魔 法先生ネギま!
〜ある兄妹の乱入〜
36時間目 「悪魔がやってきた! そのご」
「失礼、お嬢さん。少々お騒がせするかもしれない。
そちらの少年に用があるのでね」
「・・・あの子に?」
応対に出たあやかは、不信感を抱かずにはいられなかった。
どういう用があるのか、どういった関係なのかと思う前に、何より、
黒いコートに黒い帽子の大男という、見た感じがかなり怪しい感じだったからだ。
「いえ、なに・・・。美しいお嬢様に、花を一輪と思いましてね」
「え・・・まあ・・・・・・」
が、やってきた大男は帽子を取ってみると、初老の紳士という感じで。
さらにはさわやかな笑みを浮かべ、綺麗な花を差し出してきたものだから、
あやかは思わず息を飲んだ。
「え・・・?」
しかし、異変はすぐに訪れる。
急に眩暈を感じ、意識が遠くなっていくと思ったら
「あ・・・・・・ら・・・・・・?」
その場に崩れ落ちてしまう。
本人には、自分がどうなったか、把握する時間すらなかったことだろう。
「失礼・・・」
あやかが倒れたのを確認すると、大男はわずかに開いた隙間から、ドアガードに指をかけると、
すさまじい力で無造作にへし折ってしまった。
「やあ、狼男の少年。元気だったかね?」
「な・・・」
そのまま室内へと押し入り、小太郎に向かってそう話しかける。
「お・・・おまえは!?」
驚く小太郎。
この2人は知り合いなのだろうか。
「がっ・・・」
居合わせた千鶴や夏美が、そう問い合わせる間もなく。
小太郎は大男が振るった拳によって吹き飛ばされ、クローゼットに激突した。
「さて少年、『瓶』を渡してもらおうかな?」
「きゃああ!?」
「・・・!?」
遅れて夏美から悲鳴が上がり、さしもの千鶴も、この状況には驚きを感じざるを得ない。
「我々の仕事の目標はネギ少年だが・・・
その瓶に再度、封印されては元も子もないのでね」
「ぐっ・・・」
叩きつけられた小太郎は、受けた衝撃の影響も覚めないまま、気になる単語を反芻する。
「瓶・・・? ネギ・・・? ネギやて?」
「そうだ。思い出したかね」
「失礼ですが」
そんなやり取りに割って入る人物。
隣にいる夏美が怯えきっているのとは対照的に、千鶴は、非紳士的な行為を正面から指摘した。
「おや。これは失礼、お嬢さん」
意外にも、素直に受け入れる大男。
謝罪して帽子を取り、名乗りを上げる。
「私は、ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン伯爵。
伯爵などと言っているが、没落貴族でね。今はしがない雇われの身だよ」
さらに千鶴に対して、願い事はないかと尋ねてみるが、はっきりと拒絶された。
「金髪の姉ちゃんに何したんや」
「なに、眠ってもらっただけだよ」
その間に、小太郎が回復。
「さて・・・・・・瓶を渡す気になったかな?」
「何のことかわからんわ。それに、例え持ってたとしても、あんたには渡さへんけどな!」
「ふむ」
啖呵を切って、逆にヘルマンへと飛び掛った。
だが、相手のヘルマンは、身じろぎひとつせずに、小太郎の突進を受け止める。
激しい格闘戦の応酬となるが、優劣は、戦っている当人が1番良くわかる。
(速くて重い・・・。強いわ、このおっさん)
もしかしたら、自分よりも強いかもしれないと感じた。
しかし、この小太郎が、だからといって怯むわけもなく。
「おとなしく瓶を渡してくれれば、君を傷つけずに済むのだがね」
「やれるもんなら、やってみい!」
ヘルマンの言いようにカチンとさせられて、さらに向かって行くのだ。
影分身を駆使して、ヘルマンへ一撃入れることに成功する。
「ぐむ・・・」
「余裕ぶっこいとるからやで、おっさん。これで終わりや! 狗神!!」
とどめを刺そうと、必殺技を出そうとするも。
何も起こらない。
「うむ、すばらしい。やはり思った以上に見込みがあるな、君は」
その隙を衝かれ、腕を取られてしまう。
「しかし残念ながら、術を使えないことは忘れたままだったようだね」
「ぐあっ!」
強烈な一撃が小太郎へ入った。
そのままひれ伏してしまう。
「前途有望な少年の未来を閉ざすのは、本意ではないのだが・・・」
小太郎、危うし。
「恨まないでくれたまえ」
ヘルマンの口が開いて、何かが光り輝く。
小太郎にとって、絶望の訪れであることは明らかだった。
「そこまでです!」
「うぬ? ・・・がっ」
刹那、誰かが飛び込んでくる気配。
振り返ったヘルマンの顔面を捉える拳。
「何者かは存じませんが、私が来た限り、あなたの好きにはさせませんよ」
「みっ・・・? 御門さん!?」
突然の乱入者。しかも見覚えがある。
思わず夏美が叫んだとおり、環だった。
「そうか、なるほど・・・」
殴られた勢いで尻餅をついていたヘルマン。
環の姿を確認して、一人心地に頷きながら、立ち上がった。
「君か。スライムたちをやったのも君かね。先ほど連絡が途絶えた」
「だとしたら、どうします?」
「いや、どうもせんよ。やることは一緒だからね」
「そうですか。では、止めさせていただきます」
呆気に取られている周囲を尻目に、戦闘態勢に入る2人。
どうやらヘルマンは、環の存在を、あらかじめ知っていたような感じである。
「じゃ、邪魔だてすんなや!」
「・・・は?」
その様子を、ただ見ているだけでは済ませられない者が1人。
小太郎である。
「こいつは俺の戦いや! いきなり出てきて、横槍入れるな!」
「あなたは・・・」
「え? あんた・・・」
ここで初めて、環も小太郎も、お互いの存在を認識した。
そして、見覚えのあることにも気付く。
「犬上小太郎、と言いましたか」
「京都で会った、髪の長いねーちゃんやんけ!」
「なぜあなたがここに」
「そいつは俺のセリフやねーちゃん!」
「・・・まあ、詳しいことは後にしましょう」
突っかかってくる小太郎に、環は小さく息を吐いて。
このままではどうにもならないと、そう提案する。
「見た感じ、アレが共通の敵だということでしょうから、とりあえずヤツを倒します」
「・・・そやな」
小太郎も理解したのだろう。
自分だけでは、少なくとも、苦戦は免れないわけで。
味方であれば、頼もしいことは間違いないのだ。記憶を失っているはずだが、それはわかった。
頷くと、いささかも衰えない闘志で、ヘルマンを睨みつけた。
「共闘、というわけかね? よかろう」
ヘルマンも応じる構えを見せる。
「小太郎さん。とどめは私が刺しますから、あなたのスピードで撹乱と援護を・・・」
「しゃらくせえっ! 俺が決着つけたるわ!」
「こ、こら!」
環の言うことも聞かず、即座に突進してしまう小太郎。
先ほど敗れかけたというのに、この所業。
結果は見えている。
「せっかくの援軍だというのに、馬鹿だね君は」
「ぐわあっ!」
攻撃はさらりとかわされ、逆に攻撃を受けてしまう。
これまでのものとは比較にならない、重い一撃だった。
「が・・・」
それだけで、幼く未熟な小太郎にとっては、致命的。
身動きできなくなってしまった。
「もはや同情は出来んな。自分の愚かさを呪いたまえ」
今度こそと、とどめを刺しに行くヘルマン。
「だから言ったでしょう!」
小太郎のピンチに飛び出る環。
別に、助ける義務や義理など無いはずだが、身体が勝手に反応していた。
「せえっ!」
「君も、若いのになかなかの腕前のようだ。いいね」
「く」
飛びかかった環の一撃も、ヘルマンは軽くかわし。
「実にいいが、君は危険だ。
本当は、もう1人と一緒に、早々にご退場願う予定だったんだがね」
「もう1人? それは・・・」
直感的に悟る。兄のことだと。
やはり思ったとおり、勇磨の前にも、何者かが現れたのだ。
「少し狂ったが、おとなしくしていてもらおうか」
「な?」
「むんっ」
「・・・! こ、これはっ・・・」
ヘルマンが手をかざすと、環の周囲にピンク色の霧状の物体が出現。
彼女にまとわりつくようにして接近、包み込む。
「しまっ・・・・・・ぐ・・・・・・」
途端、環の様子がおかしくなった。
毒ガスに巻かれたように苦しみ始め、立ってもいられないのか、ガクッと膝を落としてしまう。
「これは・・・・・・『魅了』の・・・・・・」
”弱点”を見事に突かれてしまった。
自分たちは妖狐との混血であるがために、属性としては『魔』に近い。
よって、その類の攻撃には耐性が無く、わりと簡単に引っかかってしまうのだ。
もちろん注意を払ってはいるが、不意では対処しきれない。
相手が悪魔、魔族だということが最初からわかっていれば、結果は違っただろうか。
頭脳派の環としては、初歩的なミスであった。
「に、にいさ・・・・・・・・・ごめ・・・・・・さ、い・・・・・・」
環は、最後にそう呟いて、床へと倒れこむ。
身動きひとつしない。気絶してしまった。
「とはいえ、小太郎君といい、大変気に入ったよ。一緒に来ていただこうかな」
妖しい笑みを浮かべるヘルマン・・・
「いいんちょさん!?」
そのとき、異変を感じて飛び出してきたネギがやってきた。
玄関先で倒れているあやかに驚くが、寝ているだけだと知って安心したのも束の間。
「きゃああ!!」
「村上さんの声?」
轟いた夏美の悲鳴。
急いで奥へと走る。
そして、見たものは――
「やあ、遅かったね。ネギ・スプリングフィールド君」
「な・・・」
黒い大男、ヘルマンの姿。
さらには・・・
「え? た、環さん!?」
ヘルマンに抱き上げられた環。
ネギは混乱する。
(環さんが? ま、まさか、環さんほどの人が・・・)
現状を見るに、環がヤツに敗れた、としか見えないではないか。
いったいどうしたというのか? あれほどの強さを持った環が・・・
いや、それよりも、あいつはそれほどに強いのか?
パニックになっているネギへ、ヘルマンは言い放った。
「少し予定よりも少なくなってしまったが、君の仲間を思われる3人をすでに預かっている。
無事返して欲しくば、私とひと勝負したまえ」
「え・・・!?」
「なんだと!?」
これには、ネギも一緒にいるカモも仰天した。
さっぱり事情を飲み込めない。
「学園中央の、巨木のあるステージで待っている。
仲間の身を案じるなら、助けを請うのも控えるのが賢明だね」
ヘルマンはそう言い残すと、あの白髪の少年がやったような”水のゲート”を使い、
転移して消えてしまった。もちろん、環を抱えたままで。
「ネ・・・ネギ先生・・・」
「村上さん! 大丈夫ですか、何があったんですか!」
「わわわ、私にも何がなんだか・・・」
ネギは、最初からいたと思われる夏美へ問いかけるが、
半べそ状態の夏美もパニックに陥っており、状況を掴めない。
「そそ、そうだ、ちづ姉は・・・」
「那波さんは無事です!」
千鶴は脇に倒れていたが、外傷も無く無事のようだ。
おそらくはあやかと同様、眠らされただけだと思われる。
「で、でも、御門さんが・・・」
「環さん・・・」
しかし、環は連れ去られてしまった。
重くのしかかる事実。
「オイ兄貴、こいつは」
「・・・え? あ」
そして、カモの指摘で気がついた、小太郎の存在。
小太郎は、ヘルマンの一撃によって気を失い、その場に倒れていたのだ。
「小太郎クン! しっかりして!」
「ネギ・・・?」
意識を取り戻し、うっすらと目を開け、ネギの姿を確認した小太郎は
「あーーーっ、ネギ!!」
ガバッと身体を起こした。
心配するほどの怪我は無い模様である。
「う・・・・・・俺はいったい・・・。そや、思い出した。おまえはネギ、ネギや・・・」
記憶も取り戻したらしい。
「そうか、くそ・・・・・・俺、記憶を飛ばされてたんか・・・。
無関係のちづる姉ちゃんや、あのねーちゃんを巻き込んでもーた・・・」
「那波さんは無事ですよ。でも、環さんは・・・
他の僕の仲間も、何人か捕まったらしいんだけど・・・」
しばし、状況を整理する時間を持つ。
そもそもの始まりは、小太郎の来訪による。
「ネギ。この瓶なんやけど」
そう言って、小太郎が髪の中から取り出した小さな瓶。
表面に五芒星が描かれている。
「この瓶があれば、呪文を唱えるだけで、ヤツラを封じられるはずや。おまえに預けとくわ」
「え、そうなの?」
「ああ。ここに来る前に、あのおっさんからかっぱらったんや」
ヘルマンが小太郎を追ってきた理由は、そういうわけか。
そういえばそんなことも言っていた。これは切り札になりうる。
「とにかく、みんなを助けに行かなくちゃ!」
「おうっ、俺も行くわ」
特に、小太郎の決意は固い。
「無関係な人を巻き込んだばかりか、髪の長いねーちゃんが攫われたんは俺の責任や。
熱くなってねーちゃんの助言を聞かず、無理に飛び出してやられそうになった俺を庇ったばかりに、
ねーちゃんは、なんや、ピンク色の煙に呑まれてもうて・・・・・・やられてしもうた」
「小太郎君・・・・・・そうだったんだ」
環がやられてしまった理由も判明。
普通なら、そんなことにはならないと、自信を持って断言できるくらいなのだ。
不謹慎だが、少し安心した。
万全なら、あんなヤツにも負けない。
「助けてくれたちづる姉ちゃんたちに迷惑かけたし、京都での一件のこともある・・・
俺も行く!!」
「わかった」
「よっしゃ」
「き、気をつけてね」
まだ、何がなにやらわかっていない様子の夏美を置いて、2人はネギの杖に跨って跳び出て行った。
夏美には気の毒だが、こればかりは、詳しく知りえないほうがいいだろう。
所変わって、勇磨の様子。
「アデアット!」
召喚の呪文に応じて、彼のアーティファクトが具現化する。
光が収まったとき、それは、勇磨の右手に握られていた。
「これは・・・」
ひとふりの両刃剣。
しかし、単純な西洋剣という形状ではない。
「まさか・・・」
この形には見覚えがあった。
そう。この世界にやってくる前の、元の世界で。
全体の長さとしては、1m弱。
80から90センチ、といったところだろうか。ここは特筆すべき点は無い。
柄までの部分はいい。ここまでは、他の古代剣とも共通する部分だ。
問題は、刃のある、刀身の部分。
柄に繋がる部分は広くなっており、先に行くほど狭くなって行く、山型のような感じ。
それだけでは飽き足らず、先端部分はもう1度膨らんでおり、トランプのスペードのような形で、
切っ先へと至っている。
「天叢雲だというのか!?」
驚きは絶えない。
前の世界でもお世話になったものが、今こうして、手の中にある。
縁を感じるというか、なんというか。
「だがまあ、こいつがあれば百人力!」
いつも使っている日本刀とは勝手が違うが、なんといっても、三種の神器のひとつに数えられる神剣である。
前の世界でも使っていただけに、振るい方も心得ている。
なにより、武器を得られたという安心感。
「さあ来い!」
『グルルゥ』
残る3体のケルベロスへ向けて、ここからが本番とばかりに言い放ち。
飛び掛ってくる1体を前にして、感触を確かめるように、1度、剣を横に薙いだ。
瞬間。
斬ッ!!
「・・・え?」
剣を薙いだ軌跡に沿って、空間に切れ目が出来た。
勇磨も驚いたが、目の錯覚でも、妄想でもない。
そこには確かに、何も無い虚空を引き裂いた、空間の断裂が起こっているのだ。
その向こうは亜空間なのか、違う次元なのか、なんとも言えない灰色の空間となっていた。
「・・・・・・・・・」
唖然としていたのも、ほんの一瞬の出来事で。
『グルァッ!』
「うわっ!」
突進してきたケルベロスに押し倒される格好となった。
(な、なに?)
これにも驚いたが、もっと驚いたことがある。
ケルベロスが飛び掛ってきたことは知っていたが、自分に到達するのは、もっと後のことだと思っていた。
自分の間合いくらい把握していなければ、剣士などやっていられないし、それだけの距離がまだあったのだ、確かに。
それが、空間の割れ目が閉じた瞬間、ケルベロスとの距離が一気に縮まり、一気に飛び掛られる形になったのだ。
そうでもなければ、こんなだらしなく、押し倒されたりはしない。
(文字通り、空間を”斬った”ということなのか・・・?)
アーティファクトには、各個それぞれ、特殊な能力があるという。
話半分に聞いていたことだったが、思い出さずにはいられない、特別な状況に陥った。
天叢雲の力で、文字通り空間を切り取り、切り取られた分の空間が消滅。
消滅した分だけ空間が縮まったことから、開いていたはずのケルベロスとの距離も、縮まったと。
・・・こういうことなのだろうか?
『ガアッ!』
「・・・! いつまで乗っかってる!」
『ギャイン!』
が、またしても、呑気に考えているヒマは無い。
ケルベロスの大口が目の前にあったわけで、剣の柄を使い、頭のひとつを思い切り殴りつけた。
悲鳴を上げて、たまらず離れるケルベロス。
「・・・何はともあれ」
立ち上がった勇磨は、誰に聞かせるわけでもなく、呟いた。
「やるっきゃない!」
引き続き、VSケルベロス3体。
目の前を、牙を剥き出しにしながらこちらを睨みつけ、ウロついている。
(やる、とは言ったものの・・・)
睨み返しつつ、勇磨は考えた。
(気をつけないと、”危うい”からなあ)
召喚したアーティファクト、『アメノムラクモノツルギ』。
エヴァが驚いていたのも当然だ。
彼女はそれなりに日本についても詳しく、当然、この剣のことも知っていたのだろう。
どうやら、”空間を斬る”というとんでもない能力を秘めているらしく、扱いが非常に難しい。
何も考えずに振るってしまうと、先ほどのように、自身が不利になってしまうこともありえるのだ。
日本神話において、日本武尊の東征に従った天叢雲は、罠にはまり炎に囲まれて離脱不能に陥った主を、
周囲の草を薙ぎ払うことで救っている。『草薙剣』と名を変える由来となった一件だ。
このときのことも、空間を斬る能力が発現して、炎を次元の彼方に消し去ったのかもしれない。
絶大な威力であるだけに、考えて振るわないといけない。
『ガァッ!』
そうこうしているうちに、1番近くにいた1体が飛び掛ってきた。
先ほども飛んできて、ひっぺ返されたヤツである。
「ああっ、振るいたいのに振るえないこの状況!」
剣があるのに、振るえない。
イライラというか、ウズウズしながら、勇磨はこれを回避。
『グルゥッ!』
『グガァッ!』
続けて、2匹目3匹目が飛んでくる。
ガッ!
「くっ」
1匹は回避したが、もう1匹には、剣に噛み付かれた。
ピンチのようだが、これは逆にチャンス。
『グゲッ!』
左手を伸ばしてケルベロスの喉元を掴んで、一瞬だけ霊力を解放。
ひっくり返して地面に叩きつけた。
「まず1匹!」
『ギャアッ!』
押さえつけた体勢のまま、天叢雲で胸を一突き。
三種の神器の一撃は伊達ではなく、断末魔を残して、ケルベロスAは昇天した。
『グルゥッ!』
『グガァッ!』
残りは2体。
「・・・む」
ちょうど直線状に2体が重なっている。
絶好のチャンス到来だ。これを逃す手は無い。
今こそ、”アメノムラクモノツルギ”の力を解放させるとき。
「これで終わりだ!」
懐かしい感触を肌で感じながら。
思いを込めて振るった。
斬!
振るった軌跡に沿って、空間が断裂。
不気味な灰色を覗かせる開いた裂け目に、ケルベロスは2体とも呑まれていった。
叫びを残す時間すら与えない。
数瞬ののち、空間の裂け目は、何事も無かったかのように閉じていった。
「・・・ふぅ」
ようやく撃退できた。
安堵の息を吐く勇磨である。
思ったより苦戦させられたが、やはり、武器は大切だ。
刀を置いてきたことこそ大失態。もしかしたら、人生で最大の失敗かもしれない。
これ以上のことは出てくるだろうか。
いや、あってはならないのだが。
「って、和んでる場合じゃない!」
そうだった。
ケルベロスは撃退したが、事件自体は、まだまだ何も解決していないのだった。
「急げ!」
環や、寮のみんなのことが心配だ。
勇磨は踵を返し、来た際に辿った道を戻っていった。
37時間目へ続く
<あとがき>
はい。環が千鶴の身代わりとなりました。
数少ない千鶴の見せ場なのに・・・。ごめんよちづ姉・・・(2回目・・・
そして、勇磨のアーティファクト登場!
とんでもない能力を付けちゃいましたが・・・・・・いいのかな、これ?(汗)
自分でやっといてなんですが、ものすごく使い道が限られそうだ。
煉獄さんへ
ケルベロスの件は、私の明らかな記憶違いと確認ミスです。
やはり確認はきちんとするべきですな・・・
今さら変えられないので、このまま続けさせてください。(汗)
メジャーだから、という理由だけで選ぶものではありませんです、はい・・・(大汗)
ちなみに、私も、某メイドロボと似ていると思います。(どうでもいい罠)
以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!
>毎回楽しみに見せていただいてます。これからもがんばってくださいw
いえす、がんばりまする!
>がんばです!ふぁいとです!次も楽しみにして待ってますよ〜!!
楽しみにしていただいている方が多くて、ホントにもう、うれしいやらプレッシャーやら(え?
とにかく、がんばります〜。
>間違いを見つけたので訂正を。ケルベロスは頭部が3つです。2つではオルトロスになってしまいます。
おおう、とんでもない間違いをしていた! 煉獄さんにもツッコまれたよ・・・
ええと、すでに投稿した分を訂正するのは、お忙しい黒い鳩さんの手間にもなりますので、
補完してお読みください・・・
>いつも、楽しみにしています。
毎度どうもです。
これからも楽しいと言っていただけるよう、がんばります。
>ゴーゴーハーレムフラグゥーー
そ、そこまで期待されてしまうとアレですが・・・
確実に、獲得競争は激しさを増して行くと思います、はい。
>ハーレムは男の夢実現してこそ漢だ!
そうですそうですね!
ただそのー、そこまでの過程が大事で、厳しいわけで・・・(汗)
あーもう、ホントにハーレムルートになっちゃいますよ
どこ までもやってくれぜ我らがハーレム王!
まぁー さか日本でも有名な天叢雲剣を手にするなんて予想外ッッ!!
ビ クッ!!(変なテンションに一歩下がる)
どん どん突き進めハーレム王! そこにしびれる、憧れるゥ!!
い、 いやーっ!!(ポルターガイスト発動)
あべ し!? ひでぶ!? あじゃぱ!? さまんさ!?
天 は、ワシがいらぬと言うのかー!!(意味不明
ぜー…… ぜー……あ。大丈夫ですか?
(返事がない。ただの変死態のようだ)
え、 えーっとその……(カンペ渡される)
これ の通りに読めばいい? はあ、わかりました
主人 公はピンチにパワーアップするというお約束を見事に踏襲してくれた我らが勇磨君
次元 を切り裂く刀を手に、どこか危ない人のような発言も主人公の魅力引き立てるイイスパイスになっています さらに、悪 魔のオジサンが無敵と思われた御門兄妹を手玉にとっちゃうなど、ただの主人公最強主義にならない点もいいですよ
勇磨 くんは文字通りかませ犬と化したケロちゃんズを倒し、囚われの姫君たちの元に急ぐ主人公の座を忘れない大活躍
これ からもがんばってください
P.S. 感想遅れてごめんなさい
以上 です。では、今回はここでさようならです〜
舞台裏にて
つーかあれだよね、空間切り裂いて距離を縮めるってザ・ハンド
知らない人は近所のジョジョマニアか、第四部を見てみるように