魔 法先生ネギま!
〜ある兄妹の乱入〜
38時間目 「悪魔がやってきた! そのなな」
「さて、そこの腐れ悪魔。受けた屈辱は何倍にもして返してあげましょう。
”この”私を前にした以上、もはや往くことも退くことも叶わぬと心得なさい!」
ドンッ!!
言い切るのと同時にヘルマンを睨みつけ、黄金の輝きがさらに光を増す。
同時に環から突風が発生。目を開けていられないほどの衝撃を伴った。
「く・・・」
ヘルマンは今度こそ焦る。
人質として意味を成さなくなったことに加えて、このパワー。
「君はただの人間ではなかったのだな。混血か・・・」
「その通り。今ごろ気付いたんですか? おめでたい方ですね」
鼻で笑う環。
自分の正体を知っていたからこそ、事前に手を打ち、ああいう手で拘束を図ったのだと思ったが。
なんてことはない。
自分で言っていた通り、邪魔になるからというだけだったのだ。
「環姉さん!」
驚きはあったが、これほど頼もしい味方はいない。
カモは叫んでいた。
「アスナの姐さんの胸元にあるペンダント! そいつを取ってくれ!」
「ペンダント?」
「ああ! あれのせいで魔法が効かねえし、姐さんにも負担がかかってる!」
「・・・なるほど」
アスナの表情を見て納得。
負担になっているというのも間違い無さそうだ。
「やらせんよ。ケルベロス」
『グガァッ!』
すかさず、ヘルマンは命令を発した。
ケルベロスが突進してくる。
「姉さん!」
「たまちゃん!」
「ご心配には及びません」
カモとこのかの悲鳴が轟くが、当の環は余裕綽々で。
冷静に、素早くケルベロスの正面に回り込むと、おもむろに右手を差し出した。
「雑魚は引っ込んでいなさい」
ドンッ!!
最後の叫びを上げる間もなかった。
ケルベロスは、環の手から発せられた黄金の”何か”に呑み込まれて、文字通り”消滅”したのだから。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ぬぅ・・・」
カモとこのかは声すら出せず。
ヘルマンでさえ、苛立ちげな声を漏らす。
「これですね」
その間に、環はアスナへ歩み寄って、目標物を確認した。
無理やりちぎり取る。
「た、環・・・」
「もう少し我慢していてください。すぐに終わらせますので」
「う、うん・・・」
黄金化しているのを実際に目にするのはコレで2回目だが、有無を言わせぬ迫力である。
間近で見ているからなおさらであり、逆に穏やかな表情であることが恐ろしい。
アスナは言われるまま、頷くしかなかった。
「・・・まあいい」
人質を解放され、ペンダントさえも奪われてしまったヘルマン。
さらに慌てているのかと思いきや。意外なことに、冷静さを取り戻していた。
「これは取り返したからね」
「・・・あ!」
「しまった、瓶を!」
彼の右手にある物体がその原因。
紛れも無く封魔の瓶で、ネギと小太郎は声を荒げた。
一瞬、目を離した隙に、奪われてしまったのか。
「ふん」
バキバキッ
「あーっ!」
封魔の瓶は、ヘルマンの手の中で粉々に砕け散った。
もはや使用不能。
「なにしとんのや! アレがなくなってもうたら」
「お静かに」
「そんな呑気なこと・・・・・・」
特に小太郎の怒りは激しかったが、環に声をかけられ、環の表情を見た途端、黙らされた。
彼女の表情がそれほど鬼気迫るものだったためだからであり、底知れぬ恐怖を覚えたためである。
「あのようなものなど無くても、私が打ち倒して見せます。
プライドを木っ端微塵に粉砕し、己の無力さを嘆くことになるまでね。フフフ・・・」
「た、環さん・・・」
「ねーちゃん・・・」
思わず背筋を凍らせてしまうほどの、冷たい笑みだった。
どちらが悪魔か、わからなくなってしまうほどの妖しさ、恐ろしさ。
彼女の正体を知るネギは、さすが、血の成せる技は違うと感じたほどだ。
「手出しは無用。間違って飛び込んできても、手加減は出来ませんよ。フフフ・・・」
「は、はい!」
「・・・・・・」
問答無用で頷かされる。
今の環に逆らってはいけない。
それほどの静かな怒りと、強烈な殺気を感じる。
間違って、彼らの間合いへ踏み込みでもしたが最後。
彼女の言うとおり、敵味方の区別など関係なしに、打ち滅ぼされてしまうに違いなかった。
(俺と戦ったときなんて・・・・・・実力の幾分も出してなかったんやな)
小太郎も、思うところがあったらしい。
京都で、実際に拳を交えたことからもわかる、改めて実感した実力差。
(・・・これは、目に焼き付けておかねばあかん!)
思わず拳に力が入る。
情けないことに、環にひと睨みされて震えてしまったが、この戦いはきちんと見届けなくては。
何が起ころうとも、しっかりと、脳に記憶させておかなければならない。
そうでもないと、2度と、彼女の前には立てない気がした。
「さて、悪魔さん。終わらせましょうか」
「ひとついいかね?」
「なんです? 命乞いの類ならば受け付けませんが」
ジッとヘルマンを見据え、言い放つ環。
並みの者なら、視線を受けただけで卒倒してしまいそうなものだが、そこは曲がりなりにも悪魔である。
ヘルマンも、正面から対峙しつつ、問い返す。
「私にも、ヘルマンという立派な名前があるのでね。没落したとはいえ伯爵位を持っている。
悪魔、悪魔と呼ばず、名前で呼んではくれんかね?」
「伯爵閣下、とでもお呼びすればよろしいですか?」
「うむ、いいね」
「では・・・」
トン、トンとステップを踏む環。
これに応じ、ヘルマンも腰を落として身構えた。
「御門環、参ります!」
一瞬だった。
目にも留まらないほどのスピードで、環は一気に間合いを詰める。
(速いッ!)
誰もがそう思ったことだろう。
無論、ヘルマンもその1人であったが
「はあっ!」
「ごふっ・・・」
直後に鈍い衝撃を感じたために、その先の思考は成されていない。
「がっ、ごあっ・・・」
続けて、2発3発と攻撃を受ける。
顔面に、みぞおちに、打撃の嵐。
ヘルマンは成す術なく、環にされるがまま。
「す、すごい・・・」
「・・・・・・」
ただ見つめるしかないネギは、そう漏らすことが精一杯で。
小太郎も目を見開いたまま、声を出せなかった。
バキッ!
「ぐわっ!」
今もまた、ヘルマンは強烈な一撃を受け、吹き飛ばされた。
一瞬だけ思考力が戻る。
(すさまじいまでのパワー、スピード、そして技のキレ・・・。
これほどとは・・・)
自分でも不思議に思ったが、笑ってしまった。
(だが・・・・・・・・・簡単には終わらんよ!)
人間形態から、悪魔形態へと移行。
同時に、口元へとエネルギーを充填していく。
「・・・!」
これには環も気付いて、はたと足を止めた。
今からならば、充分に回避が可能である。
「喰らいたまえ!」
強力な魔力砲が発射される。
それは一直線に環へと向かう。
「・・・・・・」
しかし、環は突っ立ったまま、微塵も動こうとはしなかった。
このままでは直撃。
「環さん!」
「な、なにしてんのや!」
「・・・小賢しい真似を」
退避を促す声がかかる中、環は一言だけ、そう呟いて。
迫りくる閃光に、真っ向から挑んだ。
「はあああ!」
ケルベロスを倒したときのように、右手を前に差し出して力を込める。
目を開けているのも辛くなるほどに、彼女の輝きも光を増した。
刹那――
ドンッ!!
ヘルマンの放った光は、環の右手を捉えた。
鈍い音がして、ずり・・・と、環の身体が、わずかに後方へと滑る。
だが、それだけであった。
「な・・・!?」
「受け止め・・・た?」
「なんと!?」
それぞれから、驚愕の声が飛び出る中。
「はあっ!」
環がよりいっそうの力を込めると、光は最大限に強まって。
もはや正視してはいられず、一同が目を押さえ、光が収まるのを待って目を開けたときには、もう・・・
静けさを取り戻していた。
「あ、あの攻撃を、右手1本だけで・・・・・・防いでもうた」
「や、やっぱり環さんはすごいや」
「・・・・・・」
ネギは無邪気に、環の強さにはしゃいでいるようだが。
小太郎はとても喜べたものではなかった。
目指すべき目標が遠のいたのと同時に、はたして自分が、そこまで辿りつけるのかどうか・・・
という不安に襲われる。
(・・・なに弱気になってんのや自分!)
とはいえ、そこで音を上げる小太郎ではない。
(辿りつけるのか、やない! ”辿りつく”んや、絶対に!)
そう思うと、自然に身体が震えた。
先ほどの恐怖でのものや、決して絶望してのものではない。
武者震い、というヤツである。
「ヘルマン伯爵。あなたの実力はこんなものなんですか?」
「・・・正直言って、驚いているよ」
視点を、戦っている2人へ戻そう。
すでにダメージがありありと見えるヘルマンは、屈辱的な言葉を受け入れた。
「君ほどの使い手が、なぜこれまで1度も、話題にすらならなかったのか」
「詮索は無用に願います。私は今、ここにいる。それが事実であり、すべてです」
「確かにな」
おかしそうに笑うヘルマン。
自嘲しているのだろうか。
「もし本気で私を倒そうというのなら、伯爵などともったいぶっていないで、
素直に大公爵を呼んできなさい。相手になってあげますよ」
「はっはっは。ハッタリでもなんでもなく、本当だと思えるから不思議だ」
魔界での序列における、最高峰を呼んでこいとの豪語。
普段なら一笑に付すところであるが、現実として、本当にそうでもしなければ、
いま目の前にいる少女を倒すことは困難だろう。
伯爵であるヘルマンをもってして、そう思わせてしまうほどの強さ。
「やれやれ・・・。調査偵察が任務なのだが・・・・・・見逃してはくれないだろうね」
「当然です。私が受けた屈辱は、まだまだこんなものではありませんよ」
言い終えるのと同時に、環から白い霧状のものが噴出した。
これは瞬く間に周囲を覆ってしまい、1m先も見通せなくなってしまう。
「うぬ・・・?」
「己の無力さに絶望しなさい。フフフ・・・」
どこからともなく、不気味に響いてくる声。
少し先の未来において、現実のものとなる。
「妖術・・・・・・幻術かね。
君の正体だが、おぼろげながらも見えてきた気がするよ」
「今さら私の正体に気づいたところで、無駄なことですよ。
なぜなら、この幻惑の世界に取り込まれた時点で、あなたの命運は尽きているからです」
「ぬう・・・」
「フフフ・・・。ほ〜ら、いきますよ」
「・・・!」
ヘルマンの正面に環が現れ、接近してくる。
幻だとはわかっているが、放置したらしたで攻撃を受けることは明白。
やむなく攻撃するヘルマンだったが、もちろん環の幻は四散して消えた。
「どこまで捕捉できるか楽しみですね。フフフ・・・」
「く・・・」
「だんだん増やしていきますよ。そ〜ら、2人、3人・・・」
「ぐう・・・」
同時攻撃に来る人数が、段階的に増えていく。
また、単に増えるのではなく、出現箇所やパターンが変わるのだ。
いっぺんに出てくるのが、3人だった次は6人になったり、その次は4人に減ったり。
近接攻撃のみではなく、炎が飛んできたり、時間差があったりと、バリエーションには限りが無い。
少なくとも、法則性を見つけることは難しい。
「ぐがあっ!」
そしてついには、ヘルマンでも捉えきれずに、直撃を受けることになる。
「フフフ、もう終わりですか。無論、情けをかけるつもりなど毛頭ありませんので、あしからず」
「がああっ・・・!」
まさにタコ殴り状態。
もはやヘルマンに反撃できるだけの余力も気力も残されておらず、立ち上がることすら出来ない。
「フフフ・・・」
ヘルマンの周りに現れる、冷笑を浮かべた環の集団。
とどめとばかりに、9人総出演である。
「魔界でもなく人間界で、しかも、混血とはいえ人間に、
こうまで成す術なく敗れる気持ちは、いかがですか?」
「・・・おかげさまで最高だよ」
「フフフ・・・・・・聞くまでもありませんでしたね」
これ以上ないかというくらい、屈辱的な問いを投げかける。
答えは、充分に満足できるものだった。
「それでは、滅んでいただきましょう」
パチっ、と指を鳴らす。
「天狐流妖術の極み。幻想・九星乱舞!!」
9人の環が、それぞれに異なった最高の技を伴い、特攻する。
あるものは炎を纏い、あるものは刀を構え、あるものはその両方・・・
ヘルマンは、それこそ文字通りに、完膚なきまで叩きのめされた。
「ぐはっ・・・」
「・・・!」
白い霧が晴れ、再び視界が効くようになって初めて、ネギたちが目にしたものは。
仰向けにぐったりと横たわるヘルマンの姿だった。
「か、勝ったんか・・・」
「う、うん、そうみたいだね・・・」
幻術の最中の詳しい戦況は見ていないので、あくまで推測になるが。
倒れたまま動かないヘルマンを見れば、結果は自ずと知れていた。
「ふぅ」
「環さん、やりましたね!」
「・・・・・・」
息を吐きつつ現れた環を、ネギは大喜びで向かえる。
一方で、小太郎は無言だった。
「君たちの勝ちだ。とどめを刺さなくていいのかね、ネギ君」
「え・・・」
そんなネギにかけられる、ヘルマンの言葉。
「このままにすれば、私はただ召喚を解かれ、自分の国へと帰るだけだ。
しばしの休眠を経て、復活してしまうかも知れんぞ?」
「僕は・・・」
「君のことは少し調べさせてもらった」
瓶が壊れてしまった以上、封印という手は使えない。
と、なると・・・
「本来、封印することでしか対処できない、我々のような高位の魔物を完全に討ち滅ぼし、
消滅させる超高等呪文。君が復習のために、血のにじむ思いで覚えた呪文があるはずだね」
「・・・・・・」
ネギは日本に来る前、9つの戦闘用呪文をマスターしている。
その中で1番最後に覚えた、上位古代語魔法。
「今が復讐のときだ。とどめを刺したまえ」
「・・・・・・僕、とどめは・・・・・・刺しません」
「・・・ほう」
手立てがあるにもかかわらず、ネギは行使することを拒否した。
ヘルマンも少し意外だったようだ。
「6年前・・・。
あなたは召喚されただけだし・・・・・・今日だって人質に、そんなにひどいことはしなかった。
それにあなたのほうこそ、本当の本気で戦っているようには見えませんでした。
少なくとも、僕と戦っているときには・・・」
語るネギ。
仇を目の前にして、その決断をさせた理由。
「僕には・・・・・・あなたが、それほど酷い人には・・・・・・」
「どうかな? やはり私はまったくの悪人かも知れぬぞ。何せ悪魔だからねぇ」
「それでも・・・・・・とどめは、刺しません」
「ふ・・・・・・ふはははは!」
大笑いのヘルマンだ。
ここまでとは思わなかった。
「君はとんだお人好しだなぁ。やはり戦いには向かんよ」
「同感です」
「・・・え?」
斬ッ!!
「え・・・?」
「な・・・」
周囲は、何が起こったのか、その瞬間ではまるでわからなかっただろう。
わかっていたのは、この”行為”を実行した本人だけ。
黄金の輝きが、ヘルマンの首を切断していった。
黄金といえば、彼女しかいない。
気付いた一同が視線を向けると、やはり想像通りだったようで。
彼女、環の右腕は、鋭い光を放っていたのだ。
ボワッ!
「うわっ」
「きゃあっ」
間髪入れず、ヘルマン”だった”肉塊が燃え上がった。
それはもう激しく、のうのうと黒煙を噴き上げるほどに。
「た、環さん・・・」
焦点を合わしきれない揺れたネギの瞳が、環を捉える。
もはや、誰の手によるものであるかは、明白だった。
「どうして・・・・・・」
「私は退魔士です」
答える環の目、表情、声は、あくまで冷徹だった。
皆の見ている前で、彼女が纏っている黄金の輝きは徐々に収まっていき、やがては完全に消失した。
「・・・ふう」
元の状態に戻った環は、目を閉じ、ひとつ大きく息を吐いて。
幾分か疲労した様子を見せたあと、ゆっくりと目を開き、ネギを正面から見据えた。
「首を切断し、跡形も無いほど焼ききってやれば、例え高位魔族といえども、復活は容易ではありません」
「・・・・・・」
まだ呆然としているネギに対し、環は言う。
「普通の退魔士なら、例え見た目が善人ぶっているとはいえ、こうして明確に危害を加えてきた以上、
見逃すことなど出来ないのですよ。
それに、将来にわたっての危険因子を、そのまま放置することも出来ません」
「・・・・・・」
「ネギ先生。ヘルマン卿が言ったとおり、あなたは甘い。甘すぎる」
結局のところ、言いたいことはこれだ。
「確かに寛大な心は必要ですが、それは平時に限ったこと。こと有事に関して言えば、それは枷にしかならない。
戦場というのは、命のやり取りをするところ。相手を殺し、自分も殺されるかもしれない場所です。
時として非情に徹しなければならない場合もあります。今がまさしくそうでした。
まだ幼いあなたにこんなことを要求するのは、酷なのかもしれませんが・・・
あなたも戦場に出る以上は、そういう道を選択した以上は、殺し、殺される覚悟をお持ちなさい。
その覚悟を持てないようならば、戦いに向いていないどころの話ではない。
戦士として失格です。今後一切、このようなことには関わらないほうがいいでしょう。
相手を殺さずに説得できれば、当然それが一番ですが、なんでもかんでもそう上手く行くはずは無い。
そんなことが通用するなら、戦争など起きません。話し合いだけでは、解決できない問題もある。
おわかりですか?
”不殺”(ころさず)なんて考えを貫いていると、いつか、手痛いしっぺ返しを喰うことになりますよ。
それも、自分のみならず、周囲の大多数をも巻き込んだ、壮絶なものをね」
長い長い、環の独演だった。
反論の余地など一切与えない、一方的な言葉。
もっとも、今のネギが、環の言葉を遮って発言することなど、ありえなかっただろう。
「他の方にも言えることですよ」
ネギが俯いてしまい、沈黙を続けているので、環は周囲を見渡してそう声をかけた。
「そのような覚悟を持たず、興味本位で首を突っ込むと、ロクなことにはなりません。
100%です。断言できます」
1番、この言葉を聞かせたかった人物が、この場にはいないが。
寮の大浴場で出会った、魔法バレしているメンバーの顔が思い浮かぶ。
環は、やれやれとため息をついた。
そんな折・・・
「お〜い!」
「この声は・・・」
重くなった空気には似つかわしくない、妙に張り切った声。
やはりというか、真っ先に反応したのは環だった。
「大丈夫か!?」
「・・・兄さん」
それもそのはずで、声の主は勇磨だった。
勇磨は相当に慌てて来たようで、息を切らしており、両手に刀(1本は自分の、もう1本は環のものだろう)を持って。
何があったのかわからないが、びしょ濡れ、服はぐちゃぐちゃで、ところどころに植物の葉っぱ、泥などが付着していた。
「1度部屋に戻って、あいさ・・・さよから、環も飛び出していったと聞いたから、しっかりと武器を持ってだな」
しっかりと武器を・・・のくだりで、よりいっそうの強調がなされていたのは、なぜだろう?
「戦ってる気配を感じたから、急いで追ってきたんだけど・・・
もしかして、終わっちゃった?」
「もしかしなくても、そうですよ」
「あちゃ・・・」
遅かったか、と嘆く勇磨。
そんな彼に、さらなる不幸がのしかかる。
「いったいどこで何をしていたんですか! この非常時に!」
「い、いや、俺のほうも色々と・・・」
環の雷が落ちた。
一気にまくし立てられる。
「それに、その格好はなんですか! ああ、こんなに泥まみれで」
「だから、その、色々あって・・・」
「問答無用! 詳しく聞かせていただきましょうか」
「ひい〜っ」
彼にも、彼なりの事情があるだろうに。
耳を引っ張られて連行されていく様は、非常に滑稽だった。
「あははは。たまちゃんも相変わらずやね」
しかし、それも、1度沈み込んでしまった雰囲気を戻すまでには、至らなかった。
「・・・・・・」
「ネギ・・・」
「ネギ君・・・」
ネギは一歩も動かず、立ち尽くしたまま。
持ち直させようと思い、努力した結果のこのかの笑い声が、かえって痛かった。
39時間目へ続く
<あとがき>
はい、ヘルマン編しゅーりょー!
環の独壇場と化しました。強すぎ?(汗)
いやしかし、ネギと小太郎でも、相手が本気の本気ではなかったとはいえ勝てた相手ですから、
成熟した環が戦うと、こんな結果になるかなーと。
まあ要するに、本気の本気で全力を出せば、伯爵クラスの悪魔くらいなら、圧勝だと。
で、相変わらず勇磨はボケてますね。(爆)
それでも、場の空気は変えられなかったと。
さて、ネギへのフォローを入れなきゃいけませんな・・・
煉獄さんへ
ドンマイっす!
天叢雲は、本家SSのほうで使ってるんで、また引っ張ってきました。
ザ・ハンドの件は、ジョジョはよく知らないんですけど、それだけは知ってました。(何?
あの頃はよくジャ○プ読んでたからかな?
ってか、カンペ渡されたはずのさよは、幽霊だから物を持てな――(自主規制w
以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!
>勇磨が出てない〜〜
あう、すいません。
今回、環がメイン張って、彼は活躍できないっぽいです・・・
>おもろい〜〜。でもヒロインとのラブコメをもっとほしい〜〜〜
今はバトルパートですから・・・
のちに出す(と思う)外伝に期待してください。
>何か勇磨が活躍してない気が・・・・
してませんね・・・(爆) 今回は運が悪いということで、おひとつ。
外伝では出ずっぱりになるでしょうから、それで・・・
>いままでハーレムと叫び続けてきましたでもこれからも叫び続けます by烙印
烙印さんどうも。って、名前まで出しちゃうとマズイかな?
マズかったら、今後は名前を入れないようにしてください。
ハーレムも、外伝で・・・
>アスファルトに咲く花のように〜♪て当たりです by烙印
烙印さん再びどうも♪
やっぱりそうでしたか。なんか心に残るメロディと歌詞ですよね。
>とっても面白いです。
感謝感謝、です。
そう仰っていただけるのが何よりです。
>麻帆良祭編は大変やけどがんばってなぁ〜
うぐっ!? が、がんばります・・・
ただ、原作が完全に一息ついて、私がそれを単行本で確認できてから、ということになりますから、
まだかなり先のことですね。16巻までは確認しましたが、まだまだ続きそうな雰囲気・・・
というか、麻帆良祭編長すぎですよ! 単行本何冊使うんだ・・・
>亜子にぜひ出番を!!
亜子!?Σ( ̄□ ̄;)
以前にリクのあったアキラの出番を考えるだけでいっぱいいっぱいなのに、その上、亜子と来てしまいましたか・・・!
亜子は原作でメイン張った回があるので、出番が無いからとスルーするわけにもいきませんし、うーむ・・・(汗)
>神と崇めさせてください。ハーレムルートばっちこーい!!
仮に、仮にですよ?(笑)
ハーレムルートとなった場合、確実視されるのは、このかを筆頭にエヴァ、妹だけど環。
あとは・・・? さよは幽霊だしなあ・・・
ハーレムを名乗るならば、3人では物足りぬ! もっと増やす必要があるのか!(爆)
・・・・・・あくまで仮の話ですからね?
>うおおおおぉぉぉぉ!!!ここに!!ここに世界最強のハーレムを降臨させてくれ〜〜〜〜!!!!
そこまで明確なハーレム描写が出来るかどうか・・・
まあ、あまり期待しないでくださいませ・・・
強者を前に夢はでっかく! そんな小太郎少年
そして戦いの厳しさ、辛さ、覚悟の重みを知らされるネギ少年
今回は環の独壇場とはいえ、これが二人の転換期
あるいはターニングポイントの一角となるのか
これからの展開が楽しみですね〜
まー欲を言うなら悪魔モードのおじいさんの描写が少しでもほしいところですかね?
金色に光る勇sy……ゲフンゲフ ン、もとい妖狐の環
口からビーm……ゲフン、もとい 悪魔砲を放つおじいさんの対決も盛り上がったかもしれませんし