魔 法先生ネギま!
〜ある兄妹の乱入〜
33時間目 「悪魔がやってきた! そのに」
「ネギ先生、大丈夫かなー」
「風邪かしらねぇ」
雨が降る中を、仲良く相合傘状態で、ネギのことを心配しつつ、
村上夏美と那波千鶴が下校中である。
「あら? 行き倒れよ夏美」
「行き倒れ!?」
ふと千鶴が気付き、言ったことに夏美は大慌て。
この豊かな現代日本で、そんなことがありえるのかと。
「・・・あ、なんだ、犬か」
状況を確認して、かわいそうと思いながらも安心する。
道端に、黒い犬が1匹、倒れていたのだ。
「しかもケガしてるわ、この子」
「わ、バッチくない? ちづ姉」
意識は無いようだが、へっへっと苦しそうに息をしていた。
千鶴はその犬を抱き上げ、夏美はさらにビックリする。
「ど、どうするの?」
「どうするって、決まってるでしょ?」
千鶴はにっこり微笑んで。
犬を抱えたまま、再び歩き出した。
「さ、行くわよ夏美」
「あ、待ってよちづ姉。濡れちゃうってば」
連れて帰ろうというのだろう。
ボランティアで幼稚園の手伝いをよくしているという彼女のことだから、納得のいく行動である。
夏美はすぐに追いかけ、傘を差し出すのだが。
このことが、思わぬトラブルを招くことになろうとは。
一方、その頃・・・
「うひゃー、スゴイ雨や」
「傘1本しかないですね」
”内部”での1日を過ごし、ようやく出てきた一行。
エヴァの家に来たときに降り出した雨は、いつのまにやら、雷を伴う大雨となっていた。
「エヴァちゃん。テスト勉強の時間、足りなくなったらまた『別荘』使わせてよ」
「別に構わんが」
アスナはこれ幸いとばかりに、そんなことをエヴァに頼んでいる。
余分に丸1日勉強できる時間が出来るとなれば、大いなるアドバンテージになるだろう。
「女には薦めんぞ。歳取るからな」
「う゛!! そうか」
エヴァの返答はこんなもの。
「気にしないアルよ」
「いいんじゃない? 2、3日くらい歳とっても」
「若いから言えるセリフだな、それ」
アスナは恐れおののいたが、古菲や朝倉は意にも介さない。
むしろ微塵も気にしておらず、エヴァは半ば本気で呆れた。
「兄さんは、年中使っていたほうがいいんじゃないですかね?」
「なんだよそれ。まあな、勉強が出来ないっていうのは認めるが・・・」
皮肉たっぷりな環の言いように、勇磨は肩を落としつつ、吠える。
「それじゃ、1歳余計に歳取ってしまうわ!」
「今さらでしょう?」
「そ、そうかもしれないけどな。誰だって、余計に歳取りたくは・・・」
自分たちの実年齢は17歳である。
それに、妖狐との混血であるから、普通の人間よりも寿命が長いことが予想される。
1年くらいはどうってことないのだが、そこはやはり、気にするものだろう。
「・・・? なんのことや?」
「え、あ、いや。なんでもないよ」
小声で話していたつもりだったが、聞こえてしまっていたか。
このかに尋ねられ、はぐらかしておく。
すでに混血であることは打ち明けているが、そこまでは知らせなくてもいいだろう。
「でも、ゆう君と一緒なら、ウチも一緒に勉強してもええよ♪」
「はい?」
「おー、言うねぇ」
「このか、なりふり構わなくなってきてない?」
「お嬢様・・・」
「・・・・・・##」
「・・・・・・##」
このかの爆弾発言。
朝倉は野次馬根性丸出しでウハッと反応し、アスナは苦笑している。なんとも言えない表情の刹那。
そして、ピキッと青筋を立てた2人は、言うまでも無かろう。
「・・・気が変わった。このか、貴様には使わせてやらん」
「えー、そんな殺生や〜エヴァちゃん」
「それに、兄さんの面倒は私がきちんと見ますので、どうぞお構いなく」
「わ、わ、たまちゃんもそないなこと言わんと〜」
ちょっとした戦争(言い争い)に発展。
これで、周りが何も言わないわけが無い。
「いよっ、モテモテだねおにーさん♪」
「おいおい・・・」
朝倉からからかわれた勇磨は、どう反応していいのやら。
引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。
その後、雨の中を走り、寮へと帰る。
「何かあったらいつでも呼んでよ。協力するからさネギ君」
「は、はい」
寮のロビーで。
濡れた身体を拭きながら、朝倉はそんなことを申し出る。
一応は頷いたネギだが、内心は困惑気味だった。
「ううっ、困ったな」
「何が?」
「ホントは、あーゆー危険なことがあるかもしれないから・・・」
言うだけ言って、朝倉や夕映、のどかたちは一足先に部屋へ。
問いかけたのはアスナである。
「僕と関わるのは考えたほうがいいって言うつもりで、6年前の話をしたつもりだったんですけど」
「いいじゃん。協力してくれるって言ってんだし」
「アスナさんもですよー」
朝倉たちは元より、アスナも立派な一般人。
危ういことには巻き込みたくは無い。
ネギの想いとは裏腹に、彼の周囲は大乗り気だった。
「・・・いや、やっぱり僕が強くならなくちゃ。よし! もっともっと修行がんばるぞーっ!」
「って、ちょっとちょっと! これ以上がんばったら、ブッ倒れちゃうわよー」
「大丈夫ですよアスナさん」
だから、ネギは決意を新たにして、走り去っていく。
アスナにしてみれば、注意したことを再びやられそうな感じであり、また警告をするのだが、
ネギは大丈夫だと繰り返すばかり。
結局、どっちもどっちということになるのだろうか。
「もー。あいつまた、1人で気負って張り切っちゃって」
「あや〜。ネギ君、またフラフラになってまう?」
本当ならば、近所の少年たちと相応の遊びをして、楽しんでいるような年頃だ。
そんなことは一切できない、してこられなかったばかりか、現状、周りにいるのは年上の人間ばかり。
悩み、焦り、がんばりすぎてしまうのは、当然かもしれない。
「いやー、降られたな」
「降られましたね」
御門兄妹が部屋に帰還。
ずぶ濡れになってしまった。
「あ、おかえりなさい〜♪」
「ただいま」
居候であるさよが、笑顔で迎えに出る。
勇磨も笑みを返した。
「珍しいね? 先に帰ってるなんて」
「はい」
さよが、2人よりも先に帰宅していることはほとんど無い。
以前よりも広範囲を動き回れるとだけあって、好奇心旺盛なさよは、ほぼ毎日のように、
日が落ちるまでどこかを飛び回っているのだ。
「雨が降ってきちゃいましたし」
「そうか」
幽霊だから、関係は無いのであるが。
まあ、気分的なものなのだろう。
勇磨は頷きつつ、洗面所に入ってタオルを取り、環にも渡してやる。
「ほらよ」
「ありがとうございます兄さん」
「風呂使うんなら先に使っていいぞ。俺は着替えるだけで済ませるから。使うだろ?」
「はい、そうします。すみません」
「いや、女は身体を冷やすと大変だって言うからな」
「・・・・・・」
頭を拭きながら、リビングのほうへ向かう勇磨の後ろ姿。
環は兄の気遣いに感謝しつつ、クスっと笑って無言で見送ってから、洗面所の扉を閉めた。
「・・・そうだ、兄さん」
「あん?」
と思ったら、すぐに扉を開けて勇磨を呼ぶ。
「復習、きちんとやっておいてくださいね」
「え〜? この期に及んで勉強かよ・・・」
ほぼ丸1日、エヴァの別荘でやってきたというのに、またやれというのか。
勇磨はげんなりした表情を見せるが、環は容赦しない。
「今日はもう勘弁してくれよ・・・」
「ダメです。武道と同じで、反復練習しないと身に着きませんよ。
せっかくがんばったんですから、もう少しがんばって、定着させてください」
「やなこった」
「確認テストをやりますからね。70点以上取れなければ、夕食は抜きです」
「なにっ!?」
目をひん剥く勇磨。
すぐに抗議の声を上げるものの。
「そんなの勝手すぎる!」
「合格ラインを70点にしてあげたこと、逆に感謝していただきたいくらいですが。
本来ならば80点と言いたいところです」
「横暴だ、理不尽だ!」
「明日の朝食も抜きにしますよ」
「卑怯者ぉ〜っ! ・・・やりますよ。やればいいんでしょやれば!」
呆気なく敗れ去る。
シクシク泣きながら、勇磨は泣く泣く承諾。
一方の環は、なんとでも〜と言いながら、再度洗面所のドアを閉めた。
環の作ってくれる食事が、勇磨にとっては唯一の栄養源なのだ。
外食という選択肢は、財布の紐を環が握って離さないため、最初から存在しないのである。
現在、勇磨が自由に出来るお金は、1銭も無い。
もちろん、自炊など出来ない。
「・・・鬼め」
ブツブツ愚痴りながら、勇磨は着替えて。
仕方なく勉強道具をテーブルに広げ、復習を始めた。
「いつからあんなになっちまったんだか。小さい頃はかわいかったのになぁ・・・」
「・・・あはは。大変ですね、勇磨さん」
勇磨の周りをふよふよと飛んでいるさよ。
苦笑するしかなく、彼の境遇に同情している。
「あーあ。これがこのかだったら、こんな脅迫じみたことなんて絶対しないだろうなぁ。
そういえば、このかの教え方は天下一品だった」
「近衛さん・・・・・・ですか?」
「うん。ちょっと彼女から教えてもらう機会があってね。
本気で先生になったほうがいいんじゃないか、っていうくらいだったよ。
俺でさえ、このかに教わったら、すぐに出来るようになったんだから」
「俺でさえ、ってところが、哀愁を誘いますね・・・」
何気なく自爆している。
苦笑を続けるしかないさよだったが
(近衛さん・・・)
何か含むものがあったんだろう。
う〜むと何かを考えているようだ。
「・・・・・・うげ。これってどうやればいいんだっけ?」
勇磨はさっそく詰まっているようである。
何を隠そう、このかに教わったところなのであるが、忘れてしまったようだ。
一朝一夕では身に着かない。
「やばいやばいやばい。ペナルティを増やされる! えっと、どうやれば・・・」
「・・・・・・あの、勇磨さん」
「そうだ! 教わったときのメモがあるはず・・・・・・って、え? 何か言った?」
「は、はい」
問題が解けなくて焦り始める勇磨。
そんな彼に、さよはありったけの勇気を出して、申し出る。
「よろしければ・・・・・・そ、その・・・・・・私が、お教えしましょうか・・・?」
「相坂さんが? わかる?」
「は、はい、たぶん・・・。60年、同じ授業を受け続けてますから・・・」
「そ、そうか。なら、ぜひ頼む!」
「はい!」
うれしそうに、さよは力強く頷いた。
些細なことでも、誰かの役に立てるということが、うれしくて仕方の無い様子。
すすすっと、ほのかに赤くなりながら、勇磨の隣へと移動する。
「えっと、どれでしょう・・・?」
「これなんだけど」
「あ、それならわかります。ええとですね・・・」
「ふむふむ」
さよの解説が始まって、間もなく。
「・・・・・・兄さん」
「ん?」
また自分を呼ぶ声がした。
視線を向けてみると
「どわっ。な、なんて格好してるんだよ」
「仕方ないんです・・・」
環は、ドアから顔だけを出してこちらに向け、なにやら困ったような表情をしている。
チラッと見えた肩口が地肌だったから、おそらくは・・・
「バスタオルは巻いてますよ・・・」
「そ、そうか。・・・で?」
「はい・・・・・・実は・・・・・・」
・・・予想は外れてくれた。
しかし、妹とは言えども、小さい頃には何度も目にしているといえども、急ではギョッとする。
さて、その困惑顔の環が告げたところによると。
「は? お湯が出ない?」
風呂場のお湯が出ないという。
「いえ、シャワーは使えるんですが、浴槽のほうが・・・。その・・・・・・これ・・・・・・」
「はあっ?」
環がおずおずと示して見せたもの。
予想だにしない、突拍子も無いもので、勇磨は大口を開けてしまった。
蛇口の取っ手である。
そう。水道の蛇口に付いている、手で捻るところである。
「取れちゃいました・・・」
「な、なにやってるんだおまえは。馬鹿力め」
「ちっ、違いますよ! 普通に捻ろうとしたら取れてしまったんです!」
無理やり毟り取った、などと思われてしまっては無理もない。
環は赤くなって怒鳴る。
「それが取れたってことは、おい。水浸しになってるんじゃないのか?」
「大丈夫です。幸い、漏れ出す状態にはなっていません」
「不幸中の幸いか」
水が噴き出ることにならなくて良かった。
最悪、元栓を締めなければならない事態になって、直るまで水なしの生活ではたまらない。
「でも、うーん。俺はシャワーが使えりゃいいが、おまえはそれじゃ困るか」
「はい・・・」
浴槽の蛇口からお湯が出ないので、お湯を張ることが出来ない。
勇磨はシャワーだけでも構わないが、環も世の女性方と違わず、ゆっくり入浴するのが常だ。
「わかった。こういうのは管理人さんに言えばいいのかな? 管理室に電話してみるから、ちょっと待ってろ」
「お願いします・・・」
席を立ち、電話を取って内線をかける。
その結果・・・
「・・・どうでした?」
「修理は明日以降。手配とかもあって、今日はもう無理だってさ」
「そんな・・・」
直るのも、明日以降だと。
「しょうがないだろ。今日はシャワーだけで我慢するか、なんだったら、大浴場へ行ってくれば?」
「・・・・・・」
ホテルなどのような、大浴場があることは知っている。
しかし、初めてだということもあり、女性だけとはいえども、
大勢の前で裸になるということには腰の引けてしまう環だったが
「・・・わかりました。行ってきます」
結局は、服を着なおして、大浴場へ行くことにした。
大浴場。
麻帆良女子寮の建物3階に存在し、それこそ、一流ホテルにも劣らないような設備を供えている。
環が大浴場に向かい、更衣室でおそるおそる服を脱いでいる頃は、幸か不幸か。
3−Aご一同が入浴中だった。
「マンガの原稿のほうはいいのですか?」
「〆切もうすぐだって言ってなかったけ・・・」
「あっははは。やばいけど、お風呂ぐらい入らないとね」
エヴァ邸から戻ってきた後、ネギから聞かされた話により、浮かれすぎていたと反省の夕映とのどか。
部屋に戻った後、雨に濡れ冷えた身体を温めるために大浴場へ向かい、偶然ハルナと会っていた。
「よおパル」
「うっす朝倉」
そこへ、朝倉や古菲も姿を見せた。
考えることは一緒だということだろう。
他にも、運動部4人組や、チア部の3人、鳴滝姉妹などがいる。
いつものように騒いでいるところへ、環は踏み込んだ。
まるで忍び込むようにして、ゆっくり、慎重にカラカラと扉を開ける。
「あ、御門さんだ」
「おや」
「・・・!」
見つからないわけは無い。
しかし、彼女たちと目が合った環は・・・
「しっ、失礼しましたっ!」
「ああっ、なんで逃げるのー!?」
ピシャッと扉を閉め、逃げ出してしまう。
気を取り直して、気まずそうに戻った環だったが、話の種にされてしまうのは必然か。
「珍しいねー? 今日はどうしたの?」
「いつもは来ないのにー」
「その・・・・・・お風呂場の蛇口が壊れてしまって、お湯が出なくてですね・・・」
「えー、なにそれー」
「災難だね〜」
湯船に浸かりつつ、会話である。
環が言ったのはこれだけであるが、それだけで、あーだこーだと話が盛り上がる。
「管理室に電話はしたの?」
「しましたが、修理は明日以降になるそうで・・・」
「それじゃしょうがないねー」
3−Aのテンションは、半端ではない。
それも、ここにいる面子が中心であることがしばしばなので、当たり前の光景である。
「じゃあ、お兄さんはどうするの?」
「ここ、女の子専用だし」
「シャワーは使えますから。兄さんはシャワーだけでも大丈夫な人ですので」
「そうなんだ」
「でも、シャワーが使えるなら、シャワーからお湯を溜めればいいんじゃないの?」
「・・・・・・・・・」
不意に、皆が固まってしまった。
言われてみればその通り。なぜ気付かなかったのか。
「わ、私としたことが・・・」
「ま、まーまーまーまー」
「落ち込まない落ち込まない」
ガックリと肩を落としてしまう環。
周囲は失笑を漏らしつつ慰めて、会話が途切れて間が出来る。
湯煙が漂う中、どこからともなく「ほぉ・・・」と息が漏れた。
「御門さんって、肌キレイだよねー」
「そ、そうでしょうか?」
再び、環へと矛先が向く。
「そうだよー」
「ツルツルしてそうだし、ツヤもいいし、すごい真っ白〜」
「スタイルも抜群だし、う〜らやましいな〜♪」
「うぅ・・・・・・そ、そんなに見つめないでください・・・・・・」
こういったことに慣れていない環。
視線を集中されて、思わず、自分の身体を隠すように抱き締める。
「ちなみにさ」
「朝倉さん?」
「転校してきた初日には聞けなかったスリーサイズ、訊いてもいいかなっ?」
「え・・・」
朝倉はここぞとばかりに質問。
環の顔はそれまでも赤かったが、余計真っ赤になる。
「おお、お教えできませんっ!」
「ケチ〜。まあでも、こうして環っちの全身を見られたわけだからね〜♪」
「う・・・」
舐め回すようにして環を見る朝倉。
思わず嫌な予感に襲われる環だったが、当たってしまう。
「私の長年の経験と勘によるスカウターによると、上から86・57・85と見た!」
「あ、朝倉さん!」
「おお〜」
「まさにナイスプロポーション!」
朝倉が言った数字に、周りからは歓声が上がる。
環が慌てたところからすると、当たらずとも遠からず、といった線だったのではなかろうか。
「ビンゴかな?」
「し、知りませんっ!」
「ウブだね〜♪ でも、中学生離れした体型であることは間違いなし。私が保証してあげる♪」
「・・・・・・貴女に言われても、説得力がありませんよ」
「ありゃ」
「そうだよねー」
「朝倉は、クラス4位の巨乳だからね〜」
そう言う朝倉自体が、中学生離れしているわけで。
何度も言うように、環は17歳なのでほぼ完成されているはずであるが、その上を行くのだ。
しかも・・・
(これで4位・・・)
一応、環も女の子。
朝倉の豊満な胸をチラリと盗み見て、気になるところであったりする。
「しっかし環っち。こりゃまた予想外にイイ身体してんだねぇ〜。
着痩せするタイプなの? 服着てたときは、これほどとは思わなかったよ」
ふむふむと満足そうな朝倉だ。
「私は・・・」
「ん? どしたい環っち?」
「ここに来るまで、多少なりとも、体型にはそれなりに自信があったんですが・・・
どれだけ自惚れていたかがわかりました。上には上がいますね・・・」
「まーまー、そう落ち込むなって。環っちも充分イケてるから♪」
「・・・・・・・・・」
「・・・あんな会話、してみたい」
「チクショ〜っ、羨ましくなんかないぞー!」
自分に自信の無いものは、閉口するか、妬みの視線。
その後も、わいわいガヤガヤと騒がしく。
(やっぱり、シャワーで済ませるべきでした・・・)
タイミングも悪かった。
まさか、これほどのクラスメイトに遭遇することになるとは。
気が休まるはずのバスタイムが、これではリラックスするどころではないと、
そろそろ出ようかと思い始めたとき。
カラカラ・・・
ぬる〜ん
誰にも気付かれないような小さな音で、扉がゆっくりと少しだけ開いて。
ドロドロした、いわばアメーバのような物体が侵入する。
無論、誰にも察知されてはいない。
(・・・・・・!)
環を除いては。
(何者・・・? いえ、今はどうでもいいですね。まず皆さんの安全を確保しないと・・・)
ザバッと立ち上がった環。
朝倉も認めたナイスバディが晒される。
「あれ、御門さん出るの?」
「ええ、お先に失礼」
「えー、入ってきたばっかりなのにー」
「もう少しいれば〜?」
「いえ、もう充分温まりましたし、失礼しますね」
侵入してきた物体が皆に近づく前に、広い湯船から出て。
脱衣所への扉へと歩き始める途中。
「・・・・・・不知火」
ボソッと小声で呟く。
変化はすぐに訪れた。
「うわー、なにコレー」
「すごい湯煙〜」
「突然なんだよー、何も見えないじゃんかー」
背後から、クラスメイトたちの声。
実際は湯煙ではなく、環が自らの霊力で作り出した、白い霧である。
妖狐は人を騙すこともある、幻術の使い手。
その血を引く環に、使えないということは無い。
「・・・さて」
準備は完了。
しばらくの間、クラスメイトには幻を楽しんでもらって、その間にカタをつける。
まさしく怪我の功名。
蛇口が壊れてこちらに来ていなければ、少なからず被害が出ていたことだろう。
「何者かは存じませんが、私がこの場に居合わせたこと、不幸でしたね」
ボッ!
環の手に炎が宿る。
それは”標的”に向かって放たれ、まさか攻撃されるとは思わず油断していた彼らへ、正確に命中した。
「ギャー!」
「熱い熱い・・・・・・もうダメ・・・・・・」
侵入者は3体。
トロトロの液体状だった物体は、炎に焼かれると擬人化した。
が、すぐに全焼して跡形も無くなる。
「なるほど。西洋でいう、スライムというものですか」
最初に直撃を受けた2体は、最後の一滴まで焼かれて、その場で消えた。
半分固体のようなものだが、炎は大敵。今回も例外ではなかった。
環は、残る1体に狙いを定め。
「・・・逃げるデス」
「逃がすと思いますか」
「アァー焼けるデス・・・」
炎を先回りさせ、焼く。
とある目的のために完全には殺さず、ミディアムレアな状態で留まらせる。
「ふぐっ・・・」
倒れていたスライムをむんずと掴み挙げ、環はそのまま脱衣所へ。
扉を閉め、誰もいないことを確かめると、スライムに向かって問いかけた。
「答えなさい。何者で、何が目的なんです?」
34時間目へ続く
<あとがき>
やっと、悪魔の”あ”の字くらいは見えましたかね?
スライムちゃんたちはヤツの配下だったみたいですから。
それにしても・・・
大浴場での会話はギリギリかなー?(汗)
以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!
>今までは原作キャラやイベントに兄妹が絡んでましたが、兄妹をメインにして原作キャラを絡ませるとか。
ご意見ありがとうございます。
オリジナルシナリオで、ということでよろしいでしょうか?
そうすると、ふむ・・・・・・本編とは無関係な、外伝的ストーリーや短編もアリですね。
>数あるネギま作品であなたのが一番面白いです!これからも頑張ってください!!
猛烈にありがとうございます!
そう仰っていただけるだけで幸せでございます。
>待ってたよ〜^^勇磨が活躍するなら1でも2でもいいでっす!
おおう、困ってしまうご意見が来た。(汗)
うーむ、主人公ですから、どうなろうと一定の露出はあると思いますよ。
>イエーーーーーィ オモシロスギルゼ!!!
感謝の言葉もございません。
今後もこのような評価を得られるよう、がんばります。
>感想はやめないで・・・
これは私に言われても・・・
アレを書いていたのは黒い鳩さんですので、どうしようもないです。
正直、私も楽しみにしていましたが、管理人の苦労たるや、大変だと思いますから・・・
>なんだかだんだんネギくんどうでもよくなっていきそうな勢いです
あう。主人公はあくまで御門兄妹ですから、致し方ないかと・・・
一応原作沿いなので、まったく出番が無くなるということは無いと思いますが、
扱いは小さいでしょうね・・・
代理感想を任されました、火焔煉獄です。
さて、今回は嵐の前の静けさ、と言ったところですね。
テスト勉強という学生さんは決して避けて通れぬ道。
風呂(蛇口というあたりなんかいい)が壊れるという王道的パターン。
肩口だけというちょっぴり想像をかきたてられる微エロス!
期待を裏切らない入浴シーン!!
さらには環のスリーサイズっぽいもの公開!!!
いや、ほんと堪能させていただきました(マテ
けれど、ここからだんだんと非日常へと変わっていくのでしょうね。
御門兄妹に対してあの悪魔がどのような手段でくるのか?
ネギと悪魔の確執に二人がどう影響してくるのか?
今から楽しみにしています。
毎度のことながら、こんな電波な感想でいいのかと思いつつ今回はここらで失礼します。