魔 法先生ネギま!
〜ある兄妹の乱入〜
21時間目 「嵐の修学旅行! そのじゅういち」
休息を取っていたネギたち。
結局は環の言うとおり、ネギはのどかに膝枕をされていた。
双方ともに顔は真っ赤。
休むどころの話でもなかったが、時間が経つとお互いに慣れていったようで。
苦笑していた環とアスナも、一息つくことが出来た。
「・・・む」
「ん? どしたの環?」
どれくらいの時間が経ったのか。
不意に立ち上がった環に対し、アスナは首を傾げた。
「兄さんが来ます」
「え? 兄さんって、なに? 勇磨君が?」
「勇磨さんが来るんですか!?」
ネギも身体を起こす。
言うまでも無く、のどかは残念そうだ。
「どうしてわかるの?」
「なんとなくですが、わかります。もう少しですね」
「あ、そうなの」
「双子のテレパシーってヤツでしょうかー」
「不思議です〜・・・」
無論、姿形は見えないので、疑問に思ったのだが。
その一言で納得させられてしまう。
「でも、勇磨さんたちがこっちに来るってことは、何かあったんでしょうか?」
「なんとも言えませんが、私たちは襲われました。
向こうにも、なんらかの襲撃があったとしてもおかしくはありません」
「それで、合流か・・・」
「おそらく。分かれていると良くない、と思うほどの何かがあった、ということでしょうね」
「・・・・・・」
場の空気が固まる。
「まあとにかく、兄さんたちと合流しましょう」
「あ、そうですね」
それを打ち破るように環が言い。
ネギもすっくと立ち上がった。
「ネギせんせー・・・・・・大丈夫ですか?」
「ええ、もう大丈夫です! 少し休んだおかげで、すっかり回復しましたよ」
「そうですかー・・・」
微笑むのどか。
少しでも役に立ったかと思うと、すごくうれしい。
「それじゃ、行きましょう!」
勇磨たちとの合流を目指して、こちらからも移動する。
その結果、ほどなく合流は出来たのだが・・・
ワイワイ、ガヤガヤ
という効果音が示すとおりの状況。
勇磨、刹那、このかの3人はまだいい。
いや、この3人との合流が規定路線だったのだ。文句は無い。
しかし、合流した人間は彼ら3人だけではなく。
ハルナ、夕映、朝倉の3人も、なんと一緒だったのである。
(ちょっと桜咲さん勇磨君! どーゆーコトよ。何でみんなまでついてきてるの?)
「いえ、それがその・・・」
「あはは、ごめん・・・」
のどかや夕映、ハルナの3人は、少し前方を歩いている。
その隙に、アスナはこんな状況になってしまった理由を、彼女たちに悟られないように小声で訊く。
刹那と勇磨は、申し訳なさそうに苦笑するのだった。
「今さっきそこで、朝倉さんたちに捕まってしまいまして・・・」
「ふふふ♪ 私から逃げようなんて100年早い」
不敵な笑みを浮かべ、朝倉が説明した限りではこうだ。
刹那と勇磨は、このかを抱えてシネマ村を後にし、こうして合流を目指したのだが。
いつのまにやら朝倉が、刹那の荷物にGPS携帯を仕込んでいたらしい。
かくして行き先は割れ、先回りされて待ち伏せされてしまった、ということのようである。
「朝倉さん」
「んー? なんだい環っち」
「・・・その呼び方につきましては、あとで追求するとしまして」
朝倉に話しかけた環だが、返ってきた愛称に眉をひそめた。
コホン、と気を改めて、再び声をかける。厳しい表情で、だ。
「宮崎さんにも言いましたが、あなたも、身の振り方を考えたほうがいいですよ」
「どういう意味?」
「遊びではないのです。私たちは本当に、命のやり取りをしているんですよ」
「そーよ。朝倉!」
便乗し、アスナも声を張り上げる。
「あんた、この危険さ全然わかってないでしょ? ネギなんか、さっき死ぬところだったのよ!?」
「そのわりには元気そーじゃん?」
「私がヒーリングして、怪我を治したからです。流血どころじゃありませんでしたよ」
「・・・へえ」
さすがに、朝倉も少し勢いを削がれた。
アスナの言う”危険さ”とやらが、少し理解できたから。
「まあでも、私はネギ先生に協力するって、誓っちゃったしね」
しかし、朝倉の意志は変わらなかった。
「どうあっても、私たちと行動を共にする、と言うのですね?」
「もち♪ こんな面白そうなこと他に無いじゃん」
「・・・ふぅ。後悔しても知りませんからね」
「しないしない♪」
諦めた、という感じで環はため息をつく。
アスナも同様だった。
「それにわたしゃ、やらないでする後悔よりは、やってからする後悔を選ぶからね」
笑顔で言う朝倉。
確かに、これはもう、翻意させるのは不可能だろう。
勝手にしてください、となったとき。
「うぉ〜、なんか雰囲気あるね〜♪」
本山の本当の入口に辿り着いたのか。
ハルナから声が上がる。
「レッツゴー!」
「あーッ、ちょっとみんなー!」
そして、止める間もなく、一目散に走っていってしまう。
ハルナ、夕映、のどか。あろうことに、このかまで。
「そ、そこは敵の本拠地なのよ!?」
「何が出てくるか・・・!」
アスナはカードを手に、ネギも杖を構え、慌ててあとを追う。
だが・・・
「お帰りなさいませ、このかお嬢様〜〜〜ッ!」
「「へ?」」
あったのは、盛大な歓迎。
ネギもアスナも、目が点になる。
ずら〜っと両脇に並んだ、巫女装束の女性たち。
広い庭、大きな家屋敷の数々。
そして、満面に笑みを浮かべたこのかの姿。
想像していたのとは、まるで違った。
「うっひゃー。コレみんな、このかのお屋敷の人?」
「いいんちょ並みのお嬢様だったんだねー」
ハルナや朝倉などは、目の前の現実を早くも受け入れているようだが。
こちらはそうもいかない。
「さ、桜咲さん! これってどーゆー・・・」
「えーと、つまりその・・・」
アスナは、事情を知っているであろう刹那に食って掛かる。
「ここは、関西呪術協会の総本山であると同時に、このかお嬢様の御実家でもあるのです」
「ええ〜〜〜っ!?」
絶叫はアスナだけではない。
勇磨もそうだし、ネギからも声は上がった。環も、声は出していないが、驚きの表情。
「それ初耳よ。なんで先に言ってくれなかったのー!」
「そうだよ。そういう重要なことは、先に言ってくれよ・・・」
「余計な気を回さないで済んだじゃないですか・・・」
「す、すいませんっ・・・」
口々に追求されて、刹那は平謝りだ。
「いま御実家に近づくと、お嬢様が危険だと思っていたのですが・・・
シネマ村では、それが裏目に出てしまったようですね。御実家、総本山に入ってしまえば安全です」
「そ、そっか。ここがこのかの実家か〜」
説明を受けて、アスナは興味深そうに周りを見回す。
本当に大きな家、広い敷地だ。どれぐらいあるのだろう?
「アスナ・・・」
「え?」
そんなアスナに、このかはおそるおそる尋ねる。
「ウチの実家、おっきくてひいた?」
「ううんっ・・。ちょっとビックリしたけどね」
驚いたのは事実だが。
いいんちょで慣れてるしねー、とアスナは笑った。
このかも、安心したように笑みを見せて。
本殿らしき建物の中へ、案内されるままに入っていく。
広い広い部屋の中、座って待っていると、やがて長がやってくる。
「お待たせしました」
神主が身に着けるような服を着て、メガネをかけた、痩せ型のやさしそうな男性。
「ようこそ明日菜君、このかのクラスメイトの皆さん。そして、担任のネギ先生」
「お父様♪ お久しぶりやー」
「は、はは。これこれこのか」
彼は笑顔でそう言って、彼に飛びついていくこのか。
このかの父親である彼が、西の長だった。
「あ、あの、長さん。これを・・・」
「確かに承りました」
ネギは早速、持ってきた親書を長へと渡す。
封を切り、中身を確かめた彼は
「・・・いいでしょう」
ひとつ頷いて、笑顔でこう告げた。
「東の長の意を汲み、私たちも東西の仲違いの解消に尽力する、とお伝えください。
任務ご苦労! ネギ・スプリングフィールド君!」
「あ・・・ハイ!」
ネギも笑顔で頷いて。
後ろでは、よくわからないながらもめでたいと、ハルナや朝倉が騒いでいる。
「今から山を下りると日が暮れてしまいます。君たちも、今日は泊まっていくといいでしょう。
歓迎の宴をご用意いたしますよ」
続けて長がこう言うものだから、騒ぎはさらに盛り上がる。
身代わりも立ててくれるというので、帰る必要も無くなったわけだ。
宴は盛大に開かれて。
「刹那君」
「こ、これは長・・・!」
その途中、長は刹那に声をかけた。
すぐさま膝をつき、かしこまる刹那。
長はそんなことをする必要は無いと笑いつつ、こんなことを伝える。
「この2年間、このかの護衛をありがとうございます。
私の個人的な頼みに応え、よくがんばってくれました。苦労をかけましたね」
「ハッ・・・。いえ、お嬢様の護衛は元より私の望みなれば・・・」
「話は聞きました。このかが力を使ったそうですね」
「はい。たちまちのうちに怪我を治してしまうという・・・」
「いや刹那さん。それだけじゃない」
「え?」
話に割って入ったのは勇磨。
このかに力を使わせてしまったのは、彼なのだ。
「長。それにつきましては、私から謝罪いたします。護衛のはずなのに、こんなことになってしまった」
「いやいや、いいのですよ。頭を上げてください」
頭を下げる勇磨。並んで環も下げている。
本当に謝罪のしようも無いのだが、長は笑って許してくれた。
「それで大事に至らなかったのなら、むしろ幸いでした。
御門勇磨君、それに、御門環君だったね。話は学園長から聞いているよ」
「は」
「恐縮です」
もう1度頭を下げ、上げる。
「それで? このかの力が、怪我を治すだけじゃないというのは?」
「はい。呪を打ち消す効果もあるのではないかと思います」
勇磨は、自分の身に起こったことを詳しく説明した。
ふ〜むと唸る長。
こと回復効果においては、このかの右に出るものはいないかもしれない。
環のヒーリングなど比ではない。
「そうですか。このかの魔力は大きいとは思っていましたが、想像以上のようですね」
「・・・・・・」
長は目を閉じて、数秒の間だけ何かを思案して。
「このかには、普通の女の子として生活してもらいたいと思い、秘密にしてきましたが・・・
いずれにせよ、こうなる日は来たのかもしれません」
こう、言った。
「刹那君。君の口からそれとなく、このかに伝えてあげてもらえますか」
「長・・・」
宴の後。
屋敷の規模に習い、こちらも広い浴場に、少女たちの姿がある。
アスナ、刹那、環の3人だ。
「ふぃ〜っ♪ 今日は色々あって汗かいたから、サッパリする〜〜〜」
「フフ・・・。疲れもしっかり洗い流してくださいね」
「広いお風呂は極楽です・・・」
1度に十人かで入っても、まだ余裕がありそうな湯船にゆっくりつかる。
「なんか桜咲さんって、お姫様を守る騎士ってカンジだよねー♪
ただのボディガードってゆー関係じゃないってゆーか」
「なっ、そそそそんな関係じゃありませんよっ!」
アスナと刹那、戯れが発生したようだ。
「そ、そーゆー神楽坂さんはどうなんですか」
「へ」
「神楽坂さんが、ネギ先生にあんなに一生懸命協力するのは、ちょっとおかしいです!」
「なっ!? なな、なんの話してんのよ!」
「一般人なのに、あんな危険な目に遭って、まだ協力するなんて」
「ちがっ・・・・・・だってあいつ、ガキだし心配だし」
「私もお嬢様が心配なだけですーっ!」
キャーキャー、バシャバシャ。
騒ぐだけ騒いで、お互いにはあはあと肩で息をする。
「何やってるんですかあなたたちは・・・」
環だけは我関せずと、被害に遭わないよう離れた位置で、1人でゆっくりしている。
「あ、あの、なんか・・・・・・アスナでいいよ私」
「あ・・・・・・そうですね。じゃあ私も刹那で・・・」
両者、絆は深まったようだ。
馬鹿みたいに騒いだ甲斐はあったというものか。
「あの・・・・・・アスナさん。色々と話したいことがあるので・・・・・・
あとで、このかお嬢様と一緒に、このお風呂場に来ていただけますか?」
「え? うん、いいけど・・・」
「私からもお願いしますよ、刹那さん」
「え?」
刹那がアスナに頼み、アスナが頷いたところで、環からも声がかかる。
「私からもお話したいことがあるので」
「わ、私に、ですか?」
「ええ、あなたに」
「・・・・・・」
戸惑う刹那。
何か、環から話されるようなことがあっただろうか。
「神楽坂さんたちとお会いする前にお願いします。
なに、お時間は取らせませんので。すぐに済みます」
「わ、わかりました」
「場所は・・・・・・そうですね。中庭でどうですか?」
「はい」
約束は取り付けた。
はたして環は、刹那に何を話すつもりなのだろう?
「環さん・・・私に何の話だろうか・・・・・・」
風呂から上がり、しばらくしてから。
刹那は、環との待ち合わせ場所、中庭へと向かっていた。
考えても、心当たりは浮かばない。
ならば、まずは行って、話を聞いてみる。
「環さん?」
「こちらです」
中庭に着くと、環は既に待っていたようだ。
かがり火の明かりの中、話が始まる。
「それで、私に話とは、いったい?」
「このかさんとのことですよ」
「・・・!」
初っ端から、刹那の身体が強張った。
いきなりそう来るとは。
「失礼かとは思いますが、それを承知でお尋ねします。
なぜあなたはそれほどまでに、このかさんとの接触を避けるのです?」
「・・・・・・」
「身分の差があるのはわかりますが、あなたのそれは度を越えている。
どうも、身分以上に、自分を抑えざるを得ない何かがあるように思えます」
「・・・・・・」
「図星ですか」
動揺は隠したつもりだったのだが。
通用しなかった。
「刹那さん。あなたは、自分だけが特別、だとでも思っているんですか?」
「・・・・・・どういう意味です」
黙っていた刹那が、ここでようやく口を開いた。
苛立ちを伴った、低い声。
「貴女には関係の無いことだ。なぜ貴女に、そうとやかく言われる筋合いは――」
「ひどいじゃないか」
「――!」
その声を遮るように、別の者の声が響いた。
「関係が無い? 無くは無いだろう」
「ゆ・・・勇磨さん」
勇磨の登場である。
・・・そうか。妹がいるのならば、兄もいると考えて然るべきだった。
「友達のことを心配するのは、いけないことか?」
「と、友達? 私が・・・?」
「違うの? 俺たちはずっとそう思ってきたけど」
「・・・・・・」
刹那は思わず絶句した。
そんなことを言われるとは、まさに想定外だった。
「もちろん、このかのことも友達だ。友達同士の間が上手くいっていないと知ったら、
助けたくなるのが人情ってもんだよ。違う?」
「・・・・・・」
引き続き、刹那は無言。
勇磨の言葉を聞いて、何かを思いつめるように俯いている。
「でもっ――!」
「なあ刹那さん」
その顔が上がったとき、再び彼女を遮るようにして、言う。
「種族の違いっていうのは、そんなに大きいことなのか?」
「!!!」
ビクッと震える刹那。
これまでの驚きようなど、比べようが無いほど、大きく。
「な・・・・・・ぜ・・・・・・・・・どうしてっ!?」
「ああ、なんとなくそう思ったからだけど。合ってたみたいだね」
「あなたたちは・・・・・・いったい・・・・・・」
「君ほどの人間が気付かなかったのかい? ほら、昼間、俺がこのかをかばって矢を受けたとき」
言われ、その場面を思い返してみる。
自分は月詠との戦いで、それほど注視していたわけではない。
だが、そこだけは、鮮明に覚えていた。
なぜなら・・・
勇磨の身体から噴き出したオーラ。
最初チラリと見えた黄金の輝きが、青白いそれに取って代わっていく様子が、
やけに力強く、神秘的で・・・
「・・・! あれはっ・・・」
「そう。そういうことだよ」
そこまで思い出して、はたと気付いた。
あんな芸当が、純粋な人間に出来るだろうか、と。
「私たちも、あなたと同じだということですよ、刹那さん」
「・・・・・・・・・」
環からも駄目押しがなされた。
兄妹を交互に見て、口を開けたまま絶句の刹那。
「兄さんを見てご覧なさい。そんなことなど気にも留めず、次々と交友関係を広げていっていますよ」
「・・・環。なんかこー、言葉は穏やかなんだが、口調に棘を感じるのは気のせいか?」
「気のせいです」
環は、勇磨の疑問など、バッサリと斬って捨て。
「些細なことなんですよ、そんなことは」
刹那に笑みを向けた。
「些細って・・・」
「些細なことは些細なことです。それとも、なんですか?
あなたは、自分は人間ではないと、そう考えているのですか?」
「・・・・・・・・・」
かすれたような声を絞り出した刹那であるが。
その口は、再び閉じられてしまった。
「仕方のない人ですね。あなたがそのような態度を取り続けることで、
このかさんがどれほど傷ついているのか、考えたことはありますか?」
「そんなことはわかっている!!」
ついに爆発。
目に涙すら浮かべながら、刹那は叫んだ。
「わかっているとも・・・・・・。でも・・・・・・でもダメなんだ!
私は・・・・・・私だってこのちゃんと・・・・・・でもやっぱりダメ・・・・・・出来ない・・・・・・」
「・・・ふぅ」
そして、ポロポロと涙を零す。
御門兄妹はやれやれと肩を竦めあって、勇磨がため息をひとつ。
「そうしたいのなら、そうすればいいじゃない」
「・・・・・・え?」
そして、こう声をかける。
「刹那さんは、このかと仲良くしたいわけでしょ? このかのほうは言うに及ばず。
だったら、やりたいようにやればいいじゃないか。何をためらうことがある」
「で、でも・・・」
「自分が人外だから? 人外の血が混ざっているから? それがなんだ」
「・・・・・・・・・」
呆然と勇磨を見つめる刹那。
勇磨は彼女に向けて、出来る限りのやさしい笑みを送る。
「このかがそんなことを気にするタチか? 違うだろう」
「あ・・・」
「もちろん俺たちだって気にしない。なんたって、俺ら自身がそうだからね」
今度はニカっと、まぬけっぽい笑顔で。
「がんばれ刹那さん。その一歩は大変な一歩だろうが、踏み出しさえすれば、未来は明るいぞ」
「自分と、このかさんと。・・・・・・無論、私たちのことも、信じてください」
「勇磨さん・・・・・・環さん・・・・・・」
環は少し気恥ずかしそうに。
自分を信じてくれというのは、恥ずかしいセリフだと思ったのか。
そんな中、刹那は・・・
悪い憑き物が落ちたかのごとく、表情に明るさが戻っていく。
「っ・・・」
ゴシゴシと涙を拭って。
「やれるだけ、やってみます!」
完全な、彼女の微笑み。
「そう、その意気だ」
「いい笑顔です」
御門兄妹も頷いて。
一件落着かと思いきや。
「・・・!」
「これはっ・・・!」
肌に感じる、唐突な異変。
明らかな異常。
「お嬢様が危ないッ!」
御門兄妹よりも早く、刹那は駆け出していった。
22時間目へ続く
<あとがき>
御門兄妹、刹那を説得するの巻き。
でもまあ刹那の場合、その思いを吹っ切っても、一族の掟があるんですよね。
そこはいかがすべきか・・・