前に立っている。
「ここが、関西呪術協会の本山・・・?」
「うわー、何か出そうね〜」
「確かに雰囲気がありますね」
3人は呆け気味に呟く。
鳥居をくぐると石の階段があって、その奥には、竹林の間に広がる、
鳥居の連続した石畳による通路。
吸い込まれそうな印象を受け、おどろおどろしい空気に支配されているかのよう。
「じゃあ、アスナさん、環さん。さっそく行きましょう!」
「待った!」
「お待ちください」
「・・・え?」
いきなり突入しようとするネギを、慌てて止める。
アスナも環も苦笑だ。
「あんたねー、少しは考えなさいよ。ここは敵の総本山なのよ?」
「アスナさんの仰るとおりですネギ先生」
詰問するように言う。
「確かに、奥まで行けば長がいるんでしょうけど。私たちは『東』の人間。
歓迎されるかどうかわかりません。おとといの件もあります」
「そうよネギ。別の意味で”歓迎”されそうなんだから、気をつけなさいよ」
「あう・・・。そ、そうでした、すみません」
2人から睨まれて、ネギは小さくなる。
まだまだいっぱいいっぱいで、そこまで頭を回す余裕は無い、というところだろうか。
「じゃ、じゃあ気を取り直して・・・」
「私もハリセン出しておく」
ネギは背負っていた杖を手に取り。
アスナは自分の武器を召喚、環も静かに態勢を整える。
「では参りましょうか」
石段を登り、通路へと入る。
最初は慎重に第一歩を記し、何も無いことを確かめると、一気に駆け出した。
「な、何も出てこないわよ」
「変な魔力も感じられないです」
しばらく走って、鳥居の陰に身を隠す。
呼吸を整えながら様子を見るが、やはり何かが起きそうな気配は感じられなかった。
「よおし一気に行っちゃいます!」
「OK!」
もはや遠慮は無用。
そう判断し、アスナとネギは再び駆け出していった。
「・・・・・・」
無言のまま後を追う環。
ところが・・・
「な、なんて長い石段なの・・・」
「ハァハァ・・・・・・もう30分は走ってますよ・・・」
新聞配達で鍛えているアスナも、さすがにがっくりと膝を落とし。
ネギも疲労困憊。
「・・・・・・」
2人の傍らで、環だけは平然と立って、何やら考えながら周囲の様子を窺っている。
「環・・・あんたバケモノ? こんだけ走って、息ひとつ切らさないなんて・・・」
「す、すごいですね環さん・・・」
「鍛え方が違います」
その様子に気付いた2人からそう指摘されるが。
一言で切って捨て、引き続き周りを観察し。
「・・・ちょっと試してみましょうか」
「え? 何を?」
唐突に何を言い出すのかと思いきや。
「ハッ!」
「わっ」
「お、おふだ?」
どこからともなく呪符を1枚取り出して、道の横、竹林に向かって投じたのだ。
投げられた呪符は霊気を込められており、一直線に飛んでいく。
やがて見えなくなった。
「な、何やってるの?」
「すぐにわかります。少々お待ちを」
「う、うん」
アスナもネギもちんぷんかんぷんだ。
顔を見合わせ首を傾げる。
なんのためにお札を投げたのかわからないし、環本人は、
投げた方向とはまったく逆の、反対側の竹林を凝視していることも、疑問に拍車をかけている。
「あ、あの――」
「お静かに」
たまりかねたネギが声を出し、環が一蹴した瞬間。
ヒュンッ
「・・・あ!」
「は、反対側から戻ってきた!?」
ネギとアスナは、自分の目を疑ってしまう。
なにせ・・・
向こうに投げたはずのお札が、反対側のこちらから出現し、戻ってきたのだから。
「・・・ふむ、やはり」
戻ってきた呪符をパシッと受け止めた環。
疑念が確信に変わる。
「な、何かわかったんですか環さん?」
「はい」
ネギの問いに、難しい顔をしながら頷く。
「これはおそらく、”無限方処”と呼ばれる呪法の一種だと思われます」
「むげんほーしょ?」
「なにそれ?」
「ひらたく言えば、無限ループ、というヤツでしょうか」
腕を組む環。
険しい目つきで、文字通り”見えない”道の先を見つめて。
「私たちを中心にして、半径500mほどの半球状の結界が発動しています。
東西南北、どの方向に行こうとも、結界を越えようとすると最初の場所へ戻されてしまう。つまり・・・」
「閉じ込め・・・・・・られた?」
「ええ、そうなるでしょうね」
「え・・・・・・えーっ!?」
驚きなんてものじゃない。
いったいいつのまに、そのようなものを。
「私としたことが、すいません。もっと早くに気付いて然るべきでした」
「ど、どうすんのよっ!?」
やはり罠はあった。
結界内に閉じ込められてしまった3人。
さあどうする?
「あっさりワナにかかったやん」
そんな3人を見下ろす、竹林の中の高台。
馬鹿にしたような少年の声がする。
「これで脱出不可能。足止めはOKや」
彼の横には、例のサル女。
今度は巨大な蜘蛛の式神を従えている。
「アンタは奴等を見張っとき」
「うえーめんどいな」
女はそう少年に指図する。
少年のほうは露骨に嫌そうだった。
「それに俺、こーゆー地味な作戦は好きやないなぁ・・・。正面からガツンといてまえばえーやん」
これも彼の本音。
しかし、心中では、もうひとつの本音が存在する。
(あの髪の長い姉ちゃん・・・)
先ほど、ゲーセンでの出来事が思い出される。
(ただモンやない。強さを確かめる意味でも・・・!)
「アンタは黙って、ゆーこときーとき」
「ちぇー」
だがしかし、女の命令はあくまで見張り。
戦うことではなく、少年はがっかりするのだった。
サル女は、少年にそう伝えると、どこぞへと姿を消した。
一方で、閉じ込められたと知ったネギとアスナは大混乱。
空を飛んでもダメで、このままずっと出られないのではないかという恐怖に襲われる。
そのうち、催してきたアスナ。
無論、この場でするわけにもいかないし、どんどん思考が麻痺していく。
「うわーん!!」
「あっ、アスナさーん! えーん待って〜〜〜〜!」
「兄貴、姐さん、気を確かにーーー」
パニックに陥ってしまい、走っていってしまった。
置いていかれたネギも半狂乱の状態で追いかけていく。
カモの叫び声が虚しい。
「やれやれ・・・」
ふぅ、と息をつきつつ見送った環。
「このような結界、いざとなれば、私がどうにでもしますのに・・・・・・まったく」
仕方なく後を追う。
走っているうちに茶屋を発見。
コレ幸いとばかりに、アスナはトイレに駆け込んで。
ちょうど自販機もあったので飲み物を買い、一息ついた。
「そもそもなんであいつら、親書渡すの妨害しようとするのよっ」
「そ、それはやっぱり、東と西を仲良くさせたくないからじゃ・・・」
「なんで仲良くさせたくないのよ」
やんなっちゃう、とばかりに声を張り上げるアスナ。
ネギが想像するも、不機嫌そうに睨んでしまう。
「まあ、ある程度は簡単に分析できますよ」
「え? どういうこと?」
立ったまま、様子を見つめていた環が言う。
「関東魔法協会、関西呪術協会。2つの組織の名称を比べてみたら一目瞭然です。
大方、東の連中が伝統を忘れて、西洋かぶれしていることが気に食わないのでしょう」
「あ・・・」
「なるほど・・・」
「まったく馬鹿らしい。
後世に伝えるべきは、古めかしい悪しき伝統ではなく、”今”を生きる心だというのに」
ネギとアスナは、環の言葉を「ほえ〜」とばかりに聞いた。
なんだか聞きほれてしまう。
「なんだか環がそういうこと言うと、意外って言うか、説得力があるわねー」
「そうですねー。すごいです」
「どういう意味でしょう?」
「あ、いや、悪い意味じゃなくてね?」
じろっと睨まれてしまったので、慌てて言い直す。
「ほら、環たちって剣の家の出身だって言ったでしょ? そういう家って、その、
礼儀とかしきたりとか厳しそうだし。環自身も、言っちゃ悪いけど、古風な感じだからさ」
「・・・まあ、否定はしません」
自分がこんななりなので、と環は息を吐く。
「それはもちろん、そういうことは躾けられました。でも、世間一般レベルだと思いますよ」
「へー」
環を見ていると、とてもそうは思えないが、どうだろう。
厳しく躾けられたのではないかと思ってしまう。
「あ、それはそうと、ネギ」
「なんです?」
唐突に話が変わる。
仮契約したことで、どんな恩恵があるのか。ちゃんと役に立っているのか。
実際にやって確かめてみたほうがいいということで、実演に入る。
手近にあった1mほどの岩。
普通の状態でアスナが蹴りを入れても、もちろんビクともしない。
だが、契約を発動するとどうか。
「よし兄貴。契約執行、やってくれ」
「う、うん。契約執行30秒間。ネギの従者『神楽坂明日菜』!」
「んっ・・・」
ネギが呪文を唱えると、アスナの身体が魔力に覆われる。
この状態で、さっき割れなかった岩を蹴ってみると
「たあーっ!」
ゴシャッ!
見事に砕け散った。
思わず唖然とするアスナ。
魔法使いと従者の場合、魔法使いから供給される魔力が、従者の身体能力を大幅にアップさせる。
ネギの魔力が続く限り、姐さんはその力を借りて、超人的な肉弾戦が出来るのさ、とカモが説明。
「・・・ほー」
説明を聞いて、ポツリと漏らした環。
カモはニヤリと笑い、環の肩に飛び乗る。
「ふふふ、姉さん。仮契約してみる気になったか?」
「御免です」
「ちぇー」
またしても一言で拒絶され、カモはするりと肩から降りた。
ただ単に感心しただけだったのだが。
「それと・・・・・・カモさん」
「うげ!? な、なんだ?」
凍るような視線。
カモは蛇に睨まれたカエルのように、硬直して動けなくなってしまった。
「気安く私の身体に触れないように。オコジョといえど許しませんよ?」
「わ、わかった! 肝に銘じておくから・・・・・・その殺気はやめてくれぇ!」
目を回すカモ。
見ていたアスナは同意しつつ、苦笑する。
(環って、潔癖症なのかしら?)
当たらずとも遠からず。
ただし、彼女の兄以外、という感じである。
「ということは・・・。僕が僕自身の身体に魔力を貸したら、同じように強くなれるのかなあ・・・」
「まあ・・・・・・そーゆーことになるな」
「理論的には同じですからね」
ネギの咄嗟の思いつきであったが、理論的には可能ということになる。
そういう戦い方が出来れば、従者に守ってもらうことも・・・?
「だが兄貴。あんまりオススメできねえ。魔法使いは魔法に専念するべきだぜ」
「う、うん」
何事も、付け焼刃は良くない。
実行するにしても、効果を確かめ、きちんと検証してからのほうがいいだろう。
「これでアスナさんも戦力として使えるメドが立ちましたし、たいしたことでは揺るぎませんね」
「うん、大丈夫だよ。あいつら、全然たいしたことなかったし」
環の言葉に同意し、アスナが親指を立てたとき。
「そいつは聞き捨てならんなあ」
「・・・!」
襲撃。
「だっ、誰っ!?」
「お出ましですか」
突然に降ってきた声に、警戒する一同。
そんな彼らの目の前に
ズズゥ・・・ウンッ!!
巨大な物体が落ちてきた。
その上に、黒の学生服を着た少年が舞い降りる。
待機を命じられていたが、我慢が出来なくなったようだ。
「・・・! 鬼蜘蛛」
「くも・・・・・・でかっ・・・・・・」
「え・・・!?」
環は冷静に、落ちてきた物体の正体を見極めていたが。
アスナとネギはそうもいかない。
体長数メートルは優にありそうな、巨大な蜘蛛だった。
「そーゆうデカイ口叩くんやったら、まずはこの俺と戦ってもらおうか」
そして、蜘蛛の上に乗った少年。
見覚えがある。
「ほな戦ろか、西洋魔術師。いや、ネギ・スプリングフィールド」
「き、君は・・・!」
「さっきゲーセンにいた子じゃない!」
少年はネギとアスナの言葉には目もくれず、視線を環へと移す。
「ホンマは、そっちのねーちゃんと戦いたいんやがな」
「・・・・・・」
その視線を受けても、環の表情は変わらない。
いや、少し眉をひそめているか。
「まずは、邪魔者を消すことにしたるわ!」
再びネギを見る少年。
ネギは、少年が蜘蛛の護鬼を連れていることから、護鬼VS従者、陰陽術師VS魔法使いの
戦いになると即座に理解。
アスナとの契約を執行した。
「ガキだからって手加減しないわよーー!!」
突進。
初撃で鬼蜘蛛をひっくり返すと
「アデアット! ええーいっ!!」
ボシュゥ!
「おおっ」
ハリセンで一閃。
鬼蜘蛛は撃破され、元の呪符へと戻っていった。
思わず、少年も驚きの声を上げる。
「やるなーお姉ちゃん。守りの堅いの借りてきたのに、一発でお札に戻されてしもたわ」
茶屋の屋根の上へと移動していた少年。
これには素直に感心した。
「でも、おまえのほうはたいしたことないなチビ助」
「ム・・・」
ビシッとネギを指差し、名指しで罵倒する。
「女に守ってもらって、恥ずかしいと思わへんか。だから西洋魔術師はキライなんや」
「その発言は女性蔑視、女性差別ですね」
「そーよそーよ! 今じゃ男顔負けの活躍してる女性だっていーっぱいいるんだから!」
ぼそっと環が言ったことにアスナが同意。
負けじと言い返す。
「前衛のゴキちゃんやられちゃったからって、負け惜しみねボク!」
「おうよっ。てめえに勝ち目はねえ!」
ここぞとばかりにカモも言う。
だが・・・
「お姉ちゃんも何か勘違いしてへんか? 俺は術師とちゃうで」
「へっ?」
根本的な考え違いがあったようだ。
「そらっ」
「わ」
少年が屋根を蹴ったかと思ったら。
すごい勢いで迫ってくる!
「やっ。あっ、このっ・・・!」
「ハハッ。当たらな意味ないな♪」
アスナはハリセンを振り回すが、少年の言葉通り、かすりすらもしない。
援護のため、ネギが詠唱を始めるが
「風花・武装解除!!」
「なんの! うおりゃっ」
「あうー」
少年が取り出した呪符で防がれてしまい、逆に懐に入られて、殴り飛ばされてしまった。
その後もネギの劣勢が続く。
魔法障壁を抜かれ、肉体自体にダメージ。
「ア、アンタねー。戦士なら戦士って、最初から言いなさいよっ!」
「そんなん知らーん」
「あと、ネギばっかりいじめるのやめなさい! 私が相手よ!」
「戦いは男の仕事や。俺、女殴るのややし。強い女でもなー」
「私ならいいんですか?」
「あんたは別格や」
発言の矛盾にツッコミを入れる環だったが、少年はにやりと微笑む。
「”ただの女”やないもんな?」
「・・・・・・・・・」
余裕で構えていた環の雰囲気が変わった。
こちらが、少年の正体を見抜いたように――
あちらも、こちらの正体を――?
「ハハハッ。やっぱ西洋魔術師はアカンな、弱々や。
このぶんやと、おまえの親父のサウザンなんとかゆーのも、たいしたことないんやろチビ助」
「・・・!」
少年の一言が、ネギの闘志に火をつける。
しかし・・・
「ダメだ兄貴! ここは一旦引こうぜっ!」
カモが叫ぶ。
「御門の姉さんっ!」
「む・・・」
そして、いつの間に買っていたのか。
手にしていた缶を放り投げ、環へ、察して欲しいと呼びかける。
「なるほど・・・。はっ!」
環は、投げられた缶に向かい、なにやら呪を飛ばした。
バフンッ!
缶が破裂し、中から噴き出た液体が瞬時に気化。
周囲は瞬く間に、濃い霧に覆われる。
「くっ・・・霧!? 目くらましかいな!」
少年が忌々しげに言っている間に、撤退だ。
アスナはネギを抱え上げ、一目散に走る。
霧は徐々に晴れていくが・・・
「逃げられた? くっそーーーー!!」
そこにはもう、ネギたちの姿は無く。
「この臆病者ー! 俺から逃げても、こっからは出れへんねんでーーーー!!」
少年の悔しげな怒声が響いた。
18時間目へ続く
<あとがき>
予定通りに、小太郎君の襲撃であります。
小太郎は環にこだわっているようです。自分の正体を見破られちゃいましたからね。
その逆もあったりするようです。
それと、環がいますので、ちびせつなの活躍はありません。
彼女のファンの方、すみません・・・